(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された拡散板を利用したハンディスキャナにおいて、読取口の周囲に配置された複数の光源の前方に、特許文献2に開示された偏光光学系(環状の偏光子2003など)を配置した場合、すなわち、拡散照明と偏光照明の双方を一台のハンディスキャナで実現しようとした場合、光量を十分に確保するため照明及び偏光素子を環状に配設するなど照明構成が複雑になると共に、ハンディスキャナの小型化の妨げになる、という問題がある。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、拡散照明及び偏光照明の双方を実現しながらも、ハンディスキャナの小型化に資する携帯型光学読取装置を提供することにある。
【0008】
本発明の第1の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、読取対象となるシンボルに
照射され、シンボル上で反射した光が通過する読取口が形成されたヘッド部と、前記ヘッド部に連設され、ユーザによって把持される把持部と、を有し、前記読取口を通過した光を受光して得られた画像データに基づきシンボルを読み取る携帯型光学読取装置であって、前記ヘッド部は、照明基板と、前記照明基板の前記読取口側に環状に配置された複数の第一光源と、読取対象となるシンボルに光を出射する第二光源と、前記第二光源から出射された光を偏光する
投光用偏光素子と、
前記複数の第一光源の内側に配置され、側面部および底面部により錐台状またはドーム状に形成された部材であって、前記複数の第一光源から出射された光を拡散させて拡散光を照射する発光面が、前記側面部のうち前記底面部から離れた位置にある前記照明基板よりも前記読取口側に形成される前記側面部と、前記投光用偏光素子にて偏光された偏波光を通過させる投光用開口、および、該発光面から発せられた拡散光がシンボル上で反射した反射光を通過させ、且つ、該投光用開口を通過した偏波光がシンボル上で反射した反射光を通過させる受光用開口が形成された前記底面部とを有する部材と、前記底面部に形成された受光用開口を通過し
た反射光を偏光する
受光用偏光素子と、
前記受光用偏光素子にて偏光された反射光を受光してシンボルの画像データを生成する撮像部とを備えることができる。前記構成により、拡散部材に、
投光用開口を設け、受光
用偏光素子を介して拡散照明及び偏光照明の受光を1つの開口で兼用し、拡散照明及び偏光照明による撮像も1つの撮像部で行っており、かつ、拡散照明の構成の中に、拡散部材に
受光用開口を設け、
投光用偏光素子を介して偏光照明の投光が可能となるよう偏光照明の構成を取り込むことで、拡散照明及び偏光照明の双方を実現しながらも、拡散照明と偏光照明とを別体として構成する場合と比べて格段にコンパクト化できる。
【0009】
また、本発明の第2の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記
受光用開口は、前記開口面において前記
投光用開口の近傍に設けることができる。前記構成により、受光
用開口と投光
用二開口とを近傍に設けたので、撮像部が撮像する撮像軸と偏光照明の投光軸とを略平行にでき、偏光照明に好適な照明配置とすることができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第3の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記
受光用開口及び
投光用開口は、連設され、一の開口を形成してなるよう構成できる。
【0011】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記
受光用開口及び
投光用開口は、分離して並設され、別個の開口を形成してなるよう構成できる。
【0012】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記
受光用偏光素子及び
受光用偏光素子は、夫々、前記拡散部材に固定されてなるよう構成できる。
【0013】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記
受光用偏光素子及び
投光用偏光素子は、位相が互いに90°異なるよう2つの偏光素子が連設されて一の部材をなすよう構成できる。前記構成により、偏光素子は、位相が互いに90°異なるように連設された状態の一つの部品として配置できるので、偏光素子を向きの調整をしながら別個に配置する必要がない。
【0014】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記拡散部材は、前記ヘッド部内で前記撮像部の前方に配設される後端面と、前記撮像部の撮像軸を取り囲むよう前記後端面に連設されると共に、前記第一光源が前記拡散部材の外側に位置するように配設される側面と、を備え、前記
受光用開口及び
投光用開口は、前記後端面に形成されてなるよう構成できる。前記構成により、読取方向と偏光照明の投光軸とを略平行にでき、偏光照明に好適な照明配置とすることができる。
【0015】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記第二光源は、前記ヘッド部内において前記拡散部材の前記後端面の下方に配設されるよう構成できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る携帯型光学読取装置によれば、前記第二光源と前記
投光用偏光素子との間には、前記第二光源から出射された光の照射範囲を絞り込むリフレクタ又はレンズが設けられるよう構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハンディスキャナの構成を示す模式図である。
【
図5】充電ユニットとハンディスキャナとを接続した状態を示す図である。
【
図6】ハンディスキャナから充電ユニットを取り外した状態を示す図である。
【
図7】ハンディスキャナからバッテリを取り出した状態を示す図である。
【
図8】ハンディスキャナと充電ユニットとが接続状態にあるときの右側面方向から見た接続箇所の部分拡大断面図である。
【
図9】ハンディスキャナの内部構成を示す構造図である。
【
図10】ハンディスキャナの内部構成を示す構造図であって、
図9とは異なる角度から見た図である。
【
図11】ハンディスキャナの内部構成を示す構造図であって、
図9及び
図10とは異なる角度から見た図である。
【
図12】ハンディスキャナのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図13】電源基板におけるメイン基板へ電力を供給するためのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図14】ハンディスキャナのヘッド部の正面図である。
【
図15】ハンディスキャナの照明基板の模式図である。
【
図16】拡散板が透過しない場合の光路の説明図である。
【
図17】拡散板が透過しない照明環境下で撮像したデジタル画像である。
【
図18】拡散板が透過する場合の光路の説明図である。
【
図19】拡散板が透過する照明環境下で撮像したデジタル画像である。
【
図20】拡散板において、透過率の高い部材を使う場所の説明図である。
【
図21】拡散板において、透過率の高い部材を使う場所の説明図である。
【
図22】ハンディスキャナの右側面から見た断面図である。
【
図23】ハンディスキャナのヘッド部を右側面から見た部分拡大断面図である。
【
図24】ハンディスキャナの拡散板の説明図である。
【
図25】ハンディスキャナの拡散板の説明図である。
【
図26】ハンディスキャナの拡散板背後の内部構造の説明図であって、
図26Aは、ヘッド部の外側から見た図であり、
図26Bは、ヘッド部の内側から見た図である。
【
図27】拡散板のすべての部位において、一律に、拡散率を維持しながら透過率を高めていることを示すための説明図である。
【
図28】拡散板の発光面に対向する対向面の一部の部位だけ、透過率を高めていることを示すための説明図である。
【
図29】従来の光学的情報読取装置を示す模式図である。
【
図30】従来の光学的情報読取装置を示す模式図である。
【
図31】従来のハンディ型コードリーダを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための携帯型光学読取装置を例示するものであって、本発明は携帯型光学読取装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
携帯型光学読取装置(以下、ハンディスキャナともいう。)における基本原理は、レーザ光を照射し、反射光の濃淡でバーコードなどのシンボル(以下、一例として、バーコードまたはコードともいう。)の識別をしている。近年、携帯電話やスマートフォンなどでは、二次元のコード(QRコード(登録商標)など)が一般的になってきており、このタイプはレーザ光ではスキャンできず、主にカメラで画像として撮像し、画像を解析してコードを識別している。
【0020】
大きく分けるとレーザ式とカメラ式があり、更に大別すると、固定式と手持式がある。固定式は、一般に、日常生活の中ではあまり取り扱われないが、例えば工場の中で、トレーサビリティのために、自動化ラインで固定式を使用することがある。手持式は、レジなどの日常生活の中で使用されるような民生品もあれば、工場の中でも、人が介在するところでは、使用することがある。
【0021】
更に細かく分類すると、コードの種類で一次元のバーコードと二次元のバーコードとがある。多くは紙やラベルに印字されたものを読み取るが、中には、ダイレクトパーツマーキング(DPM)と一般的に言われているような直接エンジンなどの金属製品・部品にレーザマーカーで印字をして、それを読み取るような携帯型光学読取装置もある。
【0022】
本発明に係る携帯型光学読取装置は、ユーザが手で持って読取作業を行うタイプである。適用対象は、民生品からDPMなど多岐に亘ってよく、特に限定されない。
【0023】
なお、シンボルには、一次元コードや二次元コードに加え、これらを組み合わせた合成シンボルも含む。一次元コードは、バーコードや一次元シンボル等とも呼ばれ、Code39やCode128等が挙げられる。
【0024】
二次元コードも同様に二次元バーコードや二次元シンボル等とも呼ばれ、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(DataMatrix)、ベリコード(VeriCode)、アズテックコード(AztecCode)、PDF417、MicroPDF417、マキシコード(MaxiCode)などがある。
【0025】
また合成シンボルには、一次元コードと二次元コードが混在するGS1合成シンボルなどがある。GS1合成シンボルはベースになる一次元コードとしてEAN/UPC(EAN-13、EAN-8、UPC-A、UPC-E)、GS1-128及びGS1データバーの三種が利用できる。また、付加情報には、MicroPDF417又はPDF417の二次元コードが利用できる。また、本実施の形態は、バーコードと、マイクロQRコードなどのマトリクス型二次元コードとを組み合わせたものにも適用できる。
(ハンディスキャナ1の構成)
【0026】
本発明の一実施形態に係るハンディスキャナ1の構成を示す模式図を
図1に示す。この図において、符号ILは照明光を示している。以下、便宜上、ハンディスキャナ1の読取口4側
た面を正面、ヘッド部3側から
把持部2の端面側に向かって見た面を平面、把持部2の端面側から見
た面を底面として、夫々の面
(背面、右側面、左側面)を正投影図法に準拠して定義する。また、ハンディスキャナ1のうち読取口4がある方を前方、その反対側を後方として定義する。
【0027】
図2は、ハンディスキャナ1の正面図、
図3は、同右側面図、
図4は、同背面図である。
図1〜
図4に示すように、ハンディスキャナ1は、正面の上部に、バーコードを読み取るための矩形状の読取口4を有し、読取口4から背面に向けて両側面及び平面が連設されて形成されるヘッド部3を備えている。また、ヘッド部3に連設されるとともに連設方向、すなわち底面方向に延在し、その外形が断面略円形の棒状となるよう、ユーザによって把持される把持部2が設けられている。
【0028】
把持部2の底面方向には端面が形成されており、そこに充電ユニット接続部11が配設されている。充電ユニット101は、この充電ユニット接続部11に接続される。
図5は、ハンディスキャナ1に充電ユニット101を接続した状態を示す図である。また、
図6は、ハンディスキャナ1から充電ユニット101を取り外した状態を示す図である。これらの図に示すように、ハンディスキャナ1は、充電ユニット101を接続したまま使用することもできるし、ハンディスキャナ1をコードレスの単体として使用することもできる。
【0029】
ハンディスキャナ1を駆動するための駆動電力は、バッテリ5または充電ユニット101から供給されるが、両方から供給可能な場合には、電圧の高い方が優先され、通常、電圧の高い充電ユニット101から供給される。ユーザは、この図に示すように、ハンディスキャナ1を充電ユニット101に接続したまま、バッテリ5の充電状態を気にすることなく、あるいは、バッテリ5の有無に拘わらず、バーコードの読取作業を行うことができる。
【0030】
図7は、ハンディスキャナ1からバッテリ5を外した状態を示す図である。この図に示すように、バッテリ5は、円筒型の形状をしており、例えばリチウムイオン電池が用いられ、バッテリ蓋6を閉じて、把持部2の内部に収納されるようになっている。バッテリ蓋6の
図7において下方に、バッテリ蓋ロック7が設けられており、これを押すと、バッテリ蓋6が開くように構成されている。
【0031】
図8は、ハンディスキャナ1と充電ユニット101とが接続状態にあるときの右側面方向から見た接続箇所の部分拡大断面図である。この図に示すように、バッテリ蓋ロック7の先端に爪が形成されている。バッテリ蓋ロック7が閉じた状態では、この爪がバッテリ蓋6の端部に形成された突起8に掛かっており、バッテリ蓋ロック7を押すと、先端の爪が外れてバッテリ蓋6が開く。このバッテリ蓋ロック7は、バッテリ蓋6が開くのと同時に、ハンディスキャナ1と充電ユニット101とのロックが外れるようになっている。これにより、バッテリ5の交換時の充電ユニット101による給電を回避することができる。
【0032】
図9〜
図11は、ハンディスキャナ1の内部構成を示す構造図である。ハンディスキャナ1は、これらの図に示すように、主として、フロントケース43と、読取部41と、バッテリ部42と、リアケース44と、充電ユニット接続部11とから構成されている。
【0033】
読取部41は、
図9〜
図11に示すように、読取対象にLED照明光ILをリフレクタ36並びに偏光素子24の投光用偏光素子242を介して投光するためのLED照明2915(図示していない。)と、拡散板23を介して読取対象に対して側面から拡散光ILを出射するためのLED照明2911〜LED照明2914(図示していない。)と、LED照明2911〜LED照明2915を制御するための照明基板29と、読取に有用な反射光を効率良く反射させるための反射板28とを含む投光部46、カメラフレーム32と、カメラカバー30と、読取対象からの反射光を投光用偏光素子242と位相が90°異なる偏光素子24の受光用偏光素子241を介して受光し光像を形成するための受光レンズ31と、受光レンズ31で形成された光像からデジタル画像を作成するためのCMOSイメージセンサ34とを含む受光部47、ユーザが操作するためのトリガースイッチ25と、トリガーパッキン26と、各種モードに切り替えるためのファンクションスイッチ50とを含む操作部48、ユーザに種々の情報を通知するためのバイブレータ27とインジケータLED21(図示していない。)とインジケータレンズ22とを含む通知部49、読取結果をPLC(Programmable Logic Controller)やPC(Personal Computer)に送信するための別体の通信ユニット(図示していない。)との間で例えばBluetooth(登録商標)などの無線通信をするための通信部(図示していない。)、投光部46と受光部47と操作部48と通知部49と通信部とを制御するためのメイン基板33、各種部材に電力を供給するための電源基板37を主要部として備えている。
【0034】
バッテリ部42は、円筒型の形状をした3.7Vのバッテリ5、バッテリ5を収納して閉じるためのバッテリ蓋6、バッテリ5からメイン基板33に給電するためのバッテリ基板35を主要部として備えている。
【0035】
フロントケース43及びリアケース44は、読取部41とバッテリ部42とを収容し、両者が合わさって筐体が形成される。筐体の把持部2の端面に充電ユニット接続部11が配設されている。
(ハンディスキャナ1の回路ブロック)
【0036】
図12は、ハンディスキャナ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図12に示すように、メイン基板33は、DSP331等を備えており、ハンディスキャナ1の投光部46及び受光部47、操作部48、通知部49の動作を制御するとともに、取得した画像に対して読取処理を実行する。またメイン基板33は、通信部を動作させて読取結果を通信ユニットに送信する。
【0037】
DSP331は、ROM332に記憶されている(又はRAM333に展開された)プログラム及び設定に基づいて、トリガースイッチがONになったことを検出すると、LEDドライバ292を介して、LED照明2911〜LED照明2915を設定した態様で点灯するよう制御する。例えば、LED照明2911〜LED照明2914を拡散板23の背部に周上に夫々配設してブロックを形成し、ブロック毎に点灯を制御する。このブロック点灯によって、拡散照明でありながら、特定の方向からバーコードに照明を当てることができる。ブロック点灯についての詳細は後述する。
【0038】
続いて、DSP331は、CMOSイメージセンサ34が画像データをRAM333に保存し、RAM333に保存された画像データに基づいてデコード処理をする。読取処理が終了し、通信部を制御してBluetooth(登録商標)で読取結果を出力する。またDSP331は、ブザードライバ511を介して、ブザー51から正常に読取完了を知らせる音を鳴らし、同時に、モータドライバ271を介して、バイブレータ27を動作させる。さらにまた、DSP331は、インジケータドライバ211を介して、インジケータLED21を点灯させ、ユーザに対して、読取の完了や各種の進捗などを通知する。
【0039】
図13は、電源基板37におけるメイン基板33へ電力を供給するためのハードウェア構成を示すブロック図である。ACアダプタに繋がる充電ユニット101から電気接点12を介して電源供給する系統は所定の電圧がかけられており、バッテリ5からの系統は、所定の電圧がかけられている。電源基板37において、スイッチ52とバッテリ充電コントローラ35とが並列になっており、バッテリ充電コントローラ35を介してバッテリ5を充電することも、スイッチ52を介してメイン基板33へ電力供給することもできる。充電ユニット101がハンディスキャナ1と繋がっており、かつ、ハンディスキャナ1にバッテリ5が入っている場合、すなわち、両方とも繋がっている場合、通常、メイン基板33へは充電ユニット101から電力が供給されることになる。この場合において、バッテリ5の電圧が所定の電圧より低い場合、バッテリ5が充電される。
【0040】
また、充電ユニット101がハンディスキャナ1と繋がっていない場合、バッテリ5から電力が供給される。ハンディスキャナ1にバッテリ5が入っていない場合は、充電ユニット101から電力が供給される。
(ブロック点灯)
【0041】
難読性の高いバーコードを読み取るための一つの手段として、照明光をブロック単位で点灯させるブロック点灯がある。
図14は、ヘッド部3の部位の正面図である。このブロック点灯によって、この図に示すように、拡散板23(特許請求の範囲における「拡散部材」の一例に対応する。)を、上側面部231、左側面部232、下側面部233、右側面部234にブロックとして4つに区画し、各々をブロック単位で任意に点灯させることができる。したがって、特定のブロックを点灯させることによって、特定の方向からバーコードに照明を当てることができる。
【0042】
図15は、拡散板23の背後に配設される照明基板29の模式図である。
図15に示すように、照明基板29には、拡散板23の上側面部231、左側面部232、下側面部233、右側面部234に対応するように、LED照明2911、LED照明2912、LED照明2913、LED照明2914が夫々配設されている。LED照明2911〜LED照明2914は、夫々、例えば4つの青色光を発するLEDが照明基板29上に配設されている。このLEDは、120°程度の出射角があり、ブロード状にLED照明光ILを出射する。このLED照明光ILが拡散板23を通過するときに拡散して、輝度が均一な拡散光となる。拡散板23についての詳細は後述する。
【0043】
このブロック点灯の役割の一つに、照明光の天頂角を変えられることが挙げられる。例えば、撮像軸と略平行な下側面部233をブロック点灯させることで、バーコードに対して、斜めから拡散光を出射でき、上方に段階的又は徐々に開放された上側面部231をブロック点灯させることで、バーコードに対して、より鉛直に近い方向から拡散光を出射できる。
【0044】
この照明光の天頂角を変えられる利点は、例えばダイレクトパーツマーキング(DPM)のように、バーコードが傷でマーキングされている場合、バーコードの周囲が梨地や鋳肌地のようにザラついている場合、斜めから拡散光を当てると、ザラついている面では乱反射し、マーキングされた箇所での反射光を受光することで、良好に読み取れることがあり、一方、バーコードの周囲が鏡面のように入射光が反射しやすい場合には、より鉛直に近い方向から拡散光を当てた方が良好に読み取れることがある。すなわち、バーコードの読取特性が照明光の天頂角によって変わる場合には、最適な天頂角を選択することで良好に読み取ることが可能となる。
【0045】
また、ブロック点灯の他の役割として、照明光の方位角を変えられることが挙げられる。例えば、撮像軸に対して、上下左右に、夫々、上側面部231、下側面部233、左側面部232、右側面部234が配設されているので、それらをブロック単位で発光させることで、バーコードに対して、方位角を変えて拡散光を出射できる。
【0046】
この照明光の方位角を変えられる利点は、例えば、ダイレクトパーツマーキング(DPM)されたヘアライン状の読取対象に対して、ヘアラインの線方向に垂直に照明光を当てても良好に読み取れない場合があり、これに対して、このような場合であっても、ヘアラインの線方向に照明光を当てると、良好に読み取れることがある。すなわち、バーコードの読取特性が照明光の方位角によって変わる場合には、最適な方位角を選択することで良好に読み取ることが可能となる。
(拡散部材の構成)
【0047】
拡散板23の背後からLED照明291を点灯させてブロック点灯させる場合を考える。例えば、
図16に示すように、下側面部233をブロック点灯させる場合、LED照明2913から出射したLED照明光は、拡散板23の下側面部233を通過する際に乱反射することによって、輝度が均一な拡散光となる。この図においては、下側面部233が発光面ESとなり、下側面部233に対向する上側面部231が対向面OSに対応する。発光面ESからの拡散光は、そのままバーコードに当たり、反射光を受光して撮像できれば、良好に読み取ることができるが、
図16に示すように、一部の拡散光が対向面OSに当たる。この対向面OSで反射した光がバーコードに当たると、ブロック点灯によって特定の方向から拡散光を当て、コントラストを高めたいにも拘わらず、対向面OSからの反射光の影響を受けて、
図17に示すように、バーコードのコントラストが低下してしまう。
【0048】
これに対して、対向面OSでの反射を抑制できれば、対向面OSからバーコードに向かう拡散光を少なくし、コントラストの低下を防止できる。対向面OSでの反射を抑える方法として、
図18に示すように、発光面ESからの拡散光を対向面OSでそのまま透過させ、対向面OSで透過するよう対向面OSの透過率を例えば70%以上に高めることで、結果として、対向面OSからバーコードに向かう拡散光を少なくでき、
図19に示すように、バーコードのコントラストを高めることができる。
【0049】
一方、発光面ESの透過率は、少なくとも、拡散光を発光可能とすべく、90%以下に留める方が好適である。これは以下の理由による。拡散板23は、透明な樹脂の中に粒状の拡散材が混入しており、この拡散材によって入射したLED照明光が散乱し、輝度が均一となる拡散光が得られるところ、透過率を高めるには拡散材の分量を減らす必要があり、輝度が十分に均一な拡散光を出射できなくなるからである。
【0050】
本実施の形態では、ブロック点灯をさせることによって、拡散板23に、発光面ESの役割と対向面OSの役割とを併せ持たせている。
図20に示すように、ヘッド部下側が発光面ESでヘッド部上側が対向面OSとなる場合と、ヘッド部上側が発光面ESでヘッド部下側が対向面OSとなる場合とがある。また、
図21に示すように、ヘッド部右側が発光面ESでヘッド部左側が対向面OSとなる場合と、ヘッド部左側が発光面ESでヘッド部右側が対向面OSとなる場合とがある。したがって、拡散板23の透過率は、一律に、70%以上、90%以下としている。これにより、発光面ESまたは対向面OSのいずれも透過率が70%〜90%を満たすことになり、また、一の材料から拡散板23を成形できるようになる。
【0051】
一方、対向面OSを、例えば、拡散板で構成しなくてもよい場合には、発光面ESで出射された照明光をすべて透過する部材で構成してもよいし、あるいは、完全に吸収する部材で構成してもよい。なお、上述したように、対向面OSの透過率70%以上は、対向面OSの反射率30%未満に置き換えてもよい。また、対向面OSでの反射をより効果的に防ぐためには、好ましくは反射率20%未満、より好ましくは反射率10%未満にすることが好ましい。また、反射率や透過率は、JIS規格K7375に準じて測定することが好ましい。
(拡散照明と偏光照明との併用構造)
【0052】
偏光照明は、投光用の偏光素子で特定方向に偏波する光以外の光を遮断し、受光用の偏光素子で90°位相の異なる特定方向に偏波する光以外の光を遮断することにより、両偏光素子間で偏波した光を通過させる照明であるから、1つの偏光素子を介在させることで光量が1/2となるところ、2つの偏光素子を介在させるので、光量は発光量の1/4となる。したがって、従来、画像処理装置などで拡散照明と偏光照明とを併用する場合、偏光照明には環状に配された光源などの発光量を大きくできる光源が採用され、また、拡散照明での撮像の際に、受光用の偏光素子が介在すると、光量が発光量の1/2となることから、拡散照明と偏光照明とでは別の光路で撮像するのが望ましいため、拡散照明と偏光照明とは別体として構成され、これらを用いた装置は大型化してしまうという問題があった。
【0053】
拡散照明と偏光照明との併用をハンディスキャナで実現しようとした場合、ハンディスキャナの性質上、コンパクト化する必要がある。ヘッド部のコンパクト化を図りながら、拡散照明と偏光照明とを上手く併用するため、本実施の形態では、まず、四角錐台状の拡散板23の後端面(正投影図法では背面。特許請求の範囲における「開口面」の一例に対応する。)に、偏光照明の投光用の開口2432を設け、その近傍に偏波光の受光用の開口2431を設ける。また、拡散照明は四角錐台状の拡散板23の側面である上側面部231〜右側面部234によって行い、拡散照明と偏光照明とで撮像部41への光路は共有する。これにより、受光用偏光素子241は、拡散照明でも介在することになるが、その分、光源に高出力のLED照明2411〜LED照明2415を採用することで、光量の問題を解消し、1つの撮像部41で撮像できる利点も相俟って、ヘッド部3のコンパクト化を実現している。
(実施例)
【0054】
これらを踏まえて、ヘッド部3の内部構造及び拡散板23は、以下のような実施の態様としている。
図22は、ハンディスキャナ1の側面方向から見た断面図である。また
図23には、
図22のヘッド部3を拡大した部分拡大図を示している。これらの図に示すように、ヘッド部3内には、略四角錐台状の拡散板23を収納しており、錐台の上底位置に光像を形成する受光レンズ31と光像から画像データを作成するためのCMOSイメージセンサ34とを備える。また、受光レンズ31及びCMOSイメージセンサ34と並列するように、LED照明2915(特許請求の範囲における「第二光源」の一例に対応する。)及びリフレクタ36並びに偏光素子24が錐台の上底位置に配設されている。なお、LED照明2915から出射された光の照射範囲を絞り込むためのリフレクタ36の代わりにレンズを使用してもよい。
【0055】
前述したように、LED照明2911〜LED照明2914(特許請求の範囲における「第一光源」の一例に対応する。)は上側面部231〜右側面部234をブロックとして発光させて、バーコードに対して、側面から、青色のLED拡散光ILを出射するが、LED照明2915から赤色のLED照明ILをバーコードの読取方向に出射する。LED照明2915からのLED照明ILは、偏光素子24の投光用偏光素子242を通すことで、例えば、縦に偏波した以外は遮断して縦偏光のLED照明光ILのみを通過させ、読取対象からの反射光ILを偏光素子24の受光用偏光素子241に通すことで、横に偏波した以外は遮断して横偏光のLED照明光ILのみを通過させるように構成されている。例えば鏡面のようにそのまま光が反射する読取対象に対しては、投光時に投光用偏光素子242を、受光時には、投光用偏光素子242と90°位相が異なる受光用偏光素子241を夫々介在させることで、両者間で新たに偏波したLED照明光ILのみをCMOSイメージセンサ34で捉えることができる。したがって、偏光素子24を介したLED照明2915は、鏡面反射に近い反射をする読取対象に対して有効な照明となる。
【0056】
図24及び
図25は、拡散板23の構成を示す模式図であって、夫々、外側から見た図及び内側から見た図を示している。拡散板23は、前述のとおり、透明な樹脂に粒状の拡散材が混入してなり、乳白色をしている。これらの図に示すように、略四角錐台の形状であり、四角錐台の上底はやや下方に傾斜している。そして、四角錐の錐体面の上方には、ヘッド部上側に開放される傾斜した側面を有する上側面部231が形成されており、同下方には、撮像軸と略平行する下側面部233が撮像軸よりも下方に形成されている。また、四角錐の上底(特許請求の範囲における「開口面」の一例に対応する。)には、偏光素子24を介して撮像及び投光するための偏光素子用窓243が設けられている。
この偏光素子用窓243には、受光用偏光素子241と投光用偏光素子242とを厳密に90°位相をズラして一枚に加工してなる偏光素子24が、受光用偏光素子241を上側に、投光用偏光素子242を下側にして配設されている。なお、拡散板23の形状は、四角錐台状に限定されず、例えば、撮像軸に対して周囲を側面が取り囲むよう、ドーム状や、円錐台及び角錐台などの錐台状であってもよい。また、拡散板23の形状は、撮像軸の周りを一周隙間なく取り囲んでいてもよいし、隙間が空いていてもよい。つまり、複数の側面が互いに離間して取り囲んでいてもよい。
【0057】
前述のとおり、拡散板23の透過率を高めているが、それ故に、拡散板23を透過した拡散光が内部で反射して戻ってくるのを防止する必要がある。これにより、読取性能を更に向上することができる。例えば、
図26A及び
図26Bに示すように、拡散板23の背後の内部構造は、できるだけ光を吸収する素材にすることが好ましい。本実施の形態においては、LED照明には、可視光を利用しているが、この場合、拡散板23の背後の内部を構成する素材として、例えば色が黒いレジンキャストや黒い樹脂を用いるのが好ましい。また、ハーネス類もできるだけ黒系の色を採用するのが好ましい。なお、本発明で用いる光源は、LED照明を想定しているが、可視光を出射するものに限定されず、赤外線などを含む広く電磁波を出射するものにも適用可能であり、その場合、背後の内部構成は、可視光では好適な黒いレジンキャストや黒い樹脂に限られない。
【0058】
拡散板23は、本実施の形態では、ブロック点灯させることを想定しており、同じ部位でも、発光面ESの役割と対向面OSの役割とを併せ持たせる必要があるため、
図27に示すように、すべての部位において、一律に、透過率を70%以上、90%以下とし、拡散率を維持しながら透過率を高めている。一方、例えば、読取対象の性質は様々であるため、読取対象の性質に特化したハンディスキャナが求められる場合には、他の実施例として、
図28に示すように、発光面ESに対向する対向面OSに該当する部位の透過率だけを70%以上に高めるという実施の態様もあり得る。
【0059】
なお、対向面OSを透過率70%以上にすることにより、偏光照明の場合も読取コード(画像)のコントラストを高めることができる。具体的には、白色のコードを偏光照明で読むときは、対向面OSが暗ければ暗いほど、読取コード(画像)のコントラストが高まる。したがって、LED照明2915などの光源と、透過率70%以上の対向面OSとを組み合わせることによって、読取性能を向上させることができる。