特許第6592213号(P6592213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社博報堂DYホールディングスの特許一覧

<>
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000002
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000003
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000004
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000005
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000006
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000007
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000008
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000009
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000010
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000011
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000012
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000013
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000014
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000015
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000016
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000017
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000018
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000019
  • 特許6592213-仲介装置及びコンピュータプログラム 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6592213
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】仲介装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20191007BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20191007BHJP
【FI】
   G06Q30/02 300
   G06Q30/06 312
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-43674(P2019-43674)
(22)【出願日】2019年3月11日
【審査請求日】2019年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507009009
【氏名又は名称】株式会社博報堂DYホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】道本 龍
【審査官】 衣川 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−084134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0228397(US,A1)
【文献】 特開2016−154011(JP,A)
【文献】 特表2016−511890(JP,A)
【文献】 特開2016−091067(JP,A)
【文献】 特開2004−258872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ利用者が欲するパーソナルデータの条件である対象条件を含むリクエスト情報を取得するように構成されたリクエスト取得部と、
個人から預託されたパーソナルデータを管理するとともに当該パーソナルデータを第三者に提供する事業を営むパーソナルデータ事業者が保有する、前記対象条件に合致するパーソナルデータの属性を示すメタデータを要求するメタデータ要求を、前記パーソナルデータ事業者が保有する装置である事業者装置に送信するように構成されたメタデータ要求送信部と、
前記事業者装置から前記メタデータを受信するように構成されたメタデータ受信部と、
前記事業者装置から受信した前記メタデータに基づいて、前記データ利用者に適した調達プランを決定するように構成された調達プラン決定部であって、前記調達プランは、前記パーソナルデータ事業者が保有する前記対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す、調達プラン決定部と、
前記調達プラン決定部によって決定された前記調達プランに従い、パーソナルデータを要求するデータ要求を前記事業者装置に送信するように構成されたデータ要求送信部と、
前記事業者装置からパーソナルデータを受信するように構成されたデータ受信部と、
前記パーソナルデータ事業者から受信したパーソナルデータを前記データ利用者が保有する装置である利用者装置に送信するように構成されたデータ送信部と、
を備える仲介装置。
【請求項2】
請求項1に記載の仲介装置であって、
前記リクエスト情報には、前記データ利用者の予算額を示す情報が含まれ、
前記調達プラン決定部は、前記パーソナルデータ事業者が保有する個々のパーソナルデータの価格と、前記予算額と、に基づき、前記調達プランを決定する、仲介装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の仲介装置であって、
前記調達プラン決定部は、前記調達プランにより調達されるパーソナルデータの属性に基づく分布が、前記メタデータにより示される、前記属性に基づくパーソナルデータの分布である元データ分布に近づくように前記調達プランを決定する、仲介装置。
【請求項4】
請求項3に記載の仲介装置であって、
前記リクエスト情報には、前記データ利用者の予算額を示す情報が含まれ、
前記調達プラン決定部は、前記予算額の範囲内で、前記調達プランにより調達されるパーソナルデータの属性に基づく分布が前記元データ分布に近づくように前記調達プランを決定する、仲介装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の仲介装置であって、
前記メタデータ要求送信部は、複数の前記パーソナルデータ事業者が保有する複数の前記事業者装置に前記メタデータ要求を送信し、
前記メタデータ受信部は、前記複数の事業者装置から前記メタデータを受信し、
前記調達プラン決定部は、前記複数の事業者装置から受信した前記メタデータに基づいて、前記複数のパーソナルデータ事業者が保有する前記対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す前記調達プランを決定し、
前記データ要求部は、前記データ要求を前記複数の事業者装置に送信し、
前記データ受信部は、前記複数の事業者装置からパーソナルデータを受信し、
前記データ送信部は、前記複数の事業者装置から受信したパーソナルデータを前記利用者装置に送信する、仲介装置。
【請求項6】
請求項5に記載の仲介装置であって、
前記複数の事業者装置から受信されたパーソナルデータのデータ形式を共通のデータ形式に合わせるように構成された形式処理部を更に備え、
前記データ送信部は、前記形式処理部によりデータ形式が合わせられた前記複数の事業者装置からのパーソナルデータを、前記利用者装置に送信する、仲介装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の仲介装置であって、
前記パーソナルデータ事業者は情報銀行である、仲介装置。
【請求項8】
コンピュータを、
データ利用者が欲するパーソナルデータの条件である対象条件を含むリクエスト情報を取得するように構成されたリクエスト取得部と、
個人から預託されたパーソナルデータを管理するとともに当該パーソナルデータを第三者に提供する事業を営むパーソナルデータ事業者が保有する、前記対象条件に合致するパーソナルデータの属性を示すメタデータを要求するメタデータ要求を、前記パーソナルデータ事業者が保有する装置である事業者装置に送信するように構成されたメタデータ要求送信部と、
前記事業者装置から前記メタデータを受信するように構成されたメタデータ受信部と、
前記事業者装置から受信した前記メタデータに基づいて、前記データ利用者に適した調達プランを決定するように構成された調達プラン決定部であって、前記調達プランは、前記パーソナルデータ事業者が保有する前記対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す、調達プラン決定部と、
前記調達プラン決定部によって決定された前記調達プランに従い、パーソナルデータを要求するデータ要求を前記事業者装置に送信するように構成されたデータ要求送信部と、
前記事業者装置からパーソナルデータを受信するように構成されたデータ受信部と、
前記パーソナルデータ事業者から受信したパーソナルデータを前記データ利用者が保有する装置である利用者装置に送信するように構成されたデータ送信部と、
を備える仲介装置として機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ利用者とパーソナルデータ事業者との間のパーソナルデータの取引を仲介する仲介装置及びコンピュータを仲介装置として機能させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人から預託されたパーソナルデータを管理するとともに当該パーソナルデータを第三者に提供する事業を営むパーソナルデータ事業者なる者が知られている。パーソナルデータ事業者としては例えば情報銀行が挙げられる。パーソナルデータ事業者は、パーソナルデータを預託した個人からデータ利用に関するポリシー等を通知され、通知されたポリシー等に従い第三者へのデータ提供の可否を判断する。なお、特許文献1には、データが預けられる情報銀行等が保有する情報処理装置から個人情報等が漏洩するのを防ぐことを目的とした情報処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6342094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、企業などのパーソナルデータの利用者(以下、データ利用者)がパーソナルデータ事業者からパーソナルデータを調達する場合、データ利用者が欲するパーソナルデータの条件である対象条件をパーソナルデータ事業者に通達することが考えられる。
【0005】
しかしながら、データ利用者からは、パーソナルデータ事業者がどのようなパーソナルデータを保有しているかが把握しづらい。よって、問合せ先のパーソナルデータ事業者が対象条件に合致するパーソナルデータを十分に保有していないケースも想定される。この場合、データ利用者は、別のパーソナルデータ事業者に問い合わせるなど、再度やり取りが発生する場合がある。この場合、データ利用者がパーソナルデータを調達するに当たり作業負荷が増加する。
【0006】
本開示は、データ利用者に適したパーソナルデータの調達をより容易に行うことを可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、仲介装置であって、リクエスト取得部と、メタデータ要求送信部と、メタデータ受信部と、調達プラン決定部と、データ要求送信部と、データ受信部と、データ送信部と、を備える。リクエスト取得部は、データ利用者が欲するパーソナルデータの条件である対象条件を含むリクエスト情報を取得するように構成される。メタデータ要求送信部は、パーソナルデータ事業者が保有する、メタデータを要求するメタデータ要求を、パーソナルデータ事業者が保有する装置である事業者装置に送信するように構成される。メタデータは、対象条件に合致するパーソナルデータの、属性を示すデータである。メタデータ受信部は、事業者装置からメタデータを受信するように構成される。調達プラン決定部は、事業者装置から受信したメタデータに基づいて、データ利用者に適した調達プランを決定するように構成される。調達プランは、パーソナルデータ事業者が保有する対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す。データ要求送信部は、調達プラン決定部によって決定された調達プランに従い、パーソナルデータを要求するデータ要求を事業者装置に送信するように構成される。データ受信部は、事業者装置からパーソナルデータを受信するように構成される。データ送信部は、パーソナルデータ事業者から受信したパーソナルデータをデータ利用者が保有する装置である利用者装置に送信するように構成される。
【0008】
このような構成によれば、仲介装置は、データ利用者に適した調達プランを決定し、決定された調達プランに従いパーソナルデータをパーソナルデータ事業者から取得し、取得されたパーソナルデータをデータ利用者に提供する。よって、データ利用者が、パーソナルデータ事業者が保有しているパーソナルデータが把握しづらい中で直接パーソナルデータ事業者に問い合わせてパーソナルデータを調達する場合と比較して、データ利用者に適したパーソナルデータの調達をより容易に行うことができる。
【0009】
本開示の一態様では、リクエスト情報には、データ利用者の予算額を示す情報が含まれてもよい。そして、調達プラン決定部は、パーソナルデータ事業者が保有する個々のパーソナルデータの価格と、予算額と、に基づき、調達プランを決定してもよい。このような構成によれば、データ利用者の予算額に応じて適切な調達プランを決定できる。
【0010】
本開示の一態様では、調達プラン決定部は、調達プランにより調達されるパーソナルデータの属性に基づく分布が、メタデータにより示される、属性に基づくパーソナルデータの分布である元データ分布に近づくように調達プランを決定してもよい。
【0011】
このような構成によれば、パーソナルデータ事業者からパーソナルデータが調達された際にデータの偏りが発生することを抑制できる。
本開示の一態様では、調達プラン決定部は、データ利用者の予算額の範囲内で、調達プランにより調達されるパーソナルデータの属性に基づく分布が元データ分布に近づくように調達プランを決定してもよい。
【0012】
このような構成によれば、データ利用者の予算額の範囲内で、データの偏りが発生することを出来るだけ抑制することができる。
本開示の一態様では、仲介装置は以下の構成であってもよい。すなわち、メタデータ要求送信部は、複数のパーソナルデータ事業者が保有する複数の事業者装置にメタデータ要求を送信する。メタデータ受信部は、複数の事業者装置からメタデータを受信する。調達プラン決定部は、複数の事業者装置から受信したメタデータに基づいて、複数のパーソナルデータ事業者が保有する対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す調達プランを決定する。データ要求部は、データ要求を複数の事業者装置に送信する。データ受信部は、複数の事業者装置からパーソナルデータを受信する。データ送信部は、複数の事業者装置から受信したパーソナルデータを利用者装置に送信する。
【0013】
このような構成によれば、データ利用者が、複数の情報銀行装置が保有しているパーソナルデータを把握しづらい中で直接複数の情報銀行装置に問い合わせてパーソナルデータを調達する場合と比較して、複数の情報銀行装置からデータ利用者に適したパーソナルデータをより容易に調達することができる。
【0014】
本開示の一態様では、仲介装置は、複数の事業者装置から受信されたパーソナルデータのデータ形式を共通のデータ形式に合わせるように構成された形式処理部を更に備えてもよい。そして、データ送信部は、形式処理部によりデータ形式が合わせられた複数の事業者装置からのパーソナルデータを、利用者装置に送信してもよい。
【0015】
このような構成によれば、データ利用者にとって取扱いしやすいデータ形式でパーソナルデータを納品することができる。
本開示の一態様では、パーソナルデータ事業者は情報銀行であってもよい。
【0016】
本開示の別の態様は、前述した仲介装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラムである。このような構成によれば、前述した仲介装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は調達システムの構成を示す図である。
図2図2は仲介装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は仲介装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4図4はデータ調達処理のフローチャートである。
図5図5はリクエスト情報を説明するための図である。
図6図6は第1情報銀行に対するメタデータ要求を説明するための図である。
図7図7は第2情報銀行に対するメタデータ要求を説明するための図である。
図8図8Aは第1情報銀行のカテゴリテーブルマスタを示す図、図8Bは第2情報銀行のカテゴリテーブルマスタを示す図である。
図9図9はメタデータを説明するための図である。
図10図10はパーソナルデータの調達プランを決定するロジックの一例を説明するための図である。
図11図11は第1情報銀行に対するデータ要求を説明するための図である。
図12図13は第2情報銀行に対するデータ要求を説明するための図である。
図13図13はパーソナルデータを含む情報銀行からの納品データを説明するための図である。
図14図14は仲介装置が保有する標準辞書を説明するための図である。
図15図15は第1情報銀行のデータ変換用辞書を説明するための図である。
図16図16Aは第1情報銀行からの、表形式で表された納品データを示す図、図16Bは第2情報銀行からの、表形式で表された納品データを示す図である。
図17図17は第1情報銀行からの変換後の納品データを示す図である。
図18図18は第2情報銀行からの変換後の納品データを示す図である。
図19図19は各情報銀行装置からの納品データを統合することで生成された統合データを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
[1.全体構成]
図1に示す調達システム1は、利用者装置2、仲介装置3及び複数の情報銀行装置4〜6を備える。
【0019】
利用者装置2は、パーソナルデータを利用するデータ利用者2aが保有する装置である。データ利用者2aは、パーソナルデータを利用して利益を上げる企業等である。
ここで、本実施形態でいうパーソナルデータは、個人の識別性の有無にかかわらず、個人に関する情報全般を指す。パーソナルデータには、個人を特定、識別することができる個人情報(個人情報保護法第2条第1項に規定の「個人情報」である。)が含まれる。個人情報には、その情報自体で個人を識別できる情報のほか、他の情報と照合することができ、それにより個人を識別できる情報も含まれる。個人情報以外のパーソナルデータとしては、個人の位置情報や購入情報、IPアドレス、インターネット閲覧履歴など、企業やネット上に集積されている情報や、個人に結び付けることができないように加工された個人の行動や状態などに関するデータ等が挙げられる。
【0020】
利用者装置2は、インターネット、専用無線/有線通信回線網のようなネットワークを介して仲介装置3に接続される。
仲介装置3は、データ利用者2aに代わって、情報銀行装置4〜6に対してパーソナルデータのリクエストを行い、データ利用者2aに適した条件でパーソナルデータを買い付けてデータ利用者2aに納品するための装置である。仲介装置3は、例えば、データ利用者2aと情報銀行4a〜6aとの間のパーソナルデータの売買の仲介を行う業者により保有される。仲介装置3は、インターネット、専用無線/有線通信回線網のようなネットワークを介して利用者装置2及び情報銀行装置4〜6に接続される。仲介装置3のハードウェア構成及び機能については後で詳述する。
【0021】
情報銀行装置4〜6は、それぞれ別々の情報銀行4a〜6aに保有されている。情報銀行4a〜6aは、個人から預託されたパーソナルデータを管理するとともに当該パーソナルデータを企業等の第三者に提供する事業を営む。
【0022】
情報銀行装置4〜6には、個人が保有するスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末11〜17を介して個人から預託されたパーソナルデータが記憶されている。情報銀行装置4〜6は、インターネット、専用無線/有線通信回線網のようなネットワークを介して仲介装置3及び情報処理端末11〜17に接続される。後述するとおり、情報銀行装置4〜6は仲介装置3との間で各種情報をやり取りし、仲介装置3を介してパーソナルデータをデータ利用者2aに納品する。
【0023】
なお、図1では3つの情報銀行装置4〜6のみが図示されているが、仲介装置3は一般には3つ以外の情報銀行装置とパーソナルデータのやり取りを行う。
[2.仲介装置]
次に、仲介装置3のハードウェア構成を図2を用いて説明する。仲介装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0024】
通信部31は、仲介装置3をネットワークに接続するための通信インタフェースである。仲介装置3は、通信部31を介して、利用者装置2及び情報銀行装置4〜6と有線又は無線にてデータ通信可能である。また、仲介装置3は、通信部31を介してインターネットに接続し、インターネットを介して外部の装置とデータ通信可能であってもよい。
【0025】
記憶部32は、各種データを記憶する。
制御部33は、CPU33aと、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ33b)と、を有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。制御部33の各種機能は、CPU33aが非遷移的実体的記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ33bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記憶媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部33を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0026】
制御部33は、CPU33aがプログラムを実行することで後述する図4に示すデータ調達処理を実行する。制御部33はデータ調達処理を実行することで、図3に示すように、リクエスト取得部331、メタデータ要求生成部332、メタデータ要求送信部333、メタデータ受信部334、条件整理部335、調達プラン決定部336、データ要求生成部337、データ要求送信部338、データ受信部339、形式処理部340及びデータ送信部341として機能する。制御部33を構成するこれらの要素331〜341を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素を、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0027】
以下では、まず図3を用いて各要素331〜341の機能の概要について説明する。その後、図4のフローチャートを用いて各要素331〜341の機能を詳細に説明する。
<リクエスト取得部>
リクエスト取得部331は、通信部31を介して利用者装置2からのリクエスト情報を受信する。リクエスト情報は、データ利用者2aが欲するパーソナルデータの条件である対象条件を含む情報である。リクエスト情報の具体例については後述する。
<メタデータ要求生成部>
メタデータ要求生成部332は、リクエスト取得部331により受信されたリクエスト情報に基づき、情報銀行装置4〜6に送信されるメタデータ要求を生成する。ここでいうメタデータ要求とは、情報銀行装置4〜6にメタデータを要求するための情報である。ここでいうメタデータは、情報銀行4a〜6aが保有する、リクエスト情報に含まれる対象条件に合致するパーソナルデータの、属性を示す情報である。パーソナルデータの属性とは、パーソナルデータに含まれる年齢、性別などの項目を例えば意味する。本実施形態では、メタデータは、その情報銀行が保有している、対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータについてのデータの概要(例えばパーソナルデータの一部の属性のみ)を示す。
【0028】
メタデータは、情報銀行が保有している、対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータがどのような属性のパーソナルデータから構成されるかを示す情報である。具体的には、後述するとおり、メタデータには、その情報銀行が保有する、対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータの統計量の情報が含まれる。メタデータ要求及びメタデータの具体例については後述する。
【0029】
また、本実施形態では、情報銀行装置4〜6ごとに取扱い可能なデータ形式が異なる。そのため、メタデータ要求生成部332は、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に合わせて情報銀行装置4〜6ごとにメタデータ要求を生成する。
<メタデータ要求送信部>
メタデータ要求送信部333は、メタデータ要求生成部332により生成されたメタデータ要求を情報銀行装置4〜6に通信部31を介して送信する。メタデータ要求を受信した情報銀行装置4〜6は、メタデータ要求に対する応答として、メタデータを仲介装置3に送信する。
<メタデータ受信部>
メタデータ受信部334は、情報銀行装置4〜6からメタデータを通信部31を介して受信する。
<条件整理部>
条件整理部335は、情報銀行装置4〜6から受信されたメタデータから取引条件を整理する。
<調達プラン決定部>
調達プラン決定部336は、メタデータ受信部334により受信されたメタデータに基づいて、データ利用者2aに適した調達プランを決定する。ここでいう調達プランとは、情報銀行装置4〜6が保有する、対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す。つまり、調達プランにより示される条件に合致するパーソナルデータが情報銀行装置4〜6から調達される。調達プランの決定ロジックについては後述する。
<データ要求生成部>
データ要求生成部337は、調達プラン決定部336によって決定された調達プランに従い、データ要求を生成する。データ要求は、情報銀行装置4〜6にパーソナルデータを要求するためのデータである。データ要求生成部337は、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に合わせて情報銀行装置4〜6ごとにデータ要求を生成する。データ要求の具体例については後述する。
<データ要求送信部>
データ要求送信部338は、データ要求生成部337によって生成されたデータ要求を情報銀行装置4〜6に通信部31を介して送信する。
<データ受信部>
データ受信部339は、データ要求を受信した情報銀行装置4〜6から、データ要求にて指定されたパーソナルデータを含む納品データを受信する。納品データの具体例については後述する。
<形式処理部>
形式処理部340は、複数の情報銀行装置4〜6から受信された納品データのデータ形式を共通のデータ形式に合わせ、1つのデータに統合することで統合データを生成する。統合データの具体例については後述する。
<データ送信部>
データ送信部341は、形式処理部340により生成された統合データを利用者装置2に送信する。これにより、情報銀行4a〜6aから調達されたパーソナルデータがデータ利用者2aに納品される。
【0030】
[3.処理]
次に、仲介装置3の制御部33が実行するデータ調達処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、データ調達処理は、リクエスト情報を利用者装置2から通信部31を介して受信することにより開始される。なお、データ利用者2aからリクエスト情報が受信されると、受信されたリクエスト情報は記憶部32に記憶される。
【0031】
<S101>
S101で、リクエスト取得部331は、データ利用者2aからのリクエスト情報を記憶部32から取得する。本実施形態のリクエスト情報は、図5に示す各項目を含む。すなわち、リクエスト情報は、タイムスタンプ、トランザクションID(取引ID)、文タイプ、宛先、送り主及び文内容を含む。なお、文タイプは、その情報が、リクエスト情報、メタデータ要求、メタデータ等のどのデータに該当するかを示すデータである。
【0032】
文内容には、予算、報酬、対象条件、要求項目、分布集計軸、利用組織、利用目的及び利用条件の情報が含まれる。
予算の情報には、当該取引についてデータ利用者2aが支払い可能な予算額の情報と、データ利用者2aの費用の決済手段を示す情報と、が含まれる。
【0033】
報酬の情報は、パーソナルデータを提供した個人に対するデータ利用者2aからの報酬の情報である。報酬の情報には、報酬の形式、報酬の発行者、報酬の発行タイミング、報酬に係る特典等を使用可能な地域、報酬の発効時刻及び失効時刻等の情報が含まれる。
【0034】
対象条件は、データ利用者2aが欲するパーソナルデータの条件であり、例えば、パーソナルデータに係る個人の属性(例えば性別、年齢、習慣等)を指定するものである。データ利用者2aが、条件が異なる複数のパーソナルデータを欲する場合、文内容に含まれる対象条件も複数になる。また、文内容には、対象条件ごとにその対象条件に合致するパーソナルデータをいくつ欲するかの件数の情報が含まれる。
【0035】
例えば、図5に示す例では、1つ目の対象条件は、パーソナルデータに係る個人の性別が男性であり、レシピサイトの直近3ヶ月間の閲覧回数が3回以上である。また、データ利用者2aが欲するこの対象条件に合致するパーソナルデータの件数は1000件である。2つ目の対象条件は、パーソナルデータに係る個人の性別が女性であり、レシピサイトの直近3ヶ月間の閲覧回数が7回以上である。また、データ利用者2aが欲するこの対象条件に合致するパーソナルデータの件数は1000件である。
【0036】
要求項目は、データ利用者2aが納品を希望する、パーソナルデータの項目(性別、年代、居住都道府県等)である。
分布集計軸は、情報銀行装置4〜6から送信されるメタデータに含まれる、パーソナルデータの一部の項目を指定するものである。すなわち、後述するとおり、情報銀行装置4〜6から送信されるメタデータには、情報銀行4a〜6aが保有する、対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータの一覧(リスト)が含まれる。当該リストには、パーソナルデータのIDごとに、当該パーソナルデータの一部の項目(すなわち属性。例えば未婚率、年代等。)と、当該パーソナルデータのデータ価格と、が含まれる。分布集計軸は、当該リストに含まれるパーソナルデータの一部の項目を指定する。なお、本実施形態では、分布集計軸に含まれるパーソナルデータの属性は、対象条件により指定された属性以外の属性に設定される。
【0037】
利用組織、利用目的及び利用条件の情報は、パーソナルデータの利用組織、利用目的及び利用条件を示す。利用組織の情報には、例えば、利用組織の法人番号、名称、住所、国、業種等が含まれる。利用目的の情報には、例えば、利用の種別(顧客分析、ダイレクトメール送信等)や個別の利用目的が含まれる。個別の利用目的は、例えば、顧客情報拡充、統計作成、パーソナルデータの提供元の本人へのアクセス、広告配信等である。
【0038】
リクエスト取得部331は、上記のようなリクエスト情報を利用者装置2から受信する。
<S102>
続いて、S102で、メタデータ要求生成部332は、S101で受信されたリクエスト情報に基づいて、メタデータ要求を生成する。メタデータ要求は、パーソナルデータの調達先の情報銀行4a〜6aごとに生成される。具体的には、図6には第1情報銀行4aに対するメタデータ要求の例が示され、図7には第2情報銀行5aに対するメタデータ要求の例が示されている。これらのメタデータ要求はいずれも同じ項目を含む。
【0039】
具体的には、メタデータ要求は、タイムスタンプ、トランザクションID、文タイプ、参照トランザクションID、宛先、送り主及び文内容を含む。参照トランザクションIDは、S101で受信されたリクエスト情報、換言すれば、当該メタデータ要求に関連するリクエスト情報のトランザクションIDである。
【0040】
文内容には、報酬、対象条件、要求項目、分布集計軸、利用組織、利用目的及び利用条件の情報が含まれる。文内容に含まれるこれらの情報はリクエスト情報に含まれるものと同じである。
【0041】
ここで、本実施形態では、情報銀行装置4〜6ごとに取扱い可能なデータ形式が異なる。そのため、メタデータ要求は、送信先の情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に合わせて生成される。
【0042】
例えば、第1情報銀行装置4が取扱い可能なデータ形式では、パーソナルデータに係る個人の性別を表す変数は「Gender」であり、当該変数に格納される値「1」に対して「個人の性別は男である」との意味が対応付く。また、変数「Gender」に格納される値「2」に対して「個人の性別は女性である」との意味が対応付く。
【0043】
一方、例えば、第2情報銀行装置5が取扱い可能なデータ形式では、パーソナルデータに係る個人の性別を表す変数は「性別」であり、当該変数に格納される値「男性」に対して「個人の性別は男である」との意味が対応付く。また、変数「性別」に格納される値「女性」に対して「個人の性別は女性である」との意味が対応付く。
【0044】
そこで、メタデータ要求生成部332は、例えば図6に示す第1情報銀行装置4に対するメタデータ要求では、対象条件の項目において、「パーソナルデータに係る個人の性別が男性である」との条件を「Gender=1」などのようなデータ形式で指定する。
【0045】
一方、メタデータ要求生成部332は、例えば図7に示す第2情報銀行装置5に対するメタデータ要求では、対象条件の項目において、「パーソナルデータに係る個人の性別が男性である」との条件を「性別=男性」などのようなデータ形式で指定する。
【0046】
なお、情報銀行装置4〜6ごとのメタデータ要求は、図8A及び図8Bに示すようなカテゴリテーブルマスタに基づいて作成される。カテゴリテーブルマスタは、メタデータ要求等に含まれる各項目を、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に変換するための情報である。或る情報銀行装置のカテゴリテーブルマスタでは、その情報銀行装置の取扱い可能なデータ形式で記述された「変数名」、「値」及び「意味」が互いに対応付けられて設定されている。本実施形態では、仲介装置3の取引先である各情報銀行装置4〜6のカテゴリテーブルマスタが、あらかじめ仲介装置3の記憶部32に記憶されている。ただし、カテゴリテーブルマスタの所在はこれに限られない。例えば、メタデータ要求を生成するに際し、仲介装置3がカテゴリテーブルマスタを要求する情報を各情報銀行装置4〜6に送信し、その応答信号として各情報銀行装置4〜6のカテゴリテーブルマスタが取得されてもよい。つまり、メタデータ要求を生成するタイミングでカテゴリテーブルマスタが取得されてもよい。
【0047】
<S103>
続いて、S103で、メタデータ要求送信部333は、S102で生成されたメタデータ要求を情報銀行装置4〜6に通信部31を介して送信する。メタデータ要求を受信した情報銀行装置4〜6は、メタデータ要求の応答情報として、メタデータを仲介装置3に送信する。
【0048】
<S104>
続いて、S104で、メタデータ受信部334は、各情報銀行装置4〜6からメタデータを通信部31を介して受信する。メタデータは、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式で記述されている。
【0049】
本実施形態のメタデータは、図9に示す各項目を含む。図9には、第2情報銀行装置5から受信されたメタデータが示される。
メタデータには、タイムスタンプ、トランザクションID、文タイプ、参照トランザクションID、宛先、送り主、カテゴリコードマスタ及び文内容が含まれる。参照トランザクションIDは、当該メタデータに関連するメタデータ要求、換言すれば、当該メタデータの送信元の情報銀行装置に送信されたメタデータ要求のトランザクションIDである。カテゴリコードマスタは、当該メタデータの送信元の情報銀行装置に関するカテゴリコードマスタを特定する情報である。
【0050】
文内容には、対象者の情報である対象者情報が含まれる。対象者情報は、当該情報銀行が保有するパーソナルデータのうち、リクエスト情報に含まれる対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータの件数を含む。また、対象者情報は、対象条件に合致する全部又は一部のパーソナルデータがどのような属性のパーソナルデータから構成されるかを示す。
【0051】
具体的には、対象者情報は、要求項目統計量を含む。要求項目統計量は、要求項目で指定される各属性に関するパーソナルデータの統計量(平均、分散、歪度、中央値等)や最大値及び最小値などである。また、対象者情報には、分散共分散行列、パーソナルデータのデータ価格分布の情報とその他多変量の統計量の情報とが含まれる。
【0052】
ここで、データ価格分布の情報は、パーソナルデータを分布集計軸により指定される属性で分類した際の各分類に含まれるパーソナルデータのデータ価格を示す。例えば、分布集計軸において「未既婚、年代、3ヶ月雑誌購買有無」の属性が指定されている場合、データ価格分布の情報には、「未既婚:未婚、年代:30、3ヶ月雑誌購買有無=無」との分類に含まれるデータ価格「260,280,290,・・・」が示される。
【0053】
本実施形態では、リクエスト情報で指定されたパーソナルデータの件数よりも多くの件数のパーソナルデータの情報がメタデータに含まれることが想定される。より詳細には、メタデータに含まれる、或る対象条件に合致するパーソナルデータの情報の件数は、リクエスト情報において指定されたその対象条件に合致するパーソナルデータの件数よりも多いことが想定される。これは、リクエスト情報で指定された件数のパーソナルデータをメタデータを基に選択する際に、複数通りのパーソナルデータの選択の仕方(すなわち調達プラン)を検討し、複数通りの調達プランの中からデータ利用者2aに適した調達プランを決定するためである。ただし、メタデータによりその属性が示されるパーソナルデータの件数はこれに限られず、当該パーソナルデータの件数は、例えば、リクエスト情報で指定されたパーソナルデータの件数と同数であってもよい。
【0054】
<S105>
続いて、S105で、条件整理部335は、各情報銀行装置4〜6のデータ形式に合わされたメタデータから取引条件を整理する。具体的には、条件整理部335は、各情報銀行装置4〜6のカテゴリテーブルマスタを利用して、各情報銀行装置4〜6のデータ形式に合わされたメタデータを共通のデータ形式に合わせ、取引条件を整理する。
【0055】
また、条件整理部335は、S104で受信された各情報銀行装置4〜6からのメタデータに基づき、図10の破線で示すようなリスト(以下、メタデータリスト)を生成する。メタデータリストは、パーソナルデータのIDと、データソースと、分布集計軸により指定される属性と、データ価格と、が対応付けられたデータである。データソースは、そのデータがどの情報銀行からのデータであるかを識別する情報である。前述のとおり、本実施形態では、リクエスト情報で指定されたパーソナルデータの件数よりも多くの件数のデータを含むメタデータリストが生成される。
【0056】
<S106>
続いて、S106で、調達プラン決定部336は、S105で生成されたメタデータリストに基づいて、データ利用者2aに適した調達プランを決定する。本実施形態では、調達プラン決定部336は、情報銀行装置4〜6が保有する個々のパーソナルデータのデータ価格と、データ利用者2aが指定した予算額と、に基づき、調達プランを決定する。さらに、調達プラン決定部336は、メタデータにより示される、分布集計軸により指定された属性に着目したときのパーソナルデータの分布(以下、元データ分布)の再現性に基づき調達プランを決定する。つまり、調達プラン決定部336は、データ利用者2aの予算額の範囲内で、調達プランにより調達されるパーソナルデータのデータ分布が元データ分布に近づくように調達プランを決定する。
【0057】
以下、調達プランの決定の仕方を図10を用いて具体的に説明する。図10では、簡単のため、100個のデータから成るメタデータリストを考える。この事例ではデータ利用者2aからのリクエスト情報には1つの対象条件のみが含まれているとする。例えば、図5の対象条件1の「パーソナルデータに係る個人の性別が男性であり、レシピサイトの直近3ヶ月間の閲覧回数が3回以上である」との対象条件のみがリクエスト情報に含まれているとする。図10の100個のデータはこの対象条件に合致するデータである。そして、データ利用者2aが欲するこの対象条件に合致するパーソナルデータの件数は40件であるとする。つまり、前記100個のデータの中から40個のデータを選択する。また、データ利用者2aの予算額は11000円であるとする。
【0058】
データ価格の総額が最も安い調達プランは、データ価格でデータを昇順でソートし、1番目から40番目までのデータを購入するプランAである。なお、図10では、調達プランにおいて購入されるデータには「1」のフラグが立ち、購入されないデータには「0」のフラグが立つ。プランAの購入データ価格の総額は10570円である。しかしながら、例えば未婚及び未既の比は、元の100個のデータ(以下、元データ)では59:41(≒3:2)であるのに対してプランAでは12:28(≒1:2.5)であり、元データの分布とズレている。なお、図10では、未婚に対応する値は「0」であり、既婚に対応する値は「1」である。すると、実際に調達して得られるパーソナルデータの他の項目についても元データの分布を再現しない懸念がある。そこで、購入されるデータの内訳が異なる他のパターン(図10のプランBやプランC等)も検討し、プランAと同様にデータ価格の総額と元データの分布である元データ分布からのズレとを評価する。なお、元データ分布とのズレは、例えばKL(Kullback-Leibler)-divergence(カルバック・ライブラー情報量)等の指標値を用いて評価することができる。図10に示す例では元データ分布とのズレが最も小さい調達プランはプランCであるが、データ価格の総額が12420円で予算オーバーである。よって、予算額の範囲内で元データ分布とのズレが最小であるプランBが調達プランとして決定採用される。このように、複数の調達プランの中から予算額の範囲内で元データ分布とのズレが最小のプランを調達プランとして決定するのが本実施形態の調達プランの決定ロジックである。なお、上記ではリクエスト情報に1つの対象条件のみが含まれている場合を例示して説明したが、リクエスト情報に複数の対象条件が含まれている場合も同様である。なお、リクエスト情報に複数の対象条件が含まれている場合には、リクエスト情報で指定された各対象条件の件数を変えないように調達されるデータを変更して、複数のプランを検討する。
【0059】
<S107>
続いて、S107で、データ要求生成部337は、調達プラン決定部336により決定された調達プランに従い、パーソナルデータを要求するデータ要求を生成する。データ要求生成部337は、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に合うように情報銀行装置4〜6ごとにデータ要求を生成する。
【0060】
図11には第1情報銀行4aに対するデータ要求の例が示され、図12には第2情報銀行5aに対するデータ要求の例が示される。これらのデータ要求はいずれも同じ項目を含む。
【0061】
具体的には、データ要求は、タイムスタンプ、トランザクションID、文タイプ、参照トランザクションID、宛先、送り主及び文内容が含まれる。参照トランザクションIDは、当該データ要求に関連するメタデータ、換言すれば、当該データ要求の送信先の情報銀行装置から受信されたメタデータのトランザクションIDである。
【0062】
文内容には、各対象条件に対応した対象者情報が含まれる。対象者情報には、条件文、件数、支払額及び購入データの情報が含まれる。
条件文は、対応する対象条件を表す。件数及び支払額は、対応する対象条件について当該データ要求の送信先の情報銀行装置から調達するパーソナルデータの件数及び支払額を表す。
【0063】
購入データは、当該データ要求の送信先の情報銀行装置から調達するパーソナルデータを特定する。具体的には、購入データは、集計分布軸により指定された各属性とデータ価格とにより調達するパーソナルデータを指定する。
【0064】
また、文内容には、データ利用者2aが納品を希望する、パーソナルデータの項目である要求項目が含まれる。
データ要求生成部337は、各情報銀行装置4〜6の取扱い可能なデータ形式に合うように各情報銀行装置4〜6のカテゴリコードマスタを用いて情報銀行装置4〜6ごとにデータ要求を生成する。
【0065】
<S108>
続いて、S108で、データ要求送信部338は、S107で生成されたデータ要求を情報銀行装置4〜6に通信部31を介して送信する。
【0066】
<S109>
続いて、S109で、データ受信部339は、データ要求を受信した情報銀行装置4〜6から、図13に示すような、データ要求にて指定されたパーソナルデータを含む納品データを受信する。
【0067】
具体的には、納品データは、タイムスタンプ、トランザクションID、文タイプ、参照トランザクションID、宛先、送り主及び文内容が含まれる。参照トランザクションIDは、当該納品データに関連するデータ要求、換言すれば、当該納品データの送信先の情報銀行装置に送信されたデータ要求のトランザクションIDである。
【0068】
文内容には、各対象条件に対応した対象者情報が含まれる。対象者情報には、条件文、件数及びデータ本体の情報が含まれる。条件文及び件数は、データ要求に含まれるものと同じである。データ本体は、データ要求に含まれる購入データで指定されたパーソナルデータである。データ本体には、パーソナルデータの項目のうち要求項目により指定された項目が含まれる。また、文内容には、要求項目の情報が含まれる。
【0069】
<S110>
続いて、S110で、形式処理部340は、複数の情報銀行装置4〜6から受信された納品データのデータ形式を揃える。具体的には、形式処理部340は、各情報銀行装置4〜6から受信された納品データのデータ形式を共通のデータ形式に変換する。そして、形式処理部340は、共通のデータ形式に変換された各情報銀行装置4〜6からの納品データを1つのデータに統合する。以下、具体的に説明する。
【0070】
まず、各情報銀行装置4〜6からの納品データのデータ形式を共通のデータ形式に変換するに当たり、形式処理部340は、記憶部32に記憶されている、図14に示すような標準辞書を使用する。標準辞書は、パーソナルデータに含まれ得る各項目について仲介装置3における規定の意味、変数名(以下、標準変数名)及び値(以下、標準値)が互いに対応付けられて設定されたデータである。この標準辞書を用いて形式処理部340は、まず各情報銀行装置4〜6のデータ変換用辞書を作成する。データ変換用辞書は、各情報銀行装置4〜6の納品データの変数名及び値を、標準辞書に規定された標準変数名及び標準値に変換するためのデータである。
【0071】
データ変換用辞書を作成するに際し、形式処理部340は、その情報銀行の図8A図8Bに示すカテゴリテーブルマスタと図14に示す標準辞書とを「意味」の項目で突き合わせる。なお、この突き合わせ(すなわちマッチング)を行うに当たり、例えば双方のデータの「意味」の項目内のテキストを単純にマッチングされてもよく、またその他の方法でマッチングさせてもよい。
【0072】
カテゴリテーブルマスタと標準辞書とを「意味」の項目で突き合わせると、カテゴリテーブルマスタに含まれる「変数名」及び「値」と、標準辞書に含まれる「標準変数名」及び「標準値」と、そして「意味」と、が対応付けられた図15に示すようなデータ変換辞書が生成される。なお、データ変換辞書は、各情報銀行装置4〜6からの納品データのデータ形式を共通のデータ形式に変換する際に生成されてもよく、あらかじめ生成されて記憶部32に記憶されていてもよい。
【0073】
そして、形式処理部340は、情報銀行装置から送信された納品データの変数及び値を、その情報銀行装置のデータ変換辞書を使用して標準変数及び標準値に変換する。これにより、各情報銀行装置4〜6から受信された納品データのデータ形式が共通のデータ形式に変換される。
【0074】
例えば、図15に示す第1情報銀行装置4のデータ変換用辞書を使用して、図16Aに示す第1情報銀行装置4からの納品データは、図17に示す変換後の納品データに変換される。同様に、図示省略する第2情報銀行装置5のデータ変換用辞書を使用して、図16Bに示す第2情報銀行5aからの納品データは、図18に示す変換後の納品データに変換される。
【0075】
そして、形式処理部340は、各情報銀行装置4〜6の変換後の納品データを1つのデータに統合し、図19に示すような統合データを生成する。なお、形式処理部340は、統合データを生成するに際し、各パーソナルデータのIDを振り直し、各情報銀行装置4〜6の納品データを順次積み上げる。また、統合データでは、或る情報銀行装置からのパーソナルデータと別の情報銀行装置からのパーソナルデータとが互いに区別可能になっている。例えば、図19に示す統合データでは、第1情報銀行4aからのパーソナルデータのIDには「b」が付され、第2情報銀行5aからのパーソナルデータには「a」が付されている。
【0076】
形式処理部340はこのようにして複数の情報銀行装置4〜6からの納品データのデータ形式を揃え、1つのデータに統合する。
<S111>
続いて、S111で、データ送信部341は、形式処理部340により生成された統合データをデータ利用者2aに送信する。
【0077】
制御部33は、S111を実行すると、図4のデータ調達処理を終了する。
[5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0078】
(1)本実施形態では、調達プラン決定部336は、情報銀行装置4〜6から受信されたメタデータに基づいて、データ利用者2aに適した調達プランを決定する。そして、データ要求送信部338は、決定された調達プランに従いデータ要求を情報銀行装置4〜6に送信し、データ受信部339は情報銀行装置4〜6からパーソナルデータを受信する。そして、データ送信部341は、受信されたパーソナルデータをデータ利用者2aに送信する。
【0079】
よって、データ利用者2aが、情報銀行装置4〜6が保有しているパーソナルデータを把握しづらい中で直接情報銀行装置4〜6に問い合わせてパーソナルデータを調達する場合と比較して、データ利用者2aに適したパーソナルデータの調達をより容易に行うことができる。
【0080】
(2)本実施形態では、調達プラン決定部336は、情報銀行装置4〜6が保有する個々のパーソナルデータの価格と、リクエスト情報に含まれる予算額と、に基づき、調達プランを決定する。したがって、データ利用者2aの予算額に応じて適切な調達プランを決定できる。
【0081】
(3)本実施形態では、調達プラン決定部336は、調達プランにより調達されるパーソナルデータの属性に基づく分布が、メタデータにより示される元データ分布に近づくように調達プランを決定する。
【0082】
例えば、元データ分布を無視してパーソナルデータの調達プランを決定した場合、元データ分布に対して偏った分布でパーソナルデータが調達される可能性がある。その結果、パーソナルデータの要求項目に含まれる特定の項目についてデータ利用者2aが集計等したときに元データの分布を再現せず、偏った結果が得られる場合がある。
【0083】
これに対して、本実施形態の構成によれば、元データ分布の再現性に基づき調達プランを決定するため、実際にパーソナルデータを調達した際にデータの偏りが発生することを抑制できる。
【0084】
特に、本実施形態では、データ利用者2aの予算額の範囲内で、データの偏りが発生することを出来るだけ抑制することができる。
(4)本実施形態では、調達プラン決定部336は、複数の情報銀行装置4〜6から受信したメタデータに基づいて、複数の情報銀行装置4〜6が保有する対象条件に合致するパーソナルデータの中から実際に調達するパーソナルデータに関する条件を示す調達プランを決定する。データ受信部339は複数の情報銀行装置4〜6からパーソナルデータを受信し、データ送信部341は複数の情報銀行装置4〜6から受信されたパーソナルデータをデータ利用者2aに送信する。
【0085】
よって、データ利用者2aが、情報銀行装置4〜6が保有しているパーソナルデータを把握しづらい中で直接複数の情報銀行装置4〜6に問い合わせてパーソナルデータを調達する場合と比較して、複数の情報銀行装置4〜6からデータ利用者2aに適したパーソナルデータをより容易に調達することができる。
【0086】
(5)本実施形態では、形式処理部340は、複数の情報銀行装置4〜6から受信されたパーソナルデータのデータ形式を共通のデータ形式に揃える。そして、データ送信部341は、形式処理部340によりデータ形式が合わせられた複数の情報銀行装置4〜6からのパーソナルデータを、利用者装置2に送信する。
【0087】
したがって、データ形式を共通のデータ形式に揃えることで、データ利用者2aにとって取扱いしやすいデータ形式でパーソナルデータを納品することができる。
なお、本実施形態では、情報銀行4a〜6aがパーソナルデータ事業者に相当し、情報銀行装置4〜6が事業者装置に相当する。また、S101がリクエスト取得部としての処理の一例に相当し、S103がメタデータ要求送信部としての処理の一例に相当し、S104がメタデータ受信部としての処理の一例に相当し、S106が調達プラン処理部としての処理の一例に相当し、S108がデータ要求送信部としての処理の一例に相当し、S109がデータ受信部としての処理の一例に相当し、S111がデータ送信部としての処理の一例に相当する。
【0088】
[6.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0089】
(1)上記実施形態では、仲介装置3は、複数の情報銀行装置4〜6からパーソナルデータを調達するが、仲介装置3がパーソナルデータを調達する情報銀行装置の数はこれに限られない。例えば、仲介装置3は、複数の情報銀行装置からパーソナルデータを調達せず、1つの情報銀行装置からパーソナルデータを調達してもよい。
【0090】
(2)上記実施形態では、パーソナルデータ事業者として情報銀行を例示したが、パーソナルデータ事業者は情報銀行以外の事業者であってもよい。パーソナルデータ事業者は、個人から預託されたパーソナルデータを管理するとともに当該パーソナルデータを第三者に提供する事業を営む者であればよい。
【0091】
(3)上記実施形態では、仲介装置3は、複数の情報銀行装置4〜6から受信された納品データのデータ形式を共通のデータ形式に合わせ、1つのデータに統合してデータ利用者2aに納品するが、納品の仕方はこれに限られない。例えば、仲介装置3は、複数の情報銀行装置4〜6から受信された納品データを共通のデータ形式に合わせなくてもよい。また、仲介装置3は、複数の情報銀行装置4〜6からの納品データを1つの納品データに統合しなくてもよい。
【0092】
(4)上記実施形態における調達プランの決定ロジックはあくまで一例であり、他の決定ロジックで調達プランが決定されてもよい。例えば、上記実施形態では、データ利用者2aの予算額の範囲内で元データ分布の再現性が最も高いプランが調達プランに決定される。しかし、例えば、予算額を多少(すなわち所定額)オーバーしても元データ分布の再現性が最も高い場合、そのプランが調達プランに決定されてもよい。つまり、予算額と元データ分布の再現性とに基づいて調達プランが決定される場合において、再現性の方を予算額よりも重視するように調達プランが決定されてもよい。一方、上記実施形態のように予算額の方を再現性よりも重視するように調達プランが決定されてもよい。
【0093】
また例えば、仲介装置3は、調達プランを決定するための条件(換言すれば、調達プランの決定ロジック)に関する要望をデータ利用者2aから取得し、取得された要望に基づいて調達プランを決定してもよい。
【0094】
また、仲介装置3は、複数のプランの中からデータ利用者2aに適した調達プランを選択するのではなく、データ利用者2aに適した一の調達プランをいきなり出力してもよい。
(5)図5に例示されたリクエスト情報の具体例や図6図7に例示されたメタデータ要求の具体例等はあくまで一例であり、リクエスト情報等は、図5等に示す項目の一部のみ含んでいてもよく、図5等に例示されていない他の項目を含んでいてもよい。
【0095】
(6)或る情報銀行からのメタデータは、その情報銀行が保有する全てのパーソナルデータの属性を示す情報であってもよく、また、一部のパーソナルデータのみの属性を示す情報であってもよい。また、メタデータは、パーソナルデータの一部の属性を示すものに限られず、パーソナルデータの全ての属性を示すデータであってもよい。
【0096】
(7)前述した仲介装置3の他、当該仲介装置3を構成要素とする調達システム1、当該仲介装置3としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記憶した半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体、パーソナルデータを調達する方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0097】
(8)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0098】
1…調達システム、2…利用者装置、2a…データ利用者、3…仲介装置、
4〜6…情報銀行装置、4a〜6a…第1情報銀行、33…制御部、
331…リクエスト取得部、332…メタデータ要求生成部、
333…メタデータ要求送信部、334…メタデータ受信部、
335…条件整理部、336…調達プラン決定部、337…データ要求生成部、
338…データ要求送信部、339…データ受信部、340…形式処理部、
341…データ送信部。
【要約】
【課題】データ利用者に適したパーソナルデータの調達をより容易に行うことを可能にする技術を提供する。
【解決手段】リクエスト取得部は、データ利用者が欲するパーソナルデータの条件である対象条件を含むリクエスト情報を取得する。メタデータ要求送信部は、メタデータ要求を、パーソナルデータ事業者が保有する装置である事業者装置に送信する。調達プラン決定部は、事業者装置から受信したメタデータに基づいて、データ利用者に適した調達プランを決定する。データ要求送信部は、調達プラン決定部によって決定された調達プランに従い、データ要求を事業者装置に送信する。データ送信部は、パーソナルデータ事業者から受信したパーソナルデータをデータ利用者が保有する装置に送信する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19