特許第6592352号(P6592352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000002
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000003
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000004
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000005
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000006
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000007
  • 特許6592352-超音波診断装置及びその制御プログラム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592352
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   A61B8/06
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-244143(P2015-244143)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-108824(P2017-108824A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3023290(JP,B2)
【文献】 特開2010−11976(JP,A)
【文献】 特開2007−175542(JP,A)
【文献】 石橋啓如,慢性肝疾患の線維化診断におけるソナゾイド造影超音波の試み,超音波医学,日本超音波医学会,2008年 4月15日,Vol.35,Supplement S389
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送信する超音波プローブと、
前記超音波として、前記被検体における造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧の超音波を複数フレーム分送信させる送信制御部と、
前記音圧の超音波によって前記造影剤が消失した深度を、前記超音波プローブから送信された超音波のエコー信号の強度に基づいて検出する検出部と、
該検出部によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報を表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記音圧の超音波のエコー信号の強度に基づいて前記検出を行なうことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信制御部は、第一の超音波として、前記音圧の超音波を前記超音波プローブから送信させ、第二の超音波として、前記第一の超音波とは異なる超音波を前記超音波プローブから送信させ、
前記検出部は、前記第二の超音波のエコー信号の強度に基づいて前記検出を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記超音波のエコー信号に対して造影剤が強調された造影画像を作成するための造影モードの処理を行なって得られたデータの値を、前記超音波のエコー信号の強度として用いて前記検出を行なう
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記情報は、前記検出部によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す曲線であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
被検体に対して超音波を送信する超音波プローブと、
プロセッサーと、
を備える超音波診断装置であって、
前記プロセッサーは、
前記超音波として、前記被検体における造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧の超音波を複数フレーム分送信させる送信制御機能と、
前記音圧の超音波によって前記造影剤が消失した深度を、前記超音波プローブから送信された超音波のエコー信号の強度に基づいて検出する検出機能と、
該検出機能によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報を表示させる表示制御機能と、
をプログラムによって実行する
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
被検体に対して超音波を送信する超音波プローブと、
プロセッサーと、
を備える超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記プロセッサーに、
前記超音波として、前記被検体における造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧の超音波を複数フレーム分送信させる送信制御機能と、
前記音圧の超音波によって前記造影剤が消失した深度を、前記超音波プローブから送信された超音波のエコー信号の強度に基づいて検出する検出機能と、
該検出機能によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報を表示させる表示制御機能と、
を実行させる
ことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に造影剤を注入して超音波検査を行なう超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査において被検体に注入される造影剤は,超音波診断において血流信号増強の目的に使用され,組織潅流レベルの微小血流を可視化できる。造影剤は、微小気泡(マイクロバブル)を含んで構成され、肝臓のクッパー(Kupffer)細胞に貪食されるという性質を持つ。被検体に造影剤が注入されて十分な時間が経過した後の時間帯(後血管相(post vascular phase)と呼ばれる時間帯)においては、肝臓から受信される造影剤のエコー信号強度は、クッパー細胞の数に比例すると言える。
【0003】
肝臓内のクーパー細胞の数は,肝機能に関係することが知られている。健常な肝臓では十分な数のクッパー細胞が、異物や不要物の貪食・分解の働きを行っている。しかし、肝炎などを原因とするびまん性肝疾患の進行により線維化が増加すると、クッパー細胞の数も減少してしまう。このようなことから、後血管相における造影剤の濃度と肝線維化の進行度は相関すると考えられる。従って、後血管相における造影剤のエコー信号強度から肝線維化進行度を定量化する試みがなされている。
【0004】
しかし、後血管相における造影剤のエコー信号強度から肝線維化進行度を定量化する試みにおいては、いくつかの課題も明らかになっている。例えばその一つとして、エコー信号には、組織からの非線形成分が混在してしまうため、造影剤のエコー信号強度を定量する際に過大評価してしまうことが挙げられる。特に、脂肪肝などでは、エコー信号における組織信号強度が高い(Bモード画像でも明るく映像化されてしまう)ため、造影モードでも組織信号の漏れは多い。このように,被検体の状態によって、組織信号の漏れの大きさが変わることは、正しい定量化の妨げとなる。
【0005】
このような課題を解決するために、新たな手法が考案されている。例えば、特許文献1では、高音圧で造影剤を消失させる前後の画像の差分を取ることで、定常的に存在する組織信号をキャンセルする手法が開示されている。
【0006】
また、非特許文献1においても、組織信号強度に影響されずに肝繊維化進行度を定量化するための手法として、造影剤を消失させる高音圧の超音波の送信回数を予め決めておき、高音圧送信によって消失した造影剤の深度を距離計測する手法が開示されている。もう少し詳しく説明すると、高音圧送信にて造影剤を消失させる際、肝臓に蓄積した造影剤の濃度が高い場合、超音波の減衰が著しく、深部まで超音波が伝搬しないので、深部の造影剤が壊れない。しかし、二回目以降の高音圧送信では、既に造影剤が消失した浅部では超音波の減衰は前回よりも小さくなるので、より深部の造影剤を消失させることができる。このように、送信のたびごとに造影剤の消失位置が徐々に深部に移行していく様子は、「カーテン現象」とも呼ばれることがある。例えば、高音圧送信の条件を固定しておけば、送信後に造影剤が消失した深度は、クッパー細胞に取り込まれた造影剤の数に反比例する。従って、非特許文献1に記載された手法によれば、超音波の送信によって造影剤が消失した深度によって、肝繊維化進行度を定量化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3023290号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】石橋啓如、丸山紀史、高橋正憲、奥川英博、今関文夫、横須賀收、神山直久,「慢性肝疾患の線維化診断におけるソナゾイド造影超音波の試み」,81st日本超音波医学会 Vol.35 S389(Suppl.),2008年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の手法も次のような課題を含む。すなわち、造影剤が消失する深度は、上述のように、造影剤の濃度に反比例する他、肝臓自体の超音波の減衰量にも反比例する。より詳細には、脂肪肝など減衰が大きくなっている肝臓では、肝臓内の脂肪滴の反射自体で、送信波のエネルギーが奪われ、結果的に造影剤が消失する深度が小さくなる。従って、造影剤が消失する深度が健常人より浅い場合でも、それが、クッパー細胞に造影剤が取り込まれてその濃度が高いことによるものなのか、減衰が大きいことによるものなのか、その切り分けが困難となる。従って、クッパー細胞の数に応じた肝機能の定量化をより精度よく行なうことができる超音波診断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、被検体に対して超音波を送信する超音波プローブと、前記超音波として、前記被検体における造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧の超音波を複数フレーム分送信させる送信制御部と、前記音圧の超音波によって前記造影剤が消失した深度を、前記超音波プローブから送信された超音波のエコー信号の強度に基づいて検出する検出部と、この検出部によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記観点の発明によれば、前記検出部によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報は造影剤の濃度と生体組織自体の超音波の減衰の程度に応じて異なるので、前記情報が表示されることにより、より精度よく肝機能の定量化を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2図1に示された超音波診断装置における表示処理部の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の作用を示すフローチャートである。
図4】造影剤が消失した深度の検出の説明図である。
図5】造影画像及び造影剤が消失した深度のフレーム毎の変化を示す曲線が表示された表示デバイスを示す図である。
図6】超音波の送信ごとに造影剤の深度が深くなることを説明する図である。
図7】肝硬変である肝臓、NASHである肝臓及び正常な肝臓の各々についての消失深度のフレーム毎の変化を示す曲線を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示処理部5、表示デバイス6、操作デバイス7、制御部8、記憶デバイス9を備える。前記超音波診断装置1は、コンピュータ(computer)としての構成を備えている。
【0014】
超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例である。
【0015】
送受信ビームフォーマ3は、超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、制御部8からの制御信号に基づいて超音波プローブ2に供給する。超音波プローブ2から送信される超音波として、後述するように、被検体における造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧SPの超音波が含まれる。造影剤は気泡(マイクロバブル)を含んで構成される。音圧SPの超音波は、複数フレーム分送信される。送受信ビームフォーマ3及び制御部8は、本発明における送信制御部の実施の形態の一例である。送受信ビームフォーマ3及び制御部8の機能は、本発明における送信制御機能の実施の形態の一例である。
【0016】
また、送受信ビームフォーマ3は、超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0017】
エコーデータ処理部4は、送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、エコーデータ処理部4は、送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、被検体に投与された造影剤が強調された造影画像を作成するための公知の処理(造影モードの処理)を行なって造影データを作成する。例えば、エコーデータ処理部4は、エコー信号の高調波成分を抽出するためのフィルタ処理を行なう。エコーデータ処理部4は、パルスインバージョン(Pulse Inversion)法によって造影剤からのエコー信号を抽出する処理を行なって造影データを作成してもよい。また、エコーデータ処理部4は、異なる振幅の超音波を送信して得られたエコー信号に基づくエコーデータを減算して造影剤からの信号成分を抽出する処理(振幅変調法:Amplitude Modulation)を行なって造影データを作成してもよい。
【0018】
エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成してもよい。
【0019】
表示処理部5は、図2に示すように、検出部51及び画像表示制御部52を有する。検出部51は、被検体に対する超音波の送信によって造影剤が消失した深度を、被検体に対して送信された超音波のエコー信号の強度に基づいて検出する。検出部51は、エコー信号(送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータ)に対して造影モードの処理を行なって得られた造影データ又は後述の造影画像データの値を、前記超音波のエコー信号の強度として用いて前記検出を行なう。詳細は後述する。検出部51は、本発明における検出部の実施の形態の一例である。また、検出部51の機能は、本発明における検出機能の実施の形態の一例である。
【0020】
画像表示制御部52は、前記エコーデータ処理部4から入力されたローデータ(raw data)を、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。例えば、画像表示制御部52は、前記エコーデータ処理部4から入力された造影データを走査変換して、造影画像データを作成する。
【0021】
ちなみに、超音波プローブで受信されたエコー信号に基づくデータであって、画像データに変換される前のデータをローデータと云うものとする。
【0022】
また、画像表示制御部52は、超音波画像データに基づいて表示デバイス6に超音波画像を表示させる。超音波画像は、例えば前記造影画像データに基づく造影画像である。
【0023】
また、画像表示制御部52は、検出部51によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す情報を表示デバイス6に表示させる。この情報は、検出部51によって検出された深度のフレーム毎の変化を示す曲線FDC(図5参照)である。画像表示制御部52は、本発明における表示制御部の実施の形態の一例である。また、画像表示制御部52の機能は、本発明における表示制御機能の実施の形態の一例である。
【0024】
前記表示デバイス6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。
【0025】
操作デバイス7は、操作者からの指示や情報の入力を受け付けるボタン及びキーボード(keyboard)などを含み、さらにトラックボール(trackball)等のポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。
【0026】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーである。制御部8は、記憶デバイス9に記憶されたプログラムを読み出し、超音波診断装置1の各部を制御する。例えば、制御部8は、記憶デバイス9に記憶されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムにより、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4及び表示処理部5の機能を実行させる。
【0027】
制御部8は、送受信ビームフォーマ3の機能のうちの全て、エコーデータ処理部4の機能のうちの全て及び表示処理部5の機能のうちの全ての機能をプログラムによって実行してもよいし、一部の機能のみをプログラムによって実行してもよい。制御部8が一部の機能のみを実行する場合、残りの機能は回路等のハードウェアによって実行されてもよい。
【0028】
なお、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4及び表示処理部5の機能は、回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0029】
記憶デバイス9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。
【0030】
超音波診断装置1は、記憶デバイス9として、HDD、RAM及びROMの全てを有していてもよい。また、記憶デバイス9は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体であってもよい。
【0031】
制御部8によって実行されるプログラムは、HDDやROMなどの非一過性の記憶媒体に記憶されている。また、前記プログラムは、CDやDVDなどの可搬性を有し非一過性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0032】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について図3のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、被検体の肝臓の超音波検査における作用を説明する。先ず、ステップS1では、被検体に投与された造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧SPの超音波が、超音波プローブ2から複数の音線について順次送信されて、一フレーム分の音圧SPの超音波が送信される。これにより、被検体における体表面から所要の深さまでの領域に存在する造影剤が破壊され消失する。
【0033】
次に、ステップS2では、検出部51が、造影剤が消失した深度Dを検出する。検出部51は、ステップS1において送信された音圧SPの超音波のエコー信号の強度に基づいて深度Dを検出する。
【0034】
ステップS2の処理についてより詳しく説明する。ステップS1において、音圧SPの超音波が送信され、そのエコー信号が受信されると、このエコー信号に基づいて、エコーデータ処理部4が造影データを作成する。そして、画像表示制御部52は造影データに基づいて造影画像データを作成する。
【0035】
検出部51は、造影画像データに基づいて深度Dを検出する。例えば、検出部51は、造影画像において、超音波の音線方向において隣り合う画素に対応するデータ値の差が所要の閾値以上である部分を、造影剤が消失した位置として特定する。そして、この位置と、超音波プローブ2における超音波の送受信面(被検体の体表面)との距離を、深度Dとする。
【0036】
図4は、深度Dの検出の説明図であり、被検体の断面において、説明の便宜上、画素p1、p2が示されている。画素p1と画素p2の各々に対応する造影画像データのデータ値が所要の閾値以上である場合、検出部51は、画素p1と画素p2の間の部分を、造影剤が消失した位置として特定する。この位置と、超音波プローブ2における超音波の送受信面TS(被検体の体表面BS)との距離を、深度Dとする。
【0037】
検出部51は、超音波の音線方向において隣り合う画素に対応するデータ値の差が最大である部分を、造影剤が消失した位置として特定してもよい。
【0038】
検出部51は、一フレーム分の複数の音線の各々において、造影剤が消失した深度Dを検出してもよい。この場合、検出部51は、全ての音線における深度Dの平均値を算出してもよい。
【0039】
次に、ステップS3では、画像表示制御部52は、図5に示すように、造影画像データに基づいて、表示デバイス6に造影画像CIを表示させる。また、画像表示制御部52は、横軸がフレーム番号(フレームの数)F(0≦F≦n)を示し、縦軸が深度Dを示すグラフGを表示デバイス6に表示させる。グラフGは、ステップS2で検出された深度Dのフレーム毎の変化(時間変化)を示す曲線FDCを有する。ただし、曲線FDCが形成されるのは、後述するように複数フレームの音圧SPの超音波が送信され、複数回の深度Dの検出が行われた後である。
【0040】
次に、ステップS4では、制御部8は、ステップS1における超音波の送信がn(n≧2)フレーム目であったか否かを判定する。nフレーム目ではないと判定された場合(ステップS4において「NO」)、ステップS1の処理へ戻る。このステップS1では、再び音圧SPの超音波が送信され、前回の送信で破壊されなかった造影剤が破壊される。この時、図6に示すように、前回の送信において造影剤が消失した深度D1よりも体表BSからの距離が大きい深度D2までの領域の造影剤が破壊される。そして、再びステップS2において深度の検出が行われた後、ステップS3において造影画像及び曲線FDCが更新される。以後、nフレーム目までステップS1〜S4の処理が繰り返される。一方、ステップS4においてnフレーム目であると判定された場合(ステップS4において「YES」)、処理を終了する。
【0041】
以上説明した本例によれば、表示デバイス6に曲線FDCが表示される。ここで、被検体における造影剤の濃度と肝臓自体の超音波の減衰の程度に応じて、曲線FDCの形状が異なる。従って、表示デバイス6に曲線FDCが表示されることにより、ユーザーはより精度よく肝機能の定量化を行なうことができる。これについて具体的に説明する。
【0042】
肝硬変である肝臓と、NASH(nonalcoholic steatohepatitis:非アルコール性脂肪性肝炎)である肝臓と、正常な肝臓とでは、造影剤の濃度と超音波の減衰の程度が異なっている。肝硬変である肝臓及びNASHである肝臓は、正常な肝臓と比べてクッパー細胞の数が少ないため、正常な肝臓よりも造影剤の濃度が低い。また、NASHである肝臓は、脂肪がより多く溜まった状態であるため、肝硬変である肝臓よりも、超音波の減衰の程度が大きい。従って、図7に示すように、肝硬変である肝臓における曲線FDC1の形状と、NASHである肝臓における曲線FDC2の形状と、正常な肝臓における曲線FDC3の形状は異なっている。具体的には、曲線FDC1は、曲線FDC3と比べて、いずれのフレームにおいてもより深部まで造影剤が破壊されていることを示している。これは、肝硬変である肝臓は正常な肝臓よりも造影剤の濃度が低いからである。
【0043】
また、NASHである肝臓は、肝硬変である肝臓と同様に、造影剤の濃度が低いため、曲線FDC2は、フレーム番号Fが小さい部分において、曲線FDC1と近似する。しかし、NASHである肝臓は、肝硬変である肝臓よりも超音波の減衰が大きいため、フレーム番号Fが大きくなるにつれて、曲線FDC2は、曲線FDC1よりも深度Dが小さい位置において平衡状態となる。一方で、曲線FDC2は、フレーム番号が大きい部分において曲線FDC3と重なる部分があるものの、フレーム番号が小さい部分において曲線FDC3とは異なる曲線になっている。
【0044】
以上のことから、曲線FDCの形状を比較することにより、肝硬変かNASHか正常かを判別することができる。従って、より精度よく肝機能の定量化を行なうことができる。
【0045】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、検出部51は、造影画像データの代わりに、造影データに基づいて上述と同様にして深度Dを検出してもよい。
【0046】
また、被検体に投与された造影剤を破壊して消失させることが可能な音圧SPの超音波が第一の超音波として送信され、この第一の超音波とは異なる第二の超音波とが送信されてもよい。この場合、第一の超音波が送信された後に、第二の超音波が送信され、この第二の超音波のエコー信号の強度に基づいて、検出部51が、上述のステップ2の処理と同様に深度Dの検出を行ってもよい。この場合、第一の超音波と第二の超音波の各々が、nフレーム分送信される。
【符号の説明】
【0047】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信ビームフォーマ
8 制御部
51 検出部
52 画像表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7