(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発進基地から発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地に到達させることで、円周状に延設する推進トンネルを形成する円周シールド掘進機の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーションを用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、
フォアサイトで視準される際に、上方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーションの掘進方向の前方の位置に、補助ターゲットが設けられており、
前記少なくとも一か所のトータルステーションをフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーションの位置を測量する際に、前記補助ターゲットをフォアサイトで上方に向けて視準して当該補助ターゲットの位置を測量しておき、
次のトータルステーションの位置を測量する際に、前記少なくとも一か所のトータルステーションから、バックサイトで上方に向けて前記補助ターゲットを視準し、フォアサイトで上方に向けて前記次のトータルステーションを視準して、前記補助ターゲットを基準として前記次のトータルステーションの位置を測量する工程を含む円周シールド掘進機の測量方法。
発進基地から発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地に到達させることで、円周状に延設する推進トンネルを形成する円周シールド掘進機の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーションを用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、
フォアサイトで視準される際に、下方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーションの掘進方向の前方の位置に、補助ターゲットが設けられており、
前記少なくとも一か所のトータルステーションをフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーションの位置を測量する際に、前記補助ターゲットをフォアサイトで下方に向けて視準して当該補助ターゲットの位置を測量しておき、
次のトータルステーションの位置を測量する際に、当該次のトータルステーションから、バックサイトで上方に向けて前記少なくとも一か所のトータルステーションを視準すると共に、バックサイトで上方に向けて前記補助ターゲットを視準して、後方公会法によって前記次のトータルステーションの位置を測量する工程を含む円周シールド掘進機の測量方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数台のトータルステーションを使用して発進基地の基準点からリレー方式で掘進機の位置を測量する、従来の推進工法における測量方法を、発進基地から鉛直面内において円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機の測量に適用しようとすると、以下のような技術的課題が生じることになる。
【0009】
すなわち、測量に用いるトータルステーションは、ターゲットを視準する望遠レンズの下方に、各種の機器を搭載していることから、望遠レンズを急角度で下方に向けて視準することが困難であるため、鉛直面内において円周方向に延設するトンネルの坑内に設置したトンネルステーションから、バックサイトやフォアサイトでターゲットを下方に向けて視準することが難しくなって、発進基地の基準点からリレー方式で掘進機の位置を測量することができなくなる。
【0010】
本発明は、発進基地から鉛直面内において円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機の位置を、発進基地の基準点からリレー方式で容易に測量することのできる円周シールド掘進機の測量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、発進基地から発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地に到達させることで、円周状に延設する推進トンネルを形成する円周シールド掘進機の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーションを用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、フォアサイトで視準される際に、上方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーションの掘進方向の前方の位置に、補助ターゲットが設けられており、
前記少なくとも一か所のトータルステーションをフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーションの位置を測量する際に、前記補助ターゲットをフォアサイトで上方に向けて視準して当該補助ターゲットの位置を測量しておき、次のトータルステーションの位置を測量する際に、前記少なくとも一か所のトータルステーションから、バックサイトで上方に向けて前記補助ターゲットを視準し、フォアサイトで上方に向けて前記次のトータルステーションを視準して、前記補助ターゲットを基準として前記次のトータルステーションの位置を測量する工程を含む円周シールド掘進機の測量方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、発進基地から発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地に到達させることで、円周状に延設する推進トンネルを形成する円周シールド掘進機の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーションを用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、フォアサイトで視準される際に、下方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーションの掘進方向の前方の位置に、補助ターゲットが設けられており、前記少なくとも一か所のトータルステーションをフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーションの位置を測量する際に、前記補助ターゲットをフォアサイトで下方に向けて視準して当該補助ターゲットの位置を測量しておき、次のトータルステーションの位置を測量する際に、当該次のトータルステーションから、
バックサイトで上方に向けて前記少なくとも一か所のトータルステーションを視準すると共に、
バックサイトで上方に向けて前記補助ターゲットを視準して、後方公会法によって前記次のトータルステーションの位置を測量する工程を含む円周シールド掘進機の測量方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の円周シールド掘進機の測量方法によれば、発進基地から鉛直面内において円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機の位置を、発進基地の基準点からリレー方式で容易に測量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る円周シールド掘進機の測量方法の説明図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る円周シールド掘進機の測量方法を採用したトンネルの構築工法によって構築されるトンネルを説明する略示断面図である。
【
図3】トンネルの構築工法の薬液注入工程を説明する略示斜視図である。
【
図4】トンネルの構築工法の坑内立坑築造工程を説明する略示斜視図である。
【
図5】トンネルの構築工法の坑内立坑築造工程を説明する、(a)は略示横断面図、(b)は略示平断面図である。
【
図6】トンネルの構築工法の円周シールド施工工程を説明する略示斜視図である。
【
図7】(a)〜(c)は、トンネルの構築方法の円周シールド施工工程を説明する略示横断面図である。
【
図8】本発明の好ましい一実施形態に係る円周シールド掘進機の測量方法に用いられるトータルステーションを例示する略示斜視図である。
【
図9】本発明の好ましい一実施形態に係る円周シールド掘進機の測量方法に用いられる補助ターゲットを例示する略示正面図である。
【
図10】トンネルの構築工法のパイプルーフ施工工程を説明する略示斜視図である。
【
図11】トンネルの構築工法のパイプルーフ施工工程を説明する略示横断面図である。
【
図12】トンネルの構築工法の褄部施工工程を説明する略示斜視図である。
【
図13】トンネルの構築工法の褄部施工工程を説明する、(a)は略示横断面図、(b)は略示平断面図である。
【
図14】トンネルの構築工法の掘削及び覆工工程を説明する略示縦断面図である。
【
図15】トンネルの構築工法の掘削及び覆工工程を説明する略示横断面図である。
【
図16】(a)〜(j)は、トンネルの構築工法の掘削及び覆工工程を説明する略示横断面図である。
【
図17】トンネルの構築工法の掘削及び覆工工程を説明する褄部の略示縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る円周シールド掘進機の測量方法は、例えば地表面から40m以上の深さの区分地上権が不要な大深度地下に、例えば道路用の本線トンネル51(
図2参照)とランプトンネル52とを接続させるための、本線トンネル51及びランプトンネル52を囲うことが可能な、例えば
図2に示すような直径が29m程度の大きさの大断面のインターチェンジ用の拡幅トンネル50を構築する、トンネル構築工法において採用されたものである。すなわち、本実施形態の円周シールド掘進機の測量方法は、後述するトンネルの構築工法における円周シールド施工工程(
図6、
図7(a)〜(c)参照)において、発進基地20から鉛直面内において円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機31の位置を、円周シールド坑30の坑内に設置した複数のトータルステーションTSを用いて、望遠レンズを急角度で下方に向けて視準することを回避しながら、発進基地の基準点からリレー方式で容易に測量することができるようにするための方法として採用されたものである。
【0016】
そして、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するためのトンネルの構築工法は、好ましくはシールド工法によって、例えば16m程度の直径の本線トンネル51が地中に形成された後に、この本線トンネル51から、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に円周シールド掘進機31の発進基地20となる坑内立坑を形成して(
図4及び
図5(a)、(b)参照)、この坑内立坑20を介して、後述する円周シールド坑30(
図6、
図7参照)やパイプルーフ12(
図10、
図11参照)や褄部地盤改良体40(
図12、
図13参照)の施工を行なうようになっている。
【0017】
すなわち、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するためのトンネルの構築工法は、本線トンネル51から薬液注入を行って、拡幅トンネル50が構築される領域の地盤及びこれの周囲の地盤を安定化させる薬液注入工程(
図3参照)と、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部において、本線トンネル51から下方の地盤に向けて円周シールド掘進機31の発進基地となる坑内立坑20を各々築造する立坑築造工程(
図4及び
図5(a)、(b)参照)と、坑内立坑20から円周シールド掘進機31を発進させると共に、当該坑内立坑20に円周シールド掘進機31を到達させて、パイプルーフ12及び褄部地盤改良体40を施工する際の作業坑となる、円周シールド坑30を各々形成する円周シールド施工工程(
図6、
図7参照)と、拡幅トンネル50の施工区間の一方の端部の円周シールド坑30から、他方の端部の円周シールド坑30に向けて、複数のパイプルーフ材11を地中に押し込むことによって、これらの複数のパイプルーフ材11を円周方向に並べて連設させた、円筒状のパイプルーフ12を形成するパイプルーフ施工工程(
図10、
図11参照)と、各々の円周シールド坑30の内方の地盤を地盤改良することによって、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に褄部地盤改良体40を各々形成する褄部改良体形成工程(
図12、
図13(a)、(b)参照)と、円筒状に形成されたパイプルーフ12と両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって周囲を囲まれる内側領域を、上部から下部に向けて掘削すると共に、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面や褄部地盤改良体40の内壁面を覆って、上部から下部に向けて順次覆工壁43a,43bを形成する掘削及び覆工工程(
図14〜
図17参照)と、を含んで構成されている。
【0018】
上述のトンネルの構築工法における薬液注入工程では、
図3に示すように、本線トンネル51からこれの外周部分の地盤に向けて、公知の薬液注入管26を、本線トンネル51の周方向及び軸方向に所定の間隔をおいて、多数本挿入する。また、挿入した薬液注入管26を介して、例えば水ガラス系等の公知の薬液を注入することによって、拡幅トンネル50(
図2参照)が構築される領域の地盤及びこれの周囲の地盤を改良して、これらの地盤を安定化させる。薬液注入工程における、薬液注入管26の挿入本数、注入する薬液の種類や注入量、注入圧、ゲルタイム等は、対象となる地盤の種類や、地下水位、透水係数、粒度分布、改良範囲等を鑑みて、適宜設計することができる。
【0019】
なお、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するための各工程を行うのに先立って、本線トンネル51の外郭部分を構成する例えばセグメントの内周面に沿って、鋼製の補強リング27aを、本線トンネル51の軸方向に所定の間隔をおいて複数設置することで、セグメント補強支保工27を形成して、本線トンネル51を補強しておくことが好ましい。セグメント補強支保工27は、特に、坑内立坑20及び褄部地盤改良体40が形成される、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部や、こられの端部を挟んで本線トンネル51の軸方向に隣接する部分に、設置することが好ましい。
【0020】
立坑築造工程では、
図4及び
図5(a)、(b)に示すように、本線トンネル51における拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部から、例えば矩形断面を有する鋼製の複数の矩形推進管21を、公知の密閉型鉛直推進工法によって、各々鉛直下方に推進させることで、これらの矩形推進管21を縦横に隣接して複数並べて配置した、全体として略六面体形状を有する、坑内立坑20となる鋼製覆工体23を形成する。
【0021】
すなわち、立坑築造工程では、例えば矩形推進管21の下端部に、矩形断面を有する公知の矩形掘進機22を取り付けて下方に掘進させながら、この矩形掘進機22に後続させて矩形推進管21を連設して下方に押し込んでゆくことで、本線トンネル51から鉛直下方に向けて、矩形推進管21を所定の深さまで設置する。このように矩形推進管21を所定の深さまで設置する作業を、複数の矩形推進管21を縦横に隣接させつつ複数回繰り返すことによって、これらの複数の矩形推進管21が平面視矩形状に一体となった、例えば本線トンネル51の軸方向の長さが15〜18m程度、幅方向の長さが8〜10m程度、鉛直方向の深さが18m程度の大きさの、六面体形状の鋼製覆工体23が、本線トンネル51の下方の地盤に構築される。しかる後に、構築された鋼製覆工体23における、外周壁23aとなる部分によって4方を囲まれる内側領域を仕切って縦横に格子状に配置された、各々の矩形推進管21による仕切り壁23bの部分を切断撤去する。これによって、複数の矩形掘進機22を地中に残置したまま(
図7(a)〜(c)参照)、相当の大きさの作業空間を確保した坑内立坑20が、仕切り壁23bが撤去された後の鋼製覆工体23の外周壁23aによって周囲を囲まれた状態で、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々築造される。築造された坑内立坑20は、円周シールド施工工程における、円周シールド掘進機31の発進基地及び到達基地として用いられる。
【0022】
円周シールド施工工程では、
図6及び
図7(a)〜(c)に示すように、築造された各々の坑内立坑20を発進基地として、公知の円周シールド掘進機31を発進させると共に、発進させた円周シールド掘進機31を同じ坑内立坑20に到達させることによって、パイプルーフ12及び褄部地盤改良体40を施工する際の作業坑となる円周シールド坑30を、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々形成する。
【0023】
本実施形態では、円周シールド掘進機31は、例えば3〜4.5m程度のシールド高さの矩形断面を備える、好ましくは泥水式の曲率を有する公知のシールド掘進機となっている。円周シールド掘進機31は、坑内立坑20に設置した元押しジャッキ33(
図7(b)参照)からの推進力を受けて、矩形断面を有すると共に曲線施工が可能な曲線部覆工セグメント32を、後方に連設させながら、拡幅トンネル50の外径よりも一回り大きな直径の円周に沿って、坑内立坑20に到達するまで掘進することができるようになっている。これによって、曲線部覆工セグメント33による、鉛直面内において円環状に延設する円周シールド坑30が、後述するパイプルーフ施工工程でパイプルーフ12が円筒状に形成される、円形の断面に沿って、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々設けられることになる。
【0024】
そして、本実施形態の円周シールド掘進機の測量方法は、このような円周シールド施工工程において、円周シールド坑30が鉛直面内における所定の円周方向に沿って精度良く形成されるように、掘進中の円周シールド掘進機31の位置を容易に測量して、円周シールド掘進機の掘進を効率良く管理できるようにするための方法として採用されたものである。
【0025】
すなわち、本実施形態の円周シールド掘進機の測量方法は、
図1に示すように、発進基地である坑内立坑20から例えば横方向に発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地20に到達させることで、円周状に延設する推進トンネル(円周シールド坑)30を形成する円周シールド掘進機31の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーション(例えば、トンネルの掘進方向の前方側から順次設置されたトータルステーションTS0,TS1,TS2,TS3,TS4,TS5)を用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、フォアサイトで視準される際に、上方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS4)の掘進方向の前方の位置に、補助ターゲット(例えば、TG7)が設けられており、少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS4)をフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS4)の位置を測量する際に、補助ターゲット(例えば、TG7)をフォアサイトで上方に向けて視準して当該補助ターゲット(例えば、TG7)の位置を測量しておき、次のトータルステーション(例えば、TS3)の位置を測量する際に、少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS4)から、バックサイトで上方に向けて補助ターゲット(例えば、TG7)を視準し、フォアサイトで上方に向けて次のトータルステーション(例えば、TS3)を視準して、補助ターゲット(例えば、TG7)を基準として次のトータルステーション(例えば、TS3)の位置を測量する工程を含んでいる。
【0026】
また、本実施形態の円周シールド掘進機の測量方法は、
図1に示すように、発進基地である坑内立坑20から例えば横方向に発進させて、鉛直面内における円周方向に掘進した後に、同じ発進基地20に到達させることで、円周状に延設する推進トンネル(円周シールド坑)30を形成する円周シールド掘進機31の位置を、トンネルの坑内に設置した複数台のトータルステーション(例えば、トンネルの掘進方向の前方側から順次設置されたトータルステーションTS0,TS1,TS2,TS3,TS4,TS5)を用いて、リレー方式で測量する測量方法であって、フォアサイトで視準される際に、下方に向けて視準されることになる少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS1)の掘進方向の前方の位置に、補助ターゲット(例えば、TG4)が設けられており、少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS1)をフォアサイトで視準して当該少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS1)の位置を測量する際に、補助ターゲット(例えば、TG4)をフォアサイトで下方に向けて視準して当該補助ターゲットの位置を測量しておき、次のトータルステーション(例えば、TS0)の位置を測量する際に、当該次のトータルステーション(例えば、TS0)から、
バックサイトで上方に向けて少なくとも一か所のトータルステーション(例えば、TS1)を視準すると共に、
バックサイトで上方に向けて補助ターゲット(例えば、TG4)を視準して、後方公会法によって次のトータルステーション(例えば、TS0)の位置を測量する工程を含んでいる。
【0027】
より具体的には、本実施形態では、
図1に示すように、例えば発進基地である坑内立坑20から発進して、発進基地20に到達する直前まで掘進が進んだ円周シールド掘進機31の位置を測量するには、まず、トンネルの坑内におけるトンネル掘進方向の最も下流側に配置されたトータルステーションTS5から、発進基地20に固定された、位置座標が既知のターゲットTG1,TG2をバックサイトで視準して、後方公会法によってトータルステーションTS5の位置座標を計測すると共に、フォアサイトで次のトータルステーションTS4に加えて、これの掘進方向の下流側に設けられた補助ターゲットTG7を視準して、トータルステーションTS4及び補助ターゲットTG7の位置座標を計測する。
【0028】
しかる後に、トータルステーションTS4から、バックサイトで補助ターゲットTG7を視準すると共に、フォアサイトで次のトータルステーションTS3に加えて、これの掘進方向の下流側に設けられた補助ターゲットTG6を視準して、トータルステーションTS3及び補助ターゲットTG6の位置座標を計測する。
【0029】
しかる後に、トータルステーションTS3から、バックサイトで補助ターゲットTG6を視準すると共に、フォアサイトで次のトータルステーションTS2に加えて、これの掘進方向の下流側に設けられた補助ターゲットTG5を視準して、トータルステーションTS2及び補助ターゲットTG5の位置座標を計測する。
【0030】
しかる後に、トータルステーションTS2から、バックサイトで補助ターゲットTG5を視準すると共に、フォアサイトで次のトータルステーションTS1に加えて、これの掘進方向の下流側に設けられた補助ターゲットTG4を視準して、トータルステーションTS1及び補助ターゲットTG4の位置座標を計測する。トータルステーションTS2から、次のトータルステーションTS1や補助ターゲットTG4を視準する際には、下方に向けて視準することになるが、急角度ではなく、緩い意角で下方に向けて視準することになるので、これらの視準を容易に行うことができる。
【0031】
そして、トータルステーションTS1から、フォアサイトで次のトータルステーションTS0を視準するのは、急角度で下方に向けて視準することになるため困難であることから、トータルステーションTS0の位置座標を計測するには、トータルステーションTS0から、バックサイトで上方に向けてトータルステーションTS1を視準すると共に、バックサイトで上方に向けて補助ターゲットTG4を視準して、後方公会法によって当該トータルステーションTS0の位置座標を計測する。しかる後に、トータルステーションTS0から、円周シールド掘進機31の所定の位置に固定されたターゲットTG4,TG8,TG9をフォアサイトで視準して、これらの位置座標を計測することで、円周シールド掘進機31の位置を精度良く測量することが可能になる。
【0032】
これらによって、本実施形態の円周シールド掘進機の測量方法によれば、発進基地20から鉛直面内において円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機31の位置を、発進基地20の基準点(TG1,TG2)からリレー方式で容易に測量することが可能になる。
【0033】
なお、本実施形態では、トータルステーションTSとして、
図8に示すような、反射プリズムや望遠レンズや光波測距儀等を備える、公知の各種のトータルステーションを用いることができる。ターゲトや補助ターゲットTGは、好ましくは360°プリズムを備える、トータルステーション用の公知の各種のターゲットを用いることができる。これらのトータルステーションTSやターゲットTGは、例えば有線又は無線のネットワークを介して、例えば現場管理事務所に設けられたコンピータと接続されることで、測量システムを構成して、現場管理事務所で一括して管理したり制御したりすることが可能である。
【0034】
上述のトンネルの構築工法におけるパイプルーフ施工工程では、
図10及び
図11に示すように、拡幅トンネル50の施工区間の一方の端部に設けられた円周シールド坑30から、他方の端部に設けられた円周シールド坑30に向けて、公知のパイプルーフ掘進工法により、複数のパイプルーフ材11を掘進させながら地中に押し込んでゆく。これによって、これらの複数のパイプルーフ材11が円周方向に間隔を置いて並べて埋設されることにより構成される、円筒状のパイプルーフ12が形成される。
【0035】
すなわち、本実施形態では、パイプルーフ掘進工法として、高水圧下でも施工が可能な泥水式推進工法を採用し、パイプルーフ材11として、内部で作業員が作業できる大きさの例えばφ2.0m程度の鋼管を使用して、これらの複数のパイプルーフ材11を地中に押し込むことによって、地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地中に、複数のパイプルーフ材11を、トンネルの延設方向に延設させて各々埋設する。また、パイプルーフ掘進工法により円周シールド坑30からパイプルーフ材11を地中に押し込む作業を、円周シールド坑30の周方向に所定のピッチで複数回繰り返すことによって、地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地盤に、複数のパイプルーフ材11を、弧状の断面を含む円形の断面に沿った円周方向に、所定の間隔を置いて全周に亘って並べて埋設することが可能になる。またこれによって、弧状の断面を含む円形の断面に沿った円周方向に並べて埋設された複数のパイプルーフ材11による、拡幅トンネル50の掘削時に周囲の地盤からの荷重を先受けする、円筒状のパイプルーフ12を形成することが可能になる。
【0036】
なお、本実施形態では、複数のパイプルーフ材11による円筒状のパイプルーフ12は、例えば特願2015−57878に開示された、連結接続鋼材と耐圧支持地盤体とを含んで構成されるパイプルーフの連結構造によって、各隣接する一対のパイプルーフ材11が一体として連結されることで、強固に且つ安定した状態で形成することが可能である。
【0037】
上述のトンネルの構築工法における褄部改良体形成工程では、
図12及び
図13(a)、(b)に示すように、各々の円周シールド坑30の内方の地盤を地盤改良することによって、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に、褄部地盤改良体40を形成する。すなわち、褄部改良体形成工程では、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部における、各々の円周シールド坑30の内部や、これに近接する部分のパイプルーフ材11の内部からの作業によって、例えば各円周シールド坑30の上部から下部に向けて、公知の地盤改良器42を用いた、好ましくは高圧噴射撹拌工法による地盤改良を行うことで、円柱形状の単位改良体41を、円周シールド坑30によって囲まれるこれの径方向内方の地盤に形成する。また、円周シールド坑30の内方の地盤に対して、このような高圧噴射撹拌工法による地盤改良を複数回繰り返すことによって、複数の円柱形状の単位改良体41が、その外周部分を重ね合わせつつ縦横に並べて配置されることで一体として形成された、褄部地盤改良体40(
図13(a)、(b)参照)が、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に、円周シールド坑30と本線トンネル51との間の間隔部分を閉塞するようにして、各々の円周シールド坑30の内方に構築されることになる。
【0038】
これによって、拡幅トンネル50の施工区間の掘削領域が、円筒状に形成されたパイプルーフ12と、両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって、周囲を囲まれた状態になるので、これらのパイプルーフ12や褄部地盤改良体40に外周の地盤からの荷重を支持させつつ、掘削及び覆工工程において、これらの内側領域を、安定した状態で掘削してゆくことが可能になる。
【0039】
上述のトンネルの構築工法における掘削及び覆工工程では、
図14〜
図17に示すように、円筒状に形成されたパイプルーフ12と、両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって周囲を囲まれる内側領域を、上部から下部に向けて掘削すると共に、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面や褄部地盤改良体40の内壁面を覆って、上部から下部に向けて、いわゆる逆巻き工法によって、順次覆工壁43a,43bを形成してゆく。
【0040】
すなわち、掘削及び覆工工程では、掘削機械44として例えばバックホウやブルドーザーを用いて、パイプルーフ12の内側の掘削領域の上段部から下段部に向けて、拡幅トンネル50の掘削作業を順次行うと共に、上段部から下段部に向けて、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面や褄部地盤改良体40の内壁面を覆うようにして、例えばSRC構造やRC構造による円筒部の覆工壁43a(
図16参照)や、褄部の覆工壁43b(
図17参照)を順次構築して行く。なお、覆工壁43a,43bは、褄部地盤改良体40によって周囲を囲まれる内側領域の掘削断面の全体を掘削した後に、下部から上部に向けて、いわゆる順巻き工法によって、順次形成してゆくこともできる。
【0041】
ここで、拡幅トンネル50の掘削作業では、パイプルーフ12を構成するパイプルーフ材11の大きな剛性による、トンネルの延設方向の先受け支保工としての機能によって、地山の安定性を向上させると共に、地山の変形を抑制しつつ、トンネルの延設方向に掘削作業をさらに効率良く行ってゆくことが可能になる。また、本実施形態では、隣接する各一対のパイプルーフ材11が一体として連結されており、パイプルーフ12をトンネルの横断方向(断面方向)の支保工として機能させることが可能になるので、拡幅トンネル50の掘削作業に伴って円筒状のパイプルーフ12の内部に設置される、支保工の数や設計強度を削減したり、支保工を省略したりすることが可能になる。
【0042】
拡幅トンネル50の上段部の掘削作業では、作業空間から本線トンネル51に至る土砂排出管53(
図15参照)を、例えば本線トンネル51からの鋼管推進によって設置しておき、この土砂排出管53に掘削土砂を投入することによって、本線トンネル51を介して掘削土砂を搬出することができる。掘削領域の上段部から下段部に向けた掘削作業の進行に伴って露出する本線トンネル51は、例えば破砕機械を用いて破砕して、掘削土砂と共に撤去することができる(
図16参照)。
【0043】
また、円筒部の覆工壁43aを構築する作業では、例えば掘削により露出したパイプルーフ12の、隣接する各一対のパイプルーフ材11の内側面に跨るようにして、溶接等により止水鉄板を取り付けると共に、止水鉄板の裏側に裏込め充填材を充填して固化させる。しかる後に、止水鉄板の内側部分に鉄骨や鉄筋や型枠等を組み立てて、コンクリートを打設することにより、いわゆる逆巻き工法によって、上段部から下段部に向けて、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造やRC(鉄筋コンクリート)構造による円筒部の覆工壁43aを構築してゆくことが可能になる。
【0044】
さらに、褄部の覆工壁43bを構築する作業では、例えば掘削により露出した褄部地盤改良体40の内壁面に対して、好ましくは吹付コンクリート48を吹き付けると共に、褄部地盤改良体40に向けて複数のロックボルト49を打ち込むことで、当該内壁面を補強する(
図20参照)。しかる後に、補強された褄部地盤改良体40の内側面を覆って防水シートをさらに取り付けた状態で、これの内側部分に鉄骨や鉄筋や型枠等を組み立てて、コンクリートを打設することにより、いわゆる逆巻き工法によって、上段部から下段部に向けて、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造やRC(鉄筋コンクリート)構造による褄部の覆工壁43bを構築してゆくことが可能になる。
【0045】
これらによって、円筒部の覆工壁43a及び両側の褄部の覆工壁43bにより周囲を囲まれた、本線トンネル51とランプトンネル52とを接続させるための、大断面の拡幅トンネル50(
図2参照)を、区分地上権が不要な大深度地下に構築してゆくことが可能になる。また、構築された拡幅トンネル50にランプトンネル52を接続させると共に、インターチェンジの本体構造物を構築することにより、例えば道路用の本線トンネル51とランプトンネル52とを接続させるためのインターチェンジを、拡幅トンネル50の内部に設けることが可能になる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の円周シールド掘進機の測量方法は、大深度地下に大断面の拡幅トンネルを構築する構築工法において、パイプルーフ施工用の円周シールド坑を形成するために、円周シールド掘進機を鉛直面内における円周方向に掘進させて行く場合に限定されることなく、拡大シールド工法等の、その他の種々のトンネル工事において、鉛直面内における円周方向に掘進してゆく円周シールド掘進機の位置を測量する方法として採用することができる。また、本発明の測量方法によって測量される円周シールド掘進機は、発進基地から横方向に発進して、鉛直面内における円周方向に掘進してゆくものである必要は必ずしもなく、発進基地から下方、斜め下方、斜め上方等のその他の方向に発進して、同じ発進基地に到達するものであっても良い。