(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592207
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための流体移送デバイス
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-563887(P2018-563887)
(86)(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公表番号】特表2019-517352(P2019-517352A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】IL2017050624
(87)【国際公開番号】WO2017212480
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2019年2月6日
(31)【優先権主張番号】246073
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】IL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506361719
【氏名又は名称】ウエスト・ファーマ.サービシーズ・イスラエル,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】デネンバーグ,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ダビデ,ウリ
【審査官】
村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−514114(JP,A)
【文献】
特表2015−509431(JP,A)
【文献】
特表2013−542805(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0298768(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0104584(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/105221(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/004360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬瓶と、薬剤ポンプカートリッジであって、液剤内容物を前記薬瓶から前記薬剤ポンプカートリッジへ移送するための薬剤ポンプカートリッジと、ともに使用するための流体移送デバイスであって、
前記薬瓶は、薬瓶ストッパによってシールされ、投与目的で用量ボリュームの液剤内容物を収容する、頂部が開口した薬瓶ボトルを有し、
前記薬剤ポンプカートリッジは、カートリッジ先端を有する端部が開口したカートリッジチューブと、該カートリッジ先端をシールするカートリッジセプタムと、前記用量ボリューム以上の最大用量ボリュームの液剤内容物をシールするための、前記カートリッジセプタムから離間した摺動可能な駆動プランジャと、を有し
前記流体移送デバイスは、
(a)長手方向バレル中央線を有するデュアル開放端バレルであって、前記デュアル開放端バレルを、前記薬瓶に入れ子式に取り付けるための薬瓶ポートと、端部が開口したピストンシリンダと、に区切る交差方向隔壁を有するデュアル開放端バレルを備え、
前記隔壁は、前記薬瓶ポートを前記薬瓶に入れ子式に取り付ける際に前記薬瓶ストッパを穿刺するために前記薬瓶ポート内へ延在するデュアル内腔薬瓶ストッパ穿刺カニューレを有し、
前記デュアル内腔薬瓶ストッパ穿刺部材は、液体内腔と空気内腔とを備え、
前記流体移送デバイスは、さらに、
(b)前記交差方向隔壁とともに圧縮室をシールするために、前記端部が開口したピストンシリンダ内に摺動的に取り付けられるピストンヘッドを備え、
前記圧縮室は、前記空気内腔に流れ連通し、
前記ピストンヘッドは、前記カートリッジ先端に入れ子式に取り付けるための薬剤ポンプカートリッジポートを有し、
前記薬剤ポンプカートリッジポートは、前記薬剤ポンプカートリッジポートを前記カートリッジ先端に入れ子式に取り付ける際に前記カートリッジセプタムを穿刺するために、主カートリッジセプタム穿刺カニューレと、副カートリッジセプタム穿刺カニューレと、を備え、
前記主カートリッジセプタム穿刺カニューレは、前記薬瓶と前記薬剤ポンプカートリッジとの間での液体移送のために前記液体内腔にシール流れ連通し、
前記副カートリッジセプタム穿刺カニューレは、前記薬剤ポンプカートリッジポートを前記カートリッジ先端に入れ子式に取り付ける際に前記薬剤ポンプカートリッジを通気させ、
前記流体移送デバイスは、前記圧縮室内に空気を捕捉するために前記ピストンヘッドが前記交差方向隔壁から離間する初期セットアップ位置と、前記摺動可能な駆動プランジャを移動させることなく前記薬瓶の用量ボリュームの液剤内容物を前記薬剤ポンプカートリッジ内に押し進めるために前記捕捉された空気を前記薬瓶内に押し進めるために前記ピストンヘッドが前記交差方向隔壁に向けて挿入ストロークに沿って摺動的に挿入される最終充填位置と、を有する
流体移送デバイス。
【請求項2】
負圧下の薬瓶と、液体内容物を収容する予備充填された薬剤ポンプカートリッジと、とともに使用するための請求項1に記載のデバイスであって、
前記空気内腔を選択的に開閉するための手動操作式流れ制御装置をさらに備え、
前記流れ制御装置は、最初に前記薬剤ポンプカートリッジポートを前記カートリッジ先端に入れ子式に取り付け、次いで前記薬瓶内に前記液剤内容物を形成するために前記薬瓶ポートを前記薬瓶に入れ子式に取り付ける際に液体内容物を前記薬剤ポンプカートリッジから前記薬瓶へ積極的に吸引することを可能にするために前記初期セットアップ位置において前記空気内腔を閉じるための初期閉状態を有し、
前記流れ制御装置は、前記液剤内容物を前記薬瓶から前記通気された薬剤ポンプカートリッジへ移送するために前記初期セットアップ位置から前記最終充填位置まで前記ピストンヘッドを前記ピストンシリンダ内へ摺動的に挿入する際に前記捕捉された空気を前記圧縮室から前記薬瓶内へ押し進めることを可能にするために前記空気内腔を開くための後続の開状態を有する
デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、
前記流れ制御装置は、前記空気内腔に交差する流れ制御部材シャンクと、前記流れ制御部材を回転させるための流れ制御部材ハンドルと、を有する手動で回転可能な流れ制御部材を備え、
前記流れ制御部材シャンクは、貫通穴を有し、前記貫通穴と前記空気内腔との連通を許容または阻止するように回転することによって、前記空気内腔を選択的に開閉するように構成されている
デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記ピストンヘッドは、前記初期セットアップ位置において前記ピストンヘッドを前記端部が開口したピストンシリンダ内に摺動的に挿入することを防止するために、前記初期閉状態において前記流れ制御部材ハンドルに当接するためのストッパ部材を備える
デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記交差方向隔壁は、前記初期セットアップ位置において初期部分挿入から前記液体内腔内に摺動的に挿入するために前記薬剤ポンプカートリッジポートとは反対側を向けられた移送チューブを備える
デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための流体移送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液剤を自己投与するための薬剤ポンプは、典型的には、カートリッジ先端に位置する、カートリッジセプタムによって密封シールされた開放端を有するカートリッジチューブと、反対側のカートリッジ後端に位置する摺動可能な駆動プランジャと、を備えるいわゆる薬剤ポンプカープルまたはカートリッジを使用する。薬剤ポンプカートリッジは、即座に投与する準備ができた薬剤内容物を予備充填されないが、空の状態か、復元目的または希釈目的で希釈剤が予備充填された状態で供給される。このため、薬剤ポンプカートリッジは、薬剤ポンプ内に挿入される前に液剤内容物で充填される必要がある。
【0003】
薬剤ポンプは、薬剤ポンプカートリッジの摺動可能な駆動プランジャの静的および動的摩擦特性を考慮するために必ず較正される。しかしながら、薬剤ポンプカートリッジを液剤内容物で充填するために液剤充填手順中に、摺動可能な駆動プランジャを移動させると、その静的および動的摩擦特性が大きく変化する。さらに、薬剤ポンプカートリッジは、それらの摺動可能な駆動プランジャが移動した後に、それらの摩擦特性が比較的大きく変化する。このため、薬剤ポンプカートリッジは、好ましくは、その摺動可能な駆動プランジャが移動することなく、その摺動可能な駆動プランジャが投与目的で液剤内容物の必要な用量ボリューム以上の最大用量ボリュームをシール状態で包囲した状態で供給され、それによって、薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作が提供される。
【0004】
国際公開WO2007/105221として公開された、カートリッジとともに使用するための流体移送デバイスとの標題の本願出願人が所有する国際出願PCT/IL2007/000343は、その摺動可能な駆動プランジャが移動することなく薬剤ポンプカートリッジを充填するためにニードレス注射器の使用が必要であり、それによって、薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作が提供される流体移送デバイスを開示している。
【0005】
国際公開WO2011/004360として公開された、液剤用量を有するカートリッジを充填するための流体移送デバイスとの標題の本願出願人が所有する国際出願PCT/IL2011/000530は、薬剤ポンプカートリッジを充填するために注射器の使用を必要としないが、その摺動可能な駆動プランジャを移動させ、それによって、薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作を行うことができない流体移送デバイスを開示している。
【0006】
同様に、バイアルとカープルとの間の液体の双方向移送のためのデバイスとの標題の、Delayに付与された米国特許第6,752,180号は、薬剤ポンプカートリッジの摺動可能な駆動プランジャを移動させ、それによって、薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作を行うことができない流体移送デバイスを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作のために、その摺動可能な駆動プランジャを移動させることなく薬剤ポンプカートリッジを充填するための流体移送デバイスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本発明は、投与目的で薬剤ポンプカートリッジを液剤内容物で充填するための流体移送デバイスを対象としている。液剤内容物の用量ボリュームは、薬剤ポンプカートリッジを充填する前に既知であり、したがって、薬剤ポンプカートリッジは、その摺動可能な駆動プランジャが、液剤内容物の用量ボリューム以上の最大用量ボリュームをシール状態で包囲した状態で供給され得る。その結果、薬剤ポンプカートリッジは、その摺動可能な駆動プランジャを移動させることなく充填され得る。それによって、薬剤ポンプの信頼性の高い較正された動作が確保される。本発明の流体移送デバイスは、次の2つにタイプに区分され得る。1つ目は、投与準備ができた液剤内容物を薬瓶から移送して、最初は空の薬剤ポンプカートリッジを充填するものである。そして、2つ目は、液剤内容物を薬瓶内に形成するために、最初に予備充填された薬剤ポンプカートリッジから液体内容物を薬瓶に移送し、その後、液剤内容物を薬瓶から薬剤ポンプカートリッジへ移送するものである。後者のタイプは、復元または希釈を目的として、最初に予備充填された薬剤ポンプカートリッジから薬瓶内へ液体内容物を積極的に吸引することを可能にするために、必ず、負圧下の薬瓶とともに使用される。
【0009】
第1のタイプの流体移送デバイスは、長手方向流体移送デバイス中央線を有しており、また、デュアル開放端バレルを備えている。デュアル開放端バレルは、交差方向隔壁によって、薬瓶に入れ子式に取り付けるための薬瓶ポートと、薬剤ポンプカートリッジのカートリッジ先端に入れ子式に取り付けるための薬剤ポンプカートリッジポートを有するピストンヘッドを摺動的に受け入れるための開放端ピストンシリンダと、に区画される。組み立てる際に、薬瓶は、薬剤ポンプカートリッジと連続的に液体流れ連通する。薬剤ポンプカートリッジは通気される。ピストンヘッドは、最初、交差方向隔壁から離間して、圧縮室をシールする。ピストンヘッドをピストンシリンダ内へ摺動的に挿入して交差方向隔壁に突き当たると、圧縮室内に閉じ込められた空気が薬瓶内に押し進められ、それによって、その液剤内容物が、通気された薬剤ポンプカートリッジ内に押し進められる。
【0010】
第2のタイプの流体移送デバイスは、第1のタイプと類似しており、さらに、最初に予備充填された薬剤ポンプカートリッジから薬瓶内へ液体内容物を積極的に吸引することを可能にするために、薬瓶と圧縮室との間の流れ連通を選択的に開閉するための手動操作式流れ制御装置を備えている。
【0011】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施され得るのかを理解するために、次に、好ましい実施形態について、同様の部分に同様の番号を付した添付図面を参照して、単なる非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】薬剤ポンプカートリッジと、薬瓶と、本発明の第1の好ましい実施形態にしたがった流体移送デバイスと、を備えるキットの絵図である。
【
図3】
図1の流体移送デバイスの底部斜視図である。
【
図4】
図1の線4−4に沿った、その初期セットアップ位置にある
図1の流体移送デバイスの縦断面図である。
【
図5】
図1の線5−5に沿った、その初期セットアップ位置にある
図1の流体移送デバイスの縦断面図である。
【
図8】
図7の線8−8に沿った、ピストンヘッドの縦断面図である。
【
図9A】液剤内容物を薬剤ポンプカートリッジへ移送する前の、
図1の流体移送デバイスと、薬瓶と、薬剤ポンプカートリッジと、を備える流体移送アセンブリの縦断面図である。
【
図9B】液剤内容物を薬剤ポンプカートリッジへ移送した後の、
図1の流体移送デバイスと、薬瓶と、薬剤ポンプカートリッジと、を備える流体移送アセンブリの縦断面図である。
【
図10】患者への投与準備ができた液剤内容物で薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図1のキットの使用方法を示している。
【
図11】薬剤ポンプカートリッジと、薬瓶と、本発明の第2の好ましい実施形態にしたがった、手動操作式流れ制御装置を有する流体移送デバイスと、を備えるキットの絵図である。
【
図13】手動操作式流れ制御装置のL字状の流れ制御部材の正面図である。
【
図14】
図13の線14−14に沿った、L字状の流れ制御部材の横断面図である。
【
図15A】初期閉状態にある流れ制御装置を有する
図11の流体移送デバイスと、薬瓶と、薬剤ポンプカートリッジから薬瓶へ液体内容物を吸引するための薬剤ポンプカートリッジと、を備える流体移送アセンブリの側面図である。
【
図16A】最終開状態にある流れ制御装置を有する
図11の流体移送デバイスと、薬瓶と、液剤内容物を薬瓶から薬剤ポンプカートリッジへ移送する準備ができた薬剤ポンプカートリッジと、を備える流体移送アセンブリの側面図である。
【
図17A】患者への投与準備ができた液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図11のキットの使用方法を示している。
【
図17B】患者への投与準備ができた液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図11のキットの使用方法を示している。
【
図17C】患者への投与準備ができた液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図11のキットの使用方法を示している。
【
図17D】患者への投与準備ができた液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図11のキットの使用方法を示している。
【
図17E】患者への投与準備ができた液剤内容物を有する薬剤ポンプカートリッジを充填するための
図11のキットの使用方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
薬瓶から最初は空の薬剤ポンプカートリッジへの液剤内容物の移送
図1は、キット100を示している。キット100は、最初は空の薬剤ポンプカートリッジ10Aと、液剤内容物を収容する薬瓶30Aと、薬瓶30Aから薬剤ポンプカートリッジ10Aへ液剤内容物を移送するための流体移送デバイス40Aと、を備えている。流体移送デバイス40Aは、長手方向流体移送デバイス中央線41を有しており、また、デュアル開放端バレル42を備えている。
【0014】
図2は、薬剤ポンプカートリッジ10Aが、長手方向薬剤ポンプカートリッジ中央線11を有しており、また、開放端カートリッジチューブ12と、小径カートリッジ先端13と、中間ネック部14と、大径カートリッジ後端16と、を備えていることを示している。カートリッジ先端13は、金属バンド18によって覆われるカートリッジセプタム17によって密封シールされる。カートリッジ先端13は、露出した2mm〜3mmの直径の円形セプタム面19を有している。カートリッジ後端16は、カートリッジ室22を境界付けるための摺動可能な駆動プランジャ21によって密封シールされる。カートリッジ室22の容積は、摺動可能な駆動プランジャ21が完全に挿入され、カートリッジ先端13に当接するときのゼロから最大用量ボリュームV1まで可変である。
【0015】
図1は、薬瓶30Aが、長手方向薬瓶中央線31を有しており、また、金属バンド34によって覆われる薬瓶ストッパ33によって最初は密封シールされる頂部が開口したバイアルボトル32を備えていることを示している。薬瓶30Aは、投与目的で、既知の用量ボリュームV2の液剤内容物36を収容する。液剤内容物36は、従来の雌薬瓶アダプタと、希釈剤または活性液体化合物を収容するニードルレス注射器と、によって用意されてもよい。
【0016】
次いで
図3〜8を参照すると、デュアル開放端バレル42は、デュアル開放端バレル42を、薬瓶30Aに入れ子式に取り付けるための薬瓶ポート44と、開放端ピストンシリンダ46と、に区切る交差方向隔壁43を備えている。薬瓶ポート44は、薬瓶30Aへの従来のスナップ嵌めのために内側に向けられた突出部48を有する撓み部材47を備えている。交差方向隔壁43は、長手方向中央デュアル内腔穿刺カニューレ49を有して形成される。長手方向中央デュアル内腔穿刺カニューレ49は、流体移送デバイス40Aを薬瓶30Aに入れ子式に取り付ける際に薬瓶ストッパ33を穿刺するために薬瓶ポート44内に延在する。デュアル内腔穿刺カニューレ49は、液体内腔51と空気内腔52とを備えている。液体内腔51は、空気内腔52よりも大きな内腔直径を有している。
【0017】
流体移送デバイス40Aは、ピストンヘッド先端53Aと、ピストンヘッド後端53Bと、を有するピストンヘッド53を備えている。ピストンヘッド53は、ピストンヘッド先端53Aが交差方向隔壁43とともに圧縮室54を境界付けるように、ピストンシリンダ46内に摺動的に挿入される。ピストンヘッド53は、圧縮室54を貫通するための、液体内腔51に摺動的にシール挿入するような形状および寸法を有する長手方向移送チューブ56を有して形成される。移送チューブ56は、流体移送デバイス40Aの初期セットアップ位置において液体内腔51内に挿入される移送チューブ先端56Aを備えている。
【0018】
ピストンヘッド53は、カートリッジ先端13にぴったりと取り付けるための、交差方向隔壁43から離れた薬剤ポンプカートリッジポート57を有して形成される。薬剤ポンプカートリッジポート57は、ピストンシリンダ46内でのピストンヘッド53の移動を安定化させるための径方向に向けられた複数のベーン58を有して形成される。薬剤ポンプカートリッジポート57は、カートリッジ先端13を摺動的に挿入する際にカートリッジセプタム17を穿刺するための穿刺カニューレ59を有して形成される。穿刺カニューレ59は、穿刺カニューレ59が液体内腔51に流れ連通するように、移送チューブ56に流れ連通する。薬剤ポンプカートリッジポート57は、カートリッジ先端13を摺動的に挿入する際にカートリッジセプタム17を穿刺するための通気式穿刺カニューレ61を有して形成される。通気式穿刺カニューレ61は、隣接するベーン58同士の間で通気される。
【0019】
流体移送デバイス40Aは、流体移送デバイス40Aを薬剤ポンプカートリッジ10Aに入れ子式に取り付ける際に、ピストンヘッド53がピストンシリンダ46内で摺動を開始する前に薬剤ポンプカートリッジポート57がカートリッジセプタム17を穿刺するように構成される。
【0020】
図9Aおよび
図9Aは、次のように、流体移送デバイス40Aの2つの動作位置を示している。
【0021】
図9Aは、初期セットアップ位置を示している。初期セットアップ位置では、薬瓶ポート44は、最初は満たされた薬瓶30Aに入れ子式に取り付けられ、薬剤ポンプカートリッジポート57は、最初は空の薬剤ポンプカートリッジ10Aに入れ子式に取り付けられ、ピストンヘッド53は、交差方向隔壁43から離間する。移送チューブ先端56Aは、液体内腔51内にある。圧縮室54は、閉じ込められた空気を収容する。
【0022】
図9Bは、最終充填位置を示している。最終充填位置では、ピストンヘッド53は、交差方向隔壁43に当接し、移送チューブ56は、液体内腔51内にほぼ完全に挿入される。ピストンヘッド53をピストンシリンダ46内に摺動的に挿入すると、
図9Aに矢印Aで示すように、圧縮室54内の閉じ込められた空気が薬瓶30A内に押し進められる。閉じ込められた空気を薬瓶30A内に押し進めることによって、矢印Bで示すように、液剤内容物36が薬瓶30Aから薬剤ポンプカートリッジ10A内に押し進められる。液剤内容物36を薬剤ポンプカートリッジ10A内に押し進めることによって、矢印Cで示すように、通気式穿刺カニューレ61を通って空気が放出される。摺動可能な駆動プランジャ21は、充填手順の間、カートリッジセプタム17から同じ変位量のところに留まる。
【0023】
図10A〜10Dは、薬瓶30Aから、最初は空の薬剤ポンプカートリッジ10A内へ液剤内容物36を移送するためのキット100の使用方法を示している。薬剤ポンプカートリッジ10Aは、薬剤ポンプカートリッジ10Aの充填中に、摺動可能な駆動プランジャ21がその初期位置から移動しないようにするために、カートリッジ室22をシールするためのカートリッジセプタム17から最初は離間されるその摺動可能な駆動プランジャ21が、既知の用量ボリュームV2以上の最大用量ボリュームV1を有する状態で供給される。V1=V2の場合、カートリッジ室22は、薬剤ポンプの作動時に液剤内容物が薬剤ポンプカートリッジ10Aから即座に圧送されるように、液剤内容物36によって完全に満たされる。V1>V2の場合、カートリッジ室22は、液剤内容物がそこから圧送される前に薬剤ポンプが最初に薬剤ポンプカートリッジ10Aから空気を流出させるように、液剤内容物36によって部分的に満たされる。
図10A〜10Dは、最大用量ボリュームV1と用量ボリュームV2とが等しい場合に液剤内容物を移送するためのキット100の使用方法を示している。
【0024】
図10Aは、薬瓶30Aを穿刺するために流体移送デバイス40Aを薬瓶30Aに入れ子式に取り付ける様子を示している。液体内腔51および空気内腔52の両方は、薬瓶ボトル32に流れ連通している。
【0025】
図10Bおよび
図10Cは、液剤内容物36を薬瓶30Aから薬剤ポンプカートリッジ10Aに移送するための、流体移送デバイス40Aおよび薬瓶30Aを逆さまにすることと、流体移送デバイス40Aを薬剤ポンプカートリッジ10Aに取り付けるための単一の連続的な挿入ストロークと、を示している。単一の連続的な挿入ストロークは、次のように、2つの連続的な動作を効率的に行う。
【0026】
図10Bは、流体移送アセンブリ101を形成するために薬剤ポンプカートリッジポート57をカートリッジ先端13に取り付ける様子を示している。穿刺カニューレ59および通気式穿刺カニューレ61の両方は、カートリッジセプタム17を穿刺して、カートリッジ室22に流れ連通する。流体移送アセンブリ101は、初期セットアップ高さH1を有している。
【0027】
図10Cは、摺動可能な駆動プランジャ21を移動させることなく、液剤内容物36を薬瓶30Aから薬剤ポンプカートリッジ10Aへ移送するために交差方向隔壁43に当接するために、ピストンヘッド53がピストンシリンダ46内に完全に挿入された様子を示している。流体移送アセンブリ101は、挿入ストロークの長さだけ最終充填高さH2まで縮小されている。H1>H2である。
【0028】
図10Dは、患者に液剤内容物36を投与するために薬剤ポンプ内へ挿入するために、現在充填されている薬剤ポンプカートリッジ10Aを流体移送デバイス40Aから取り外す様子を示している。流体移送デバイス40A、および、現在空になっている薬瓶30Aは、廃棄されてもよい。
【0029】
薬瓶内に液剤内容物を形成するための、予備充填された薬剤ポンプカートリッジから薬瓶への液体内容物の移送、および、その後の、薬瓶から薬剤ポンプカートリッジへの液剤内容物の移送
図11は、予備充填された薬剤ポンプカートリッジ10Bと、薬瓶30Bと、薬剤ポンプカートリッジ10Bを液剤内容物で充填するための流体移送デバイス40Bと、を備えるキット200を示している。薬剤ポンプカートリッジ10Bは、希釈剤または活性液体成分の形態の液体内容物23で予備充填される。薬瓶30Bは、必ず負圧下にあり、粉末または液体の形態の薬剤37を収容する。流体移送デバイス40Bは、流体移送デバイス40Aと類似しており、2つの点において流体移送デバイス40Aと異なっている。1つ目は、流体移送デバイス40Bが、液剤内容物36を薬瓶30Bから薬剤ポンプカートリッジ10Bへ移送するために液剤内容物36を薬瓶30B内に最初に用意して、その後、最初に薬剤ポンプカートリッジ10Bから薬瓶30Bへ積極的に吸引することをそれぞれ可能にするために、空気内腔52を最初に閉じて、空気内腔52を選択的に開くための手動操作式流れ制御装置62を備えている点である。そして、2つ目は、流体移送デバイス40Bが、好ましくは、薬剤ポンプカートリッジ10Bから薬瓶30Bへの液体内容物の積極的な吸引の後まで、ピストンヘッド53の不注意な挿入ストロークを不可能にすることである。
【0030】
流体移送デバイス40Bは、空気内腔52と交差するために、交差方向を向けられた有底穴63を交差方向隔壁43に備えている。有底穴63は、流体移送デバイス中央線41に直交する有底穴中央線64を有している。流れ制御装置62は、流れ制御部材シャンク67と、流れ制御部材ハンドル68と、を有する手動回転式L字状流れ制御部材66を備えている。流れ制御部材シャンク67は、有底穴63内に延在している。流れ制御部材シャンク67は、有底穴中央線64に一致する回転軸線69を中心として回転可能である。流れ制御部材ハンドル68は、デュアル開放端バレル42と同一平面上にある。流れ制御部材シャンク67は、空気内腔52と交差する流れ制御部材シャンク先端67Aを有している。流れ制御部材シャンク先端67Aは、回転軸線69からオフセットされた貫通穴71を有して形成される。
【0031】
ピストンヘッド後端53Bは、L字状ストッパ部材72を備えている。L字状ストッパ部材72は、ピストンヘッド先端53Aに向けられた長手方向大L字状ストッパ部材脚部74と、交差方向小L字状ストッパ部材脚部73と、を備えている。ピストンシリンダ46は、長手方向に向けられたスリット76を有して形成される。スリット76は、ピストンヘッド53の挿入ストロークの長さだけ延在して、ピストンシリンダ46内に入る。
【0032】
図15Aおよび
図15Bは、空気内腔52を閉じるための初期閉状態にある流れ制御装置62を示している。流体移送デバイス40Bは、薬瓶30B内に液剤内容物を形成するために液体内容物23を薬剤ポンプカートリッジ10Bから薬瓶30Bへ移送する前にピストンヘッド53のピストンシリンダ46内への不注意の挿入ストロークを不可能にするために、大L字状ストッパ部材74と流れ制御部材ハンドル68とが初期閉状態で当接するように構成される。
【0033】
図16Aおよび
図16Bは、流れ制御部材ハンドル68を半回転させること(これは、さらに、ピストンヘッド53のピストンシリンダ46内への挿入ストロークを可能にする)によって空気内腔52を開けるための最終開状態にある流れ制御装置62を示している。
【0034】
図17A〜17Eは、投与目的での液剤内容物36の最大用量ボリュームV1と用量ボリュームV2とが等しい場合用のキット200の使用方法を示している。流体移送デバイス40Bは、流れ制御部材66が空気内腔52を閉じ、ピストンヘッド53が、交差方向隔壁43に向けたその挿入ストロークの準備ができ交差方向隔壁43から離間した状態で、その初期セットアップ状態にある。
【0035】
図17Aは、薬剤ポンプカートリッジ10Bを穿刺するために流体移送デバイス40Bを薬剤ポンプカートリッジ10Bに入れ子式に取り付ける様子を示している。
【0036】
図17Bは、薬剤ポンプカートリッジ10Bの通気によって容易になるように、薬瓶30Bに入れ子式に取り付けて液体内容物23を薬剤ポンプカートリッジ10Bから薬瓶30Bへ移送するために、流体移送デバイス40Bおよび薬剤ポンプカートリッジ10Bを逆さまにする様子を示している。液体内容物23は、粉末状薬剤37を復元して、液剤内容物36の用量ボリュームV2を形成する。薬剤ポンプカートリッジ10B、薬瓶30Bおよび流体移送デバイス40Bは、初期セットアップ高さH1を有する流体移送アセンブリ201を形成する。
【0037】
図17Cは、流体移送アセンブリ201を逆さまにして、空気内腔52を開くために流れ制御部材ハンドル68を半回転させる様子を示している。
【0038】
図17Dは、摺動可能な駆動プランジャ21を流体移送アセンブリ101と類似の態様で移動させることなく液剤内容物36を薬瓶30Bから薬剤ポンプカートリッジ10Bへ移送するための、ピストンヘッド53のピストンシリンダ46への挿入ストローク後の流体移送アセンブリ201を示している。流体移送アセンブリ201は、最終充填高さH2まで圧縮される。H1>H2である。
【0039】
図17Eは、患者に液剤内容物36を投与するために薬剤ポンプ内に挿入するために、現在は充填されている薬剤ポンプカートリッジ10Bを流体移送デバイス40Bから取り外す様子を示している。流体移送デバイス40B、および、現在は空の薬瓶30Bは、廃棄されてもよい。
【0040】
本発明の特定の実施形態が図示され説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更および修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。