(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円環状に並べて配置された複数のステータコイルを有する回転機の相毎に設けられ、複数の前記ステータコイルに沿って配置される少なくとも1つの導電部材を有するバスリングと、
前記バスリングの周方向に沿って互いに間隔を空けて配置され、それぞれの前記バスリングを一纏めに束ねて保持する複数の保持部材と、
を備え、
前記導電部材は、板材から成り、電源側に対して電気的に接続させる同相の給電端子と、同相のそれぞれの前記ステータコイルに対して電気的に接続させる複数のコイル接続端子と、を有し、
前記バスリングは、前記導電部材における前記給電端子及び前記コイル接続端子を除いた部分に塗布された絶縁性の被覆を有し、
1つの前記ステータコイルに対しては、前記周方向に間隔を空けて配置された2つの前記コイル接続端子を電気的に接続させ、
前記保持部材は、1つの前記ステータコイルに対して電気的に接続させる2つの前記コイル接続端子の間に配置することを特徴とした給電リング。
円環状に並べて配置された複数のステータコイルを有する回転機の相毎のバスリングに少なくとも1つ設けた構成部品であり、複数の前記ステータコイルに沿って配置される板材から成る導電部材の仮形状を成形する工程と、
前記バスリングを電源側に対して電気的に接続させる前記導電部材の給電端子及び前記バスリングを同相のそれぞれの前記ステータコイルに対して電気的に接続させる前記導電部材のコイル接続端子を除いて、前記導電部材に絶縁性材料を塗布し、前記導電部材に絶縁性の被覆を形成する工程と、
前記被覆が形成された仮形状の前記導電部材を最終形状に成形する工程と、
前記バスリングの周方向に互いに間隔を空けて配置される複数の保持部材によって、それぞれの前記バスリングを一纏めに束ねて保持する工程と、
を有し、
前記保持部材によってそれぞれの前記バスリングを保持する工程では、1つの前記ステータコイルに対して電気的に接続させる2つの前記コイル接続端子の間に前記保持部材を配置し、かつ、前記保持部材を前記ステータコイル毎に設けることを特徴とした給電リングの製造方法。
前記被覆の形成工程では、前記導電部材における前記給電端子及び前記コイル接続端子を除いた部分に、絶縁性のUV硬化樹脂を塗布し、塗布された前記UV硬化樹脂に対して紫外線を照射することを特徴とした請求項4に記載の給電リングの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る給電リング及び給電リングの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係る給電リング及び給電リングの製造方法の実施形態の1つを
図1から
図11に基づいて説明する。
【0015】
図1及び
図2の符号1は、本実施形態の給電リングを示す。この給電リング1は、例えば車両に搭載された回転機のステータ100と二次電池等の電源(図示略)との間において、回転機の相毎の電流の供給を担う給電構造体である。例えば、回転機が電動機として動作しているときには、二次電池側のインバータから送られてきた電力が給電リング1を介して回転機に供給される。また、回生時等のように回転機が発電機として動作しているときには、回転機で生成された電力が給電リング1を介してインバータに供給され、このインバータを介して二次電池に充電される。
【0016】
ここで、ステータ100は、ステータコア101を備える。そのステータコア101は、間隔を空けて円環状(即ち周方向)に並べて配置された複数のティース101aを有する。それぞれのティース101aは、円環状のティース群を成す。ステータコア101は、更に、それぞれのティース101aをティース群の外周側から一体的に保持する環状体101bを有している。この例示のステータコア101は、円環状の環状部と、この環状部の内周側から円環状の中心に向け且つ当該円環状の周方向に互いに間隔を空けて突出させた複数のティース部と、を有する板状のステータコアプレートの積層体である。このステータコア101においては、ティース部の積層部分が例えば方体状のティース101aを成し、環状部の積層部分が円筒状の環状体101bを成す。ステータ100は、そのそれぞれのティース101aに各々巻き付けた複数のステータコイル102を備える。それぞれのステータコイル102は、それぞれのティース101aに合わせて円環状(即ち周方向)に並べて配置され、円環状のステータコイル群を成す。回転機の各相(ここではU相とV相とW相の3相)のティース101a及びステータコイル102の組み合わせは、互いに90度ずらして4箇所に配置されている。
【0017】
給電リング1は、その円環状のステータ100に合わせて円環状に形成されている。本実施形態の給電リング1は、ステータコア101の環状体101bの上に同心に配置され、この環状体101bに取り付けるものとして例示する。但し、この給電リング1の配置は、この例示に限定するものではない。例えば、給電リング1は、ステータコイル群の上に同心に配置されるものであってもよい。
【0018】
以下においては、特に言及しない限り、その円環状の中心軸の軸線に沿う方向を軸線方向といい、この軸線を中心とする軸線周りの方向を周方向といい、その軸線に直交する方向を径方向という。
【0019】
この給電リング1は、複数のステータコイル102に沿って配置される回転機の相毎の導電体(以下、「バスリング」という。)10u,10v,10wと、そのバスリング10u,10v,10wを電源側のインバータ(図示略)に対して電気的に接続させる相毎の金属製の給電端子21u,21v,21wと、バスリング10u,10v,10wを同相のそれぞれのステータコイル102に対して電気的に接続させる複数の金属製のコイル接続端子22と、を備える(
図3)。
【0020】
更に、本実施形態の給電リング1は、中性相のバスリング(以下、「中性相バスリング」という。)10nも備えている。その中性相バスリング10nは、バスリング10u,10v,10wと同じように、円環状に並ぶ複数のステータコイル102に沿って配置される。この給電リング1においては、バスリング10u,10v,10wと同じように、中性相バスリング10nにも複数のコイル接続端子22が設けられている。この中性相バスリング10nにおいても、コイル接続端子22は、中性相バスリング10nとは別体のものを用意して、この中性相バスリング10nに対して電気的に接続させてもよく、中性相バスリング10nに対して一体化されたものであってもよい。
【0021】
バスリング10u,10v,10wの給電端子21u,21v,21wは、電源側の接続端子に対して直接接続されるものであってもよい。この場合には、給電端子21u,21v,21wと電源側の接続端子の内の一方が雄端子となり、他方が当該雄端子に接続される雌端子となる。また、給電端子21u,21v,21wと電源側の接続端子との間には、給電リング1側の接続端子を介在させてもよい。この場合には、給電端子21u,21v,21wに接続された給電リング1側の接続端子が電源側の接続端子に対して接続されることになる。この場合には、給電リング1側の接続端子と電源側の接続端子の内の一方が雄端子となり、他方が当該雄端子に接続される雌端子となる。
【0022】
バスリング10u,10v,10wのコイル接続端子22は、同相のそれぞれのステータコイル102の一方の端部に対して電気的に接続される。これに対して、中性相バスリング10nのコイル接続端子22は、U相とV相とW相のそれぞれのステータコイル102の他方の端部に対して電気的に接続される。コイル接続端子22とステータコイル102の接続は、溶着等によって直接的に行ってもよい。また、これらの接続は、接続端子や電線等を介在させることによって、間接的に行ってもよい。コイル接続端子22は、それぞれのバスリング10u,10v,10wや中性相バスリング10n毎に異なる形状のものを採用してもよく、バスリング10u,10v,10wや中性相バスリング10nにおける接続箇所毎に適宜に同一又は異なる形状のものを採用してもよい。
【0023】
それぞれのバスリング10u,10v,10wは、周方向(つまり、円環状のステータコイル群の周方向)に沿って配置される少なくとも1つの導電部材11と、この導電部材11における給電端子21u,21v,21wとコイル接続端子22を除いて塗布された絶縁性の被覆12と、を有する(
図3−
図6)。また、中性相バスリング10nは、周方向に沿って配置される少なくとも1つの導電部材11と、この導電部材11におけるとコイル接続端子22を除いて塗布された絶縁性の被覆12と、を有する(
図3及び
図7)。
【0024】
本実施形態の導電部材11には、給電端子21u,21v,21wとコイル接続端子22が一体成形されている。本実施形態の導電部材11は、金属製の板材をプレス成形によって切断加工及び曲げ加工したものであり、バスバと称されることもある。本実施形態では、ステータ100への組付け作業性を向上させるべく、それぞれのバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nに柔軟性を持たせる。このため、導電部材11には、この点を考慮し、ステータ100へと組み付ける際に撓み等の変形を可能にする板厚のものを用いることが望ましい。
【0025】
被覆12の材料には、合成樹脂等の絶縁性材料を用いる。本実施形態の被覆12には、絶縁性のUV硬化樹脂が材料となるUV硬化型被覆を用いている。本実施形態では、導電部材11における給電端子21u,21v,21wとコイル接続端子22を除いた部分の外壁面に、UV硬化樹脂が塗布され、そのUV硬化樹脂に紫外線を照射することによって被膜(UV硬化型被覆)12が形成される。この被覆12は、導電部材11の柔軟性を阻害しないように、柔軟性を有するものにすることが望ましい。これにより、本実施形態の給電リング1は、ステータ100の形状に対する追従性が高くなり、ステータ100への組付け作業性を向上させることができる。また、この給電リング1においては、塗布工程を経て形成される被覆12を用いることで、被覆12の肉厚を熱収縮チューブ等よりも薄くすることができるので、体格の小型化や軽量化が可能になる。
【0026】
本実施形態のU相のバスリング10uは、
図4に示すように、第1から第3の導電体10u
1,10u
2,10u
3から成り、これ故に3本の導電部材11uを有している。第1から第3の導電体10u
1,10u
2,10u
3は、それぞれに、1本の導電部材11uと、この導電部材11uの所定部分に材料の塗布工程を経て形成された被覆12uと、を有する。導電部材11uは、主体部分となる基部11xと、この基部11xから突出させた2つのコイル接続端子22と、を有する。基部11xは、棒状の板材を周方向に沿って弧状に曲げたものである。コイル接続端子22は、その基部11xにおける長手方向(周方向)の両端に各々配置される。それぞれのコイル接続端子22は、その両端から軸線方向における同一方向に各々突出させた片部であり、それぞれに同相の異なるステータコイル102に対して電気的に接続される。更に、第1導電体10u
1の導電部材11uについては、基部11xから突出させた給電端子21uも有している。給電端子21uは、径方向の外側に突出させた片部である。被覆12uは、その基部11xの外壁面に形成される。
【0027】
第1から第3の導電体10u
1,10u
2,10u
3は、同心上で且つ周方向に並べて配置する。このバスリング10uにおいては、第1導電体10u
1の一方(
図4の紙面の反時計回り方向)のコイル接続端子22と、第2導電体10u
2の他方(
図4の紙面の時計回り方向)のコイル接続端子22と、を同相の或る1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10u
1の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第2導電体10u
2の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。更に、このバスリング10uにおいては、第1導電体10u
1の他方のコイル接続端子22と、第3導電体10u
3の一方のコイル接続端子22と、を同相の別の1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10u
1の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第3導電体10u
3の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。第1から第3の導電体10u
1,10u
2,10u
3においては、そのようなコイル接続端子22とステータコイル102との接続関係が成立するように、それぞれのコイル接続端子22を接続対象の同相のステータコイル102の径方向の外側に配置する。このため、このバスリング10uは、第1から第3の導電体10u
1,10u
2,10u
3によってC字状を成す(
図3)。
【0028】
本実施形態のV相のバスリング10vは、
図5に示すように、第1から第3の導電体10v
1,10v
2,10v
3から成り、これ故に3本の導電部材11vを有している。第1から第3の導電体10v
1,10v
2,10v
3は、U相のバスリング10uと同じように、それぞれに、1本の導電部材11vと、この導電部材11vの所定部分に材料の塗布工程を経て形成された被覆12vと、を有する。導電部材11vは、U相のバスリング10uと同様の基部11xと2つのコイル接続端子22とを有する。更に、第1導電体10v
1の導電部材11vについては、基部11xから突出させた給電端子21vも有している。給電端子21vは、U相のバスリング10uと同じように、径方向の外側に突出させた片部である。被覆12vは、その基部11xの外壁面に形成される。
【0029】
第1から第3の導電体10v
1,10v
2,10v
3は、同心上で且つ周方向に並べて配置する。このバスリング10vにおいては、第1導電体10v
1の一方(
図5の紙面の反時計回り方向)のコイル接続端子22と、第2導電体10v
2の他方(
図5の紙面の時計回り方向)のコイル接続端子22と、を同相の或る1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10v
1の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第2導電体10v
2の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。更に、このバスリング10vにおいては、第1導電体10v
1の他方のコイル接続端子22と、第3導電体10v
3の一方のコイル接続端子22と、を同相の別の1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10v
1の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第3導電体10v
3の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。第1から第3の導電体10v
1,10v
2,10v
3においては、そのようなコイル接続端子22とステータコイル102との接続関係が成立するように、それぞれのコイル接続端子22を接続対象の同相のステータコイル102の径方向の外側に配置する。このため、このバスリング10vは、第1から第3の導電体10v
1,10v
2,10v
3によってC字状を成す(
図3)。
【0030】
本実施形態のW相のバスリング10wは、
図6に示すように、第1から第3の導電体10w
1,10w
2,10w
3から成り、これ故に3本の導電部材11wを有している。第1から第3の導電体10w
1,10w
2,10w
3は、U相のバスリング10uと同じように、それぞれに、1本の導電部材11wと、この導電部材11wの所定部分に材料の塗布工程を経て形成された被覆12wと、を有する。導電部材11wは、U相のバスリング10uと同様の基部11xと2つのコイル接続端子22とを有する。更に、第1導電体10w
1の導電部材11wについては、基部11xから突出させた給電端子21wも有している。給電端子21wは、U相のバスリング10uと同じように、径方向の外側に突出させた片部である。被覆12wは、その基部11xの外壁面に形成される。
【0031】
第1から第3の導電体10w
1,10w
2,10w
3は、同心上で且つ周方向に並べて配置する。このバスリング10wにおいては、第1導電体10w
1の一方(
図6の紙面の反時計回り方向)のコイル接続端子22と、第2導電体10w
2の他方(
図6の紙面の時計回り方向)のコイル接続端子22と、を同相の或る1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10w
1の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第2導電体10w
2の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。更に、このバスリング10wにおいては、第1導電体10w
1の他方のコイル接続端子22と、第3導電体10w
3の一方のコイル接続端子22と、を同相の別の1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10w
1の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第3導電体10w
3の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。第1から第3の導電体10w
1,10w
2,10w
3においては、そのようなコイル接続端子22とステータコイル102との接続関係が成立するように、それぞれのコイル接続端子22を接続対象の同相のステータコイル102の径方向の外側に配置する。このため、このバスリング10wは、第1から第3の導電体10w
1,10w
2,10w
3によってC字状を成す(
図3)。
【0032】
本実施形態の中性相バスリング10nは、
図7に示すように、第1及び第2の導電体10n
1,10n
2から成り、これ故に2本の導電部材11nを有している。第1及び第2の導電体10n
1,10n
2は、U相のバスリング10u等と同じように、それぞれに、1本の導電部材11nと、この導電部材11nの所定部分に材料の塗布工程を経て形成された被覆12nと、を有する。導電部材11nは、U相のバスリング10u等と同様の基部11xを有する。更に、この導電部材11nは、U相のバスリング10u等と同様のコイル接続端子22を3つ有している。その3つのコイル接続端子22は、周方向に連なるU相とV相とW相のステータコイル102に対して個別に電気的に接続される。被覆12nは、その基部11xの外壁面に形成される。
【0033】
第1及び第2の導電体10n
1,10n
2は、同心上で且つ周方向に並べて配置する。この中性相バスリング10nにおいては、第1導電体10n
1の一方(
図7の紙面の反時計回り方向)のコイル接続端子22と、第2導電体10n
2の他方(
図7の紙面の時計回り方向)のコイル接続端子22と、を或る1つのステータコイル102に接続する。このステータコイル102においては、一端が第1導電体10n
1の一方のコイル接続端子22に対して電気的に接続され、他端が第2導電体10n
2の他方のコイル接続端子22に対して電気的に接続される。第1及び第2の導電体10n
1,10n
2においては、そのようなコイル接続端子22とステータコイル102との接続関係が成立するように、それぞれのコイル接続端子22を接続対象のステータコイル102の径方向の外側に配置する。
【0034】
この給電リング1においては、そのバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nとが径方向に沿って積層される(
図8)。この給電リング1には、その積層状態を保つための保持部材30が設けられている。その保持部材30は、周方向に互いに間隔を空けて複数配置され、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nを一纏めに束ねて保持するものである。
【0035】
それぞれの保持部材30は、コイル接続端子22の近くに並べて配置する。1つのステータコイル102の径方向の外側には、2つのコイル接続端子22が周方向に間隔を空けて配置されている。このため、本実施形態の保持部材30は、その隣設する2つのコイル接続端子22の間に配置する。換言するならば、この例示では、保持部材30をステータコイル102の近傍にステータコイル102毎に配置している。この給電リング1においては、保持部材30がコイル接続端子22の近くに配置されているので、ステータ100に組み付けた後に、例えば振動等の入力に伴うコイル接続端子22とステータコイル102との間の相対移動を抑えることができる。よって、この給電リング1は、コイル接続端子22とステータコイル102との間の電気的な接続を維持し、耐久性を向上させることができる。これに加えて、この給電リング1においては、各保持部材30が周方向に互いに間隔を空けて配置されているので、隣設する保持部材30の間でバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nの柔軟性によるステータ100の形状に対する追従性を発揮させることができ、ステータ100への組付け作業性を向上させることができる。
【0036】
ここで、本実施形態の給電リング1においては、周方向における位置によって、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nとが全て積層されている場所もあれば、その内の1本のみ又は2本のみ又は3本のみが積層されている場所もある。このため、保持部材30は、その場所毎に応じた保持部(つまり保持対象となるバスリングの本数に応じた保持部)を有するものとして、場所毎に別形状のものを用意してもよい。但し、本実施形態においては、保持対象となるバスリングの本数に拘わらず、どの場所でも保持できるように、全て同一形状の保持部材30を用いている。その保持部材30は、最大で4層分のバスリング(バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10n)を保持できものである。本実施形態の給電リング1は、このような保持部材30の共用化によって、原価の低減を図ることができる。
【0037】
具体的に、保持部材30は、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形されたものであり、第1保持体31と第2保持体32とを有する(
図9−
図11)。第1保持体31は、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nの挿入が可能な軸線方向に向けた開口31aを有している。第2保持体32は、その開口31aを塞ぐものでもある。この保持部材30においては、第2保持体32によって開口31aが塞がれた状態のときに、方体状の内部空間が形成される(
図9及び
図11)。バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nは、その内部空間に対して開口31aから挿入され、弧の内部空間において保持される。
【0038】
第1保持体31と第2保持体32は、例えば弾性を有しており、これ故に開口31aを露出させることも塞ぐこともできる。この保持部材30には、第2保持体32によって開口31aが塞がれた状態を維持するためのロック機構33を設けている(
図9及び
図11)。そのロック機構33は、第1保持体31と第2保持体32との間に介在させており、第1保持体31側の第1係合部33aと第2保持体32側の第2係合部33bとを有する。この例示では、爪部としての第1係合部33aを貫通孔たる第2係合部33bに挿通させ、第1係合部33aを第2係合部33bの周縁に係止させることによって、第1保持体31と第2保持体32とが開口31aを塞いだ状態で保持される。
【0039】
また、この保持部材30には、給電リング1をステータ100に固定するための固定部34が設けられている。その固定部34は、開口31aとは反対側の端部に配置されている。この固定部34は、第1保持体31から突出させた突出部であり、ステータコア101の貫通孔101cに圧入される(
図1及び
図11)。この例示では、ステータコア101の環状体101bに対して保持部材30毎に貫通孔101cが形成されている。本実施形態の給電リング1においては、コイル接続端子22の近傍に配置された各保持部材30の固定部34によって、ステータ100に対する位置決めが容易になり、ステータ100に対する組付け作業性を向上させることができる。
【0040】
次に、この給電リング1の製造方法について説明する。
【0041】
本実施形態においては、導電部材11の仮形状の成形工程と、被覆12の形成工程と、被覆後の仮形状の導電部材11に対する成形工程と、保持部材30によるバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nの保持工程と、を有する。
【0042】
導電部材11の仮形状とは、前述したバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nにおける被覆12が施される前の導電部材11の形状のことである。よって、導電部材11の仮形状の成形工程とは、かかる形状へと導電部材11を成形する工程のことをいう。この成形工程では、例えば、曲げ加工が行われる前までの加工(板材からの打ち抜き加工のみ)が実施される。従って、仮形状の導電部材11は、平板状の基部11xと、同一平面上で基部11xから突出している給電端子21u,21v,21w及びコイル接続端子22と、を有している。平板状の基部11xとは、弧状に曲げ加工される前の仮形状のことである。基部11xと同一平面上の給電端子21u,21v,21w及びコイル接続端子22とは、基部11x側の根元から曲げ加工される前の仮形状のことである。
【0043】
被覆12の形成工程とは、仮形状の導電部材11における給電端子21u,21v,21w及びコイル接続端子22を除いた部分(基部11x)に絶縁性材料を塗布し、この導電部材11に絶縁性の被覆12を形成する工程のことである。バスリング10u,10v,10wにおいては、例えば、給電端子21u,21v,21wとコイル接続端子22にマスキングを施してから、導電部材11(11u,11v,11w)に絶縁性材料を塗布する。これにより、バスリング10u,10v,10wにおいては、基部11xに絶縁性材料が塗布される。その後、このバスリング10u,10v,10wにおいては、塗布された絶縁性材料を当該絶縁性材料に応じた方法で硬化させることによって、仮形状の導電部材11(11u,11v,11w)における給電端子21u,21v,21w及びコイル接続端子22を除いた部分(基部11x)に被覆12(12u,12v,12w)が形成される。また、仮形状の中性相バスリング10nにおいては、例えば、バスリング10u,10v,10wと同じように、コイル接続端子22にマスキングを施してから、導電部材11(11n)に絶縁性材料を塗布する。これにより、中性相バスリング10nにおいては、基部11xに絶縁性材料が塗布される。その後、この中性相バスリング10nにおいては、塗布された絶縁性材料を当該絶縁性材料に応じた方法で硬化させることによって、導電部材11(11n)におけるコイル接続端子22を除いた部分(基部11x)に被覆12(12n)が形成される。例えば、絶縁性材料が前述したUV硬化樹脂の場合には、導電部材11に塗布されたUV硬化樹脂に紫外線を照射することによって、これが硬化し、UV硬化型被覆として形成される。
【0044】
被覆後の仮形状の導電部材11に対する成形工程とは、この仮形状の導電部材11を最終形状に成形するための工程のことである。この成形工程では、被覆12が形成された仮形状の導電部材11に対して曲げ加工が行われる。具体的に、この成形工程では、周方向に沿うように、平板状の基部11xを弧状に曲げ加工する。また、この成形工程では、給電端子21u,21v,21wやコイル接続端子22を基部11x側の根元から曲げ加工して最終形状に成形する。尚、これらの曲げ加工の内の少なくとも1つ又は全ては、被覆12の形成工程の前に実施してもよい。
【0045】
保持部材30によるバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nの保持工程とは、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nを、周方向において互いに間隔を空けて配置される複数の保持部材30によって一纏めに束ねて保持する工程のことである。この保持工程においては、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nの所定位置を開口31aから保持部材30の内部に挿入する。その所定位置とは、保持部材30によって保持される位置のことである。この挿入作業は、それぞれの所定位置において実施される。この保持工程では、それぞれの所定位置の保持部材30において、保持対象となるバスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nが全て挿入された後、第2保持体32で開口31aを塞ぎ、ロック機構33を作動させる。この保持工程においては、全ての保持部材30のロック機構33を作動させることによって、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nがそれぞれの保持部材30で一纏めに束ねて保持される。
【0046】
以上示したように、本実施形態の給電リング1の製造方法は、塗布によって被覆12を形成するので、被覆の剥ぎ取り工程を経ずとも、導電部材11における給電端子21u,21v,21wやコイル接続端子22を外部に露出させることができ、かつ、その給電端子21u,21v,21wやコイル接続端子22を除いた部分に被覆12を施すことができる。つまり、本実施形態の給電リング1においては、被覆の剥ぎ取り工程を経ずに形成された給電端子21u,21v,21wやコイル接続端子22を導電部材11が有すると共に、その導電部材11のそれ以外の場所に被覆12が形成されている。このため、本実施形態の給電リング1及び給電リング1の製造方法は、給電性能や絶縁性能を確保しつつ、被覆の剥ぎ取り工程が廃止された分だけ生産効率を高め、生産性を向上させることができる。
【0047】
更に、本実施形態の給電リング1及び給電リング1の製造方法は、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nが個別に被覆されるので、これらを全周に渡って各々覆いながら保持する従来の如き絶縁ホルダを必要とせず、バスリング10u,10v,10wと中性相バスリング10nを保持部材30と共に被覆する必要もない。このため、この給電リング1及び給電リング1の製造方法は、バスリング10u,10v,10w及び中性相バスリング10nと保持部材30とに対する例えばインサート成形によって形成される被覆を必要としない。従って、この給電リング1及び給電リング1の製造方法は、生産性を向上させることができる。また、この給電リング1及び給電リング1の製造方法は、例えば被覆12の形成後の検品段階において、それぞれのバスリング10u,10v,10w及び中性相バスリング10nの相対的な位置関係やバスリング10u,10v,10w及び中性相バスリング10nと保持部材30との相対的な位置関係のずれが発覚したとしても、これらの部品を再び用いて正しい給電リング1を作り直すことができる。このため、この給電リング1及び給電リング1の製造方法は、歩留まりの低下を抑えることができるので、生産性を向上させることができる。尚、この給電リング1及び給電リング1の製造方法は、上記のような絶縁ホルダを必要とせず、複数の保持部材30による部分固定となるので、軽量化が可能になる。
【0048】
このように、本実施形態の給電リング1及び給電リング1の製造方法は、生産性を向上させることができるので、これを以て製造原価の低減をも図ることができる。
【0049】
ところで、以上の例示では、導電部材11の板厚方向を径方向に合わせて、バスリング10u,10v,10w及び中性相バスリング10nを積層させている。本実施形態の給電リング1は、必ずしもそのような積層形態に限定するものではなく、例えば、導電部材11の板厚方向を軸線方向に合わせて、バスリング10u,10v,10w及び中性相バスリング10nを積層させてもよい。かかる積層形態であっても、本実施形態の給電リング1及び給電リング1の製造方法は、上記の例示と同様の効果を得ることができる。