特許第6592259号(P6592259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592259
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】水車装置のプロペラロータ
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/14 20060101AFI20191007BHJP
   F03B 3/04 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F03B3/14 Z
   F03B3/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-57570(P2015-57570)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176413(P2016-176413A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政彦
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−534375(JP,A)
【文献】 特開昭63−032169(JP,A)
【文献】 特開2011−102564(JP,A)
【文献】 特開2006−152957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/14
F03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱体と複数の横枠体で立体に組まれた支持枠体の内部に吊設された軸筒の下部に水平に固定された前後に長い水車筐体内に、前後のロータ軸が同一軸線上で、かつ前後に離されて、それぞれが逆転するように軸支され、前部のロータ軸の後部と後部のロータ軸の前部に、それぞれ伝動ギアを介して、前記軸筒内に軸支された伝動軸をそれぞれ同一方向に回転するよう連結し、各伝動軸の上部は、伝動歯車を介して支持枠体の上面に先端を突出する出力軸を1方向に回転させるように連結され、前記前部のロータ軸の前端に固定したプロペラロータのハブに、翼端に前方へ傾斜する傾斜部を形成した揚力型ブレードを固定し、前後部のロータ軸の後端に、前端のハブと同型ハブを反転して固定し、これに、翼端に前方へ傾斜する傾斜部を形成した揚力型ブレードを固定し、前後の揚力型ブレードは、それぞれ前縁とこれに連なる前面の向きが逆になるようになっている水車装置のプロペラロータにおいて、前記ハブの後部周面に、放射方向を向く複数のブレード取付部を形成し、揚力型ブレードの取付部を前後反転しても、揚力型ブレードは傾斜部の先端を上流方向へ向けて取付けられるように形成し、受水面積の異なった揚力型ブレードを用意しておき、設置現場の流速に対して最適な受水面積を有する揚力型ブレードを選択して、前記ハブのブレード取付部に、揚力型ブレードの取付部を取付けるようにしたことを特徴とする水車装置のプロペラロータ
【請求項2】
前記水車装置の水車筐体における前後のプロペラロータは、後部のハブは前部のハブと同型を反転させてロータ軸に固定したものであり、そのハブのブレード取付部嵌装孔は前後のハブともに、ロータ軸の軸心を中心に放射方向を向き、かつ回転方向へ向いて長い嵌装孔を、側面視でロータ軸の軸心線と直交し、各揚力型ブレード傾斜部の先端を上流方向へ向けて平行にし、その基端部に形成した取付部を、それぞれ各ハブのブレード取付部における嵌装孔に嵌装して、ブレード取付部の外側面から揚力型ブレードの取付部にかけて貫通形成されたネジ孔に、ネジを挿通して一体に固定してなることを特徴とする請求項1に記載の水車装置のプロペラロータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラロータに係り、特に水路の流速等の条件に合わせて、水車のロータブレードを、ハブに対して交換ができる水車装置のプロペラロータに関する。
【背景技術】
【0002】
水路の底に設置する水車は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−184746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水車は、水底に基礎を構築して水車櫓が配設されているものである。
これを水路に設置する場合、水路における流速はそれぞれ異なるもので、単1のロータでは、効率良く、安定して発電させることは困難である。
本発明は、小水路で水車装置を設置する時に、その水路の流速などの条件に最適なブレードを選択して、ロータに取付けることのできる水車装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の具体的な内容は、次の通りである。
【0006】
(1) 複数の柱体と複数の横枠体で立体に組まれた支持枠体の内部に吊設された軸筒の下部に水平に固定された前後に長い水車筐体内に、前後のロータ軸が同一軸線上で、かつ前後に離されて、それぞれが逆転するように軸支され、前部のロータ軸の後部と後部のロータ軸の前部に、それぞれ伝動ギアを介して、前記軸筒内に軸支された伝動軸をそれぞれ同一方向に回転するよう連結し、各伝動軸の上部は、伝動歯車を介して支持枠体の上面に先端を突出する出力軸を1方向に回転させるように連結され、前記前部のロータ軸の前端に固定したプロペラロータのハブに、翼端に前方へ傾斜する傾斜部を形成した揚力型ブレードを固定し、前後部のロータ軸の後端に、前端のハブと同型ハブを反転して固定し、これに、翼端に前方へ傾斜する傾斜部を形成した揚力型ブレードを固定し、前後の揚力型ブレードは、それぞれ前縁とこれに連なる前面の向きが逆になるようになっている水車装置のプロペラロータにおいて、前記ハブの後部周面に、放射方向を向く複数のブレード取付部を形成し、揚力型ブレードの取付部を前後反転しても、揚力型ブレードは傾斜部の先端を上流方向へ向けて取付けられるように形成し、受水面積の異なった揚力型ブレードを用意しておき、設置現場の流速に対して最適な受水面積を有する揚力型ブレードを選択して、前記ハブのブレード取付部に、揚力型ブレードの取付部を取付けるようにしたことを特徴とする水車装置のプロペラロータ
【0007】
(2)前記水車装置の水車筐体における前後のプロペラロータは、後部のハブは前部のハブと同型を反転させてロータ軸に固定したものであり、そのハブのブレード取付部嵌装孔は前後のハブともに、ロータ軸の軸心を中心に放射方向を向き、かつ回転方向へ向いて長い嵌装孔を、側面視でロータ軸の軸心線と直交し、各揚力型ブレード傾斜部の先端を上流方向へ向けて平行にし、その基端部に形成した取付部を、それぞれ各ハブのブレード取付部における嵌装孔に嵌装して、ブレード取付部の外側面から揚力型ブレードの取付部にかけて貫通形成されたネジ孔に、ネジを挿通して一体に固定してなることを特徴とする請求項1に記載の水車装置のプロペラロータ
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0009】
前記(1)に記載のプロペラロータは、水車装置の横軸ロータにおいて、ハブの後部周面に、放射方向を向く複数のブレード取付部を形成し、ブレードの取付部を前後反転しても、ブレード取付部に取付けられるように形成したので、水車装置の前後に長いロータ軸の前後にロータを装着する構造において、ハブを前後に向けて装着してあっても、これに装着するブレードの向きを、前後とも上流に向けて容易に装着させることができる。
また、プロペラロータは、水車装置を設置する水路の流速の状態に応じて、最も適切な受水面積のブレードを選択して、取変えることが出来る。発電機とハブの大きさは単1でよいので、設置する水路の流速が遅い時は大きめのブレードを採用し、流速が早い時は小さめのブレードを選択するなど、現場の条件に適切に対応することが出来る。
【0010】
前記(2)に記載のプロペラロータは、前記ハブのブレード取付部は、放射方向を向く嵌装孔を備え、該嵌装孔に嵌装可能なように揚力型ブレードの基端部に取付部を形成し、該ブレードの取付部を、ハブのブレード取付部における嵌装孔に嵌装して、ブレード取付部の外側面からブレードの取付部にかけて貫通形成されたねじ孔に、ねじを挿通して一体に固定してなるので、ブレードの取付け、取換え等の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明プロペラロータの正面図である。
図2図1におけるハブ部分の平面図である。
図3図1におけるブレードの正面図である。
図4図3における側面図である。
図5図4における平面図である。
図6】水車装置に装着したプロペラロータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の水車装置のプロペラロータ1は、図1に示すように、ハブ2の後部周面に、放射方向へ向けてブレード取付部3が複数(図では5個)形成されている。
ブレード取付部3は、ブレード5を取付けてぐらつきがなく、ネジ留めできる程度の高さに突出させてあり、突端には図2に示すように、揚力型ブレード5(以下単にブレードという)の基端部の取付部5Bを嵌装可能な嵌装孔4が、求心方向へ向かって深く、かつ軸心方向へ直交状に形成されている。
【0014】
ブレード5は、図3に示すように、最大弦長部5Aは、回転半径の50%前後の長いものとしてあり、受水面積が大きく設定されている。
ブレード5の翼端部は、前記ブレード取付部3の嵌装孔4に嵌合可能のように、基端面から嵌装孔4の深さの長さの範囲内で、周囲を切り欠いて取付部5Bが形成されている。取付部5Bには、ブレード取付部3のネジ孔と合う位置に、ネジ孔5Gが形成されている。
【0015】
ブレード5は、取付部5Bを共通として、受水面積の異なった複種類を用意しておく。これによって、発電機とハブ2が単1であっても、嵌装孔4には、どの大きさのブレード5でも嵌合することができる。嵌装孔4にブレード5の取付部5Bを嵌合させた後にネジ3Aで固定する。
【0016】
水車を設置する水路が決まったら、その水路の流速でどのくらいの発電ができるかが判るので、必要な秒間の受水量から逆算して、流速が遅い場合には、受水面積の大きなブレード5を選択し、流速が早い場合には、受水面積の小さなブレード5を選択して、ハブ2に装着することによって、単1の発電機の単1のハブ2の水力発電装置を、条件の異なる水路に汎用することができる。
【0017】
ブレード5は、図5に示すように、前面5Dが、回転方向線Tに対して後縁5Tが、後面方向へ6〜12度傾斜している。また最大弦長部5Aを起点として、上流方向へ傾斜する傾斜部5Cとされている。
ブレード5の前縁5Eにおける最大厚さは、翼根部分で弦長の25〜30%としてあり、コアンダ効果が大きく回転力として作用する。
【0018】
ハブ2のブレード取付部3は、嵌装孔4を示してあるが、平面コ字状とし、凹部にブレード5の取付部5Bを嵌合させるようにしてもよく、形式は限定されない。ブレード5には、回転力と遠心力がかかるので、グラツキがないように固定する。
【0019】
図6は、水車にロータ1を取付けた状態を示す側面図である。水車装置6は、柱体8と横枠体9A、9Bとで立方体に組まれた支持枠体7の上横枠体9Aに、軸筒10を介して水車筐体11が水平に吊設されている。
【0020】
下横枠体9Bには底板12が張設され、その先端部は前方へ突出して、水路底Gに接地するように傾斜されて、導水板13とされている。底板12と水車筐体11の底面との間は可及的に狭くされる。導水板13から底層流が底板12の上に導かれ、上層流と混合して圧力を高めて通過し、後部のロータ1を効率良く回転させる。
【0021】
水車筐体11内には、前後にロータ軸14、15が横架され、前部のロータ軸14の先端は、水車筐体11から突出されてロータ1が固定されている。後部のロータ軸15の後端は、水車筐体11から突出されてロータ1が固定されている。両ロータ軸14、15の内側端部には、伝動ギア14A、15Aが固定され、それぞれ伝動軸16、17の下端部における伝動ギア16A、17Aと連係されている。
【0022】
前記軸筒10は平面視で前後に長く、かつ前部の左右厚みは厚く、後部へ次第に薄く形成されている。内部にはロータ1の回転力を、出力軸18へ伝える伝動軸16、17が垂直に支持されている。各伝動軸16、17の上部には、出力軸18の伝動ギア18Aと噛合する伝動ギア16B、17Bが固定されている。
【0023】
軸筒10の上部には、軸受部10Aが支持板10Bに支持されて、軸受部10A内に出力軸18が支持されている。必要に応じて、軸受部10Aは上部に、図示しない補助軸受を継ぎ足すことができる。
【0024】
これによって、水流によってロータ1が回転すると、その回転力は両伝動軸16、17によって出力軸18に伝えられ、出力軸18は、前後のロータ1のトルクを同時に受けるので、図示しない発電機を効率良く回転させることができる。
【0025】
図6において、水車筐体11の上部に、水車筐体11の高さ以内の間隔をおいて、調整板19が水平に支持枠体7に張設されている。図6において、水車筐体11の上に沿って流下する水流は、軸筒10の前面に当って上方へ移動するので、調整板19が張設されていると、上方への盛りあがりが抑制され、加圧され、高速となって流下して、後部のロータ1を効率良く回転させる。
【0026】
さて、前後のロータ1は、ブレード5の向きは上流方向へ向いている。しかし前後のハブ2、2はそれぞれ反対方向を向いている。すなわち、ハブ2にブレード5が作り付けのものでは、使用することが出来ない。
【0027】
図1、2におけるロータ1では、ハブ2は、それぞれ逆向きに取り付けられている。これに対して、前後のブレード5は、それぞれ前後面を逆にして取付けることになる。
【0028】
その点、ハブ2におけるブレード取付部3の嵌装孔4は、回転方向に対して長く形成されているので、ブレード5の取付部5Bは、前後面を反転させても、これに容易に取付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のプロペラロータは、水路の流速に適する大きさのブレードを選択して使用することが出来るので、発電機とハブが単1であっても、ブレードを変えるだけで、流速の異なる水路で水力発電機に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1.プロペラロータ
2.ハブ
3.ブレード取付部
3A.ネジ
4.嵌装孔
5.揚力型ブレード
5A.最大弦長部
5B.取付部
5C.傾斜部
5D.前面
5E.前縁
5F.後縁
5G.ネジ孔
6.水車装置
7.支持枠体
8.柱体
9A.上横枠体
9B.下横枠体
10.軸筒
10A.軸受
11.水車筐体
12.底板
13.導水板
14、15.ロータ軸
14A、15A.伝動ギア
16、17.伝動軸
16A、16B、17A、17B.伝動ギア
18.出力軸
18A.伝動ギア
G.水路底
S.軸線
T.回転方向線
図1
図2
図3
図4
図5
図6