(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状ボデーの内周面に被覆した樹脂製のシートライナの内周に上部ステムを介して上下部のボス面が摺動しながらジスクを回転自在に設けたライニング型バタフライバルブにおいて、前記ジスクは、略円形状の芯金と芯金の下部に突設した突設部の外周面を樹脂ライニングで被覆して形成され、前記樹脂ライニングで覆われた前記突設部の部位をボトムステム部とすると共に、前記ボデーの下部に設けた装着筒に保持体を設け、この保持体の上面に形成された凹部内に前記シートライナと一体に設けた袋状部を位置させ、この袋状部に前記ボトムステム部を嵌着して当該ボトムステム部を軸支させたことを特徴とするライニング型バタフライバルブ。
前記上部ステムを軸装した軸装筒に装着した上部スプリングと前記装着筒に装着した下部スプリングのバネ力を略同じにすると共に、前記下部ボス面のシール面積を前記上部ボス面のシール面積より小さくして当該下部ボス面の面圧を高めることにより、ジスク下部側のシール性を向上させた請求項1に記載のライニング型バタフライバルブ。
前記上部ステムを軸装した軸装筒に装着した上部スプリングより前記装着筒に装着した下部スプリングのバネ力を大きくして前記下部ボス面の面圧を高めることにより、ジスク下部側のシール性を向上させた請求項1又は2に記載のライニング型バタフライバルブ。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学薬品工業用のプラントで使用して高腐食性流体や高温流体を流す場合や、食品関連の流路などに用いられる耐食性を有するバタフライバルブとして、弁体の金属製の芯体が樹脂ライニング層で被覆され、弁箱の内周面に樹脂シートリングが装着された、いわゆるライニング構造のバタフライバルブが用いられている。
ライニング型バタフライバルブでは、流体が薬品等であるために、特に、弁体の天地(上下)側における流路方向への流路漏れや弁棒の軸シール部位からの流体の外部漏れを確実に防止しつつ操作性を確保する必要がある。そのため、この種のバタフライバルブでは、通常、弁体表面のライニングから軸筒ライニングが延長され、この軸筒ライニング内周に弁体と別体の上下ステムが挿入され、軸筒ライニング外周面に弁箱側のシール部が密着シールするように設けられている。
【0003】
一方、特許文献1においては、ジスク下部側にステムを設けることなく、上部ステムでジスクが軸支された構造のライニング型バタフライバルブが開示されている(特許文献1の
図4を参照)。このバルブでは、ジスク下面が直接シートリングに当接され、このシートリング下部がジスク方向に弾力により押圧されることで、ジスク下面とシートリングとの面圧を確保しつつ、弁体下部側からの流路方向への流体漏れを防ごうとするものである。
また、これ以外にも、ジスク下部にやや突出した突起が一体に設けられ、この突起がボデー側に設けられた貫通穴に挿入されてジスク下部がボデーに保持されたバルブも知られている。
【0004】
特許文献2のバタフライ弁では、上下の弁棒のうち、何れか一方側の弁棒が弁体と別体に設けられている。各弁棒は、弁体を被覆する樹脂ライニング層の上下に形成された円筒状の樹脂ライニング部にそれぞれ挿入され、これにより弁棒の軸シールを確保して外部漏れを防ごうとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の上下に軸筒ライニングが延長されたバタフライバルブを組立てる場合、上下の軸筒ライニングを樹脂シートリングに形成された取付け穴の内周側から挿入する必要がある。その際、軸筒ライニングの高さがシートリングの内径よりも大きいことから、特に、口径が小さくなると弁体の組み込みが難しくなり、例えば、65A以下の小口径のサイズの場合には組立てが一層困難になる。
この構造の場合、弁体の上下にステムを挿入するための挿入穴用の肉厚を必要とするため、バルブ口径に対して弁体の厚さの割合が高くなり、小口径になるにつれてこの割合が一層高くなる。その結果、中間開度や全開状態における流量の確保も難しくなる。
【0007】
一方、特許文献1のように、上部ステムのみでジスクを支える構造の場合、下部側の支えを設けていないことで、上下ステムで支える場合に比較して弁体の組み込みが容易になって、流量も大きくなる。しかし、この場合には、弁体下部のボス側の面圧が上部ボス側よりも弱くなって弁体が変位しやすくなること、弁体とシートリングとの圧接時の面圧分布が上下側でそれぞれ不安定になることにより、流路方向への流体漏れを生じるおそれがある。弁体下部の変位を防ぐためには、上部ステムを大径に設けたり強度の高い材料で形成することが考えられるが、この場合、コストの上昇につながり、しかも下部面圧を上部面圧と同等の状態まで向上させることも難しい。
【0008】
ジスク下部に設けた突起をボデーの挿入穴に挿入する構造のバルブについては、ボデーの貫通穴がボデー外部まで貫通していることで、突起と貫通穴との間から流体の外部漏れを生じる可能性がある。このバルブでは、上下側の面圧のバランスが考慮されていないため、特許文献1と同様に上下側の面圧が異なり、ステムを安定状態に保持することが難しい。
さらに、これらのバルブでは、上下シール部分でクリープが発生した場合、例えば、このクリープにより上部側のライニング厚さが薄くなると、上部側のスプリングが伸長することで荷重が小さくなり、上下の面圧バランスが崩れるリスクが高くなる。
【0009】
特許文献2のバタフライ弁の場合、上下の樹脂ライニング部が長くなるため弁体の組み込みが難しくなり、特に、小口径サイズのバルブでは組立てがより困難になる。弁棒が弁体とは別体に設けられ、この弁棒も樹脂ライニング部に形成された貫通穴に取付けられるため、弁棒側からの流体の外部漏れを解消することが難しい。弁棒をシールするための部品も必要になるため、部品点数が多くなりコストの増加にもつながる。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、流体に対して耐食性を有するライニング型バタフライバルブであり、流量を大きく確保し、組立て容易性を発揮しつつ、ジスク下部側における流路方向や外部への流体漏れを確実に防止できる操作性に優れたライニング型バタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状ボデーの内周面に被覆した樹脂製のシートライナの内周に上部ステムを介して上下部のボス面が摺動しながらジスクを回転自在に設けたライニング型バタフライバルブにおいて、前記ジスクは、略円形状の芯金と芯金の下部に
突設した突設部の外周面を樹脂ライニングで被覆して
形成され、前記樹脂ライニングで覆われた
前記突設部の部位をボトムステム部
とすると共に、前記ボデーの下部に設けた
装着筒に保持体を設け、この保持体の上面に形成された凹部内に前記シートライナと一体に設けた袋状部を位置させ、この袋状部に前記ボトムステム部を嵌着して当該ボトムステム部を軸支させたライニング型バタフライバルブである。
【0013】
請求項2に係る発明は、上部ステムを軸装した軸装筒に装着した上部スプリングと装着筒に装着した下部スプリングのバネ力を略同じにすると共に、下部ボス面のシール面積を上部ボス面のシール面積より小さくして当該下部ボス面の面圧を高めることにより、ジスク下部側のシール性を向上させたライニング型バタフライバルブである。
【0014】
請求項3に係る発明は、上部ステムを軸装した軸装筒に装着した上部スプリングより装着筒に装着した下部スプリングのバネ力を大きくして下部ボス面の面圧を高めることにより、ジスク下部側のシール性を向上
させたライニング型バタフライバルブである。
【0015】
請求項4に係る発明は、凹部を有する保持体の環状部の上面から突設部の下面との間でボトムステム部を軸支
させたライニング型バタフライバルブである。
【0016】
請求項5に係る発明は、ボトムステム部の樹脂ライニングの厚みをその他の樹脂ライニングの厚みより薄く設定
したライニング型バタフライバルブである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、流体に対して耐食性を発揮でき、芯金を樹脂ライニングで被覆したジスクのボトムステムを、ボデー下部の装着筒に非貫通に軸支していることで、ジスク下部にステムを装着する必要がないためジスク下部の肉厚を薄くでき、小口径サイズの場合でも口径に対するジスクの厚さの割合を低くして中間開度や全開状態の流量を大きく確保できる。下部ステムを有しないことから、小口径の場合にも容易に組立てることができ、内部構造が単純化するため部品点数も少なくなる。ジスクのボトムステム側をボデーに軸着していることで、ジスク下部側の流路方向への変位を防ぎ、流路方向へのシール性を確保し、ジスクの上下方向からの外部漏れを確実に防止でき、かつ、このジスク上下側が軸着された構造により操作トルクの上昇を防いで優れた操作性を発揮する。
【0018】
しかも、保持体の凹部内にシートライナと一体の袋状部を設け、この袋状部に樹脂ライニングを被覆したボトムステム部を嵌着してボトムステムを軸支していることにより、ボトムステム側からの軸方向への外部漏れを生じることがなく、ボデー側ボス面とジスク側のボス面とを樹脂同士により密着シールして流路方向の漏れも確実に防止する。ジスクのボトムステム側の肉厚を薄くできるため、小口径の場合でも流量を大きく確保することができる。保持体で袋状部の変形を防止でき、ボトムステム側の振れを防いでジスクを芯出し状態で所定位置に装着できる。
【0019】
請求項2に係る発明によると、下部ボス面の面圧を上部ボス面の面圧よりも高めてジスク下部側のシール性を向上していることで、ボトムステム部を非貫通に軸支してジスク下部側の流路方向への流体漏れを確実に阻止しつつ、流量を確保しながら組立て性を向上でき、ジスク上下側を異なる面圧バランスで強固に保持して操作性を確保できる。このため、小口径に設けた場合にも、流路方向へのジスクのずれを防ぎ、クリープや温度変化が生じた場合にも、上下の面圧バランスを維持してシール性を確保できる。上下部スプリングに同じスプリングを用いることで、部品の種類を少なくすることもできる。
【0020】
請求項3に係る発明によると、異なるバネ力の上下部スプリングを用いて、下部ボス面の面圧を上部ボス面の面圧よりも高めてジスク下部側のシール性を向上していることで、ボトムステム部を非貫通に軸支してジスク下部側の流路方向への流体漏れを確実に阻止しつつ、流量を確保しながら組立て性を向上でき、ジスク上下側を異なる面圧バランスで強固に保持して操作性を確保できる。このため、小口径に設けた場合にも流路方向へのジスクのずれを防止でき、上下部ボス面の大きさや形状を調整することなく、異なるバネ力の上下部スプリングを用いて簡単にジスク上下部の面圧バランスを設定できる。
【0021】
請求項4に係る発明によると、突設部を最小長さに抑えながらシール性とトルク性とを確保してジスクを保持でき、短く形成した突設部を有するボトムステム部をボデーの装着筒に容易に装着して簡単に組立てできるようになる。
【0022】
請求項5に係る発明によると、小口径サイズの場合でも、下部ボス面の面圧を確保してジスク下部側から流路方向への流体漏れを確実に防止しつつ、ボトムステム部をシートライナに挿入しやすくして組立て性を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、
図2においては、本発明のバタフライバルブの実施形態における断面図を示しており、
図3においては、
図2の要部拡大断面図を示している。
【0025】
図1、
図2において、バタフライバルブ(以下、バルブ本体1という)は、例えば、化学薬品工業用プラントや食品関連の管路等に用いられ、筒状のボデー2、ジスク3、上部ステム4、保持体5を有し、例えば、呼び径100Aの口径に設けられる。
【0026】
ボデー2は、例えばダクタイル鋳鉄などの鋳鉄により形成された上部ボデー2a、下部ボデー2bが組合わせられ、ボルト6により側部が一体に固着されて略筒状に形成されている。ボデー2の内周面7には樹脂製のシートライナ10が略環状に被覆され、ボデー2の上部には軸装筒11、下部には装着筒12が形成され、軸装筒11内には、上部ステム4、リング体13、鍔状部材14、Oリング15、ベアリング16が装着される。
【0027】
シートライナ10は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂で3mm程度の肉厚に形成され、高い耐食性や耐熱性を発揮可能に設けられている。シートライナ10の装着筒12側には、このシートライナ10と一体に凹状の袋状部20が設けられる。シートライナ10の内周には内周シール面21が設けられ、この内周シール面21の軸装筒11側には上部シール面22、装着筒12側に下部シール面23が設けられる。上部シール面22側には、筒部24が上方に延設して形成されている。
【0028】
上部シール面22、下部シール面23側のシートライナ10の肉厚は、ジスク3の軸芯に向けて徐々に薄くなるように形成される。具体的には、
図3に示すように、例えば、下部シール面23は、ジスク3の軸芯方向に傾斜するように形成され、この下部シール面23の背面が流路と略平行に形成されることで、肉厚が徐々に薄くなっている。
【0029】
図1、
図2において、ジスク3は、上部ステム4を介してシートライナ10の内周に装着されて、ボデー2内に回転自在に設けられている。ジスク3の中心には、ステンレス合金製の略円板状の芯金30が設けられ、この芯金の下部には短小で円柱状の突設部31が一体に設けられている。この突設部31の外径寸法は、上部ステム4の最外径寸法よりも小径に設定される。突設部31を有する芯金30の表面には、樹脂ライニング32が被覆されてジスク3が構成される。樹脂ライニング32は、PFA等のフッ素樹脂等の樹脂材料により、芯金の適宜位置に形成された貫通孔33を介して、例えば3mmの肉厚で芯金30の表裏面の外周囲に被覆される。これにより、芯金30から樹脂ライニング32の離脱が防がれた状態でジスク3が設けられる。
【0030】
樹脂ライニング32の被覆により、ジスク3の下部にはこの樹脂ライニング32で突設部31が覆われたボトムステム部35が設けられ、このボトムステム35部が、ボデー2下部の装着筒12に非貫通の軸支により装着される。ジスク3の上部には、上部ステム4の外周を被覆する軸筒部36が形成される。
【0031】
ジスク3のボトムステム部35、軸筒部36の外周側の天地側(上下部側)には、樹脂ライニング32の被覆により上部ボス面37、下部ボス面38がそれぞれ形成され、ジスク3の回転時には、これら上部ボス面37、下部ボス面38が、それぞれ上部シール面22、下部シール面23に密接しながら摺動するようになっている。これら各ボス面37、38とシール面22、23との密接により、流路方向における流体漏れを防ぎ、いわゆる弁座シール性を得ることができる。軸筒部36の外周には、シートライナ10の筒部24が配置され、この筒部24により軸筒部36との間をシールする。
【0032】
ジスク3の天側(上部側)には角形穴部39が形成され、この角形穴部39に上部ステム4の接続側が挿入嵌合されながら軸装筒11に軸装され、上部ステム4によりジスク3上部がボデー2に装着される。このように、上部ステム4とジスク3とが別体に設けられていることで組立て容易となる。
【0033】
保持体5は、例えば、ステンレス等の金属材料により形成され、装着筒12のボトムステム部35装着側に設けられる。保持体5は略円柱状に設けられ、上部に環状部40が設けられ、この環状部40の内側の上面に凹部41が形成され、この凹部41内に前述したシートライナ10と一体の袋状部20が装着される。前記ボトムステム部35は、このように凹部41内に設けた袋状部20に嵌着されて非貫通に軸支されることにより、ボデー2側に装着されてジスク3が回転可能に保持される。
ボトムステム部35の装着後には、ジスク3の軸方向において、ボトムステム部35と袋状部20、袋状部20と凹部41との間には、それぞれ若干の隙間が形成される。
【0034】
図1に示すように、保持体5の外周には段差部42が設けられ、この段差部42よりも拡径側が装着筒12内に嵌挿され、段差部42にシートライナ10の外周側に装着される、ゴム製のバックアップラバー43の開口側が係止した状態で装着される。段差部42を形成する場合、保持体5を装着するときの組立て性と、バックアップラバー43の変形の逃げ場をなくすために、下部ボデー2bの角部2cとの間の長さが1mm程度になるように設けるとよい。
【0035】
図3において、ボトムステム部35を、袋状部20を介して凹部41に装着したときには、環状部40の上面40aから突設部31の下面31aとの間の長さLにおいて、ボトムステム部35の芯金領域を軸支するようになっている。
【0036】
ボトムステム部35側の樹脂ライニング32aは接液するおそれがなく、耐透過性を考慮する必要がないため、このボトムステム部35側の樹脂ライニング32aの厚みDを、その他の樹脂ライニングの厚みD1より薄く設定してもよい。例えば、ジスク3の流路側の樹脂ライニングの厚みD1が4mmである場合、ボトムステム部35付近の樹脂ライニング厚みDを1.0mmとすることができ、これと共に、ボトムステム部35の高さHを極力低く設定することで組立性が向上する。
【0037】
さらに、シートライナ10についても同様であり、袋状部20の厚みEをそれ以外のライニングの厚みE1より薄く設定してもよい。例えば、下部シール面23の最外周側のライニングの厚みE1が3mmである場合、袋状部20付近のライニングの厚みEを1.5mmとすることができる。
【0038】
図2に示すように、軸装筒11の保持体5の背面側には、コイルスプリングからなる下部スプリング50が装着され、この下部スプリング50の弾発力により、保持体5の環状部40を介して下部シール面23が下部ボス面38に押圧される。なお、ボデー2上部の軸装筒11にはベアリング16が装着され、このベアリング16の背面側にも同様に上部スプリング51が装着され、この上部スプリング51の弾発力により上部シール面22が上部ボス面37に押圧される。
【0039】
これら上下部スプリング50、51のバネ力は、略同じに設定されて、同等の弾発力を発揮可能に設けられる。本実施形態では、同じスプリングが用いられている。また、前述した下部シール面23が下部ボス面38に押圧されるときの下部ボス面38のシール面積S1は、上部シール面22が上部ボス面37に押圧されるときの上部ボス面37のシール面積S2よりも小さくなっている。これらにより、下部ボス面38による面圧は、上部ボス面37による面圧よりも高められ、ジスク3下部側の弁座シール性が向上されている。
【0040】
図4においては、
図2の弁閉状態のバルブ本体1の上部シール面22と下部シール面23における面圧分布を示している。図に示すように、下部シール面積S1は、図の上部シール面積S2よりも小さく設定され、この下部シール面積S1における面圧が上部シール面積S2における面圧よりも高められている。
【0041】
また、シール面積S1をシール面積S2と同じに設定した上で、上部ステム4を軸装した軸装筒11に装着した上部スプリング51よりも、装着筒12に装着した下部スプリング50のバネ力を大きくすることにより、下部ボス面38による下部シール面積S2の面圧を高め、これによってジスク3下部側の弁座シール性を向上するようにしてもよい。この場合、ジスク3がスプリング50、51の異なるバネ力によって流路の中心からずれるおそれがあるため、ジスク3が中心に位置するように調整する必要がある。
【0042】
図1、
図2において、ジスク3の上部側には、上部シール面22の背面側にリング体13、鍔状部材14が設けられる。
リング体13は、ステンレス等の金属材料により円筒状に形成され、軸装筒11に、上部ステム4外周側に設けられたベアリング16とシートライナ10との間に挟まれるようにして設けられる。このリング体13には、ベアリング16を介して上部スプリング51の弾発力が伝わり、この弾発力がリング体13からシートライナ10に伝達されて上部ボス面36と上部シール面22とのシール性が得られ、かつ、リング体13により軸筒部36と筒部24との軸シール状態が外周側から保持される。これにより、ジスク3上部側のシール性を向上し、かつ軸シール部分の拡径方向への変形を防いで強固なシール性を維持している。
【0043】
前記のスプリング50、51は、ジスク3の上下部ボス面37、38の外周側に弾性力を伝達する径に形成される。これによって操作トルクの上昇を抑制しつつ、上下部ボス面37、38と上下部シール面22、23とを集中的に密着させて高シール性を発揮する。その際、上記したように、ジスク3下部側では、ボトムステム部35と袋状部20、袋状部20と凹部41との隙間により、保持体5の環状部上面40aで下部シール面23の背面側が集中的に押圧され、この下部シール面23と下部ボス面38との面圧が高まる。
【0044】
鍔状部材14は、例えば、カーボンファイバー入りPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料によって形成され、リング体13とシートライナ10及び樹脂ライニング32との間にシール部材として設けられる。鍔状部材14には、円筒部14aが形成され、この円筒部14aの下部側には、外周方向に曲折された環状の鍔部14bが設けられる。鍔部14bにはリング体13の端面13aが当接し、これにより、リング体13は、鍔部14bを介してシートライナ10を押圧するようになっている。円筒部14aの内周側にはシール用Oリング15が装着される。
【0045】
鍔状部材14により、リング体13からの押圧力が鍔部14bを介してシートライナ10側に分散されるように伝達され、応力集中が防がれる。しかも、Oリング15により上部ステム4周りにシール機能が発揮され、流体圧によりジスク3が下流側に移動したときに上部ステム4周辺の漏れが防止される。
【0046】
ベアリング16は、円筒状に形成され、軸装筒11の上部スプリング51とリング体13との間に配置され、上部スプリング51により上部ステム4がOリング15の近傍で、回転自在且つ調心状態に支持されている。
【0047】
図1において、上部ボデー2aの軸装筒11には、ベアリング部材70が保持リング71で係止された状態で配置され、このベアリング部材70により上部スプリング51が下方向に弾発可能な状態に支持される。一方、下部ボデー2bの装着筒12には、コマ部材72が保持リング71で係止された状態で配置され、このコマ部材72を介して下部スプリング50が上方向に弾発可能な状態に支持される。これらベアリング部材70、コマ部材72により、上下部スプリング50、51がそれぞれジスク3方向に弾発される。ベアリング部材70やコマ部材72の内外周には、防塵・防水用のOリング74、75がそれぞれ装着されている。
【0048】
なお、上記実施形態において、上下部スプリング50、51をコイルスプリングにより設けているが、これら上下部スプリング50、51は、何れもコイルスプリングに限られることはなく、例えば、皿ばねであってもよい。
【0049】
また、略円柱状の保持体5の代わりに図示しない筒体を装着筒12に装着し、この筒体の上方からボトムステム部35を嵌着して軸支した構造に設けることもできる。
【0050】
続いて、本発明のライニング型バタフライバルブの上記実施形態における作用を説明する。
本発明におけるバルブ本体1は、
図1〜
図3に示すように、ボトムステム部35をボデー2の装着筒12に非貫通で軸支してジスク3を回転可能に設けていることにより、ジスク3の下部に別途ステムを設けることなくこのジスク3をボデー2に取付けできる。
このことから、ジスク3の下部付近の肉厚を特に薄く形成して、弁開時の流路口径に対するジスク3の厚さの割合を小さくできる。これにより、バルブ口径に対して、ステム用の挿入穴の肉厚の割合が大きくなる小口径(例えば、口径65A以下のバルブ)の場合に特に有効であり、ジスク3全体の肉厚を薄く設けて、中間開度や全開状態の流量を大きく確保できる。
【0051】
上部スプリング51よりも下部スプリング50のバネ力を大きくし、
図4に示すように、上部ボス面37側による上部シール面積S1の面圧よりも下部ボス面38側による下部シール面積S2の面圧を高めていることにより、ジスク3下部側の弁座シール性を向上し、このジスク3下部側を非貫通に軸支していることで流体の外部漏れを防ぎつつ操作性も向上する。
【0052】
ここで、シール面積に加わる面圧について詳しく述べる。
図4(a)、
図4(b)は、上流側の流体圧が0MPaのときの上部シール面積S2、下部シール面積S1の面圧分布をそれぞれ示しており、
図4(c)、
図4(d)は、上流側の流体圧が1.0MPaのときの上部シール面積S2、下部シール面積S1の面圧分布をそれぞれ示している。
図4と、後述の
図6において、図の右側が上流側、左側が下流側を示しており、ハッチング部分に面圧が加わっている。ハッチング間隔が狭い部分はシール面圧が高く、ハッチング間隔が広い部分はシール面圧が低い状態を示している。
【0053】
図4(a)、
図4(b)の流体圧0MPaの場合、
図2のジスク3が下流側に変位することがないため、上下部シール面積S2、S1における面圧はそれぞれ均等になる。
一方、
図4(c)、
図4(d)の流体圧1.0MPaの場合には、ジスク3が下流側に変位することで、下流側に比較して上流側の面圧がやや低くなる。しかし、下部シール面積S1を小さく設定していることから、
図4(d)の下流側面圧も
図4(c)の下流側面圧よりも高くなり、しかも、ジスク3の変位により下流側付近の面圧が流体圧0MPaのときよりも高まるため、上部のシール面圧と同様の高いシール性を発揮し、これらの上下部シール面積S2、S1における面圧のバランスを維持し、ジスク3下部側のずれ(変位)を抑制できる。上流側と下流側との中心でボトムステム部35により軸支していることで、
図4(c)、
図4(d)の上下部シール面積S2、S1において、それぞれ上流側と下流側との面圧差を抑え、安定したシール性及びトルク性を発揮する。
【0054】
一方、
図5、
図6においては、バタフライバルブの比較例を示しており、この例では、
図5に示すように、ボトムステム部や下部ステムが設けられることがなく、芯材80が樹脂ライニング部81で覆われた弁体82の上部側が
図1の上部ステム4で軸支され、弁体82の下部側では、樹脂ライニング部81の下部当接面83がシートライナ部84の内周面部85に当接シールするものである。
図6(a)、
図6(b)は、上流側からの流体圧が0MPaのときの上部シール面積T2、下部シール面積T1の面圧分布をそれぞれ示しており、
図6(c)、
図6(d)は、上流側の流体圧が1.0MPaのときの上部シール面積T2の面圧分布、下部シール面積T1の面圧分布をそれぞれ示している。
【0055】
図6(a)、
図6(b)の流体圧0MPaの場合、弁体82が下流側に変位することはなく、上下部シール面積T2、T1における面圧はそれぞれ均等になる。上下部の面圧を比較すると、弁体82の下部側が軸支されておらず、下部当接面83が広いシール面積で内周面部85に当接することにより、弁体上部側よりも面圧が弱くなる。
【0056】
図6(c)、
図6(d)の流体圧1.0MPaの場合、弁体82が下流に変位して上流側の面圧が低くなる。このとき、前記のように下部シール面積T1が下部当接面83により面積が広くなっていることで、下部シール面積T1の面圧が向上しにくくなる。さらに、弁体82下部に軸支部位を設けていないことから、上流側とのシール面圧の差が大きくなって下流側に変位しやすくなることから、シール性が低下してトルク性も安定しにくく、操作性も悪化するおそれが高い。
【0057】
本発明の
図1、
図2のバルブ本体1において、上下部スプリング50、51のバネ力を略同じにすると共に、下部ボス面38のシール面積S1を上部ボス面37のシール面積S2より小さくして下部ボス面38の面圧を高めて、ジスク3下部側のシール性を向上したことにより、下部シール面23と下部ボス面38とのシール性を確保し、クリープや温度変化により上下側の何れかのライニングの厚さが薄くなった場合にも、上下同じバネ力によって上下の面圧分布のバランスを維持し、各シール部位からの漏れを防止する。上下部スプリング50、51は、保持体5、ベアリング16の端面外周付近を押圧しているため、確実に上下部シール面22、23を上下部ボス面37、38に押圧してこれらのシール性を向上している。
【0058】
図3に示すように、保持体5の上面に凹部41を形成し、この凹部41に設けた袋状部20にボトムステム部35を嵌合していることで、ジスク3に圧力が加わったときには、この圧力がジスク3の芯金30から凹部41の側面に伝達する。これにより、金属よりも強度の低い樹脂製シートライナ10や樹脂ライニング32の変形を金属の保持体5により防止でき、高シール性を維持できる。凹部41内に袋状部20を設けていることで、凹部41内に流体圧が加わったとしても、この凹部41により袋状部20の変形や破壊等を防止して漏れを確実に防止する。
【0059】
その際、凹部41を設けた保持体5の環状部上面40aから、突設部下面31aとの間でボトムステム部35の芯金領域を軸支しているので、ボトムステム部35を必要最小限の長さに設けて組立て容易性を確保しつつ、ライニングの強度を確保できる。
【0060】
さらには、シートライナ10の上下部シール面22、23の肉厚がジスク3の軸芯に向けて徐々に薄くなっているため、シートライナ10と上下部ボス面37、38との面圧分布を維持しつつ、ボトムステム部35の高さHを最小限に抑えて組立性を向上することが可能となる。なお、図中の二点鎖線は、下部シール面23側の肉厚を均一に設ける場合を表している。この場合、ボトムステム部35の高さHが延長し、凹部41を深く形成する必要も生じてジスク3の組み込みが難しくなる。
【0061】
バルブ本体1を組立てる際には、
図1、
図2において、先ず、予め樹脂ライニング32で被覆したジスク3をシートライナ10の内側に組み入れる。この場合、ジスク3の上部側では、軸筒部36をシートライナ10の筒部24に内挿する。一方、ジスク3の下部側では、ボトムステム部35を袋状部20に嵌合するように装着する。このように、ジスク3下部側にステム装着用の長尺状の軸筒部を設ける必要がなく、袋状部20に短小の突設部31を樹脂ライニング32で被覆したボトムステム35を、シートライナ10をほとんど変形させることなく容易に挿入できる。
【0062】
次に、ジスク3上部側において、Oリング15を装着した鍔状部材14を筒部24の外周に装着する。このとき鍔部14bを筒部24の外周側に嵌め込むようにし、上部側のOリング15を軸筒部36外周に当接させるように組み込む。
さらに、鍔状部材14の外周に、底面を鍔部14b上面に当接させながらリング体13を装着する。これにより、金属製のリング体13が鍔状部材14の円筒部14aを外周側から保持して筒部24の拡径が阻止される。
この状態で上部ステム4を軸筒部36の内側に挿入してジスク3に接続する。
【0063】
上部ボデー2aの軸装筒11の対応する位置に、ベアリング16、上部スプリング51、ベアリング部材70を装着し、このベアリング部材70を保持リング71の係止により抜け止め状態で装着する。
下部ボデー2bの装着筒12の対応する位置には、保持体5、下部スプリング50、コマ部材72を装着し、コマ部材72を保持リング71の係止により抜け止め状態で装着する。
【0064】
最後に、上部ボデー2a、下部ボデー2bの間に、ジスク3、鍔状部材14、リング体13を装着した前述のシートライナ10を配置し、これを挟み込んだ状態でボルト6を締め付けて一体化することでバルブ本体1の組立てが完了となる。
【0065】
以上、説明したように、バルブ本体1は、ジスク3のボトムステム部35をボデー2下部の装着筒12に非貫通に軸支していることで、ジスクの上下にステムを設けた構造のライニング型バタフライバルブと比較して、流量を増大しつつ組立て性を向上し、下部シール面積S1における面圧を上部シール面積S2の面圧よりも高めていることで流路方向における流体漏れを確実に防止し、特に、下部ステムの有無が流量確保と組立て性とに大きく影響を与える小口径のバタフライバルブに有効である。