(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像の表示が行えるとともに情報の入力が行えるタッチパネルと、上記タッチパネルに打設現場の打設区画線図を表示させる第1手段と、上記タッチパネル上に表示されている打設区画線図上に、当該タッチパネルに対して行われたタッチの軌跡で表される各打設領域を模したラインに従って、当該タッチパネルにラインを表示させる第2手段と、ライン毎のライン入力時点からの経過時間を少なくとも含む時間情報を生成する第3手段と、を備えたことを特徴とする打設管理支援装置。
請求項2に記載の打設管理支援装置において、上記第3手段は、上記設定時間を少なくとも現場気温を含む現場状況情報に基づいて変更することを特徴とする打設管理支援装置。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の打設管理支援装置において、上記第2手段は、上記タッチパネルに表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させることを特徴とする打設管理支援装置。
請求項5に記載の打設管理支援装置において、上記第2手段は、上記タッチパネルに表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させる一方、時間経過が停止されたラインの全部または一部についての表示態様の変化を停止することを特徴とする打設管理支援装置。
請求項4または請求項6に記載の打設管理支援装置において、上記第2手段は、上記タッチパネルに表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させる時間間隔を、少なくとも現場気温を含む現場状況情報に基づいて変更することを特徴とする打設管理支援装置。
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の打設管理支援装置において、コンクリートを放出するポンプ配管の位置情報を取得するとともに、上記ポンプ配管の位置と打設区画の位置とに基づいてこれらの位置関係を判断し、この位置関係に対応させて上記ポンプ配管を表すマークを上記タッチパネル上に表示する第4手段を備えることを特徴とする打設管理支援装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る打設管理支援装置を示した説明図である。
【
図2】
図1の打設管理支援装置を示した概略のブロック図である。
【
図3】
図1の打設管理支援装置の処理を示したフローチャートである。
【
図4】
図1の打設管理支援装置において、ポンプ配管を模した棒状の図形が表示される例を示した説明図である。
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示しているように、この実施形態にかかる打設管理支援装置1は、例えば、タブレット型のコンピュータからなる。この打設管理支援装置1は、タッチパネル11を備えている。このタッチパネル11は、例えば、液晶表示パネル等のフラット型表示パネルの表面に透明基板からなる位置入力装置を組み合わせたものである。
【0019】
また、上記打設管理支援装置1は、上記タッチパネル11に打設現場の打設区画線図として、例えば、床図(平面図)100を表示させる第1手段と、上記タッチパネル11上に表示されている上記床
図100上に手入力されたラインに基づいて当該タッチパネル11にラインを表示させる第2手段と、ライン毎のライン入力時点からの経過時間を少なくとも含む時間情報を生成する第3手段とを備える。これら各手段は、記憶部12に格納されているプログラムによってマイクロコンピュータ10が機能することにより実現される。
【0020】
また、上記打設管理支援装置1は、時計機能部13を備えている。この時計機能部13は、現在日時の情報を生成する。
【0021】
また、上記打設管理支援装置1は、通信部14を備えている。この通信部14は、インターネットを含む通信ネットワークに接続し、ウェブサイト等から任意のデータやプログラムをダウンロードすることができる。例えば、自社のデータベースにアクセスし、施工する建築物の情報、例えば、コンクリートを打設する床(打設区画)の形状データや経緯度データ等をダウンロードすることができる。また、上記各手段として上記マイクロコンピュータ10を機能させるプログラム等もダウンロードすることができる。
【0022】
また、上記打設管理支援装置1は、状況情報部15を備えている。この状況情報部15は、周囲(現場)の気温、湿度、風速、打設するコンクリートの温度といった打重ねの時間間隔に関係する状況情報を電子的に検出することができる。ここで、上記気温、湿度、風速、打設するコンクリートの温度による、打設したコンクリートからの水分蒸発量の計算表は既に存在しているので、この計算表をデータとして保持しておいてもよい。例えば、コンクリートからの水分蒸発量が時間当たりで1.0〜1.5リットル/m
2を超えるときは、上記計算表においては、ひび割れ発生の危険性が大きいとされており、上記気温、湿度、風速、打設するコンクリートの温度は打設当日の現場状況に関する最重要な情報となる。また、上記打設管理支援装置1自体が状況情報部15を備えるのではなく、外付けの温度センサー等が装着できるインターフェイスおよびドライバプログラムを備える構成としてもよい。また、施工者が風速やコンクリート温度等を手入力してもよい。
【0023】
上記第1手段は、上記ダウンロードした打設床の形状データを用いて上記タッチパネル11に打設現場の床
図100を表示させることができる。また、表示の縮尺も任意に変更できる。また、上記第1手段は、例えば、上記タッチパネル11上の図示しない「床形状入力」ボタンが操作された後の上記タッチパネル11上に入力された複数の点を接続して床
図100を作成することもできる。
【0024】
上記第2手段は、上記タッチパネル11への指やペンのタッチを判断しており、上記タッチが生じた上記タッチパネル11上のX(横軸)−Y(縦軸)座標を表示のX−Y座標としてラインを表示する。すなわち、上記第2手段によって、上記タッチパネル11上のタッチの軌跡を表すラインが上記タッチパネル11上に描かれる。また、上記第2手段は、上記ラインを、例えば、直線または曲線の関数で表すことができる。単一の直線または曲線の関数で表せない場合には、細分された複数の連続する直線または曲線の関数の集合で表すことができる。また、上記ラインを単に上記タッチパネル11上の連続するドット(座標)の集合として認識することもできる。
【0025】
上記第3手段は、上述のように、ライン毎のライン入力時点からの経過時間を含む時間情報を生成し、また、生成した時間情報を上記タッチパネル11上に文字等により表示する。上記時間経過は、ラインの入力時刻と現在時刻との差から判断できる。これら時刻は、上記時計機能部13から得ることができる。なお、時刻ではなく、ラインの入力時点でタイマーを動作させることでも、時間経過を知ることができる。
図1に示した例では、コンクリートの打設の開始時刻(スタート)は午前8時30分となっている。この開始時刻は、例えば、上記タッチパネル11上に表示されている床
図100の左上角がタッチされたときの時刻としている。換言すれば、コンクリートの打設が開始されたときに、施工者は上記床
図100の左上角をタッチする。また、
図1に示した例では、現時点において、領域(1)〜領域(4)の打設が終了したとしている。
【0026】
領域(1)の打設終了時刻は、午前8時50分であり、領域(2)の打設終了時刻は、午前9時5分であり、領域(3)の打設終了時刻は、午前9時30分であり、領域(4)の打設終了時刻は、午前10時45分であるとしている。
【0027】
また、上記第3手段は、上記タッチパネル11上で後に入力されたラインによって先に入力されたラインの全部または一部が覆われたかどうかを判断する。例えば、後および先の各ラインの関数にx値(横値)を与えたときのy値(縦値)の大小関係を求め、後のラインのy値が大きい(床
図100の下側ほど大きい)範囲を、覆われた範囲であると判断することができる。
【0028】
そして、上記第3手段は、後に入力されたラインによって先に入力されたラインの全部または一部が覆われたと判断したときに、先に入力されたラインの全部または一部についての時間経過を停止する。例えば、後に打設された領域(2)を形成するラインによって、上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-1が覆われた時点で、このラインの一部(1)-1について時間経過を停止する。時間経過を停止したときには、打重ねの時間間隔が確定したことになり、ラインの一部(1)-1についての時間経過を上記タッチパネル11上に表示する。なお、上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-2は、領域(4)が打設されたときに覆われることになる。領域(4)の打設終了時刻は午前10時45分であるので、ラインの一部(1)-2の時間経過は最大115分となる。
【0029】
また、上記第3手段は、上記経過時間が設定時間を越えたときには、当該設定時間を越えたことを示す報知を行う。例えば、領域(2)の打設終了時刻は午前9時5分であり、現在時刻は午前11時であるので、ラインの一部(2)-2-2の現在進行中の時間経過は115分となる。上記設定時間をコンクリートの打重ね時間間隔の上限の目安である120分(気温25℃未満の場合)から10分を引いた110分に設定している場合であれば、上記115分は設定時間を越えていることになるので、例えば、上記ラインの一部(2)-2-2の時間経過を表している「(2)-2-2経過途中」の箇所を赤色の枠で囲む表示を行う。報知は、このような枠表示に限らず、「(2)-2-2経過途中」の箇所の明滅や色変化等で行うこともできる。なお、現在進行中の時間経過も表示するようにしてもよい。
【0030】
また、上記第2手段は、上記タッチパネル11に表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させる一方、時間経過が停止されたラインの全部または一部についての表示態様の変化を停止する。上記表示態様としては、ラインの色、太さ、点線/実線等がある。
図1に示した例では、上記タッチパネル11に表示したラインの太さを時間経過とともに太くするようにしている。なお、色変化の場合、色の波長を段階的に短くし、青色から順次に色を変えて最終色を赤色とすることが考えられる。色と太さ等を組み合わせてもよい。
【0031】
図1に示した例では、上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-1は、領域(2)が打設されたときに覆われ、このときに時間経過が停止され、表示態様の変化も停止される。同様に、上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-2は、領域(4)が打設されたときに覆われ、このときに時間経過が停止され、表示態様の変化も停止される。上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-1は細い線の状態で変化が止まり、上記領域(1)を形成するラインの一部(1)-2はラインの一部(1)-1よりも太い線となって変化が止まる。
【0032】
なお、例えば、図示しない「保存」ボタンが操作されたときに、上記時間情報やラインの情報が、上記施工建物を特定する情報に対応付けられて記憶部12に保存されるようにしてもよく、これによれば、打設の検証等を後日において行うことができる。
【0033】
図3は上記マイクロコンピュータ10による処理一部の概略を示したフローチャートである。マイクロコンピュータ10は、タッチパネル11上にライン入力があるかどうかを判断し(ステップS1)、ライン入力があれば、タッチパネル11上にラインを表示する(ステップS2)。このライン表示の後、或いは上記ステップS1でノーとされた場合は、時間情報を取得する(ステップS3)。この時間情報は、ライン入力時刻(打重ね終了時刻)および既に入力されているラインの経過時間等である。なお、例えば、ラインが入力されて、「決定」のボタンが操作されたときに、ライン入力時刻が確定するようにしてもよい。
【0034】
マイクロコンピュータ10は、取得した時間情報に基づいて、タッチパネル11上のライン毎或いはラインの部分毎に、表示態様を変化させる。また、マイクロコンピュータ10は、取得した時間情報に基づいて、ライン毎或いはラインの部分毎に、タッチパネル11上に、時間情報(ライン入力時刻、経過時間等)を表示する(ステップS4)。
【0035】
マイクロコンピュータ10は、先のラインの全部または一部が後のラインによって覆われたかどうかを判断する(ステップS5)。この判断がイエスとされた場合は、覆われた先のラインの全部または一部について、時間経過を停止し(ステップS6)、時間情報を確定して表示処理および記憶処理を行い(ステップS7)、表示態様の変化を停止し(ステップS8)、ステップS1に戻る。また、ステップS5でノーとされたときもステップS1に戻る。
【0036】
上記の構成であれば、施工者が、施工現場のコンクリートの打設領域を模して、上記タッチパネル11上にラインを入力し、また、コンクリートの打重ねが行われたときに、同様にラインを入力していくことができる。そして、施工者は、ライン毎のライン入力時点からの経過時間を知ることによって、打重ねが優先的にされるべき領域を把握することができ、適切な打重ね時間間隔を守ってコンクリートを打設していくことが容易になる。これにより、モルタル、コンクリート等において打重ねの時間間隔が大きくなる場合に発生するコールドジョイントや色ムラ等の不具合を抑制することができる。また、上記タッチパネル11上にラインを入力する操作は比較的簡単な操作であり、簡単に打設管理の支援が行える。
【0037】
上記経過時間が設定時間を越えたときに、報知が行われると、上記報知に促されて適切な時間内で打重ねを行うことが容易になる。なお、報知は、上記タッチパネル11上での報知に限らず、音声等で行うようにしてもよい。
【0038】
上記タッチパネル11に表示したラインの表示態様が時間経過とともに変化すると、打重ねが優先的にされるべき領域が把握し易くなる。
【0039】
なお、各領域の打設が行われたときに施工者が手動操作でラインの全部または一部の時間経過を停止させようにしてもよい。例えば、図示しない「停止」ボタンを操作した後に、停止させたいラインの全部または一部をなす2箇所の点をタッチし、その後に「決定」ボタンを操作することで、マイクロコンピュータ10に停止させたいラインの全部または一部を認識させることが可能である。一方、この実施形態のように、後に入力されたラインによって先に入力されたラインの全部または一部が覆われたかどうかを判断し、先に入力されたラインの全部または一部についての時間経過を停止する構成であれば、施工者が上記のように手動操作で上記時間経過を停止させる手間が生じない。また、停止忘れも防止できる。
【0040】
また、上記タッチパネル11に表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させる一方、時間経過が停止されたラインの全部または一部についての表示態様の変化を停止するようにすると、コンクリートの打重ねが優先的にされるべき領域が把握し易くなるとともに、打重ねが行われた(ラインが引かれた)ときには、上記表示態様の変化が自動で停止され、施工者が手動操作で上記表示態様の変化を停止させる手間が生じない。また、停止忘れも防止できる。
【0041】
なお、上記第3手段は、上記設定時間を少なくとも現場気温を含む現場状況情報に基づいて変更するようにしてもよい。これによれば、例えば、現場気温が高いときに上記設定時間を短くして早めに上記報知を出すことが可能になる。また、上記第2手段は、上記タッチパネル11に表示したラインの表示態様を時間経過とともに変化させる時間間隔を、少なくとも現場気温を含む現場状況情報に基づいて変更するようにしてもよい。これによれば、例えば、現場気温が高いときに上記変化を速め、打重ねを急がせることができる。
【0042】
また、上記マイクロコンピュータ10は、例えば、自社のデータベースからコンクリートを打設する床の厚みのデータをダウンロードし、打設する床の面積とから床に必要なコンクリート量を算出するようにしてもよい。また、上記タッチパネル11上に入力された現時点のラインで囲まれる床面積(当該領域のドット数でもよい)と、床面の全領域(当該領域のドット数でもよい)との比から、コンクリートの打設の進捗度(例えば、1時間当たりのコンクリート打設体積)を算出するようにしてもよい。また、例えば、上記進捗度と、実際の床の寸法と、床の厚み寸法とから、後どれくらいコンクリートが必要になるかを算出してもよい。この算出は、利用者の要求操作があったとき、或いは、進捗度が所定値を越えたときに行うようにしてもよい。このように進捗度を把握できると、アジテータ車について、コンクリート量を精度良く発注することが可能になる。
【0043】
また、コンクリートの打設作業に関するコメントを入力して記憶するようにしてもよい。例えば、上記マイクロコンピュータ10は、上記タッチパネル11上に表示されている「(1)-2 115分」の箇所がタッチされたことを判断して当該箇所を色変わりさせる。そして、この状態で、「情報入力」ボタンの操作を検知すると、文字入力ウィンドウを開くとともに、簡易なキーボードを表示する。施工者によって、例えば、「バイブレーター処理無し」といった情報が入力されると、上記マイクロコンピュータ10は、上記文字情報を「(1)-2 115分」に対応付けて、上記記憶部12に保存する。これにより、各打設領域についてどのような処理を行ったのか、或いは行わなかったのかの追加の情報も後で確認することができる。
【0044】
また、上記の実施形態では、建物の床を対象とした打設の支援を説明したが、これに限らず、腰壁、基礎梁、柱等の打設の支援にも適用可能であるし、平面上の打設管理だけでなく、高さ方向の打設管理も可能である。
【0045】
また、打設現場に置かれている、コンクリートを放出するポンプ配管に経緯度情報計測装置(例えば、GPS:グローバル・ポジショニング・システム)を取り付けておき、上記経緯度情報計測装置で生成された経緯度を、上記打設管理支援装置1が無線受信し、また、この打設管理支援装置1は、例えば、施工する建築物のコンクリートを打設する床の経緯度をダウンロードする。この場合、これら経緯度から、上記打設管理支援装置1は、
図4に示すように、上記タッチパネル11上に表示した床
図100上に、上記ポンプ配管のホースの筒先を模した棒状のマーク101を表示することができる。すなわち、上記打設管理支援装置1は、上記ポンプ配管の位置情報を取得するとともに、上記ポンプ配管のホースの筒先の位置と打設区画の位置とに基づいてこれらの位置関係を判断し、この位置関係に対応させて上記ポンプ配管のホースの筒先を表すマークを上記タッチパネル11上に表示する第4手段を備えてもよい。これによれば、施工者は上記タッチパネル11上で上記ポンプ配管のホースの筒先の位置を把握できるので、上記タッチパネル11上で引くラインの精度を高めることができる。また、上記ポンプ配管のホースの筒先の高さ位置も検知できるように構成された場合、或いは上記GPSによって高さ情報が精度良く得られる場合には、柱等の打設において、上記ラインを引くのに有用となる。
【0046】
また、
図1および
図4の情報表示例では、適切な打重ね時間間隔が守られた(確定した)領域の情報の表示を、時間経過の停止後も継続させたが、適切な打重ね時間間隔が守られた領域の情報の表示を、時間経過の停止後に速やかに非表示にするようにしてもよい。
【0047】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。