(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側ボディの内周面と前記内側ボディの外周面との間において、前記複数の第1高圧油路,前記第1ドレン油路及び前記回収油路の各相互間と前記軸方向の両外方にシール部材が取り付けられた
ことを特徴とする、請求項5に記載の作業機械のスイベルジョイント。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
以下の実施形態では、本発明の作業機械のスイベルジョイントを、作業機械として油圧ショベルに適用した例を示すが、本発明の作業機械のスイベルジョイントは、油圧ショベル以外にも例えば油圧式クレーン等のような種々の作業機械全般に適用することができる。
また、以下の説明では、特に説明しない限り、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、スイベルジョイントの説明では、特に説明しない限り、スイベルジョイントが水平状態の作業機械に搭載された状態を基準として上下方向を定める。
【0020】
[1.油圧ショベルの構成]
本発明の一実施形態に係る油圧ショベル1の構成を、
図1を参照して説明する。
この油圧ショベル1は、クローラ式の走行装置を装備した下部走行体2と、下部走行体2の上に旋回自在に搭載された上部旋回体3とを備えて構成される。上部旋回体3の車両前方側には、オペレータ(操作者)が搭乗するキャビン5と、これに隣接して設けられたフロント作業装置(以下、作業装置という)4とが設けられている。また、上部旋回体3の最後端部には機体の重量バランスを保つためのカウンタウェイト6が配設されている。
【0021】
作業装置4は、ブーム4A,スティック4B及びバケット4Cを備えて構成される。ブーム4Aは、その基端部を上部旋回体3に対して揺動自在に軸支されている。また、ブーム4Aと上部旋回体3との間にはブームシリンダ4aが介装されており、ブーム4Aはブームシリンダ4aの伸縮動作に応じて揺動する。
同様に、スティック4Bはその基端部をブーム4Aの先端部に対して揺動自在に軸支され、さらにスティック4Bの先端部にバケット4Cが軸支されている。ブーム4A及びスティック4Bの間にはスティックシリンダ4bが介装され、スティック4B及びバケット4Cの間にはバケットシリンダ4cが介装されている。スティック4B及びバケット4Cはそれぞれ、スティックシリンダ4b及びバケットシリンダ4cの伸縮動作に応じて揺動する。
キャビン5の内部には、これらの各種油圧装置の作動量を入力するための図示しない各種の操作レバーやペダルが設けられている。
【0022】
ここで、下部走行体2には図示しない油圧式の図示しない走行モータが設けられ、上部旋回体3には、図示しない油圧ポンプやタンク等からなる油圧回路の一部が設けられている。そして、下部走行体2と上部旋回体3との間には、上部旋回体3の旋回中心に後述のスイベルジョイントが設けられており、このスイベルジョイントを介して上部旋回体3の油圧回路と下部走行体2の走行モータとの間で作動油の流通が行われる。
【0023】
[2.スイベルジョイントの構成]
本発明の一実施形態に係るスイベルジョイントの構成を、
図2〜
図4を参照してさらに説明する。
【0024】
スイベルジョイント7は、
図2及び
図3に示すように、下部走行体2(
図1参照)に取り付けられる概略円筒形状の外側ボディ71と、上部旋回体3(
図1参照)に取り付けられる概略円柱形状の内側ボディ72とを備えて構成される。内側ボディ72は、外側ボディ71に相対回転自在に内嵌されている。この相対回転の回転中心線CLは上部旋回体3の旋回中心と一致している。
以下、単に軸方向といった場合は、外側ボディ71や内側ボディ72の軸線方向(換言すれば回転中心線CLに沿った方向、このため、軸線方向CLともいう)をいい、単に径方向といった場合は回転中心線CLに対して垂直な方向をいう。
【0025】
外側ボディ71は、有底円筒形状の本体部(以下、外側ボディ本体部ともいう)71aと、本体部71aの外周上縁に設けられたフランジ部71bと、本体部71aの外周面に互いに反対側に突設されたボス部71c,71cとを備えている。
フランジ部71bは径方向に延びた円環プレート形状のものであり、その外周縁には厚み方向に貫通する孔71baが間隔を空けて配置されている。これらの孔71baにそれぞれボルト挿通させ、これらのボルトにより外側ボディ71が下部走行体2に固定される。なお、フランジ部71bの形状は、円環プレート形状のものに限定されず、例えば外形が正方形のフランジであっても良い。
ボス部71cは、側面視で、軸方向に対し斜めに延在する湾曲形状のものである。各ボス部71cの側面は、平坦な面とされ、外部配管接続用の接続ポート9B,10Bが設けられている。
【0026】
内側ボディ72は、外側ボディ71の内径よりも大きな外径の上部(以下、内側ボディ上部ともいう)72aと、外側ボディ71の内径よりも僅かに小さい外径の下部(以下、内側ボディ下部ともいう)72bとを備えている。内側ボディ72は、上部72aと下部72bとの間の段部72cで外側ボディ71のフランジ部71bの上面に載置され、下部72bの下端面(一端)72baは、外側ボディ本体部71aの底壁71aaの内壁面(閉塞面)よりも上方に位置する。つまり、内側ボディ72の下端面72baと外側ボディ71の底壁71aaとの間には空間(油室)8cが形成されている。
内側ボディ72の上端面には、回転中心線CL上にセンサ取付用のポート8Cが配置され、このポート8Cを囲むようにして、回転中心線CLを中心とした円周上に外部配管接続用のポート9A,10Aが設けられている。
【0027】
また、スイベルジョイント7には、外側ボディ71と内側ボディ72とに亘って、1つのパイロット油路8と、4つの高圧油路9と、1つのドレン油路10とが設けてある。
【0028】
パイロット油路8は、作動油として比較的低圧のパイロット油が流通する油路であり、上部旋回体3に設置されたパイロットポンプ(図示略)と、下部走行体2に設置された走行モータの速度を1速又は2速に切り替えるための1/2速切替弁(以下、単に切替弁という)21とを繋ぐ油路〔(つまり前記切替弁21にパイロット圧を供給するための1/2速切替ライン(以下、パイロットラインという)〕の一部を形成するものである。
【0029】
パイロット油路8は、径方向油路8a,軸方向油路8b,油室8c及び油孔8dを備えて構成される。
径方向油路8aは、内側ボディ72に径方向に沿って形成され、一端が、内側ボディ上部72aの外周面に接続ポート8Aとして開口し、他端が軸方向油路8bに連通している。
軸方向油路8bは、内側ボディ72に軸方向に貫通して設けられ、回転中心線CL上に配置されている。軸方向油路8bは、内側ボディ72の上端に開口するポート8Cから、後述の回転角度センサ11aが液密に挿入されている。換言すれば、軸方向油路8bを、回転角度センサ11aの取り付け部の空間として利用している。軸方向油路8bの上端が回転角度センサ11aにより栓をされてしまうため、前記の径方向油路8aを設けて、この径方向油路8aを、回転角度センサ11aの下方において軸方向油路8bと接続させている。
【0030】
油室8cは、内側ボディ72と外側ボディ71との間に形成された上下の隙間(空間)により構成される。油室8cは、その上部が、軸方向油路8bの下端(内側ボディ72の下端面72baに開口する開口部)と連通している。
油孔8dは、回転中心線CLから外れた位置において、油室8cの下方を画成する外側ボディ71の底壁71aaに軸方向に貫通して設けられており、底壁71aaの下端面に接続ポート8Bとして開口している。
【0031】
なお、内側ボディ72の下端面72baには、軸方向油路8bの開口と一致する開口72daが設けられたプレート72dが重合して設けられている。このプレート72dは、内側ボディ72が外側ボディ71から軸線方向に沿って(この場合は上に)抜けてしまわないようするためのものである。
つまり、プレート72dが設けられていないと、油室8cから、内側ボディ72の下端面72baの全体に油圧が作用して、内側ボディ72を上方に押し上げて外側ボディ71から抜けてしまうおそれがあるので、プレート72dを設けることでこれを防止している。そこで、以降、プレート72dを、抜け防止プレート72dという。
【0032】
高圧油路9は、一対の走行モータ23(
図2参照。但し、一方の走行モータ23のみ示す)へパイロット油よりも高圧の作動油(以下、高圧油という)の供給を行う高圧ラインの一部を構成するものである。
各高圧油路9は、軸方向油路9a,径方向油路9b,環状油路(第1高圧油路)9c及び径方向油路9dを備えて構成される。軸方向油路9a及び径方向油路9bは、内側ボディ72に形成され、本発明の第2高圧油路を構成する。
【0033】
軸方向油路9aは、内側ボディ72に、回転中心線CLから外れた位置において軸方向に沿って穿設され、その上端が内側ボディ72の上面に接続ポート9Aとして開口し、その下端が径方向油路9bの一端に接続する。
径方向油路9bは、内側ボディ下部72bに径方向に沿って穿設され、一端が上述のように軸方向油路9aの下端に接続し、他端が環状油路9cに接続する。
外側ボディ71に内周面には、径方向油路9bと同じ高さに、回転中心線CLを中心とした環状の溝が開口しており、環状油路9cは、この環状の溝と内側ボディ72の外周面との間に形成される環状の油路である。
径方向油路9dは、径方向に沿って外側ボディ71のボス部71cに貫通して形成され、一端が環状油路9cの外周に接続され、他端がボス部71cの側面に接続ポート9Bとして開口している。
なお、複数の高圧油路9を構成する径方向油路9b,環状油路9c及び径方向油路9dは、軸方向に対し位置をずらして配置されている。
【0034】
ドレン油路10は、高圧油やパイロット油よりもさらに低圧のドレン油(走行モータ23の内部に存在する高圧油路からの漏れ油)の流通する油路であり、ドレン油を上部旋回体3に設置されたタンク22に戻すための油路の一部を形成するものである。また、ドレン油路10は、リークした高圧油やパイロット油を回収する機能も有している。
【0035】
ドレン油路10は、軸方向油路10a,径方向油路10b,10d,10e,環状油路(第1ドレン油路)10c及び環状油路(回収油路、以下、ドレン溝ともいう)10fとを備えて構成される。軸方向油路10a及び径方向油路10bは内側ボディ72に形成されており、本発明の第2ドレン油路を構成する。
軸方向油路10aは、内側ボディ72に、回転中心線CLから外れた位置において軸方向に沿って、複数の高圧油路9の何れよりも下方まで穿設されている。軸方向油路10aは、その上端が内側ボディ72の上面に接続ポート10Aとして開口し、その下端が径方向油路10bの一端に接続される。
径方向油路10bは、高圧油路9の環状油路9cの何れよりも低い位置において、内側ボディ下部72bに径方向に沿って穿設され、一端が上述のように軸方向油路10aの下端に接続し、他端が環状油路10cに接続される。
【0036】
外側ボディ71の内周面には、径方向油路10bと同じ高さに、回転中心線CLを中心とした環状の溝が開口しており、環状油路10cは、この環状の溝と内側ボディ72の外周面との間に形成される油路である。
径方向油路10dは二つあり、外側ボディ71の両ボス部71cに径方向に沿ってそれぞれ貫通して形成される。各径方向油路10dは、一端が環状油路10cの外周に接続され、他端がボス部71cの外周面に接続ポート10Bとして開口する。
【0037】
径方向油路10eは、高圧油路9の環状油路9cの何れよりも高い位置において、内側ボディ下部72bに径方向に沿って穿設され、一端が軸方向油路10aの中間部に接続さえ、他端がドレン溝10fに接続される。
外側ボディ71に内周面には、径方向油路10eと同じ高さに、回転中心線CLを中心とした環状の溝が開口しており、ドレン溝10fは、この環状の溝と内側ボディ72の外周面との間に形成される環状の油路である。
【0038】
軸方向油路10a,径方向油路10b,環状油路10c及び径方向油路10dが主にドレン油を流通させるものであるのに対して、径方向油路10e及びドレン溝10fは、高圧油路9からリークした高圧油(以下、リーク油ともいう)をドレン油路10に逃がす(回収する)ためにバックアップ的に設けられたものである。
つまり、高圧油路9の一部を構成する環状油路9cの周囲には、後述するようにシールリング12a〔
図3(a)参照〕が配設されているが、万が一、このシールリング12aが損傷して高圧油がシールリンング12aを通過しても、この高圧油(リーク油)を回収できるように、径方向油路10e及びドレン溝10fが設けられている。
リーク油の流量はドレン油の流量に較べて少量であるため、リーク油の回収を目的とする油路10e,10fは、ドレン油の流通を主目的とする油路10a〜10dよりも流路断面積が小さく設定されている。
【0039】
このように、複数の高圧油の環状油路9cに対して、上側にドレン溝10fを、下側にドレン油の環状油路10cをそれぞれ配置して、複数の高圧油の環状油路9cを上下から低圧の環状油路10cとドレン溝10fとで挟みつけることで、仮に周囲のシールリングが損傷したとしてもリーク油をドレン油路10に回収することができ、スイベルジョイント7の外部へ油がリークすることを抑制できる。
【0040】
つまり、外側ボディ71と内側ボディ72との摺接面において、
図3(b)に白抜きの矢印で示すように、リーク油は、環状油路9cから上下にリークしてしまうため、下方にリークした高圧油は、低圧のドレン油の環状油路10cへ逃げ込み、上方にリークした高圧油は、低圧のドレン溝10fへ逃げ込むことになる。さらには、油室8cからリークしたパイロット油も、低圧のドレン油の環状油路10cへ逃げ込むようになる。したがって、リークした高圧油及びパイロット油をドレン油路10に逃がしてドレン油とともにタンク22へと戻すことができるようにしている。
【0041】
上述したように、外側ボディ71と内側ボディ72との摺接面において高圧油やパイロット油やドレン油がリークするのを防止するために、
図2(b)では省略しているが、
図3(a)に示すように、外側ボディ71と内側ボディ72との摺接面には、環状油路9c,10c,10fの各相互間及び軸方向外方(
図3(a)において環状油路10cよりも下方及びリーク溝10fよりも上方)にシールリング(シール部材)12a又はシールリング(シール部材)12bがそれぞれ取り付けられている。
詳しくは、高圧油の環状油路9cの各相互間と軸方向外方には高圧用のシールリング12aが、ドレン油の環状油路10cの軸方向外方(
図3(a)において下方)及びドレン溝10fの軸方向外方(
図3(a)において上方)にはそれぞれ低圧用のシールリング12bが取り付けられている。
【0042】
このような構成により、内側ボディ72と外側ボディ71との相対的な回転位置がどのような位置であっても、内側ボディ72に形成された径方向油路9b,10b,10eと、外側ボディ71に形成された環状油路9c,10b,10fとの連通状体が維持される。これにより、上部旋回体3と共に内側ボディ72が外側ボディ71に対して旋回しても、下部走行体2と上部旋回体3との間で高圧油やパイロット油やドレン油を流通させることができ、リーク油を、ドレン油路10により回収することができるようになっている。
【0043】
また、本願発明の大きな特徴であるが、パイロット油路8の軸方向油路8bに、上部旋回体3の旋回角度を検出するためのロッド11bが挿通されている。ロッド11bは、その下端を外側ボディ71の底壁71aaの内壁面(閉塞面)に設けられた孔部71abに圧入されている。また、軸方向油路8bを画成する壁面とロッド11bとの間にはパイロット圧を伝達するのに十分な隙間が確保されている。
ロッド11bの上端は、上述した内側ボディ72に取り付けられた回転角度センサ11aに隙間を空けて対向している。回転角度センサ11aは、非接触式のセンサであり、ロッド11bと接触することなくロッド11bの角度を検出することができる。下部走行体2に対する上部旋回体2の旋回角度に応じて、外側ボディ71を介して下部走行体2に固定されたロッド11bと、内側ボディ72を介して上部走行体3に固定された回転角度センサ11aとの角度も変化する。したがって、回転角度センサ11aによりロッド11bの角度を検出することで、上部旋回体2の旋回角度を検出することができる。
なお、回転角度センサ11aには、磁気を利用した角度センサのような種々の公知の非接触式のセンサを適用することができる。
【0044】
また、建設機械の機種が、上部旋回体3の旋回角度を検出する必要のない機種の場合には、
図4に示すように、ロッド11bを取り外すとともに、回転角度センサ11aに替えてプラグ13をポート8Cに取り付ければよい。
逆の言い方をすれば、回転角度センサ11aやロッド11bが無い場合でも、プラグ13を外してロッド11b及び回転角度センサ11aを後付することで上部旋回体3の旋回角度を検出できるようになる。
【0045】
[3.作用・効果]
本発明の一実施形態としての作業機械のスイベルジョイントによれば、上部旋回体3の角度を検出するためのロッド11bをパイロット油路8内に挿通している。
パイロット油路8に替えてドレン油路10を回転中心線CL上に設け、このドレン油路10にロッド11bを挿通することも考えられるが、この場合には、ドレン油路10を流通する油量を確保するためにロッド11bを挿通する分だけドレン油路10を大きな径としなければならない。
【0046】
ここで、パイロット油路8を含むパイロットラインは、操作レバー(図示略)からの信号を圧力(パイロット圧)により操作機器(ここでは切替弁21)に伝達するものであるため、パイロットラインに圧力伝達媒体としてパイロット油が満たされていることが重要であって、ロッド11bをパイロット油路8に挿通する場合は、ロッド11bをドレン油路10のような他の油路に挿通する場合に較べると、油の流通に与える影響は比較的少なくて済む。
そこで、本発明では、ロッド11bをパイロット油路8内に挿通することにより、パイロット油路8の径を、ロッド11bを挿通しない場合に較べて略同等にすることができ、それに加えて、ロッド11bを設置するためのスペースを特別に設けることが不要となるので、スイベルジョイントのサイズの増大を抑制しつつ旋回角度を検出することができる。
【0047】
さらに、ロッド11bを、ドレン油路10に挿通すると、ドレン圧が高くなり、走行モータ23から外部への油のリーク(以下、外部リークという)が発生する懸念や、走行モータ23の内部のシャフトシールを破損させる懸念があるが、本発明のスイベルジョイントでは、ロッド11bをパイロット油路8に挿通するので上記のような懸念(走行モータ23から外部リークが発生する懸念や、走行モータ23の内部のシャフトシールを破損させる懸念)がない。これは、以下の理由による。
【0048】
ドレン油路10にロッド11bを配置すると、ロッド11bの存在によりドレン油路10の流通抵抗が増加する。ドレン油はタンク22へ戻るように流通する油であり、その流路(ドレン油路)10内に設けられた機構(ここではロッド11b)から流通抵抗を受けるとドレン油の圧力が高くなる。ドレン油は通常低圧であることからシャフトシールはドレン油が低圧であることを想定して設計されている。このため、ドレン油の圧力が高くなると、シャフトシールの耐久性能を越えてしまうなど、走行モータ23の内部機構が破損させてしまう可能性がある。これに対し、パイロット油路8にロッド11bを配置すると、ロッド11bの存在によりパイロット油路8の流通抵抗が増加するが、パイロット油は主に圧力伝達媒体として機能するものであって、パイロット圧が僅かに低下するに留まり、走行モータ23の内部のシールを破損させてしまうことはない。また、任意に、パイロットライン径(パイロットラインを構成する流路の径)を大きめに設定すれば、パイロット圧の供給先である切替弁21の切替応答性を低化させることなく、下部走行体2に設置された走行モータに圧力を伝達することができる。
【0049】
また、ロッド11bの角度を検出する回転角度センサ11aが、ロッド11bに対して非接触であるため、建設機械1の作動に伴う振動やロッド11bの撓みや偏心に起因して、回転角度センサ11aとロッド11bとの干渉による故障や、検出精度の低下を抑制することができる。
【0050】
また、パイロット油路8を内側ボディ72に貫通させることで外面に接続ポート8Cを形成しているので、旋回角度の検出が必要な場合には、この接続ポート8Cに回転角度センサ11aを取り付けることができる。また、ロッド11bを、パイロット油路8に通して外側ボディ71の底壁71aaに取り付けることができる。したがって、スイベルジョイント7を分解することなく、回転角度センサ11aやロッド11bを、スイベルジョイント7に容易に後付けすることができる。
【0051】
特に、本実施形態では、接続ポート8Cが内側ボディ72の上面に設けられているので、スイベルジョイント7を建設機械1の車両に搭載したままでも接続ポート8Cにアクセスしやすく、回転角度センサ11aやロッド11bを取り付ける際に、スイベルジョイント7を建設機械1の車両から取り外す必要がない。
【0052】
さらに、従来よりも、スイベルジョイント7の軸方向長さを短くすることができるとともに、スイベルジョイント7の製造の簡素化を図ることができる。
ここで、先ず、従来のスイベルジョイントの構成を
図5(a),(b)を参照しつつ説明する。
従来のスイベルジョイント7′は、
図5(a),(b)に示すように、下部走行体に取り付けられる外側ボディ71′と、上部旋回体に取り付けられる内側ボディ72′とを備えて構成されており、内側ボディ72′は、外側ボディ71′に相対回転自在に内嵌されている。
外側ボディ71′は、有底円筒形状の本体部71a′と、本体部71a′の上端外周に設けられたフランジ部71b′とを備えている。
【0053】
内側ボディ72′は、外側ボディ71′の内径よりも大きな外径の上部(以下、内側ボディ上部ともいう)72a′と、外側ボディ71′の内径よりも僅かに小さい外径の下部(以下、内側ボディ下部ともいう)72b′とを備えている。内側ボディ72′は、上部72a′と下部72b′との間の段部72c′を外側ボディ71′の上面に載置され、下部72b′の下端面72ba′は、外側ボディ本体部71a′の底壁71aa′の内壁面よりも上方に位置する。つまり、下端面72ba′と底壁71aa′との間には空間(油室)10b′が形成されている。
内側ボディ上部72a′には、その上端面に、回転中心線CL′上に外部油配管接続用のポート10A′が配置され、その側面に外部配管接続用のポート8A′が設けられている。
【0054】
また、スイベルジョイント7′には、外側ボディ71′と内側ボディ72′とに亘って、1つのパイロット油路8′と、4つの高圧油路9′と、1つのドレン油路10′とが設けられている。
【0055】
パイロット油路8′は、径方向油路8a′,軸方向油路8b′,径方向油路8c′及び環状油路8d′を備えて構成される。
径方向油路8a′は、一端が、内側ボディ上部72a′の外周面に接続ポート8A′として開口し、他端が軸方向油路8b′に接続している。
軸方向油路8b′は、内側ボディ上部72a′から内側ボディ下部72b′の上部に亘って軸方向に穿設されて、その下端が径方向油路8c′に接続されている。なお、軸方向油路8b′の上端は図示しないプラグによって封止されている。
環状油路8d′は、外側ボディ71′の内周面に形成された溝と内側ボディ72′の外周面との間に形成され、スイベルジョイント7′の回転中心線CL′を中心とした環状の油路である。
さらに、外側ボディ71′には、周壁の厚み方向に貫通する図示しない径方向油路が設けられている。この径方向油路は、その一端が環状油路8d′の外周側に接続され、その他端が外側ボディ71′の外周面に接続ポートとして開口している。
【0056】
高圧油路9′は、走行モータへ高圧油を供給する高圧ラインの一部を構成するものである。
各高圧油路9′は、内側ボディ72′に形成される図示しない油路と、外側ボディ71′に形成される環状油路9a′及び図示しない径方向油路を備えて構成される。
【0057】
各環状油路9a′は、外側ボディ71′の内周面に形成された溝と内側ボディ72′の外周面との間に形成され、スイベルジョイント7′の回転中心線CL′を中心とした環状の油路である。各環状油路9a′は、パイロット油の環状油路8d′よりも下方に配置されている。
環状油路9a′の内周側には、内側ボディ72′に形成される図示しない油路の一端が接続される。この図示しない油路の他端は、内側ボディ上部72a′の外面に開口して接続ポートを構成する。また、環状油路9a′の外周側には、外側ボディ71′に形成される図示しない径方向油路の一端が接続される。この図示しない径方向油路の他端は、外側ボディ71′の外周面に開口して接続ポートを構成する。
【0058】
ドレン油路10′は、軸方向油路10a′,油室10b′,油孔10c′,径方向油路10d′,10f′及び環状油路(以下、ドレン溝ともいう)10e′,10g′を備えて構成される。
軸方向油路10a′は、回転中心線CL′上に、内側ボディ72′に軸方向に貫通して設けられており、内側ボディ72′の上面に接続ポート10A′として開口している。
油室10b′は、内側ボディ72′と外側ボディ71′との間に形成された空間により構成される。油室10c′は、その上部が、軸方向油路10a′の下端と連通している。
油孔10c′は、油室10b′の下方を画成する外側ボディ71′の底壁71aa′に軸方向に貫通して設けられており、底壁71aa′の下端面に接続ポート10B′として開口している。
なお、内側ボディ72′の下端面には、軸方向油路10a′の開口と一致する開口が設けられた抜け防止プレート72d′が重合されている。抜け防止プレート72d′は、油室10b′からの圧力を受けて内側ボディ72′が上方に抜けてしまうことを防止するためのものである。
【0059】
径方向油路10d′,10f′は、それぞれ、内側ボディ72′に形成され、その一端を軸方向油路10b′に接続され、その他端を、外側ボディ71′の内周に開口するドレン溝10e′,10g′に接続されている。
ドレン溝10d′,10g′は、それぞれ、外側ボディ71′の内周面に形成された回転中心線CL′を中心とする環状の溝と、内側ボディ72′の外周面との間に形成された環状の油路である。
ドレン溝10d′は、パイロット油の環状油路8d′の上方に配置され、ドレン溝10g′は、パイロット油の環状油路8d′の下方に配置されている。つまり、パイロット油の環状油路8d′を上下で挟むようにしてドレン溝10d′,10g′が配置されている。
【0060】
従来のスイベルジョイント7′では、外側ボディ71′と内側ボディ72′との摺接面において、
図5(b)に白抜きの矢印で示すように、環状油路9a′から下方にリークした高圧油をドレン油の油室10b′により回収し、環状油路9a′から上方にリークした高圧油及び環状油路8d′から下方にリークしたパイロット油を、ドレン溝10g′により回収し、環状油路8d′から上方にリークしたパイロット油を、ドレン溝10e′により回収するようにしている。また、ドレン溝10g′を設けることで、環状油路9a′から上方にリークした高圧油が、パイロット油の環状油路8d′に逃げてパイロット油の油圧や油量を変動させてしまうことを防止している。
【0061】
そして、外側ボディ71′と内側ボディ72′との摺接面には、環状油路9a′,10g′,10e′の各相互間及び軸方向外方に高圧用のシールリング12a′又は低圧用のシールリング12b′がそれぞれ取り付けられている。
【0062】
これに対し、本実施形態のスイベルジョイント7では、
図2及び
図3(a),(b)に示すように、パイロット油路8は、内側ボディ72に軸方向に沿って形成されており、外側ボディ71と内側ボディ72との摺接面にパイロット油の環状油路は形成されていない。このため、従来のスイベルジョイント7′に較べてパイロット油の環状油路を二つのドレン溝で挟むことが不要となり、ドレン溝10fは一つ設けるだけで良い。したがって、この分だけ、ドレン溝を含む環状油路の総数を削減することができる。
さらには、環状油路の総数を削減に伴い、環状油路の相互間及びその軸方向外方にもうけるシールリングの総数を削減できる。
その上、軸方向に沿って併設する環状油路及びシールリングの削減により、従来のスイベルジョイント7′よりも、内側ボディ72ひいてはスイベルジョイント7の軸方向長さを短くすることができるとともに、製造の簡素化を図ることができる。
【0063】
[4.その他]
(1)上記実施形態では、回転角度センサ11aを非接触式としたが、接触式とすることも可能である。
(2)上記実施形態では、環状油路9c,10c,10fを、外側ボディ71の内周面に開口した環状溝と、内側ボディの外周面との間で形成したが、外側ボディ71の内周面と、内側ボディの外周面に開口した環状溝との間で形成しても良いし、外側ボディ71の内周面に開口した環状溝と、内側ボディの外周面に開口した環状溝との間で形成しても良い。
(3)上記実施形態では、外側ボディ71を下部走行体2に設置し、内側ボディ72を上部旋回体3に設置したが、逆に、外側ボディ71を上部旋回体3に設置し、内側ボディ72を下部走行体2に設置した構成、つまり、
図2(a),(b)に示す構造を上下反対にして建設機械に取り付けるような構成も可能である。
(4)上記実施形態では、外側ボディ71にロッド11bを固定し、内側ボディ71に回転角度センサ11aを固定したが、逆に、外側ボディ71に回転角度センサ11aを固定し、内側ボディ71にロッド11bを固定しても良い。
【0064】
(5)上記実施形態では、内側ボディ72に形成される第1高圧油路,第2ドレン油路をそれぞれ軸方向油路と径方向油路とを組み合わせて構成したが、外側ボディ71に形成される円環状油路の形状はこれに限定されない。例えば軸方向や径方向に対して傾斜した油路を組み合わせて構成しても良い。
同様に、パイロット油の軸方向油路8bから外周面の接続ポート8Aを繋ぐ油路8aを径方向油路としたが、油路8aを径方向に対して傾斜した油路により構成しても良い。
さらに、上記実施形態では、高圧油やドレン油の接続ポートを内側ボディ72の上端面に設けたが(高圧油やドレン油の油路を内側ボディ72の上端面に開口させたが)、高圧油やドレン油の接続ポートを内側ボディ72の側面に設けても良い(高圧油やドレン油の油路を内側ボディ72の側面に開口させても良い)。
要するに内側ボディ72に形成される各油路は、内側ボディ72の外面に開口する接続ポートと、外側ボディ71と内側ボディ72との間に形成される環状油路とを繋ぐものであればその形状は特定の形状に限定されない。