特許第6592249号(P6592249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592249
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   A61B3/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-16318(P2015-16318)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-140402(P2016-140402A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄輝
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5386512(JP,B2)
【文献】 特開2006−026048(JP,A)
【文献】 特開2009−045267(JP,A)
【文献】 特開2004−208744(JP,A)
【文献】 特開2011−143166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼眼底を電子撮像手段でステレオ撮影と単眼撮影を切り換えて撮影することが可能な眼撮影装置であって、
被検眼の前眼部共役位置に配置され、被検眼眼底からの反射光束を視差のある左右一対の光束に分割するための2孔絞りと、
前記分割された光束から左右一対の眼底像を中間像として結像する結像光学系と、
前記中間像として結像された一対の眼底像をそれぞれ左右に分離して電子撮像手段の撮像面に再結像する一対の光路分割レンズと、
前記中間像が結像される面に配置された眼底の撮影範囲を定める撮影マスクと、
前記撮影マスク及び前記2孔絞りとは異なる位置に配置された開口径が可変な可変開口絞りと、を備え、
ステレオ撮影から単眼撮影への切り換えに連動して、前記2孔絞りを単孔絞りに、また前記一対の光路分割レンズを単一の結像レンズに切り換えるとともに、前記可変開口絞りの開口径を変化させることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
前記結像光学系は、ピントの合った中間像を形成するために被検眼視度に応じて光軸方向に移動されるフォーカスレンズを有し、前記可変開口絞りは、前記フォーカスレンズと同時に光軸方向に移動されることを特徴とする請求項1に記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記フォーカスレンズは複数のレンズから構成され、前記可変開口絞りは、該複数のレンズの間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の眼底撮影装置。
【請求項4】
前記可変開口絞りは、ステレオ撮影時の開口径のサイズが、単眼撮影時の開口径のサイズより大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の眼底撮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科撮影装置、更に詳細には、被検眼眼底を電子撮像手段でステレオ撮影と単眼撮影を切り換えてステレオ又は単眼撮影することが可能な眼底カメラなどの眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対物レンズを介して入射する眼底からの反射光を分割し、分割された光束を一対の結像光学系で結像して左右一対の立体視用の眼底像を観察、撮影する眼底カメラが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、分割された光束から視差のある左右一対の眼底像を一旦中間像として結像し、この中間像として結像された一対の眼底像を、一対の光路分割レンズにより左右に分離して撮像手段の撮像面に再結像する構成が記載されている。このような構成では、光路分割にプリズムを使用することなく、立体視用の2枚の眼底画像を効果的に取得できる。
【0004】
また、同特許文献1の眼科撮影装置では、ステレオ撮影だけでなく、光路分割レンズに代えて、単眼撮影用の結像レンズを光路に挿入し、単眼撮影(モノラル撮影)ができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5386512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、ステレオ撮影から単眼撮影に切り換えて眼底を撮影すると、眼底画像周辺にリング状のフレアが入って画像品質を劣化させてしまう、という問題があった。
【0007】
従って、本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、眼底画像周辺のリング状フレアの発生を低減させて眼底をステレオ撮影並びに単眼撮影することが可能な眼底撮影装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
被検眼眼底を電子撮像手段でステレオ撮影と単眼撮影を切り換えて撮影することが可能な眼科撮影装置であって、
被検眼の前眼部共役位置に配置され、被検眼眼底からの反射光束を視差のある左右一対の光束に分割するための2孔絞りと、
前記分割された光束から左右一対の眼底像を中間像として結像する結像光学系と、
前記中間像として結像された一対の眼底像をそれぞれ左右に分離して電子撮像手段の撮像面に再結像する一対の光路分割レンズと、
前記中間像が結像される面に配置された眼底の撮影範囲を定める撮影マスクと、
前記撮影マスク及び前記2孔絞りとは異なる位置に配置された開口径が可変な可変開口絞りと、を備え、
ステレオ撮影から単眼撮影への切り換えに連動して、前記2孔絞りを単孔絞りに、また前記一対の光路分割レンズを単一の結像レンズに切り換えるとともに、前記可変開口絞りの開口径を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、開口径が可変な可変開口絞りを、撮影マスクと2孔絞りとは異なる位置に配置し、ステレオ撮影から単眼撮影への切り換えに連動して、可変開口絞りの開口径を変化させるようにしているので、入射瞳位置の収差からくる被検眼の水晶体あるいは角膜からの反射光が眼底画像に混入するのを防止することができ、眼底画像周辺にリング状のフレアのない良好な眼底画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】眼科撮影装置の全体の構成を示す光学図である。
図2図1の光学配置でステレオ撮影を行うときの原理的な光学構成を示した光学図である。
図3】ステレオ撮影と単眼撮影時の可変開口絞りの開口径が変化する状態を示した光学図である。
図4】(a)は眼底画像周辺にリング状のフレアが発生する状態を示した説明図、(b)はリング状のフレアがない眼底画像を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、眼科撮影装置として眼底カメラを例にして説明が行われる。
【実施例】
【0012】
図1には、ステレオ撮影(立体撮影)と単眼撮影(モノラル撮影)が可能な眼底カメラ10が図示されている。図1は、ステレオ撮影を中心に描かれており、単眼撮影のときは、それぞれ対応した光学素子に切り換えられる。
【0013】
眼底カメラ10には、眼底を照明する照明光学系と、照明された眼底を結像する光学系が設けられている。照明光学系では、ハロゲンランプなどの光源11から発せられた光並びに凹面鏡12で反射した光は、光路に挿脱可能な可視カット赤外透過フィルタ13を介して赤外光となり、ストロボ14を通過して拡散板15に入射して拡散され、被検眼1の前眼部(瞳)1bと共役な位置に配置されたステレオ撮影用のリングスリット16を照明する。なお、リングスリット16は、単眼撮影時には単眼用のリングスリット16’に切り換えられる。
【0014】
リングスリット16を通過した照明光は、レンズ17、対物レンズ22の反射を除去するための黒点板18、ハーフミラー19、リレーレンズ20を通過し、中心に穴の開いた穴あき全反射ミラー21で反射される。黒点板18はステレオ撮影用で、単眼撮影時には、単眼撮影用の黒点板18’に切り換えられる。
【0015】
穴あき全反射ミラー21で反射された照明光は対物レンズ22を経て、被検眼1の前眼部1bより眼底1aに入射し、眼底1aを赤外光で照明する。
【0016】
眼底1aからの反射光は、対物レンズ22を介して受光され、穴あき全反射ミラー21の穴を通過して、被検眼1の前眼部1bとほぼ共役な位置に配置された円形の2つの孔31a、31bを有する撮影絞りとしての2孔絞り31に入射し、その光路が左右に分割される。なお、単眼撮影のときは、2孔絞り31に代えて、単孔絞り31’が前眼部共役位置の光路に挿入される。
【0017】
ステレオ撮影時、光路が分割された眼底1aからの左右一対の光束はフォーカスレンズ32に入射する。フォーカスレンズ32は、撮影光軸に沿って移動可能で被検眼視度の個体差による眼底結像位置のずれを補正するもので、レンズ32a、32bから構成されており、レンズ32aと32b間に可変開口絞り32cが配置される。後述するように、可変開口絞り32cは単眼撮影のときは開口径がステレオ撮影の時より小さくなり眼底画像周辺にリング状のフレアが発生するのを防止する。
【0018】
フォーカスレンズ32を通過した眼底像は、結像レンズ33を通過して、ハーフミラー34で反射され、眼底1aと共役な位置に配置され眼底の撮影範囲を定める撮影マスク42、43を介して赤外透過可視反射ミラー(光路分割手段)36に入射する。フォーカスレンズ32と結像レンズ33は、2孔絞り31を介した視差のある左右一対の2つの眼底像を撮影マスク43の位置に中間像として結像する第1の結像光学系を構成する。
【0019】
撮影マスク42は単眼撮影用の撮影マスクであり、撮影マスク43はステレオ撮影用の撮影マスクで、ステレオ撮影時には、撮影マスク43が光路に挿入され、単眼撮影時には、撮影マスク43が光路から離脱されて撮影マスク42が有効になる。
【0020】
赤外透過可視反射ミラー36を透過した赤外光は、ミラー38で反射され、レンズ37を通過して赤外光に感度を有する赤外CCDなどで構成される撮像素子(撮像手段)40に入射され、モニタ41にその信号が入力される。
【0021】
また、リレーレンズ47が、第1の結像光学系の射出瞳像を後述の第2の結像光学系に結ぶために配置されている。ミラー36で反射された可視光が、このリレーレンズ47を介して前眼部1bと共役位置に配置された2孔絞り50に入射し、この2孔絞り50に近接して(つまり2孔絞り31とほぼ共役な位置に)一対の光路分割レンズ51、52が配置される。この一対の光路分割レンズは、後述するように、撮影マスク43からの光路を分割し、撮影マスク43の位置に中間像として結像された左右一対の眼底像を互いに重ならないように左右に分離して再結像する第2の結像光学系を構成する。ここで光路分割レンズ51、52は撮影光軸48に対して等間隔に、つまり撮影光軸48に対して軸対称に、配置されることが最適である。
【0022】
この第2の結像光学系による結像面に、可視光に感度を有する可視CCDなどで構成される撮像素子(撮像手段)53の撮像面53aが配置され、光路分割レンズ51、52と撮像素子53間にはリターンミラー60が配置される。可視カット赤外透過フィルタ13が光路から離脱され、リターンミラー60が光路に挿入される場合には、分離された左右一対の眼底像がミラー61を介して接眼レンズ(双眼観察手段)62により肉眼観察することができる。
【0023】
撮像素子53で撮像された眼底像は、メモリ54に記憶することができ、また、外部パソコン(不図示)に取り込まれたり、モニタ41に表示されたり、あるいはプリンタ(不図示)に出力される。
【0024】
一対の同じ倍率の光路分割レンズ51、52は、異なる倍率の他の一対の光路分割レンズ51’、52’に切り換えることができ、異なる倍率で一対の眼底像を撮影することができる。この異なる倍率の一対の光路分割レンズ51’、52’に切り換えられると、それに連動してステレオ撮影用の撮影マスク43も開口が異なる撮影マスク43’に切り換えられる。
【0025】
なお、単眼撮影時には、光路分割レンズ51、52に代えて、単眼撮影用結像レンズ55が光路に挿入され、2孔絞り50は光路から離脱される。
【0026】
また、照明光学系には、フォーカスドット光源30が設けられ、この光源30からの光束がハーフミラー19を介して眼底1aに入射され、フォーカスレンズ32の移動に応じてフォーカスドット位置が変化するので、検者はフォーカスドットを観察することにより被検眼眼底にピントを合わせることができる。
【0027】
また、アライメントの初期段階では、前眼部レンズ44が挿入されるので、検者は被検眼1の前眼部1bの画像をモニタ41で確認することができる。また、アライメントや合焦操作のときは、複数のLED光源45aからなる内部固視灯45のいずれかのLED光源が点灯され、検者は被検者にこの固視灯を注視させることにより、被検眼網膜上の撮影する範囲を定めることができ、またアライメントや合焦操作を確実にすることができる。
【0028】
図2は、ステレオ撮影するときの眼底像を結像する光学系の主要部を示したもので、図1と同じ素子には同じ符号が付されている。
【0029】
なお、図1図2において、被検眼1の眼底1aと共役な位置がRで、また前眼部(特に瞳)と共役な位置がPで図示されている。
【0030】
また、図1図2において、2孔絞り31、50並びに光路分割レンズ51、52は、光路を図面上で上下に分割するように、図示されているが、実際には、左右方向(紙面に垂直な方向)に分割する。しかし、図面で左右方向に光束を分割する状態を図示するのは、困難であるので、図1図2では、2孔絞り31、50並びに光路分割レンズ51、52は、便宜上、紙面と直角の方向から見たときのものが図示されている。
【0031】
このように構成された眼底カメラにおいて、可視カット赤外透過フィルタ13が照明光路に挿入されているので、ハロゲンランプ11を点灯すると、眼底が赤外光で照明される。
【0032】
単眼撮影のときは、リングスリット16’、単孔絞り31’、単眼撮影用の結像レンズ55が光路に挿入され、撮影マスク43、2孔絞り50などは光路から離脱される。
【0033】
赤外光で照明された眼底像は、対物レンズ22、フォーカスレンズ32、結像レンズ33により撮影マスク42の位置に結像され、赤外透過可視反射ミラー36を透過して結像レンズ37により撮像素子40の撮像面に動画として再結像されるので、眼底像がモニタ41に白黒画像として表示され、図1の右上のAに示したように、検者はモニタ41を介して眼底像を無散瞳で観察できる。このとき、撮像素子40への結像倍率を、第2の結像光学系による結像倍率よりも低倍率としておくと、広角の眼底画像を観察することができ、無散瞳時のアライメントを容易にすることができる。また、光源30によるフォーカスドットを観察することにより被検眼眼底にピントを合わせることができる。
【0034】
なお、アライメントの初期段階では、前眼部レンズ44が挿入されるので、検者は被検眼1の前眼部1bの画像をモニタ41で観察してアライメントを行う。
【0035】
このような単眼撮影時に、図4(a)に示したように、撮影あるいはモニタ41で観察される眼底画像100の周辺にリング状のフレア100aが発生することがある。その原因は入射瞳位置の収差からくる被検眼1の水晶体あるいは角膜からの反射光が眼底画像に混入してしまうにあると考えられている。
【0036】
そこで、本実施例では、図3に示したように、単孔絞り31’(ステレオ撮影では2孔絞り31)と撮影マスク42(ステレオ撮影では撮影マスク43)と異なる位置、例えば、単孔絞り31’と撮影マスク42間に配置されたフォーカスレンズ32のレンズ32a、32b間に開口径が可変な可変開口絞り32cを配置するようにしている。
【0037】
可変開口絞り32cは、単眼撮影時の開口径のサイズ(図3の上段)がステレオ撮影時の開口径のサイズ(図3の下段)よりも小さくなるように、その開口径が変化される。従って、単眼撮影時には、可変開口絞り32cの開口径が小さくなり、上述した被検眼の水晶体あるいは角膜からの反射光の眼底画像への混入を低減することができ、図4(b)に示したように、眼底画像100の周辺にフレアのない良好な画像を得ることができる。
【0038】
可変開口絞り32cは、フォーカスレンズ32を構成するレンズ32aと32b間に配置されており、合焦操作時被検眼視度に応じてフォーカスレンズ32を軸方向に移動させると、可変開口絞り32cも同時に軸方向に移動し、合焦操作時に眼底画像100の周辺にフレアが発生しているかどうかをモニタ41により確認することができる。なお、フォーカスレンズ32が2枚以上の複数のレンズから構成される場合には、可変開口絞り32cは、複数のレンズのうち所定の2枚のレンズ間に配置するようにする。
【0039】
アライメント並びに合焦操作が完了すると、シャッタスイッチ46が操作され、そのシャッタ操作信号が撮像素子53とメモリ54に入力され、撮像素子53が起動されて、眼底の静止画の取り込み動作に入るとともに、シャッタスイッチ46の操作信号に同期して撮像素子53からストロボ14に発光を指示する信号が伝えられるので、ストロボ14が発光する。ストロボ14の発光により照明された眼底は、撮像素子53により静止画として撮像される。この撮影された静止画像は、モニタ41で観察された眼底画像と同様に、その周辺にリング状のフレアのない良好な眼底画像となっている。
【0040】
ステレオ撮影のときは、リングスリット16’、単孔絞り31’、結像レンズ55に代えてリングスリット16、2孔絞り31、光路分割レンズ51、52が光路に挿入され、2孔絞り50、撮影マスク43が光路に挿入される。また、可変開口絞り32cは、図3の下段に示したように、その開口径のサイズが単眼撮影時の開口径のサイズより大きくされる。
【0041】
眼底1aからの光束は、2孔絞り31により光路が左右に分割されて、フォーカスレンズ32と結像レンズ33により視差のある左右一対の中間像として撮影マスク43の位置に結像され、この眼底像がモニタ41により観察される。眼底にピントが合っていると、モニタ41には、撮影マスク43の位置に結像された一対の眼底像が重なり合って一つの眼底像として表示されるので、一対の眼底像がずれて2重像として表示される場合には、眼底にピントが合っていないことを示している。従って、この場合には、2重像が解消するように、フォーカスレンズ32を調節して再度ピント合わせを行う。
【0042】
撮影マスク43の位置に結像された視差のある左右一対の眼底像は、リレーレンズ47、2孔絞り50を通過して光路分割レンズ51、52に入射し、2孔絞り31の一方の孔31aの像は光路分割レンズ52の近傍に形成され、他方の孔31bの像は光路分割レンズ51の近傍に形成される。 また、撮影マスク43の中心を経て、光路分割レンズ51、52のレンズ中心51a、52aを通る光線51b、52bは、撮像面53aの点51cと52cに到達する。到達点51c、52cの距離が、撮影光軸48に直交する方向(図2で上下方向)に沿った撮像面53aの全長Lのほぼ半分の距離に等しい長さに設定されるので、左右一対の眼底像で光路分割レンズ51により結像される眼底像は、撮像面53aの上半分に、また光路分割レンズ52により結像される眼底像は、撮像面53aの下半分に互いに重なることなく、分離されて撮像され、撮像面53aの全体を有効に使用した立体視用の眼底画像の取得が可能となる。
【0043】
可視カット赤外透過フィルタ13が光路から離脱され、リターンミラー60を光路に挿入したときには、図1に示したように、光路分割レンズ51、52で分離された左右一対の視差のある眼底像は、ミラー61を介して接眼レンズ62で観察することができる。このとき、観察される眼底像は、図1の右上のBで示したように、分離された左右一対の視差のある眼底像1c、1dであり、検者は眼底を立体視することができる。
【0044】
撮像素子53で撮像する場合には、シャッタスイッチ46を操作する。この操作に同期してリターンミラー60が光路から離脱され、ストロボ14が発光する。ストロボ14の発光により分離した左右一対の視差のある眼底像1c、1dが撮像素子53に撮像される。
【0045】
なお、可変開口絞り32cは、ステレオ撮影時には、図3の下段に示したように、その開口径のサイズがモノラル撮影時の開口径のサイズより大きくなるので、可変開口絞り32cにより眼底画像にケラレが発生することはなく、良好な立体視用の眼底画像が取得される。
【0046】
このようにして撮像された一対の眼底画像はメモリ54に保存され、後で読み出して立体視装置により立体視することができる。
【0047】
なお、図1に示したように、一対の光路分割レンズ51、52は、倍率の異なる他の一対の光路分割レンズ51’、52’に切り換えることができる。この場合には、縮小あるいは拡大した視差のある一対の眼底像が撮影される。このとき、切り換えに連動して、撮影マスク43を倍率に応じて拡大あるいは縮小された開口を有する撮影マスク43’に切り換えるようにする。
【0048】
また、ステレオ撮影時には、図3の下段に示したように、2孔絞り31の孔31a、31bが撮影光軸48よりずれ偏芯しているので、眼底共役面Rが撮影マスク43からずれてしまい、CCD53の撮像面からもずれてしまうことから、眼底を鮮明に撮影できなくなる。
【0049】
そこで、本発明では、ステレオ撮影時に光路長ずれを補正する光学素子(不図示)を光路分割レンズ51、52とCCD53間に挿入する。これにより、単眼撮影からステレオ撮影に切り換えても、CCD53によりピントの合った立体視用の一対の眼底像を撮影することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 被検眼
21 穴あき全反射ミラー
22 対物レンズ
31 2孔絞り
31’ 単孔絞り
32 フォーカスレンズ
32c 可変開口絞り
33 結像レンズ
40 撮像素子
42、43 撮影マスク
46 シャッタスイッチ
47 リレーレンズ
50 2孔絞り
51、52 光路分割レンズ
53 撮像素子
55 単眼撮影用結像レンズ
62 接眼レンズ
図1
図2
図3
図4