特許第6592227号(P6592227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6592227-ゆるみ止めねじ 図000002
  • 特許6592227-ゆるみ止めねじ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592227
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ゆるみ止めねじ
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/30 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   F16B39/30 C
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-39585(P2013-39585)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167333(P2014-167333A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年1月29日
【審判番号】不服2018-2910(P2018-2910/J1)
【審判請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】角間 康宣
【合議体】
【審判長】 水野 治彦
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4512666(JP,B1)
【文献】 登録実用新案第3019615(JP,U)
【文献】 実開昭52−89558(JP,U)
【文献】 特開昭50−35565(JP,A)
【文献】 特開2012−72837(JP,A)
【文献】 実開昭62−156613(JP,U)
【文献】 特開平9−100893(JP,A)
【文献】 実公平1−25771(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00 - 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進み側フランクと追い側フランクとから成るねじ山を備える緩み止めねじにおいて、
進み側フランクは、平坦面に形成され、
ねじ山の追い側フランクは、ねじ山の頂部から基部にかけて複数の段部を全面的に設けて成る階段状に形成され、締め付け状態では、複数の各段部の頂角だけがテーパ状に成形されためねじのフランク面に食い込み、各段部を連ねる側壁とめねじのフランク面との間には隙間が創出されるように構成されていることを特徴とするゆるみ止めねじ。
【請求項2】
前記ねじ山の追い側フランクにおける各段部の頂角が、ねじ山の中心線を対称軸としてねじ山の進み側フランクと対称な位置にある仮想フランク上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のゆるみ止めねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めねじが成形された相手部材に被締結部材を締結するに際して使用されるゆるみ止め効果の高いゆるみ止めねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振動等の発生によりゆるみの発生し易い個所に配置された相手部材に被締結部材を締結するに際しては、ゆるみ止めねじが使用されている。ゆるみ止めねじが小ねじである場合、そのゆるみ止め効果、すなわち締結力はねじ山フランクの摩擦から得られることが知られており、ねじ山フランクの摩擦増の工夫が種々行われている。中でも、ねじ山フランクに突起を設けることによってねじ山フランクの摩擦増を図ったゆるみ止めねじはゆるみ止め効果の高いことから、各方面で使用されている。このゆるみ止めねじの一例として、特許文献1に記載のゆるみ止めねじがある。このゆるみ止めねじは、ねじ山フランクのうち、追い側フランクが複合角を成しており、締め付け時には追い側フランクの先端角部がめねじに食い込むことにより、ゆるみ止め効果を発揮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ゆるみ止めねじの場合、締め付け時にめねじに対して食い込むのは、追い側フランクの先端角部だけであるため、十分なゆるみ止め効果が得られないという問題が生じている。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を除去することであり、ゆるみ止め効果の高いゆるみ止めねじを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、ねじ山の追い側フランクは、ねじ山の頂部から基部にかけて複数の段部を全面的に設けて成る階段状に形成され、締め付け状態では、複数の各段部の頂角だけがテーパ状に成形されためねじのフランク面に食い込み、各段部を連ねる側壁とめねじのフランク面との間には隙間が創出されるように構成されていることを特徴とする。この構成によれば、締め付け状態では締結力(軸力)の作用により、めねじと追い側フランクが接近し、追い側フランクに形成された各段部の頂角が全てめねじに食い込むため、高いゆるみ止め効果が得られる。
【0007】
また、ねじ山の追い側フランクにおいては各段部の頂角が、ねじ山の中心線を対称軸として進み側フランクと対称な位置にある仮想フランク上に設定されていることが好ましい。この構成によれば、追い側フランクは、ねじ込み時にはめねじに接触せず、締め付け時には最もめねじに接近する位置となる。つまり、追い側フランクの各段部の頂角が、ねじ込み時にはめねじに接触しない範囲で、締結時にはめねじに最も深く食い込むことになるので、ねじ込み易く、かつ高いゆるみ止め効果が得られる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明した本発明によれば、めねじが成形された相手部材に被締結部材を締結するに際して、締結力(軸力)の作用によってねじ山の追い側フランクに形成された各段部の頂角が全てめねじに食い込むことにより、ゆるみ止め効果を増大させたゆるみ止めねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るゆるみ止めねじの正面図。
図2】本発明の実施形態に係るゆるみ止めねじの要部拡大断面図であり、(a)はねじ込み状態、(b)は締め付け状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るゆるみ止めねじを、図面を参照して説明する。本発明の実施形態に係るゆるみ止めねじ1は、図1に示すように、ドライバビット(図示せず)の回転が伝達される駆動穴2aを備えたねじ頭部2と、ねじ頭部2の中心から延びるねじ部3とを備えており、めねじ11が成形された相手部材10に被締結部材20を締結する場合に使用する。このようなゆるみ止めねじ1は、一般的に小ねじと称される。
【0011】
図2において、前記ねじ部3に形成されたねじ山4は、追い側フランク6の斜面形状を除いて日本工業規格B0205(一般用メートルねじ)に準じた山形を成している。したがって、ねじ山4の角度は60°、並びにねじ先端側に位置する進み側フランク5及びねじ頭部側に位置する追い側フランク6は、双方共にねじ山の中心線に対して傾斜角30°に設定されている。また、めねじ11のねじ山角度も60°に設定されており、ねじ山の両フランク5,6は対向するめねじ山と平行している。
【0012】
前記ねじ山の進み側フランク5は、平坦面に形成されている。一方、追い側フランク6は、ねじ山4の頂部から基部にかけて4段形状に形成されており、各段部に頂角6a,6b,6c,6dを有している。これら頂角6a,6b,6c,6dは、ねじ山4の中心線を対称軸として進み側フランク5と対称な位置にある仮想フランク上に設定されている。また、前記追い側フランク6において上下の段部を連ねる側壁は、ねじ山4の中心線に対して僅かに傾斜しており、仮想フランクよりも急傾斜に形成されている。このような段形状は、ねじ山4の追い側フランク6に全周に渡って形成されている。なお、追い側フランク6の段形状は、複数段に形成されていれば3段、5段でもよく、段数に応じた相応のゆるみ止め効果が発揮される。
【0013】
上記ゆるみ止めねじ1を使用して、めねじ11が成形された相手部材10に被締結部材20を締結する場合、ねじ込み時には、進み側フランク5は、推力あるいはゆるみ止めねじ1の自重により、めねじ11に対して僅かに接触する程度であるため、ねじ込みトルクが大幅に増加することもなければ、切粉が大量発生することもない。一方、追い側フランク6は、めねじ11に対して一切接触しない。これは、追い側フランク6の各段部の頂角6a,6b,6c,6dが、前記仮想フランク上に設定されていることによるものである。これにより、ねじ込みトルクが増加することもなければ、切粉が発生することもない。
【0014】
一方、締め付け時には、締結力(軸力)の作用により、追い側フランク6がめねじ11に対して接近し、各段部の頂角6a,6b,6c,6dが全てめねじに食い込むので、ゆるみ止め効果を増大させることができる。また、追い側フランク6の段部は、全体がめねじ11に食い込むものではなく、頂角6a,6b,6c,6dだけが食い込み、各段部を連ねる側壁とめねじ11との間には隙間が創出されるように構成されている。この構成により、万一切粉が発生しても、当該隙間に切粉が封じこめられるので、切粉が外部へこぼれ落ちる虞もない。なお、本発明の実施形態は、小ねじに限定されるものではなく、タッピンねじに適用することもできる。
【符号の説明】
【0015】
1 ゆるみ止めねじ
2 ねじ頭部
2a 駆動穴
3 ねじ部
4 ねじ山
5 進み側フランク
6 追い側フランク
6a,6b,6c,6d 頂角
10 相手部材
11 めねじ
20 被締結部材
図1
図2