特許第6592212号(P6592212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6592212
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ガスエンジン発電システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 43/00 20060101AFI20191007BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20191007BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20191007BHJP
   F02B 43/02 20060101ALI20191007BHJP
   F02D 25/04 20060101ALI20191007BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20191007BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F02B43/00 Z
   F02M21/02 F
   F02M37/00 341D
   F02B43/02
   F02D25/04
   F01P11/10 Z
   F01M11/00 S
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-39962(P2019-39962)
(22)【出願日】2019年3月5日
【審査請求日】2019年3月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519042478
【氏名又は名称】ライズピットカンパニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴弘
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−206302(JP,A)
【文献】 特開平09−195811(JP,A)
【文献】 特開2017−172341(JP,A)
【文献】 特開2013−113133(JP,A)
【文献】 特開2018−204594(JP,A)
【文献】 特開2000−073861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 43/00
F01M 11/00
F01P 11/10
F02B 43/02
F02D 25/04
F02M 21/02
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガスエンジンと、該ガスエンジンに接続される発電機と、各前記ガスエンジンに冷却水を供給する冷却水供給流路と、前記冷却水を循環する系統冷却水ポンプと、前記各ガスエンジン毎に個別に備えたエンジンウォーターポンプとを備え、複数の前記ガスエンジン及び複数の前記エンジンウォーターポンプは前記冷却水供給流路に並列に配置され、1基でも稼働していれば、他は停止していても前記系統冷却水ポンプは稼働して前記冷却水供給流路を循環する冷却水により暖機状態とされ、少なくとも1基の前記ガスエンジンが動作し、要求電力の増加に伴い、残りの前記ガスエンジンが順次稼働してなり、総合コントロールユニット(TCU)が具備され、該総合コントロールユニット(TCU)からの信号により、複数の前記ガスエンジンの稼働を偏らせないように選択して稼働及び停止させ、全ての各前記ガスエンジンの回転数は一定になるように制御されてなることを特徴としたガスエンジン発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、各前記ガスエンジンのオイルパンには起動時に必要な最低限の量のオイルを残すとともに、全ての前記ガスエンジンに供給できる独立したオイルタンクを設けてなるガスエンジン発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、全ての前記ガスエンジンと前記発電機とエンジンコントロールユニットは、1つの筐体に収められてパッケージングし、全ての前記ガスエンジンの燃焼用の空気を供給する空気を1つのエアクリーナで濾過するとともに、1つのマフラで全ての前記ガスエンジンの排気音を消音する構成としてなるガスエンジン発電システム。
【請求項4】
請求項に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記パッケージ内の複数の前記ガスエンジンのそれぞれに電動式のエンジンウォーターポンプと電動式のエンジンオイルポンプとオイルフィルタと系統オイルタンクを備えてなることを特徴とするガスエンジン発電システム。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記ガスエンジンは3基以上としてなるガスエンジン発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求される発電量の増減に対応して適正に稼動できる複数のガスエンジンを備えたガスエンジン発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型エンジンと発電機とを備えて、これらを連結した小型エンジン発電機は、種々なものが存在している。そして、この種のものとしては、独立した個別発電装置の動力源としてLPG(液化石油ガス)やCNG(圧縮天然ガス)を燃料とする火花点火のガスエンジンは、簡便で環境性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−262846号公報
【特許文献2】特開平9−195811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスエンジンは、容積型のピストンエンジンであるため、回転数と空燃比を一定にして運転をすると負荷が小さいときは熱効率が低い。アイドリングにおいては、熱効率はゼロである。すなわち、エンジンは外部に対して仕事をせずに燃料だけを消費していることになる。
【0005】
一方、火花点火エンジンは、火炎伝播が律則となって一つのシリンダの容積には限界がある。ちなみに圧縮着火のディーゼルエンジンではその制限は緩やかで船舶用のディーゼルでは、1基で数万キロワットの出力を発生させることができる。しかし、ガスエンジンでは数百キロワットである。個別発電の電気負荷はゼロから500キロワット程度である。しかも、一つのエンジンで最大の要求電力を供給できないことがある。この場合エンジンと発電機が対になったエンジン発電機を並列に配置して、電力を取り出すようにせざるを得ない。
【0006】
要求電力が小さければ大きなエンジンを低出力で稼働させることになる。この場合、スロットル開度が小さくなって熱効率が悪くなる。そこで、要求電力が小さければ、なるべく少ない数のエンジンで1基あたりの出力が大きくなるようにする。そして、要求電力が大きくなればそれに応じた基数のエンジンを稼働させることが好ましい。ところが、要求電気負荷が急に増大したときには急遽あらたに別のエンジンを起動させなければならなくなるが、エンジンには暖機時間を要する。冷えたエンジンはシリンダ内での燃焼が悪く、また摩擦損失も大きいので出力が出にくい上に、ピストンとシリンダの間隙が大きくオイルが燃焼室に侵入するオイル上がりによって白煙が発生したり、オイル消費が増大するなどの弊害がある。
【0007】
特許文献1(特開平2−262846号公報)及び特許文献2(特開平9−195811号公報)では、複数のエンジン及び発電機を並列配置したものが存在するが、全てのエンジンが常時稼動しており、要求電力の増減に応じてエンジンの稼動が変化するものではない。そこで、本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、要求される発電量の増減に対応すると共に、それぞれの小型エンジンは、稼動効率を極めて良好にすることができるガスエンジン発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、複数のガスエンジンと、該ガスエンジンに接続される発電機と、各前記ガスエンジンに冷却水を供給する冷却水供給流路と、前記冷却水を循環する系統冷却水ポンプと、前記各ガスエンジン毎に個別に備えたエンジンウォーターポンプとを備え、複数の前記ガスエンジン及び複数の前記エンジンウォーターポンプは前記冷却水供給流路に並列に配置され、1基でも稼働していれば、他は停止していても前記系統冷却水ポンプは稼働して前記冷却水供給流路を循環する冷却水により暖機状態とされ、少なくとも1基の前記ガスエンジンが動作し、要求電力の増加に伴い、残りの前記ガスエンジンが順次稼働してなり、総合コントロールユニット(TCU)が具備され、該総合コントロールユニット(TCU)からの信号により、複数の前記ガスエンジンの稼働を偏らせないように選択して稼働及び停止させ、全ての各前記ガスエンジンの回転数は一定になるように制御されてなることを特徴としたガスエンジン発電システムとしたことにより、前記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、各前記ガスエンジンのオイルパンには起動時に必要な最低限の量のオイルを残すとともに、全ての前記ガスエンジンに供給できる独立したオイルタンクを設けてなるガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、全ての前記ガスエンジンと前記発電機とエンジンコントロールユニットは、1つの筐体に収められてパッケージングし、全ての前記ガスエンジンの燃焼用の空気を供給する空気を1つのエアクリーナで濾過するとともに、1つのマフラで全ての前記ガスエンジンの排気音を消音する構成としてなるガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項3に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記パッケージ内の複数の前記ガスエンジンのそれぞれに電動式のエンジンウォーターポンプと電動式のエンジンオイルポンプとオイルフィルタと系統オイルタンクを備えてなることを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記ガスエンジンは3基以上としてなるガスエンジン発電システムとしたことにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、発電システムが稼動する時には、冷却水供給流路を介して冷却水を循環させ、稼動中及び停止中のガスエンジン全てを暖機状態とする構成を有していう。そして、要求電力が少ないときには、少なくとも1基のガスエンジンが動作(稼動)し、残りのガスエンジンは要求電力の増加量に増加に伴い、順次稼動するものである。
【0014】
そして、前述したように、発電システムが稼動中において、複数のガスエンジンにおいて、停止中のものでも、系統冷却水ポンプにより冷却水供給流路を循環する冷却水により暖機状態とされるため、要求電力が増加して、停止中のガスガスエンジンの起動が要求されたときでも、すぐに起動し安定した良好な運転状態を短時間で行うことができる。よって、複数のガスエンジンは、それぞれが最も動作効率の良好な状態で作動することができ、ガスエンジンは、無駄の無い稼動ができるものである。
【0015】
さらに、請求項1の発明では、前記総合コントロールユニット(TCU)からの信号により、複数の前記ガスエンジンの稼働をかたよらせないように選択して稼働及び停止させる役目をなす総合コントロールユニット(TCU)が発電システムに具備されたので、発電システムが稼働するときに、複数のガスエンジンの中で最初に起動するガスエンジンと、要求電力の増加に伴い2番目以降に順次起動するガスエンジンは、毎回異なるようにすることができる。これによって、最初の起動するガスエンジンの起動が均等に分散され、発電システムの稼働において、特定のガスエンジンへの起動の集中が防止され、発電システム自体の耐用年数を長くすることができる。
【0016】
請求項2の発明では、各ガスエンジンのオイルパンには起動時に必要な最低限の量のオイルを残すとともに、全てのガスエンジンに供給できる独立したオイルタンクを設けたことにより、発電システムの稼働時において、要求電力の量の増加に伴い、2番目以降に起動するガスエンジンのオイルの循環性を高め、該ガスエンジンの起動時の状態を最大限に良好にできる。
【0017】
請求項3の発明では、全てのガスエンジンと発電機とエンジンコントロールユニットは、1つの筐体に修められパッケージングされ、全てのガスエンジンの燃焼用の空気を供給する空気を1つのエアクリーナで濾過するとともに、1つのマフラで全ての前記ガスエンジンの排気音を消音する構成としたことにより、発電システムをコンパクトにまとめることが出きる。つまり、発電システムをユニット化できるものである。したがって、建造物の施工時における発電システムの設置工事をより一層簡単にできる。
【0018】
請求項4の発明では、筐体にパッケージングされた複数のセットのガスエンジンに冷却水を循環させる1つの電動式のエンジンウォーターポンプと、1つの電動式のエンジンオイルポンプと、オイルフィルタと、系統オイルタンクを備えたことにより、発電システムをより一層、コンパクト且つ設置性を良好にできる。請求項5の発明では、ガスエンジンを3基以上としたことにより、各ガスエンジンに対する負荷を少なくでき、安定した発電ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】発電システムの構成を示す全体図である。
図2】発電システムの機械部分の略示斜視図である。
図3】エンジンのスロットル開度と熱効率の関係を示す図である。
図4】要求電気負荷の増大にともなう稼働エンジン基数を示す図である。
図5】冷却水の温度がエンジンの熱効率に与える影響を示す図である。
図6】各エンジンのオイルパン内に所定の量のオイルを備蓄する簡便な方法を示す図である。
図7】(A)乃至(C)は本発電システムにおいて要求電力の増加に伴いガスエンジンの起動が順次増加していく状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明におけるガスエンジン発電システムは主に、ガスエンジン1,発電機2、冷却水供給流路51、系統冷却水ポンプ51a、オイル供給流路52、系統オイルポンプ52a等によって構成されている。まず、ガスエンジン発電システムにおいて、ガスエンジン1は、小型乃至中型程度のガスエンジンで、具体的には、LPG(液化石油ガス)用或いはCNG(圧縮天然ガス)用又はLNG(液化天
然ガス)用のガスエンジンである。いわゆる、家庭用のプロパンガス(ブタンも含む)や、
都市ガスでも可能なガスエンジンである。ガスエンジン1は、複数基が備えられる(図1図2参照)。
【0021】
ガスエンジン発電システムの実施形態では、ガスエンジン1は、3基と備えられるものとしているが、4基以上する場合も存在し、或いは2基とする場合もある。複数の各ガスエンジン1には、発電機2が装着されており、ガスエンジン1と発電機2とによって、単体のガスエンジン発電機Aが構成される。そして、複数のガスエンジン発電機A,A,…が並列に配設され、これらに必要な装置が付加されてガスエンジン発電システムが構成される(図1図2参照)。
【0022】
ガスエンジン発電システムにおいて、並列に配列されたガスエンジン発電機A,A,…には、共有する空気ダクト31と排気ダクト32とが備わっている。それぞれのガスエンジン1には、吸気のための吸気マニホールド11と、排気のための排気マニホールド12を有している。吸気マニホールド11は、空気枝管11aを有しており、該空気枝管11aを介して空気ダクト11と連通している。排気マニホールド12は、排気枝管12aを有しており、該排気枝管12aを介して排気ダクト32に連通している。そして、複数のガスエンジン1における排気マニホールド12の排気枝管12aが、複数のガスエンジン1,1,…における共有の排気ダクト32の排出口に設けられたマフラ32aを経て、消音されて外気に放出される。
【0023】
また、複数のガスエンジン1,1,…のシリンダ内での燃焼に必要な空気は、複数のガスエンジン1,1,…において共有の空気ダクト31に備えられたエアクリーナ31aのエレメント31bで濾過されて空気ダクト31,排気マニホールド12の排気枝管12aを通って各ガスエンジン1に供給される(図1参照)。
【0024】
一方、排気は、排気マニホールド12から排気枝管12aを介して、排気ダクト32を経てマフラ32aで消音されて外気に放出される。ガスエンジン1への燃料の供給については、図示されないボンベからの燃料が、電磁式の遮断弁41を経て低圧調整弁42で大気圧とほぼ同じ圧力に調圧されて、太い実線で示す燃料ライン4から各ガスエンジン1のミキサ13に供給される(図1参照)。
【0025】
並列された複数のガスエンジン発電機A,A,…は、その周辺に冷却水の循環流路となる冷却水供給流路51と、オイルの循環流路となるオイル供給流路52を備えている。冷却水供給流路51には該冷却水供給流路51内で冷却水を循環させる電動の系統冷却水ポンプ51aを備えており、またオイル供給流路52には、該オイル供給流路52内においてオイルを循環させる系統オイルポンプ52aを有している(図1参照)。
【0026】
各ガスエンジン発電機Aのガスエンジン1には、エンジンウォーターポンプ15とエンジンオイルポンプ16が備わっている。エンジンウォーターポンプ15とエンジンオイルポンプ16とは、各ガスエンジン1に個別に備えられたものである(図1参照)。それぞれのガスエンジン1のエンジンウォーターポンプ15は、冷却水供給流路51に並列状態で連通している。また、それぞれのガスエンジン1のエンジンオイルポンプ16は、オイル供給流路52に並列状態で連通している。
【0027】
そして、並列された複数のガスエンジン発電機A,A,…のそれぞれのガスエンジン1に供給される冷却水は、系統冷却水ポンプ51aで冷却水供給流路51を通り、各ガスエンジン1に備わっているエンジンウォーターポンプ15に供給される。冷却水は、ガスエンジン1を通過して冷却するときに、冷却水自体は昇温し、冷却水供給流路51のリターンライン51rを通って、ラジエータ51bで放熱して再び系統冷却水ポンプ51aに戻り、冷却水は冷却水供給流路51を循環するようになっている(図1参照)。
【0028】
稼働状態にあるガスエンジン発電システムにおいて、複数のガスエンジン1,1,…の内、停止状態にあるガスエンジン発電機Aのガスエンジン1に備わっているエンジンウォーターポンプ15は停止しており、稼動していない。そのために、冷却水はエンジンウォーターポンプ15の内部の隙間を通ってガスエンジン1のウォータージャケットを素通りして冷却水排出路16を介して冷却水供給流路51のリターンライン51rに流れ出るようになっている。
【0029】
次に、ガスエンジン1の各部を潤滑するエンジンオイルは、電動式の系統オイルポンプ52aで系統オイルタンク52bから汲み上げられ、オイルフィルター52cで濾過してオイル供給流路52で各ガスエンジン1に供給される(図1参照)。そして、エンジン稼働中は、各ガスエンジン1に備えられた通常のエンジンオイルポンプ16で加圧されてガスエンジン1の各部を潤滑する。ガスエンジン発電システムの稼動中において、停止しているガスエンジン1では、冷却水の場合と同様にオイル供給流路52を循環するオイルがリターンライン52rに流れ出て使用されなかったオイルと合流して系統オイルタンク52bに還流する。
【0030】
次に、総合コントロールユニット(TCU)72について説明する。ここで、総合コントロールユニットは総合制御ユニットと称することもある。総合コントロールユニット(TCU)72は、信号Sにより停電や発電が必要なことを検知すると、前記燃料遮断弁41を開く。燃料は、低圧調整弁42で大気圧又は略大気圧に近い圧力に調整されて、各ガスエンジン1に供給できる態勢を整える。また、系統冷却水ポンプ51a及び系統オイルポンプ52aに通電して冷却水とオイルを循環させる。
【0031】
さらに、総合コントロールユニット(TCU)72は、複数のガスエンジン1の内の何れかのガスエンジン1を稼働させるかを判断して、適宜のガスエンジン1を選択し、エンジンコントロールユニット(ECU)71にエンジン起動の信号を送る役目をなす。これに基づいてエンジンコントロールユニット(ECU)71は、図示されないスターターを回してガスエンジン1を起動する。
【0032】
ガスエンジン1は、冷却水供給流路51からの冷却水をガスエンジン1に備えられたエンジンウォーターポンプ15でガスエンジン1内のウォータージャケットに圧送する。同様に、オイル供給流路52からのオイルをガスエンジン1に備えられたエンジンオイルポンプ16で加圧され、ガスエンジン1内の軸受けなどの潤滑部位に圧送される。
【0033】
ガスエンジン1内のオイルパン18におけるオイルについては、ガスエンジン1には、オイルオーバーフローパイプ18aがオイルパン18の中に突き出るようにして設けられ、該オイルオーバーフローパイプ18aによって、必要なオイルのレベルに保ちながら、ガスエンジン1のオイルパン18からオイルをオイルオーバーフローパイプ18aを介して、オイル供給流路52のリターンライン52rに流し込む。該リターンライン52rに流れたオイルは再度オイル供給流路52を循環する。
【0034】
油面の維持については、図示しないレベルセンサと電磁弁或いは電動ポンプで行うよりオーバーフロー方式によるものの方が、作動を確実なものとし、且つ構成を簡単且つ安価にできる。オイルパン18内の油量はなるべく少なくして、循環してくるオイルと早く入れ代わるようにする。また、オイル供給流路52からガスエンジン1内に潤滑のためのオイルを取り入れる構成として、オイル供給流路52から各ガスエンジン1に対して分岐流路100bを設け、該分岐流路100bを介して、オイルをガスエンジン1のオイルパン18に常時導いて、該オイルパン18からエンジンオイルポンプ16によってガスエンジン1内の各部分にオイルを循環させ潤滑するようにしてもよい(図6参照)。
【0035】
分岐流路100bは、図1及び図6において想像線(二点鎖線)で示されている。前記分岐流路100bは、ガスエンジン1のオイルパン18にオイルを送り込むように設置されている。ガスエンジン1の内部には吸引パイプ100aが設けられ、該吸引パイプ100aの一端の吸引口側がオイルパン18内に溜まっているオイルに漬かっており、吸引パイプ100aの他端側がエンジンオイルポンプ16に連通し、該エンジンオイルポンプ16の動作にて、ガスエンジン1内部に潤滑のためのオイルを循環させる(図6参照)。
【0036】
燃料は、太い実線のラインでミキサ13に供給され、ここで空気枝管11aからの空気と混合され、混合気となって吸気マニホールド11からガスエンジン1のシリンダに吸入される。燃焼済みのガスである排気は排気マニホールド12から排気枝管12aを通って排気ダクト32からマフラ32aに導かれ、該マフラ32aで消音されて、大気に放出される。
【0037】
ガスエンジン1の出力は、スロットルアクチュエータ14で駆動されるミキサ13のスロットルバルブで制御される。点火信号等のエンジンとECUとの信号のやりとりを行うライン17は、複数のラインで構成され点火信号を送ったり、逆に制御に使用するエンジン回転数などの情報を個別のエンジンコントロールユニット(ECU)71に送る。
【0038】
これに基づいてエンジンコントロールユニット(ECU)71は、ガスエンジン1の回転数を制御する。ここで、要求電力要求電気負荷が増大した瞬間にガスエンジン1への要求トルクが増大してガスエンジン1の回転数が低下するので、これを所定の回転数になるようにスロットルを開いて回転速度を回復する。前記要求電力は、要求電気負荷と称することもある。ガスエンジン1の動力によって発電機2で発生した電力は個別のインバータ6で所定の電圧の直流に変換して、総合出力インバー夕8に送られる。ここで、電力を合算して、所定の電圧と周波数の交流、あるいは所定の電圧の直流として出力する。
【0039】
要求電力に対するガスエンジン1の稼働の選択について、図4で説明する。例えば、発電機1基の発電能力を50kWとする。発電効率とインバータ効率の積を0.909とすると、エンジンは、50kW/0.909=55kWの出力を発生させなければならない。全発電機の出力が等しくしなるようにガスエンジン1を稼働させることもできるが、各ガスエンジン1が小さいスロットル開度で運転することになり熱効率が悪くなる。
【0040】
図3は、エンジン回転数と空燃比が一定の条件下でスロットルを開いていったときの熱効率を示す。スロットルを開いて出力を増大させる方が、熱効率が良いのは、回転数が一定なので摩擦損失は低負荷でも高負荷でも同じである。むしろ低負荷の方が吸気マニホールド内に負圧が大きくなるので、ポンピングロスが大きい。すなわち、低負荷で稼働させると、燃料のもつエネルギが有効に仕事に変換される割合が小さくなる。逆にいえばガスエンジン1はスロットル開度が大きいほうが熱効率は改善される。
【0041】
なるべく、スロットルを開いた方が熱効率的には有利だが、熱効率はスロットル開度が80%から上はほとんど変化がないから、エンジンの耐久性を考慮すると80%程度のスロットル開度で運転するのがよい。ここでスロットル開度0はアイドリング状態、100%は全開を意味する。
【0042】
図4で要求電力に対応するためのガスエンジン1の出力と、ガスエンジン1の稼働数について説明する。実線はスロットル開度80%で切り換えた場合である。また、破線部分はスロットル開度100%までひきのばして使用した場合である。エンジンの最大出力は55kWであるが通常はその80%、すなわち44kWまでの範囲で稼働エンジンの数を増やす。
【0043】
例えば、要求電力が40kW、すなわちガスエンジン1の出力で44kWまでならば1基のガスエンジン1を稼働させる。ここで、要求電力が70kWに増大すると、1基のガスエンジン1では対応しきれない。70kWの電力を生むには、ガスエンジン1の出力は70/0.909、すなわち77kWとなる。
【0044】
そこで、2基目のガスエンジン1が起動する。この判断は、総合コントロールユニット(TCU)72が行い、指令をエンジンコントロールユニット(ECU)71に伝える。エンジンコントロールユニット(ECU)71は、ただちに、ガスエンジン1を起動するが、すでに稼働しているガスエンジン1を冷却する過程で温まっている冷却水とオイルが停止状態のガスエンジン1に供給されているため、停止していたガスエンジン1は、快調に起動し、大きな出力を発揮できる。
【0045】
このとき、最初に起動するガスエンジンが40kW、2基目に起動するガスエンジンが37kWを発生させるようにしてもよい。この選択も総合コントロールユニット(TCU)72が行い各エンジンのエンジンコントロールユニット(ECU)71に伝える。図4のように、ガスエンジン1が合わせて155kWの出力を出す場合、すべてのガスエンジン1がスロットル開度80%までしか出力を発生させない場合は、4基のガスエンジン1を稼働させ、100%まで使用するのであれば3基のガスエンジン1を稼働させればよい。このような運転は、過渡など短い時間に限ることが望ましい。
【0046】
このようにしてガスエンジン発電機Aを4基セットとした場合は、最大220kW電力にして200kWまでの電力を供給することができる。もしガスエンジン1を1基で220kWまで出せるような大きなエンジンとした場合は、例えば30kWを出力するときはスロットル開度が小さく熱効率は低くなる。
【0047】
各ガスエンジン発電機Aをユニットとして互いに独立したガスエンジン発電システムを並列に複数基まとめて、要求電力に応じてガスエンジン1を選択して稼働させ、ガスエンジン1の負荷がスロットル開度が大きくとも80%より小さい開度で稼働させる熱効率と耐久性のバランスがとれた運転状態となる。一般にオイル温度は、冷却水と同じ傾向を示す。冷却水温度が上がればオイル温度も上昇する。
【0048】
冷却水温度は、図5に示すように、ガスエンジン1の熱効率に影響を与える。ガスエンジン1にとって最も熱効率が良い温度範囲がある。低いとオイルが硬くなって摩擦損失が大きくなり、シリンダ中での燃焼も悪い。一方、温度が上がり過ぎるとノッキングを起こして熱効率は極端に低下するとともに、エンジンが破損することがある。ガスエンジンの場合80℃から90℃が適温である。
【0049】
ラジエータ51bで放熱を行い適温あるいはこれより3〜5℃低い温度の冷却水を各ガスエンジン1に供給するようにする。放熱の制御は、総合コントロールユニット(TCU)72からの指令で電動ファン51cの回転のオン・オフあるいは回転数制御で行う。前述したように、オイルは循環しているので最初の起動時に必要最低限の量のオイルをオイルパン18に蓄えておけばよい。
【0050】
ガスエンジン1内に蓄えられるオイルを必要最小限とすることができ、これによりオイルタンクごと交換してもオイル全体への影響は小さくなり整備性が向上する。勿論オイルパン18の底にドレインプラグを装着して各エンジンのオイルを完全に抜くようにしてもよい。
【0051】
最大でも数百キロワットの要求発電量に対応するため、エンジンの最高出力を百キロワット未満として、低要求電力時には1基としてエンジンとしては高負荷で運転する。要求電力の増大にともなって稼働基数を増やすのが理想的である。そこでまだ稼働していないエンジンを即稼働できるような状態に保つことが必要になる。
【0052】
大きなエンジン1基で要求電力の全領域をまかなうのでは、低負荷時の熱効率が悪いので、わざと排気量を小さくして、要求電力が低いときでもエンジンにとっては、高負荷になるように複数に小分けするのが得策である。1基のガスエンジン1ではまかなえない大きな要求電力への対応をする場合は、ガスエンジン1において1基あたり負担する出力が大きくなるように、複数のガスエンジン1,1,…から選択して別のガスエンジン1も稼働させる。
【0053】
このように複数のガスエンジン1,1,…にして要求電力が小さいときには一部のエンジンを稼働させて熱効率のよい運転条件で発電させるようにする。要求電気負荷の増大は急に生ずるため、これに即応じられるように稼働していないエンジンも暖機あるいはこれに近い状態に保つ。図7では、このようにガスエンジン発電システムにおいて、要求電力が小から中を経て大に到る間の各ガスエンジン発電機Aの稼動状態を示す。まず、要求電力が小のときでは、何れか1基のガスエンジン1が稼動する。次に、要求電力が中のときでは、次の2基目が稼動する。そして、要求電力が大のときでは、全てのガスエンジン1が稼動する。
【0054】
次に、本発明において、全てのガスエンジン1と発電機2と、エンジンコントロールユニット(ECU)は、1つの筐体9に収められてパッケージングされることもある(図2参照)。さらに、筐体9にはエアクリーナ31a及びマフラ32aが備わり、全てのガスエンジン1,1,…の燃焼用の空気を供給する空気を1つのエアクリーナ31aで濾過するとともに、1つのマフラ32aで全てのガスエンジン1,1,…の排気音を消音する構成とすることもある。
【0055】
この実施形態において、筐体9に収められパッケージング化された構成におけるパッケージ内の複数のガスエンジン1のそれぞれに電動式のエンジンウォーターポンプ15と電動式のエンジンオイルポンプ16とオイルフィルタ52cと系統オイルタンク52bが備えられることもある。また、別の実施形態として、冷却水供給流路51では、系統冷却水ポンプ51aのみにて全ガスエンジン1に冷却水を供給し、オイル供給流路52では系統オイルポンプ52aのみで全ガスエンジン1にオイルを供給するようにしてもよい。
【0056】
また、整備性やコストダウン、さらには複数のガスエンジン発電機A,A,…が1つの筐体9に収められパッケージング化を容易にするように吸気システム、排気システム、冷却および潤滑システムの統一化をはかる。さらに、本発明のガスエンジン発電システムでは、総合コントロールユニット72を具備している。
【0057】
そして、複数のガスエンジン1,1,…の何れかに稼働が偏らないように、換言すれば集中しないようにして、複数のガスエンジン1,1,…の稼動を均等に分散させるように、総合コントロールユニット72により、複数のガスエンジン1,1,…の稼動の管理、起動停止を行う。これによって、複数のガスエンジン1,1,…の何れか特定の1基を集中的に長時間稼動させてしまうことを防止でき、ガスエンジン発電システム自体の耐用年数を格段に長くすることができる。
【符号の説明】
【0058】
A…ガスエンジン発電機、1…ガスエンジン、15…エンジンウォーターポンプ、
16…エンジンオイルポンプ、18…オイルパン、2…発電機、31a…エアクリーナ、
32a…マフラ、51…冷却水供給流路、51a…系統冷却水ポンプ、
52…オイル供給流路、52b…系統オイルタンク、52c…オイルフィルタ、
71…エンジンコントロールユニット(ECU)、
72…総合コントロールユニット(TCU)、9…筐体。
【要約】
【目的】要求される発電量の増減に対応して適正に稼動できる複数のガスエンジンを備えたガスエンジン発電システムを提供すること。
【構成】複数のガスエンジン1と、ガスエンジン1に接続される発電機2と、各ガスエンジン1に冷却水を供給する冷却水供給流路51と、冷却水を循環する系統冷却水ポンプ51aとを備えること。複数のガスエンジン1は冷却水供給流路51に並列に配置され、稼動時では、全てのガスエンジン1は冷却水供給流路51を介して暖機状態とされ、少なくとも1基のガスエンジン1が動作すること。要求電力の増加に伴い、残りのガスエンジン1が順次稼動してなること。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7