特許第6592192号(P6592192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592192プロピレンポリマー組成物で作られた二軸配向フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592192
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】プロピレンポリマー組成物で作られた二軸配向フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20191007BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20191007BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20191007BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   C08L23/12
   C08L23/20
   H01G4/32 511L
   H01G4/32 551B
   H01G4/32 521G
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-515867(P2018-515867)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公表番号】特表2018-538373(P2018-538373A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2016074649
(87)【国際公開番号】WO2017064224
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】15190159.2
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ギトサス アントニオス
(72)【発明者】
【氏名】グロガー ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス フランシスクス
(72)【発明者】
【氏名】トランチダ ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】シュタドルバウアー ヴォルフラム
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−231705(JP,A)
【文献】 特開2007−169595(JP,A)
【文献】 特開2013−027977(JP,A)
【文献】 特開平05−288747(JP,A)
【文献】 特開2015−162560(JP,A)
【文献】 特開平4−209641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02、5/12−5/22
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)93〜98%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量および0.5〜10g/10minのメルトフローレートMFRを有する98.2〜99.8重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマーと、(ii)0.0000001〜0.01重量%の高分子系α晶造核剤と、(iv)0.1〜0.8重量%の従来の添加剤と、(iii)0.1〜1.0重量%の(i)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーとを含むプロピレンポリマー組成物(A)からなる層を含む二軸配向フィルムであって、前記プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、前記プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の重量に対して0.5〜100重量ppmの前記高分子系α晶造核剤(ii)を含み、前記プロピレンポリマー組成物(A)において、前記プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)と前記(i)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、長鎖分岐を含まない、および、前記プロピレンポリマー組成物(A)に長鎖分岐を含むポリマーを添加しない、前記パーセンテージは前記プロピレンポリマー組成物(A)の重量に基づく、二軸配向フィルム。
【請求項2】
前記高分子系α晶造核剤はポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3−メチル−1−ブテン)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の二軸配向フィルム。
【請求項3】
前記プロピレンポリマー組成物(A)は30重量ppm以下の灰分含有量を有する、請求項1または2に記載の二軸配向フィルム。
【請求項4】
前記フィルムは前記プロピレンポリマー組成物(A)からなる層を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の二軸配向フィルム。
【請求項5】
前記従来の添加剤は酸化防止剤、安定剤および酸スカベンジャーから選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の二軸配向フィルム。
【請求項6】
前記フィルムは金属層をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の二軸配向フィルム。
【請求項7】
前記フィルムの厚さは1〜10μmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の二軸配向フィルム。
【請求項8】
コンデンサーを作るための、請求項1〜のいずれか一項に記載のフィルムの使用。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のフィルムを含むコンデンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンポリマー組成物を含む二軸配向フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、改善された電気的特性を有するコンデンサーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンで作られたコンデンサーフィルムは、当該技術分野において周知である。
【0003】
特許文献1には、5超のMw/Mnを有する線状ポリプロピレンと長鎖分岐ポリプロピレンのブレンドを含むポリプロピレン組成物で作られた二軸配向フィルムが開示されている。このフィルムは、コンデンサーを製造するのに好適である。
【0004】
特許文献2には、特定の表面粗さを有し、かつ好ましくは0.05〜3%の長鎖分岐ポリプロピレンを含む二軸配向フィルムが開示されている。このフィルムは、優れた電気的特性を有するコンデンサーの製造に好適であると開示された。
【0005】
Fujiyamaその他(非特許文献1)は、ポリプロピレンにα晶造核剤を使用すると、造核剤を含むかまたはβ晶造核剤を含まないフィルムと比較して、表面粗さの少ない平滑フィルムが得られたことを開示している。この文書は、α晶造核剤が存在すると、劣った二軸配向PPフィルムになることを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1894715A号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1985649A号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Applied Polymer Science, Vol.36,pages 1025−1033(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長鎖分岐PPを含む従来技術の二軸配向PP(BOPP:biaxially oriented PP)フィルムは、優れた特性を有することが開示された。しかしながら、長鎖分岐PPを製造するためのプロセスは複雑であり、材料のコストがかさむことになる。したがって本発明の1つの目的は、従来技術のフィルムより簡便なプロセスで経済的に製造でき、かつ少なくとも従来技術のフィルムと同じくらい優れた電気的および機械的特性を有するBOPPフィルムを提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、コンデンサーに使用するのに好適で、かつ従来技術のフィルムに比較して改善された電気的および機械的特性を有するBOPPフィルムを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、耐久性があり、故障なく長時間作動するコンデンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様から分かるように、本発明は、(i)93〜98%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量および0.5〜10g/10minのメルトフローレートMFRを有する90〜99.99重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマーと、(ii)0.0000001〜1重量%の高分子系α晶造核剤と、任意に、(iii)(i)以外の0〜9.99重量%のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーと、(iv)0.01〜1.0重量%の従来の添加剤を含むプロピレンポリマー組成物(A)とを含む層を含む二軸配向フィルムであって、パーセンテージはプロピレンポリマー組成物(A)の重量に基づく、二軸配向フィルムを提供する。
【0012】
もう1つの態様から分かるように、本発明は、そうしたフィルムの、コンデンサーを作るための使用を提供する。
【0013】
さらなる態様から分かるように、本発明は、そうしたフィルムを含むコンデンサーを提供する。
【0014】
なおさらなる態様から分かるように、本発明は、93〜98%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量を有する90〜99.99重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー、0.01〜1.0重量%の従来の添加剤(iv)および0.01〜1ppm、好ましくは0.01〜0.5ppmの高分子系α晶造核剤を含み、パーセンテージおよびppmはすべて、プロピレンのホモポリマー、従来の添加剤および高分子系α晶造核剤を合わせた重量に基づく、ポリマー組成物を提供する。
【0015】
なおもう1つの態様から分かるように、本発明は、93〜98%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量および0.5〜10g/10minのメルトフローレートMFRを有する90〜99.9重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマーを、0.1〜200ppmの高分子系α晶造核剤を含む、0.1〜10重量%のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーと組み合わせるステップと、組成物をシートとして押し出すステップと、流れ方向の延伸倍率が4:1〜10:1、かつ垂直方向の延伸倍率が5:1〜10:1、かつフィルムの厚さが1μm〜10μmになるように、シートを流れ方向および垂直方向に延伸するステップとを含む、二軸配向フィルムを製造するためのプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
プロピレンポリマー組成物(A)は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)、高分子系α晶造核剤(ii)および、任意に、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)を含む。
【0017】
プロピレンポリマー組成物(A)は、酸化防止剤、プロセス安定剤および酸スカベンジャーから選択される、好ましくは酸化防止剤および酸スカベンジャーから選択される1種または複数種の添加剤などの従来の添加剤(iv)をさらに含む。
【0018】
好ましくは、プロピレンポリマー組成物(A)は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)、高分子系α晶造核剤(ii)ならびに、任意に、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)および従来の添加剤(iv)からなる。
【0019】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)は、プロピレンポリマー組成物(A)の主要構成要素である。組成物(A)は、90〜99.99重量%、好ましくは95〜99.9重量%、一層好ましくは98〜99.99重量%、特に99〜99.9重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)を含む。
【0020】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)は、0.5〜10g/10min、好ましくは1〜7g/10minのメルトフローレートMFRを有する。MFRが低すぎると、加工性が乏しいという結果を招く。一方、MFRが高すぎると、BOPPプロセスに使用される高温でたるみが生じるという結果を招く。
【0021】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)は、93〜98%、好ましくは95〜98%など94〜98%のアイソタクチックペンタッド(mmmm分率)の含有量を有する。アイソタクチックペンタッドの含有量は、全ペンタッドに対するmmmmペンタッドの割合として計算される。ペンタッド含有量が低すぎると、フィルムの最終結晶化度が低めになり、フィルムの引張特性およびモジュラスが低下するという結果を招く。一方、ペンタッドの含有量が多すぎると、フィルム配向中に一方で流れ方向に、他方でさらに詳しくはテンターオーブンの横方向に、頻繁にフィルムが破損し得るという結果を招く。
【0022】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)は好ましくは、30ppm以下、一層好ましくは20ppm以下、特に10ppmなど15ppm以下の灰分含有量を有する。灰分含有量が多すぎると、特に灰分が金属残留物を含む場合、フィルムの誘電特性に有害になる可能性がある。そうしたフィルムは、コンデンサーを作るのに使用できない。
【0023】
本発明のフィルムを作るのに好適なプロピレンホモポリマーの製造に特に効果的なプロセスは、三塩化チタンを含む固体成分に基づく触媒をアルキルアルミニウム、有機エーテルおよびアルキルメタクリレートと組み合わせて使用した欧州特許出願公開第2543684A号に開示されている。
【0024】
重合は好都合にはスラリー状で行われる。そうしたプロセスでは、触媒、水素およびプロピレンモノマーが、4〜15個の炭素原子、好ましくは10〜14個の炭素原子を有する1種または複数種のアルカンを本質的に含む希釈液中で接触される。「を本質的に含む」は、本明細書により、希釈液が少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、一層好ましくは少なくとも99重量%の1種または複数種のそうしたアルカンを含むことを意味する。
【0025】
重合は典型的には、50〜100℃、好ましくは60〜80℃の温度および1〜50bar、好ましくは3〜15barの圧力で行われる。
【0026】
好ましくは本プロセスは、1つまたは複数の洗浄ステップを含む。洗浄は典型的には、1つまたは複数のステップでポリマースラリーを炭化水素希釈液と接触させることにより行われる。接触ステップ後、過剰な希釈液は典型的には、たとえば遠心により除去される。
【0027】
好ましくはポリマースラリーは、少なくとも2つのステップで炭化水素希釈液と接触される。洗浄が複数のステップを含む場合、少なくとも1つのステップでは炭化水素希釈液に加えてアルコールまたはエーテルが存在すると好ましい。これによりポリマーからの触媒成分の除去が促進され、それにより非常に少ない灰分含有量を有するポリマーを得ることができる。
【0028】
高分子系α晶造核剤
プロピレンポリマー組成物(A)は、高分子系α晶造核剤(ii)を含む。高分子系α晶造核剤(ii)は、式CH=CH−CHRのビニル化合物のポリマーであり、RおよびRは一緒になって5員または6員飽和、不飽和もしくは芳香環を形成するか、または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を独立に表す。好ましくは高分子系α晶造核剤(ii)は、式CH=CH−CHRのビニル化合物のホモポリマーである。
【0029】
プロピレンポリマー組成物(A)は、0.0000001〜1重量%(または0.001ppm〜10000ppm)の高分子系α晶造核剤、好ましくは0.000001〜0.01重量%(または0.01ppm〜100ppm)、特に好ましくは0.000001〜0.005重量%(または0.01ppm〜50ppm)の高分子系α晶造核剤(ii)を含む。特に、プロピレンポリマー組成物(A)は、プロピレンポリマー組成物(A)の重量に対して0.000001〜0.001重量%(または0.01ppm〜10ppm)、なお一層好ましくは0.000001〜0.0005重量%(または0.01ppm〜5ppm)の高分子系α晶造核剤(ii)を含む。
【0030】
高分子系α晶造核剤(ii)をプロピレンポリマー組成物(A)に組み込むための1つの方法は、重合触媒を式CH=CH−CHRのビニル化合物と接触させることにより予備重合することを含む。式中、RおよびRは一緒になって5員もしくは6員飽和、不飽和または芳香環を形成するか、あるいは1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を独立に表す。次いで、そうした予備重合した触媒の存在下でプロピレンを重合する。
【0031】
予備重合では、触媒が固体触媒成分1グラムあたり最大5グラムのプレポリマー、好ましくは固体触媒成分1グラムあたり0.1〜4グラムのプレポリマーを含むように触媒を予備重合する。次いで、触媒を重合条件で式CH=CH−CHRのビニル化合物と接触させる。式中、RおよびRは上記で定義した通りである。そのとき特に好ましくはRおよびRは飽和5員または6員環を形成する。特に好ましくはビニル化合物は、ビニルシクロヘキサンである。そのとき特に好ましくは触媒は、固体触媒成分1グラムあたり0.5〜2グラムの重合ビニル化合物、たとえばポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。これにより、欧州特許出願公開第607703A号、欧州特許出願公開第1028984A号、欧州特許出願公開第1028985A号および欧州特許出願公開第1030878A号に開示されたような核生成したポリプロピレンの調製が可能になる。
【0032】
好ましくは予備重合は、20〜80℃、好ましくは35〜65℃の範囲内の温度で不活性希釈液中のスラリーで行われる。圧力は重要でなく、大気圧〜50barから選択することができる。反応時間は、未反応ビニル化合物の量が反応混合物の2000重量ppm未満または1000ppm未満など所定の限度未満になるように選択される。
【0033】
上記のように、1つの方法によればプロピレンポリマー組成物(A)は、そうした予備重合した触媒の存在下でプロピレンを単独重合することにより製造される。それによってプロピレンホモポリマーは、高分子系α晶造核剤(ii)により核形成される。そのときプロピレンポリマー組成物(A)は好ましくは、プロピレンポリマー組成物(A)の重量に対して0.1〜200ppmの高分子系α晶造核剤(ii)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。そのとき重合プロセスおよび触媒は好適には上記の通りである。それによってプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)が、高分子系α晶造核剤(ii)を含む触媒上に形成される。
【0034】
あるいは、一層好ましくは、プロピレンポリマー組成物(A)は、上記に開示したようなビニル化合物と予備重合されていない重合触媒の存在下でプロピレンを単独重合することにより製造され、それによりプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)を製造する。そうした場合には、高アイソタクチックプロピレンホモポリマー(i)は、押出ステップ前または押出ステップで、上記で言及したようなビニル化合物と予備重合された触媒の存在下、プロピレンを単独重合するまたはプロピレンおよびコモノマーを共重合することにより製造されたプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)と組み合わされる。
【0035】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー
上記で論じたように、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は典型的には、高分子系α晶造核剤(ii)のキャリアポリマーとして存在する。そのときプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の重量に対して0.5〜200ppm、好ましくは1〜100ppmなど1〜200ppmの高分子系α晶造核剤(ii)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。高分子系α晶造核剤(ii)がプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)を用いてプロピレンポリマー組成物(A)に導入される場合、高分子系α晶造核剤(ii)を含むプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(iii)の量は、プロピレンポリマー組成物(A)に対して0.1〜9.99重量%、好ましくはプロピレンポリマー組成物(A)に対して0.2〜4.99重量%、一層好ましくは0.2〜1.99重量%、特に0.2〜0.99重量%である。
【0036】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、どのようなプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーでもよい。好ましくはホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)に比較的類似している。よって、ホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、プロピレンのホモポリマーであることが好ましい。さらに、ホモポリマーまたはコポリマー(iii)の特性がホモポリマー(i)のそれと実質的に異なる場合、プロピレンポリマー組成物(A)中のホモポリマーまたはコポリマー(iii)の量は、2重量%を超えないことが好ましい。
【0037】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は好ましくは、少なくとも0.9の分岐指数gを有する。それによりプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は好ましくは、長鎖分岐を実質的に含まない。特に、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、検出可能な量の長鎖分岐を含まない。
【0038】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、当該技術分野において公知の方法に従って製造することができる。プロピレンポリマー組成物(A)について上記したように、1つの方法によればプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、式CH=CH−CHRのビニル化合物と予備重合される触媒の存在下でプロピレンを単独重合することにより製造される。式中、RおよびRは、上記で定義した通りである。好ましくはビニル化合物は、ビニルシクロヘキサンである。それによりプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、高分子系α晶造核剤(ii)により核形成される。そのときプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の重量に対して0.1〜200ppmの高分子系α晶造核剤(ii)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。
【0039】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)を製造するための重合プロセスおよび触媒は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)について上記した内容に類似している。それによりプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、高分子系α晶造核剤(ii)を含む触媒上に形成される。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、マグネシウム、チタン、塩素および内部ドナー、たとえばフタレート、マレエートまたはシトラコネートを含む固体成分と、アルキルアルミニウム、たとえばトリエチルアルミニウムと、外部ドナー、たとえばケイ素エーテル、たとえば、ジシクロペンチルジメトキシシランとを含むチーグラーナッタ触媒であって、式CH=CH−CHRの少量のビニル化合物、たとえばビニルシクロヘキサンと予備重合されているチーグラーナッタ触媒の存在下で、プロピレンを単独重合することにより、またはプロピレンとエチレンおよび4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンからなる群から選択される1種または複数種のコモノマーとを共重合することにより製造される。
【0041】
そのときプロピレンは、予備重合された触媒の存在下、1つまたは複数の重合ステップで単独重合されるあるいは共重合される。プロピレンの単独重合または共重合は、当該技術分野において公知の任意の好適な重合プロセスで、たとえばスラリー重合もしくは気相重合またはそれらの組み合わせで行うことができる。
【0042】
高分子系α晶造核剤(ii)を含むプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)を製造するための好適なプロセスは、とりわけ国際公開第99/24479A号、国際公開第00/68315A号、欧州特許出願公開第1801157A号、欧州特許出願公開第1801155A号および欧州特許出願公開第1818365A号に開示されている。そのとき典型的にはプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、0.1〜200重量ppmの高分子系α晶造核剤(ii)、好ましくは1〜100重量ppm、一層好ましくは5〜50重量ppmの高分子系α晶造核剤(ii)を含み、ppmはプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の重量に基づく。この実施形態ではさらに、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)がプロピレンホモポリマーであることが好ましく、かつプロピレンホモポリマーが、たとえば、少なくとも96重量%または少なくとも97重量%または少なくとも98重量%のように高い割合の冷キシレン不溶物で示される、比較的多い含有量のアイソタクチック材料を有することがさらに好ましい。
【0043】
従来の添加剤
加えてプロピレンポリマー組成物(A)は、1種または複数種の従来の添加剤(iv)を含む。本発明に使用される従来の添加剤(iv)は好ましくは、酸化防止剤、酸スカベンジャーおよび安定剤からなる群から選択される。
【0044】
本発明によるプロピレンのホモポリマーは、93〜98%のアイソタクチシティを有する。特に95〜98%のアイソタクチシティを有するプロピレンのホモポリマーがフィルムを作るのに使用されると、このポリマーは、90〜94%のアイソタクチシティを有する従来のプロピレンのホモポリマーより品質低下しやすいことが見出されている。したがって、このポリマーには、より効果的な安定化が必要とされる。
【0045】
本発明に使用される酸化防止剤および安定剤は好ましくは、ヒンダードフェノールの群、一層好ましくはリン(phosphorous)または硫黄を含まないヒンダードフェノールの群から選択される。
【0046】
本発明に使用される酸化防止剤および安定剤は特に好ましくは、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商標名Irganox 1330、Anox 330、Ethanox 330およびKinox−30で販売)、ペンタエリトリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)(商標名Irganox 1010、Anox 20、Ethanox 310TFおよびKinox−10で販売)、オクタデシル3−(3’,5’−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商標名Irganox 1076、Anox PP 18およびKinox−16で販売)、ブチルヒドロキシトルエン(商標名Ionol CPおよびVulkanox BHTで販売)、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert.ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商標名Irganox 3114、Anox IC−14、Ethanox 314およびKinox−34で販売)、および2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール(商標名Irganox E 210およびα−トコフェロールで販売)からなる群から選択される1種または複数種の化合物である。
【0047】
酸化防止剤および安定剤は好ましくは、プロピレンポリマー組成物(A)の重量に対して500〜8000ppmの総量で存在する。一層好ましくは、酸化防止剤および安定剤は、プロピレンポリマー組成物(A)の重量に対して800〜7000ppm、さらに一層好ましくは1000〜6000ppm、特に1500〜6000ppmの総量で存在する。
【0048】
特に、酸化防止剤および安定剤は好ましくは、リン(phosphorous)含有二次酸化防止剤、たとえばトリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスファイトを含まない。そうした化合物は、最終コンデンサーの散逸を増加させるためである。
【0049】
酸スカベンジャーは典型的には、ステアレートなど有機酸の塩である。酸スカベンジャーは、ポリマー中の酸を中和する機能を有する。そうした化合物の例としてステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛および酸化亜鉛がある。酸スカベンジャーは典型的には、50ppm〜2000ppm、一層好ましくは50ppm〜1000ppmの量で使用される。
【0050】
ポリマー組成物
本ポリマー組成物は、90〜99.99重量%、好ましくは90〜99.9重量%、一層好ましくは95〜99.9重量%、特に99〜99.9重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)を含む。加えて、本ポリマー組成物は、0.0000001〜1重量%の高分子系α晶造核剤(ii)を含む。本ポリマー組成物は、0.01〜1.0重量%の従来の添加剤(iv)をさらに含む。
【0051】
場合により、好ましくは、ポリマー組成物は、0〜9.99重量%の(i)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)を含む。存在する場合、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の量に対して0.1〜200ppm、好ましくは0.5〜100ppm、特に1〜50ppmの量で高分子系α晶造核剤を含む。そのとき高分子系α晶造核剤(ii)を含むプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の量は好ましくは、0.1〜10重量%、一層好ましくは0.1〜5重量%、特に0.1〜1重量%である。
【0052】
他に言及しない限り、上記のパーセンテージはすべて、プロピレンポリマー組成物の総量に基づく。
【0053】
本組成物は好ましくは、0.5〜10g/10min、好ましくは1〜7g/10minのメルトフローレートMFRを有する。
【0054】
好ましくはプロピレンポリマー組成物は、線状ポリプロピレンのみを含む。それにより、プロピレンホモポリマー(i)およびプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)は、長鎖分岐を含まない。さらに、長鎖分岐を含む別のポリマーを、プロピレンポリマー組成物に加えない。
【0055】
特に好ましくは、プロピレンポリマー組成物は、上記の量を有するプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)、高分子系α晶造核剤(ii)、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)および従来の添加剤(iv)からなる。
【0056】
特に好ましい実施形態によれば、プロピレンポリマー組成物(A)は好ましくは、95〜99.9重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の0.5〜100重量ppmの量で高分子系α晶造核剤(ii)を含む0.1〜5重量%のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)、および0.05〜0.8重量%の従来の添加剤(iv)からなる。
【0057】
さらにより好ましい実施形態によれば、プロピレンポリマー組成物(A)は、98.2〜99.8重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)の0.5〜100重量ppmまたは一層好ましくは1〜50重量ppmの量で高分子系α晶造核剤(ii)を含む0.1〜1重量%のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(iii)、および0.1〜0.8重量%の従来の添加剤(iv)を含み、好ましくはそれらからなる。
【0058】
BOPPフィルム
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、プロピレンポリマー組成物(A)を含む少なくとも1つの層を含む。加えて、フィルムは、さらなる層、たとえばフィルムが金属化されている場合、金属層をさらに含んでもよい。
【0059】
好ましくはプロピレンポリマー組成物(A)を含む層は、フィルム層の総重量に対して90〜100重量%のプロピレンポリマー組成物(A)を含む。一層好ましくは、層は、95〜100重量%、より一層好ましくは99〜100重量%など98〜100重量%のプロピレンポリマー組成物(A)を含む。特に好ましくは、フィルム層は、プロピレンコポリマー組成物(A)からなる。
【0060】
上記のように、フィルムは追加の層を含んでもよい。よって、フィルムは、たとえば、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)を含むもう1つの層を含むことが可能である。フィルムは、金属層をさらに含んでもよい。金属層は特に、フィルムがコンデンサーを作るのに使用される場合に存在する。
【0061】
1つの好適な方法によれば、フィルム層は、フラットダイを通して押し出される。押出物は、フィルムが固化するように冷却ロールで冷却される。次いで温度は、フィルムを加熱ローラに通すことにより145〜150℃に調整される。フィルムは、所望の温度を有するとき、終了時の延伸比が4:1〜10:1、好ましくは4:1〜6:1であるように1組または複数組の延伸ローラに通される。
【0062】
たとえば、融解物は最初に、ダイを通して冷却ロールに押し出される。冷却ロールは、典型的には10〜100℃、好ましくは20〜98℃の表面温度に冷却水で冷却される。シートの厚さは、50〜1000μm、好ましくは100〜500μmである。
【0063】
冷却ロール後のシートは好ましくは、プロピレンポリマー組成物中の結晶性ポリプロピレンの総量に対して多くて15重量%、一層好ましくは多くて12重量%、より一層好ましくは多くて10重量%のβ晶ポリプロピレンを含む。
【0064】
その後フィルムは、一連のアニーリングローラに通され、そこでフィルムが流れ方向に収縮しないような温度に加熱される。たとえば、シートは、オーブンから一連の加熱ロールおよび冷却ロールに送られる。例として、シートは、比較的低速度で動作する2つの加熱ロールに通され、そこから比較的高速で動作する2つの冷却ロールに通される。
【0065】
加熱オーブンの温度は典型的には120〜150℃、加熱ロールの表面温度は100〜160℃、好ましくは110〜150℃である。冷却ロールの速度に対する加熱ロールの速度の比率は典型的には、1:3〜1:10、好ましくは1:4〜1:6である。
【0066】
次いでフィルムは、フィルムを把持するクリップを含むチェーンに送られる。フィルムは、160℃よりやや高い温度に加熱され、その後チェーンは5:1〜10:1、好ましくは8:1〜10:1(最終幅:元の幅)の比率に広がる。その後フィルムは、収縮率を低下させるため約155℃〜160℃またはそれ超の範囲内の温度でアニールされる。その後、端部がトリミングされ、フィルムはスリットされ巻回される。
【0067】
当該技術分野において公知の任意の手段により、最終的な追加ポリマー層を製造してもよい。よって、最終的な追加ポリマー層は、本発明によるフィルム層と共に共押し出してもよく、好ましくは共押し出しされる。あるいは、最終的な追加ポリマー層は、積層してフィルム構造を形成してもよい。
【0068】
フィルムは、金属層をさらに含んでもよく、好ましくは金属層を含む。金属層は、電気溶融真空蒸着、イオンビーム真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングによるなど、当該技術分野において公知の任意のやり方でフィルム表面に堆積してもよい。そうした金属層の厚さは典型的には、100Å(0.01μm)〜5000Å(0.5μm)である。
【0069】
BOPPフィルムの厚さは典型的には、0.5〜10μm、好ましくは1〜3μmなど1〜6μmである。
【0070】
本発明の効果
本プロピレンポリマー組成物により、薄フィルム膜を作ることができる。このフィルムは優れた電気的特性を有する。フィルムは、簡便で実用的なプロセスにより製造することができる。フィルムは優れた熱安定性および耐老化性を有する。
【0071】
方法の説明
破壊電圧
破壊電圧(BDV:breakdown voltage)は、DIN IEC 60243−2に従って測定した。(電圧型:DC;電極構成:アルミニウム箔を有する球/平板)。
【0072】
NMR分光法による微細構造の定量
定量核磁気共鳴(NMR)分光法を使用してプロピレンホモポリマーのアイソタクチシティおよび位置規則性を定量した。
【0073】
定量13C{H}NMRスペクトルを、Hおよび13Cでそれぞれ400.15MHzおよび100.62MHzにて動作するBruker Advance III 400NMRスペクトロメーターを用いて溶液状態で記録した。すべてのスペクトルは、すべての空気に窒素ガスを用いて125℃で13C最適化10mm延長温度プロ−ブヘッドを使用して記録した。
【0074】
プロピレンホモポリマーの場合、約200mgの材料を1,2−テトラクロロエタン−d2(TCE−d2)に溶解させた。均一な溶液を確保するため、ヒートブロックで最初のサンプル調製後、NMRチューブをロータリーオーブンで少なくとも1時間さらに加熱した。磁石への挿入時にチューブを10Hzで回転させた。この構成は、主に立体規則性分布の定量に必要とされる高分解能のために選択した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromolecules 30(1997)6251)。NOEおよびバイレベル(bi−level)WALTZ16デカップリングスキームを利用して標準的なシングルパルス励起を使用した(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,15 B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。スペクトルあたり合計8192(8k)のトランジエント(transient)を得た。
【0075】
定量13C{H}NMRスペクトルを処理、積分し、独自のコンピュータープログラムを用いて積分値から関連する定量的特性を決定した。
【0076】
プロピレンホモポリマーの場合、化学シフトはすべて、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部標準とした。
【0077】
位置規則性欠陥(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)またはコモノマーに対応する特徴的なシグナルが観察された。
【0078】
立体規則性分布は、目的の立体配列に関係のない任意の部位を補正した23.6〜19.7ppmのメチル領域の積分により定量した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.,Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromolecules 30(1997)6251)。
【0079】
ペンタッドアイソタクチシティは、アイソタクチックペンタッド(mmmm)の分率を意味する。
【0080】
レオロジー:
動的レオロジー測定を、圧縮成形サンプルについてRheometrics RDA−II QCを用いて230℃で窒素雰囲気下、直径25mmのプレートおよびプレートジオメトリーにより行った。振動剪断実験は、0.015〜300rad/sの周波数で歪みの線形粘弾性範囲内にて行った(ISO 6721−10)。
【0081】
貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、複素弾性率(G)および複素粘度(η)の値は周波数の関数(ω)として得た。
【0082】
ゼロ剪断粘度(η)は、複素粘度の逆数として定義される複素流動度を用いて計算した。こうして、その実数部および虚数部は、
以下の方程式
η’=G’’/ωおよびη’’=G’/ω
f’(ω)=G’’(ω)・ω/[G’(ω)+G’’(ω)
f’’(ω)=G’(ω)・ω/[G’(ω)+G’’(ω)
から、下記により定義される。
f’(ω)=η’(ω)/[η’(ω)+η’’(ω)]および
f’’(ω)=η’’(ω)/[η’(ω)+η’’(ω)
【0083】
複素粘度率η(0.05rad/sec)/η(300rad/sec)、そして剪断減粘指数も、0.05rad/secでの複素粘度(η)と300rad/secでの複素粘度(η)の比である。
【0084】
多分散性指数PI、PI=10/Gは、G’(ω)とG’’(ω)の交差点から計算され、G’(ω)=G’’(ω)=Gが成り立つ。
【0085】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR、MFR)は、2.16kgの荷重下230℃でISO 1133に従って測定した。
【0086】
フィルムの融解温度および結晶化度
融解温度は、TA Instrument Q200示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)を用いて約5〜7mgのフィルムサンプルで測定した。DSCは、−30〜+225℃の30温度領域で10℃/minの走査速度にて熱/冷/熱サイクルでISO 11357/第3部/方法C2に準拠して行われる。結晶化度は、測定された融解エンタルピー(J/g単位)を100%結晶ポリプロピレンの融解エンタルピー、209J/gで除して得られる。
【0087】
広角X線散乱(WAXS:Wide−angle X−ray Scattering)
ディフラクトグラムは、40kVおよび40mAで動作する銅ターゲットを有するX線管およびGADDS 2−D検出器を備えたBruker D8 Discoverを用いて反射配値で得た。各サンプルについて、優れた信号対雑音比を確保するためサンプルの厚さに応じて300秒から最大1時間まで様々な取得時間で3回の測定を行った。ペレットの解析の場合、サンプルは、融解物を制御された標準的な10℃/minの冷却速度で冷却することによりDSCで調製した。二次元パターンを2θ=10°〜2θ=32.5°で積分して強度対2θの1次元曲線を得た。アタクチックポリプロピレンから得られたアモルファスハローを適切にスケーリングし、実際のサンプルで得られた強度対2θ曲線各々から差し引いた。こうして結晶曲線が得られる。
【0088】
結晶化度Xcの程度は、Challaその他(Makromol.Chem.vol.56(1962),pages 169−178)により提案された方法を用いて、下記として結晶曲線下面積と最初の曲線下面積の比率と定義される。
【0089】
【数1】
【0090】
全結晶性ポリマー由来のβ晶ポリマーの量(Kβ)は、Turner−Jonesその他(Macromol.Chem.Vol 75(1964),pages 134−158)により提案された方法を用いて下記として計算した。
【0091】
【数2】
【0092】
ここでIβ(300)はβ(300)反射の強度、Iα(110)はα(110)反射の強度、Iα(040)はα(040)反射の強度、Iα(130)はα(130)反射の強度である。
【0093】
黄色度指数
黄色度指数は、ASTM E−313に従って決定した。
【0094】
灰分含有量
ポリマーの灰分含有量は、秤量済み白金るつぼでポリマーを燃焼させて測定した。約100グラムのポリマーをるつぼに秤量する。次いでポリマーがゆっくりと燃えるようにるつぼをブンゼンバーナーの火炎で加熱する。ポリマーが完全に燃えた後、るつぼを冷却し、乾燥させて秤量する。灰分含有量は、そのとき残渣の重量をポリマーサンプルの重量で除した値である。少なくとも2回の測定を行い、測定値間の差が7ppm超である場合、3回目の測定を行う。
【0095】
キシレン可溶性
キシレン可溶性画分の量は、ISO 16152に従って測定した。冷却後25℃で溶解したままであるポリマーの量を、キシレン可溶性ポリマーとし、それに応じて残りの部分は冷キシレン不溶性ポリマーとなる。
【実施例】
【0096】
参考例1
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(i)の調製
欧州特許出願公開第2543684A号の発明例1による重合プロセスをプロピレンの重合に使用した。重合反応器のそれぞれにおいて約3.9g/10minのMFRを有するプロピレンホモポリマーが製造されるように、水素およびプロピレンを反応器に供給した。ポリマーに4500ppmの量でIrganox 1010、1000ppmの量でBHT、および70ppmのステアリン酸カルシウムを加えた。プロピレンホモポリマーは、5.5Pa−1の多分散性指数、14の剪断減粘指数、8ppmの灰分含有量および96.2%のペンタッドアイソタクチシティを有した。
【0097】
参考例2
プロピレンホモポリマーが3.9g/10minのMFRを有したこと以外は、参考例1の手順を繰り返した。
【0098】
参考例3
ポリマー造核剤(ii)を含むプロピレンホモポリマー(iii)の調製
(a)固体触媒成分の調製
最初に、0.1molのMgCl×3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器において250mlのデカンに懸濁させた。この溶液を−15℃の温度まで冷却し、温度を前記水準で維持しながら、300mlの冷TiClを加えた。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃に上昇させた。この温度で、スラリーに0.02molのジオクチルフタレート(DOP)を加えた。フタレートの添加後、温度を90分の間に135℃に上げ、スラリーを60分間静置した。次いで、別の300mlのTiClを加え、温度を135℃で120分間維持した。この後、この液体から触媒を濾過し、80℃にてヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分を濾過し、乾燥させた。
【0099】
(b)ビニルシクロヘキサンを用いた予備重合
トリエチルアルミニウム(TEAL)、ドナー(Do)としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、上記で製造した触媒およびビニルシクロヘキサン(VCH)を、Al/Tiが3〜4mol/mol、Al/Doも同様に3〜4mol/mol、およびVCH/固体触媒の重量比率が1/1になるような量で油、たとえばTechnol 68に加えた。この混合物を60〜65℃に加熱し、反応混合物中の未反応ビニルシクロヘキサンの含有量が1000ppm未満になるまで反応させた。最終油−触媒スラリー中の触媒濃度は10〜20wt%であった。
【0100】
(c)重合
40dmの容積を有する撹拌槽型反応器を、28℃の温度および54barの圧力で液体充填した反応器として運転した。反応器に、反応器の平均滞留時間が0.3時間になるようにプロピレン(70kg/h)と、プロピレンに対する水素の供給比が0.1mol/kmolになるように水素と、上記の説明に従って調製した2.6g/hの重合触媒とを、共触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEA)および外部ドナーとしてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と共に、TEA/Tiのモル比が約130mol/molおよびTEA/DCPDMSが130mol/molになるように供給した。
【0101】
この予備重合反応器からスラリーを、145kg/hのプロピレンおよび水素と一緒に、プロピレンコポリマーのMFRが3g/10minになるように、150dmの容積を有するループ反応器に移した。ループ反応器は、80℃の温度および54barの圧力で運転した。プロピレンホモポリマーの製造速度は25kg/hであった。
【0102】
ループ反応器からポリマースラリーを、75℃の温度および27barの圧力で運転された第1の気相反応器に直接導いた。反応器に追加のプロピレンおよび水素を供給した。反応器の製造速度は22kg/hであり、反応器から取り出したコポリマーは3g/10minのメルトフローレートMFRを有した。コポリマーのXCSは1.8%であった。気相反応器で製造されたポリマーに対するループ反応器で製造されたポリマーの割合は53:47であった。
【0103】
ポリマーを反応器から取り出し、有効量のIrgafos 168、Irganox 1010およびステアリン酸カルシウムと混合した。
【0104】
上記の説明に従い製造したポリマーと添加剤の混合物を、ZSK70押出機(コペリオン(Coperion)の製品)を35のL/Dで使用してペレットとして押し出した。比投入エネルギーは180kWh/tonであった。ダイプレートでの融解温度は265℃であった。
【0105】
ペレットを回収し、乾燥させて解析した。ペレット化したコポリマーは3.8g/10minのMFRを有した。ポリマーは、約20ppmのポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)を含んでいた。
【0106】
参考例4
0.2g/10minのMFRを有する粉末形態のプロピレンのホモポリマー100重量部を、0.1重量部のステアリン酸カルシウムおよび0.5重量部のビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5,−ジメチルヘキサンおよび1.1重量部のブタジエンと一緒に、45℃の温度で作動させた連続ミキサーに仕込んだ。これらの成分を、ミキサー内の平均滞留時間が6分になるように、窒素雰囲気でミキサーを並流、実質的な栓流で通過させた。ペルオキシドおよびブタジエンを含浸させた粉末をミキサーから、0.1重量部のテトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン)および0.1重量部のトリス(2,4,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトと一緒に2軸スクリュー押出機に導入した。押出機内の融解物の温度は約235℃であった。未反応ブタジエンを除去するため水をストリッピング剤として使用して、融解物を押出機の下流端で脱気した。
【0107】
得られたポリマーは、1.0重量%の組み込まれたブタジエン単位を含み、0.85g/10minのMFRを有していた。
【0108】
実施例1
参考例1により製造された99.5重量%のポリマーと、参考例3により製造された0.5重量%のポリマーとのペレットのブレンドをペレットとして押し出した。こうして得られたペレットを押し出し、ブルックナー・マシネンバウ(Brueckner Maschinenbau)製フィルムおよび配向ライン(Karo IV実験用延伸機:温度159℃、歪み速度400%/s)でBOPPフィルムに配向処理した。フィルムは、流れ方向に7:1の比率、および垂直方向に7:1の比率で配向処理した。フィルムの厚さは6μmであった。
【0109】
それによりプロピレンポリマー組成物は、0.1ppmのPVCHを含んでいた。フィルムのポリマーを解析に供した。データを表1に示す。
【0110】
実施例2
参考例1の樹脂の代わりに参考例2の樹脂を使用したこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0111】
比較例1
参考例3により製造されたポリマーは組成物中に存在せず、よって組成物は参考例2により製造された樹脂のみを含んでいたこと以外は、実施例2の手順を繰り返した。
【0112】
比較例2
ポリマーに、β晶造核剤としてBASFにより提供された4重量ppmのキナクリドンキノンCGNA−7588を加えたこと以外は、比較例1の手順を繰り返した。
【0113】
比較例3
参考例3により製造されたポリマーの代わりに参考例4により製造されたポリマーを、組成物の総量に対して2重量%の量で使用したこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0114】
比較例4
BASFにより提供されたキナクリドンキノンCGNA−7588の量が1重量ppmであったこと以外は、比較例2の手順を繰り返した。
【0115】
比較例5
参考例2により製造された樹脂の代わりに99.5重量%の参考例2により製造された樹脂および0.5重量%の参考例4により製造された樹脂を含むブレンドを使用したこと以外は、比較例4の手順を繰り返した。
【0116】
比較例6
ブレンドが99.75重量%の参考例2により製造された樹脂および0.25重量%の参考例4により製造された樹脂を含んでいたこと以外は、比較例5の手順を繰り返した。
【0117】
実施例1および比較例1〜6のフィルムを、破壊電圧(BDV)を測定するための試験に供した。データを表2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例1および2ならびに比較例1および5のフィルム製造中にサンプルを、配向前、冷却ロール後に250μmシートから採取した。データを表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
実施例3
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、実施例2の手順を繰り返した。データを表4に示す。
【0123】
比較例7
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、比較例5の手順を繰り返した。データを表4に示す。
【0124】
比較例8
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えた以外は、比較例1の手順を繰り返した。データを表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例4
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0127】
比較例9a
欧州特許出願公開第2543684A号の比較例2による重合プロセスを、プロピレンの重合のため使用した。外部ドナーの量を低下させて96%のペンタッドアイソタクチシティを得た。
【0128】
こうして得られたペレットを押し出し、ブルックナー・マシネンバウ製フィルムおよび配向ライン(Karo IV実験用延伸機:温度159℃、歪み速度400%/s)でBOPPフィルムに配向処理した。フィルムは、流れ方向に7:1の比率、および垂直方向に7:1の比率で配向処理した。フィルムの厚さは6μmであった。
【0129】
比較例9b
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、比較例9aの手順を繰り返した。
【0130】
比較例10a
参考例1のポリマーを、ボレアリス(Borealis)から市販されている高溶融張力ポリプロピレンWB140HMSおよびβ晶造核剤γ−キナクリドンと、WB140HMSの最終量が1wt.%、γ−キナクリドンの最終量が1ppmになるようにブレンドした。
【0131】
こうして得られたペレットを押し出し、ブルックナー・マシネンバウ製フィルムおよび配向ライン(Karo IV実験用延伸機:温度159℃、歪み速度400%/s)でBOPPフィルムに配向処理した。フィルムは、流れ方向に7:1の比率、および垂直方向に7:1の比率で配向処理した。フィルムの厚さは6μmであった。
【0132】
比較例10b
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、比較例10aの手順を繰り返した。
【0133】
比較例11a
5.43Pa−1の多分散性指数を得るため水素濃度を調整した参考例1を繰り返した。
【0134】
こうして得られたペレットを押し出し、ブルックナー・マシネンバウ製フィルムおよび配向ライン(Karo IV実験用延伸機:温度159℃、歪み速度400%/s)でBOPPフィルムに配向処理した。フィルムは、流れ方向に7:1の比率、および垂直方向に7:1の比率で配向処理した。フィルムの厚さは6μmであった。
【0135】
比較例11b
配向ステップを最終フィルムが3μmの厚さを有するように変えたこと以外は、比較例11aの手順を繰り返した。
【0136】
特性を以下の表に示す。収縮率は、フィルムの製造の1時間後に測定した。
【0137】
【表5】
【0138】
さらに、実施例1ならびに比較例9a、10aおよび11aでは、2週間および4週間後のフィルムの収縮率の変化も測定した。結果を1時間後に得られた値からのずれ、すなわち%単位のΔ(収縮率)として示す。
【0139】
【表6】
【0140】
上記から分かるように、本発明のフィルムは改善された引張特性および低下した収縮率を有するだけでなく、本発明のフィルムは短縮されたアニール時間も有する。よって、本フィルムは製造後すぐに加工することができる。