特許第6592189号(P6592189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592189その上に耐久性潤滑性コーティングを有するコンタクトレンズを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592189
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】その上に耐久性潤滑性コーティングを有するコンタクトレンズを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   G02C7/04
【請求項の数】20
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2018-511263(P2018-511263)
(86)(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公表番号】特表2018-529123(P2018-529123A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】IB2016055153
(87)【国際公開番号】WO2017037610
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】62/214,240
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チァン,シンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】マツザワ,ヤスオ
(72)【発明者】
【氏名】シャンカル,ベンカット
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−533517(JP,A)
【文献】 特開2005−218780(JP,A)
【文献】 特表2001−507255(JP,A)
【文献】 特開2011−219512(JP,A)
【文献】 特表2006−508720(JP,A)
【文献】 特表平10−513409(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0166205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、
(1)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと;
(2)乾燥状態の前記前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに表面処理を施して、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップであって、ここで、前記ベースコーティングは、プライムプラズマ層、前記プライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層、およびカルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含み、
前記表面処理は、
(a)乾燥状態の前記前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面をプラズマでプラズマ処理して、その上に前記プライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るサブステップであって、前記プラズマは、空気、N、O、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、N、O、CO、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成されるプラズマガスで発生され、前記プライムプラズマ層は、0.5nm〜40nmの厚さを有する、サブステップと、
(b)その上に前記プライムプラズマ層を有する前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される複数の反応性官能基を有する反応性親水性ポリマーを含む第1の水溶液と接触させて、前記プライムプラズマ層の上の前記反応性親水性ポリマーの前記反応性ポリマー層を含む前記ベースコーティングを形成するサブステップと
を含む、ステップと;
(3)ステップ(2)で得られたその上に前記ベースコーティングを有する前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、ならびに任意選択で第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料を含む第2の水溶液中、60℃〜140℃の温度で、前記水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料および前記ベースコーティングを架橋するために十分長い期間加熱して、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを形成するステップとを含み、ここで、完全水和状態の前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも10秒のWBUTおよび3以下の摩擦等級を有する、方法。
【請求項2】
前記プラズマが、CO、またはメタンとCOとの混合物から構成されるプラズマガスで発生される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の水溶液が、1.0〜3.0のpHを有し、かつ前記反応性親水性ポリマーが、カルボキシル基を含み、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリアニオン性ポリマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアニオン性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチルアクリル酸、ポリ(アクリル酸−co−メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸−co−エタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸−co−エタクリル酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の水溶液が、9.5〜11.0のpHを有し、前記反応性親水性ポリマーが、第一級および/または第二級アミノ基を含み、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリカチオン性ポリマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリカチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応性親水性ポリマーが、アゼチジニウム基、ならびに第一級基、第二級アミノ基、カルボキシル基、およびそれらの混合物からなる群から選択される反応性官能基を含み、前記反応性親水性ポリマーは、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有し、前記第1の水溶液は、8.0未満のpHを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記反応性親水性ポリマーが、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせであり、ここで、前記化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは前記化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン由来の20重量%〜95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する5重量%〜80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、前記親水性部分または第2のポリマー鎖は、前記ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたは前記ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して前記第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)前記第1のポリマー鎖または前記第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基の部分である、アゼチジニウム基、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料が、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせであり、ここで、前記化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは前記化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン由来の20重量%〜95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する5重量%〜80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、前記親水性部分または第2のポリマー鎖は、前記ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたは前記ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して前記第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)前記第1のポリマー鎖または前記第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基の部分である、アゼチジニウム基、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料が、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンであり、ここで、前記化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンおよび前記化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、互いに独立して、
(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する20重量%〜95重量%の第1のポリマー鎖、
(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する5重量%〜80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖;ならびに
(iii)前記第1のポリマー鎖の部分または前記第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基である、正に荷電したアゼチジニウム基、を含み、ここで、前記親水性部分または第2のポリマー鎖は、前記ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたは前記ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、前記親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して前記第1のポリマー鎖に共有結合されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記親水性増強剤が、1個以上のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーであり、前記親水性ポリマー中の前記アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基の含量は、前記親水性ポリマーの全重量に基づいて40重量%未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記親水性増強剤が、PEG−NH、PEG−SH、PEG−COOH;HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ、カルボキシルもしくはチオール基を有するマルチアームPEG;1個以上のアミノ、カルボキシルもしくはチオール基を有するPEGデンドリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ−、ジカルボキシル−、モノアミノ−、もしくはモノカルボキシル末端ホモ−もしくはコポリマー;またはそれらの組み合わせであり、ここで、PEGは、ポリエチレングリコールセグメントであり、非反応性ビニルモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、グリセロールメタクリレート、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー、最大で1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール(コポリマー中酢酸ビニルの加水分解形態)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記親水性増強剤が、(1)60重量%以下の少なくとも1種の反応性ビニルモノマーと(2)少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマーとを含む組成物の重合生成物であるコポリマーであり;ここで、前記反応性ビニルモノマーは、アミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、C〜Cアルキルアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリルアミド、C〜Cアルキルアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、C〜Cアルキルアクリル酸、N,N−2−アクリルアミドグリコール酸、ベータ−メチル−アクリル酸、アルファ−フェニルアクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記非反応性ビニルモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、グリセロールメタクリレート、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー、最大で1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール(コポリマー中酢酸ビニルの加水分解形態)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記親水性増強剤が、アミノ−またはカルボキシル含有多糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、およびそれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記親水性増強剤の重量平均分子量Mwが、500〜1,000,000ダルトンである、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記親水性増強剤が、アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有単糖類;アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有二糖類;およびアミノ−、カルボキシル−またはチオール含有オリゴ糖である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のポリマー鎖が、前記ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンに由来する、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のポリマー鎖が、前記ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の水溶液が、パッケージング溶液であり、前記加熱するステップが、加圧下115℃〜125℃の温度で少なくとも20分間のオートクレーブによる滅菌中に、前記パッケージング溶液を含む、密封レンズパッケージで直接行われ;ここで、前記パッケージング溶液は、0.01重量%〜2重量%の水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料、及び、6.0〜8.5のpHを維持するために十分な量で少なくとも1種の緩衝剤を更に含み、ここで、前記パッケージング溶液は、25℃で、200〜450ミリオスモル(mOsm)の張性、および1センチポイズ〜5センチポイズの粘度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
シリコーンヒドロゲル基材;
前記シリコーンヒドロゲル基材の表面上のベースコーティングであって、前記ベースコーティングは、プライムプラズマ層およびプライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層を含み、前記プライムプラズマ層は、0.5nm〜40nmの厚さを有し、前記反応性ポリマーは、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含む、ベースコーティング;ならびに
前記ベースコーティング上に共有結合された非シリコーンヒドロゲルコーティングであって、前記非シリコーンヒドロゲルコーティングは、複数の反応性官能基を介して前記反応性ポリマー層の上に共有結合されている、非シリコーンヒドロゲルコーティング
を含み、
ここで、完全水和状態の前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも40barrerの酸素透過度、少なくとも10秒のWBUT、3以下の摩擦等級、および80度以下の水接触角を有する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、安定な潤滑性コーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって製造されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【背景技術】
【0002】
ソフトシリコーンコンタクトレンズは、それらの高い酸素透過度および快適性のためにますます人気が高まっている。しかし、シリコーンヒドロゲル材料は、典型的には疎水性(非湿潤性)および眼環境からの脂質またはタンパク質の吸着に感受性であり、かつ眼に付着し得る表面、またはその表面の少なくとも一部の領域を有する。したがって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、一般に表面変性を必要とする。
【0003】
比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を変性するための公知の手法は、プラズマ処理の使用によっており、例えば、市販のレンズ、例えば、Focus NIGHT & DAY(商標)およびO2OPTIX(商標)(CIBA VISION)、ならびにPUREVISION(商標)(Bausch & Lomb)は、それらの製造プロセスにおいてこの手法を用いている。例えば、Focus NIGHT & DAY(商標)で見出され得るものなどの、プラズマコーティングの利点は、その耐久性、比較的高い親水性/湿潤性)、ならびに脂質およびタンパク質の堆積および吸着への低い感受性である。しかし、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのプラズマ処理は、費用効果的であり得ず、その理由は、前形成コンタクトレンズが、典型的にはプラズマ処理前に乾燥されなければならず、かつプラズマ処理設備に関連する比較的高い資本投資のためである。さらに、プラズマ処理は、望ましい表面潤滑性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを与え得ない。
【0004】
比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を変性するための別の手法は、レイヤバイレイヤ(layer−by−layer)(LbL)ポリイオン性材料堆積技術である(例えば、米国特許第6,451,871号明細書、同第6,719,929号明細書、同第6,793,973号明細書、同第6,884,457号明細書、同第6,896,926号明細書、同第6,926,965号明細書、同第6,940,580号明細書、および同第7,297,725号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007/0229758A1号明細書、同第2008/0174035A1号明細書、および同第2008/0152800A1号明細書参照)。LbL堆積技術は、シリコーンヒドロゲル材料を湿潤性にさせるための費用効果的なプロセスを与え得るが、LbLコーティングは、プラズマコーティングほど耐久性であり得ず、かつ表面電荷、特に負表面電荷の比較的高い密度を有し得;これは、ほとんどの多目的レンズケア溶液に一般的に見出される正に荷電した抗菌剤(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、Polyquaterniumu−1(登録商標)など)の堆積および蓄積へのそれらの高い感受性のためにコンタクトレンズ清浄化および消毒液を妨害し得る。シリコーンヒドロゲルレンズによって吸着されたそれらの正に荷電した抗菌剤は、レンズが患者により装着される場合、眼の中に放出され得、一部の人で望ましくない臨床症状、例えば、びまん性角膜染色および製品不耐性を引き起こし得る。耐久性を改善するために、コンタクトレンズ上のLbLコーティングの架橋が、自己所有の(commonly−owned)同時係属米国特許出願公開第2008/0226922A1号明細書および同第2009/0186229A1号明細書(それらの全体が参照により組み込まれる)で提案されている。しかしながら、架橋LbLコーティングは、元のLbLコーティング(架橋前の)よりも劣っている親水性および湿潤性を有し、かつなお負表面電荷の比較的高い密度を有し得る。
【0005】
米国特許出願公開第2008/0142038A1号明細書には、比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を変性するための別の手法が記載されている。この手法によれば、非水和状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、適当な媒体、例えば、アンモニア、アルキルアミン、空気、水、過酸化物、酸素ガス、メタノール、アセトンなどから構成される大気で酸化プラズマ処理を施されて、その後のカルボン酸含有ポリマーまたはコポリマー層の結合のための付着性を改善または促進し;次いで、プラズマ処理レンズは、有機溶媒(例えば、イソプロパノール)で抽出され、水中で再水和され、ポリアニオン性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸)のコーティング溶液が入っているポリプロピレン製ブリスターパックにパッケージングされ;最後に、パッケージングされたレンズは、100℃を含めて最高で100℃までの温度でオートクレーブ中スチームによって滅菌される。この手法は、LbL手法の上記欠点、例えば、レンズケア溶液中正に荷電した抗菌剤の堆積および蓄積への高い感受性ならびに不十分な耐久性をなお有する。
【0006】
米国特許第6,630,243号明細書には、比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を変性するための別の手法が開示されている。この手法によれば、非水和状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、炭化水素含有大気中でプラズマ重合を施されて、レンズ表面上にポリマー炭素質層を形成し;次いで、反応性官能基が、炭素質層の表面上に生成され;最後に親水性反応性ポリマーが、炭素質層の表面反応性官能基を介して炭素質層の表面に共有結合される。結果として、この手法は、望ましい表面潤滑性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを与え得ない。
【0007】
比較的疎水性のコンタクトレンズの親水性を変性するためのなおさらなる手法は、様々な機構によってコンタクトレンズ上に親水性ポリマーを結合させることである(例えば、米国特許第6,099,122号明細書、同第6,436,481号明細書、同第6,440,571号明細書、同第6,447,920号明細書、同第6,465,056号明細書、同第6,521,352号明細書、同第6,586,038号明細書、同第6,623,747号明細書、同第6,730,366号明細書、同第6,734,321号明細書、同第6,835,410号明細書、同第6,878,399号明細書、同第6,923,978号明細書、同第6,440,571号明細書、および同第6,500,481号明細書、米国特許出願公開第2009/0145086A1号明細書、同第2009/0145091A1号明細書、同第2008/0142038A1号明細書、および同第2007/0122540号明細書(これらのすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)参照)。それらの技術は、シリコーンヒドロゲル材料を湿潤性にさせる際に使用され得るが、それらは、それらが典型的には親水性コーティングを得るために比較的長い時間を必要とし、および/または面倒な複数のステップを伴うので、大量生産環境での実行に費用効果的および/または時間効率的であり得ない。
【0008】
最近、非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲレルコンタクトレンズ上に適用するための新たな費用効果的手法が米国特許出願公開第2012/0026457A1号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、ここでは、ポリアニオン性ポリマーの有機溶媒系コーティング溶液が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に相互侵入ベースコーティング(すなわち、係留層)の形成に関与し、次いで、部分架橋親水性ポリマー材料が、オートクレーブ中にレンズパッケージ内で係留層上に直接共有結合される。このような手法によって生成されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、水勾配構造構成並びに柔軟性および潤滑性表面を有し得るが、それらは、ポリアニオン性材料の係留層の存在のために、ほとんどの多目的レンズケア溶液で一般的に見出される正に荷電した抗菌剤の高い堆積および蓄積に感受性であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、正に荷電した抗菌剤の高い堆積および蓄積への最小限の感受性を有する耐久性潤滑性非シリコーンヒドロゲルコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための改善された方法に対する必要性が依然としてある。このような耐久性コーティングをその上に有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに対する必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一態様において、ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、(1)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと;(2)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに表面処理を施して、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップであって、ここで、ベースコーティングは、プライムプラズマ層、プライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層、およびカルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含み、表面処理は、(a)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面をプラズマでプラズマ処理して、その上のプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るサブステップであって、プラズマは、空気、N、O、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、N、O、CO、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成されるプラズマガス(すなわち、大気)で発生され、プライムプラズマ層は、約0.5nm〜約40nmの厚さを有する、サブステップと、(b)その上にプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基を有する反応親水性ポリマーを含む第1の水溶液と接触させて、プライムプラズマ層の上の反応性親水性ポリマーの反応性ポリマー層を含むベースコーティングを形成するサブステップとを含む、ステップと;(3)ステップ(2)で得られたその上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、ならびに任意選択で(しかし、好ましくは)第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料を含む第2の水溶液中、約60℃〜約140℃の温度で、水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料およびベースコーティングを架橋するために十分長い期間加熱して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを形成するステップとを含み、ここで、完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のヒドロゲルコーティングは、少なくとも約10秒のWBUTおよび約3以下の摩擦等級を有する、方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、少なくとも40barrerの酸素透過度、80度未満の水接触角、少なくとも約10秒のWBUT、約3以下の摩擦等級、および指擦り試験の少なくとも7サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性を有するシリコーンコンタクトレンズを提供する。
【0012】
本発明のこれらの、および他の態様は、現に好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなる。詳細な説明は、本発明の単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、これは、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物により規定される。当業者に明らかであるとおりに、本発明の多くの変形および変更が、本開示の新規な概念の精神および範囲から逸脱することなく行われてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に規定のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法および実験室手順は、周知であり、当技術分野で一般的に用いられる。これらの手順のために慣用の方法、例えば、当技術分野および様々な一般参考文献で提供されるものが使用される。用語が単数で与えられる場合、本発明者らはその用語の複数も企図する。本明細書で使用される命名法および以下に記載される実験室手順は、周知のものであり、当技術分野で一般的に用いられる。
【0014】
「コンタクトレンズ」は、装着者の眼の上または内に置かれ得る構造を意味する。コンタクトレンズは、使用者の視力を補正し、改善し、または変えることができるが、それは症例を必要としない。コンタクトレンズは、当技術分野で公知の、またはその後開発された任意の適切な材料のものであり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、またはハイブリッドレンズであり得る。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンヒドロゲルバルク(コア)材料を含むコンタクトレンズを意味する。
【0015】
「ソフトコンタクトレンズ」は、2.5MPa未満の弾性モジュラス(すなわち、ヤング率)を有するコンタクトレンズを意味する。
【0016】
「ヒドロゲル」または「ヒドロゲル材料」は、3次元ポリマー網状組織(すなわち、ポリマーマトリックス)を有し、水に不溶性であり、かつそれが完全に水和されているときに、そのポリマーマトリックス中に少なくとも10重量パーセントの水を保持し得る架橋ポリマー材料を意味する。
【0017】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー、または少なくとも1種のシリコーン含有マクロマー、または少なくとも1種の架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるシリコーン含有ヒドロゲルを意味する。
【0018】
本出願で使用される場合、用語「非シリコーンヒドロゲル」は、理論的にケイ素を含まないヒドロゲルを意味する。
【0019】
「親水性の」は、本明細書で使用される場合、脂質とよりも水とより容易に会合する材料またはその部分を意味する。
【0020】
「表面親水性」は、本明細書で使用される場合、水破壊時間(WBUT)により測定して、表面が水と相互作用する程度を表す表面特性を意味する。WBUTの値が高ければ高いほど、表面親水性は高い。
【0021】
本発明によれば、コンタクトレンズ(または医療デバイス)の「表面潤滑性(surface lubricity)」または「潤滑性(lubricity)」は、0〜4の数である摩擦等級で測定される。摩擦等級の値が高ければ高いほど、表面潤滑性は低い。
【0022】
「ビニルモノマー」は、唯一のエチレン性不飽和基を有し、溶媒に可溶性であり、かつ化学線または熱によって重合され得る化合物を意味する。
【0023】
用語「可溶性の」は、溶媒中の化合物または材料に関連して、化合物または材料が、溶媒中に溶解されて、室温(すなわち、約22℃〜約28℃の温度)で少なくとも約0.1重量%の濃度を有する溶液を与え得ることを意味する。
【0024】
用語「不溶性の」は、溶媒中の化合物または材料に関連して、化合物または材料が、溶媒中に溶解されて、室温(上で定義されたとおりの)で0.005重量%未満の濃度を有する溶液を与え得ることを意味する。
【0025】
本出願で使用される場合、用語「エチレン性不飽和基」は、本明細書で広義の意味で用いられ、少なくとも1個の>C=C<基を含む任意の基を包含することが意図される。例示的なエチレン性不飽和基には、限定することなく、(メタ)アクリロイル(
【化1】

)、アリル、ビニル、スチレニル、または他のC=C含有基が含まれる。
【0026】
用語「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドおよび/またはアクリルアミドを意味する。
【0027】
用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、重合性組成物、プレポリマーまたは材料の硬化、架橋または重合に関連しての「化学線によって」は、硬化(例えば、架橋および/または重合される)が、化学線、例えば、UV/可視線、イオン化線(例えば、ガンマ線またはX線照射)、マイクロ波照射などによって行われることを意味する。熱硬化または化学線硬化法は、当業者に周知である。
【0029】
「親水性ビニルモノマー」は、本明細書で使用される場合、ホモポリマーとして、典型的には、水溶性であるか、または少なくとも10重量パーセントの水を吸収し得るポリマーを生成する、ビニルモノマーを意味する。
【0030】
「疎水性ビニルモノマー」は、本明細書で使用される場合、ホモポリマーとして、典型的には、水不溶性であるか、または10重量パーセント未満の水を吸収し得るポリマーを生成する、ビニルモノマーを意味する。
【0031】
「マクロマー」または「プレポリマー」は、エチレン性不飽和基を有し、かつ700ダルトン超の平均分子量を有する化合物またはポリマーを意味する。
【0032】
本出願で使用される場合、用語「ビニルクロスリンカー(crossliker)」は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物を意味する。「ビニル架橋剤(crosslinking agent)」は、700ダルトン以下の分子量を有するビニルクロスリンカーを意味する。
【0033】
本出願で使用される場合、用語「ポリマー」は、1種以上のモノマーもしくはマクロマーもしくはプレポリマーまたはそれらの組み合わせを重合/架橋させることによって形成される材料を意味する。
【0034】
本出願で使用される場合、ポリマー材料(モノマーまたはマクロマー材料を含む)の用語「分子量」は、特に具体的に断りのない限りまたは試験条件が別に示されない限り、重量平均分子量を意味する。
【0035】
「ポリシロキサン」は、
【化2】

[式中、m1およびm2は、互いに独立して、0〜500の整数であり、(m1+m2)は、2〜500であり、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、およびR’は、互いに独立して、C〜C10アルキル、C〜Cアルキル−またはC〜C−アルコキシ置換フェニル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10フルオロエーテル、C〜C18アリール基、−alk−(OCm3−OR’(ここで、alkは、C〜Cアルキル二価基であり、R’は、HまたはC〜Cアルキルであり、m3は、1〜10の整数である)、または線状親水性ポリマー鎖である]
のポリシロキサンセグメントを有する化合物を意味する。
【0036】
「ポリカルボシロキサン」は、
【化3】

[式中、n1は、2または3の整数であり、n2は、2〜100(好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10、さらにより好ましくは2〜6)の整数であり、R”、R”、R”、R”、R”、およびR”は、互いに独立して、C〜Cアルキル基(好ましくはメチル)である]
のポリカルボシロキサンを有する化合物を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合の用語「流体」は、材料が液体のように流れることができることを意味する。
【0038】
用語「アルキル」は、直鎖または分岐アルカン化合物から水素原子を除去することによって得られる一価基を意味する。アルキル基(alkyl group(radical))は、有機化合物中で1個の他の基と1つの結合を形成する。
【0039】
用語「アルキレン二価基(alkylene divalent grouop)」または「アルキレン二価基(alkylene diradical)」または「アルキル二価基(alkyl diradical)」は、アルキルから1個の水素原子を除去することによって得られる二価基を交換可能に意味する。アルキレン二価基は、有機化合物中で他の基と2つの結合を形成する。
【0040】
用語「アルキル三価基(alkyl triradical)」は、アルキルから2個の水素原子を除去することによって得られる三価基を意味する。アルキル三価基は、有機化合物中で他の基と3つの結合を形成する。
【0041】
用語「アルコキシ」または「アルコキシル」は、直鎖または分岐アルキルアルコールのヒドロキシル基から水素原子を除去することによって得られる一価基を意味する。アルコキシ基(alkoxy group(radical))は、有機化合物中で1個の他の基と1つの結合を形成する。
【0042】
本出願において、アルキル二価基またはアルキル基に関連しての用語「置換される」は、アルキル二価基またはアルキル基が、アルキル二価基またはアルキル基の1個の水素原子を置き換え、かつヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、−NH、スルフィドリル(−SH)、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ(アルキルスルフィド)、C〜Cアシルアミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲン原子(BrまたはCl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1個の置換基を含むことを意味する。
【0043】
本出願において、「オキサゾリン」は、
【化4】

[式中、Rは、水素、メチル、エチル、N−ピロリドニルメチル、N−ピロリドニルエチル、N−ピロリドニルプロピル、または−alk−(OCm3−OR”(ここで、alkは、C〜Cアルキル二価基であり;R”は、C〜Cアルキル(好ましくは、メチル)であり;m3は、1〜10(好ましくは、1〜5)の整数である)の一価基である]の化合物を意味する。
【0044】
本出願において、用語「ポリオキサゾリン」は、
【化5】

[式中、T1およびT2は、2個の末端基であり;Rは、水素、メチル、エチル、N−ピロリドニルメチル、N−ピロリドニルエチル、N−ピロリドニルプロピル、または−alk−(OCm3−OR”(ここで、alkは、C〜Cアルキル二価基であり;R”は、C〜Cアルキル(好ましくは、メチル)であり;m3は、1〜10(好ましくは、1〜5)の整数である)の一価基であり;xは、5〜500の整数である]の式を有する線状ポリマーを意味する。ポリオキサゾリンセグメントは、
【化6】

(式中、Rおよびxは、上で定義されたとおりである)の式の二価ポリマー鎖を有する。
【0045】
本出願において、用語「ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)」は、
【化7】

[式中、T1およびT2は、末端基であり;Rは、水素、メチル、エチル、N−ピロリドニルメチル、N−ピロリドニルエチル、N−ピロリドニルプロピル、または−alk−(OCm3−OR”(ここで、alkは、C〜Cアルキル二価基であり;R”は、C〜Cアルキル(好ましくは、メチル)であり;m3は、1〜10(好ましくは、1〜5)の整数である)であり;xは、5〜500の整数である;zは、x以下の整数である]の式を有するランダムコポリマーを意味する。ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)は、ポリオキサゾリンを加水分解することによって得られる。
【0046】
本出願において、用語「ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン」は、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)をエピクロロヒドリンと反応させて、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)の第二級アミン基のすべてまたはかなりの割合(≧90%)をアゼチジニウム基に変換することによって得られるポリマーを意味する。ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの例は、米国特許出願公開第2016/0061995A1号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0047】
「エピクロロヒドリン官能化ポリアミン」または「エピクロロヒドリン官能化ポリアミドアミン」は、ポリアミンまたはポリアミドアミンをエピクロロヒドリンと反応させて、ポリアミンまたはポリアミドアミンの第二級アミン基のすべてまたはかなりの割合をアゼチジニウム基に変換することによって得られるポリマーを意味する。
【0048】
用語「ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン」は、エピクロロヒドリン官能化アジピン酸−ジエチレントリアミンコポリマーを意味する。
【0049】
本出願において、用語「アゼチジニウム」または「3−ヒドロキシアゼチジニウム」は、
【化8】

の正に荷電した二価基[または基(group)もしくは部分(moiety)]を意味する。
【0050】
ポリマー材料または官能基に関連しての用語「熱架橋性」は、ポリマー材料または官能基が、比較的に上昇した温度(約40℃〜約140℃)で別のポリマー材料または官能基との架橋(またはカップリング)反応を行うことができる一方で、ポリマー材料または官能基が、室温(すなわち、約22℃〜約28℃、好ましくは約24℃〜約26℃、特には約25℃)で約1時間の期間で検出可能な程度まで別の材料または官能基と同じ架橋反応(またはカップリング反応)を行うことができないことを意味する。
【0051】
用語「アズラクトン」は、式
【化9】

(式中、pは、0または1であり;RおよびRは、互いに独立して、C〜Cアルキル(好ましくはメチル)である)の一価基を意味する。
【0052】
本出願で使用される場合、用語「ホスホリルコリン」は、
【化10】

(式中、t1は、1〜5の整数であり、R”、R”およびR”は、互いに独立して、C〜CアルキルまたはC〜Cヒドロキシアルキルである)の一価双性イオン基を意味する。
【0053】
本出願で使用される場合、用語「反応性ビニルモノマー」は、カルボキシル基、第一級アミノ基、および第二級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する任意のビニルモノマーを意味する。
【0054】
本出願で使用される場合、用語「非反応性ビニルモノマー」は、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、エポキシド基、イソシアネート基、アズラクトン基、またはアジリジン基を含まない任意のビニルモノマー(親水性または疎水性ビニルモノマーのいずれか)を意味する。
【0055】
フリーラジカル開始剤は、光開始剤または熱開始剤のいずれかであり得る。「光開始剤」は、光の使用によってフリーラジカル架橋/重合反応を開始する化学薬品を意味する。「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によってラジカル架橋/重合反応を開始する化学薬品を意味する。
【0056】
「化学線の空間的制限」は、光線の形態のエネルギー線が、例えば、マスクもしくはスクリーンまたはそれらの組み合わせによって方向付けられて、空間的に制限されて、明確な周囲境界を有する領域に衝突する行為または過程を意味する。UV線の空間的制限は、それらのすべてがそれらの全体で参照により組み込まれる、米国特許第6,800,225号明細書(図1図11)、ならびに同第6,627,124号明細書(図1図9)、同第7,384,590号明細書(図1図6)、および同第7,387,759号明細書(図1図6)の図面に概略例示されたとおりに、放射線(例えば、UV)透過性領域、放射線透過性領域を囲む放射線(例えば、UV)不透過性領域、および放射線不透過性領域と放射線透過性領域との間の境界である投射輪郭を有するマスクまたはスクリーンを使用することによって得られる。マスクまたはスクリーンは、マスクまたはスクリーンの投影輪郭によって規定された横断面プロファイルを有する放射線(例えば、UV線)のビームを空間的に投射することを可能にする。放射線(例えば、UV線)の投射ビームは、型の第1の成形表面から第2の成形表面への投射ビームの経路に位置するレンズ配合物に衝突する放射線(例えば、UV線)を限定する。得られたコンタクトレンズは、第1の成形表面によって規定された前表面、第2の成形表面によって規定された反対側の後表面、および投射UVビームの断面プロファイル(すなわち、放射線の空間的制限)によって規定されたレンズ端部を含む。架橋のために使用される放射線は、放射エネルギー、特にUV線、ガンマ線、電子線または熱線であり、放射エネルギーは好ましくは、エネルギーの、一方で良好な制限、他方で効率的な使用を達成するために実質的に平行なビームの形態である。
【0057】
「水接触角」は、室温での平均水接触角(すなわち、定着液滴法(Sessile Drop method)により測定された接触角)を意味し、これは、少なくとも3つの個別のコンタクトレンズによる接触角の測定値を平均することによって得られる。
【0058】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングに関連しての用語「無傷性」は、コンタクトレンズが、実施例1に記載されるSudan Black染色試験でSudan Blackにより染色され得る程度を意味することが意図される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングの良好な無傷性は、コンタクトレンズのSudan Black染色が実質的にないことを意味する。
【0059】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関連しての用語「耐久性」は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングが、指擦り試験の所望のサイクル数にもかかわらず存続し得ることを意味することが意図される。
【0060】
本明細書で使用される場合、コンタクトレンズ上のコーティングに関連しての「指擦り試験のサイクル数(「j」)にもかかわらず存続すること」は、実施例1に記載される手順に従う指擦り試験jサイクル後に、コンタクトレンズが、約45%以下(好ましくは約35%以下、より好ましくは約25%以下、さらにより好ましくは約15%以下)の、指擦り試験jサイクル後のWBUTの指擦り誘発減少、ΔWBUTDR(j)および任意選択で、約60%以下(好ましくは約50%以下、より好ましくは40%以下、さらにより好ましくは30%以下)の、指擦り試験jサイクル後の摩擦等級の指擦り誘発増加、ΔFRDR(j)を有し、ここで、
【数1】

(ここで、WBUT0DRおよびFR0DRは、完全水和状態であり、かつゼロ指擦り試験を施されるコンタクトレンズのWBUTおよび摩擦等級であり、WBUTjDRおよびFRjDRは、完全水和状態であり、かつ指擦り試験を少なくともjサイクル施されたコンタクトレンズのWBUTおよび摩擦等級であり、jは、2(好ましくは7、より好ましくは14、さらにより好ましくは30)の整数である)であることを意味する。
【0061】
用語「指擦り試験の1サイクル」は、その上のコーティングを有するコンタクトレンズ(または医療デバイス)が、RENU(登録商標)多目的レンズケア溶液(または別の多目的レンズケア溶液)で20秒間指にて擦られ(使い捨て粉末不含ラテックス手袋を装着して)、次いで、生理食塩水ですすぎ洗いされることを意味する。上記手順は、所定の回数、例えば、2〜30回繰り返すことができ、指擦り試験の繰り返しの数が、指擦り試験のサイクルの数である。
【0062】
材料の固有「酸素透過度」、Dkは、酸素が材料を通過する速度である。本出願で使用される場合、ヒドロゲル(シリコーンまたは非シリコーン)またはコンタクトレンズに関連しての用語「酸素透過度(Dk)」は、特許出願公開第第2012/0026457A1号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の実施例1に記載された手順に従って境界層効果により生じた酸素フラックスに対する表面抵抗について補正される測定酸素透過度(Dk)を意味する。酸素透過度は、barrerの単位で慣例的に表現され、ここで、「barrer」は、[(cm酸素)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10と定義される。
【0063】
レンズまたは材料の「酸素伝達率」、Dk/tは、酸素が、測定される領域にわたっての平均厚さt[mmの単位]を有する特定のレンズまたは材料を通過する速度である。酸素伝達率は、barrel/mmの単位で慣例的に表現され、ここで、「barrer/mm」は、[(cm酸素)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9と定義される。
【0064】
レンズを通しての「イオン透過率」は、イノフラックス拡散係数と相関する。イノフラックス拡散係数D([mm/分]の単位)は、以下のとおりのフィックの法則:
D=−n’/(A×dc/dx)
(ここで、n’=イオン輸送の速度[モル/分]であり;A=曝露されたレンズの面積[mm]であり;dc=濃度差[モル/L」であり;dx=レンズの厚さ[mm]である)
を適用することによって決定される。
【0065】
「眼科的適合性」は、本明細書で使用される場合、眼環境を有意に損傷することなしに、かつ有意な使用者不快感なしに、長時間眼環境と密接な接触状態であってもよい材料、または材料の表面を意味する。
【0066】
コンタクトレンズを滅菌および保存するためのパッケージング溶液に関しての用語「眼科的に安全な」は、溶液中に保存されたコンタクトレンズが、オートクレーブ後のすすぎ洗いなしに眼の上に直接置くことに対して安全であること、かつ溶液が、コンタクトレンズを介しての眼との毎日の接触に対して安全で、十分に快適であることが意味される。オートクレーブ後の眼科的に安全なパッケージング溶液は、眼に適合性である張性(tonicity)およびpHを有し、かつ国際ISO規格およびU.S.FDA規制に従って眼刺激性または眼細胞傷害性材料を実質的に有しない。
【0067】
コンタクトレンズまたは材料に関連しての用語「モジュラス」または「弾性モジュラス」は、コンタクトレンズまたは材料の剛性の尺度である引張りモジュラスまたはヤングモジュラスを意味する。モジュラスは、ANSI Z80.20規格に従う方法を使用して測定され得る。当業者は、シリコーンヒドロゲル材料またはコンタクトレンズの弾性モジュラスを決定する仕方を周知する。例えば、すべての市販のコンタクトレンズは、弾性モジュラスの値を報告している。
【0068】
「水溶液」または「水系溶液」は、水系溶媒および水系溶媒に溶解された1種以上の溶質からなる均一混合物である溶液を意味する。「水系溶媒」は、溶媒系の重量に対して、少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも約60重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、さらにより好ましくは少なくとも約90重量%、特には少なくとも約95重量%)の水、および最大で50重量%(好ましくは約40%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約10重量%以下、特には約5重量%以下)の1種以上の有機溶媒からなる溶媒系を意味することが意図される。水コーティング溶液は、溶液中に溶質として少なくとも1種のポリマーコーティング材料を含有する水溶液を意味する。
【0069】
「有機系溶液」は、有機系溶媒、および有機系溶媒中に溶解された1種以上の溶質からなる均一混合物である溶液を意味する。「有機系溶媒」は、1種以上の溶媒、および溶媒系の重量に対して49重量%未満、好ましくは約40重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約10重量%以下、特には約5重量%以下の水からなる溶媒系を意味することが意図される。有機系コーティング溶液は、溶液中に溶質として少なくとも1種のポリマーコーティング材料を含有する有機系溶液を意味する。
【0070】
本出願において、プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関連しての用語「クエンチすること」は、なお乾燥状態のプラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、プラズマ処理直後約40分以下以内の最初の時に任意の液体と接触状態にある(例えば、任意の液体に含侵されているか、またはそれで噴霧されている)過程を意味する。
【0071】
本発明は概して、その上に非シリコーンヒドロゲルコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法であって、ここで、得られた非シリコーンヒドロゲルコーティングは、少なくとも10秒(好ましくは少なくとも約12.5秒、より好ましくは少なくとも約15秒、さらにより好ましくは少なくとも約17.5秒)のWBUTおよび約3以下(好ましくは約2.5以下、より好ましくは約2以下、さらにより好ましくは約1.5以下、最も好ましくは約1以下)の摩擦等級を有する、方法に関する。
【0072】
本発明は、一態様において、ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、
(1)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと;
(2)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに表面処理を施して、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップであって、ここで、ベースコーティングは、プライムプラズマ層、プライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層、およびカルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含み、表面処理は、
(a)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面をプラズマでプラズマ処理して、その上のプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るサブステップであって、プラズマは、空気、N、O、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、N、O、CO、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物、好ましくは空気、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、CO、N、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物、より好ましくは空気、CO、またはメタンと、空気、CO、N、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物、さらにより好ましくはCO、またはメタンと空気もしくはCOとの混合物から構成されるプラズマガス(すなわち、大気)で発生され、プライムプラズマ層は、約0.5nm〜約40nm(好ましくは約1nm〜約35nm、より好ましくは約2nm〜約30nm、さらにより好ましくは約3nm〜約25nm)の厚さを有する、サブステップと、
(b)その上にプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基を有する反応親水性ポリマーを含む第1の水溶液と接触させて、プライムプラズマ層の上の反応性親水性ポリマーの反応性ポリマー層を含むベースコーティングを形成するサブステップとを含む、ステップと;
(3)ステップ(2)で得られたその上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、ならびに任意選択で(しかし、好ましくは)第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料を含む第2の水溶液中、約60℃〜約140℃の温度で、水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料およびベースコーティングを架橋するために十分長い期間加熱して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを形成するステップとを含み、ここで、完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のヒドロゲルコーティングは、少なくとも約10秒(好ましくは少なくとも約12.5秒、より好ましくは少なくとも約15秒、さらにより好ましくは少なくとも17.5秒)のWBUTおよび約3以下(好ましくは約2.5以下、より好ましくは約2以下、さらにより好ましくは約1.5以下、最も好ましくは約1以下)の摩擦等級を有する、方法を提供する。
【0073】
本発明によれば、前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、いずれかのレンズ製造プロセスによって製造された後にいかなる表面処理も施されていない任意のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。当業者は、前形成シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズの作製の仕方を非常によく知っている。例えば、SiHyコンタクトレンズは、例えば、米国特許第3,408,429号明細書に記載されたとおりの慣用の「スピンキャスティング成形」で、もしくは米国特許第4,347,198号明細書;同第5,508,317号明細書;同第5,583,463号明細書;同第5,789,464号明細書;および同第5,849,810号明細書に記載されたとおりに、静的形態でフルキャスト成形法によって、または特注コンタクトレンズを作製する際に使用されるとおりのシリコーンヒドロゲルボタンの旋盤切削によって製造され得る。キャスト成形では、レンズ配合物は、典型的にはコンタクトレンズを作製するために型中に分注され、型中で硬化される(すなわち、重合および/または架橋される)。シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズの製造のために、キャスト成形もしくはスピンキャスト成形のため、またはコンタクトレンズの旋盤切削に使用されるSiHy棒を作製するためのSiHyレンズ形成組成物(またはSiHyレンズ配合物)は一般に、当業者に周知のとおりの、シリコーン含有ビニルモノマー、シリコーン含有ビニルマクロマー、シリコーン含有プレポリマー、親水性ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、ビニル架橋剤(約700ダルトン以下の分子量を有し、かつ少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物)、フリーラジカル開始剤(光開始剤または熱開始剤)、親水性ビニルマクロマー/プレポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。SiHyコンタクトレンズ配合物はまた、当業者に公知の他の必要な成分、例えば、当業者に公知のとおりの、UV吸収剤(すなわち、UV吸収性ビニルモノマー)、視界着色剤(例えば、染料、顔料、またはそれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙液安定剤、およびそれらの混合物なども含み得る。次いで、得られたSiHyコンタクトレンズは、当業者に公知のとおりの、得られたレンズから未重合成分を除去するための抽出溶媒による抽出、および水和プロセスを施すことができる。さらに、前形成SiHyコンタクトレンズは、着色コンタクトレンズ(すなわち、当業者に周知のとおりのその上に印刷された少なくとも1種の着色パターンを有するSiHyコンタクトレンズ)であり得る。
【0074】
SiHyレンズ配合物において上で検討された成分はすべて、多数のSiHyレンズが、本出願の出願日までに公開された多数の特許および特許出願に記載されていることによって証明されるとおりに当業者に周知である。それらのすべては、本発明における前形成SiHyレンズを得る際に使用され得る。市販のSiHyレンズを作製するためのSiHyレンズ配合物、例えば、lotrafilcon A、lotrafilcon B、balafilcon A、galyfilcon A、senofilcon A、narafilcon A、narafilcon B、comfilcon A、enfilcon A、asmofilcon A、somofilcon A、stenfilcon A、smafilcon A、enfilcon A、およびefrofilcon Aも、前形成SiHyコンタクトレンズを作製する際に使用され得る。
【0075】
コンタクトレンズを作製するためのレンズ型は、当業者に周知であり、例えば、キャスト成形またはスピンキャスティングで用いられる。例えば、(キャスト成形のための)型は一般に、少なくとも2つの型部分(section)(または、部分(portion))または型半分、すなわち、第1の型半分および第2の型半分を備える。第1の型半分は、第1の成形(または光学)面を規定し、第2の型半分は、第2の成形(または光学)面を規定する。第1および第2の型半分は、レンズ形成キャビティが第1の成形面と第2の成形面との間に形成されるように互いを受け止めるように構成される。型半分の成形面は、型のキャビティ形成面であり、レンズ形成材料と直接接触している。
【0076】
コンタクトレンズをキャスト成形するための型部分を製造するための方法は、一般に当業者に周知である。本発明の方法は、型を形成するいずれか特定の方法に限定されない。実際、型を形成するいずれの方法も、本発明で使用され得る。第1および第2の型半分は、様々な技術、例えば、射出成型または旋盤加工によって形成され得る。型半分を形成するための適当な方法の例は、参照によりまた本明細書に組み込まれる、Schadに付与された米国特許第4,444,711号明細書;Boehmらに付与された同第4,460,534号明細書;Morrillに付与された同第5,843,346号明細書;およびBonebergerらに付与された同第5,894,002号明細書に開示されている。
【0077】
事実上、型を作製するための当技術分野で公知のいずれの材料も、コンタクトレンズを作製するための型を製造するために使用され得る。例えば、ポリマー材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(Frankfurt、独国およびSummit、New JerseyのTicona GmbH製、エチレンとノルボルネンとの透明な非晶質コポリマー)などが使用され得る。UV光透過を可能にする他の材料、例えば、石英ガラスおよびサファイアが使用され得る。
【0078】
好ましい実施形態において、再利用可能な型が使用され、SiHyコンタクトレンズを作製するためにシリコーンヒドロゲルレンズを作製する組成物が、化学線の空間的制限下で化学線によって硬化される。好ましい再利用可能な型の例は、米国特許第6,800,255号明細書、同第7,384,590号明細書、および同第7,387,759号明細書(それらの全体が参照により組み込まれる)に開示されるものである。再利用可能な型は、石英、ガラス、サファイア、CaF、環状オレフィンポリマー(例えば、Frankfurt、独国およびSummit、New JerseyのTicona GmbH製Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(エチレンとノルボルネンとの透明な非晶質コポリマー)、Zeon Chemicals LP(Louisville、KY)製Zeonex(登録商標)およびZeonor(登録商標)など)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、DuPont製ポリオキシメチレン(Delrin)、G.E.Plastics製Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド)、PrimoSpire(登録商標)などである。
【0079】
本発明によれば、SiHyレンズ配合物は、任意の公知の方法に従って型により形成されるキャビティ中に導入(分注)され得る。
【0080】
SiHyレンズ配合物が型中に分注された後、それは重合されて、コンタクトレンズを生成する。架橋は、熱または化学線によって、好ましくは型中のレンズ形成組成物を化学線の空間的制限に曝露して、SiHyレンズ配合物中の重合性成分を架橋することによって開始されてもよい。
【0081】
成形物品が型から取り出され得るように型を開けることは、それ自体公知の仕方で行われてもよい。
【0082】
成形コンタクトレンズは、レンズ抽出を施して、未重合重合性成分を除去し得る。抽出溶媒は、当業者に公知の任意の溶媒であり得る。適当な抽出溶媒の例は、上に記載されたものである。
【0083】
前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、当業者に公知の任意の方法に従って乾燥させ、次いで、それをプラズマ(「グロー放電プラズマ」とも称される)に曝露することによってプラズマ処理を施すことができる。プラズマ処理の例は、米国特許第4,143,949号明細書;同第4,312,575号明細書;同第5,464,667号明細書;同第6,881,269号明細書;および同第7,078,074号明細書(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたものである。
【0084】
当業者は、プラズマ(すなわち、グロー放電プラズマ)が、大きな濃度の励起された原子、分子、イオン、およびフリーラジカル種からなり、かつ真空チャンバ内のガスを、典型的には高周波(rf)(またはマイクロ波もしくは他の周波数)で、電場下に置いて発生されることを十分に理解する。励起種は、プラズマ内に置かれた物品の固体表面と相互作用して、材料表面の化学的および物理的変性をもたらす。
【0085】
プラズマ処理およびその使用の総説としては、R.Hartmann“Plasma polymerization:Grundlagen,Technik und Anwendung,Jahrb.Oberflaechentechnik(1993)49,pp.283−296,Battelle−Inst.e.V.Frankfurt/Main Germany;H.Yasuda,“Glow Discharge Polymerization”,Journal of Polymer Science:Macromolecular Reviews,vol.16(1981),pp.199−293;H.Yasuda,“Plasma Polymerizaiton”,Academic Press,Inc.(1985);Frank Jansen,“Plasma Deposition Processes”,in “Plasma Deposited Thin Films”,ed.by T.Mort and F.Jansen,CRC Press Boca Raton(19);O.Auciello et al.(ed.)“Plasma−Surface Interactions and Processing of Materials”publ.by Kluwer Academic Publishers in NATO ASI Series;Series E:Applied Sciences,vol.176(1990),pp.377−399;およびN.Dilsiz and G.Akovali“Plasma Polymerization of Selected Organic Compouds”,Polymer,vol.37(1996)pp.333−341が挙げられる。
【0086】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのプラズマ処理の例証例として、1つ以上の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、対向する電極間の反応器チャンバ内に置かれる。次いで、チャンバは、密封され、真空系により減圧される。系を操作圧力までポンピングするためにかなりの時間が必要とされる。適当な圧力がチャンバ内で達成されると、プロセスガス(例えば、プラズマガス)がチャンバ内部に導入され、電極に電圧が印加される。その結果生じたプラズマ雲が、薄いポリマー(またはポリマーコーティング)の層をレンズに適用し、および/または使用されるプロセスガスに依存してレンズ表面の一番上の層の化学組成を変化させ得る。適切な時間後、電極は、電気を切られ、反応器チャンバは、レンズを取り出してもよいように大気圧に戻される。
【0087】
プラズマ処理システムは、当業者に公知であり、特許および論説に開示されている。例えば、Peng HoおよびYasudaは、彼らの論文(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、“Ultrathin Coating Of Plasma Polymer Of Methane Applied On The Surface Of Silicone Contact Lenses,”Journal of Biomedical Materials Research,Vol.22,919−937(1988)に、対向するアルミニウム電極が配置され、回転可能なアルミニウムプレートが電極間に置かれ、システム内の誘導モータにより駆動されるベル形状真空チャンバを含むバッチシステム(または回転プラズマシステム)について記載している。MatsuzawaおよびWintertonは、米国特許第6,881,269号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に線形プラズマシステムを開示している。
【0088】
本発明によれば、乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、空気、N,O,CO,またはC〜C炭化水素と、空気、N,O,CO、およびそれらの組み合わせから選択される二次ガスとの混合物、好ましくは空気、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、CO、N、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物、(より好ましくはCO、またはメタンと、空気、CO、N、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物、さらにより好ましくはCO、またはメタンとCOとの混合物、)から構成されるプラズマガス(すなわち、大気)中で発生されるプラズマで処理される。
【0089】
本発明によれば、プライムプラズマ層の厚さは、約0.5nm〜約40nm、好ましくは約1nm〜約35nm、より好ましくは約2nm〜約30nm、さらにより好ましくは約3nm〜約25nmである。上に列挙された厚さを有するプラズマコーティングは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの酸素透過度およびイオン透過率に最小限に悪影響を与え得る。プラズマコーティング(層)の厚さは、任意の公知の方法によって決定され得る。例えば、それは、前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと一緒にプラズマ処理されるシリコンウェハ上で偏光解析法によって測定され得る。当業者は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に特定のプラズマコーティング(層)の所望の厚さを得るためのプラズマ状態(特にプラズマ処理時間)の制御の仕方を知っている。
【0090】
プラズマ処理で使用されるプラズマが、C〜C炭化水素と、空気、O、CO、N、およびそれらの組み合わせから選択される二次ガスとの混合物から構成される大気(すなわち、プラズマガス)中で発生される場合、プラズマガスの組成は、混合物中のそれぞれ個別のガスの流量(sccm)により制御され得る。好ましくは、二次ガス(空気、O、CO、N、またはそれらの組み合わせ)に対するC〜C炭化水素の流量比は、約1:4〜約4:1である。
【0091】
本発明によれば、プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと反応性親水性ポリマーの第1の水溶液との接触は、それを水溶液中にディッピングすることによって、またはそれを水溶液と一緒に噴霧することによって行われ得る。1つの接触プロセスは、第1の水溶液の浴中にプラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを単に一時期ディッピングすること、または代わりにプラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを水溶液の一連の浴中に各浴について一定のより短い期間逐次的にディッピングすることを含む。別の接触プロセスは、第1の水溶液を単に噴霧することを含む。しかしながら、いくつかの代替案は、当業者によって設計され得る噴霧−およびディッピング工程の様々な組み合わせを含む。接触時間は、約5秒〜約10時間であり得る。当業者は、その上にプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上で特定の反応性ポリマー層の所望の厚さを得るための接触時間の制御の仕方を知っている。
【0092】
好ましい実施形態において、プラズマ処理システムから取り出された後、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、プラズマ処理サブステップ直後、および水、有機溶媒、水と1種以上の有機溶媒との混合物、2種以上の有機溶媒の混合物、またはいずれのポリマーも含まない任意の水溶液もしくは有機系溶液と接触前に、カルボキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される複数の反応性官能基を有する反応性親水性ポリマーを含む第1の水溶液と接触状態で、約40分以下(好ましくは約30分以下、より好ましくは約20分以下)の期間内で置かれる。プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上のプライムプラズマ層に反応性ラジカルがあってもよいと考えられる。反応性ポリマーが、プラズマ処理直後40分以内でプラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと接触するための第1の水溶液中に存在する場合、それらのフリーラジカルは、反応性ポリマーと反応して、プライムプラズマ層上に反応性ポリマーの層を共有結合させるための十分な係留部位を与え、それにより、ステップ(3)で形成されるヒドロゲルコーティングの耐久性を増強させ得る。好ましくは、第1の水溶液は、少なくとも0.001重量%(好ましくは約0.002重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.005重量%〜約15重量%、さらにより好ましくは約0.01重量%〜約10重量%)の上で定義されたとおりの反応性親水性ポリマーを含む。好ましくは、反応性親水性ポリマーは、カルボキシル基を含む。
【0093】
プライムプラズマ層および反応ポリマー層を含む反応性ベースコーティングは、有利にはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に潤滑性非シリコーンヒドロゲルコーティングを形成するために使用され得る。このような潤滑性非シリコーンヒドロゲルコーティングは、ベースコーティング中のカルボキシル基の最小限濃度のために、正に荷電した抗菌剤の堆積および蓄積への低い感受性を有し得る。さらに、下にあるプライムプラズマ層は、コンタクトレンズの取り扱いおよび装着中に損傷されない場合、それが潤滑性でないにしても、その生体適合性を確保するために十分なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの適度な親水性(または湿潤性)を与え得る。さらに、この表面処理は、例えば、1日使い捨てレンズについて最大で2日間まで長持ちする、1週に1回、2週に1回または月に1回の使い捨てレンズについて7〜35日間長持ちする、所望の耐久性を有する潤滑性コーティングの構築のためのプラットフォームを与え得る。
【0094】
別の好ましい実施形態において、反応性親水性ポリマーは、カルボキシル基を含み、かつ少なくとも1000ダルトン(好ましくは2000〜5,000,000ダルトン、より好ましくは5000〜2,000,000ダルトン、さらにより好ましくは10,000〜1,000,000ダルトン)の重量平均分子量を有するポリアニオン性ポリマーであり、第1の水溶液は、好ましくは約1.0〜約3.0(より好ましくは約1.5〜約2.5、さらにより好ましくは約1.8〜約2.0)のpHを有する。ポリアニオン性ポリマーは、好ましくはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチルアクリル酸、ポリ(アクリル酸−co−メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸−co−エタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸−co−エタクリル酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリアニオン性ポリマー、より好ましくはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸−co−メタクリル酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリアニオン性ポリマーである。プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上のプライムプラズマ層中にシラノール基(Si−OH)を含むいくつかの反応性官能基があってもよいと考えられる。Schmidtは、カップリング反応が、酸触媒エステル縮合機構に従って低いpH(例えば、pH2.0)でカルボキシル基とフリーの未反応シラノール基との間で起こり得ることを報告した(S.W.Schmidt,et al.,Langmuir2010,26(19),15333−15338、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0095】
別の好ましい実施形態において、反応親水性ポリマーは、第一級および/または第二級アミノ基を含み、かつ少なくとも1000ダルトン(好ましくは2000〜5,000,000ダルトン、より好ましくは5000〜2,000,000ダルトン、さらにより好ましくは10,000〜1,000,000ダルトン)の重量平均分子量を有し、第1の水溶液は、好ましくは約9.5〜約11.0(より好ましくは約10.0〜約11.0)のpHを有する。ポリカチオン性ポリマーは、好ましくはポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0096】
別の好ましい実施形態において、前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、CO、またはCOとC〜C炭化水素(好ましくはメタン)との混合物から構成されるプラズマガス(すなわち、大気)で発生されるプラズマでプラズマ処理され、続いて、プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、ならびに第一級基、第二級アミノ基、カルボキシル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基(好ましくはカルボキシル基)を含む反応性親水性ポリマーの第1の水溶液と接触させ、ここで、親水性ポリマーは、少なくとも1000ダルトン(好ましくは2000〜5,000,000ダルトン、より好ましくは5000〜2,000,000ダルトン、さらにより好ましくは10,000〜1,000,000ダルトン)の重量平均分子量を有し、第1の水溶液は、好ましくは約8.0未満(より好ましくは約2.0〜約8.0、さらにより好ましくは約6.0〜約8.0)のpHを有する。この好ましい実施形態において、反応性親水性ポリマーは、好ましくは化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせである。好ましくは、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン由来する約20重量%〜約95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせ(好ましくはカルボキシル基)からなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約5重量%〜約80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、親水性部分または第2のポリマー鎖は、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)第1のポリマー鎖または第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基の部分である、アゼチジニウム基を含む。化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンの組成は、スキームI
【化11】

[式中、Xは、−S−、−OC(=O)−、または−NR’−(ここで、R’は、水素またはC〜C20非置換もしくは置換アルキル基であり、は、有機ラジカルを表す)である]に示される架橋反応に従ってこのようなポリマーのために使用される反応物質混合物の組成(反応物質の全重量に基づく)によって決定される。例えば、反応物質混合物が、反応物質の全重量に基づいて約75重量%のポリアミドアミン−エピクロロヒドリンおよび約25重量%の少なくとも1種の親水性増強剤を含む場合、得られる化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンに由来する約75重量%の第1のポリマー鎖および前記少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約25重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖を含む。化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンのアゼチジニウム基は、それらのアゼチジニウム基(ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンの)であり、これらは、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンを調製するための架橋反応に参加しない。
【0097】
いずれの適当な親水性増強剤も、それらが少なくとも1個のアミノ基、少なくとも1個のカルボキシル基、および/または少なくとも1個のチオール基を有する限り、本発明で使用され得る。
【0098】
親水性増強剤の好ましいクラスには、限定することなく、第一級アミノ−、第二級アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有単糖類(例えば、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、1−チオグリセロール、5−ケト−D−グルコン酸、ガラクトサミン、グルコサミン、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルコサミン酸、マンノサミン、サッカリン酸1,4−ラクトン、サッカリド酸、ケトデオキシノヌロソン酸、N−メチル−D−グルカミン、1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース、1−アミノ−1−デオキシソルビトール、1−メチルアミノ−1−デオキシソルビトール、N−アミノエチルグルカミド);第一級アミノ−、第二級アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有二糖類(例えば、コンドロイチン二糖類ナトリウム塩、ジ(β−D−キシロピラノシル)アミン、ジガラクツロン酸、ヘパリン二糖類、ヒアルロン酸二糖類、ラクトビオン酸);および第一級アミノ−、第二級アミノ−、カルボキシル−またはチオール−含有オリゴ糖類(例えば、カルボキシメチル−β−シクロデキストリンナトリウム塩、トリガラクツロン酸);ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0099】
親水性増強剤の別の好ましいクラスは、1個以上の(第一級または第二級)アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーである。より好ましくは、親水性増強剤としての親水性ポリマーのアミノ(上で定義されたとおりのR’を有する−NHR’)、カルボキシル(−COOH)および/またはチオール(−SH)基の含有量は、親水性ポリマーの全重量に基づいて、約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、さらにより好ましくは約10重量%未満である。
【0100】
親水性増強剤としての親水性ポリマーの1つの好ましいクラスは、(第一級または第二級)アミノ−またはカルボキシル含有多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース(繰り返し単位−[C10−m(CHCOH)]−(ここで、mは1〜3である)の組成に基づいて推定される、約40%以下のカルボキシル含量を有する)、カルボキシエチルセルロース(繰り返し単位−[C10−m(CCOH)m]−(ここで、mは1〜3である)の組成に基づいて推定される、約36%以下のカルボキシル含量を有する)、カルボキシプロピルセルロース(繰り返し単位−[C10−m(CCOH)]−(ここで、mは1〜3である)の組成に基づいて推定される、約32%以下のカルボキシル含量を有する)、ヒアルロン酸(繰り返し単位−(C1320NCOH)−の組成に基づいて推定される、約11%のカルボキシル含量を有する)、コンドロイチン硫酸(繰り返し単位−(C121813NSCOH)−の組成に基づいて推定される、約9.8%のカルボキシル含量を有する)、またはそれらの組み合わせなどである。
【0101】
親水性増強剤としての親水性ポリマーの別の好ましいクラスには、限定することなく、モノ−アミノ(第一級または第二級アミノ)、カルボキシルまたはチオール基を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG−NH、PEG−SH、PEG−COOH);HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ(第一級または第二級)、カルボキシルまたはチオール基を有するマルチアームPEG;1個以上のアミノ(第一級または第二級)、カルボキシルまたはチオール基を有するPEGデンドリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ(第一級または第二級)またはジカルボキシル末端ホモ−またはコポリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのモノアミノ(第一級または第二級)またはモノカルボキシル末端ホモ−またはコポリマー;(1)約60重量%以下、好ましくは約0.1重量%〜約30重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、さらにより好ましくは約1重量%〜約15重量%の1種以上の反応性ビニルモノマーおよび(2)少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマー;ならびにそれらの組み合わせを含む組成物の重合生成物であるコポリマーが含まれる。反応ビニルモノマーおよび非反応性親水性ビニルモノマーは、前に記載されたものである。
【0102】
より好ましくは、親水性増強剤としての親水性ポリマーは、PEG−NH;PEG−SH;PEG−COOH;HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するPEGデンドリマー;アクリルアミド(AAm)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、最大で400ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)クリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、およびそれらの組み合わせ;(1)約0.1重量%〜約30重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、さらにより好ましくは約1重量%〜約15重量%のアクリル酸、C〜Cアルキルアクリル酸、アリルアミドおよび/またはアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート反応性ビニルモノマーならびに(2)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、最大で400ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマーである。
【0103】
最も好ましくは、親水性増強剤としての親水性増強剤は、PEG−NH;PEG−SH;PEG−COOH;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル末端ポリビニルピロリドン;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(DMA);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(DMA−co−NVP);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(NVP−co−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(ビニルアルコール);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン]ホモポリマーまたはコポリマー;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(NVP−co−ビニルアルコール);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル−末端ポリ(DMA−co−ビニルアルコール);約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約15重量%の(メタ)アクリル酸を有するポリ[(メタ)アクリル酸−co−アクリルアミド];約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約15重量%の(メタ)アクリル酸を有するポリ(メタ)アクリル酸−co−NVP);(1)(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(2)約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約15重量%のアクリル酸、C〜Cアルキルアクリル酸、アリルアミドおよび/またはアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート;ならびにそれらの組み合わせを含む組成物の重合生成物であるコポリマーである。
【0104】
官能基を有するPEGおよび官能基を有するマルチアームPEGは、様々な商業的供給業者、例えば、Polyscience、およびShearwater Polymers,inc.,などから得ることができる。
【0105】
1種以上の非反応性親水性ビニルモノマー、またはホスホリリルコリン含有ビニルモノマーのモノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−またはジカルボキシル末端ホモまたはコポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,218,508号明細書に記載された手順に従って調製され得る。例えば、非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ−またはジカルボキシル末端ホモまたはコポリマーを調製するために、非反応性ビニルモノマー、アミノまたはカルボキシル基(例えば、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、または他のヒドロキシメルカプタン、アミノメルカプタン、もしくはカルボキシル含有メルカプタン)を有する連鎖移動剤、および任意選択で他のビニルモノマーが、フリーラジカル開始剤の存在下で、反応性ビニルモノマー(アミノまたはカルボキシル基を有する)と(熱によってまたは化学線によって)共重合される。一般に、連鎖移動剤と反応性ビニルモノマー以外のビニルモノマーのすべてのものとのモル比は、約1:5〜約1:100であるが、一方で連鎖移動剤と反応性ビニルモノマーとのモル比は、1:1である。このような調製において、アミノまたはカルボキシル基を有する連鎖移動剤は、得られる親水性ポリマーの分子量を制御し、得られる親水性ポリマーの末端基を形成して、1個の末端アミノまたはカルボキシル基を有する得られる親水性ポリマーを得るために使用されるが、一方で反応性ビニルモノマーは、得られる親水性ポリマーに他の末端カルボキシルまたはアミノ基を与える。同様に、非反応性親水性ビニルモノマーのモノアミノ−またはモノカルボキシル末端ホモまたはコポリマーを調製するために、非反応性ビニルモノマー、アミノまたはカルボキシル基を有する連鎖移動剤(例えば、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、または他のヒドロキシメルカプタン、アミノメルカプタン、もしくはカルボキシル含有メルカプタン)および任意選択で他のビニルモノマーが、いずれの反応性ビニルモノマーも非存在下で(熱または化学線によって)共重合される。
【0106】
本明細書で使用される場合、非反応性親水性ビニルモノマーのコポリマーは、非反応性親水性ビニルモノマーと1種以上の追加のビニルモノマーとの重合生成物を意味する。非反応性親水性ビニルモノマーと反応ビニルモノマー(例えば、カルボキシル含有ビニルモノマー、第一級アミノ基含有ビニルモノマーまたは第二級アミノ基含有ビニルモノマー)とを含むコポリマーは、任意の周知のラジカル重合法によって調製されるか、または商業的供給業者から得ることができる。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとカルボキシル含有ビニルモノマー(またはアミノ含有ビニルモノマー)とを含むコポリマーは、NOF Corporationから得ることができる(例えば、LIPIDURE(登録商標)−Aおよび−AF)。
【0107】
少なくとも1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有する親水性ポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは約500〜約1,000,000、より好ましくは約1,000〜約500,000、さらにより好ましくは約5,000〜約250,000ダルトンである。
【0108】
本発明によれば、親水性強化剤とポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンコポリマー(またはポリアミドアミン−エピクロロヒドリン)との間の反応は、約40℃〜約80℃で化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンを形成するために十分な期間(約0.3時間〜約24時間、好ましくは約1時間〜約12時間、さらにより好ましくは約2時間〜約8時間)行われる。
【0109】
本発明によれば、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたはポリアミドアミン−エピクロロヒドリンに対する親水性増強剤の濃度は、得られる親水性ポリマー材料を水不溶性(すなわち、室温で水100ml当たり0.005g未満の溶解度)にさせないように、かつポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたはポリアミドアミン−エピクロロヒドリンのアゼチジニウム基の約99%超、好ましくは約98%超、より好ましくは約97%超、さらにより好ましくは約96%超を消費しないように選択されなければならない。
【0110】
好ましい実施形態において、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、アゼチジニウム基;化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンに由来する約20重量%〜約95重量%、好ましくは約35重量%〜約90重量%、より好ましくは約50重量%〜約85重量%の第1のポリマー鎖;ならびに第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約5重量%〜約80重量%、好ましくは約10重量%〜約65重量%、さらにより好ましくは約15重量%〜約50重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖を含む。
【0111】
本発明によれば、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、アゼチジニウム基、および任意選択で(しかし、好ましくは)アミノまたはカルボキシル基を有する水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料を含む、第2の水溶液中、約60℃〜約140℃の温度で水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料およびベースコーティングを架橋するために十分長い期間加熱されて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを形成し、ここで、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のヒドロゲルコーティングは、2以下の摩擦等級を有する。第1の水溶液および第2の水溶液は、互いに同一であるか、または異なり得ることが理解されるべきである。ステップ(3)で使用される水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料は、好ましくはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせであり、ここで、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する約20重量%〜約95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約5重量%〜約80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、親水性部分または第2のポリマー鎖は、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)第1のポリマー鎖または第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基の部分である、アゼチジニウム基、を含む。水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料は、ステップ(2)(b)で上記されるとおりの、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンの実施形態および好ましい実施形態のすべてを有し得る。
【0112】
好ましくは、加熱するステップは、密封レンズパッケージ中パッケージング溶液(すなわち、緩衝水溶液)に浸漬された、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、約115℃〜約125℃の温度でおよそ20〜90分間オートクレーブ処理することによって行われる。本発明のこの実施形態によれば、パッケージング溶液は、オートクレーブ後に眼科的に安全である緩衝水溶液である。
【0113】
レンズパッケージ(または容器)は、ソフトコンタクトレンズをオートクレーブ処理し、保存するために当業者に周知である。いずれのレンズパッケージも本発明で使用され得る。好ましくは、レンズパッケージは、ベースおよびカバーを含むブリスターパッケージであり、ここで、カバーはベースに取り外し可能に密封されており、ベースは、滅菌パッケージング溶液およびコンタクトレンズを受けるためのキャビティを含む。
【0114】
レンズは、個別のパッケージにパッケージングされ、密封され、使用者への分配前に(例えば、加圧下約120℃以上で少なくとも30分間のオートクレーブによって)滅菌される。当業者は、レンズパッケージを密封および滅菌する仕方を十分に理解する。
【0115】
本発明によれば、パッケージング溶液は、少なくとも1種の緩衝剤および当業者に公知の1種以上の他の成分を含有する。他の成分の例には、限定することなく、張性剤、界面活性剤、抗細菌剤、防腐剤、および滑沢剤(例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)が含まれる。
【0116】
パッケージング溶液は、パッケージング溶液のpHを所望の範囲、例えば、好ましくは約6.5〜約7.5の生理学的に許容される範囲に維持するために十分な量で緩衝剤を含有する。いずれの公知の、生理学的に適合性の緩衝剤も使用され得る。本発明によるコンタクトレンズケア組成物の構成要素としての適当な緩衝剤は、当業者に公知である。例は、ホウ酸、ホウ酸塩、例えば、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えば、クエン酸カリウム、炭酸水素塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−Tris(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオール、トリエテノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、それらの塩、リン酸緩衝剤、例えば、NaHPO、NaHPO、およびKHPO、またはそれらの混合物である。好ましくは、緩衝剤は、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、またはそれらの組み合わせである。パッケージング溶液中の各緩衝剤の量は、好ましくは0.001重量%〜2重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%;最も好ましくは約0.05重量%〜約0.30重量%である。
【0117】
パッケージング溶液は、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜約350mOsmの張性を有する。パッケージング溶液の張性は、張性に影響を与える有機または無機物質を添加することによって調整され得る。適当な眼に許容される張性剤には、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0118】
本発明のパッケージング溶液は、25℃で、約1センチポイズ〜約5センチポイズの粘度を有する。
【0119】
好ましい実施形態において、パッケージング溶液は、好ましくはアゼチジニウム基を有する約0.01重量%〜約2重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.5重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%〜約1重量%、最も好ましくは約0.2重量%〜約0.5重量%の水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料を含む。
【0120】
別の態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル基材;シリコーンヒドロゲル基材の表面上のベースコーティング;ベースコーティングの上に共有結合された非シリコーンヒドロゲルコーティングを含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、ベースコーティングは、プライムプラズマ層およびプライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層を含み、プラズマプライム層は、約0.5nm〜約40nm(好ましくは約1nm〜約35nm、より好ましくは約2nm〜約30nm、さらにより好ましくは約3nm〜約25nm)の厚さを有し、反応性ポリマーは、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせ(好ましくはカルボキシル基)からなる群から選択される反応性官能基を含み、非シリコーンヒドロゲルコーティングは、複数の反応性官能基を介して反応性ポリマー層の上に共有結合されており、ここで、完全水和状態のヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約40barrer(好ましくは少なくとも約60barrer、より好ましくは少なくとも約80barrer、さらにより好ましくは少なくとも約100barrer)の酸素透過度、少なくとも約10秒(好ましくは少なくとも約12.5秒、より好ましくは少なくとも約15秒、さらにより好ましくは少なくとも約17.5秒)のWBUT、約3以下(好ましくは約2.5以下、より好ましくは約2以下、さらにより好ましくは約1.5以下、最も好ましくは約1以下)の摩擦等級、および約80度以下(好ましくは約70度以下、より好ましくは約60度以下、さらにより好ましくは約50度以下)の水接触角を有する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【0121】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、完全水和状態で、約1.5MPa以下(好ましくは約0.1MPa〜約1.2MPa以下、より好ましくは約0.15MPa〜約1.1以下、より好ましくは約0.2MPa〜約1.0MPa)の弾性モジュラス;完全水和されているとき、約15重量%〜約70重量%、好ましくは約20重量%〜約65重量%、より好ましくは約25重量%〜約60重量%、さらにより好ましくは約30重量%〜約55重量%の水含量;指擦り試験の少なくとも1サイクル(好ましくは少なくとも7サイクル、より好ましくは少なくとも14サイクル、さらにより好ましくは少なくとも30サイクル)にもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性をさらに有する。
【0122】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの水含量は、米国特許第5,849,811号明細書に記載されたBulk Techniqueに従って測定され得る。
【0123】
シリコーンヒドロゲル基材は、前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。上に記載された前形成ヒドロゲルコンタクトレンズの実施形態のすべては、本発明のこの態様に組み込まれる。
【0124】
本発明の様々な実施形態を、具体的な用語、デバイス、および方法を使用して説明してきたが、このような説明は、単に例証的な目的のためである。使用された語は、限定するものというよりもむしろ説明の語である。変更および変形が、以下の特許請求の範囲で示される本発明の精神または範囲を逸脱することなく当業者によってなされてもよいことが理解されるべきである。さらに、様々な実施形態の態様が、以下に例証されるとおりに、全体または部分のいずれかで交換されてもよいか、または任意の仕方で組み合わされおよび/もしくは一緒に使用され得ることが理解されるべきである。
【0125】
1.ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、
(1)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと;
(2)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに表面処理を施して、その上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップであって、ここで、ベースコーティングは、プライムプラズマ層、プライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層、およびカルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含み、表面処理は、
(a)乾燥状態の前形成シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面をプラズマでプラズマ処理して、その上のプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るサブステップであって、プラズマは、空気、N、O、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、N、O、CO、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成されるプラズマガス(すなわち、大気)で発生され、プライムプラズマ層は、約0.5nm〜約40nmの厚さを有する、サブステップと、
(b)その上にプライムプラズマ層を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基を有する反応親水性ポリマーを含む第1の水溶液と接触させて、プライムプラズマ層の上の反応性親水性ポリマーの反応性ポリマー層を含むベースコーティングを形成するサブステップとを含む、ステップと;
(3)ステップ(2)で得られたその上にベースコーティングを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基を有する水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料を含む第2の水溶液中、約60℃〜約140℃の温度で、水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料およびベースコーティングを架橋するために十分長い期間加熱して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを形成するステップとを含み、ここで、完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のヒドロゲルコーティングは、少なくとも10秒のWBUTおよび約3以下の摩擦等級を有する、方法。
【0126】
2.プラズマガスが、空気から構成される、発明1に記載の方法。
【0127】
3.プラズマガスが、Nから構成される、発明1に記載の方法。
【0128】
4.プラズマガスが、Oから構成される、発明1に記載の方法。
【0129】
5.プラズマガスが、COから構成される、発明1に記載の方法。
【0130】
6.プラズマガスが、C〜C炭化水素と、空気、N、O、CO、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成される、発明1に記載の方法。
【0131】
7.プラズマガスが、空気、O、N、CO、またはC〜C炭化水素と、空気、O、CO、Nおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成される、発明1に記載の方法。
【0132】
8.プラズマガスが、空気、CO、またはメタンと、空気、O、CO、Nおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される二次ガスとの混合物から構成される、発明1に記載の方法。
【0133】
9.プラズマガスが、CO、メタンとCOとの混合物、またはメタンと空気との混合物(好ましくは、CO、またはメタンとCOとの混合物)から構成される、発明1に記載の方法。
【0134】
10.プライムプラズマ層が、約1nm〜約35nmの厚さを有する、発明1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【0135】
11.プライムプラズマ層が、約2nm〜約30nmの厚さを有する、発明1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【0136】
12.プライムプラズマ層が、約3nm〜約25nmの厚さを有する、発明1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【0137】
13.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約12.5秒のWBUTを有する、発明1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【0138】
14.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約15秒のWBUTを有する、発明1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【0139】
15.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約17.5秒のWBUTを有する、発明1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【0140】
16.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約2.5以下の摩擦等級を有する、発明1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0141】
17.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約2以下の摩擦等級を有する、発明1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0142】
18.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約1.5以下の摩擦等級を有する、発明1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
19.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約1以下の摩擦等級を有する、発明1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0144】
20.水溶性および熱架橋性親水性ポリマー材料が、第一級基、第二級アミノ基、カルボキシル基、またはそれらの組み合わせをさらに含む、発明1〜19のいずれか一つに記載の方法。
【0145】
21.プラズマ処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、プラズマ処理サブステップ直後、かつ水、有機溶媒、水と1種以上の有機溶媒との混合物、2種以上の有機溶媒の混合物、またはいずれの反応性ポリマーも含まない任意の水溶液もしくは有機系溶液と接触前に、約40分以下(好ましくは、約30分以下、より好ましくは約20分以下)の期間内で第1の水溶液と接触状態に置かれる、発明1〜20のいずれか一つに記載の方法。
【0146】
22.第1の水溶液が、好ましくは約1.0〜約3.0のpHを有し、反応性親水性ポリマーが、カルボキシル基を含み、および少なくとも1000ダルトンの重量平均分子量を有するポリアニオン性ポリマーである、発明1〜21のいずれか一つに記載の方法。
【0147】
23.第1の水溶液が、好ましくは約1.5〜約2.5のpHを有する、発明22に記載の方法。
【0148】
24.第1の水溶液が、好ましくは約1.8〜約2.0のpHを有する、発明22に記載の方法。
【0149】
25.反応性親水性ポリマーが、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明22〜24のいずれか一つに記載の方法。
【0150】
26.反応性親水性ポリマーが、5000〜2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明22〜24のいずれか一つに記載の方法。
【0151】
27.反応性親水性ポリマーが、10,000〜1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明22〜24のいずれか一つに記載の方法。
【0152】
28.ポリアニオン性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチルアクリル酸、ポリ(アクリル酸−co−メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸−co−エタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸−co−エタクリル酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、発明22〜27のいずれか一つに記載の方法。
【0153】
29.ポリアニオン性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸−co−メタクリル酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、発明22〜27のいずれか一つに記載の方法。
【0154】
30.第1の水溶液が、約9.5〜約11.0のpHを有し、反応性親水性ポリマーが、第一級および/または第二級アミノ基を含み、および少なくとも1000ダルトンの重量平均分子量を有するポリカチオン性ポリマーである、発明1〜21のいずれか一つに記載の方法。
【0155】
31.第1の水溶液が、約10.0〜約11.0のpHを有する、発明30に記載の方法。
【0156】
32.反応性親水性ポリマーが、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明30または31に記載の方法。
【0157】
33.反応性親水性ポリマーが、5000〜2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明30または31に記載の方法。
【0158】
34.反応性親水性ポリマーが、10,000〜1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明30または31に記載の方法。
【0159】
35.ポリカチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、発明30〜34のいずれか一つに記載の方法。
【0160】
36.反応性親水性ポリマーが、アゼチジニウム基、ならびに第一級基、第二級アミノ基、カルボキシル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含み、かつ反応性親水ポリマーが、少なくとも1000ダルトンの重量平均分子量を有し、第1の水溶液が、好ましくは約8.0未満のpHを有する、発明1〜21のいずれか一つに記載の方法。
【0161】
37.反応性親水性ポリマーが、アゼチジニウム基およびカルボキシル基をさらに含む、発明36に記載の方法。
【0162】
38.反応性親水性ポリマーが、2000〜5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明36または37に記載の方法。
【0163】
39.反応性親水性ポリマーが、5000〜2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明36または37に記載の方法。
【0164】
40.反応性親水性ポリマーが、10,000〜1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明36または37に記載の方法。
【0165】
41.第1の水溶液が、好ましくは約2.0〜約8.0のpHを有する、発明36〜40のいずれか一つに記載の方法。
【0166】
42.第1の水溶液が、好ましくは約6.0〜約8.0のpHを有する、発明36〜40のいずれか一つに記載の方法。
【0167】
43.反応性親水性ポリマーが、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせであり、ここで、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する約20重量%〜約95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約5重量%〜約80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、親水性部分または第2のポリマー鎖は、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)第1のポリマー鎖の部分または第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基である、アゼチジニウム基、を含む、発明36〜42のいずれか一つに記載の方法。
【0168】
44.水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料が、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリン、化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、またはそれらの組み合わせであり、ここで、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する約20重量%〜約95重量%の第1のポリマー鎖、(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤に由来する約5重量%〜約80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖(ここで、親水性部分または第2のポリマー鎖は、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して第1のポリマー鎖に共有結合されている)、ならびに(iii)第1のポリマー鎖の部分または第1のポリマー鎖に共有結合したペンダントもしくは末端基である、アゼチジニウム基、を含む、発明1〜43のいずれか一つに記載の方法。
【0169】
45.水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料が、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンまたは化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンであり、ここで、化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンおよび化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、互いに独立して、
(i)ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの、約20重量%〜約95重量%の第1のポリマー鎖;
(ii)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤の、約5重量%〜約80重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖;ならびに
(iii)第1のポリマー鎖の部分または第1のポリマー鎖に共有結合したペンダント基もしくは末端基である、正に荷電したアゼチジニウム基
を含み、ここで、親水性部分または第2のポリマー鎖は、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンまたはポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンの1個のアゼチジニウム基と、親水性増強剤の1個のアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して第1のポリマー鎖に供給結合されている、発明1〜43のいずれか一つに記載の方法。
【0170】
46.化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンおよび化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、互いに独立して、約35重量%〜約90重量%の第1のポリマー鎖および約10重量%〜約65重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖を含む、発明45に記載の方法。
【0171】
47.化学変性ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンおよび化学変性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、互いに独立して、約50重量%〜約85重量%の第1のポリマー鎖および約15重量%〜約50重量%の親水性部分または第2のポリマー鎖を含む、発明45に記載の方法。
【0172】
48.親水性増強剤が、1個以上のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーであり、親水性増強剤としての親水性ポリマー中のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基の含量は、親水性ポリマーの全重量に基づいて約40重量%未満である、発明45〜47のいずれか一つに記載の方法。
【0173】
49.親水性増強剤が、1個以上のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーであり、親水性増強剤としての親水性ポリマー中のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基の含量は、親水性ポリマーの全重量に基づいて約30重量%未満である、発明45〜47のいずれか一つに記載の方法。
【0174】
50.親水性増強剤が、1個以上のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーであり、親水性増強剤としての親水性ポリマー中のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基の含量は、親水性ポリマーの全重量に基づいて約20重量%未満である、発明45〜47のいずれか一つに記載の方法。
【0175】
51.親水性増強剤が、1個以上のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーであり、親水性増強剤としての親水性ポリマー中のアミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基の含量は、親水性ポリマーの全重量に基づいて約10重量%未満である、発明45〜47のいずれか一つに記載の方法。
【0176】
52.親水性増強剤が、PEG−NH;PEG−SH;PEG−COOH;HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するマルチアームPEG;1個以上のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するPEGデンドリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ−、ジカルボキシル−、モノアミノ−、またはモノカルボキシル末端ホモ−またはコポリマー;またはそれらの組み合わせであり、ここで、PEGは、ポリエチレングリコールセグメントであり、非反応性ビニルモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル−アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル−メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、グリセロールメタクリレート、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー、最大で1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、発明45〜51のいずれか一つに記載の方法。
【0177】
53.親水性増強剤が、(1)少なくとも1種の反応性ビニルモノマーと(2)少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマーとのコポリマーであり、ここで、反応性ビニルモノマーは、約60重量%以下の量でコポリマー中に存在し、反応性ビニルモノマーは、アミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、C〜Cアルキルアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリルアミド、C〜Cアルキルアミノ−C〜Cアルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、C〜Cアルキルアクリル酸、N,N−2−アクリルアミドグリコール酸、ベータ−メチル−アクリル酸、アルファ−フェニルアクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、非反応性ビニルモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル−アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル−メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、グリセロールメタクリレート、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー、最大で1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC〜C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、発明45〜51のいずれか一つに記載の方法。
【0178】
54.反応性ビニルモノマーが、約0.1重量%〜約30重量%の量でコポリマー中に存在する、発明53に記載の方法。
【0179】
55.反応性ビニルモノマーが、約0.5重量%〜約20重量%の量でコポリマー中に存在する、発明53に記載の方法。
【0180】
56.反応性ビニルモノマーが、約1重量%〜約15重量%の量でコポリマー中に存在する、発明53に記載の方法。
【0181】
57.反応性ビニルモノマーが、アクリル酸である、発明54〜56のいずれか一つに記載の方法。
【0182】
58.反応性ビニルモノマーが、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルメタクリレート、C〜Cアルキルアミノエチルアクリレート、C〜Cアルキルアミノエチルメタクリレート、C〜Cアルキルアミノプロピルアクリレート、C〜Cアルキルアミノプロピルメタクリレート、アミノエチルアクリルアミド、アミノエチルメタクリルアミド、アミノプロピルアクリルアミド、アミノプロピルメタクリルアミド、C〜Cアルキルアミノエチルアクリルアミド、C〜Cアルキルアミノエチルメタクリルアミド、C〜Cアルキルアミノプロピルアクリルアミド、C〜Cアルキルアミノプロピルメタクリルアミド、またはそれらの組み合わせである、発明54〜56のいずれか一つに記載の方法。
【0183】
59.非反応性ビニルモノマーが、アクリルアミドである、発明54〜58のいずれか一つに記載の方法。
【0184】
60.非反応性ビニルモノマーが、ホスホリルコリン含有ビニルモノマーである、発明54〜58のいずれか一つに記載の方法。
【0185】
61.非反応性ビニルモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組み合わせである、発明54〜58のいずれか一つに記載の方法。
【0186】
62.親水性増強剤が、アミノ−またはカルボキシル含有多糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、およびそれらの組み合わせである、発明45〜51のいずれか一つに記載の方法。
【0187】
63.親水性増強剤の重量平均分子量Mwが、約500〜約1,000,000ダルトンである、発明45〜62のいずれか一つに記載の方法。
【0188】
64.親水性増強剤の重量平均分子量Mwが、約1,000〜約500,000ダルトンである、発明45〜62のいずれか一つに記載の方法。
【0189】
65.親水性増強剤の重量平均分子量Mwが、約5,000〜約250,000ダルトンである、発明45〜62のいずれか一つに記載の方法。
【0190】
66.親水性増強剤が、アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有単糖類;アミノ−、カルボキシル−またはチオール含有二糖類;およびアミノ−、カルボキシル−またはチオール含有オリゴ糖である、発明45〜47のいずれか一つに記載の方法。
【0191】
67.第1のポリマー鎖が、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンに由来する、発明45〜66のいずれか一つに記載の方法。
【0192】
68.第1のポリマー酸が、ポリ(2−オキサゾリン−co−エチレンイミン)−エピクロロヒドリンに由来する、発明45〜66のいずれか一つに記載の方法。
【0193】
69.加熱するステップが、加圧下約115℃〜約125℃の温度でのオートクレーブによる滅菌中に、水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料を含むパッケージング溶液を含有する密封レンズパッケージ中で直接行われ;ここで、パッケージング溶液は、約0.01重量%〜約2重量%の水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料を含み;パッケージング溶液は、約6.0〜約8.5のpHを維持するために十分な量で少なくとも1種の緩衝剤を含み、かつ25℃で、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)の張性および約1センチポイズ〜約5センチポイズの粘度を有する、発明1〜68のいずれか一つに記載の発明。
【0194】
70.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
シリコーンヒドロゲル基材;
シリコーンヒドロゲル基材の表面上のベースコーティングであって、ベースコーティングは、プライムプラズマ層およびプライムプラズマ層の上の反応性ポリマー層を含み、プラズマプライム層は、約0.5nm〜約40nmの厚さを有し、反応性ポリマーは、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性官能基を含む、ベースコーティング;ならびに
ベースコーティングの上に共有結合された非シリコーンヒドロゲルコーティングであって、非シリコーンヒドロゲルベースコーティングは、複数の反応性官能基を介して反応性ポリマー層上に共有結合されている、非シリコーンヒドロゲルコーティング
を含み、
完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも40barrerの酸素透過度、少なくとも約10秒のWBUT、約3以下の摩擦等級、および約80度以下の水接触角を有する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0195】
71.プレズマプライム層が、約1nm〜約35nmの厚さを有する、発明70に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0196】
72.プレズマプライム層が、約2nm〜約30nmの厚さを有する、発明70に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0197】
73.プレズマプライム層が、約3nm〜約25nmの厚さを有する、発明70に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0198】
74.反応性ポリマーが、カルボキシル基を含む、発明70〜73のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0199】
75.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも60barrerの酸素透過度を有する、発明70〜73のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0200】
76.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも80barrerの酸素透過度を有する、発明70〜73のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0201】
77.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも100barrerの酸素透過度を有する、発明70〜73のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0202】
78.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約12.5秒のWBUTを有する、発明70〜77のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0203】
79.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約15秒のWBUTを有する、発明70〜77のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0204】
80.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約17.5秒のWBUTを有する、発明70〜77のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0205】
81.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約2.5以下の摩擦等級を有する、発明70〜80のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0206】
82.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約2以下の摩擦等級を有する、発明70〜80のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0207】
83.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約1.5以下の摩擦等級を有する、発明70〜80のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0208】
84.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約1以下の摩擦等級を有する、発明70〜80のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0209】
85.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約70度以下の水接触角を有する、発明70〜84のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0210】
86.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約60度以下の水接触角を有する、発明70〜84のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0211】
87.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約50度以下の水接触角を有する、発明70〜84のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0212】
88.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約1.5MPa以下の弾性モジュラスをさらに有する、発明70〜87のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0213】
89.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約0.1MPa〜約1.2MPa以下の弾性モジュラスをさらに有する、発明70〜87のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0214】
90.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約0.15MPa〜約1.1以下の弾性モジュラスをさらに有する、発明70〜87のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0215】
91.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、約0.2MPa〜約1.0MPaの弾性モジュラスをさらに有する、発明70〜87のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0216】
92.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、完全に水和されるとき、約15重量%〜約70重量%の水含量を有する、発明70〜91のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0217】
93.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、完全に水和されるとき、約20重量%〜約65重量%の水含量を有する、発明70〜91のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0218】
94.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、完全に水和されるとき、約25重量%〜約60重量%の水含量を有する、発明70〜91のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0219】
95.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、完全に水和されるとき、約30重量%〜約55重量%の水含量を有する、発明70〜91のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0220】
96.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、指擦り試験の少なくとも1サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性をさらに有する、発明70〜95のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0221】
97.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、指擦り試験の少なくとも7サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性をさらに有する、発明70〜95のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0222】
98.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、指擦り試験の少なくとも14サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性をさらに有する、発明70〜95のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0223】
99.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、指擦り試験の少なくとも30サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性をさらに有する、発明70〜95のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0224】
100.完全水和状態のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、指擦り試験の少なくとも60サイクルにもかかわらず存続することによって特徴付けられるコーティング耐久性をさらに有する、発明70〜95のいずれか一つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0225】
前の開示は、当業者が本発明を実施することを可能にする。様々な変更、変形、および組み合わせが、本明細書に記載される様々な実施形態に対してなされ得る。読者が具体的実施形態およびその利点をより良く理解することを可能にするために、以下の実施例への参照が推奨される。本明細書および実施例は、例示的なものと見なされることが意図される。
【実施例】
【0226】
実施例1
酸素透過度測定
レンズおよびレンズ材料の見掛け酸素透過度(Dkapp)、見掛け酸素伝達率(Dk/t)、固有(または端部補正)酸素透過度(Dk)は、米国特許出願公開第2012/0026457A1号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の実施例1に記載された手順に従って決定する。
【0227】
指擦り試験
レンズは、RENU(登録商標)多目的レンズケア溶液(または別の多目的レンズケア溶液)で20秒間指にて擦り(使い捨て粉末不含ラテックス手袋を着用して)、次いで、生理食塩水ですすぎ洗いする。上記手順を所定の回数、例えば、1〜30回(すなわち、清浄化および浸漬を模擬する指擦り試験の繰り返しの数)繰り返す。
【0228】
潤滑性評価
レンズの潤滑性は、0〜4の摩擦等級尺度でレンズ表面の滑りやすさを定量的に特徴付ける指触感潤滑性試験を使用することによって評価する。摩擦等級が高ければ高いほど、滑りやすさ(または潤滑性)は低い。
【0229】
市販レンズ:DAILIES(登録商標)TOTAL1(登録商標);ACUVUE(登録商標)OASYS(商標);ACCUVUE(登録商標)ADVANCE PLUS(商標);DAILIES(登録商標)Aqua Comfort Plus(登録商標);およびAIR OPTIX(登録商標)を、それぞれ、0、1、2、3、および4の摩擦等級(以後、「FR」と指定される)に割り当てる。それらは、試験下のレンズの摩擦等級を決定するための標準レンズとして使用する。
【0230】
試料を、それぞれ30分の少なくとも2回のすすぎ洗いの間PBSに入れ、次いで、評価前に新鮮PBSに移す。評価前に、手を石鹸溶液ですすぎ洗いし、DI水で大々的にすすぎ洗いし、次いで、KimWipe(登録商標)タオルで乾かす。試料を指間で取り扱い、それぞれの試料について、上に記載した上記標準レンズに対して数値を割り当てる。例えば、レンズがAIR OPTIX(登録商標)レンズよりもわずかだけ良いと決定される場合、それらに数3を割り当てる。摩擦等級の値は、二人以上によるコンタクトレンズの少なくとも2つの摩擦等級の結果を平均する、および/または一人による2つ以上のコンタクトレンズ(レンズ製造の同一バッチからの)の摩擦等級を平均することによって得られるものである。
【0231】
表面湿潤性試験
接触レンズ上の水接触角(WCA)は、コンタクトレンズの表面湿潤性の一般的尺度である。コンタクトレンズの平均接触角(定着液滴(Sessile Drop)は、マサチューセッツ州ボストンにあるAST,Inc.,製VCA 2500XE接触角測定装置を使用して測定する。この設備は、前進接触角(θa)もしくは後退接触角(θr)または定着(静的)接触角を測定することができる。断りのない限り、水接触角は、定着(静的)接触角である。測定は、完全水和コンタクトレンズで、以下のとおりのブロット乾燥直後に行う。コンタクトレンズをバイアルから取り出し、約200mlの新鮮DI水で3回洗浄して、緩く結合したパッケージング添加物をレンズから除去する。次いで、レンズを糸くずの付いていない清浄布(Alpha Wipe TX1009)の上に置き、十分に軽くたたいて、表面の水を除去し、接触角測定台に載せ、乾燥空気の噴射によってブロー乾燥させ、最後に、製造業者によって提供されたソフトウェアを使用して定着接触角を自動的に測定する。接触角を測定するために使用したDI水は、18MΩcm超の抵抗率を有し、使用した液滴体積は、2μlである。典型的には、非コーティングシリコーンヒドロゲルレンズ(オートクレーブ後)は、ほぼ120度の定着接触角を有する。コンタクトレンズと接触する前に、ピンセットおよび台をイソプロパノールで十分に洗浄し、DI水ですすぎ洗いする。
【0232】
水破壊時間(WBUT)試験
レンズの表面親水性(オートクレーブ後)は、レンズ表面で水膜が破れ始めるのに必要な時間を決定することによって評価する。簡潔には、レンズをバイアルから取り出し、それぞれ30分の少なくとも2回のすすぎ洗いのためにPBS中に入れて、緩く結合したパッケージング添加物をレンズ表面から除去する。レンズを溶液から取り出し、明るい光源に対して保持する。水膜が破れて(脱湿潤して)下にあるレンズ材料を露出させるのに要する時間を目で認める。非コーティングレンズは、典型的にはPBSから取り出し後に瞬時に破れ、0秒のWBUTに割り当てられる。10秒以上のWBUTを示すレンズは、親水性表面を有すると見なされ、眼上の適度な湿潤性(涙液膜を支持する能力)を示すことが期待される。
【0233】
X線電子分光光度計(XPS)試験
この分析技術は、x線を使用して、レンズ表面で原子と結合した電子を励起する。次いで、励起電子により放出されたエネルギーの一部を収集し、それによって分析情報が、表面で見られる化学的元素濃度を決定するために誘導および使用される。
【0234】
XPSは、Mg K−アルファXR−50ブロードX線源(10kV、100W)および100mm PHOIBOSアナライザを使用するSage HR100分光計を使用して行う。
【0235】
PHMB取り込み試験
溶液中防腐剤ポリヘキサメエチレンビグアニド塩酸塩(PHMB HCl)を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の方法によって測定する。この方法は、Optifree Replenish,Renu fresh multi−purpose,PureMoist中およびクエン酸緩衝剥離液中の低ppmレベルでのPHMBの分析に特に使用され得る。
【0236】
PHMB試験は、Jupiter Widepore 300A C18のHPLCカラムを有する、Dionex Corona Ultra RS UHPLC検出器付きWaters H−Class UPLCの機器を使用して行う。取り込み試験試料を調製するために、1つのレンズを、30ml PPボトル中5.0mlのRenu Freshに室温で24時間浸漬する。取り込み溶液と対照Renu溶液との間のHPLC試験の差は、レンズ当たりのPHMB取り込み(μg/レンズ)を示す。
【0237】
プラズマコーティング厚さ試験
オングストローム(Å)単位のプラズマコーティング厚さは、それらがプラズマ重合コーティング機を使用してコーティングされた後でシリコンウェハ上の厚さの増加を測定することによって得る。厚さ測定のための機器は、Sentech Ellipsometer SE400 Advancedである。それは、入射ビームにおける回転可能な偏光プリズムの方位角および(アナライザプリズムを通過後の)反射ビームの強度が最小である反射ビームにおける回転可能な偏光プリズムの方位角を決定することによって、試料の表面から反射された偏光の状態の変化を測定する精密光学機器である。
【0238】
実施例2
マクロマーの合成
マクロマーは、米国特許第5,849,811号明細書の実施例B−1〜実施例B−4に記載された手順に従って合成する。
【0239】
1030g/モルの平均分子量を有し、末端基滴定によって1.96ミリ当量のヒドロキシル基を有する、51.5g(50ミリモル)のペルフルオロポリエーテルFomblin(登録商標)ZDOL(Ausimont S.p.A,Milan製)を、50mgのジブチルスズジラウレートと一緒に三つ口フラスコに導入する。フラスコ内容物を攪拌しながら約20ミリバールまで排気し、その後、アルゴンで減圧する。この操作を2回繰り返す。その後、アルゴン下に保持した22.2g(0.1モル)の新たに蒸留したイソホロンジイソシアネートをアルゴンの逆流(counterstream)に添加する。フラスコ内の温度を、水浴で冷却することによって30℃未満に保持する。室温で一晩攪拌後、反応は終了する。イソシアネート滴定により、1.40ミリ当量/g(理論:1.35ミリ当量/g)のNCO含量が得られる。
【0240】
2000g/モル(滴定によって1.00ミリ当量/gのヒドロキシル基)の平均分子量を有する、ShinEtsu製202gのα,ω−ヒドロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサンKF−6001をフラスコに導入する。フラスコ内容物をおよそ0.1ミリバールまで排気し、アルゴンで減圧する。この操作を2回繰り返す。排気されたシロキサンを、アルゴン下に保持した202mlの新たに蒸留したトルエンに溶解させ、100mgのジブチルスズジラウレート(DBTDL)を添加する。溶液の完全な均一化後、ペルフルオロポリエーテルはすべて、アルゴン下に添加したイソホロンジイソシアネート(IPDI)と反応した。室温で一晩攪拌後、反応は終了する。溶媒を室温で高真空下にストリッピングオフする。マイクロ滴定により、0.36ミリ当量/g(理論0.37当量/g)が示される。
【0241】
13.78g(88.9ミリ当量)の2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)を、247gのα,σ−ヒドロキシプロピル末端ポリシロキサン−ペルフルオロポリエーテル−ポリシロキサン3ブロックコポリマー(化学量論的平均での3ブロックコポリマーであるが、他のブロック長も存在する)にアルゴン下で添加する。この混合物を室温で3日間攪拌する。次いで、マイクロ滴定により、いずれのイソシアネート基ももはや示されない(検出限界0.01ミリ当量/g)。0.34ミリ当量/gのメタクリル基が見出される(理論0.34ミリ当量/g)。
【0242】
このように調製したマクロマーは、完全に無色で透明である。それは、分子量になんらの変化もなしに光の非存在下にて空気中室温で数か月間保存することができる。
【0243】
コンタクトレンズの製造
手順(a)で調製した25.92gのマクロマーを、清浄容器に添加する。19.25gの3−トリス(トリメチルシロキシ)メタクリレート(Shin−Etsu製TRIS、製品番号KF−2801)、続いて1.00グラムの光開始剤Darocur(登録商標)1173(Ciba)を添加する。28.88gのジメチルアクリルアミド(DMA)、続いて24.95gのエタノールを添加する。溶液の完全な均一化後、この溶液を、窒素または空気圧下で0.5ミクロンの細孔幅を有するテフロン(登録商標)膜に通して濾過する。次いで、この溶液を、ポリプロピレンから作られたダストフリーコンタクトレンズ型中にピペットで入れる。型を閉じ、重合反応をUV照射(5.0ミリワット/cm、30分)により行い、同時に架橋する。次いで、型を開け、イソプレパノールを入れ、得られたレンズを型から膨潤して出るようにさせる。レンズを、水中に入れる前に、100%イソプロピルアルコールで最低4時間抽出する。得られたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、以下の特性、すなわち、水含量(33±2%);固有(または端部補正)酸素透過度Dkc=95〜143barrer);イノフラックス拡散係数(6.90×10−3〜8.44×10−3mm/分);弾性モジュラス(1.0±0.1MPa);および屈折率(1.42±0.12)を有する。
【0244】
実施例3
1mMのPAA(pH=2)溶液。1mMのポリ(アクリル酸)(PAA)水溶液を調製するために、0.072gのPAA(Carbopol 907、粉末)を、蒸留水が入っている1000mlのボトル中に攪拌下で徐々に移す。溶液がPAA添加中に攪拌されていることを確保する。溶液をスターラプレート上室温で一晩(約24時間)攪拌する。PAAが完全に溶解されたことを確認する。PAAが完全には溶解されていない場合、攪拌を続け、粒子状物が認められなくなるまで待つ。37%塩酸溶液(HCl、Fluka−318949)を適用して、1mMのPAA溶液のpHをpH計下で2に調整する。
【0245】
PBS(リン酸緩衝生理食塩水)。PBS生理食塩水を調製するために、8gのNaCl;0.2gのKCl;1.44gのNaHPO;0.24gのKHPOを、800mlの蒸留HOに溶解させる。HClでpHを7.4に調整後、次いで、追加の蒸留HOを添加して、1Lの容量を満たす。
【0246】
IPC−1生理食塩水。ポリ(AAm−co−AA)(90/10)部分ナトリウム塩(固体含量約90%、ポリ(AAm−co−AA)90/10、Mw200,000)は、Polysciences,Inc.から購入し、受け入れたまま使用する。PAE(Kymene、NMRでアッセイして0.46のアゼチジニウム含量)は、水溶液としてAshlandから購入し、受け入れたまま使用する。インパッケージ架橋(IPC)生理食塩水を、約0.07重量/重量%のポリ(AAm−co−AA)(90/10)および約0.15%のPAE(約8.8ミリ当量の初期アゼチジニウムミリモル当量)をPBS(約0.044重量/重量%のNaHPO・HO、約0.388重量/重量%のNaHPO・2HO、約0.79重量/重量%のNaCl)に溶解させ、pHを7.2〜7.4に調整することによって調製する。次いで、IPC生理食塩水を約60℃で約6時間熱前処理する(熱前処理)。この熱前処理中に、ポリ(AAm−co−AA)およびPAEは、互いに部分的に架橋されて(すなわち、PAEのアゼチジニウム基のすべてを消費するとは限らないで)、IPC生理食塩水中分岐ポリマー網状組織内にアゼチジニウム基を有する水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料を形成する。熱前処理後、0.22ミクロンPES膜フィルタを使用してIPC生理食塩水を濾過し、室温に冷却して戻す。次いで、5ppmの過酸化水素を最終IPC生理食塩水に添加して、生物負荷増殖を予防し、0.22ミクロンPES膜フィルタを使用してIPC生理食塩水を濾過する。
【0247】
乾燥レンズ。実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、乾燥トレイに別個に移し、プラズマコーティング前に105℃で最低2時間真空乾燥させる。
【0248】
プラズマコーティング。ロータリプラズマ処理システムのプラズマチャンバ内にレンズを搭載後、チャンバを絶対真空圧100〜0paにロータリ真空ポンプによって90分間ポンピングダウンする。次いで、プラズマガス(空気のみ、OまたはCO)を、マスフロー制御弁によってチャンバに導入し、圧力を真空ダイヤフラムゲージによりモニターし、測定圧を電圧に変換する。プラズマ時間は11分である。電極にわたっての電力は、20〜50ワットであり(電力は、好ましくは30ワットである);電流は、100mA±10mAであり(電流は100mAに設定する);良好なコーティングサイクルのために周波数は15kHzに設定する=「Siウェハ厚さ約240ű60Å」;電圧は、電流設定およびチャンバ内の材料に基づく。
【0249】
プラズマクエンチング。プラズマコーティング後、プラズマコーティングレンズを、1mMの水性PAA水溶液中に迅速に(<60秒)移す(1分間)。
【0250】
パッキング/オートクレーブ処理。PBS中2回30分間すすぎ洗い後、レンズを120℃で45分間のオートクレーブのためにIPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰める。
【0251】
レンズ特徴付け。上の表面処理の一つを施した後、シリコーンコンタクトレンズの湿潤性(水接触角により測定)、表面親水性(WBUTにより測定)および潤滑性(摩擦等級により測定)を、実施例1に記載した手順に従って決定し、表1に報告する。
【0252】
【表1】
【0253】
表1の結果は、表面処理(プラズマ処理+水性PAA溶液中クエンチング+IPC−1生理食塩水中パッケージング/オートクレーブ処理)は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2で調製した)の湿潤性および潤滑性を改善し得ることを示す。
【0254】
実施例4
実施例3で調製したIPC−1生理食塩水およびPBS生理食塩水を、この実施例で使用する。
【0255】
IPC−2生理食塩水
3.0重量%のmPEG−SH2000(メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−チオール、平均MW2000、製品番号MPEG−SH−2000、Laysan Bio Inc.)を17.72重量%のPAE(水性溶液としておよび受け入れたまま使用するAshland製Kymene、NMRによってアッセイして0.46のアゼチジニウム含量、25.4%の固体含量)と一緒に、PBSおよび7.5%のクエン酸ナトリウム二水和物中に溶解させることによって、反応混合物を調製する。次いで、この溶液のpHを、7.5に調整し、容器に通して窒素ガスを2時間泡立てることによってまた脱気する。その後、この溶液を45℃で約4時間熱処理し、PAE中アゼチジニウム基との反応によってポリマー上に化学的にグラフト化したmPEG−SH−2000基を有する熱架橋性親水性ポリマー材料を形成する。熱処理後、この溶液を、0.25%のクエン酸ナトリウムを含有するPBSを使用して30倍に希釈し、pHを7.2〜7.4に調整し、次いで、0.22ミクロンのポリエーテルスルホン(PES)膜フィルタを使用して濾過する。最終IPC生理食塩水は、約0.25重量%のポリマー材料(約40重量%のmPEG−SH−2000および約60重量%のPAEからなる)および0.25%のクエン酸ナトリウム二水和物を含有する。
【0256】
プラズマコーティング(空気プラズマ前処理+メタン/空気プラズマ処理)
プラズマ処理を完了するために3つのステップがある。第1のステップは、漏れ試験であり、第2のステップは、空気のみプラズマ前処理であり、第3のステップは、CH/空気プラズマ処理である。
【0257】
実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(乾燥状態の)をプラズマチャンバ内に搭載後、チャンバを絶対真空圧100〜0paにロータリ真空ポンプシステムによって90分間ポンピングダウンする。次いで、プラズマガス、空気を、それぞれ、CHおよび空気について0.0sccmおよび3.0sccmでチャンバ内に導入する。プラズマコーティング時間は3分である。電極にわたっての電力は、20〜50ワットであり(電力は、最適で30ワットである);電流は、100mA±10mAであり(電流は100mAに設定する);周波数は15kHzに設定し;電圧は、電流設定に基づき、空気のみプラズマ処理についてほぼ365〜370ボルトである。
【0258】
空気のみプラズマ前処理後、プラズマガス(CHと空気との混合物)を、それぞれ、CHおよび空気について2.0sccm(流量単位:1分当たり標準立方センチメートル)および1.0sccmでチャンバ内に導入する。プラズマコーティング時間は11分である。電極にわたっての電力は、20〜50ワットであり(電力は、最適で30ワットである);電流は、100mA±10mAであり(電流は100mAに設定する);周波数は15kHzに設定し;電圧は、電流設定に基づき、CH/空気プラズマ処理についてほぼ345〜350ボルトである。
【0259】
プラズマクエンチング
プラズマコーティングレンズをクエンチング溶液(IPC−1またはIPC−2)中に迅速に(<60秒)移し、その中に約1分間浸漬する。
【0260】
パッキング/オートクレーブ処理
プラズマクエンチング後、レンズをPBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC生理食塩水(IPC−1またはIPC−2)が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0261】
レンズ特徴付け
上の表面処理の一つを施した後のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの湿潤性(水接触角により測定)、表面親水性(WBUTにより測定)および潤滑性(摩擦等級により測定)を、実施例1に記載した手順に従って決定し、表2に報告する。
【0262】
表2の結果は、カルボキシル含有ポリマーを含まないクエンチング溶液(例えば、IPC−2)でプラズマ処理レンズをクエンチするステップは、実施例2からのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの湿潤性を改善し得るが、潤滑性を改善し得ないことを示す。
【0263】
【表2】
【0264】
実施例5
実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、この実施例で使用する。実施例3で調製した1mMのPAA(pH=2)水溶液、PBS生理食塩水およびIPC−1生理食塩水を、この実施例で使用する。
【0265】
0.025%のPAA/1−プロパノール(1−PrOH)
1−プロパノール(1−PrOH)中0.025%のポリ(アクリル酸)(PAA)を調製するために、0.25gのPAA(Carbopol 907、粉末)を、1−PrOHが入っている1000mlのボトル中に攪拌しながら徐々に移す。PAA添加中に溶液が攪拌されていることを確保する。溶液をスターラプレート上室温で一晩(約24時間)攪拌する。PAAが完全に溶解したことを確認する。PAAが完全には溶解していない場合、攪拌を続け、粒子状物が認められなくなるまで待つ。37%塩酸溶液(HCl、Fluka−318949)を適用して、pH−Fix1.7〜3.8インジケータストリップを使用して0.025%のPAA/1−PrOHのpHを2に調整する。ストリップは、最初にDI水で完全に湿潤させ、次いで、ストリップの色のさらなる変化が認められなくなるまでPAA/1−PrOH溶液に浸漬する。
【0266】
試験したレンズを、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに施される表面処理によって群の一つに分類する。プラズマ処理は、実施例3および実施例4に記載した手順に従って行う。
【0267】
群5−1:対照レンズは、プラズマ処理されていないシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2で調製した)であり、次いで、コロナ処理シェル内でPBS中に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0268】
群5−2:プラズマコーティングなしのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、1mMのPAA(pH=2)水溶液に1分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0269】
群5−3:プラズマコーティングなしのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、1mMのPAA(pH=2)水溶液に2分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0270】
群5−4:プラズマコーティングなしのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、1mMのPAA(pH=2)水溶液に5分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0271】
群5−5:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気プラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に1分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0272】
群5−6:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気プラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に2分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0273】
群5−7:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気プラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に5分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、PBS生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0274】
群5−8:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に1分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0275】
群5−9:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に2分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0276】
群5−10:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで11分間処理し、1mMのPAA(pH=2)水溶液に5分間浸漬し、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0277】
【表3】
【0278】
表3の結果は、本発明の表面処理が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面親水性、潤滑性、および表面湿潤性を改善するために使用することができることを示す。
【0279】
XPS試験
表4は、5つのタイプのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上のNおよびSiの濃度のXPSデータを示す。
【0280】
(1)対象レンズ:いずれの表面処理もない、実施例2からのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0281】
(2)(PAAディッピング)処理レンズ:実施例2で調製したシリコーンコンタクトレンズにいずれの表面処理も施さないが、それらを0.025%のPAA/1−PrOHに1分間ディッピングすることによってコーティングする。
【0282】
(3)(プラズマ+水)処理レンズ:実施例2で調製したシリコーンコンタクトレンズに空気プラズマ処理を施し、続いて、それらを水に約2時間ディッピングする。
【0283】
(4)(プラズマ+IPC−1クエンチング+IPC−1パッキング/オートクレーブ処理)処理レンズ:実施例2で調製したシリコーンコンタクトレンズに空気プラズマ処理を施し、続いて、それらをIPC−1生理食塩水に約2時間ディッピングし、最後にIPC−1生理食塩水中でパッケージング/オートクレーブ処理する。
【0284】
(5)(プラズマ+PAAクエンチング+IPC−1パッキング/オートクレーブ処理)処理レンズ:実施例2で調製したシリコーンコンタクトレンズに空気プラズマ処理を施し、続いて、それらをPAA水溶液に、それぞれ、約1分間、2分間および5分間ディッピングする。PBS中2回30分間すすぎ洗いした後、レンズを、120℃で45分間のオートクレーブのために、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰める。
【0285】
(プラズマ+PAA+IPC−1)処理シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのレンズ表面上のケイ素含量は、対象シリコーンコンタクトレンズのものと比べて、実質的に減少している。
【0286】
【表4】
【0287】
メチレンブルー染色試験(M.B.S.T)
メチレンブルーは、正に荷電しており、染色により示されるとおりに負に荷電した表面に結合する。このような染色テキストを使用して、いずれかのプラズマ処理を施すことの有無にかかわらずにPAA層がシリコーンコンタクトレンズの上に堆積または結合しているかどうか、および水溶性熱架橋性親水性ポリマー材料がシリコーンコンタクトレンズの表面上のPAA層の上に架橋されているかどうかを決定することができる。
【0288】
メチレンブルーは、Sigma−Aldrichから購入し、受け入れたまま使用する。200ppmのメチレンブルー水溶液を、0.2gのメチレンブルーを999.8gの蒸留水中に添加し、室温で一晩攪拌することによって調製する。それは常に新鮮に調製する。メチレンブルー染色試験のために、各レンズを20mlの200ppmメチレンブルー水溶液に30分間浸漬する。500mlの水中で2回30分間すすぎ洗いした後、レンズを染色評価のために水中に保つ。メチレンブルー染色試験の要約を表5に示す。
【0289】
【表5】
【0290】
表5の結果は、プラズマ処理レンズおよび非プラズマ処理レンズが、メチレンブルー染色によって示されるとおりに、それらをPAA溶液に浸漬することによってPAAの層でコーティングすることができることを示す。
【0291】
実施例6
実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、実施例3で調製した水性PAA溶液(1mM、pH2)、実施例3で調製したIPC−1生理食塩水、および実施例3で調製したPBS生理食塩水を、この実施例で使用する。
【0292】
1mMのPAA溶液(pH4)
pHを4に調整する以外は、上に記載した手順に従って、1mMのポリ(アクリル酸)(PAA)水溶液(pH4)を調製する。
【0293】
1mMのPAA溶液(pH8)
pHを50%水酸化ナトリウム溶液(NaOH、Sigma−Aldrich−415413)で8に調整する以外は、上に記載した手順に従って、1mMのポリ(アクリル酸)(PAA)水溶液(pH8)を調製する。
【0294】
10mMのPAA溶液(pH4)
pHを4に調整する以外は、上に記載した手順に従って、10mMのポリ(アクリル酸)(PAA)水溶液(pH4)を調製する。
【0295】
表面処理
実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに空気のみプラズマ処理を施す。この空気プラズマ処理は、実施例3について記載したとおりに行う。空気プラズマ処理後、プラズマコーティングレンズをPAA水溶液中に迅速に(<60秒)移す(1分間)。PBS中2回30分間すすぎ洗いした後、レンズを、120℃で45分間のオートクレーブのために、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰める。
【0296】
レンズ特徴付け
上の表面処理の一つを施した後のシリコーンコンタクトレンズの湿潤性(水接触角により測定)、親水性(WBUTにより測定)および潤滑性(摩擦等級により測定)を、実施例1に記載した手順に従って決定し、表6に報告する。XPSデータは、表7である。
【0297】
【表6】
【0298】
【表7】
【0299】
表6および表7の結果は、レンズ表面上のケイ素含量が低ければ低いほど、PAA溶液がより低いpH(例えば、約2)および/またはPAAのより高い濃度(例えば、約10mM)を有する場合、より高い親水性(WBUT)およびより高い潤滑性を達成することができることを示す。
【0300】
実施例7
この実施例では、1mMのPAA(pH=2)水溶液、PBS生理食塩水およびIPC−1生理食塩水は、実施例3におけるのと同じに調製し;IPC−2は、実施例4におけるのと同じに調製し;1−プロパノール(1−PrOH)中0.025%のポリ(アクリル酸)(PAA)は、実施例5におけるのと同じに調製する。実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、この実施例で使用する。
【0301】
試験したレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに施される表面処理によって群の一つに分類する。プラズマ処理は、実施例3および実施例4に記載した手順に従って行う。
【0302】
群7−1:対照レンズの第1のタイプは、SiHyコンタクトレンズ(実施例2)であり、これは、プラズマ処理しないが、0.025%のPAA/1−PrOHに1分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−2生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0303】
群7−2:対照レンズの第2のタイプは、SiHyコンタクトレンズ(実施例2)であり、これは、プラズマ処理しないが、0.025%のPAA/1−PrOHに1分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0304】
群7−3:対照レンズの第3のタイプは、SiHyコンタクトレンズ(実施例2)であり、これは、プラズマ処理しないが、1mMのPAA(pH=2)に1分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0305】
群7−4:シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで処理し、続いて、1mMのPAA(pH=2)水溶液に1分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0306】
群7−5:SiHyコンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで処理し、続いて、1mMのPAA(pH=2)水溶液に2分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0307】
群7−6:SiHyコンタクトレンズ(実施例2)を、空気のみプラズマで処理し、続いて、1mMのPAA(pH=2)水溶液に5分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0308】
群7−7:SiHyコンタクトレンズ(実施例2)を、空気プラズマで前処理し、続いて、CH/空気プラズマで処理し、IPC−1中で2時間クエンチし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0309】
PHMB取り込みの結果を表8に報告する。
【0310】
【表8】
【0311】
(1)PHMB取り込みは、0.025%のPAA/1−PrOH中1分間のディップコーティングを有するシリコーンヒドロゲルレンズ1レンズ当たり20μg超であり、これは、コーティングされたPAA層がかなり厚いことを示す。IPC−2およびIPC−1のパッケージング生理食塩水は、PHMB取り込み挙動を変化させない。
【0312】
(2)PHMB取り込みは、1mMのPAA(pH=2)水溶液中1分間のディップコーティングを有するシリコーンヒドロゲルレンズ1レンズ当たり約5μgである。PAA水溶液およびPAA/1−PrOH中ディップコーティングによりコーティングされたレンズのPHMB取り込み結果と比較すると、ディップコーティング溶媒は、PAA係留層の形成に対して重要な役割を果たす。
【0313】
(3)PAAまたはカルボキシル不含ポリマー(IPC−1)中プラズマクエンチングは、ほとんどPHMB取り込みを有し、これにより、PAA水溶液中プラズマクエンチングは、かなり薄いPAA係留層を生成させることが実証される。
【0314】
実施例8
実施例3で調製したIPC−1生理食塩水、PBS生理食塩水、および1mMのPAA(pH=2)水溶液を、この実施例で使用する。
【0315】
実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、個別に乾燥トレイに移し、プラズマコーティング前に105℃で最低2時間真空乾燥させる。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのCO、またはCO/CHの混合物プラズマ処理を、実施例3について記載したとおりに行う。CO、またはCO/CHの混合物プラズマ処理後、プラズマコーティングレンズを、それぞれ、1mMのPAA(pH=2)中(1分間)、水中(20分間)およびIPC−1中(20分間)に迅速に(<60秒)移す。PBS中2回30分間すすぎ洗い後、レンズを、IPC生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0316】
上のプラズマクエンチングを施した後のシリコーンコンタクトレンズの表面親水性(WBUTにより測定)および潤滑性(摩擦等級により測定)を、実施例1に記載した手順に従って決定し、表9に報告する。湿潤性、親水性、および潤滑性レンズ表面が、1mMのPAA(pH=2)水溶液中さらには1分間のクエンチングとともにCO、またはCO/CHの混合物プラズマ処理によって達成された。
【0317】
【表9】
【0318】
実施例9
実施例3で調製したIPC−1生理食塩水、PBS生理食塩水、および1mMのPAA(pH=2)水溶液を、この実施例で使用する。
【0319】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上の湿潤性および潤滑性表面を達成するための最良の条件をスクリーニングするために、DOE(実験の設計)を行った。この表面処理は、3つのステップを含む。第1のステップは、異なるプラズマガスによるプラズマであり;第2のステップは、親水性ポリマーを含有する水溶液中クエンチングプロセスであり;第3のステップは、オートクレーブ処理のためのパッケージング生理食塩水である。したがって、DOEスクリーニング中に2つの要因、すなわち、プラズマガスおよびクエンチング溶液がある。
【0320】
プラズマガス、すなわち、(1)Oのみ;(2)COのみ;(3)CHのみ;(4)CO/CH=4:1;(5)CO/CH=2:1;(6)CO/CH=1:1;(7)O/CH=4:1;(8)O/CH=2:1;(9)O/CH=1:1のスクリーニング。クエンチング水溶液、すなわち、(1)水;(2)1mMのPAA;(3)IPC−1生理食塩水のスクリーニング。DOE試料について、パッケージング生理食塩水は、IPC−1生理食塩水である。レンズ評価は、表10に報告するとおりに、WBUTおよび摩擦等級である。
【0321】
【表10】
【0322】
実施例10
プラズマコーティング厚さは、それらを同じプラズマチャンバ内でコーティングした後に、シリコンウェハ上の厚さ増加を測定することによって得る。ことなるプラズマガスを使用して11分間のプラズマ処理を施した後のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のプラズマコーティングの厚さは、実施例1に記載した手順に従って決定して、それぞれ、以下である:24〜30Å(Oプラズマ);25〜31Å(空気プラズマ);24〜26Å(COプラズマ);233Å(CHプラズマ);249Å(CH/空気=2:1プラズマ);270Å(CO/CH=1:1プラズマ);72Å(CO/CH=2:1プラズマ);28Å(CO/CH=4:1);120Å(O/CH=1:1プラズマ);146Å(O/CH=2:1プラズマ);および104Å(O/CH=4:1プラズマ)。
【0323】
実施例11
この実施例では、1mMのPAA(pH=2)、PBS生理食塩水およびIPC−1生理食塩水は、実施例3におけるのと同じように調製する。実施例2で調製したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、この実施例で使用する。
【0324】
プラズマ処理
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの空気プラズマ処理を、実施例3に記載した手順に従って行い;シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのCH/空気(2:1)プラズマ処理を、実施例4に記載した手順に従って行う。レンズ上の空気プラズマコーティングおよびCH4/空気プラズマコーティングの厚さは、それぞれ、28Åおよび213Åであると推定される。
【0325】
0.5%のPEI溶液(pH9.2)
ポリエチレンイミン(PEI)、分岐(水中30%溶液、Mw=70,000)は、Polysciences Inc.からであり、受け入れたまま使用する。PEIの水溶液(0.5重量%、pH9.2)を、6.8gのPEIを393.2gの蒸留水中に添加することによって調製する。スターラプレート上の溶液を室温で約3時間攪拌する。
【0326】
0.5%のPEI溶液(pH11.0)
PEIの水溶液(0.5重量%、pH11.0)を、50%水酸化ナトリウム溶液(NaOH、Sigma−Aldrich−415413)を使用して0.5%のPEI溶液(pH9.2)のpHを調整することによって調製する。
【0327】
0.5%のPAH溶液(pH3.4)
ポリアリルアミン塩酸塩(PAH、Mw=17,500)は、Aldrichからである。PAHの水溶液(0.5重量%、pH3.4)を、1gのPAHを199gの蒸留水中に添加することによって調製する。スターラプレート上の溶液を室温で約3時間攪拌する。
【0328】
0.5%のPAH溶液(pH10.4)
PAHの水溶液(0.5重量%、pH10.4)を、50%水酸化ナトリウム溶液(NaOH、Sigma−Aldrich−415413)を使用して0.5%のPAH溶液のpH(pH10.4)を調整することによって調製する。
【0329】
表面処理
試験したレンズを、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに施す表面処理によって群の一つに分類する。プラズマ処理は、実施例3および実施例4に記載した手順に従って行う。
【0330】
群11−1a:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を空気のみプラズマで処理し、続いて水中に20分間、その後1mMのPAA(pH=2)水溶液に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0331】
群11−1b:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を空気のみプラズマで処理し、続いて0.5%のPEI(pH9.2)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0332】
群11−1c:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を空気のみプラズマで処理し、続いて0.5%のPEI(pH3.4)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0333】
群11−1d:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を空気のみプラズマで処理し、続いて0.5%のPAH(pH11.0)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0334】
群11−1e:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)を空気のみプラズマで処理し、続いて0.5%のPAH(pH10.4)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0335】
群11−2a:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)をCH/空気プラズマで処理し、続いて水中に20分間、その後1mMのPAA(pH=2)水溶液に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0336】
群11−2b:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)をCH/空気プラズマで処理し、続いて0.5%のPEI(pH9.2)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0337】
群11−2c:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)をCH/空気プラズマで処理し、続いて0.5%のPEI(pH3.4)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0338】
群11−2d:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)をCH/空気プラズマで処理し、続いて0.5%のPAH(pH11.0)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0339】
群11−2e:シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(実施例2)をCH/空気プラズマで処理し、続いて0.5%のPAH(pH10.4)水溶液中に20分間ディッピングし、PBS中2回30分間すすぎ洗いし、次いで、IPC−1生理食塩水が入っているコロナ処理シェル内に詰め、120℃で45分間オートクレーブ処理する。
【0340】
上の表面処理の一つを施した後のシリコーンコンタクトレンズの湿潤性(水接触角により測定)、親水性(WBUTにより測定)および潤滑性(摩擦等級により測定)を、実施例1に記載した手順に従って決定し、表11に報告する。
【0341】
【表11】