特許第6592304号(P6592304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592304
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】バイオマス利用方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/46 20060101AFI20191007BHJP
   F23G 5/033 20060101ALI20191007BHJP
   F23G 5/02 20060101ALI20191007BHJP
   F23G 5/04 20060101ALI20191007BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20191007BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F23G5/46 A
   F23G5/033 AZAB
   F23G5/02 B
   F23G5/04 Z
   F23C99/00 305
   F23G5/30 D
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-161544(P2015-161544)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-40414(P2017-40414A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年3月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(73)【特許権者】
【識別番号】000115500
【氏名又は名称】ラサ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典之
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
(72)【発明者】
【氏名】市川 広大
(72)【発明者】
【氏名】下川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】川村 弘文
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−347270(JP,A)
【文献】 特開2012−083017(JP,A)
【文献】 特開2013−079732(JP,A)
【文献】 特開2005−308372(JP,A)
【文献】 特開2005−337572(JP,A)
【文献】 特開2009−162414(JP,A)
【文献】 特開2016−099023(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/015083(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/46
F23C 99/00
F23G 5/02
F23G 5/033
F23G 5/04
F23G 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマスの原料を破砕処理して粒度を調整する破砕機と、
前記破砕機で破砕された木質バイオマスの原料を脱水または乾燥して水分を低減して木質バイオマス燃料とする機器と、
前記木質バイオマス燃料を粉砕処理して粉体燃料を製造する粉砕機と、
前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させるバーナと、
前記バーナとは別に備えられていて、前記バーナから噴出された燃焼ガスを導入して前記燃焼ガスの有する熱を熱媒体に熱回収するボイラと
を有してなり、
前記バーナは、
前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室の頂部に位置するガス出口と、
前記ガス出口に接続されたガス通路と、
前記ガス通路の一端側に配置された主燃焼空気供給ノズルと、
前記ガス通路の他端側に配置された火炎噴出口と、
を備え、
前記ボイラは、
前記熱媒体を貯留する缶体と、
前記缶体内に配置された複数の煙管と、
管径が前記火炎噴出口の径と同等の燃焼ガス導入用煙管と、
前記複数の煙管の下端側と、前記燃焼ガス導入用煙管の下端側と、を連通させる灰受部と、
を備え、
前記燃焼ガスは、
前記ガス通路で、前記ガス出口から排出された可燃性ガスに対して、前記主燃焼空気供給ノズルから供給される主燃焼用空気による前記可燃性ガスの主燃焼を行うことにより発生し、
前記燃焼ガス導入用煙管は、
前記バーナから噴出された燃焼ガスを前記火炎噴出口から導入する、
ことを特徴とするバイオマス利用装置。
【請求項2】
前記バーナは、
記燃焼室の底部に配されて前記木質バイオマス燃料を燃焼させる流動層と、
前記燃焼室に前記粉体燃料を供給する粉体燃料ノズルと、
前記燃焼室に前記流動層の上方から前記木質バイオマス燃料を供給する木質バイオマス燃料供給ノズルとを備える
請求項1記載のバイオマス利用装置。
【請求項3】
前記ボイラは、発生した熱利用媒体を熱利用施設に循環させるラインを備える
請求項1又は2記載のバイオマス利用装置。
【請求項4】
木質バイオマスの原料を破砕処理して粒度を調整する破砕工程と、
前記破砕工程で破砕処理された木質バイオマスの原料を脱水または乾燥して水分を低減して木質バイオマス燃料とする水分低減工程と、
前記木質バイオマス燃料を粉砕処理して粉体燃料とする粉砕工程と、
前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を、バーナで燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程で生じる燃焼ガスの有する熱を、ボイラの熱媒体に熱回収する熱回収工程と、
前記熱回収工程で熱回収に供した後の前記燃焼ガスと、前記燃焼工程で使用される空気との熱交換を行う排熱利用工程と、
を有してなり、
前記バーナは、
前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室の頂部に位置するガス出口と、
前記ガス出口に接続されたガス通路と、
前記ガス通路の一端側に配置された主燃焼空気供給ノズルと、
前記ガス通路の他端側に配置された火炎噴出口と、
を備え、
前記ボイラは、
前記熱媒体を貯留する缶体と、
前記缶体内に配置された複数の煙管と、
管径が前記火炎噴出口の径と同等の燃焼ガス導入用煙管と、
前記複数の煙管の下端側と、前記燃焼ガス導入用煙管の下端側と、を連通させる灰受部と、
を備え、
前記燃焼ガスは、
前記ガス通路で、前記ガス出口から排出された可燃性ガスに対して、前記主燃焼空気供給ノズルから供給される主燃焼用空気による前記可燃性ガスの主燃焼を行うことにより発生し、
前記燃焼ガス導入用煙管は、
前記バーナから噴出された燃焼ガスを前記火炎噴出口から導入する、
ことを特徴とするバイオマス利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの利用方法及び装置に関するもので、詳しくは、性状や形状の異なるバイオマスの利用方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題におけるCOの低減対策の1つとしては、再生可能エネルギーの利用を促進することが挙げられ、木材等による所謂木質バイオマスを燃料として利用することが進められてきている。
【0003】
このような木質バイオマスを燃料として利用する施設としては、たとえば、バイオマス発電設備が考えられている。
【0004】
しかし、木質バイオマス燃料は、その資源として用いる木材等(間伐材や剪定枝)が急峻な山林に分散して存在するため、収集や運搬等の点から、バイオマス発電設備では、たとえば、半径50kmといった広範囲に亘る地域から大量のバイオマス燃料を収集する必要が生じる。
【0005】
よって、発電所のような大規模なバイオマス利用施設を実現するためには、山林やその周辺の環境、更には施設の立地環境等に関して制約を受けることが多い。
【0006】
そのため、木質バイオマス燃料の有効利用を図るためには、より小規模な範囲(地域)で収集可能な木質バイオマスを燃料として利用できるシステムの開発が求められる。
【0007】
従来、バイオマス燃料の小規模利用システムとしては、樹皮を含む木材全体を対象とし、そのバイオマスを、ペレット燃料として燃焼室で燃焼させるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1に記載されているものは、木材の特定の部位に限定されることなく樹皮を含む木材全体を燃料とし、そのバイオマス燃料を、ペレットとして燃焼室に供給して、燃焼室下部に設けられた火格子上の火床で燃焼させることにより、バイオマス燃料の利用と、熱利用を図るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−270980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に記載されたものでは、バイオマスをペレット燃料として燃焼室下部の火格子上の火床で、燃焼させるものである。
【0011】
そのため、特許文献1に記載されたものでは、火格子の上側に形成されるペレットの層に対しては、火格子に設けられた多数の空気供給口から空気が供給されるだけであり、ペレットの層を攪拌する機能がないため、空気と偶然接触したペレットが順次燃焼するのみである。そのため、特許文献1に示されたものは、バイオマス燃料であるペレットの個々の粒子の燃焼に時間を要するので、燃焼制御に対する応答性が低いという問題がある。またペレットの層を攪拌する機能がないため、ペレット層内での燃焼の際に、局部的な高温場が形成され部分的に溶融固着したクリンカが形成され、燃焼斑が発生し、場合によっては燃焼継続できなくなることもある。更に灰の排出は火床を掻き崩すことによって行うため、ペレット層の燃焼が急激に変化し燃焼が安定しない問題もある。又、ペレットは、原料を粉砕して固形化する工程が必要なため、ペレットとするための製造コストが高くなり、燃料コストが高くなること等の問題もある。
【0012】
一方、バイオマスをペレット燃料に成形することなく原料のまま、又はそれに近い状態で使用する際には、一般的に水分などの性状や形状が課題となる。生木は50〜60%の含水率があり、そのまま利用するには発熱量が小さいので、熱風による乾燥処理を行って水分を30%以下程度まで下げる場合が多いが、水分を蒸発させる乾燥方式では、乾燥に要するエネルギーが大きくなる。そのため、脱水など蒸発によらない水分低減方法、或いは水分40%程度のバイオマス燃料でも利用できる方法がとれればエネルギーとコストの両方を抑制することができる。
【0013】
そこで、本発明は、バイオマスをペレット燃料などのように形状や大きさを限定することなく、様々な性状、形状のバイオマスを燃料として利用することができるようにすると同時に、燃焼制御に対する応答性の向上化を図ることができるようにするバイオマス利用方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するために、木質バイオマスの原料を破砕処理して粒度を調整する破砕機と、前記破砕機で破砕された木質バイオマスの原料を脱水または乾燥して水分を低減して木質バイオマス燃料とする機器と、前記木質バイオマス燃料を粉砕処理して粉体燃料を製造する粉砕機と、前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させるバーナと、前記バーナとは別に備えられていて、前記バーナから噴出された燃焼ガスを導入して前記燃焼ガスの有する熱を熱媒体に熱回収するボイラと、を有してなり、前記バーナは、前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室の頂部に位置するガス出口と、前記ガス出口に接続されたガス通路と、前記ガス通路の一端側に配置された主燃焼空気供給ノズルと、前記ガス通路の他端側に配置された火炎噴出口と、を備え、前記ボイラは、前記熱媒体を貯留する缶体と、前記缶体内に配置された複数の煙管と、管径が前記火炎噴出口の径と同等の燃焼ガス導入用煙管と、前記複数の煙管の下端側と、前記燃焼ガス導入用煙管の下端側と、を連通させる灰受部と、を備え、前記燃焼ガスは、前記ガス通路で、前記ガス出口から排出された可燃性ガスに対して、前記主燃焼空気供給ノズルから供給される主燃焼用空気による前記可燃性ガスの主燃焼を行うことにより発生し、前記燃焼ガス導入用煙管は、前記バーナから噴出された燃焼ガスを前記火炎噴出口から導入する、バイオマス利用装置とする。
【0015】
前記バーナは、前記燃焼室の底部に配されて前記木質バイオマス燃料を燃焼させる流動層と、前記燃焼室に前記粉体燃料を供給する粉体燃料ノズルと、前記流動層の上方から前記木質バイオマス燃料を供給する木質バイオマス燃料供給ノズルとを備える構成としてある。
【0016】
前記ボイラは、発生した熱利用媒体を熱利用施設に循環させるラインを備える構成としてある。
【0017】
木質バイオマスの原料を破砕処理して粒度を調整する破砕工程と、前記破砕工程で破砕処理された木質バイオマスの原料を脱水または乾燥して水分を低減して木質バイオマス燃料とする水分低減工程と、前記木質バイオマス燃料を粉砕処理して粉体燃料とする粉砕工程と、前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を、バーナで燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程で生じる燃焼ガスの有する熱を、ボイラの熱媒体に熱回収する熱回収工程と、前記熱回収工程で熱回収に供した後の前記燃焼ガスと、前記燃焼工程で使用される空気との熱交換を行う排熱利用工程と、を有してなり、前記バーナは、前記木質バイオマス燃料および前記粉体燃料を燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室の頂部に位置するガス出口と、前記ガス出口に接続されたガス通路と、前記ガス通路の一端側に配置された主燃焼空気供給ノズルと、前記ガス通路の他端側に配置された火炎噴出口と、を備え、前記ボイラは、前記熱媒体を貯留する缶体と、前記缶体内に配置された複数の煙管と、管径が前記火炎噴出口の径と同等の燃焼ガス導入用煙管と、前記複数の煙管の下端側と、前記燃焼ガス導入用煙管の下端側と、を連通させる灰受部と、を備え、前記燃焼ガスは、前記ガス通路で、前記ガス出口から排出された可燃性ガスに対して、前記主燃焼空気供給ノズルから供給される主燃焼用空気による前記可燃性ガスの主燃焼を行うことにより発生し、前記燃焼ガス導入用煙管は、前記バーナから噴出された燃焼ガスを前記火炎噴出口から導入する、バイオマス利用方法とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバイオマス利用方法及び装置によれば、様々な性状、形状のバイオマスを燃料として利用することができると同時に、燃焼制御に対する応答性の向上化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】バイオマス利用方法の実施形態を示すフローチャートである。
図2図1に示す実施形態のバイオマス利用方法を実施する装置の概要図である。
図3図2におけるバーナと煙管ボイラの詳細図である。
図4図3のA−A矢視図である。
図5図3のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のバイオマス利用方法及び装置を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、バイオマス利用方法の実施形態の概要を示すフローチャートである。図2は本実施形態のバイオマス利用方法を実施するための装置の概要図である。図3図2の装置の要部となるバーナと煙管ボイラの詳細図である。図4図3のA−A矢視図である。図5図3のB−B矢視図である。
【0022】
本実施形態のバイオマス利用方法及び装置は、間伐材や剪定枝、製材端材等の木質バイオマスを燃料として利用できるようにし、且つ性状や形状が異なっていても木質バイオマスの燃料としての利用を可能とするものである。そのため、本実施形態のバイオマス利用方法は、図1に示すように、破砕工程P1、水分低減工程P2、貯留工程P3、粉砕工程P4、燃焼工程P5、熱回収工程P6、熱利用工程P7及び排熱利用工程P8を備えている。
【0023】
破砕工程P1は、間伐材や剪定枝などのような木質バイオマスの原料aを破砕処理して、粒径の上限が25mm程度の原料a1を製造する工程である。
【0024】
木質バイオマスの原料a1は、たとえば、500μm〜25mmの粒径のものとしてある。原料a1には、粒径が500μm未満のものや25mmを超えたものが含まれていてもよいが、後述する燃焼工程P5での部分燃焼と熱分解ガス化を効率よく進行させるという点からは前記の値の範囲内に揃えられていることが好ましい。そのために破砕工程P1が備えられている。
【0025】
なお、木質バイオマスの原料aが、予め破砕処理されて、粒径の上限が25mm程度の原料として供給されるときは、そのまま原料a1として用いるようにしてもよい。この場合には、原料a1を、破砕工程P1を経ずに下流側の水分低減工程P2に供給するようにすればよい。又、木質バイオマスの原料aが破砕処理されたものであっても、粒径が25mm程度を超えている場合は、破砕工程P1に供給するようにすればよい。したがって、原料a1は、様々な形状の原料aを基に製造される。
【0026】
水分低減工程P2は、破砕工程P1で破砕処理された原料a1のうち、水分(含水率)が高めの原料a1について、原料a1の低位発熱量を増加させるために、原料a1に含まれている水分を低減させる工程である。
【0027】
原料a1に含まれている水分を低減させれば、原料a1の低位発熱量は増加することになるが、本実施形態では、たとえば、水分45%を基準値として設定し、設定された基準値以上の水分を含んでいる原料a1については、水分低減工程P2にて、脱水装置あるいは乾燥装置を用いて水分(含水率)を低下させるようにしてある。この際、水分低減工程P2では、原料a1に含まれている水分を10%程度低減させることが好ましい。このように原料a1の水分が10%程度低減される場合は、脱水しない場合に比して、低位発熱量が400〜500kcal/kg程度高くなり、燃焼性を向上させることができる。
【0028】
水分低減工程P2によって水分が低減された木質バイオマス燃料bは、貯留工程P3に送られる。なお、たとえば、屋外での放置によって乾燥が進行した間伐材や剪定枝、製材端材、建設廃材など、含まれている水分が前記所定の基準値よりも低くなっている原料aは、破砕工程P1で粒径の上限が25mm程度に破砕処理されると、水分低減工程P2による処理を経ずに木質バイオマス燃料bとして貯留工程P3に供給するようにすればよい。これにより、木質バイオマス燃料bは、様々な水分の原料aを基に製造される。
【0029】
貯留工程P3は、製造された木質バイオマス燃料bを、木質バイオマス燃料ヤードに、一時貯留しておくためのものである。
【0030】
貯留工程P3で木質バイオマス燃料ヤードに貯留しておくべき木質バイオマス燃料bの貯留量は、燃焼工程P5で燃焼に供する量が常時確保されていればよい。
【0031】
粉砕工程P4は、貯留工程P3で木質バイオマス燃料ヤードに貯留されている木質バイオマス燃料bの一部を粉砕処理して、より粒径の小さい粉体燃料としての木粉cを製造する工程である。
【0032】
粉砕工程P4で得られる木粉cは、粒径が、たとえば、500μmまでのものとされる。又、粉砕工程P4で粉砕処理の際に生じる熱によって水分が除去されるため、木粉cは、水分が20%以下とされている。
【0033】
燃焼工程P5は、貯留工程P3で木質バイオマス燃料ヤードに貯留されている木質バイオマス燃料bと、粉砕工程P4で製造された木粉cとを燃焼させる工程である。
【0034】
熱回収工程P6は、燃焼工程P5で木質バイオマス燃料bと木粉cを燃焼することにより発生した燃焼ガスdと、熱媒体eとの熱交換を行って、熱媒体eに熱回収を行う工程である。
【0035】
熱利用工程P7は、熱回収工程P6で熱回収に供した後の昇温した熱媒体eを熱利用施設へ供給して、熱媒体eの保有する熱を、熱利用施設の冷暖房やその他の熱源として利用する工程である。
【0036】
排熱利用工程P8は、熱回収工程P6から排出された燃焼ガスdと、燃焼工程P5で使用される空気fとの熱交換を行う工程である。
【0037】
図2は、図1に示す本実施形態のバイオマス利用方法を実施するための装置の一例を示すものである。
【0038】
図2において、符号1は破砕工程P1(図1参照)で用いる破砕機である。破砕機1は、木質バイオマスの原料aを破砕処理して粒径が500μm〜25mmとなる原料a1を製造することができるようにしてある。木質バイオマスの原料aを破砕処理して前記の値の範囲内の原料a1を製造することができれば、任意の形式の破砕機を採用してよい。
【0039】
破砕機1の下流側には、水分低減工程P2(図1参照)で用いる脱水装置2が設けられている。破砕機1により製造された粒径500μm〜25mm程度の原料a1は、水分低減工程P2で用いられる脱水装置2に供給されて脱水処理される。
【0040】
脱水装置2としては、図2では一例として、ローラ式脱水装置が示してある。この脱水装置2は、ケース3内に回転できるように支持された上下一対のローラ4,5と、上下一対のローラ4,5間に原料a1を供給する供給装置6とを備えた構成とされている。供給装置6には、破砕機1での破砕処理で製造された原料a1が、破砕機1から供給されるようになっている。
【0041】
脱水装置2は、供給装置6により上下一対のローラ4,5間に原料a1が供給されると、原料a1を上下一対のローラ4,5間で圧搾することにより脱水し、原料a1に含まれている水分を10%程度低減させる。これにより、脱水装置2では、水分が低減された木質バイオマス燃料bが生成される。
【0042】
なお、水分低減工程P2では、脱水装置2に代えて、図示しない乾燥装置を用いて、原料a1の乾燥処理によって原料a1に含まれている水分を10%程度低減させるようにしてもよい。この場合の乾燥装置としては、たとえば、乾燥室内に導入させた原料a1を、熱風により乾燥させる形式のものとしてもよい。又、太陽光を利用して原料a1を乾燥させる形式の乾燥装置を用いるようにしてもよい。更には、原料a1の水分を10%程度低減できるものであれば、任意の形式の乾燥装置を採用してもよい。
【0043】
脱水装置2より製造された木質バイオマス燃料bは、貯留工程P3(図1参照)で用いる貯留場としての燃料ヤード7に送られて、一旦貯留される。
【0044】
図2における符号8は、粉砕工程P4(図1参照)で用いられる粉砕機8である。燃料ヤード7に貯留された木質バイオマス燃料bの一部は、粉砕機8に供給されて粉砕処理される。これにより、木質バイオマス燃料bより小さい粒径の木粉cが製造される。
【0045】
粉砕機8は、前記したように、粒径が500μm〜25mmというように比較的大きな木質バイオマス燃料bを粉砕処理して、粒径が、たとえば、500μmまでの小さな粒径となるバイオマスの粉体燃料としての木粉cを製造するようにしてある。木質バイオマス燃料bよりも更に粒径の小さい木粉cは、空間燃焼が可能であり燃焼するときの燃焼応答性が木質バイオマス燃料bに比して改善されるので、負荷変動追従性をより高くすることができる利点がある。
【0046】
粉砕機8は、摩擦や圧縮の力によって物質を粉砕処理し、粒径を揃えるようにするもので、たとえば、ケース内に固定されたステータと回転するロータとの間での剪断作用によって粉砕処理するものや、2つの回転するロールの間に物体を挿入させて、2つのロールによる高い圧力によって物体を小さな粒子に粉砕処理する高圧粉砕式のものや、回転するドラムの中に金属製のボールを入れて、ボールとの衝突や摩擦によって粉砕するボールミル式のもの、その他種々の形式のものがある。
【0047】
本実施形態では、木質バイオマス燃料bを粉砕処理して木粉cとすることができるものであれば、いかなる形式の粉砕機を用いるようにしてもよい。
【0048】
図2における符号9は、燃焼工程P5(図1参照)で用いる燃焼装置としてのバーナである。
【0049】
本実施形態で用いるバーナ9は、上下に延びる円筒状としてあって、頂部にガス出口11を有し、底部に流動層12を有する燃焼室10を備えている流動層式バーナとしてある。燃焼室10には、木質バイオマス燃料bを供給する木質バイオマス燃料供給ノズル13と、木粉cを供給する粉体燃料ノズル14と、燃焼空気供給ノズル15が設けられている。更に、燃焼室10のガス出口11は、主燃焼空気供給ノズル16を備えたガス通路17の一端側に接続され、このガス通路17の他端側が火炎噴出口18とされて、燃焼ガスdが火炎噴出口18から排出されるようにしてある。
【0050】
これにより、本実施形態では、バーナ9の燃焼室10に、木質バイオマス燃料bと、木粉cとを供給して燃焼させることができるので、粒径が異なるバイオマス燃料でも同時にバーナ9で燃焼することができて、バイオマスを形状が異なる状態で利用することができる利点がある。
【0051】
バーナ9の火炎噴出口18の下流側には、熱回収工程P6(図1参照)で用いる煙管ボイラ19が設けられている。
【0052】
本実施形態で用いる煙管ボイラ19は、熱媒体eとしての水21を貯留する缶体20と、缶体20内に配設され、軸心方向を上下方向とする複数の煙管22と、バーナ9のガス通路17に接続されて、燃焼ガスdを缶体20の下側へ導入する燃焼ガス導入用煙管23と、缶体20の下部に設けられて煙管22の下端側と燃焼ガス導入用煙管23の下端側とを連通する灰受部24とを備えた構成とされている。
【0053】
煙管ボイラ19を温水ボイラとして使用する場合は、水21を煙管22を流通する燃焼ガスdと熱交換させて温水とし、更に、煙管ボイラ19と外部に設置されている熱利用施設29との間に温水を循環させるライン28を設けて、煙管ボイラ19で発生した温水の熱を、熱利用施設29に供給するようにする。煙管ボイラ19を蒸気ボイラとして使用する場合は、水21を貯留しておく空間に、図示しない蒸気取出ラインを接続して、この蒸気取出ラインを熱利用施設29に接続して、蒸気を熱利用施設29に供給するようにすればよい。
【0054】
これにより、熱利用施設29には、煙管ボイラ19から温水あるいは蒸気によって熱が供給される。よって、図1の熱利用工程P7は、熱利用施設29にて、供給される熱を冷暖房やその他の熱源として用いることで実施される。
【0055】
図2における符号30は、排熱利用工程P8(図1参照)で用いる空気予熱器である。空気予熱器30は、バーナ9に供給する空気を煙管ボイラ19の燃焼ガス出口より排出される燃焼ガスと熱交換することで予熱するようにしてある。空気予熱器30で予熱された空気は、バーナ9に供給され、燃焼効率及び熱効率を向上させることができる。
【0056】
図3乃至図5は、図2に示すバーナ9と煙管ボイラ19を更に詳細に示すものである。
【0057】
先ず、バーナ9の詳細は、図3及び図4に示す通りであり、図2について説明した構成に、更に説明を付加する。
【0058】
バーナ9の流動層12は、砂等の固体粒子の熱媒体(流動媒体)12aが充填されている。流動層12の下方には、熱媒体12aの通過は阻止する一方、空気は通過可能な多孔質板又は多孔板のような熱媒体支持部材31と、散気管32と、空気ボックス33とが設けられている。バーナ9に供給する空気は、送風機34から空気予熱器30に送られる。空気予熱器30で予熱された空気fは、空気供給ライン30aからそれぞれ異なる用途の空気36a〜36eとして送風されるようにしてある。空気ボックス33には、燃焼用空気を兼ねる流動化空気36aを導く空気供給ライン35aが接続されている。これにより、流動層12では、空気ボックス33、散気管32、熱媒体支持部材31を経て下方から導入されて上向きに噴出される流動化空気36aによって熱媒体12aの流動化が行われる。
【0059】
したがって、流動層12は、後述するように木質バイオマス燃料供給ノズル13より燃焼室10に供給されて流動層12まで落下する木質バイオマス燃料bを、流動化された熱媒体12aで支持し且つ攪拌しながら、流動化空気36aを用いて燃焼させることができる。この際、流動層12では、流動化空気36aの供給量と、木質バイオマス燃料供給ノズル13より流動層12に落下供給される木質バイオマス燃料bの供給量が、木質バイオマス燃料bの部分燃焼が生じるように(木質バイオマス燃料bの完全燃焼には酸素不足となるように)調整されている。このため、流動層12では、木質バイオマス燃料bの部分燃焼が行われると共に、この部分燃焼で生じた燃焼熱を利用して木質バイオマス燃料bの残部の熱分解ガス化が行われる。流動層12では、木質バイオマス燃料bを部分燃焼させることにより、流動層特有の固体燃料を攪拌する効果を残しながら木質バイオマス燃料bが緩慢燃焼することになるので、木質バイオマス燃料bの形状および性状の変動による燃焼変動を抑制できる。したがって、流動層12では、木質バイオマス燃料bを撹拌しながら効率よく流動化空気36aと接触させて、部分燃焼と熱分解ガス化とを確実に進行させることができる。
【0060】
流動層12における木質バイオマス燃料bの熱分解ガス化によって生じる可燃性ガスは、木質バイオマス燃料bの部分燃焼によって生じる燃焼ガスや、流動層12で流動化空気36aとして使用された後の空気と一緒に、ガス出口11に向けて燃焼室10を上昇する。
【0061】
燃焼室10は、流動層12の直上となる燃焼室10の下部寄りの領域が、前記のように流動層12に支持された木質バイオマス燃料bが部分燃焼と熱分解ガス化される燃焼部37となっている。燃焼室10における燃焼部37よりも上方の領域は、ガス化燃焼空間38とされている。
【0062】
粉体燃料ノズル14は、燃焼室10の側壁39におけるガス化燃焼空間38の下部寄りとなる個所に設けられている。
【0063】
粉体燃料ノズル14は、木粉cを、燃焼用空気を兼ねる搬送用空気36bと一緒に燃焼室10へ吹き込むように供給して燃焼させるためのノズルである。
【0064】
このため、粉体燃料ノズル14は、側壁39の外部に位置する端部(基端)側に、木粉供給機40と、搬送用空気36bを導く空気供給ライン35bとが接続されている。
【0065】
粉体燃料ノズル14に接続された木粉供給機40と粉砕機8との間には、粉砕機8で粉砕された木粉cを、木粉供給機40に搬送するための搬送ライン41(図2参照)が設けられている。
【0066】
これにより、粉体燃料ノズル14では、木粉供給機40より木粉cが定量供給されると、この木粉cが、空気供給ライン35bより供給される搬送用空気36bによって空気搬送(気流搬送)されて燃焼室10に吹き込まれるようになる。この際、粉体燃料ノズル14の内部での木粉cの滞留を防ぐためには、粉体燃料ノズル14の先端側より燃焼室10へ吹き込まれる木粉c及び搬送用空気36bの流速は、5m/s以上に設定されることが好ましい。
【0067】
側壁39おける粉体燃料ノズル14の先端側近傍個所には、着火手段としてのパイロットバーナ42が設けられている。
【0068】
パイロットバーナ42は、図示しない燃料供給部よりLPG、都市ガス、灯油等の燃料43が供給されると共に、空気供給ライン35cを通してパイロット用空気36cが供給される。更に、パイロットバーナ42は、図示しない点火装置を備えた構成としてあり、燃料43とパイロット用空気36cが供給されている状態で点火装置を用いて口火を点火し、この口火を保持可能なものとなっている。そのため、木粉cは、粉体燃料ノズル14から搬送用空気36bと共に燃焼室10に吹き込まれたときに、パイロットバーナ42による着火、燃焼が可能となるように調整された粉体燃料であり、前記したように、たとえば、含水率が20%以下で、粒径が500μm以下とされている。
【0069】
なお、パイロットバーナ42は、側壁39の粉体燃料ノズル14の先端側近傍位置に代えて、粉体燃料ノズル14の内部における木粉cと搬送用空気36bの流路(図示せず)に設けられていてもよい。
【0070】
これにより、燃焼室10では、粉体燃料ノズル14から搬送用空気36bと共に燃焼室10に吹き込まれる木粉cがパイロットバーナ42により着火されると共に、搬送用空気36bを用いて燃焼し、この木粉cの燃焼熱によって燃焼室10の内部と流動層12が加熱されるようになっている。この際、木粉cは、前記したような小さい粒径の粉体であることから、燃焼室10内で速やかに燃焼される。
【0071】
したがって、本実施形態で用いるバーナ9は、木粉cの供給量を変化させる燃焼制御に対する応答性が高くなる。よって、バーナ9は、粉体燃料ノズル14から燃焼室10へ吹き込んで燃焼させる木粉cの量を調整することにより、燃焼室10の温度をコントロールすることが可能となっている。
【0072】
なお、搬送用空気36bの供給量は、燃焼室10に吹き込まれる木粉cを完全燃焼させるために必要とされる空気量を基準として、或る幅で増減させた量に設定してあればよい。この際、搬送用空気36bの供給量が木粉cの完全燃焼に必要な空気量に対して余剰となる場合は、その余剰分は木質バイオマス燃料bの部分燃焼に使用される。一方、搬送用空気36bが木粉cの完全燃焼に必要な空気量に対して不足する場合は、木粉cに燃え残りが生じるが、この燃え残りの木粉cは、流動層12へ落下して木質バイオマス燃料bと一緒に部分燃焼や熱分解ガス化に利用される。更に、木粉cのうちの比較的粒径が大きい木粉cは、粉体燃料ノズル14から燃焼室10に吹き込まれたときに空間に浮遊した状態では燃焼しきれない可能性があるが、この場合に生じる燃え残りの木粉cは、流動層12へ落下して、前記と同様に木質バイオマス燃料bと一緒に部分燃焼や熱分解ガス化に利用される。
【0073】
木質バイオマス燃料供給ノズル13は、側壁39における粉体燃料ノズル14の設置位置よりも上方となる位置に設けられていることが好ましい。これは、木質バイオマス燃料供給ノズル13から供給する木質バイオマス燃料bが、後述するように流動層12まで落下するときに、粉体燃料ノズル14による木粉cの燃焼が行われている領域を通過するようにして、木質バイオマス燃料bの燃焼を促すためである。
【0074】
木質バイオマス燃料供給ノズル13には、図示しない、たとえば、スクリューフィーダのような木質バイオマス燃料bの定量供給機が接続されている。
【0075】
木質バイオマス燃料供給ノズル13に接続された定量供給機と燃料ヤード7との間には、木質バイオマス燃料bを搬送するための搬送ライン44(図2参照)が設けられている。これにより、木質バイオマス燃料供給ノズル13は、燃焼室10に木質バイオマス燃料bを定量供給することができる。
【0076】
燃焼空気供給ノズル15は、側壁39における木質バイオマス燃料供給ノズル13よりも下方となる位置で且つ粉体燃料ノズル14と干渉しない位置に設けられている。図3及び図4では、側壁39に2本の燃焼空気供給ノズル15が設けられた例を示している。燃焼空気供給ノズル15は、水平方向に配置されていて、図4に示すように、燃焼室10の外周の接線方向に沿う姿勢で側壁39に取り付けられている。更に、燃焼空気供給ノズル15には、燃焼用空気36dを導くために空気供給ライン35dが接続されている。
【0077】
これにより、燃焼室10では、燃焼空気供給ノズル15から燃焼用空気36dが供給されると、燃焼室10に図3に矢印で示すように旋回しながらガス出口11側、すなわち、上方へ向けて流れる燃焼用空気36dの上昇流が形成される。
【0078】
なお、燃焼空気供給ノズル15からの燃焼用空気36dの供給量は、流動層12に供給される流動化空気36aの供給量との合計が、木質バイオマス燃料供給ノズル13より供給される木質バイオマス燃料bの全量に対し部分燃焼が生じるように(全木質バイオマス燃料bの完全燃焼には酸素不足となるように)調整されている。
【0079】
燃焼室10に木質バイオマス燃料供給ノズル13から木質バイオマス燃料bが供給されると、この木質バイオマス燃料bは、燃焼用空気36dの上昇流に接触する。このため、木質バイオマス燃料bのうちの小粒径のものは、燃焼用空気36dの上昇流によって浮遊させられた状態で、又、より大きな粒径のものは上昇流中を徐々に下降しながら、前述したと同様の部分燃焼と熱分解ガス化が行われる。木質バイオマス燃料bのうち、上昇流中で部分燃焼と熱分解ガス化が完全には進行しなかった大きな粒径のものは、図3に二点鎖線で示すように流動層12まで落下し、流動層12において前述した部分燃焼と熱分解ガス化が行われる。
【0080】
したがって、燃焼室10内では、供給されたすべての木質バイオマス燃料bについて、部分燃焼と熱分解ガス化が行われる。燃焼室10内で木質バイオマス燃料bの熱分解ガス化によって生じた可燃性ガスは、木質バイオマス燃料bの部分燃焼による燃焼ガスと、流動化空気36a及び燃焼用空気36dとして使用された後の空気と一緒にガス出口11へ導かれる。
【0081】
主燃焼空気供給ノズル16は、ガス通路17に、たとえば、火炎噴出口18側に向いた姿勢で設けられている。主燃焼空気供給ノズル16には、主燃焼用空気36eを導く空気供給ライン35eが接続されている。これにより、ガス通路17では、燃焼室10のガス出口11よりガス通路17に導かれる可燃性ガスを含んだガスに対し、主燃焼空気供給ノズル16より主燃焼用空気36eが供給されて、可燃性ガスの主燃焼用空気36eによる主燃焼が更に行われる。この主燃焼によって生じる高温の燃焼ガスdは、火炎噴出口18より煙管ボイラ19に供給される。
【0082】
次に、煙管ボイラ19の詳細は、図3及び図5に示す通りであり、図2について説明した構成に、更に説明を付加する。
【0083】
缶体20は、縦方向に配置された円筒形状とされ、胴部25の内側の上端側と下端縁部に、上部鏡板(管寄せ)26と下部鏡板(管寄せ)27を固定して備え、上下の鏡板26,27間が水21を貯留しておく空間とされている。
【0084】
煙管22の管径は、燃焼ガス導入用煙管23の管径よりも小さく設定されている。煙管22は、缶体20内に、缶体20の軸心方向と平行な姿勢で、燃焼ガス導入用煙管23を取り囲むように配置されている。煙管22の上端側は、上部鏡板26に貫通した状態で固定されていて、上端開口部がガス集合部45に連通している。煙管22の下端側は、下部鏡板27に貫通した状態で固定されていて、下端開口部が灰受部24に連通している。
【0085】
燃焼ガス導入用煙管23は、上端側が、缶体20の胴部25に缶体20の内側から貫通して外側へ突出するように取り付けられていて、その突出端部の開口が入口46とされている。入口46は、バーナ9の火炎噴出口18に接続されている。
【0086】
燃焼ガス導入用煙管23は、図3に示すように、缶体20内で入口46側より水平方向に延びて缶体20の中央部分で下向きに屈曲した形状とされており、下端側が下部鏡板27の中央部分に上方から貫通するように取り付けられている。燃焼ガス導入用煙管23の下端開口部は、灰受部24の中央部分に連通する出口47となっている。
【0087】
これにより、バーナ9の火炎噴出口18より噴出される燃焼ガスdは、燃焼ガス導入用煙管23に入口46側から導入された後、上側から下側へ流れて灰受部24に導入される。この際、燃焼ガス導入用煙管23の管径は、火炎噴出口18の径と同等としてあるため、燃焼ガスdの流速は、火炎噴出口18より噴出された流速に保持される。このため、燃焼ガスd中に浮遊して灰48が同伴されていたとしても、その灰48は、燃焼ガス導入用煙管23の内面への付着が抑制された状態で、燃焼ガスdと共に灰受部24に導入される。
【0088】
灰受部24は、缶体20の下側に、缶体20の径と同様の径寸法で設けられた円筒状の容器であり、上端側は缶体20の下端側に気密に取り付けられている。
【0089】
灰受部24は、燃焼ガス導入用煙管23の出口47側から導入された燃焼ガスdの流速が、灰受部24内では灰48の終端速度に満たない流速まで減速(低下)するように、燃焼ガス導入用煙管23の流路断面積に比して大きな流路断面積を有するものとされている。
【0090】
具体的には、灰受部24は、缶体20と同様の径寸法としてあるため、灰受部24の高さ寸法を調整することで、前述の流路断面積を得るようにしてある。
【0091】
これにより、灰受部24に燃焼ガス導入用煙管23の出口47から燃焼ガスdが導入されると、燃焼ガスdは、図3に矢印で示すように、一旦下方に向けて流れた後、周囲に拡散し、その後、上向きに反転されてから、各煙管22に流入するようになる。
【0092】
このため、燃焼ガスdに同伴されて灰受部24に流入した灰48は、燃焼ガスdの流れにより灰受部24の内底部側に導かれる。その際、燃焼ガスdの流速が灰48の終端速度未満になることに起因して、灰48の大部分は燃焼ガスdの流れに同伴されることなく取り残される。したがって、灰受部24は、燃焼ガスd中に灰48が含まれていたとしても、その灰48の大部分を分離させて灰受部24の内底部に沈降させることができる。
【0093】
又、灰受部24は、側壁部24a及び底壁部24bが耐火材で構築されていて、燃焼ガスdが導入される内部の温度を灰48中の未燃分が燃焼する温度に保持可能な構成とされている。これにより、沈降途中の灰48中の未燃分や灰受部24の内底部に沈降した灰48中の未燃分は、燃焼ガスdに残存している酸素(余剰酸素)により燃焼する。
【0094】
更に、灰受部24は、側壁部24aに、空気49を灰受部24内に供給する空気供給ライン50が接続されている。これにより、灰受部24では、空気供給ライン50から供給される空気49により、灰受部24に沈降した灰48中の未燃分の燃焼が更に促進されるようにしてある。
【0095】
灰受部24の側壁部24aには、灰を排出させるための灰排出口51があり、灰受部24から定期的(たとえば、月に1回程度)に灰48を掻き出せるようにしてある。図示してないが、灰排出口51には開閉用の蓋が備えられている。
【0096】
ガス集合部45の側壁部には、燃焼ガス出口52が設けられている。燃焼ガス出口52は、燃焼ガス排出ライン54を介してサイクロン53に接続されている。これにより、燃焼ガス出口52より排出される燃焼ガスdは、サイクロン53で灰が除去された後、図示しない煙突や排ガス処理装置等を経て大気へ放出される。
【0097】
なお、図3では、一例として、燃焼ガス出口52をガス集合部45の側壁部に設けた構成を示しているが、缶体20の頂部に燃焼ガス出口52を設けて、缶体20の頂部から燃焼ガスdを排出させるようにしてもよい。
【0098】
又、燃焼ガス導入用煙管23は、入口46を缶体20の胴部25に開口させた構成を示したが、入口46側を上部鏡板26に貫通させると共に、缶体20の上方や、ガス集合部45の側壁部に開口させて、上部鏡板26の上側から燃焼ガスdを導入させるようにしてもよい。
【0099】
図3において、符号55は、燃焼ガス導入用煙管23の熱膨張を吸収するため途中位置に設けたエキスパンション部である。符号56は循環ポンプである。
【0100】
本実施形態のバイオマス利用方法によれば、破砕工程P1と水分低減工程P2とを備えているので、形状の異なる原料aや水分の異なる原料aを基に、バーナ9で燃料として用いたり、木粉cの製造原料として用いたりする木質バイオマス燃料bを製造することができる。
【0101】
燃焼工程P5で、バーナ9を起動させる場合は、先ず、パイロットバーナ42を点火した状態で、木粉供給機40に供給されている木粉cを粉体燃料ノズル14から燃焼室10に吹き込むと共に搬送用空気36bを燃焼室10に吹き込む。これにより、燃焼室10では、木粉cは搬送用空気36bを用いて燃焼されるようになるので、その燃焼熱により、燃焼室10及び流動層12の温度を木質バイオマス燃料bの着火温度以上に昇温させる。このとき、流動層12は、流動化空気36aによる熱媒体12aの流動を行わせるようにし、又、燃焼空気供給ノズル15から燃焼室10への燃焼用空気36dの供給と、主燃焼空気供給ノズル16からガス通路17への主燃焼用空気36eの供給を開始しておく。
【0102】
次いで、バーナ9は、燃焼室10及び流動層12の温度が木質バイオマス燃料bの着火温度まで昇温した後、木質バイオマス燃料供給ノズル13から燃焼室10への木質バイオマス燃料bの供給を開始する。これにより、燃焼室10では、木質バイオマス燃料bの燃焼用空気36dによる浮遊状態での部分燃焼と熱分解ガス化が行われる。更に、浮遊状態では部分燃焼又は熱分解ガス化が完全に進行しきれない比較的大きな粒径の木質バイオマス燃料bは、流動層12まで落下して、流動層12にて流動化空気36aを用いて部分燃焼と熱分解ガス化が行われる。燃焼室10における木質バイオマス燃料bの熱分解ガス化によって生じた可燃性ガスを含むガスは、その後、ガス出口11からガス通路17へ連続的に導かれる。
【0103】
ガス通路17では、燃焼室10より連続的に導かれる可燃性ガスを含むガスに対し、主燃焼空気供給ノズル16から主燃焼用空気36eが供給されるため、可燃性ガスの主燃焼が行われる。これにより、バーナ9は、前記主燃焼により生じる高温の燃焼ガスdを、火炎噴出口18より煙管ボイラ19に供給することができる。
【0104】
したがって、バーナ9は、冷間時からバイオマスの粉体燃料である木粉cを用いて起動することができるという利点を有し、また、本実施形態では、木粉cと木質バイオマス燃料bを併用することにより、高い燃焼応答性を有するバイオマス利用方法とすることができる。
【0105】
更に、バーナ9は、粉体燃料ノズル14より供給する木粉cの供給量の制御によって燃焼室10の温度をコントロールすることができるため、燃焼制御に対する応答性をより向上させることができる。
【0106】
バーナ9は、パイロットバーナ42用の燃料43以外の燃料をすべてバイオマス由来とすることができて、カーボンニュートラルに配慮した装置とすることができる。
【0107】
又、木質バイオマス燃料bのうちの比較的小さい粒径のものは、ガス化燃焼空間38で浮遊状態で部分燃焼と熱分解ガス化によって消費することができるため、流動層12は、燃焼室10に供給される木質バイオマス燃料bの全量を受け入れることはない。したがって、バーナ9は、流動層12の小型化を図ることができると共に、流動層12の層高も浅くすることができるため、流動化空気36aの供給のために送風機34に必要とされる動力の低減化を図ることができる。
【0108】
本実施形態で用いるバーナ9は、起動や燃焼制御のためには木粉cを用いるが、それ以外のバイオマス由来の燃料は、粒径が500μm〜25mm程度と比較的大きい木質バイオマス燃料bを使用することができる。よって、本実施形態で用いるバーナ9は、使用する燃料の全量を粉砕処理によって製造される木粉cとする必要はなく、更に、木質バイオマス燃料bの含水率の制限は木粉cに比して緩いため、燃料の生産性の向上化と燃料製造コストの低減化を図ることができる。
【0109】
更に、バーナ9では、粉体バイオマス燃料である木粉cは、粉体燃料ノズル14から搬送用空気36bと共に燃焼室10に吹き込んで燃焼させるようにし、より粒径が大きい木質バイオマス燃料bは、木質バイオマス燃料供給ノズル13から燃焼室10に供給してガス化燃焼空間38や流動層12での部分燃焼と熱分解ガス化に供するようにしてある。したがって、バーナ9は、バイオマス由来の粒径が異なる燃料を、燃料性状にあった供給手法で燃焼室10に供給して効率良く燃焼させることができる。
【0110】
バーナ9のガス出口11からガス通路17に導かれた可燃性ガスを含むガスは、主燃焼空気供給ノズル16よりガス通路17内に供給される主燃焼用空気36eによりガス中の可燃性ガスの主燃焼が行われる。この主燃焼により高温となった燃焼ガスdは、火炎噴出口18から煙管ボイラ19の燃焼ガス導入用煙管23内に噴出される。
【0111】
燃焼ガス導入用煙管23内に噴出された燃焼ガスdは、燃焼ガス導入用煙管23の下端の出口47より煙管ボイラ19の灰受部24内に入って灰48を分離した後、各煙管22内をガス集合部45に至るまで流通する。この間に高温の燃焼ガスdと缶体20内の水21とは、各煙管22の管壁を介して熱交換が行われ、水21は温水となってライン28を介し熱利用施設29へ取り出されて、熱利用に供せられる。
【0112】
本実施形態で用いる煙管ボイラ19は、灰分を多く含むというバイオマスの特性に合わせて、燃焼ガスdに含まれる灰48を燃焼ガスdから分離させて沈降させる灰受部24を備えた構成としてあるので、各煙管22内への灰48の付着を抑制して熱交換の効率を低下させることが防止できる。これにより、煙管ボイラ19は長期間の運転が可能となる利点がある。
【0113】
したがって、本実施形態のバイオマス利用方法及び装置によれば、様々な性状、形状のバイオマスを、バーナ9の燃料として利用することができると共に、バーナ9における燃焼制御に対する応答性の向上化を図ることができる。このため、原料aとなる木質バイオマスを収集可能な地域が小規模な場合であっても、木質バイオマスを燃料として用いて発生させる熱の熱利用施設29での利用を図るシステムの構築が可能になる。
【0114】
なお、本発明のバイオマス利用方法及び装置は、前記した実施形態のもののみに限定されるものではなく、木質バイオマスを燃料として利用できるように水分量を10%程度低減することができるものであれば、図2に示す脱水装置2以外のものを用いるようにしてもよい。又、煙管ボイラ19は温水ボイラについて例示したが、バーナ9から噴出される高温の燃焼ガスdと熱交換して熱を発生させることができるものであれば、いかなる形式のボイラでもよい。
【0115】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0116】
P1 破砕工程
P2 水分低減工程
P3 貯留工程
P4 粉砕工程
P5 燃焼工程
P6 熱回収工程
P7 熱利用工程
P8 排熱利用工程
a,a1 原料
b 木質バイオマス燃料
c 木粉
d 燃焼ガス
1 破砕機
2 脱水装置
4 ローラ
5 ローラ
7 燃料ヤード
8 粉砕機
9 バーナ
10 燃焼室
11 ガス出口
12 流動層
12a 熱媒体
13 木質バイオマス燃料供給ノズル
14 粉体燃料ノズル
15 燃焼空気供給ノズル
16 主燃焼空気供給ノズル
17 ガス通路
18 火炎噴出口
19 煙管ボイラ
20 缶体
21 水
22 煙管
23 燃焼ガス導入用煙管
24 灰受部
29 熱利用施設
30 空気予熱器
30a 空気供給ライン
図1
図2
図3
図4
図5