(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
幅方向の中央部で山型に中折れ可能な荷台部、該荷台部の幅方向両側に折り畳み可能に配設されて外面にタイヤ車輪が回転自在に取り付けられる左右一対の側壁部材、前記荷台部の前後に着脱可能に配設される前壁部材と後壁部材、及び前記側壁部材の前端両側に配設されるハンドルを有するリヤカー本体と、該リヤカー本体の前記荷台部上方に載置可能な担架と、を備え、
前記リヤカー本体の荷台部上方の4隅で、前記前壁部材と後壁部材の幅方向上部両端部に、その高さ位置が前記前壁部材と後壁部材で互いに異なる係止部がそれぞれ設けられ、該係止部で前記荷台部上方に載置された前記担架の幅方向の移動が規制されると共に、前記前壁部材と後壁部材の上部に前記担架の脚部が当接することで当該担架の前後方向の移動が規制されることを特徴とする防災用折り畳み式リヤカー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなリヤカーにあっては、リヤカー本体が単に折り畳み可能な略箱状に形成されているのみであるため、荷台部上に乗せた災害備品等は運搬できるものの、災害発生時に最優先される担架に乗せられた負傷者等を運搬することは現実的に困難である。また、負傷者を乗せた担架の運搬には地域住民等の少なくとも2人の救助者を必要とすると共に、各救助者への体力的な負担が大きくなり易く、負傷者を効率的に安全な場所まで運搬することが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、災害発生時等に負傷者を担架に乗せた状態で安全な場所まで効率良く移動できると共に、一人でも移動させることが可能な防災用折り畳み式リヤカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、幅方向の中央部で山型に中折れ可能な荷台部、該荷台部の幅方向両側に折り畳み可能に配設されて外面にタイヤ車輪が回転自在に取り付けられる左右一対の側壁部材、前記荷台部の前後に着脱可能に配設される前壁部材
と後壁部材、及び前記側壁部材の前端両側に配設されるハンドルを有するリヤカー本体と、該リヤカー本体の前記荷台部上方に載置可能な担架と、を備え、前記リヤカー本体の荷台部上方の4隅
で、前記前壁部材と後壁部材の幅方向上部両端部に、その高さ位置が前記前壁部材と後壁部材で互いに異なる係止部がそれぞれ設けられ、該係止部で前記荷台部上方に載置された
前記担架の幅方向の移動が規制されると共に、
前記前壁部材と後壁部材の上部に前記担架の脚部が当接することで当該担架の前後方向の移動が規制さ
れることを特徴とする。
【0007】
また、請求項
2に記載の発明は、前記係止部が内外一対の係止部材をそれぞれ有し、外側の係止部材の高さが内側の係止部材より高く設定されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項
3に記載の発明は、前記側壁部材の下端前端部に所定高さの脚がそれぞれ設けられると共に、前記側壁部材の下端後端部に折り畳み可能な傾動防止機構が設けられることを特徴とする。また、請求項
4に記載の発明は、前記ハンドルが握持部と支持部を有する平面視略コ字状に形成され、前記握持部の下方近傍に前記担架の前端部が位置することを特徴とする。
【0009】
また、請求項
5に記載の発明は、前記担架が、前記一対の支持フレームが折り畳み可能に構成されると共に、前記支持フレームの少なくとも前後を連結し下方に窪んだ凹部を有する連結フレームが折り畳み可能に構成されて、前後方向及び又は幅方向に折り畳み可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、リヤカー本体の荷台部上方の4隅に、担架の左右一対の支持フレームが係止される係止部がそれぞれ設けられ、この係止部で荷台部上方に載置された担架の幅方向の移動が規制されると共に
、係止部で担架の前後方向の移動も規制されるため、リヤカー本体の荷台部上方に災害発生時に負傷者を載せた担架を安定載置した状態で、ハンドル操作によるタイヤ車輪の回転でリヤカー本体をスムーズに移動でき、負傷者を安全な場所まで効率良く運搬できると共に、リヤカー本体を一人の救助者でも容易に移動できて、救助者への負担を軽減させること等ができる。
【0011】
また
、前壁部材と後壁部材の幅方向上部両端部にそれぞれ設けられた係止部の高さ位置が前壁部材と後壁部材で互いに異なると共に、前壁部材と後壁部材の上部に担架の脚部が当接することで担架の前後方向の移動が規制されるため、担架を荷台部上方に最適角度で安定載置できて、担架上の負傷者を安全かつ安定した姿勢で運搬することができると共に、係止部を設けた前壁部材と後壁部材を補給部品として提供することで、既存の折り畳み式リヤカーにも容易に適用することができる。
【0012】
また、請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明の効果に加え、係止部が内外一対の係止部材をそれぞれ有し、外側の係止部材の高さが内側の係止部材より高く設定されているため、駐輪しているリヤカー本体に担架を載置する際に、担架の一対の支持フレームを一対の係止部材間に上方から簡単に載置できると共に、支持フレームの幅方向両側への移動を確実に規制して担架上の負傷者の姿勢を一層安定させることができる。
【0013】
さらに、請求項
3に記載の発明によれば、請求項1
または2に記載の発明の効果に加え、側壁部材の下端前端部に所定高さの脚がそれぞれ設けられると共に、側壁部材の下端後端部に折り畳み可能な傾動防止機構が設けられるため、脚が地面に当接することで安定した駐輪状態が得られると共に、傾動防止機構が地面に当接することで、駐輪中のリヤカー本体に負傷者が乗った担架を載置した際のリヤカー本体の反ハンドル側への急な傾動を規制して負傷者への不安を解消することができる。
【0014】
また、請求項
4に記載の発明によれば、請求項1ないし
3に記載の発明の効果に加え、ハンドルが握持部と支持部を有する平面視略コ字状に形成され、握持部の下方近傍に担架の前端部が位置するため、ハンドルの内側への救助者の進入を防止できて、担架を載置したリヤカー本体の移動時の作業の安全性を高めることができる。
【0015】
また、請求項
5に記載の発明によれば、請求項1ないし
4に記載の発明の効果に加え、担架
が折り畳み可能な一対の支持フレームを有し、該支持フレームの少なくとも前後を連結し下方に窪んだ凹部を有する連結フレームが折り畳み可能に構成されて、前後方向及び又は幅方向に折り畳み可能であるため、担架の使用後の防災倉庫等への保管の省スペース化が図れ、折り畳み式のリヤカー本体と共に容易に保管することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図13は、本発明に係わる防災用折り畳み式リヤカー(以下、リヤカーという)の一実施形態を示している。本発明に係わるリヤカー1は、
図1に示すアルミニウム製もしくはアルミニウム合金製のリヤカー本体2と、
図10に示す担架3とを備えている。前記リヤカー本体2は、
図1〜
図3に示すように、平面視長方形状の荷台部4と、この荷台部4の幅方向両側に立設された一対の側壁部材5と、この側壁部材5の前後端部間に立設状態で配設された前壁部材6及び後壁部材7と、前記両側壁部材5の前端部に配設された操舵用のハンドル8等を備えている。
【0018】
また、前記左右一対の側壁部材5の外面には、該側壁部材5に車輪フレーム9で支持及び保護されたチューブレスタイヤを有するタイヤ車輪10がそれぞれ回転自在に取り付けられている。そして、このリヤカー本体2は、各部材が折り畳み可能に構成されている。すなわち、前記荷台部4は、幅方向の中央位置で裏面に設けたヒンジにより上方に山型に折り畳み可能とされ、この荷台部4の幅方向両端部に前記側壁部材5の下端がヒンジによりそれぞれ折り畳み可能(回動可能)に連結されている。
【0019】
また、前記前壁部材6と後壁部材7は、左右の縦枠11とこの縦枠11の上下を連結する横枠12をそれぞれ有して、縦枠11が各側壁部材5の前後端部に内側に開口して設けた断面コ字状の支持板13に上方から脱着可能に嵌め込み支持されている。このとき、前壁部材6の高さH(
図5参照)は、後壁部材7の高さより所定寸法低く設定され、この高さ寸法の違いにより前壁部材6と後壁部材7の識別化が図られ、組み立て時の誤った取り付け(組み立て)が防止されるようになっている。
【0020】
前記ハンドル8は、アルミパイプを折り曲げることにより形成され、握持部8aとこの握持部8aの両端から後方側に伸びた一対の支持部8bと、支持部8bの途中から下方後方に斜めに延びたステー部8c等を有して平面視略コ字状に形成されている。このとき、ハンドル8の大きさは、後述する如く担架3がリヤカー本体2上に載置された際に、
図2及び
図3に示すように、担架3の前端部が握持部8aの下方近傍に位置し、担架3を載置した際にはハンドル8の内側に救助者が入れないようになっている。
【0021】
そして、ハンドル8は、前記支持部8bの後端に下方に垂直状態で設けた一対の嵌合部が、前記両側壁部材5の前端上部に固定したハンドル支持部15aの嵌合孔に嵌合されると共に、前記ステー部8c後端の嵌合部が、側壁部材5の下端に固定したハンドル支持部15bに嵌合され、両ハンドル支持部15a、15bに設けた操作ボルト16の締付けでそれぞれ固定されている。また、前記握持部8aは、支持部8bの先端に嵌合されて図示しないボルトで固定されており、支持部8bから握持部8aを取り外し、操作ボルト16を緩めて支持部8b及びステー部8cをハンドル支持部15を軸に水平面内でそれぞれ回動させることにより、分割状態とされた一対の支持部8b及びステー部8cが、各側壁部材5の上方にそれぞれ位置、すなわち折り畳まれるようになっている。
【0022】
このように構成されたリヤカー本体2は、次のようにして折り畳まれる。先ず、前壁部材6と後壁部材7を上方に持ち上げて、前記支持板13及び後述するロッド嵌合部材17から引き抜いて両側壁部材5間から取り外す。また、ハンドル8の握持部8aを支持部8bから取り外し、先端が自由となった支持部8b及びステー部8cを前記操作ボルト16を緩めて両側壁部材5の上方に回動位置させる。そして、荷台部4の中央を上方に持ち上げて山折り状態として、荷台部4の幅方向両端に折り畳み(回動)可能に連結された両側壁部材5間に、山折りで折り畳まれた荷台部4を位置させる。
【0023】
その後、折り畳まれた一対の荷台部4と両側壁部材5間の隙間に、取り外した前壁部材6と後壁部材7を収納(もしくは別場所に保管)すると共に、取り外してある平面視コ字状のハンドル8の握持部8aの両端を、両側壁部材5の外面所定位置に固定してある一対の支持パイプ18(
図1参照)に上方から差し込む。これにより、折り畳まれた状態の荷台部4と両側壁部材5の開きが防止され、この状態で折り畳まれたリヤカー本体2が保管されることになる。
【0024】
前記リヤカー本体2の前壁部材6及び後壁部材7の幅方向の両端部上には、後述する担架3の支持フレーム3aを係止支持する係止部19がそれぞれ設けられている。この係止部19は、
図4及び
図5に示すように、前壁部材6の縦枠11と横枠12の連結部(角部)上面に固定されたブロック19aと、このブロック19aの上面に所定間隔で固定された一対の係止部材19b、19cを有している。係止部材19b、19cは、所定長さのアルミ棒で形成され、外側の係止部材19bはブロック19aの上面に垂直状態で固定され、内側の係止部材19cはブロック19aの上面に水平かつ担架の支持フレーム3aと平行な状態で固定されている。
【0025】
また、前記係止部19には、前記ブロック19aに固定されたブロック19dと、このブロック19dの先端に固定されたロッド19eを有し、ロッド19eは垂直状態で固定され、このロッド19eが前記両側壁部材5の前後端部に固定された前記ロット嵌合部材17の嵌合孔に嵌め込み固定されるようになっている。なお、前壁部材6と後壁部材7は、
図5に示す縦枠11の高さHが異なるのみで他については同一に構成されている。
【0026】
そして、この前壁部材6と後壁部材7は、
図6及び
図7に示すように、各縦枠11の下部側が両側壁部材5の前後端面に固定された前記支持板13の平面視コ字状凹部内に上方から嵌め込まれると共に、ロッド19eが前記ロッド嵌合部材17に上方から挿入嵌合されることにより、両側壁部材5の前後端部に取り付けられる。
【0027】
前記リヤカー本体2は、
図1、
図3に示すように、一方(
図1では右側)の側壁部材5の外面側のタイヤ車輪10の前方に駐輪機構21が設けられている。この駐輪機構21は、
図8に示すように、リンク機構23と操作部24及び押圧部材25等を有している。リンク機構23は、一方の側壁部材5(もしくは荷台部2)の外面に一対の固定板22を介して固定された、互いに回動自在に連結された3つのリンク板23a〜23cを有している。また、操作部24は、略棒状に形成されその下端がリンク機構23のリンク板23aとリンク板23bの連結部分に連結されると共に上端に摘み24aを有し、さらに、押圧部材25は、略棒状に形成されその基端部がリンク板23bに固定され、先端部がタイヤ車輪10方向に向けて延設されている。
【0028】
そして、操作部24を押し下げた非作動位置においては、押圧部材25が後退してその先端部とタイヤ車輪10との間に所定の間隙が確保されて、タイヤ車輪10の回転が自由となっている。この状態で、操作部24の摘み24aを掴んで上方(
図8の矢印ロ方向)に引き上げることにより、各リンク板23a〜23cが
図8の二点鎖線で示すように回動し、押圧部材25が前方に進出してその先端面がタイヤ車輪10の外周面に所定圧で当接する。なお、操作部24は、側壁部材5の外面に固定されたガイド板24bでガイドされて上下動するようになっている。
【0029】
これによりタイヤ車輪10の回転が規制され、リヤカー本体2を所定場所に駐輪できることになる。このとき、押圧部材25のタイヤ車輪10への当接位置は、タイヤ車輪10の軸芯を水平に結ぶ線より下側となるように設定されており、押圧部材25でタイヤ車輪10の回転が確実に規制されることになる。なお、
図1においては、駐輪機構21を便宜上カバーで覆うようにしているが、このカバーは必ずしも必要ではなく、省略することも勿論可能である。
【0030】
前記リヤカー本体2には、
図3に示すように、両側壁部材5(もしくは荷台部4)の後端部下面両側に傾動防止機構27がそれぞれ設けられている。この傾動防止機構27は、
図9に示すように、下端に当接板27aが固定されたロッド27bと、このロッド27bの上端を回動可能に支持する支持金具27cと、ロッド27bの係止棒と側壁部材5の係止棒との間に配設されたスプリング27d等を有している。そして、傾動防止機構27の作動位置である
図9の実線位置から、ロッド27bを足や手で矢印イの如く押して回動させることにより、ロッド27bが二点鎖線で示すように側壁部材5の下部に折り畳まれるようになっている。
【0031】
なお、前記スプリング27dは、ロッド27bを収納位置に保持すると共に、その付勢力に抗して反矢印イ方向に90度以上回動されることで、ロッド27bを実線で示す作動位置に保持するようになっている。また、ロッド27bの当接板27a下端の高さ位置は、
図3に示す側壁部材5の先端下部にそれぞれ設けられる脚28の高さより所定寸法高く設定されて、リヤカー本体2が後方側(後壁部材7側)に傾動し当接板27aが路面Rに接触した際に、リヤカー本体2が路面Rに対して例えば略平行となるように設定されている。このロッド27bの長さは、当接板27aをロッド27bに対して伸縮可能として調整できるようにしても良い。
【0032】
図10〜
図13は、前記リヤカー本体2に載置される担架3の一実施形態を示している。この担架3は、
図10及び
図11に示すように、左右一対の支持フレーム3aと、この支持フレーム3a間に配設されたシート3bを有している。前記支持フレーム3aは、例えばアルミパイプで形成された2本のパイプ31を有し、これらが連結金具32の二つの軸32aで、
図11の二点鎖線で示すように折り畳み可能に連結されると共に、負傷者が乗せられていない初期状態においては、連結金具32部分が上方に寸法h反った状態となっている。
【0033】
また、両支持フレーム3aの各パイプ31の両先端にはゴム製のグリップ33が嵌挿されると共に、両支持フレーム3aの長手方向の両端所定位置には、所定高さの脚部34がそれぞれ(合計4個)固定されている。この脚部34は、担架3に乗せた負傷者の身体を拘束する図示ないベルトが取り付けられるベルト取付孔34aを有すると共に、一対の支持フレーム3aを連結する板状の連結フレーム35の端部がそれぞれ回動可能に連結されている。なお、前後一対の脚部34の間隔は、前記リヤカー本体2の前壁部材6と後壁部材7の間隔と同一か大きめとなるように設定されている。
【0034】
そして、前記連結フレーム35は、
図12に示すように、基端側が前記脚部34に連結され先端側が基端部より低く形成された左右一対の連結板35aと、この両連結板35aの先端を回動可能に連結する連結支持板35bを有している。この両連結板35aと連結支持板35bとにより、一対の連結板35aが連結されて両支持フレーム3aが所定幅に設定されると共に、連結フレーム35の幅方向中央に下方に窪んだ凹部36が形成され、この凹部36によりシート3b上に乗せられた負傷者の身体が、シート3bを介して連結板35aに接触しないようになっている。
【0035】
また、前記連結支持板35bは、
図13に示すように、支持フレーム3aの長手方向の内側に開口した断面コ字状に形成され、両連結板35aの先端がピンにより回動可能に連結されている。そして、連結支持板35bを矢印ニの如く押すことにより、両連結板35aが矢印ホの如く回動、すなわち連結板35aが折り畳まれた状態となる。なお、前記シート3bは、例えば防水加工されたポリエステル、布等で形成され、その幅方向両端に設けたフレーム支持部に、前記支持フレーム3aがそれぞれ挿入もしくは嵌装されるようになっている。
【0036】
次に、本発明に係わるリヤカー1の使用方法の一例について説明する。例えば災害が発生して負傷者を安全な場所まで避難させようとする場合、先ず、地区の防災倉庫等に保管されているリヤカー本体2と担架3を取り出し、折り畳まれた状態のリヤカー本体2を組み立てて、
図1に示す状態にする。このリヤカー本体2の組み立ては、前述した折り畳みと逆の操作で行うことができ、その際、リヤカー本体2の前記駐輪機構21を作動させてタイヤ車輪10の回転を規制すると共に、前記傾動防止機構27を作動位置に設定する。
【0037】
また、折り畳まれた状態の担架3を組み立てて
図10に示す状態とし、この担架3の組み立ても両パイプ31を直線状に延ばすと共に、一対の連結板35aを直線状に延ばすことで行うことができる。そして、この状態で担架3のシート3b上に負傷者を載せ、救助者2人で担架3のグリップ33を握って持ち上げ、近くに駐輪状態(脚部34が路面Rに接触し駐輪機構21が作動状態で
図3の二点鎖線aで示す状態)としてあるリヤカー本体2上に載置する。
【0038】
このとき、担架3のシート3b上に負傷者が乗せられると、反った状態の支持フレーム3aの長手方向中央部が負傷者の重さにより沈んで略水平状態となる。そして、2人の救助者により担架3をリヤカー本体2の側壁部材5の上方まで持ち上げ、担架3の脚部34を前壁部材6と後壁部材7の外側に位置させて、負傷者の頭部が後壁部材7側となるようにし、
図2に示すように両支持フレーム3aを前壁部材6と後壁部材7の前記係止部19に上方から載置係止させる。これにより、担架3がリヤカー本体2上に載置される。
【0039】
この担架3の両支持フレーム3aを前壁部材6と後壁部材7の係止部19の一対の係止部材19b、19cにそれぞれ係止させることで、支持フレーム3aの幅方向への移動が規制される。また、支持フレーム3aの前後方向の移動は、
図6に示すように、脚部34の内端面が前記ブロック19aを含む係止部19もしくは前壁部材6や後壁部材7の上部外面に当接して規制される。このとき、担架3の前後の脚部34の間隔と前壁部材6と後壁部材7の間隔が略同一の場合は、2つの脚部34により担架3の前後方向の移動が規制される。また、前後の脚部34の間隔が大きくても、一方の脚部34を前壁部材6か後壁部材7に当接させることで前後方向への移動が規制されることになる。
【0040】
また、担架3をリヤカー本体2上に載置する際に、負傷者の頭部が高さの高い後壁部材7側となるため、頭部の重さでリヤカー本体2の後壁部材7側が路面R方向に急に傾動する場合もあり得るが、この傾動は、
図3の二点鎖線bで示すように、前記傾動防止機構27の所定長さのロッド27bの当接板27aが路面Rに当接することで略水平位置に抑えられる。そして、担架3が載置されたら、傾動防止機構27を収納位置に設定すると共に、駐輪機構21を非作動位置に設定して、ハンドル8の握持部8aを握りながらハンドル8を持ち上げて、
図3の実線cで示すようにリヤカー本体2を路面Rに対して略平行な走行状態として、ハンドル8を例えば押すことによりリヤカー本体2を移動させる。
【0041】
この移動時に、リヤカー本体2は比較的大きなタイヤ車輪10の回転で移動することから、移動させるための力を軽くでき、救助者一人による移動が可能になると共に、リヤカー本体2を後壁部材7側に押して移動させることから、移動操作時に担架3上の負傷者の顔色を確認しつつ行うことができて、負傷者の安全な移動が可能になる。なお、担架3を載置したリヤカー本体2の移動は、救助者二人で行うことも勿論可能であり、その際は後壁部材7側を持つ救助者が負傷者の様子を確認しつつ、リヤカー1を移動操作する救助者がハンドル8を牽引することで行えば良い。
【0042】
このように、前記リヤカー1によれば、リヤカー本体2の荷台部4上方の4隅に、担架3の左右一対の支持フレーム3aが係止される係止部19がそれぞれ設けられ、この係止部19で前壁部材6及び後壁部材7上に載置された担架3の幅方向の移動が規制されると共に、前壁部材6と後壁部材7の上部で担架3の前後方向の移動が規制されるため、リヤカー本体2の荷台部4上方に災害発生時に負傷者を載せた担架3を安定載置した状態で、ハンドル操作によるタイヤ車輪10の回転でリヤカー本体2をスムーズに移動でき、負傷者を安全な場所まで素早く効率良く運搬できると共に、リヤカー本体2を一人の救助者でも容易に移動できて、救助者への負担を軽減させることができる。
【0043】
また、前壁部材6と後壁部材7の幅方向上部両端部にそれぞれ設けられた係止部19の高さ位置が前壁部材6と後壁部材7とで互いに異なると共に、前壁部材6と後壁部材7の上部に担架3の脚部34が当接することで担架3の前後方向に移動が規制されるため、担架3を荷台部4上方に最適角度で安定載置できて、担架3上の負傷者に安心を与えつつ安定した姿勢で運搬することができる。
【0044】
特に、係止部19が内外一対の係止部材19a、19bをそれぞれ有し、外側の係止部材19aの高さが内側の係止部材19bより高く設定されているため、駐輪しているリヤカー本体2に担架3を載置する際に、担架3の一対の支持フレーム3aを一対の係止部材19間に上方から簡単に載置できると共に、高さの高い外側の係止部材19aで担架3のリヤカー本体2上からの脱落を確実に阻止することができる。また、載置した担架3を安全な避難場所等で降ろす際に、担架3を少し斜めとすることで一方の高さの低い内側の係止部材19bとの係止状態を解除しつつ外側の係止部材19aによる係止も解除できて、担架3の持ち上げ高さをできるだけ低くした状態で降ろすことができ、その作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0045】
さらに、担架3が載置される前壁部材6と後壁部材7の高さが異なった形状で識別できるように構成されているため、リヤカー本体2の組み立て時の誤った取り付けを防止できて、リヤカー本体2を素早く組み立てできると共に、前壁部材6と後壁部材7を補給部品とすることにより、既存するリヤカー本体2に適用して、防災用のリヤカー1を安価なコストで簡単に構築することができる。
【0046】
また、側壁部材5の下端前端部に所定高さの脚28がそれぞれ設けられると共に、側壁部材5の下端後端部に折り畳み可能な傾動防止機構27がそれぞれ設けられているため、脚28が路面Rに当接することで安定した駐輪状態が得られると共に、傾動防止機構27が路面Rに当接することで、駐輪中のリヤカー本体2に負傷者が乗った担架3を載置した際のリヤカー本体2の反ハンドル8側への急な傾動を規制して負傷者の頭部が低くなること等を防止でき、運搬時等の負傷者の不安を解消することができる。
【0047】
また、一方の側壁部材5の外面に駐輪機構21を設けているため、この駐輪機構21を操作することでタイヤ車輪10の回転を規制することができ、脚28と併せて駐輪時のリヤカー本体2の移動を確実に阻止して、負傷者が乗せられた担架3をリヤカー本体2上に安定して載置することができる。特に、駐輪機構21の押圧部材25をタイヤ車輪10の下半分の外周面に当接させることで、タイヤ車輪10の回転を効果的に規制でき、路面Rの状況に係わらず一層安定した駐輪状態を得ることができる。
【0048】
また、ハンドル8が握持部8aと支持部8bを有する平面視略コ字状に形成され、握持部8aの下方近傍に担架3の前端部が位置するため、ハンドル8の内側への救助者の進入を防止できて、担架3を載置したリヤカー本体2の移動時の作業の安全性を十分に高めることができる。またさらに、担架3の一対の支持フレーム3aが折り畳み可能に構成されると共に、支持フレーム3aの前後を連結し下方に窪んだ凹部36を有する連結フレーム35が折り畳み可能に構成されて、前後方向と幅方向にそれぞれ折り畳み可能であるため、担架3の使用後の防災倉庫等への保管の省スペース化が図れて、折り畳み式のリヤカー本体2と共に簡単に保管できる等、使い勝手に優れたリヤカー1を得ることができる。
【0049】
なお、前記実施形態においては、前壁部材6の高さを側壁部材5と略同一にし後壁部材7を前壁部材6より高く設定したが、例えば後壁部材7の高さを側壁部材5と略同一にし前壁部材6をこれより低く設定するようにしても良い。この場合は、担架3が前壁部材6及び後壁部材7上に載置された際に、その幅方向両側に側壁部材5の上部が位置することになって、例えば担架3に乗せられた負傷者が側壁部材5の上部を掴むことができ、移動時の負傷者の不安を解消することができる。勿論、前壁部材6と後壁部材7の高さが前記実施形態の場合においても、側壁部材5の上部に把手等を着脱可能に配設することでも、同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、前記実施形態においては、係止部19として2つのブロック19a、19dを設けると共に係止部材19b、19cを棒状に形成したが、例えば係止部19のブロック19a、19d同士を一体化させたりブロック19a、19dを縦枠11や横枠12と一体化することもできるし、係止部材19b、19cの形状も棒状に限らず、外側の係止部材19aをフック形状とする等、適宜の形状を採用することができる
。
【0051】
さらに、前記実施形態における、前壁部材6や後壁部材7の構成、駐輪機構21の設置場所等は一例であって、例えば前壁部材6や後壁部材7を一枚板構造としたり、これらを形状の識別化と共に色彩による識別化を図って良いし、駐輪機構21を両方の側壁部材5の外面にそれぞれ設け、操作部24のみを一方の側壁部材5の外面に配設するようにしても良い。また、担架3の構成も前記実施形態に限定されず、支持フレーム3aが水平状態等の各種の担架3を使用したり、幅方向にのみ折り畳み可能な適宜の担架3を使用することも勿論可能である。