特許第6592323号(P6592323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社内山商会の特許一覧

<>
  • 特許6592323-リヤカー 図000002
  • 特許6592323-リヤカー 図000003
  • 特許6592323-リヤカー 図000004
  • 特許6592323-リヤカー 図000005
  • 特許6592323-リヤカー 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592323
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】リヤカー
(51)【国際特許分類】
   B62B 1/10 20060101AFI20191007BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B62B1/10
   B62B5/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-200511(P2015-200511)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-71345(P2017-71345A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391028100
【氏名又は名称】株式会社内山商会
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】内山 隆
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−001688(JP,U)
【文献】 特開平09−221032(JP,A)
【文献】 特開平11−022755(JP,A)
【文献】 米国特許第06443268(US,B1)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0473749(KR,Y1)
【文献】 英国特許出願公告第01139796(GB,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0114132(KR,A)
【文献】 特開2000−300608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00−5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坦な荷台部と、該荷台部の幅方向両側に配設されて外面にタイヤ車輪が回転自在に取り付けられる左右一対の側壁部材と、該側壁部材の先端下部に配設される脚と、前記荷台部の前後に配設される前壁部材及び後壁部材と、前記荷台部の前端両側に配設されるハンドルと、を備え、
前記タイヤ車輪の前方で前記ハンドルとの間の前記一対の側壁部材の一方の外面に、前記タイヤ車輪の回転を規制する駐輪機構を配設し、当該駐輪機構は、前記一方の外面に配設された操作部を引き上げ操作することで、当該操作部に連結されたリンク機構に設けたタイヤ押圧部がタイヤ車輪方向に移動し当該タイヤ車輪の外周面に当接してその回転を規制することを特徴とするリヤカー。
【請求項2】
前記駐輪機構は、前記タイヤ押圧部が前記タイヤ車輪の軸芯を結ぶ水平線よりハンドル側の下半分の外周面に当接することを特徴とする請求項1に記載のリヤカー。
【請求項3】
前記荷台部の後端両側部分の下面に、荷台部後端の路面方向への傾動を規制する傾動防止機構を折り畳み可能に配設し、当該傾動防止機構のロッドの当接板下端の高さ位置が前記脚の高さより所定寸法高く設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリヤカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種荷物等を運搬する際に使用されるリヤカーに係わり、特に駐輪時のタイヤ車輪の回転を規制可能なリヤカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種荷物等の運搬車として使用されるリヤカーは、例えば特許文献1に開示されている。このリヤカーは、荷物が積載される平坦な荷台部と、この荷台部の幅方向両側に配設された側部と、荷台部の前後に配設された前部及び後部と、側部の前端に配設された牽引ハンドル等で構成されている。また、側部外面にはタイヤ車輪がそれぞれ回転自在に取り付けられると共に、側部の前部両端の下面には路面に当接可能な脚がそれぞれ配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−39796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなリヤカーにあっては、側部外面に配設されるタイヤ車輪が常に回転自在となっていることから、リヤカーを駐輪する場合、牽引ハンドルを下げて脚を路面に当接させることで行っている。そのため、例えばリヤカーを傾斜した路面に駐車した際に、路面が雨等で濡れて滑り易かったり、あるいは荷台に積載される荷物の重心位置がタイヤ車輪の中心位置より後方側に片寄ってる時等に、脚の路面に対する当接力(接触圧力)が弱くなってリヤカーが路面の傾斜に沿って移動してしまう虞があり、リヤカーを所定位置に確実に駐輪することが困難な場合がある。
【0005】
また、路面に当接する脚が荷台の前部下面にのみ配設されているため、例えば荷台の後部から重たい荷物を積載しようとした際に、荷台の後部が下方に傾斜して路面に当接すると共に牽引ハンドルが上方に急に回動することがあり、例えば2人での積載作業が必要になったり積載作業に細心の注意を払う必要がある等、リヤカーの使い勝手が劣る場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、タイヤ車輪の回転を規制できて、路面の形態に係わらず安定した駐輪状態を容易に得ることが可能なリヤカーを提供することにある。また、他の目的は、前記目的に加え、荷物積載時の荷台部後部の路面への当接を規制して、積載作業が容易かつ安全に行えて使い勝手が優れたリヤカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、平坦な荷台部と、該荷台部の幅方向両側に配設されて外面にタイヤ車輪が回転自在に取り付けられる左右一対の側壁部材と、該側壁部材の先端下部に配設される脚と、前記荷台部の前後に配設される前壁部材及び後壁部材と、前記荷台部の前端両側に配設されるハンドルと、を備え、前記タイヤ車輪の前方で前記ハンドルとの間の前記一対の側壁部材の一方の外面に、前記タイヤ車輪の回転を規制する駐輪機構を配設し、当該駐輪機構は、前記一方の外面に配設された操作部を引き上げ操作することで、当該操作部に連結されたリンク機構に設けたタイヤ押圧部がタイヤ車輪方向に移動し当該タイヤ車輪の外周面に当接してその回転を規制することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記駐輪機構の前記タイヤ押圧部が前記タイヤ車輪の軸芯を結ぶ水平線よりハンドル側の下半分の外周面に当接することを特徴とする
【0009】
た、請求項に記載の発明は、前記荷台部の後端両側部分の下面に、荷台部後端の路面方向への傾動を規制する傾動防止機構を折り畳み可能に配設し、当該傾動防止機構のロッドの当接板下端の高さ位置が前記脚の高さより所定寸法高く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、タイヤ車輪の前方でハンドルとの間の所定の側壁部材の外面に、操作部の操作でタイヤ押圧部が移動することにより、タイヤ押圧部がタイヤ車輪の外周面に当接してタイヤ車輪の回転を規制する駐輪機構を配設しているため、ハンドル近傍に配設された駐輪機構を作動させることで、タイヤ車輪の回転を規制(阻止)できて、路面の形態に係わらずリヤカーの安定した駐輪状態を容易に得ることができる。
【0011】
また、駐輪機構の操作部を引き上げ操作することで、操作部に連結されたリンク機構のタイヤ押圧部がタイヤ車輪方向に移動して当該タイヤ車輪の外周面に当接するため、駐輪機構をリンク機構で構成できて、構成簡易で安価に形成できると共に駐輪機構の操作性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、駐輪機構のタイヤ押圧部がタイヤ車輪の軸芯を結ぶ水平線よりハンドル側の下半分の外周面に当接するため、タイヤ車輪の回転を確実かつ効果的に阻止して、一層安定した駐輪状態を容易に得ることができる。
【0013】
さらに、請求項に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、荷台部の後端両側部分の下面に、荷台部後端の路面方向への傾動を規制する傾動防止機構を折り畳み可能に配設しているため、荷物の積載時に傾動防止機構を作動させることにより、荷台部後部の傾動による路面への当接を規制(阻止)できて、積載作業を一人でも容易かつ安全に行うことができる等、使い勝手に優れたリヤカーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係わるリヤカーの一実施形態を示す斜視図
図2】同その平面図
図3】同側面図
図4】同駐輪機構の正面図
図5】同傾動防止機構の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1図5は、本発明に係わるリヤカーの一実施形態を示している。図1図3に示すように、リヤカー1は、平面視長方形状の荷台部2と、この荷台部2の幅方向両側に立設された一対の側壁部材3と、この側壁部材3の前後端部間に立設状態で配設された前壁部材4及び後壁部材5と、前記両側壁部材3の前端部に配設されてリヤカー1を前方もしくは後方に移動させるためのハンドル6等を備え、これらが後述する如く折り畳み可能に構成されている。
【0016】
また、前記左右一対の側壁部材3の外面には、該側壁部材3に車輪フレーム7で支持及び保護されたチューブレスタイヤを有するタイヤ車輪8がそれぞれ回転自在に取り付けられている。そして、このリヤカー1は、各部材が折り畳み可能に構成されている。すなわち、前記荷台部2は、幅方向の中央位置で裏面に設けたヒンジにより上方に山型に折り畳み可能とされ、この荷台部2の幅方向両端部に前記側壁部材3の下端がヒンジによりそれぞれ折り畳み可能(回動可能)に連結されている。
【0017】
また、前記前壁部材4と後壁部材5は、左右の縦枠9とこの縦枠9の上下を連結する横枠10等をそれぞれ有して、縦枠9が各側壁部材3の前後端部に内側に向けて設けた断面コ字状の支持板11に上方から脱着可能に嵌め込み支持されている。また、前壁部材4と後壁部材5の幅方向両端の上部には、本発明のリヤカー1上に、図2及び図3の二点鎖線で示す担架12を載置するための係止部13がそれぞれ設けられている。
【0018】
前記ハンドル6は、アルミパイプを折り曲げることにより形成され、握持部6aとこの握持部6aの両端から後方側に伸びた一対の支持部6bと、この支持部6bの途中から下方後方に斜めに延びたステー部6c等を有して平面視略コ字状に形成されている。そして、このハンドル6は、前記支持部6aの後端に下方に垂直状態で設けた一対の嵌合部が、前記両側壁部材3の前端上部に固定したハンドル支持部14aの嵌合孔に嵌合されると共に、前記ステー部6c後端の嵌合部が、側壁部材3の下端に固定したハンドル支持部14bに嵌合され、両ハンドル支持部14a、14bに設けた操作ボルト15の締付けでそれぞれ固定されている。
【0019】
また、前記握持部6aは、支持部6bの先端に嵌合されて図示しないボルトで固定されており、支持部6bから握持部6aを取り外し、操作ボルト15を緩めて支持部6b及びステー部6cを、ハンドル支持部14aを軸に水平面内でそれぞれ回動させることにより、分割状態とされた一対の支持部6b及びステー部6cが各側壁部材3の例えば側面上方にそれぞれ位置、すなわち折り畳まれるようになっている。このハンドル6を引っ張ったり押すことにより、リヤカー1が所定方向に移動することになる。
【0020】
このように構成されたリヤカー1は、次のようにして折り畳まれる。先ず、前壁部材4と後壁部材5を上方に持ち上げて、前記支持板11から引き抜いて両側壁部材3間から取り外す。また、ハンドル6の握持部6aを支持部6bから取り外し、先端が自由となった支持部6b及びステー部6cを前記操作ボルト15を緩めて両側壁部材3の上方に回動位置させる。そして、荷台部2の中央を上方に持ち上げて山折り状態として、荷台部2の幅方向両端に折り畳み(回動)可能に連結された両側壁部材3間に、山折りで折り畳まれた荷台部4を位置させる。
【0021】
その後、折り畳まれた一対の荷台部2と両側壁部材3間の隙間に、取り外した前壁部材4と後壁部材5を収納(もしくは別場所に保管)すると共に、取り外してある平面視コ字状のハンドル6の握持部6aの両端を、両側壁部材3の上端外面の所定位置に固定してある一対の支持パイプ16(図1参照)に上方から差し込む。これにより、折り畳まれた状態の荷台部2と両側壁部材3の開きが防止され、この状態で折り畳まれたリヤカー1が得られることになる。
【0022】
また、前記リヤカー1は、一方(図1では右側)の側壁部材3のタイヤ車輪8の前方に駐輪機構18が配設されている。この駐輪機構18は、図4に示すように、リンク機構19と操作部20及びタイヤ押圧部21等を有している。リンク機構19は、一方の側壁部材3(もしくは荷台部2)の外面に一対の固定板19aを介して固定されて、互いに回動自在に連結された3つのリンク板19b〜19dを有している。
【0023】
また、操作部20は、棒状に形成されその下端がリンク機構19のリンク板19bとリンク板19cの連結部分に連結されると共に、上端に摘み20aを有して側壁部材3の外面に固定されたガイド部材20bでガイドされている。さらに、タイヤ押圧部21は、棒状に形成されその基端部がリンク板19cに固定されると共に、先端部に設けた大な当接部21aがタイヤ車輪8方向に向けて延設されている。
【0024】
そして、図4の実線で示す操作部20を押し下げた非作動位置においては、タイヤ押圧部21が後退して当接部21aとタイヤ車輪8との間に所定の間隙が確保されて、タイヤ車輪8の回転が自由となっている。この状態で、操作部20の摘み20aを掴んで上方(図4の矢印イ方向)に引き上げることにより、各リンク板19b〜19dが図4の二点鎖線で示すように回動し、タイヤ押圧部21が前方に進出してその当接部21aがタイヤ車輪8の外周面に所定圧で当接する。
【0025】
これによりタイヤ車輪8の回転が規制(阻止)され、リヤカー1を所定場所に駐輪できることになる。このとき、タイヤ押圧部21のタイヤ車輪8への当接位置は、タイヤ車輪8の回転方向ロの前方で車輪8の軸芯8a(図2参照)を水平に結ぶ水平線より下側となるように設定されており、タイヤ押圧部21でタイヤ車輪8の回転が確実に規制されることになる。なお、図1図3においては、便宜上前記駐輪機構18をカバー22で覆うようにしているが、このカバー22は必ずしも必要ではなく、省略することも勿論可能である。
【0026】
また、前記リヤカー1には、図3に示すように、両側壁部材3(もしくは荷台部2)の後端両側下面に傾動防止機構23がそれぞれ配設されている。この傾動防止機構23は、図5に示すように、下端に当接板23aを有する円柱状もしくはパイプ状のロッド23bと、このロッド23bの上端を回動可能に支持する支持金具23cと、ロッド23bの係止棒23dと側壁部材3の係止棒24との間に配設されたスプリング23e等を有している。
【0027】
そして、傾動防止機構23の作動位置である図5の実線位置から、ロッド23bを足や手で矢印ハの如く押して回動させることにより、ロッド23bが同図の二点鎖線で示すように、側壁部材3の下部側方に折り畳まれて収納位置に設定されるようになっている。この収納位置において、傾動防止機構23はリヤカー1の走行や傾動動作に何等関与しない状態となる。
【0028】
なお、傾動防止機構23のスプリング23eは、ロッド23bを収納位置に保持すると共に、その付勢力に抗して反矢印ハ方向に90度以上回動されることで、ロッド23bを実線で示す作動位置に保持するようになっている。また、ロッド23bの当接板23a下端の高さ位置は、図3に示す側壁部材3の先端下部にそれぞれ固定的に配設される脚25(図1図3参照)の高さより所定寸法高く設定されて、リヤカー1が後方側(後壁部材5側)に傾斜(傾動)して当接板23aが路面Rに接触した際に、リヤカー1が路面Rに対して例えば略平行となるように設定されている。
【0029】
なお、前記当接板23aの高さ位置は、予め固定位置としても良いが、例えばロッド23bを進退可能に配設してその位置を調整するようにしても良い。また、前記リヤカー1は、各部材の略全てがアルミニウム製もしくはアルミニウム合金製とされて、その軽量化が図られている。
【0030】
次に、本発明に係わるリヤカー1の使用方法を、例えば災害発生時等に、負傷者が乗せられた前記担架12を前記リヤカー1上に載置して、負傷者を安全な避難場所まで移動させる場合を例にして説明する。負傷者を安全な場所まで移動させようとする場合、先ず、地区の防災倉庫等に保管されている前記折り畳み式のリヤカー1と例えば折り畳み式の担架12を取り出し、折り畳まれた状態の前記リヤカー1を組み立てて、図1に示す状態にする。このとき、リヤカー1の前記駐輪機構18を作動させてタイヤ車輪8の回転を規制すると共に、前記傾動防止機構23を作動位置に設定する。
【0031】
そして、この状態で担架12上に負傷者を載せ、救助者2人で担架12を持ち上げ、近くに駐輪状態(脚25が路面Rに当接し駐輪機構18が作動状態でタイヤ車輪8の回転が規制され、かつ傾動防止機構23が作動状態で図3に示す状態)としてあるリヤカー1の前記前壁部材4と後壁部材5の係止部13上に、担架12の幅方向両側の支持フレームをそれぞれ載置する。これにより担架12の幅方向の移動が係止部13で規制されて、リヤカー1上に担架12が安定載置されることになる。
【0032】
また、担架12をリヤカー1上に載置する際に、負傷者の頭部がリヤカー1の後部側に位置するようにして載置した場合、リヤカー1の荷台部2の後部の荷重が大きくなり、後部が路面R方向に傾動しようとするが、この傾動は作動状態の傾動防止機構23の当接板23aが路面Rに当接することで規制されて、リヤカー1が後方側に急に大きく傾動することはなく略水平状態に維持される。
【0033】
また同時に、担架12をリヤカー1上に載置する際に、例えば路面Rに傾斜があったり路面Rが雨等で濡れて滑り易い状態であっても、作動状態の駐輪機構18でタイヤ車輪8が回転しないように設定されていることから、リヤカー1が傾斜した路面Rに沿って安易に移動することもなくなる。これらにより、リヤカー1に負傷者が乗せられた担架12を載置する作業が、安全かつ簡単に行うことが可能になる。
【0034】
そして、担架12がリヤカー1上に載置されたら、傾動防止機構23を収納位置に設定すると共に、駐輪機構18を非作動位置に設定して、ハンドル6の握持部6aを握りながら、ハンドル6を持ち上げて、図3の実線で示すようにリヤカー1を路面Rに対して略平行な走行状態として、ハンドル6を例えば引っ張ったり押すことにより、リヤカー1を路面R上で移動させる。
【0035】
この移動時に、リヤカー1は比較的大きなタイヤ車輪8の回転で移動することから、移動させるための力を軽くでき、救助者一人による移動が可能になると共に、この移動作業中の途中で休憩する際等でも、駐輪機構18を作動させることで、リヤカー1の不用意な移動を規制することができ、移動作業に係わる救助者への負担軽減が図れることになる。
【0036】
このように、前記リヤカー1によれば、タイヤ車輪8の前方でハンドル6との間の側壁部材3の外面に、操作部20の操作でタイヤ押圧部21が移動することにより、タイヤ押圧部21の当接部21aがタイヤ車輪8の外周面に当接してタイヤ車輪8の回転を阻止(禁止)する駐輪機構18が配設されているため、操作部20近傍に配設した駐輪機構18の操作で、タイヤ車輪8の回転を規制できて、路面Rの形態に係わらずリヤカー1の安定した駐輪状態を容易に得ることができる。
【0037】
その結果、例えばリヤカー1上に負傷者を乗せた担架12を載置して移動させる場合や、比較的重量のある荷物を荷台部2の後部に積載した場合等で、路面Rが濡れていたり路面Rが傾斜等していても、脚25の移動規制効果に加えて駐輪機構18による移動規制効果が加わり、リヤカー1に路面Rの形態等に係わらず、常に安定した駐輪状態を容易に得ることができて、防災用のリヤカー1等に好適に使用することが可能になる。
【0038】
また、駐輪機構18の操作部20を引き上げ操作することで、操作部20に連結されたリンク機構19に設けたタイヤ押圧部21がタイヤ車輪8方向に移動して当該タイヤ車輪8の外周面に当接するため、駐輪機構18をリンク機構19等で構成できて、構成簡易で安価に形成できると共にその操作性を向上させることができる。また、駐輪機構18のタイヤ押圧部21がタイヤ車輪8の駐輪機構18側の下半分の外周面に当接するため、タイヤ車輪8の回転を確実かつ効果的に阻止して、一層安定した駐輪状態を容易に得ることができる。
【0039】
さらに、リヤカー1の荷台部2の後端両側部分の下面に、荷台部2後端の路面R方向への傾動を規制する傾動防止機構23を折り畳み可能に配設しているため、担架12や重量のある荷物の荷台部2上への積載時に傾動防止機構23を作動させることにより、荷台部2後部の急な傾動による路面Rへの当接を規制(阻止)できると共に、ハンドル6の急な上昇も防止できて、リヤカー1上への荷物等の積載作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0040】
また、リヤカー1が、前壁部材4と後壁部材5の幅方向上部両端部にそれぞれ設けられた担架12載置用の係止部13を有しているため、災害発生時に使用される担架12をリヤカー1上に最適角度で安定載置できて、担架12上の負傷者を安心かつ安定した姿勢で運搬することができる。また同時に、係止部13を設けた前壁部材4と後壁部材5が側壁部材3に着脱可能に配設されているため、前壁部材4と後壁部材5を補給部品として提供することで、既存の折り畳み式のリヤカーにも簡単に適用することができる。
【0041】
なお、前記実施形態においては、駐輪機構18を一対の側壁部材3の一方の外面に配設したが、本発明はこれに限定されず、一対の側壁部材3の外面にそれぞれ配設しても良く、この場合、駐輪機構18の一方の側壁部材3に設けた操作部20の操作で両駐輪機構18が作動するように構成されることが好ましい。また、駐輪機構18の構成としては、リンク機構19等の採用に限らず、シリンダ等を使用して、そのシャフト先端に設けた押圧部でタイヤ車輪8の回転を規制する構成を採用することもできる。
【0042】
また、前記実施形態においては、リヤカー1に駐輪機構18と傾動防止機構23の両方を配設する構成としたが、駐輪機構18のみあるいは傾動防止機構23のみを配設するリヤカー1であっても良い。さらに、前記実施形態における、リヤカー1の各部の構成、傾動防止機構23の構成、ハンドル6の構成等は一例であって、例えば側壁部材3や荷台部2を板状ではなく格子形状としたり、前壁部材4と後壁部材5を板状とする等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、折り畳み式のリヤカーに限らず、一部が折り畳みや取り外し可能なリヤカー、あるいは全ての部材が固定的なリヤカー等、運搬用の全てのリヤカーに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・・・・・・・リヤカー
2・・・・・・・・・荷台部
3・・・・・・・・・側壁部材
4・・・・・・・・・前壁部材
5・・・・・・・・・後壁部材
6・・・・・・・・・ハンドル
8・・・・・・・・・タイヤ車輪
12・・・・・・・・担架
18・・・・・・・・駐輪機構
19・・・・・・・・リンク機構
19a・・ ・・・・固定板
19b〜19d・・・リンク板
20・・・・・・・・操作部
20a・・・・・・・摘み
20b・・・・・・・ガイド板
21・・・・・・・・タイヤ押圧部
21a・・・・・・・当接部
23・・・・・・・・傾動防止機構
23a・・・・・・・当接板
23b・・・・・・・ロッド
23c・・・・・・・支持金具
23e・・・・・・・スプリング
25・・・・・・・・脚
図1
図2
図3
図4
図5