(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592282
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20191007BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20191007BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20191007BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
H04R17/00 330G
H01L41/09
H01L41/113
H01L41/053
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-118945(P2015-118945)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-5564(P2017-5564A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松田 有紀
【審査官】
渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−023296(JP,A)
【文献】
実開平07−011100(JP,U)
【文献】
国際公開第2007/029506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
H04R 1/00− 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20− 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 13/00
H04R 15/00
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00
H04R 23/00
H04R 29/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する材料から構成され、一端が開口する筒状の内部空間を有するケースと、
前記ケースの内部空間内の底部に固定された圧電素子と、
を備え、
前記ケースは、内周面に溝部を有し、
前記ケースの前記溝部の一部に又は全部にまでポッティング材が充填され、
前記ポッティング材のデュロメータA硬度は、5〜50である、超音波センサ。
【請求項2】
前記溝部の断面形状は、矩形、円形、三角形、または楔形である、請求項1に記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、管路内を流れる流体に超音波を伝播させ、その伝播速度の変化に基づいて流体の流速や流量などを測定する超音波センサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この超音波センサは、
図1に示すように、導電性を有する材料から構成されるケース100と、このケース100内に収容された円盤状の圧電素子200とを備えている。この圧電素子200は、上面および下面に形成された電極間に電圧が印加されることにより振動して超音波の発生源となるとともに、外部振動を受けることにより電極を介して電圧を取り出すことができる。このような圧電素子200は、エポキシ樹脂などからなる接着剤300によりケース100の底部の内壁面に固定される。これにより、圧電素子200の底面側の電極とケース100とが導通するので、圧電素子200の上面側の電極にリード線201を接続して、このリード線201とケース100との間に電圧を印加することにより、圧電素子200を振動させて、超音波を発生させることができる。また、伝播してきた超音波を圧電素子200で受け、圧電効果によって発生した電圧をリード線201とケース100とから取り出すことができる。
【0003】
このような超音波センサでは、正常に動作しない原因の一つとして、超音波センサ自身の故障が挙げられる。この故障は、接着剤300が割れて圧電素子200がケース100から剥離して浮き上がることによりケース100と圧電素子200との導通が切れたり、圧電素子200の電極とリード線201との接続部が剥がれたり、リード線201が断線したり、圧電素子200が破損したりするなどの原因で発生する。これらの理由によって超音波センサ自身が故障すると、圧電素子200に電圧を印加しても振動せず、また、圧電素子200が超音波を受けて振動しても電圧を取り出すことができなくなる。
【0004】
なお、
図2に示すように、超音波センサは導電性のケース100に圧電素子200が接着されて、その接着面の保護と圧電素子200の目的でポッティング材110が充填されるのが常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4509458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、ポッティング材110を製造過程で、又は運転中の温度変化によっても加熱(硬化)され冷却されると、ポッティング材が体積収縮を起こして
図2に示した矢印101の方向に収縮力が発生して、ポッティング材110が一部または全面剥離する問題がある。そもそも圧電素子200とケース100底面の接着剤300の周辺は接着強度が高いのであるが、前記収縮力によってポッティング材110の上表面周囲がケース100の内周面から剥離する。
【0007】
この問題を解決するために、本願発明は環境変化に対して、超音波センサのケースにおけるポッティング材が剥離しないようにケースを加工しポッティングすることで課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、
導電性を有する材料から構成され、一端が開口する筒状の内部空間を有するケースと、このケースの内部空間内の底部に固定された圧電素子とを備えた超音波センサであって、
前記ケースは、内周面に溝部を有し、
前記ケースの前記溝部の一部に又は全部にまでポッティング材が充填されていることを特徴とする超音波センサである。
【0009】
また、本願発明は、ポッティング材の硬度は、デュロメータA 5〜50のポッティング材であることを特徴とする超音波センサである。
【0010】
さらに、前記溝部の断面形状は、矩形、円形、三角形、または楔形であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明により、ケースに溝を設けポッティング材を充填することで、ケースの周囲から中心に向かう方向のポッティング材表面に発生する収縮力に対して、ポッティング材が剥離しにくくなる効果がある。さらに、ポッティング材には、超音波振動子の余分な振動を吸収し、超音波の背面反射を防ぐ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】従来の超音波センサにポッティング材を充填した状態を示す。
【
図3】本願発明の実施の一態様である超音波センサの断面図を示す。
【
図4】本願発明の実施の一態様である超音波センサにポッティング材を充填した状態を示す。
【
図5】本願発明の実施の別態様である超音波センサの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1) 本願発明の構成
図3に示すように、本実施の形態に係る超音波センサは、ケース100と、円盤状の圧電素子200とを備え、この圧電素子200はケース100の内部に接着剤300により固定されている。
【0014】
ケース100は、黄銅、ステンレス等の導電性を有する材料から構成され、一端が開口する円筒状の内部空間を有している。このようなケース100の開口部に近い内壁の内周面に沿って溝部120が切削加工されてある。本例では一周の溝の例である。
【0015】
(2)ポッティング材の充填
図4に示すように、ポッティング材110はケース100の内周面に設けられた溝部120の一部に又は全部にまでかかる範囲まで充填される。
【0016】
ポッティング材110が収縮するのは矢印101方向に示す収縮力によるものであるので、本例では、ポッティング材110は溝部120の一部または全部と接触しているので、本図示の接着部102に示すとおり溝部120の下部でポッティング材110は接着しており、ここでの接着強度は高い。そのためポッティング材110は剥離しにくくなる。
【0017】
なお、
図4では右面側の表示は省略したが、収縮力101はポッティング材110の上表面全周囲で中心方向に発生するのは当然である。
【0018】
(3)ポッティング材質
ポッティング材はシリコーン系、ウレタン系、エポキシ系でよいものだが、特に、ポッティング材110の充填の目的の1つが超音波振動子のバッキングであるので、硬度を限定することが望ましい。それは、「デュロメータA 5〜50のポッティング材」が相当である。本来、バッキングとは、超音波振動子の余分な振動を吸収し、超音波の背面反射を防ぐことを目指すので、ある程度の柔らかいポッティング材を選択するのである。
【0019】
(4)その他の実施例
上述の実施例では、溝部120の溝断面形状は矩形で示したが、本例にこだわる必要はない。その他に、円形(
図5に示す)、三角形(以下図省略)、または楔形であってもよい。要は、ポッティング材110の溝部120での接着面102が設けられればよいのである。
【0020】
また、溝部120は一周に限らず複数周または複数段に設けてもよい。
そのような設計上の変形であっても、本願発明と同一の作用効果を奏するものは、本願発明の範囲に入る。
【符号の説明】
【0021】
100 ケース
101 収縮力
102 接着面
110 ポッティング材
120 溝部
200 圧電素子
201 リード線
300 接着剤