(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2を参照して本発明の一実施の形態におけるグロープラグ10について説明する。
図1はグロープラグ10の片側断面図であり、
図2は一部を拡大したグロープラグ10の断面図である。
図1及び
図2では、紙面下側をグロープラグ10の先端側、紙面上側をグロープラグ10の後端側という。
【0012】
図1に示すようにグロープラグ10は中軸20、主体金具30、チューブ40及び発熱体50を備えている。これらの部材はグロープラグ10の中心軸Oに沿って組み付けられている。グロープラグ10は、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関(図示せず)の始動時などに用いられる補助熱源である。
【0013】
中軸20は円柱形状の金属製の導体であり、発熱体50に電力を供給するための部材である。中軸20は先端に発熱体50が電気的に接続されている。中軸20は、後端が主体金具30から突出した状態で主体金具30に挿入されている。
【0014】
中軸20は、本実施の形態では、後端に雄ねじからなる接続部21が形成されている。中軸20は、後端に、先端側から順に絶縁ゴム製のOリング22、合成樹脂製の筒状部材である絶縁体23、金属製の筒状部材であるリング24、金属製のナット25が組み付けられている。接続部21は、バッテリ等の電源から電力を供給するケーブルのコネクタ(図示せず)が接続される部位である。ナット25は、接続されたコネクタ(図示せず)を固定するための部材である。
【0015】
主体金具30は炭素鋼等により形成される略円筒形状の部材である。主体金具30は、中心軸Oに沿って貫通する軸孔31と、ねじ部32と、ねじ部32より後端側に形成された工具係合部33とを備えている。軸孔31は中軸20が挿入される貫通孔である。軸孔31の内径は中軸20の外径より大きいので、中軸20と軸孔31との間に空隙が形成される。ねじ部32は、内燃機関(図示せず)に嵌まり合う雄ねじである。工具係合部33は、ねじ部32を内燃機関のねじ穴(図示せず)に嵌めたり外したりするときに用いる工具(図示せず)が関わり合う形状(例えば六角形)をなす部位である。
【0016】
主体金具30は、軸孔31の後端側において、Oリング22及び絶縁体23を介して中軸20を保持する。絶縁体23にリング24が接した状態で中軸20にリング24が加締められることで、絶縁体23は軸方向の位置が固定される。絶縁体23によって主体金具30の後端側とリング24とが絶縁される。主体金具30は、軸孔31の先端側にチューブ40が固定されている。
【0017】
チューブ40は先端41が閉じた金属製の筒状体である。チューブ40は軸孔31に圧入されることで、主体金具30に固定される。チューブ40の材料は、例えばニッケル基合金、ステンレス鋼などの耐熱合金が挙げられる。
【0018】
チューブ40は中軸20の先端側が挿入されている。チューブ40の内径は中軸20の外径より大きいので、中軸20とチューブ40との間に空隙が形成される。シール材42は、中軸20の先端側とチューブ40の後端との間に挟まれた円筒形状の絶縁部材である。シール材42は中軸20とチューブ40との間隔を維持し、中軸20とチューブ40との間を密閉する。
【0019】
図2に示すように、発熱体50(発熱コイル)は中心軸Oに沿ってチューブ40に収容されており、先端が溶接によりチューブ40の先端41に接合されている。発熱体50は、通電により発熱する螺旋状のコイルである。発熱体50の材料としては、Fe,Ni,Mo,W及びCo等の金属、並びにこれらの元素のいずれかを主成分とする合金が挙げられる。発熱体50は、後端が溶接によって制御コイル51に接合されている。発熱体50と制御コイル51との間に、溶接で溶融した後に凝固した溶融部52が形成されている。
【0020】
制御コイル51は溶融部52を介して発熱体50と直列に接続される部材である。制御コイル51は、発熱体50に供給する電力を制御して発熱体50の過昇温を防止する。制御コイル51は、比抵抗の温度係数が、発熱体50を形成する材料の比抵抗の温度係数より大きい導電材料で形成されている。制御コイル51の材料としては、例えば純Ni、Ni合金、Co合金などが挙げられる。制御コイル51は中心軸Oに沿ってチューブ40に収容されており、後端が溶接により中軸20の先端に接合されている。中軸20は制御コイル51及び発熱体50を介してチューブ40と電気的に接続される。
【0021】
絶縁粉末60は電気絶縁性を有し、且つ、高温下で熱伝導性を有する粉末であり、発熱体50とチューブ40との間、制御コイル51とチューブ40との間、中軸20とチューブ40との間、制御コイル51及び発熱体50の内側に充填される。絶縁粉末60は、発熱体50からチューブ40へ熱を移動させる機能、発熱体50及び制御コイル51とチューブ40との短絡を防ぐ機能、発熱体50及び制御コイル51を振動し難くして断線を防ぐ機能がある。
【0022】
絶縁粉末60としては、例えばMgO、Al
2O
3等の酸化物粉末が挙げられる。絶縁粉末60は、これらの酸化物粉末のうちの少なくとも一種を含有するのが好ましく、これらの酸化物粉末のうち所望の熱伝導率を維持することができる点でMgO粉末を含有するのがより好ましい。絶縁粉末60は、MgO粉末を絶縁粉末60の全質量に対して85質量%以上100質量%以下含有するのが好ましく、99質量%以上100質量%未満含有するのがより好ましく、残部としてAl
2O
3粉末または他の物質が含有されてもよい。他の物質としては、CaO、ZrO
2及びSiO
2等の各粉末が挙げられる。
【0023】
絶縁粉末60(第1粒子群61)に含まれる成分およびその含有率は、次のようにして求めることができる。まず、第1粒子群61を粉末X線回折法等によって定性分析を行うことにより、第1粒子群61に含まれる成分を把握する。次いで、ICP発光分光法により、第1粒子群61に含まれる元素を定量分析する。第1粒子群61に含まれる成分が、定性分析により酸化物であることが分かっている場合には、定量分析によって得られた元素の含有率を酸化物換算して、酸化物の含有率として求めることができる。なお、定性分析により第1粒子群61の主成分がMgOであることが分かっている場合には、MgO以外の成分についてICP発光分光法により分析を行い、MgOの含有率はその残分として求めることができる。
【0024】
絶縁粉末60は第1粒子群61と第2粒子群62とからなる。第1粒子群61は、発熱体50と対向する位置に配置された複数の粒子であって、具体的には、発熱体50とチューブ40との間、及び、発熱体50の内側に充填された複数の粒子である(
図2の破線Dより下)。第2粒子群62は、制御コイル51とチューブ40との間、中軸20とチューブ40との間、及び、制御コイル51の内側に充填された複数の粒子である(
図2の破線Dより上)。
【0025】
第1粒子群61(粒子群)は、発熱体50からチューブ40へ熱を伝えるための複数の粒子である。第1粒子群61は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布が規定されている。
図3を参照して第1粒子群61の粒度分布について説明する。
図3は、レーザ回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA−750、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した絶縁粉末60(第1粒子群61)の体積基準の粒度分布の一例である。
図3は粒径(μm)を横軸とし、頻度(%)を縦軸としてプロットされている。
【0026】
図3に示すように第1粒子群61は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒径12μm以上の範囲71に頻度6%以上の少なくとも1つの極大値72を有し、粒径4〜8μmの頻度が全て2.5〜6%の範囲73内にある。これにより第1粒子群61の充填密度を高め、空隙率を低下させることができる。チューブ40の先端側(発熱体50と対向する部分)の熱伝導率を高めることができるので、熱伝導および熱伝達により発熱体50からチューブ40へ熱を伝わり易くできる。チューブ40の先端側の発熱量を増加できるので、急速昇温性を確保しつつ発熱温度の高温化を図ることができる。発熱体50に大電流を流すことなくチューブ40の表面温度をより高い温度まで急速昇温できるので、特に、始動性の向上が求められる内燃機関に好適である。
【0027】
ここで、粒径12μm以上の範囲71に頻度6%以上の極大値が存在しない場合には、粒径12μm未満の粒子の割合(全体を100%とする相対粒子量)が多いので、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数が多くなる。粒子同士が接触する粒子間の境界面は熱伝導の障壁になるので、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数が多くなることにより、粒子の数が少ない(障壁が少ない)場合に比べ、熱伝導によって熱が伝わり難くなる傾向がみられる。第1粒子群61の粒度分布を規定することにより、これを防止して熱を伝わり易くできる。
【0028】
極大値72は、
図3に示すようなシャープなピークである必要はなく、ブロードなピークであっても良い。極大値72は範囲71内に少なくとも1つあれば良いので、範囲71内に複数のブロードなピークが存在しても構わない。いずれの場合も粒径12μm以上の粒子の割合を確保できるからである。
【0029】
範囲71は、粒径の上限を40μm(即ち粒径12〜40μm)とすることが好ましい。粒径40μmを超える範囲に頻度6%以上の極大値が存在する場合には、粒径の大きな粒子の割合が多いので、充填された粒子間の隙間が増えて第1粒子群61の充填密度が低下する可能性がある。第1粒子群61の充填密度が低下すると発熱体50が振動し易くなるので、発熱体50が断線し易くなるおそれがある。粒径12〜40μmの範囲に頻度6%以上の極大値を存在させることにより、熱を伝わり易くしつつ発熱体50の断線を防止できる。
【0030】
範囲71は、頻度の上限を9%(即ち頻度6〜9%)とすることが好ましい。粒径12μm以上の範囲に頻度9%を超える極大値が存在する場合も、粒径の大きな粒子の割合が多いので、充填された粒子間の隙間が増えて第1粒子群61の充填密度が低下する可能性がある。この場合も発熱体50が振動し易くなって、発熱体50が断線し易くなるおそれがある。粒径12μm以上の範囲に頻度6〜9%の極大値を存在させることにより、熱を伝わり易くしつつ発熱体50の断線を防止できる。
【0031】
粒径12μm以上の範囲71に頻度6%以上の少なくとも1つの極大値72を有するとしても、粒径4〜8μmの頻度の少なくとも一部が2.5%未満である場合には、粒径4〜8μm未満の粒径の小さい粒子の割合が増加する、若しくは、粒径12μm以上の粒径の大きい粒子の割合が増加することになる。前者の場合には、粒径12μm以上の粒子が充填されて生じた粒子間の隙間を埋める粒子の粒径が小さくなるので、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数が多くなり、熱伝導によって熱が伝わり難くなる。後者の場合には、粒径が大きな粒子の割合が多くなるので、充填された粒子間の隙間が増えて第1粒子群61の充填密度が低下する可能性がある。第1粒子群61の充填密度が低下すると発熱体50が振動し易くなるので、発熱体50が断線し易くなるおそれがある。
【0032】
粒径12μm以上の範囲71に頻度6%以上の少なくとも1つの極大値72を有するとしても、粒径4〜8μmの頻度の少なくとも一部が6%を超える場合には、粒径4〜8μm未満の粒径の小さな粒子の割合が減少する、若しくは、粒径12μm以上の粒径の大きい粒子の割合が減少することになる。前者の場合には、粒径12μm以上の粒子が充填されて生じた粒子間の隙間が埋められ難くなるので、第1粒子群61の充填密度が低下する可能性がある。第1粒子群61の充填密度が低下すると発熱体50が振動し易くなるので、発熱体50が断線し易くなるおそれがある。後者の場合には、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数が多くなり、熱伝導によって熱が伝わり難くなる。
【0033】
よって、粒径4〜8μmの頻度を2.5〜6%とすることにより、熱を伝わり易くしつつ発熱体50の断線を防止できる。
【0034】
第1粒子群61は、さらに、粒径34μm以上の頻度の積算74が4〜26%である。粒径の大きな粒子の割合をこのような所定の量とすることで、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数が過剰に増加したり減少したりすることを防止できる。よって、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数を減らすことによって熱の障壁の数を減らし、発熱体50からチューブ40へ熱が伝わり難くなることを防止できる。また、第1粒子群61の空隙率(隙間割合)を低下させることができるので、発熱体50の断線を防止できる。
【0035】
第1粒子群61は、粒径1.0μm以下の頻度の積算75が0.1〜5%である。粒径1.0μm以下の粒子の割合をこのような所定の量とすることで、第1粒子群61の空隙率を低下させることができ、発熱体50の断線を防止できる。また、発熱体50とチューブ40との間に存在する粒子の数を減らすことによって熱の障壁を減らし、発熱体50からチューブ40へ熱が伝わり難くなることを防止できる。
【0036】
第1粒子群61のD50(50%粒子径またはメジアン径)は、10〜20μmであることが好ましい。第1粒子群61のD50が10〜20μmであれば、第1粒子群61の極大値72、範囲73及び積算74,75が特定した所定値となる場合に、発熱体50からチューブ40へ熱をより伝わり易くできるからである。なお、第1粒子群61の粒径8μmから極大値までの頻度は2.5%以上であることが好ましい。発熱体50からチューブ40へ熱がより伝わり易くなるからである。
【0037】
第2粒子群62は、第1粒子群61の粒度分布と同じ粒度分布である粒子群を用いることができる。第2粒子群62は、第1粒子群61の粒度分布とは異なる粒度分布である粒子群を用いて良い。第2粒子群62は制御コイル51の周囲に充填される粒子群なので、チューブ50へ熱を移動させる機能の要求が低いからである。
【0038】
第1粒子群61の粒度分布はレーザ回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA−750)を用いて、以下のように測定できる。まず、グロープラグ10から絶縁粉末60(第1粒子群61)を取り出し、測定用試料を準備する。具体的には、まず、中心軸Oに直交し、且つ、溶融部52付近を含む面でチューブ40を切断する。チューブ40を切断後、先端41側のチューブ40の内側にある発熱体50をチューブ40から引き抜き、発熱体50に衝撃を加え、発熱体50(発熱コイル)の内側に詰まった粒子(第1粒子群61)を取り出す。同様に、チューブ40に衝撃を加え、チューブ40内の粒子(第1粒子群61)を取り出す。
【0039】
取り出した粒子(第1粒子群61)は凝集して塊状になっているので、すり鉢ですって塊を砕く。粒子は硬いので、すり鉢と手に持ったすり棒とを用いて第1粒子群61をすっても粒子(一次粒子)は粉砕されず、測定結果に影響を与えないことが確認されている。すり鉢ですった後の粒子(第1粒子群61)を拡大鏡で観察しながら不純物を取り除く。このようにして、1回の測定につき、第1粒子群61の試料を0.35g以上準備する。
【0040】
次いで、準備した第1粒子群61の試料(例えばスパチュラ2〜4杯分)を分散媒(例えばヘキサメタりん酸ナトリウム0.2質量%溶液150cc)に分散する。試料の分散方法としては、例えば、外部ホモジナイザーで3分撹拌した後に、レーザ回折式粒度分布測定装置に内蔵されている超音波プローブで2分撹拌する方法を挙げることができる。レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、分散媒に分散させた試料の粒度分布を測定し、粒径0.1〜100μmの頻度分布、粒径34μm以上の積算分布(フルイ上)、粒径1μm以下の積算分布(フルイ下)を求める。粒度分布の測定は3回行い、求める値は、3回の測定の平均値である。
【0041】
第1粒子群61は、粒子が一次粒子として存在する場合や、二次粒子として存在する場合がある。第1粒子群61は、一次粒子および二次粒子のいずれの形態で存在してもよいが、一次粒子で存在するのが好ましい。第1粒子群61に含まれる粒子が二次粒子として存在する場合、二次粒子中に多数の空隙が存在するので、この空隙が断熱層(障壁)となって第1粒子群61の熱移動性が低下するおそれがある。MgOは、通常、二次粒子を形成せず一次粒子として存在する。従って、この点においても第1粒子群61を構成する粒子はMgO粉末であるのが好ましい。
【0042】
グロープラグ10は、例えば、次のようにして製造される。まず、所定の組成を有する抵抗発熱線をコイル状に加工し、発熱体(発熱コイル)50及び制御コイル51をそれぞれ製造する。次いで、発熱体50と制御コイル51との端部同士をアーク溶接等により接合し、コイル部材とする。次いで、コイル部材のうち制御コイル51を中軸20の先端に接合する。
【0043】
一方、所定の組成を有する金属鋼管をチューブ40の最終寸法よりも大径に形成し、かつ、その先端を他の部分よりも減径させて、先端が開口した先窄まり状のチューブ前駆体を製造する。チューブ前駆体の内部に中軸20と一体となったコイル部材を挿入し、チューブ前駆体の先窄まり状の開口部に発熱体50の先端を配置する。チューブ前駆体の開口部と発熱体50の先端部分とをアーク溶接等によって溶融し、チューブ前駆体の先端部分を閉塞し、内部にコイル部材が収容されたヒータ前駆体を形成する。
【0044】
次いで、ヒータ前駆体のチューブ40内に絶縁粉末60を充填した後、チューブ40の後端の開口部と中軸20との間にシール材42を挿入して、チューブ40を封止する。次に、チューブ40が所定の外径になるまでチューブ40にスウェージング加工を施す。チューブ40内に充填された絶縁粉末60は、スウェージング加工を経ることにより破砕されて粒度が変化する。従って、スウェージング加工を施す際のチューブ40の外径の減少率等を考慮して、発熱体50の周囲に配置される第1粒子群61がスウェージング加工後(スウェージングによる粒子の破砕後)に所定の粒度分布になるように、チューブ40に絶縁粉末60を充填する。
【0045】
次に、スウェージング加工後のチューブ40を主体金具30の軸孔31に圧入固定し、中軸20の後端から主体金具30と中軸20との間にOリング22及び絶縁体23を嵌め込む。リング24で中軸20を加締めてグロープラグ10を得る。
【実施例】
【0046】
<グロープラグの製造および第1粒子群の分析>
図1に示すグロープラグ10と同様の構造を有するグロープラグを前述のとおりに製造し、実験例1〜16におけるグロープラグを得た。実験例1〜16におけるグロープラグはMgO粉末を絶縁粉末60とした。各実験例の(充填後の)第1粒子61の粒度は、チューブ40内に充填する(充填前の)絶縁粉末60の粒度分布の調製、及び、グロープラグ10の製造工程におけるスウェージング加工前後のチューブ40の外径の減少率の調整によって調製した。
【0047】
レーザ回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA−750)を用いて、各実験例のチューブ40内に充填されている第1粒子群61の体積基準の粒度分布を前述のとおりに測定し、極大値、粒径4〜8μmの頻度、粒径1.0μm以下の頻度の積算、粒径34μm以上の頻度の積算を求めた。なお、第1粒子群61の試料を分析するときの分散媒としては、ヘキサメタりん酸ナトリウム0.2質量%溶液150ccを用いた。試料の分散は、外部ホモジナイザーで3分撹拌した後に、レーザ回折式粒度分布測定装置に内蔵されている超音波プローブで2分撹拌することによって行った。試料の粒度分布の測定は3回行い、得られた3回の測定値の平均値を求めた。
【0048】
なお、実験例1〜16におけるグロープラグについて、第1粒子群61に含まれる成分およびその含有率を、粉末X線回折法およびICP発光分光法により、前述のとおりに測定した。いずれも主成分としてMgOを99.4質量%含有し、CaO,ZrO
2,SiO
2を合計で0.6質量%含有していた。また、第1粒子群61を走査型顕微鏡で観察したところ(1000倍)、一次粒子として粒子が存在していることが観察された。
【0049】
<通電試験>
第1粒子群61の熱移動性(熱の伝わり易さ)は、発熱体50の温度(以下「T1」と称す)とチューブ40の表面温度(以下「T2」と称す)との差(T1−T2)に基づいて評価した。具体的には、通電してから2秒後にT2が1000℃になるように中軸20と主体金具30との間に電圧を印加し、通電してから2秒後のT1とT2との温度差が100℃以下を「◎:優れている」、T1とT2との温度差が100℃より大きく120℃以下を「○:良い」、T1とT2との温度差が120℃より大きいときを「×:劣っている」とした。
【0050】
発熱体50の温度(T1)は、発熱体50に対応する位置に配置した熱電対によって測定した。熱電対は、各実験例におけるグロープラグを製造するとき(チューブ40に発熱体50を挿入する前)に発熱体50の内部に配置した。熱電対の配置位置は、発熱体50の中心軸O上であって先端41から中心軸O方向に2.0mm離れた位置である。
チューブ40の表面温度(T2)は、チューブ40に取り付けた熱電対によって測定した。熱電対は、各実験例におけるグロープラグを製造した後にチューブ40に取り付けた。熱電対の取付け位置は、チューブ40の先端41から中心軸O方向に2.0mm離れた位置である。
【0051】
実験例1〜16におけるグロープラグの第1粒子群61の分析および通電試験の結果を表1に示す。表1には、第1粒子群61の分析結果として、「極大値の粒径、頻度および判定結果」、「粒径4μmの頻度、粒径8μmの頻度および粒径4〜8μmの頻度の判定結果」、「粒径1.0μm以下の頻度の積算の判定結果」、「粒径34μm以上の頻度の積算の判定結果」が記されている。
【0052】
【表1】
【0053】
表1において、極大値の判定結果は、粒径12μm以上、且つ、頻度6%以上の極大値が存在する場合はOK、粒径12μm未満、又は、頻度6%未満の極大値が存在する場合はNGが記されている。粒径4〜8μmの頻度の判定結果は、粒径4〜8μmの頻度が2.5〜6%の範囲にある場合はOK、頻度がその範囲から外れる場合はNGが記されている。粒径1.0μm以下の頻度の積算の判定結果は、積算値が0.1〜5%の範囲に存在する場合はOK、積算値がその範囲から外れる場合は積算値がどちら側にあるか(<0.1%、又は、>5%)が記されている。粒径34μm以上の頻度の積算の判定結果は、積算値が4〜26%の範囲に存在する場合にはOK、積算値がその範囲から外れる場合は積算値がどちら側にあるか(<4%、又は、>26%)が記されている。
【0054】
表1に示すように第1粒子群61の粒度分布において、粒径12μm以上の範囲に頻度6%以上の極大値が存在し、且つ、粒径4〜8μmの頻度が2.5〜6%である実験例1〜8は、通電試験の結果が「◎:優れている」又は「○:良い」であった(温度差(T1−T2)は120℃以下)。特に実験例1〜8のうち、粒径1.0μm以下の頻度の積算が0.1〜5%であり、且つ、粒径34μm以上の頻度の積算が4〜26%である実験例1〜4は、通電試験の結果が「◎:優れている」であった(温度差(T1−T2)は100℃以下)。
【0055】
一方、粒径12μm以上、且つ、頻度6%以上の極大値が存在しない(粒径12μm未満、又は、頻度6%未満の極大値が存在する)実験例9,10及び粒径4〜8μmの頻度が2.5〜6%の範囲から外れている実験例11〜16は、通電試験の結果が「×:劣っている」であった(温度差(T1−T2)は120℃より大きい)。
【0056】
この実施例によれば、第1粒子群61の体積基準の粒度分布において、粒径12μm以上の範囲に頻度6%以上の極大値が存在し、且つ、粒径4〜8μmの頻度が2.5〜6%であると、第1粒子群61の熱移動性が良好になることから、発熱体50に大電流を流すことなく、チューブ40の表面温度をより高い温度まで急速に昇温できることが分かる。
【0057】
第1粒子群61の体積基準の粒度分布において、粒径12μm以上の範囲に頻度6%以上の極大値が存在し、且つ、粒径4〜8μmの頻度が2.5〜6%であり、さらに、粒径1.0μm以下の頻度の積算が0.1〜5%であり、且つ、粒径34μm以上の頻度の積算が4〜26%であると、第1粒子群61の熱移動性がより一層良好になることから、発熱体50に大電流を流すことなく、チューブ40の表面温度をより一層高い温度まで急速に昇温できることが分かる。
【0058】
以上、実施の形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、チューブ40の形状は筒状である限り特に限定されず、中心軸Oに直交する断面が円形状、楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0059】
上記実施の形態では、螺旋状のコイルで発熱体50が作られる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。発熱体50は、通電により発熱する抵抗体であれば形状は特に限定されない。
【0060】
上記実施の形態では、発熱体50の過昇温を防止する制御コイル51が発熱体50と中軸20との間に介在するものを説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、制御コイル51を省略して、中軸20に発熱体50を直接に接合することは当然可能である。また、制御コイル51に代えて、発熱体50と中軸20との間に後端コイルを直列に接続することは当然可能である。後端コイルの材料として、Fe−Cr−AlやNi−Cr等を用いることができる。この場合も発熱体50と対向する位置に第1粒子群61が配置される。