(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、太陽電池用基板などの各種基板をいう。
【0037】
以下の説明においては、一方主面のみに凹凸を有する回路パターン等(以下「パターン」と記載する)が形成されている基板を例として用いる。ここで、パターンが形成されている主面を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の面を「上面」と称する。なお、第1実施形態、第2実施形態においては上面を表面として説明し、第3実施形態においては上面を裏面として説明する。
【0038】
また、以下の説明において、基板は略円形状の基板であり、一部の周縁にノッチやオリエンテーション・フラットが設けられている。基板としては、直径が100mm以上450mm以下の基板が通常用いられるが、本願発明の実施において、基板の形状や寸法は、これに限られない。
【0039】
以下の説明において、常温とは、本発明に係る基板洗浄装置が設備されている工場内の雰囲気の温度を意味する。また、以下の実施形態では、常温を摂氏20度±15度の範囲とする。
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板洗浄装置を例に採って図面を参照して説明する。なお、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。
【0041】
<第1実施形態>
図1、
図2および
図3はこの発明に係る基板洗浄装置9の概略構成を示す図である。
図1は基板洗浄装置9の正面図であり、
図2は
図1の基板洗浄装置9のB1−B1線に沿った矢視断面図である。また、
図3は
図1の基板洗浄装置9を矢印B2側からみた側面図である。この装置は半導体基板等の基板W(以下、単に「基板W」と記載する)に付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「パーティクル等」と記載する)を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板洗浄装置である。
【0042】
なお、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。また、各座標系において、矢印の先端が向く方向を+(プラス)方向とし、逆の方向を−(マイナス)方向とする。
【0043】
<1−1.基板洗浄装置の全体構成>
基板洗浄装置9は、基板Wを例えば25枚収容したFOUP(Front Open Unified Pod)949を載置するオープナー94と、オープナー94上のFOUP949から未処理の基板Wを取り出し、また処理完了後の基板WをFOUP949内に収納するインデクサユニット93と、インデクサユニット93とセンターロボット96との間で基板Wの受け渡しを行うシャトル95と、基板Wをセンターロボット96でその内部に収容して洗浄を行う洗浄ユニット91と、洗浄ユニット91に供給される液体や気体の配管、バルブ等を収容する流体ボックス92とで構成される。
【0044】
まず、これらの平面的な配置について
図2を用いて説明する。基板洗浄装置9の一端(
図2において左端)には複数の(本実施形態においては3台の)オープナー94が配置される。オープナー94の
図2における右側(+Y側)に隣接してインデクサユニット93が配置される。インデクサユニット93のX方向における中央付近であって、インデクサユニット93の
図2における右側(+Y側)に隣接してシャトル95が配置され、シャトル95の
図2における右側(+Y側)に、シャトル95と+Y方向に並ぶようにセンターロボット96が配置される。このように、インデクサユニット93、シャトル95およびセンターロボット96は、直交する二本のラインの配置をなしている。
【0045】
+Y方向に並ぶように配置されたシャトル95とセンターロボット96の
図2における上側(−X側)と下側(+X側)には洗浄ユニット91と流体ボックス92が配置されている。すなわち、シャトル95とセンターロボット96の
図2における上側(−X側)または下側(+X側)に、インデクサユニット93の
図2における右側(+Y側)に隣接して、流体ボックス92、洗浄ユニット91、洗浄ユニット91、流体ボックス92の順に配置されている。
【0046】
なお、インデクサユニット93の+X側(
図2における下側)の側面には後述する制御部70の操作部971が設置されている(
図1参照)。
【0047】
次に、オープナー94について説明する。オープナー94はその上部にFOUP949を載置する載置面941と、FOUP949の正面(
図1および
図2におけるFOUP949の右側(+Y側)の面)に対向して配置され、FOUP949の正面にある蓋部(図示省略)を開閉する開閉機構943(
図3参照)を備える。
【0048】
基板洗浄装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。これにより、後述するインデクサユニット93のインデクサロボット931が、FOUP949内の基板Wを搬出し、逆にFOUP949内に基板Wを搬入することが可能となる。
【0049】
次に、インデクサユニット93について説明する。インデクサユニット93には、FOUP949から処理工程前の基板Wを一枚ずつ取り出すとともに、処理工程後の基板WをFOUP949に一枚ずつ収容し、更に基板Wをシャトル95と受け渡しする、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド933を有するインデクサロボット931が備えられている。インデクサロボット931はX軸方向に水平移動自在であり、またZ軸方向に昇降移動自在であるとともに、Z軸周りに回転可能に構成されている。
【0050】
次に、シャトル95について説明する。シャトル95には、基板Wの
図2における上側(−X側)および下側(+X側)の周縁部付近であって、インデクサロボット931のハンド933および後述するセンターロボット96のハンド961と干渉しない位置を保持する、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド951と、2組のハンド951をそれぞれ独立してY軸方向に水平移動する水平移動機構(図示せず)とを備える。
【0051】
シャトル95はインデクサロボット931とセンターロボット96双方との間で基板Wを受け渡し可能に構成されている。すなわち、図示しない水平移動機構によりハンド951が
図2における左側(−Y側)に移動した場合、インデクサロボット931のハンド933との間で基板Wの受け渡しが可能となり、また、ハンド951が
図2における右側(+Y側)に移動した場合はセンターロボット96のハンド961との間で基板Wの受け渡しが可能となる。
【0052】
次に、センターロボット96について説明する。センターロボット96には、基板Wを1枚ずつ保持し、シャトル95または洗浄ユニット91との間で基板Wの受け渡しを行う、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド961と、鉛直方向(Z軸方向)に延設され、ハンド961の鉛直方向の移動の軸となる昇降軸963と、ハンド961を昇降移動させる昇降機構965と、ハンド961をZ軸周りに回転させる回転機構967を備える。センターロボット96はZ軸方向に昇降軸963に沿って昇降移動自在であるとともに、回転機構967によってハンドがZ軸周りに回転可能に構成されている。
【0053】
なお、洗浄ユニット91の後述する側壁であって、センターロボット96に対向する面には、センターロボット96のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、または搬出するための開口が設けられている。また、センターロボット96が洗浄ユニット91と基板Wの受け渡しを行わない場合に上記開口を閉塞して洗浄ユニット91内部の雰囲気の清浄度を保持するためのシャッター911が設けられている。
【0054】
図1に示すように洗浄ユニット91と流体ボックス92は上下2段に積み上げる構成とされている。したがって、本実施形態における基板洗浄装置9には洗浄ユニット91および流体ボックス92はそれぞれ8台ずつ備えられている。
【0055】
なお、本発明の実施に関して、洗浄ユニット91および流体ボックス92の台数は8台に限られず、これより多い構成であっても、少ない構成であっても、本発明の実施は可能である。
【0056】
次に、インデクサロボット931、シャトル95およびセンターロボット96による基板Wの搬送の手順について説明する。基板洗浄装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。インデクサロボット931はFOUP949の所定の位置から下側のハンド933により基板Wを1枚取り出す。その後、インデクサロボット931はシャトル95の前(
図2におけるインデクサユニット93のX軸方向中央付近)に移動する。同時にシャトル95は下側のハンド951をインデクサユニット93の側(
図2における左側(−Y側))へ移動する。
【0057】
シャトル95の前に移動したインデクサロボット931は下側のハンド933に保持した基板Wをシャトル95の下側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は下側のハンド951をセンターロボット96の側(
図2における右側(+Y側))に移動する。また、センターロボット96がシャトル95にハンド961を向ける位置に移動する。
【0058】
その後、センターロボット96が下側のハンド961により、シャトル95の下側のハンド951に保持された基板Wを取り出し、8つある洗浄ユニット91のいずれかのシャッター911へハンド961を向けるように移動する。その後、シャッター911が開放され、センターロボット96が下側のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、洗浄ユニット91内での基板Wの洗浄処理が開始される。
【0059】
洗浄ユニット91内で処理が完了した基板Wは、センターロボット96の上側のハンド961で搬出され、その後は上記未処理の基板Wを搬送する場合とは逆にセンターロボット96の上側のハンド961、シャトル95の上側のハンド951、インデクサロボット931の上側のハンド933の順に移載され、最終的にFOUP949の所定の位置に収容される。
【0060】
<1−2.洗浄ユニット>
次に、洗浄ユニット91の構成について
図4を用いて説明する。
図4は洗浄ユニット91の構成を示す模式図である。ここで、本実施形態における8つの洗浄ユニット91はそれぞれ同じ構成であるため、
図2における矢印B3の示す洗浄ユニット91(
図1において左下側の洗浄ユニット91)を代表とし、以下、第1実施形態の洗浄ユニット91を「洗浄ユニット91a」と称して説明する。
【0061】
洗浄ユニット91aは、パターンが形成された基板表面Wfを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持する基板保持ユニット20と、基板保持ユニット20をその内側に収容し、基板保持ユニット20および基板Wからの飛散物等を受け止めて排気・排液するカップ101と、基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfに対向して配置され、基板表面Wfの上方の空間を外気から遮断する遮断機構30と、超音波印加液供給部40と、疎水化剤除去部50を備える。
【0062】
さらに、洗浄ユニット91aは、後述するプログラム73に基づいて基板洗浄装置9の各部の動作を制御する制御部70を備える。
【0063】
また、洗浄ユニット91aは、後述する各部構成により、基板Wの基板表面Wfまたは基板裏面Wbへ、第1液体、第2液体、第2液体に超音波を印加した超音波液、疎水化ガス、溶解液、乾燥気体を供給する。
【0064】
第1実施形態において、基板Wはシリコンウエハである。基板表面Wfに形成されるパターンは、少なくとも絶縁膜を含み、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。絶縁膜は、SiO
2膜であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。積層膜を構成する各膜として、例えばポリシリコン膜、SiN膜、BSG膜(ホウ素を含むSiO
2膜)、およびTEOS膜(TEOS(テトラエトキシシラン)を用いてCVD法で形成されたSiO
2膜)等が用いられる。
【0065】
第1実施形態において、疎水化ガスは、基板表面Wfのパターンを疎水化する疎水化剤と、疎水化剤を溶解する溶剤と、を混合した疎水化液の蒸気である。
【0066】
疎水化剤としては、基板表面Wfのパターンの材質に応じて公知の疎水化剤を用いることができる。例えば、フッ酸、シランカップリング剤、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン、オルガノシラン化合物、疎水基を有するアミン、または有機シリコン化合物を含む疎水化剤が用いられる。第1実施形態では、疎水化剤としてシランカップリング剤を用いる。
【0067】
また、疎水化剤を溶解する溶剤としては、疎水化剤の種類に応じて公知の溶剤を用いることができる。一般には有機溶剤であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等の各種アルコール類が用いられる。特に、疎水化剤を基板表面Wfのパターン内部に供給させるために、例えば純水よりも表面張力の低い液体が好適である。第1実施形態では、該溶剤としてIPAを用いる。
【0068】
第1液体としては、基板表面Wfのパターンに対して比較的不活性であり、疎水化剤を溶解する溶剤よりも疎水化剤に対する溶解力が低い液体が用いられる。特に、一般にリンス液として用いられる液体が好適であり、例えば脱イオン水(DIW)、炭酸水、水素水等の純水が用いられる。第1実施形態では、第1液体としてDIWを用いる。
【0069】
第2液体としては、基板Wの種類に応じて公知の洗浄液・リンス液が用いられる。特に、第1液体と同一組成の液体を用いることが、使用する液体の種類が少なくなりタンク等にかかるコストを低く抑えられ、また、液体回収機構等も簡易な構成とできるため好適である。すなわち、第1液体として純水が用いられるとき、第2液体としても純水を用いることが好適である。第1実施形態では、第2液体としてDIWを用いる。
【0070】
なお、本発明の実施においてはこれに限られず、第2液体としては、例えば水酸化アンモニウム、過酸化水素水および水の混合液(SC−1)、塩酸、過酸化水素水および水の混合液(SC−2)、希弗酸(DHF)、または硫酸、過酸化水素水および水の混合液(SPM)等を用いても良い。
【0071】
第2液体は、組成としては上記の液体を用いるが、その溶存ガス濃度は飽和レベルであることが好適である。溶存ガスとしては、例えば窒素ガス、空気(窒素約80%、酸素約20%)が用いられる。第1実施形態では、第2液体として窒素ガスの溶存ガス濃度が18ppm以上、すなわち大気圧環境下で窒素ガスの溶存ガス濃度が飽和したDIWを用いる。
【0072】
溶解液としては、疎水化剤に対する溶解力が比較的高い液体が用いられ、特に、上記の溶剤と同一の組成を有する液体を用いることが、タンク等にかかるコストを低く抑えられ、また液体回収機構等も簡易な構成とできる観点から好適である。第1実施形態では、溶解液としてIPAを用いる。
【0073】
乾燥気体は、該気体中に含まれる水蒸気の露点が、基板W近傍の雰囲気の温度よりも低い(すなわち、気体中に含まれる水蒸気の分圧が、基板W近傍の雰囲気における水の蒸気圧よりも低い)気体である。特に、露点が−10度(摂氏)以下の気体が好適であり、−40度(摂氏)以下の気体がより好適である。乾燥気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、または清浄乾燥空気(Clean Dry Air,窒素ガスと酸素ガスの分圧比が約80%:約20%の気体)が挙げられる。なお、本実施形態では、露点が−40度の窒素ガスを乾燥空気として用いる。
【0074】
次に、洗浄ユニット91aの各部について説明する。
【0075】
基板保持ユニット20は、基板表面Wfまたは基板裏面Wbを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持するユニットである。第1実施形態では、基板表面Wfを上方に向けて保持する例を説明するが、同様にして基板裏面Wbを上方に向けて保持することもできる。
【0076】
基板保持ユニット20は、洗浄ユニット91aの底部に固設され、上方に基板裏面Wbと対向する円板状のステージ23を有する。ステージ23は、ステージ回転機構22に接続され、鉛直方向に沿った中心軸A0周りに水平面内に回転可能となっている。また、ステージ23には、中心軸A0と交差する位置に下方ノズル27として開口を有する。
【0077】
ステージ23の周縁付近には、基板Wの周縁部を保持する複数個のチャック24が立設されている。チャック24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、ステージ23の周縁に沿って等角度間隔で配置される。各チャック24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する支持ピンと、該支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する保持ピンとを備えており、チャック24は基板Wを保持する保持部材として機能する。
【0078】
各チャック24は公知のリンク機構や褶動部材等を介して図示しないエアシリンダに連結され、制御部70が該エアシリンダの駆動部と電気的に接続し、制御部70の動作指令によりエアシリンダは伸縮する。これにより、各チャック24が、その保持ピンが基板Wの外周端面を押圧する「閉状態」と、その保持ピンが基板Wの外周端面から離れる「開状態」との間を切り替え可能としている。なお、チャック24の開閉状態を変位させる駆動源として、エアシリンダ以外にモーターやソレノイド等の公知の駆動源を用いることも可能である。
【0079】
ステージ23に基板Wが受渡しされる際には、各チャック24を開状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャック24を閉状態とする。各チャック24を閉状態とすると、各チャック24が基板Wの周縁部を把持する。これにより、基板Wはステージ23から所定距離だけ離間して、基板表面Wfを上方に向け、基板裏面Wbを下方に向けた状態で水平姿勢に保持される。当該所定距離は、各チャック24の構造・サイズに依存するが、基板Wの半径と比べ十分短く、例えば5mm以上30mm以下の距離である。
【0080】
ステージ23に設けられる下方ノズル27には、ステージ23から下方に貫通する下方内管25が連通する。下方内管25は一方を下方ノズル27と接続し、他方を第2液体供給源604と接続する。第2液体供給源604は、第2液体を下方内管25の内部へ供給する供給源である。
【0081】
また、ステージ23には、下方内管25を取り囲むように下方外管21が設けられる。下方外管21は、下方内管25と同様にステージ23から下方に貫通し、下方内管25と下方外管21はいわゆる二重管構造をなす。下方外管21と下方内管25との間には、気体供給路26が形成され、気体供給路26はステージ23側に開口し、他方は乾燥気体供給源607と接続する。乾燥気体供給源607は、乾燥気体を気体供給路26へ供給する供給源である。
【0082】
カップ101について説明する。カップ101は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの周囲を包囲するように略円環状に設けられる。カップ101は、基板保持ユニット20および基板Wから飛散する液体などを捕集するために、中心軸A0に対し、略回転対称な形状を有する。なお、
図4において、カップ101は断面形状を示している。
【0083】
カップ101の具体的な構造・動作については、特開2006−286831号公報と同様であるため、詳細な説明は省略する。カップ101は、互いに独立して昇降可能な内構成部材、中構成部材および外構成部材で構成され、これらが重ねられた構造を有する。各部材には図示省略する上下方向駆動部が接続され、基板処理の内容に応じて各部材をそれぞれ独立に、又は複数の部材が同期して中心軸A0方向に沿って上下方向に移動可能に設けられる。
【0084】
図4は、カップ101の各部材が最も下方に位置する状態であり、ホームポジションと称する。ホームポジションはセンターロボット96が基板Wを洗浄ユニット91内に搬入出する場合などにおいて取られる位置である。
【0085】
遮断機構30について説明する。遮断機構30は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと対向する基板対向面381を下面に有する遮断部材38を備える。遮断部材38は、円板状に形成され、中心部に上方内管ノズル37および上方外管ノズル39を有する。基板対向面381は水平面内に広がり、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと平行に対向する。また、遮断部材38のうち基板対向面381の直径は基板Wの直径と同等以上の大きさに形成される。遮断部材38は、その内部が中空であって略円筒形状を有する回転軸31の下方に回転可能に水平に支持される。
【0086】
回転軸31は上方でアーム32と接続する。回転軸31および遮断部材38は、アーム32により基板保持ユニット20と対向する上方位置に支持される。遮断部材38は、回転軸31およびアーム32を介して、遮断部材38を回転する遮断部材回転機構33と接続する。遮断部材回転機構33は、図示しない中空モーターおよび中空軸で構成され、中空軸の一端が中空モーターの回転軸に連結し、他端が回転軸31の中を通して遮断部材38の上面に連結する。
【0087】
また、遮断部材回転機構33は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材回転機構33が駆動すると、遮断部材回転機構33は、遮断部材38を回転軸31の中心を通る中心軸周りに回転させる。遮断部材回転機構33は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材38を回転させるように構成されている。なお、遮断部材38は、その中心軸がステージ23の中心軸A0と略一致するように配設される。したがって、ステージ23と遮断部材38は、略同じ中心軸周りに水平に回転する。
【0088】
アーム32には、公知の駆動機構で構成された遮断部材昇降機構34が接続する。遮断部材昇降機構34は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材昇降機構34が駆動すると、遮断部材昇降機構34は、遮断部材38をステージ23に近接し、または離間する。
【0089】
すなわち、制御部70は、遮断部材昇降機構34の動作を制御して洗浄ユニット91aに対して基板Wを搬入出させる際や、基板Wに対して、後述する疎水化剤除去工程を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20の上方の離間位置に上昇させる。一方、基板Wに対して後述する疎水化剤供給工程、溶剤除去工程および洗浄工程等を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0090】
次に、遮断機構30の管路構成について説明する。遮断機構30のアーム32の上面から、回転軸31を介して、遮断部材38の中心部の開口まで連通する中空部の内部には、上方外管35が挿通されるとともに、該上方外管35に上方内管36が挿通され、いわゆる二重管構造となっている。上方外管35および上方内管36の下方端部は遮断部材38の開口に延設され、上方内管36の一方先端は上方内管ノズル37と、上方外管35の一方先端は上方外管ノズル39と、それぞれ接続する。上方内管ノズル37および上方外管ノズル39は、遮断部材38の基板対向面381の中央部に設けられる。
【0091】
上方内管36は、他方を第1液体供給源603と接続する。第1液体供給源603は、第1液体を上方内管36へ供給する供給源である。上方外管35は、他方を疎水化ガス供給源601および乾燥気体供給源602と接続する。疎水化ガス供給源601は、基板表面Wfのパターンを疎水化する疎水化剤を溶剤に混合した疎水化液の蒸気である疎水化ガスを、上方外管35へ供給する供給源である。乾燥気体供給源602は、乾燥気体を上方外管35へ供給する供給源である。疎水化ガス供給源601と乾燥気体供給源602はそれぞれ独立して上方外管35へ疎水化ガスまたは乾燥気体を供給可能に設けられる。
【0092】
次に、超音波印加液供給部40の構成を説明する。超音波印加液供給部40は、第2液体に超音波を印加した超音波印加液を基板Wに供給する。超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41と、超音波ノズル41が備える振動子42へ超音波信号を出力する超音波出力機構43と、超音波ノズル41に連通して接続する第2液体供給源605とを備える。
【0093】
超音波ノズル41は、カップ101の最外部における上部にノズル取付部材によって、超音波ノズル41の吐出口が、中心軸A0の方向を向くように固設される。
図4に示すようにカップ101をホームポジションに位置させると、超音波ノズル41は基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板裏面Wbよりも低い位置に位置決めされ、このとき、超音波ノズル41の吐出口はステージ23の外周側から基板裏面Wbの周縁部に向く。この位置決め状態で該吐出口の向く方向を「吐出方向44」と称する。この位置決め状態で第2液体供給源605から超音波ノズル41へ第2液体を圧送すると、超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給される。
【0094】
この超音波ノズル41の内部には振動子42が配置される。振動子42は、超音波ノズル41の内部に供給される第2液体に超音波振動を付与する。詳述すれば、振動子42は、
図4に示すように吐出方向44において、超音波ノズル41の吐出口の反対側に配置される。
【0095】
超音波出力機構43は、制御部70と電気的に接続し、制御部70からの制御信号にもとづいてパルス信号を振動子42へ出力する機構である。パルス信号が振動子42に入力されると、振動子42が超音波振動する。
【0096】
超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給された状態で、超音波出力機構43により振動子42を超音波振動させると、第2液体に超音波が印加され、基板裏面Wbには第2液体に超音波が印加された超音波印加液が供給される。これにより基板裏面Wbに超音波振動が伝播して基板裏面Wbを超音波洗浄することができる。
【0097】
次に、疎水化剤除去部50の構成を説明する。疎水化剤除去部50は、ノズル51と、一方をノズル51と接続するアーム52と、アーム52の他方と接続する回転軸53と、回転軸53を鉛直方向に伸びる中心軸A1周りに回転することで、アーム52およびノズル51を中心軸A1周りに回転させるアーム回転機構54と、ノズル51に溶解液を供給する供給源である溶解液供給源606と、を有する。ノズル51の中心軸A1周りの回転動作については後述する。
【0098】
次に、制御部70の内部構成について説明する。
図5は、制御部70と洗浄ユニット91aの各構成との電気的接続を模式的に図示したブロック図である。
【0099】
制御部70は、
図5に示すように洗浄ユニット91aの各部構成と電気的に接続し、動作指令により各部構成を制御する。制御部70は、上記説明のほか、供給源制御部60と電気的に接続する。供給源制御部60は、各種供給源601ないし607とそれぞれ電気的に接続し、供給源からの液体または気体の供給を各個別に制御する制御部である。供給源制御部60からの動作指令により、例えば第2液体供給源604から下方ノズル27へ第2液体が圧送され、また第2液体の圧送が停止される。同様に、供給源制御部60からの動作指令により、例えば溶解液供給源606からノズル51へ溶解液が圧送され、また溶解液の圧送が停止される。制御部70は、供給源制御部60の指令出力を総括的に制御する。
【0100】
図6は、制御部70の内部構成を示す模式図である。制御部70は、演算処理部71およびメモリ72を有するコンピュータにより構成される。演算処理部71としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、メモリ72は、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、基板Wに応じた基板処理条件が、プログラム73(レシピとも呼ばれる)として予め格納されおり、CPUがその内容をRAMに読み出し、RAMに読み出された基板処理プログラムの内容に従ってCPUが基板洗浄装置9の各部を制御する。なお、制御部70にはプログラム73の作成・変更や、複数のプログラム73の中から所望のものを選択するために用いる操作部971(
図1参照)が接続されている。
【0101】
次に、第1液体供給源603、第2液体供給源604,605へそれぞれ第1、第2液体としてのDIW(処理液)を供給する処理液供給部110について説明する。
【0102】
図7は、処理液供給部110の構成を模式的に示す図である。第1実施形態において、第1液体と第2液体は同一の処理液であるDIWが用いられるため、これら供給源603,604,605には同一の処理液供給部110が接続される。
【0103】
処理液供給部110は、処理液L2(第1実施形態では、DIW)を貯留する貯留部111と、貯留部111と一方を接続する配管113および配管114と、配管113の他方と接続し窒素ガスを配管113に供給する供給源である窒素ガス供給源620と、配管113に介挿され、窒素ガス供給源620から窒素ガスを貯留部111の方向へ圧送するポンプ112と、を有する。
【0104】
また、処理液供給部110は、配管114の分岐する他端とそれぞれ接続する配管115、配管116および配管117と、配管115に介挿されるバルブV1と、配管116に介挿されるバルブV2と、配管117に介挿されるバルブV3と、をさらに有する。
【0105】
配管115は配管114と反対側の一端を第1液体供給源603と接続し、配管116は配管114と反対側の一端を第2液体供給源604と接続し、配管117は配管114と反対側の一端を第2液体供給源605と接続する。バルブV1ないしV3は、それぞれ配管115ないし117の連通をその開閉により制御可能に設けられる。
【0106】
ポンプ112、バルブV1ないしV3は、それぞれ供給源制御部60と電気的に接続する。供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV1を開成すると、処理液L2が配管114、配管115を介して第1液体供給源603へ供給され、そこから上方内管36を介して上方内管ノズル37から第1液体としての処理液L2が吐出される。
【0107】
同様に、供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV2を開成すると、処理液L2が配管114、配管116を介して第2液体供給源604へ供給され、そこから下方内管25を介して下方ノズル27から第2液体としての処理液L2が吐出される。
【0108】
同様に、供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV3を開成すると、処理液L2が配管114、配管117を介して第2液体供給源605へ供給され、そこから超音波ノズル41を介してその吐出口から第2液体としての処理液L2が吐出される。
【0109】
このように、第1実施形態における処理液供給部110は、窒素ガスの圧送で処理液L2を洗浄ユニット91aの各部へ供給する構成であるため、処理液L2を貯留部111内に長時間放置すると、処理液L2における、貯留部の雰囲気である窒素ガスにたいする溶存ガス濃度は飽和状態となる。より具体的には、大気圧環境下における窒素ガスのDIWへの飽和溶存ガス濃度である18ppmと同程度か、それ以上の濃度となる。実際には窒素ガスが圧送されることで大気圧よりも高圧環境に処理液L2が曝されることにより、大気圧環境下における窒素ガスのDIWへの飽和溶存ガス濃度よりも高濃度の窒素ガスを溶存し得るからである。
【0110】
次に、疎水化ガス供給源601へ疎水化ガスを供給する疎水化ガス供給部120について説明する。
【0111】
図8は、疎水化ガス供給部120の構成を模式的に示す図である。疎水化ガス供給部120は、疎水化剤と溶剤を混合した疎水化液L3をいわゆるバブリング方式により蒸気化するものである。なお、本願発明の実施においては、疎水化ガスを得るための蒸気化の方法はバブリング方式に限られず、加熱方式等、各種の蒸気化方式を用いることができる。
【0112】
疎水化ガス供給部120は、疎水化液L3(第1実施形態では、シランカップリング剤とIPAの混合液)を貯留する貯留部121と、貯留部121と一方を接続する配管123および配管127と、配管127に介挿されるバルブV4と、配管123の他方と接続し窒素ガスを配管123に供給する供給源である窒素ガス供給源621と、配管123に介挿され、窒素ガス供給源621から窒素ガスを貯留部121の方向へ圧送するポンプ122と、プロペラ126と、プロペラ126を回転させるプロペラ回転機構124と、プロペラ126とプロペラ回転機構124とを接続する回転軸125と、を有する。
【0113】
配管127は、貯留部121と反対側の一端を疎水化ガス供給源601と接続し、バルブV4は、配管127の連通をその開閉により制御可能に設けられる。疎水化液L3は貯留部121へ、貯留部121の容積よりも小さい所定量を超えないように貯留される。すなわち、貯留部121内の所定の液面ラインを超えないように貯留される。配管127において、貯留部121と接続する一端は、貯留部121の該液面ラインよりも上部にて開口する。すなわち、疎水化液L3が貯留部121に供給されても該開口は疎水化液L3に浸漬しない。
【0114】
一方、配管123において、貯留部121と接続する一端は、貯留部121の該液面ラインよりも下部にて開口する。すなわち、疎水化液L3が貯留部121の該液面ラインまで供給されて貯留されている場合に、該開口は疎水化液L3に浸漬する。
【0115】
同様に、プロペラ126も貯留部121の該液面ラインよりも下部に設けられる。特に、プロペラ126は貯留部121のより下方に位置することが、疎水化液L3を良好に撹拌する観点から好適である。
【0116】
ポンプ122、バルブV4およびプロペラ回転機構124は、それぞれ供給源制御部60と電気的に接続する。疎水化液L3が上記の液面ラインまで貯留されている状態で、供給源制御部60の動作指令により、ポンプ122が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部121へ圧送されると、配管123の疎水化液L3に浸漬した開口から窒素ガスの気泡が生じる。気泡が疎水化液L3の液面に至るまでに気泡中へ疎水化液L3の蒸気、すなわち疎水化ガスG1が供給される。
【0117】
この状態で供給源制御部60の動作指令により、バルブV4を開成すると、疎水化ガスG1が配管127を介して疎水化ガス供給源601に供給され、そこから上方外管35の内部で、かつ上方内管36の外部を通って上方外管ノズル39から疎水化ガスG1が吐出される。
【0118】
供給源制御部60の動作指令により、プロペラ回転機構124が駆動すると、プロペラ回転機構124は回転軸125を介してプロペラ126を回転軸125回りに回転させる。これにより、貯留部121に貯留される疎水化液L3を撹拌することができる。なお、本願発明の実施においては、プロペラ126による撹拌は必須の構成ではなく、その他の各種撹拌方式を用いてもよい。
【0119】
次に、疎水化剤除去部50におけるノズル51の動作について、
図9を用いて説明する。
【0120】
図9は、中心軸A1周りにおけるノズル51の回転動作と、ノズル51と基板保持ユニット20に保持された基板Wとの位置関係を模式的に示す図である。
【0121】
制御部70からの動作指令にもとづき、アーム回転機構54が回転軸53を中心軸A1周りに回転させると、これに伴いアーム52が揺動し、ノズル51は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板表面Wfに対向した状態で、移動軌跡T1に沿って移動する。移動軌跡T1は、中心位置P11から位置P12を通って周縁位置P13に向かう軌跡である。
【0122】
ここで、中心位置P11は、基板Wの上方で、かつ中心軸A0の略上に位置し、周縁位置P13は基板Wの周縁部の外周端の上方に位置する。すなわち、アーム回転機構54は、ノズル51を基板表面Wfに平行な方向に、基板Wに対して相対移動させる。また、ノズル51は、移動軌跡T1の延長線上であって基板Wと対向する位置から側方に退避した退避位置P14にも移動可能となっている。
【0123】
これに加え、基板Wはステージ23の回転に伴って回転されるため、ステージ23をステージ回転機構22により回転させた状態で、アーム52をアーム回転機構54により揺動させることで、ノズル51を基板Wの全面に順次対向させる、すなわち基板Wの全面をノズル51がスキャンすることが可能となる。
【0124】
<1−3.基板処理の工程>
次に、上記のように構成された基板洗浄装置9における基板処理動作について説明する。ここで、基板表面Wfには、凹凸のパターンが前工程により形成されている。パターンは、凸部および凹部を備えている。凸部は、例えば100〜200nmの範囲の高さであり、10〜20nmの範囲の幅である。また、隣接する凸部間の距離(凹部の幅)は、例えば10〜20nmの範囲である。
【0125】
以下、
図4を適宜参照しながら、
図10を用いて基板処理の工程を説明する。
図10は第1実施形態における基板洗浄装置9の全体の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明において特に断らない限り、遮断機構30は、遮断部材38が対向位置にある場合、基板保持ユニット20のステージ回転機構22がステージ23を回転する方向に略同じ回転数で遮断部材38を回転するものとする。
【0126】
まず、所定の基板Wに応じた基板処理用のプログラム73が操作部971(
図1参照)で選択され、実行指示される。その後、基板Wを洗浄ユニット91aに搬入する準備として、制御部70が動作指令を行い以下の動作をする。
【0127】
すなわち、制御部70の動作指令によって、遮断部材38の回転を停止し、ステージ23の回転を停止する。また、遮断部材38を離間位置へ移動すると共に、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ210をホームポジションに位置決めする。ステージ23が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、各チャック24を開状態とする。また、ノズル51が退避位置P14に位置決めされる。
【0128】
基板Wを洗浄ユニット91aに搬入する準備が完了した後、未処理の基板Wを洗浄ユニット91aへ搬入する基板搬入工程(ステップS101)を行う。すなわち、インデクサロボット931がオープナー94上のFOUP949の所定の位置にある基板Wを下側のハンド933で取り出し、シャトル95の下側のハンド951に載置する。その後、シャトル95の下側のハンド951をセンターロボット96の側に移動し、センターロボット96がシャトル95の下側のハンド951上の基板Wを、下側のハンド961で取り上げる。
【0129】
その後、洗浄ユニット91aのシャッター911が開かれ、センターロボット96が下側のハンド961を洗浄ユニット91aの中に伸ばし、基板Wを基板保持ユニット20のチャック24の支持ピンの上に載置する。基板Wの洗浄ユニット91aへの搬入が終了すると、センターロボット96が下側のハンド961を縮めて洗浄ユニット91aの外に出る。その後、シャッター911が閉じる。
【0130】
続いて、洗浄ユニット91aに搬入された基板Wを保持し、回転する基板保持・回転工程(ステップS102)が実行される。すなわち、未処理の基板Wが洗浄ユニット91aの内部に搬入されると、チャック24の支持ピンの上に載置される。そして、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、チャック24を閉状態とする(基板保持工程)。
【0131】
未処理の基板Wが基板保持ユニット20に保持された後、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、ステージ23の回転を開始する(基板回転工程)。そして、続く疎水化剤供給工程から基板乾燥工程までの間、回転を維持する。
【0132】
ここで、最初の基板Wの回転速度は、基板表面Wfに供給される疎水化ガスが基板表面Wfの全面に拡散可能となるように、100〜1000rpmとすることが好ましい。本実施形態では、疎水化剤供給工程における基板Wの回転速度を200rpmとして説明する。
【0133】
次に、基板表面Wfのパターンを疎水化する疎水化工程の一部工程としての、疎水化剤供給工程(ステップS103)を実行する。
図11は、疎水化剤供給工程の様子を模式的に示す図である。
図11において、左側図は洗浄ユニット91aにおける各構成の様子を示し、右側図は基板表面Wfにおけるパターン(以下、適宜パターンの凸部を「パターンWp」と称する)領域を拡大した様子を示す。
【0134】
疎水化剤供給工程が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34に動作指令を行い、遮断部材38を、基板対向面381が基板表面Wfと近接する近接位置に配置する。これら動作の前後いずれかにおいて、制御部70が遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を回転させる。
【0135】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、疎水化ガス供給源601から疎水化ガスG1が上方外管ノズル39から基板表面Wfへ供給される。疎水化ガスG1はステージ23の回転に伴う基板W回転、および遮断部材38の回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給され、基板表面Wfに形成されるパターンWpを疎水化する。
【0136】
図11右側図に示すように、供給された疎水化ガスG1は基板表面Wfで凝集して疎水化液801となり、隣接するパターンWp間にも充填されることでパターンWpの表面を含む基板表面Wfを濡れ性が低い疎水化膜802で被膜する。
【0137】
遮断部材38を近接させた状態で疎水化ガスG1を供給することで、基板対向面381と基板表面Wfとの間に形成される微小な空間へ疎水化ガスG1を供給して基板表面Wfの全面に疎水化ガスG1を行渡らせることができ、少ない薬液量で疎水化を行うことができる。また、疎水化するパターンWpは比較的微細であるため、疎水化ガスG1を供給し、その凝集により基板表面Wfに形成される微小量の疎水化液801でも、十分にパターンWpの間を充填することが可能であり、少ない薬液量で疎水化を行うには好適である。
【0138】
疎水化膜802は、シランカップリング剤が基板表面Wfと反応または接触して形成される膜であり、シランカップリング剤の疎水基がパターンWpの外方向に向かう状態でパターンWpの表面を被膜することで、パターンWp表面が疎水化される。なお、該疎水基による疎水化を高活性化させるために、加熱等の処理を別途実行してもよい。
【0139】
次に、基板表面Wfのパターンを疎水化する疎水化工程の一部工程としての、溶剤除去工程(ステップS104)を実行する。
図12は、溶剤除去工程の様子を模式的に示す図である。
図12において、左側図は洗浄ユニット91aにおける各構成の様子を示し、右側図は基板表面Wfにおけるパターン領域を拡大した様子を示す。
【0140】
疎水化剤供給工程が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に維持し、遮断部材38の回転を維持する。
【0141】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。溶剤除去工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfの疎水化液801が基板表面Wfの周縁部方向に遠心力によって振り切られるように、500〜1000rpmとすることが好ましい。本実施形態では、溶剤除去工程における基板Wの回転速度を700rpmとして説明する。
【0142】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源602から乾燥気体G2が上方外管ノズル39から基板表面Wfへ供給される。乾燥気体G2はステージ23の回転に伴う基板W回転、および遮断部材38の回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給され、基板表面Wfに供給された疎水化液801に含まれる溶剤を乾燥除去する。
【0143】
溶剤除去工程では、疎水化液801が基板Wの回転に伴い基板Wの周縁部方向に遠心力によって振り切られることで除去されるとともに、乾燥気体G2の供給によって疎水化液801に含まれる溶剤が乾燥除去され、パターンWpの表面を含む基板表面Wfには疎水化膜802として表面に接触した疎水化剤(シランカップリング剤)が残留する。
【0144】
これにより、疎水化膜802を残して余分な疎水化液801および溶剤が除去され、隣接するパターンWpの間には気体(乾燥気体および洗浄ユニット内部の雰囲気)が存在する状態となる。
【0145】
次に、基板表面Wfに第1液体の液膜を形成した状態で、基板裏面Wbを超音波印加液により洗浄する洗浄工程(ステップS105)を実行する。
図13は、洗浄工程のうち、基板表面Wfに第1液体の液膜を形成した様子を模式的に示す図である。
図13において、左側図は洗浄ユニット91aにおける各構成の様子を示し、右側図は基板表面Wfにおけるパターン領域を拡大した様子を示す。
【0146】
洗浄工程が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に維持し、遮断部材38の回転を維持する。
【0147】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。洗浄工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfに供給する第1液体が基板表面Wfで液膜を形成できるように、100〜700rpmとすることが好ましい。本実施形態では、洗浄工程における基板Wの回転速度を500rpmとして説明する。
【0148】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体供給源603から第1液体L1が上方内管ノズル37を介して基板表面Wfへ供給される。第1液体L1はステージ23の回転に伴う基板W回転、および遮断部材38の回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給され、基板表面Wfには第1液体の液膜が形成される(基板表面液膜形成工程)。なお、第1実施形態において、処理液L2(
図7参照)と第1液体L1は同一の組成を有する液体である。
【0149】
ここで、
図13右側図に示すように、基板表面Wfに供給された第1液体803の液膜はパターンWpの高さよりも十分厚く形成される。ここで、疎水化剤供給工程により、パターンWpの表面には疎水化膜802が形成されており、さらに溶剤除去工程により、隣接するパターンWpの間には気体804が存在する。疎水化膜802によって、第1液体803のパターンWpに対する接触角が比較的大きく(90°に近く)なり、隣接するパターンWpの間へ第1液体803が侵入することが防止される。これにより、隣接するパターンWpの間には、気体804が残留する。
【0150】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源604から第2液体が下方ノズル27を介して基板裏面Wbの中央部へ供給し、基板Wの回転による遠心力で基板Wの周縁部へ広がることで基板裏面Wbに第2液体の液膜を形成する。
【0151】
そして、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源605から第2液体を超音波ノズル41へ供給し、超音波出力機構43が振動子42を振動させて超音波ノズル41の内部に導入された第2液体に超音波を印加した状態で、超音波ノズル41の吐出口から吐出方向44に沿って基板裏面Wbへ超音波印加液を供給する。これにより、超音波振動が第2液体供給源604から供給された第2液体にも伝搬し、基板裏面Wbを良好に洗浄することができる(超音波洗浄工程)。
【0152】
第2液体は、
図7により説明したように溶存ガス濃度が飽和状態の液体であるため、超音波の印加によって生じる気泡(キャビテーション)の生成および崩壊のエネルギー(キャビテーションエネルギー)が、基板裏面Wbに付着したパーティクル等の汚染物質により強く作用する。これにより、基板裏面Wbに付着したパーティクルを除去し、基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心部から基板Wの周縁部へ広がる第2液体にパーティクルが混入して共に基板Wの周縁部外側へ振り切られ、除去される。
【0153】
ここで、基板表面Wfのパターン倒壊防止および汚染防止の効果について説明する。基板裏面Wbに印加される超音波振動は基板Wを介して基板表面Wf側にも伝搬し、第1液体中でもキャビテーションの生成および崩壊が生じる。仮に、パターンWp同士の間に液体が存在する(例えば、パターンWp間に第1液体が充填される)状態である場合、パターンWpの表面、特にパターンWpの側面部分が接液状態であることに起因してパターンWpにもキャビテーションエネルギーが作用し、パターンWpが折れる等、ダメージが発生するおそれがある。
【0154】
これに対し、第1実施形態では、
図13右側図に示すように、パターンWp同士の間には気体804が存在する状態で、基板裏面Wbの超音波による洗浄が実行される。すなわち、パターンWpの表面、少なくとも隣接するパターンWp間の側面部分は接液状態に無いため、強度の弱い該側面部分にキャビテーションエネルギーが作用することを防止でき、基板表面Wfのパターン倒壊を防止できる効果がある。
【0155】
また、単にパターンWp間に気体が存在する状態とするのであれば、基板表面Wfに第1液体等の液体を供給しない状態で、基板裏面Wbの超音波洗浄を行えばよいが、この場合、基板裏面Wbに供給する超音波印加液等の液体がチャック24等の各構成に当って跳ね返り、基板表面Wfに付着することで基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。また、液体の跳ね返り以外にも、雰囲気中に浮遊して存在するパーティクル等の汚染物質が液膜に覆われずに露わになった基板表面Wfに付着することで、基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。
【0156】
これに対し、第1実施形態では、
図13右側図に示すように、パターンWpの上方や、パターンWpが存在しない基板表面Wfを第1液体803の液膜が覆い、さらに第1液体803が第1液体供給源603から基板裏面Wbを洗浄する間、継続して供給されることで、常に基板表面Wfを清浄な状態に保つことができ、基板裏面Wbからの液体の跳ね返りや、雰囲気中のパーティクル付着に起因する基板表面Wfのパターン汚染を防止できる効果がある。
【0157】
洗浄工程により、基板裏面Wbの超音波洗浄がなされると、次に基板表面Wfから疎水化膜802として付着した疎水化剤を除去する疎水化剤除去工程(S106)が実行される。
【0158】
疎水化剤除去工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動させ、遮断部材38の回転を停止する。
【0159】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。疎水化剤除去工程における基板Wの回転速度は、溶解液を吐出するノズル51が基板表面Wfの全面をスキャンできるように、ノズル51のスキャン速度やスキャン回数に応じて設定することが好ましい。
【0160】
次に、制御部70がアーム回転機構54に動作指令を行い、ノズル51を退避位置P14から中心位置P11に位置決めする(
図9参照)。
【0161】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、溶解液供給源606から溶解液がノズル51を介して基板表面Wfへ供給される。溶解液はステージ23の回転に伴う基板W回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給される。これにより、基板表面Wfの疎水化膜802を構成する疎水化剤が溶解液へ溶解し、基板Wの回転に伴って周縁部外側へ溶解液とともに振り切られることで基板表面Wfから除去される。そして、隣接するパターンWp間には、疎水化膜802に代えて溶解液が充填される。
【0162】
また、制御部70がアーム回転機構54に動作指令を行い、ノズル51を中心位置P11から周縁位置P13の間で1回から複数回の所定回数だけ往復移動する。これにより、基板表面Wfの全面にまんべんなく溶解液を供給することができ、隣接するパターンWp間を含む基板表面Wfの疎水化膜802を確実に除去することができる。
【0163】
なお、疎水化剤除去工程の間、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源604から下方ノズル27を介して基板裏面Wbへ第2液体の供給を行う(または、疎水化剤除去工程の直前工程である洗浄工程中から第2液体供給源604からの第2液体の供給を維持する)構成としても良い。これにより、疎水化剤除去工程の間、基板裏面Wbの汚染を防止することができる。
【0164】
疎水化剤除去工程により、基板表面Wfの疎水化膜802が除去されると、次に基板表面Wfおよび基板裏面Wbを乾燥する基板乾燥工程(S107)が実行される。
【0165】
基板乾燥工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に移動させ、遮断部材38の回転を開始する。
【0166】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。基板乾燥工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfにおける溶解液を基板Wの回転による遠心力で振り切ることができるように、500〜1000rpmに設定することが好ましい。
【0167】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源602から乾燥気体が上方外管ノズル39を介して基板表面Wfへ供給される。また、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源607から乾燥気体が気体供給路26を介してステージ23の開口から基板裏面Wbへ供給される。
【0168】
溶解液はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板表面Wfから除去される。また、溶解液は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板表面Wfから除去される。
【0169】
ここで、第1実施形態のように基板表面Wfに微細なパターンが形成されている場合には、パターン間に充填された液体を乾燥する際に当該液体の表面張力に起因してパターンに応力が作用し、隣接するパターン同士が当該液体の乾燥に伴って引き寄せられ、パターンが倒壊するおそれがある。
【0170】
第1実施形態における溶解液は、IPAであり、DIW等の純水と比較して低い表面張力を有する液体である。したがって、基板表面Wfに形成されたパターンが溶解液の乾燥に伴って受ける応力も純水と比べ小さくなり、パターン倒壊を防止しつつ良好に基板を乾燥することができる。すなわち、第1実施形態において、溶解液は、疎水化膜802を除去するための除去液として機能し、かつ基板表面Wfの乾燥時のパターン倒壊を防止するためのリンス液としても機能する。
【0171】
また、基板裏面Wbに付着した第2液体も、基板乾燥工程により除去される。すなわち、第2液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板裏面Wbから除去される。また、第2液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板裏面Wbから除去される。
【0172】
基板乾燥工程により、基板Wに付着した溶解液および第2液体が除去されると、次に、基板Wを洗浄ユニット91aから搬出する基板搬出工程を行う(ステップS108)。
【0173】
基板搬出工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動させ、遮断部材38の回転を停止する。
【0174】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、ステージの回転を停止し、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ101はホームポジションに位置決めする。そして、チャック24を開状態として基板Wを支持ピンの上に載置する。
【0175】
その後、シャッター911を開放し、センターロボット96が上側のハンド961を洗浄ユニット91aの中に伸ばし、基板保持ユニット20からハンド961へ基板Wが受け渡される。ハンド961により基板Wを保持した後、基板Wを洗浄ユニット91aの外に搬出し、シャトル95の上側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は上側のハンド951をインデクサユニット93の側に移動する。
【0176】
そして、インデクサロボット931が上側のハンド933でシャトル95の上側のハンド951に保持されている基板Wを取り出し、FOUP949の所定の位置に搬入し、一連の処理が終了する。
【0177】
以上のように、第1実施形態では、パターンを有する基板表面Wfに疎水化剤(シランカップリング剤)と溶剤(IPA)を混合した疎水化液の蒸気である疎水化ガスを供給してパターン表面を疎水化した後(本発明の「疎水化剤供給工程」に相当)、乾燥気体を供給して基板表面Wfの溶剤を除去して隣接するパターン間に気体を存在させ(本発明の「溶剤除去工程」に相当)、その後、基板表面Wfに第1液体(DIW)を供給した状態で(本発明の「一方主面液膜形成工程」に相当)基板裏面Wbに超音波印加液(第2液体としてのDIW+超音波)を供給することで基板裏面Wbを超音波洗浄する(本発明の「洗浄工程」に相当)。
【0178】
また、以上のように、第1実施形態に係る基板洗浄装置では、疎水化ガスを供給する疎水化ガス供給源601および上方外管ノズル39を含む遮断機構30が、本発明の「疎水化剤供給部(疎水化部)」として機能する。これら構成が疎水化剤供給部として機能するとき、上方外管ノズル39は「第1ノズル」として機能する。
【0179】
また、基板表面Wf(一方主面)に第1液体を供給する第1液体供給源603および上方内管ノズル37を含む遮断機構30と、基板Wを回転する基板保持ユニット20が協働して本発明の「一方主面液膜形成部」として機能する。これら構成が一方主面液膜形成部として機能するとき、上方内管ノズル37は「第2ノズル」として機能する。
【0180】
また、乾燥気体を供給する乾燥気体供給源602および上方外管ノズル39を含む遮断機構30が、「乾燥気体供給部」として機能し、ステージ23、チャック24およびステージ回転機構22が、「基板回転部」として機能する。これら「乾燥気体供給部」および「基板回転部」が、本発明の「溶剤除去部」に相当する。また、ステージ23およびチャック24を含む基板保持ユニット20は、本発明の「基板保持部」としても機能する。
【0181】
このような基板洗浄装置および基板洗浄方法により、基板裏面Wbの超音波洗浄中における基板表面Wfのパターン倒壊およびパターン汚染を防止することができる。また、基板表面Wfのパターン汚染防止に固体膜や凍結膜の形成が不要であり、比較的コストの高い純水以外の薬液の消費量を低減することができ、冷却プロセスもなく常温環境下で基板処理が行える。このことから、本願発明は、装置コストおよび基板処理コストを削減できる効果もある。
【0182】
<2.第2実施形態>
図14を用いて、本願の第2実施形態に係る基板洗浄装置9および当該装置による基板洗浄方法について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、洗浄ユニット91において、疎水化剤が遮断機構30ではなく疎水化剤除去部50のノズル51から供給される構成であり、その他の構成は同一であるため、同一構成については第1実施形態での説明と同一符号を附して説明を省略する。なお、他の実施形態と区別するため第2実施形態における洗浄ユニット91を以下「洗浄ユニット91b」と称する。
【0183】
図14は、第2実施形態に係る洗浄ユニット91bの構成を模式的に示す図である。疎水化剤除去部50は、第1実施形態と同様に、ノズル51、アーム52、回転軸53およびアーム回転機構54を有する。そして、ノズル51には溶解液供給源606が接続する。溶解液供給源606は、供給源制御部60と電気的に接続し、供給源制御部60からの動作指令にもとづき、ノズル51へ溶解液を供給する供給源である。
【0184】
第2実施形態では、これに加えて、ノズル51には疎水化液供給源608が接続する。疎水化液供給源608は、供給源制御部60と電気的に接続し、供給源制御部60からの動作指令にもとづき、ノズル51へ疎水化剤と溶剤が混合した疎水化液を供給する供給源である。供給源制御部60は、溶解液供給源606および疎水化液供給源608からのそれぞれの液体供給を独立して制御可能である。すなわち、ノズル51は溶解液または疎水化液を吐出する。
【0185】
すなわち、第2実施形態において、疎水化剤除去部50は、溶解液を供給することで基板表面Wfから疎水化剤を除去する「疎水化剤除去部」として機能する一方、基板表面Wfへ疎水化液を供給することで、疎水化剤を供給する「疎水化剤供給部」としても機能する。
【0186】
次に、第2実施形態における基板洗浄装置の動作について説明する。
図10のフローチャートを参照する。
【0187】
第2実施形態において、基板洗浄動作が開始されると、基板搬入工程(S101)から基板保持・回転工程(S102)までは、第1実施形態と同一の処理が実行される。
【0188】
続いて、疎水化剤供給工程(S103)が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動し、遮断部材38の回転を停止する。
【0189】
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。疎水化剤供給工程における基板Wの回転速度は、疎水化液を吐出するノズル51が基板表面Wfの全面をスキャンできるように、ノズル51のスキャン速度やスキャン回数に応じて設定することが好ましい。
【0190】
次に、制御部70がアーム回転機構54に動作指令を行い、ノズル51を退避位置P14から中心位置P11に位置決めする(
図9参照)。
【0191】
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、疎水化液供給源608から疎水化液がノズル51を介して基板表面Wfへ供給される。疎水化液はステージ23の回転に伴う基板W回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給される。これにより、基板表面WfのパターンWpの表面に疎水化膜802(
図11右側図参照)が形成される。
【0192】
また、制御部70がアーム回転機構54に動作指令を行い、ノズル51を中心位置P11から周縁位置P13の間で1回から複数回の所定回数だけ往復移動する。これにより、基板表面Wfの全面にまんべんなく疎水化液を供給することができ、隣接するパターンWp間を含む基板表面Wfに疎水化膜802を確実に形成することができる。
【0193】
続いて、溶剤除去工程(S104)が開始されると、第1実施形態と同様に乾燥気体供給源602(
図14参照)から上方外管ノズル39を介して基板表面Wfに乾燥気体が供給され、基板Wの回転による疎水化液の振り切りと乾燥気体への溶剤の蒸気化によって、基板表面Wfから溶剤を除去し、パターンWp間に気体を存在させる。そして、洗浄工程以降も第1実施形態と同様の処理を実行し、基板表面Wfを第1液体の液膜で覆った状態で基板裏面Wbの超音波洗浄を行う。
【0194】
第2実施形態では、疎水化液がアーム回転機構54によって基板Wに対し相対移動可能なノズル51から供給されるため、基板表面Wfの全面に不足なく疎水化液を供給することができる。これにより、基板表面WfにおけるパターンWpの一部が疎水化されずにパターン倒壊が生じることを確実に防止することができる。
【0195】
<3.第3実施形態>
図15を用いて、本願の第3実施形態に係る基板洗浄装置9および当該装置による基板洗浄方法について説明する。
【0196】
図15は、第3実施形態に係る洗浄ユニット91(以下、「洗浄ユニット91c」と称する)の構成を模式的に示す図である。第3実施形態に係る基板洗浄装置9の洗浄ユニット91cは、第1実施形態と同様の遮断機構30および基板保持ユニット20を備える。第1実施形態と第3実施形態が相違する点は、これら機構へ接続する供給源の配置と、超音波印加液供給部40の構成である。
【0197】
第3実施形態において、遮断機構30の上方内管ノズル37には、リンス液を供給する供給源であるリンス液供給源609が上方内管36を介して接続する。リンス液としては、DIW等の純水、IPA等、基板Wに対する諸々のリンス液を用いてよい。第3実施形態では、IPAよりも比較的コストの低いDIWをリンス液として用いる。また、遮断機構30の上方外管ノズル39には、第1実施形態と同様の乾燥気体供給源602が接続する。
【0198】
基板保持ユニット20における下方ノズル27には、疎水化ガスを供給する供給源である疎水化ガス供給源610、第1液体を供給する供給源である第1液体供給源611および溶解液を供給する供給源である溶解液供給源612が、下方内管25を介して接続する。これら疎水化ガス供給源610、第1液体供給源611および溶解液供給源612は、それぞれ供給源制御部60と電気的に接続し、供給源制御部60の動作指令にもとづき、それぞれ独立して各液体を下方ノズル27から吐出することができる。また、気体供給路26には、第1実施形態と同様の乾燥気体供給源607が接続する。
【0199】
第3実施形態において、基板保持ユニット20は、基板Wをチャック24により保持する際、基板裏面Wbを上方(Z方向)に向け、基板表面Wfをステージ23に対向させた状態で保持する。すなわち、パターンが形成された基板表面Wfがステージ23側を向いた状態で、基板Wがチャック24により水平姿勢に保持される。
【0200】
次に、第3実施形態における超音波印加液供給部40の構成について説明する。
図15に示すように、超音波印加液供給部40は、振動子42を有する超音波ノズル41、超音波出力機構43、超音波ノズル41へ第2液体を供給する供給源である第2液体供給源605を有する。また、超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41を支持するアーム45、アーム45と接続する回転軸46、回転軸46を鉛直方向に伸びる中心軸A2周りに回転させるアーム回転機構47とをさらに有する。
【0201】
アーム回転機構47は、制御部70と電気的に接続し、制御部70の動作指令にもとづき、回転軸46を中心軸A2周りに回転させる。回転軸46の回転に伴い、回転軸46からXY水平面内の一方向に伸びるアーム45がXY水平面内で中心軸A2周りに回動し、これとともに超音波ノズル41も回動する。
【0202】
また、超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41とアーム45の間に、超音波ノズル41の基板Wに対する角度を調整可能な方向調整部(図示省略)をさらに備える。
【0203】
次に、超音波印加液供給部40における超音波ノズル41の動作について、
図16を用いて説明する。
【0204】
図16は、中心軸A2周りにおける超音波ノズル41の回転動作と、超音波ノズル41と基板保持ユニット20に保持された基板Wとの位置関係を模式的に示す図である。
【0205】
制御部70からの動作指令にもとづき、アーム回転機構47が回転軸46を中心軸A2周りに回転させると、これに伴いアーム45が揺動し、超音波ノズル41は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板裏面Wbに対向した状態で、移動軌跡T2に沿って移動する。移動軌跡T2は、中心位置P21から位置P22を通って周縁位置P23に向かう軌跡である。
【0206】
ここで、中心位置P21は、基板Wの上方で、かつ中心軸A0の略上に位置し、周縁位置P13は基板Wの周縁部の外周端の上方に位置する。すなわち、アーム回転機構47は、超音波ノズル41を基板裏面Wbに平行な方向に、基板Wに対して相対移動させる。また、超音波ノズル41は、移動軌跡T2の延長線上であって基板Wと対向する位置から側方に退避した退避位置P24にも移動可能となっている。
【0207】
これに加え、基板Wはステージ23の回転に伴って回転されるため、ステージ23をステージ回転機構22により回転させた状態で、アーム45をアーム回転機構47により揺動させることで、超音波ノズル41を基板Wの全面に順次対向させる、すなわち基板Wの全面を超音波ノズル41がスキャンすることが可能となる。
【0208】
なお、中心位置P21は、超音波ノズル41から吐出される第2液体または超音波印加液が基板Wの中央部に着液する位置であればよく、後述する入射角度θ1に応じて、適宜設定されるものであるため、中心軸A0の略上に位置する構成は必須ではない。
【0209】
超音波ノズル41は、基板保持ユニット20により基板裏面Wbを上方に向けて保持される基板Wと対向し、超音波ノズル41の吐出口と基板裏面Wbとは、角度θ1の関係にある。ここで、θ1は超音波ノズル41から吐出される超音波印加液の基板裏面Wbへの入射角度であり、75度以上90度以下であることが好適である。
【0210】
図17は、基板Wの一方主面から超音波印加液を供給した際の、他方主面に伝搬する超音波振動の大きさ(音圧)と、入射角度θ1との関係の実測値を示す図である。入射角度θ1の好適な値について、
図17を用いて説明する。
【0211】
図17に示す測定では、基板Wの一方主面から超音波出力20Wの超音波印加液を流量1.5L/mにて供給し、基板Wの他方主面にハイドロフォンを配置して、当該ハイドロフォンにて音圧を測定した。これにより、基板W自体に与えられる音圧を測定することができる。測定された音圧は、入射角度θ1に対して明瞭な依存性が認められた。より具体的には、入射角度θ1=82で音圧が極大化した。
【0212】
超音波洗浄では、基板Wに与えられる音圧が大きいほど、より強い洗浄力が得られるため、基板Wの主面を良好に洗浄するためには、
図17のグラフから入射角度θ1については75度ないし90度の範囲に設定するのが望ましく、82度に設定するのがさらに好ましい。
【0213】
以上から、第3実施形態では、入射角度θ1を82度としている。しかしながら、最適な入射角度θ1は、超音波ノズル41の形状や超音波振動出力等の各種条件により、その都度変化するとされるため、本発明の実施に関しては、入射角度θ1は82度に限られず、
図17のように音圧が最大となる入射角度θ1を装置ごとに測定することにより、装置ごとに最適な入射角度θ1が選択されてよい。このため、超音波ノズル41とアーム45の間には、45度から90度まで入射角度θ1を設定可能な方向調整部(図示省略)が設けられる。
【0214】
次に、第3実施形態における基板洗浄装置の動作について説明する。
図10のフローチャートを参照する。
【0215】
第3実施形態において、基板洗浄動作が開始されると、第1実施形態と基板Wの表裏が逆となった状態で(すなわち、パターンが形成された基板表面Wfを下方に向けた状態で)基板搬入工程(S101)および基板保持・回転工程(S102)が実行される。
【0216】
基板保持・回転工程において、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、基板の回転を開始し、続く疎水化剤供給工程までその回転を維持する。疎水化剤供給工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfに供給される疎水化ガスが基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心から周縁部に亘って広げることができるように、100〜1000rpmに設定することが好ましい。
【0217】
続いて、疎水化剤供給工程(S103)が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に維持し、遮断部材38の停止を維持する。
【0218】
次に、制御部70の動作指令にもとづき、疎水化ガス供給源610から疎水化ガスが下方ノズル27から基板表面Wfへ供給される。疎水化ガスは、基板Wの回転に伴って、下方ノズル27が位置する基板Wの中央部から基板Wの周縁部へ広がり、基板表面Wfの全体に供給される。そして、第1実施形態と同様にパターンWpの表面には疎水化膜802が形成される(
図11右側図参照)。
【0219】
パターンWp表面が疎水化膜802で被膜された後、溶剤除去工程(S104)を開始する。まず、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体が振りきれるように、ステージ回転機構22が基板Wの回転速度を500〜1000rpmに設定し、続いて、乾燥気体供給源607から乾燥気体が気体供給路607を介して基板表面Wfへ供給される。これにより、隣接するパターンWpの間の溶剤が除去され、気体が存在するようになる。
【0220】
次に、洗浄工程(S105)を行う。洗浄工程では、まず、制御部70の動作指令にもとづき、ステージ回転機構22が、基板表面Wfに供給される第1液体を基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心から周縁部に亘って広げることができるように、基板Wの回転速度を100〜1000rpmに設定する。
【0221】
続いて、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体供給源611から下方ノズル27を介して基板表面Wfへ第1液体が供給される。第1液体は、基板Wの回転に伴う遠心力で、基板表面Wfの中心部から周縁部へ広げられ、基板表面Wfに第1液体の液膜が形成される(液膜形成工程)。
【0222】
この状態で、基板裏面Wbへ超音波ノズル41から超音波印加液を供給し、超音波ノズル41を回動させて基板裏面Wbをスキャンすることで、基板裏面Wbの全面を良好に超音波洗浄する。まず、制御部70の動作指令にもとづき、超音波ノズル41を中心位置P21(
図16参照)に位置決めする。次に、第2液体供給源605から第2液体が超音波ノズル41を介して基板裏面Wbへ供給され、この状態で超音波出力機構43からパルス信号を振動子42へ出力することで、振動子42を超音波振動させ、第2液体に超音波を印加する。これにより、超音波ノズル41は吐出口から超音波印加液を吐出する。
【0223】
超音波ノズル41から超音波印加液を吐出した状態で、制御部70がアーム回転機構47に動作指令を行い、中心位置P21から周縁位置P23の間を、1回または複数回スキャンして、基板裏面Wbの全面を洗浄する(超音波洗浄工程)。
【0224】
このとき、基板表面Wfには第1液体の液膜が形成されているため、基板表面Wfのパターン汚染が防止できる。また、疎水化膜802によりパターンWp間への第1液体の侵入が防止され、パターンWp間には気体が存在することから、基板裏面Wbから伝搬する超音波に起因するパターン倒壊も防止できる。
【0225】
また、第3実施形態では、基板裏面Wbが、比較的空間的自由のある上方を向いているため、基板裏面Wbに超音波印加液を供給する超音波ノズル41をスキャン可能に設けることができ、基板裏面Wbの全面を良好に超音波洗浄することができる。
【0226】
以上のように、第3実施形態に係る基板洗浄装置では、疎水化ガスを供給する疎水化ガス供給源610および下方内管25、下方ノズル27を含む基板保持ユニット20が、本発明の「疎水化剤供給部(疎水化部)」として機能する。これら構成が疎水化剤供給部として機能するとき、下方ノズル27は「第3ノズル」として機能する。
【0227】
また、基板保持ユニット20に保持される基板Wの上方に配置され、基板裏面Wbへ超音波印加液を供給する超音波ノズル41が、「第4ノズル」として機能する。
【0228】
<4.変形例>
本発明に係る基板洗浄装置および基板洗浄方法は、上記の第1〜3実施形態に限定されない。以下、本発明に係る変形例について説明する。
【0229】
<疎水化ガスと疎水化液>
図1を参照する。第1実施形態では、基板表面Wfのパターン表面を疎水化するために、疎水化ガスを用いた。これに代えて、疎水化液を蒸気化せずに直接供給する構成としてもよい。すなわち、上方外管ノズル39に疎水化ガス供給源601を連通する構成に代えて、上方内管ノズル37に疎水化液供給源を連通する構成とし、疎水化剤供給工程では上方内管ノズル37から疎水化液を基板表面Wfに供給する構成としてもよい。
【0230】
これにより、
図8に示す疎水化ガス供給部120を設備として設ける必要がなくなり、装置構成が簡易になることで装置コストを削減することができるメリットが有る。
【0231】
また、第2実施形態では、ノズル51から基板表面Wfへ疎水化液を供給したが、これに代えて疎水化ガスを供給する構成としてもよい。これにより、疎水化液の消費量を低減することができ、薬液コストや、廃液処理に掛かるコストを削減することができるメリットが有る。
【0232】
また、第3実施形態では、下方ノズル27から基板表面Wfへ疎水化ガスを供給したが、これに代えて疎水化液を供給する構成としてもよい。これにより、
図8に示す疎水化ガス供給部120を設備として設ける必要がなくなり、装置構成が簡易になることで装置コストを削減することができるメリットが有る。
【0233】
<他の疎水化手法>
上記の第1〜3実施形態では、疎水化剤を溶剤に混合した疎水化液または疎水化ガスの状態で基板表面Wfに供給したが、まず溶剤を基板表面Wfに供給し、次いで疎水化剤を供給することで、基板表面Wfにおいて疎水化剤と溶剤を混合する構成としてもよい。また、先に基板表面Wfに疎水化剤を供給し、次いで溶剤を所定量だけ(すなわち、疎水化剤を基板表面Wfから完全に洗い流さない程度の量に調節した上で)供給し、基板表面Wfにおいて疎水化剤と溶剤を混合する構成としてもよい。
【0234】
また、ガス状の疎水化剤で基板表面Wfを覆った状態で、プラズマ等、疎水化剤の官能基を活性化させる高エネルギーを基板表面Wfに照射し、基板表面Wfにおけるパターン表面を疎水化する構成としてもよい。この構成によれば、溶剤を用いることなくパターン表面を疎水化することができ、溶剤除去工程を経ることなく隣接するパターン間に気体を存在させることができる。したがって工程数を削減でき、基板処理にかかる時間を短縮することができるメリットが有る。
【0235】
<基板加熱部の追加>
上記の第1〜3実施形態における洗浄ユニット91に、さらに基板Wを加熱する基板加熱部を備える構成としてもよい。基板加熱部としては、ステージ23内部に抵抗加熱ヒータを備え、抵抗加熱ヒータへ電流を供給することでステージ23を介してチャック24により保持される基板Wを加熱する構成としてもよい。また、他の態様として、基板表面Wfまたは基板裏面Wbへ乾燥気体を供給する乾燥気体供給源に気体加熱ヒータを備え、乾燥気体の温度を常温よりも高温(例えば、摂氏60度)とした状態で、基板表面Wfまたは基板裏面Wbへ乾燥気体を供給して基板Wを加熱する構成としてもよい。
【0236】
これら基板加熱部をさらに備えることにより、以下に述べるように「溶剤除去工程」および「疎水化剤除去工程」の別構成を実現することができる。
【0237】
<溶剤除去工程の別構成>
上記の第1〜3実施形態において、溶剤除去工程では、基板Wに乾燥気体を供給して溶剤を蒸気化させ、また基板Wの回転による遠心力で振り切ることで溶剤を基板表面Wfから除去した。これに代えて、またはこれに加えて、基板Wを加熱する基板加熱部を新たに備え、基板Wを加熱することで溶剤も加熱させて蒸気化させることにより溶剤を基板表面Wfから除去する構成としてもよい。
【0238】
乾燥気体の供給や基板回転に加え、基板加熱を行って溶剤除去をすることで、溶剤除去工程に掛かる時間を短縮することができるメリットが有る。
【0239】
また、基板表面Wfに付着した疎水化剤の疎水化能力が、特開2014−197571号公報に記載されているように加熱により向上する場合、溶剤除去工程において基板を加熱する工程を採用することで、併せて疎水化剤の活疎水化を実行することができる。これにより、続く洗浄工程において、より確実にパターン間への第1液体の侵入を防止でき、パターン倒壊をより確実に防止することができるメリットが有る。
【0240】
この場合において、溶剤除去工程とは別工程として、溶剤除去工程の後であって洗浄工程の前に、加熱工程をさらに備え、基板表面Wfに付着した疎水化剤(疎水化膜802)の活疎水化を促す構成としてもよい。
【0241】
また、溶剤除去工程として、基板Wへの乾燥気体供給、基板Wの回転、基板Wの加熱を行わずに、基板Wを所定時間放置し、自然乾燥により溶剤を除去する構成としてもよい。
【0242】
<疎水化剤除去工程の別構成>
上記の第1〜3実施形態において、疎水化剤除去工程では、溶解液の供給により疎水化剤を基板表面Wfから除去した。これに代えて、疎水化剤が加熱により熱分解または蒸発・昇華する物質である場合には、基板Wを加熱する基板加熱部を新たに備え、疎水化剤除去工程において基板Wを加熱することにより、疎水化剤を熱分解等により基板表面Wfから除去する構成としてもよい。この構成によれば、溶解液が不要であるため、薬液の消費量を削減できるメリットが有る。また、加熱に伴い基板表面Wfおよび基板裏面Wbから第1液体、第2液体を乾燥除去することができ、加熱工程によって疎水化剤除去工程・基板乾燥工程を兼ねることで処理時間を短縮することができるメリットも有る。
【0243】
<実験結果>
本願発明は、上記のように基板の一方主面に形成されたパターン表面を疎水化した後、パターン表面を含む基板の一方主面に液膜を形成した状態で、他方主面を超音波洗浄する際、隣接するパターン間に気体が存在することによりパターンに超音波に起因する衝撃が与えられることを防止することで、パターン倒壊を防止することを特徴とする。発明者らは、実験を行って、パターン表面が疎水化することで、その後に液膜を形成して超音波洗浄を行ってもパターン倒壊を防止できることを検証した。
【0244】
図18に検証実験における疎水化状態での結果を、
図19から
図21までに比較実験のため親水化状態での結果を、それぞれ示す。疎水化状態とは、基板Wの主面とDIWの接触角が30度以上のことを指し、
図18に示す検証実験は接触角が約40度の結果である。親水化状態とは基板Wの主面とDIWの接触角が30度よりも小さい状態のことを指し、
図19から
図21までに示す比較実験は接触角が約10度の結果である。
【0245】
次に、実験手順について説明する。一方主面に同一種類のパターン(幅37nm)が形成された基板に対し、一方に疎水化処理を行い、他方に親水化処理を行った。次に、これら基板の一方主面を上方に向け、窒素ガスの溶存ガス濃度がそれぞれ0.02ppm、3ppm、18ppm(飽和)であるDIWの液膜を形成した状態で、他方主面から超音波ノズルにより超音波印加液を供給した。その後、基板を乾燥させ、これら基板のパターンをSEM観察し、
図18〜
図21の画像を得た。
【0246】
図19、
図20、
図21は、それぞれ一方主面に形成したDIW液膜の溶存ガス濃度が0.02ppm、3ppm、18ppmの条件において得られるSEM画像を示す。
図21に示すように、溶存ガス濃度が高い条件では超音波の印加に起因する気泡の発生と崩壊がより顕著に生じ、パターンに与えられる衝撃が大きくなることでパターン倒壊が顕著に生じている。また、当該パターン倒壊が基板乾燥時ではなく基板洗浄時に生じることの証明として、DIW液膜の溶存ガス濃度が低くなるごとに、すなわち超音波の印加に起因する気泡の発生と崩壊が抑制されるごとに、パターン倒壊の程度が低くなっていることが、
図20、21に示されている。
【0247】
これに対し、疎水化処理を行った基板のパターン倒壊は、全ての溶存ガス濃度条件において生じず、超音波の印加に起因する気泡の発生と崩壊が生じても、疎水化処理によって超音波洗浄中のパターン倒壊が防止できることが検証された。
図18は、溶存ガス濃度が18ppmの結果である。
図18に示すように、基板のパターン倒壊は生じていない。
【0248】
以上により、発明者は、パターン表面を疎水化することで、その後に液膜を形成して超音波洗浄を行ってもパターン倒壊を防止できることを明らかにした。