(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンピュータは、流速、温度、粘度、密度、圧力の少なくとも1つを含む、前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れ、における複数の特性を、変化または調整する、請求項1に記載の装置。
前記装置の前記第1の注入チャネル及び前記複数の緩衝入力チャネルに流入する前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れの流速をそれぞれ制御すべく、複数の注入槽にそれぞれ接続された複数のポンプによって、前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れの前記流速が、各流速が異なるように制御される、請求項7に記載の装置。
前記検査器を用いて前記複数の細胞を前記査定することによる前記スペクトルデータの前記分析に応じて、前記選択された複数の細胞が傷つけられるかまたは殺される、請求項4に記載の装置。
前記選択された複数の細胞が、精液からの多接合精子または正常精子のいずれかであるか、または、前記選択されなかった複数の細胞が、精液からの多接合精子または正常精子のいずれかである、請求項4に記載の装置。
前記コンピュータは、流速、温度、粘度、密度、圧力の少なくとも1つを含む、前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れ、における複数の特性を、変化または調整する、請求項21に記載の方法。
前記装置の前記第1の注入チャネル及び前記複数の緩衝入力チャネルに流入する前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れの流速をそれぞれ制御すべく、複数の注入槽にそれぞれ接続された複数のポンプによって、前記流体混合物及び前記緩衝液の複数の流れの流速が、各流速が異なるように制御される、請求項27に記載の方法。
前記検査器を用いて前記複数の細胞を前記査定することによる前記スペクトルデータの前記分析に応じて、前記選択された複数の細胞が傷つけられるかまたは殺される、請求項24に記載の方法。
前記選択された複数の細胞が、精液からの多接合精子または正常精子のいずれかであるか、または、前記選択されなかった複数の細胞が、精液からの多接合精子または正常精子のいずれかである、請求項24に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明は、多くの種々の形で実施形態をとることができる。それらの特定の実施形態は、本開示が本発明の原理の例示とみなされ、本発明を特定の例示される実施形態に限定されることを意図しないことを理解した上で、図に示され、且つ本明細書中に詳細に記載される。
【0058】
上述のように、本発明の様々な実施形態は、混合物中の成分を分離すること、例えば全血の様々な血液成分を対応する分画(例えば、血小板分画、赤血球分画、白血球分画及び血漿分画)に分離することを提供する。下記のような様々な実施形態は、複数の実質的な層流を有し、1つ又は複数の成分を1つの流れから別の流れへと差別沈降させる、1つ又は複数の選別チャネルを利用し、これによって、成分を対応する流れに分離する。また、様々な成分は、ホログラフィック光トラッピング等の光学機構を用いてさらに選別されてもよい。本発明の様々な実施形態はそれゆえ、従来技術の方法、特に血液成分の分画法における潜在的な損傷及び混入も無く、連続的な閉鎖系内等で連続的な成分の分離を提供する。本発明の連続的な工程はまた、血液分画にかかる時間を大幅に削減する。
【0059】
全血の選別用途及び分画用途に加えて、本発明はまた、他の細胞の選別用途(例えば骨髄抽出液中の正常細胞又は健康細胞からの癌細胞の分離等)にも好適である。本発明の様々な実施形態はさらに、他の生物分野又は医療分野(例えば、細胞、精子、ウイルス、細菌、細胞小器官又は小部分、球状構造、コロイド懸濁液、脂質及び脂肪球、ゲル、不混和粒子、割球、細胞の凝集体、微生物及び他の生体物質の分離)に応用可能である。例えば、本発明に従う成分の分離は、混入物(例えば、細菌)を細胞懸濁液から除去する細胞の「洗浄」を含んでもよく、この「洗浄」は特に、医療用途及び食品産業用途に有用であり得る。注目に値すべきは、従来技術における流れに基づく技法は、変動可能な沈降速度及び光学操作を用いた非運動性細胞成分の選別又は分離へのどのような応用可能性も実現していないことである。
【0060】
以下の説明は、種々の血液分画を作製するための血液成分の選別に重点を置くが、本発明の装置、方法及びシステムは、流体の流れ中に沈降若しくはクリーミングし得るか、又は異なる流体の流れ間で光学的に操作され得る、他のタイプの粒状物質、生体物質又は細胞物質にまで及んでもよい。例えば、本発明の手法を利用して、非運動性細胞を第1の流れから第2の流れに沈降させ、一方で同時に、運動性細胞を第1の流れ中に留めることによって、又は運動性細胞を第3の流れに移動させることによって、運動能力のない、又は生存不可能な精子細胞を生存可能な細胞から分離し得る。他の種類の細胞分離、例えば、流れの分離(flow separation:境界層剥離)又は光ピンセットの使用(トラッピング)のどちらか又は両方による、他のタイプの膵臓細胞からの島細胞の分離、さもなければ種々の大きさの島細胞クラスタの分離を同様に実施してもよい。種々な沈降速度を有するウイルス、タンパク質及び他の巨大分子もまた、本発明によって分離され得る。様々な分離段階で利用されるホログラフィック光トラッピングは特に、これらの他のタイプの細胞又は粒子の分離にも有用であり得る。
【0061】
本発明は、他の医療用途も有する。例えば、下記の様々な層流を腎臓透析プロセスの一環として利用してもよく、このプロセスにおいて、全血は、廃棄物を取り除いて、患者に戻される。結果として、例えば相対密度に基づく粒子の分離に加えて、本発明を拡散性、運動性及び他のタイプの勾配に基づく分離に利用してもよい。
【0062】
例えば、本発明を利用して、1つの溶液から化学種を別の溶液に移動してもよい。ここで、濾過又は遠心分離による分離は実用的でもなく、望ましくもない。上記の用途に加えて、さらなる用途は、(研究用途又は商用用途のために)所定の大きさのコロイドを他の大きさのコロイドから単離すること、及び、細胞及び卵細胞等の粒子を洗浄すること(事実上、粒子を包含する媒体を取り替え、且つ混入物を除去すること)、又は、塩及び界面活性剤の溶液からナノチューブ等の粒子を、例えば異なる塩濃度で又は界面活性剤無しに洗浄することを含む。
【0063】
化学種を分離する動作は、対象物の数ある物理特性(自己運動性、自己分散性、自由落下速度、又は電磁場若しくはホログラフィック光トラップ等の外力下での動作を含む)に依存してもよい。選別され得る特性としては、細胞運動性、細胞生存度、対象物の大きさ、対象物の質量、対象物の密度、流れの中で粒子が互いに又は他の対象物と引き寄せ合うか反発する傾向、対象物の電荷、対象物の表面化学特性、及び特定の分子が対象物に付着する傾向を含む。
【0064】
本発明は、装置100、200及び300に関して詳細に説明されているが、この説明は、
図13〜
図24並びに
図26及び
図27に例示される様々な他の実施形態にも等しく当てはまることを理解すべきである。
【0065】
図1は、本発明による装置100の側面図の図示である。
図1に示されるように、選別装置100は、選別チャネル110、複数の注入口120及び複数の排出口130を備える。対応する流体の流れ、例えば、例示される流れW、X、Y及びZは、示されるように、注入口120の1つから入ってほぼ非乱流状に、そうでなければ層流として流れ、選別チャネル(すなわち、選別領域)110を横切って、対応する排出口130を通って出る。
【0066】
装置100(及び下記の200)は、広範な材料、例えば金属、セラミック、ガラス及びプラスチックを用いて、複数の材料から一体的に又は個別の構成部品として構成されてもよい。様々な材料及び様々な製造方法は、第3の関連出願及び第4の関連出願において説明され、例えば、紫外線放射の下で硬化する様々なポリマーの使用を含む。他の詳述もまた、第3の関連出願及び第4の関連出願、例えば、種々のタイプのポンプの使用及び選択(シリンジポンプ輸送、蠕動ポンプ輸送、重力駆動ポンプ輸送、及びポンプ動作の様々な組み合わせ等)において与えられる。
【0067】
選択された実施形態では、ホログラフィックトラッピング又は光ピンセットの他の形態と連結される場合、装置100(又は200)は、ホログラフィー発生器の選択される波長に対して透過性であり、例えば、ホログラフィー発生器が可視波長を利用する場合、光透過性である。選択される用途に応じて、装置100(200)はまた、無菌でなければならず、制御温度を有していてもよい。様々な流体の流れは、当業者にとって既知の広範な手段によって注入口120に送り込まれてもよく、これは本発明の範囲内である。当業者にとって既知の広範な手段は、例えば蠕動ポンプ又は重力供給の使用を含む。また、このような手段を利用して、様々な流れW、X、Y及びZの流速を制御してもよい。蠕動ポンプを利用する場合、一定の流速及び圧力を維持するべく、泡トラップを装置100(又は200)の注入口120に組み込んでもよい。
【0068】
流れの分離に利用される様々な流体は、希釈又は濃縮されてもよく、その結果、1つの溶液の体積を増加又は減少させるか、何らかの溶解物又は懸濁物の濃度に影響を与えるか、又は溶液の物理特性(例えば、その粘度、温度又は密度)に影響を与える。装置100の例としては、血液選別に使用される場合、(a)血液の希釈、それによる、凝血又は血液細胞間の流体力学的相互作用の低下、(b)血液又は血液分画の体積の増大、(c)血液、血液分画、又は流れ特性若しくは分離挙動に影響を与える別の溶液の密度の変更、(d)溶液の体積の増大、それによる、特に流体の体積がシステムから取り除かれる際の、流体体積の増大の維持を含む。より詳しく下記に説明されるように、様々な化学的誘引物質及び忌避物質を流体に加えてもよい。これらの物質もまた種々の温度及び粘度レベルで存在し、精子選別を改良し得る。
【0069】
流れの分離に利用される様々な流体はまた、いくつかのプロセスが、溶液中で、何らかの外部影響によって又は外部溶液と混合することによって活性化されるように、「活性化」されていてもよい。外部影響の例としては、(a)電界を加えること、(b)磁場を加えること、(c)露光すること、(d)温度を変更すること、(e)化学物質を導入すること、(f)生体物質を導入すること、(g)溶液をせん断すること、及び(h)溶液を振ることが挙げられる。外部溶液によって生じる活性化の例としては、(a)粒子、分子、又は細胞の整列、(b)1つ又は複数の溶液成分の分極、(c)架橋、(d)化学反応の開始又は終了、(e)生物学的応答の開始又は終了、(f)化学、物理、生物学的応答のタイプ又は速度の変化、又は(g)応答、又は応答する特定の成分の特徴に依存する分離の発生が挙げられる。装置100の例としては、血液選別に使用される場合、(a)凝血を減少する薬剤の添加、(b)血液溶液又はその成分の生存度又は健康を保護する薬剤の添加、(c)1つ又は複数の化学種に付着し得るビーズ若しくは他の粒子、又はポリマーの添加、及び、物質の静電相互作用又は物質の流体力学的大きさ若しくは特徴に影響を与え得る塩又は他の物質の導入を含む、例えば、ほぼ特定の成分を結合又は回収して、その1つ又は複数の物理特性に影響を与えることによって選別プロセスを増強し得る薬剤の添加、(d)例えば、密度、粘度、表面張力又は他のパラメータを変化することによって、流れ特性に影響を与え得る薬剤の添加、(e)特定の物質の凝集を高めるか又は抑制する薬剤の添加、及び(f)特定の物質の、他の物質又は流動機器の一部への付着を高めるか又は抑制する薬剤の添加が挙げられる。
【0070】
本発明によると、例示される流れWのような流体の流れのうちの1つは、複数の成分A、B、C及びEを含有する。例えば、流体が全血である場合、これらの成分は全て血漿中に存在する、赤血球(「RBC」)、白血球(「WBC」)、血小板、細胞残屑及び混入物であってもよい。一般的に、複数の成分の多くは、種々の沈降速度を有し、通常スベドベリ係数を用いて計測される。例えば、RBCは、血小板よりも相対的に大きな沈降速度を有し、重力又は浮力等により、遠心分離等の他の活性機構を介入させずに、受動的により速く沈降することが期待される。様々な流れW、X、Y及びZが選別領域110を流れると、種々の沈降速度に応じて、複数の成分(例えば、細胞又は他の粒子)は、沈降して、1つの流れから別の流れに移動する。例示のように、相対的に最も高い沈降速度を有する成分Aは、流れWから一番下の流れZに移動したように示され、相対的に次に高い沈降速度を有する成分Bは、流れWから(Zの上の)流れYに移動したように示され、相対的に低い沈降速度を有する成分Cは、流れWから(Yの上の)流れXに移動したように示され、一方、相対的に最も低い沈降速度を有する成分Eは、(Yの上の)流れWに留まったように示される。これらの種々の沈降特性を用いて、これらの成分のそれぞれは、対応する流れ中に分離され、対応する排出口130を通って出るとき互いに単離される。流れW、X、Y及びZのそれぞれは、その対応する排出口130を通って出る際、他の流れから差別除去される、すなわち、流れは、他の流れが何の影響も与えられていない状態で、除去されるか、さもなければ、残りの流れから単独で除去される。また、この差別除去は、同時に起きてもよい、すなわち、全ての流れは同時に又は連続的に除去されてもよい。
【0071】
図1を参照しつつ、全血(例えば流体の流れW)を抗凝固剤(クエン酸ナトリウム又はヘパリン等)と共に用いて、様々な血液分画は、互いに分離されてもよい。赤血球は最も早く沈降し、成分Aで表わされ(例えば、4.59μm/s)、白血球はわずかに遅い速度で沈降し、成分Bで表わされ(例えば、2.28μm/s)、血小板は相対的にゆっくりとした速度で沈降し、成分Cで表わされ(例えば、0.055μm/s)、血漿は引き続き流れWを構成し、成分Eで表わされる。各血液分画はそれから、対応する排出口130を通って除去され得る。
【0072】
図1に別個に示されてはいないが、浮力及び相対密度に起因して、より高い流れへと浮上するであろう(例えば、クリーミング)、1つ又は複数の流体の流れ中の粒子又は成分が存在する。例えば、より小さい密度の粒子が流れXに入ると、流れWへと上がって、対応する排出口130を通って流れWと共に出る可能性がある。
【0073】
側面図に示されている、装置11の選別チャネル(すなわち、選別領域)110は、流れ方向と平行な変化長「L」、流れ方向と垂直な深さ「D」、及び幅「WW」を有し、頁に拡大して図示されている(また、W流れと混同しないようにWWと示されている)。これらの様々な寸法は、複数の要因、特に流速及び目的成分の沈降速度に基づいて選択されてもよい。例えば、選択される流速に関して、選別チャネルの全長は、相対的に最も遅い沈降速度を有する成分(
図2に成分Cとして示される)を差別除去するのに十分に長くなければならない。長さが短い場合は、成分Aを有する流れZ及び成分Bを有する流れYで示されるようなより速い沈降速度を有する成分を分離するために他の流れに対応する。
【0074】
本発明は、アスペクト比において非常に大きな寛容度又は許容度を有し、それにもかかわらず層流を実質的に維持していることで従来技術とさらに区別される。長さ対幅のアスペクト比は例えば、約5(以上)対1(5:1)(長さは幅よりも大きい)から約1(以下)対2(長さは幅よりも小さい)にまで変化し得る。好ましい長さ対幅のアスペクト比は、約2:1であり、3:1から1:2まで変化し得る。
【0075】
流速はまた、装置100に利用される複数の流れ間で変化し得る。例えば、下段の流れ(例えばY及びZ)における、より大きな流速により、流れW及びXを圧密化(compress)する傾向があり得り、流れY及びZ中に沈降するのに特定の成分が横切らねばならない距離がより短くなる。
【0076】
また、装置100の様々な流れを通る成分の沈降は通常、沈降速度法であり、すなわちこれは、分離される成分の相対密度及び大きさ、並びに物質の形及び静電特性に基づく。しかしながら、他の条件(よりゆっくりとした流速、浅い流れ深さ、及び/又はより長い選別チャネル100等)の下で、沈降はまた、沈降平衡法であってもよく、すなわちこれは、成分の相対密度にのみ基づく。
【0077】
平衡分離が望まれる場合、流れW、X、Y及びZから成る様々な流体を、選択される分離のための成分密度に適合する所望の密度勾配をもたらすように選択し且つ調整してもよい。例えば、流れW、X、Y及びZから成る様々な流体を、それぞれ異なる増加又は減少密度を有するように選択し且つ調整し、それゆえ、様々な粒子が適切な工程で沈降される、段階的密度勾配をもたらすようにしてもよい。また、十分な数の流体の層流を使用することにより、密度勾配は、細粒分離のための対応する性能(に対応することができること)によって有効に連続的となる。
【0078】
一般的に層流(流れW、X、Y及びZ)から成る様々な流体はまた、特に望まれる成分の分離に好適な基準に基づいて選択され得る。例えば、血液分離に関して、様々な流れは、全血(流れW等)、及び血漿又は残存流れのための緩衝溶液から成ってもよい。様々な流体はまた、注入口120に入る前に、希釈、添加物(例えば、抗凝固剤、凝集剤又は結着剤)等の他の成分の添加、粘度特性処理又は他の流れ特性処理等によって予備処理されてもよく、又は他の分離技術によって予備処理されてもよい。例えば、全血を予備処理してから、いくらかの量の赤血球をはじめに除去してもよく、又は抗凝固剤(クエン酸ナトリウム等)を添加してもよい。
【0079】
4つの流れ又はチャネルを有して示されるように、装置100(又は下記の200)は、任意の数の流れおよび対応する流体の注入口120及び排出口130を備えてもよい。流体の流れの数に関する1つの制限は、それぞれの流れをほぼ層状又は非乱流状に維持する性能(ことができること)に基づき、そのため、流れのそれぞれの界面は、ほぼ非乱流状であり、流れの望ましくない混合を最小限にする。また、所与の分離段階で利用される流れの数も制限することになり得る流れから成る流体に対して相対密度を斟酌してもよい。
【0080】
様々な装置100(又は下記の200)は、より高いスループットのため並行に、且つ高純度等に対するさらなる分離段階に続けて、さらなる装置100(下記の200)にさらに連結されてもよい。また、様々な装置100を非沈降分離と併用してもよく、又は、非沈降機構を用いた連続する分離に続けて連結してもよい。流れ間の成分のさらなる分離は、例えば、光学力(第5の関連出願(参照によって本明細書に援用される)におけるホログラフィック光トラッピング等)を用いて達成される。これらの様々な装置100、200又は300、種々の寸法、及びチャネル又は流れの種々の数をさらに有してもよい。
【0081】
図2(及び
図13)は、ホログラフィックトラップすること又は光トラップすることによって生じるかかる光学力を用いて、装置200におけるさらなる成分の分離を行う一般的な図である。複数のホログラフィック光トラップ210の生成及び操作は、
図4及び
図5を参照して以下により詳細に説明する。装置200は、
図5の試料506を生成する。2つの流れW及びXは、
図2に図示され、流れWは、はじめに2つの成分A及びBを有する。ホログラフィック光トラップ210(
図2に円錐断面として示される)はそれから、「A」成分を補足するのに利用され、次に「A」成分を流れXに移動させる。このような光トラッピングは特に、特定の分画、特に沈降速度に基づく差別が不十分である分画に対する精製を高めるのに有用である。このような光トラッピングはまた、細胞残屑及び他の不純物等の望ましくない成分の除去に特に有用である。また、成分の混合又は再混合が、上記の沈降速度法による層流の分離時に行われ得る場合、光トラッピングは、望ましくない成分を除去するのに特に的確であり得る。例えば、相対的に小さい白血球は、十分速く沈降せず、結果として、血小板分画に一部の白血球が混入する可能性がある。光トラッピングを利用して、白血球を選択して且つ個別の流れに移動させることで、血小板分画の精製を高めてもよい。
【0082】
血液選別用途において、血小板及びRBCは、白血球よりも良好に光学的操作(すなわち、「ピンセット」)されることを理解すべきである。しかしながら、システム500(以下に記載される)における少ない開口数を用いることで、白血球の光学操作は顕著に改良される。
【0083】
光トラップと併用して実施される場合、装置100、200又は300は、選択される光波長に関して、光透過性物質を用いて具現化されなければならない。ホログラフィックトラップが他の波長で実施される場合には、選択される波長に好適な他の相当する透過性物質を用いてもよい。次いで、装置100、200又は300が実施され、
図5に示される試料506の位置に置かれ、システム500を用いてホログラフィック光トラッピングを本発明の分離段階の1つ又はその一環として実行する。
【0084】
図3は、本発明による血液又は他の成分の分離用の閉じられた二段階システム300を示す図である。第1段階305において、選ばれたドナーからの血液成分は注入口315を流れて、第1の流れを形成し、血漿は、注入口320を通って戻り(又は、はじめの開始時に用意されて)、第2の流れを形成する。第1の流れ及び第2の流れは、非乱流、そうでなければ層流であり、非乱流を第1の分離領域325で互いに接触させ、2つの流れの間に非乱流界面領域を形成する。第1の分離領域325において、赤血球及び白血球は共に、第1の流れから第2の流れに沈降し、且つ他の目的に(沈降赤血球用の医療用途等)用いられるべく、又は選ばれたドナーに戻すために貯蔵槽330に回収される。上述のように、第1の分離領域325の長さ及び第1の流れの流速は共に、赤血球及び白血球の両方が、重力及び浮力の下で第2の流れに受動的に沈降するのに十分な時間を有するように予め設定されている。
【0085】
図3を続けて参照すると、現状で赤血球及び白血球を両方とも実質的に枯渇した第1の流れは、非乱流状に流れて連続経路において第2の分離段階310に流れ込む。第2の分離段階310において、第1の流れは、注入口335からの第3の流れによって第2の分離領域340に入る。第3の流れはまた、例示的な実施形態において選ばれたドナーからの血漿から成る。第2の分離領域340において、1つの流れに残存する血小板は、受動的に3つの流れ中に沈降し、3つの流れの血漿によって貯蔵槽345に、例えば医療用途のために回収される。さらに1つの枯渇した流れは次に、排出口350から注入口320及び335に再循環し、第1の流れ及び第3の流れをそれぞれ形成する。上述のように、システム300に、例えば、選ばれたドナーの血液の一部を遠心分離することによって、又は1つの枯渇した流れ(実質的に又は主に血漿)が排出口350で生成するまで、別の生体適合性で無毒な液体をはじめに用いることによって、システム開始時にドナーの血漿を用意してもよい。
【0086】
図3に別個に示されてはいないが、さらなるホログラフィックトラッピングの分離段階を利用して、これらの血液分画の分離を促進してもよい。例えば、第2段階310の代わりに、又はそれに加えて、ホログラフィックトラッピングの分離段階を利用してもよい。また、第2段階は、1つの流れを用いて示されるが、他の実施形態では、2つの流れを1つの流れのさらなる分離段階に加えて、又はその代わりに、第2(以上の)段階分離に付してもよい。さらに、連続して、又は並行してさらなる分離段階を用いてもよい。
【0087】
より一般的には、分離領域は、いくつかの材料特性に基づいて物質が部分的に又は完全に選別されるか、又は分離される領域である。分離領域は、本発明の実施形態における様々な流れのいずれかにおいて、1つ又は複数の以下の技法を個別的に、連続して、又は同時に採用してもよい。
【0088】
(a)沈降速度法分離:沈降速度による分離。
沈降速度は通常、物質の大きさ及び密度、並びに物質の形及び静電特性における関数となる。この分離の場合、層流を設けて、重力下で、又は場合によっては遠心分離機のような装置での回転等の他の慣性力により分離が生じる。
(b)平衡分離:密度による分離。この分離の場合、直線段、平滑段又は変動密度勾配を確立して、物質が、適合する密度環境に存在する領域に到達するか、又はほぼ到達するまで、物質を勾配にて沈降及び/又はクリーミングさせることができる。
(c)拡散分離:拡散による分離。この分離の場合、物質は、所定の時間内に物質が拡散する距離に基づいて分画される。
(d)運動性分離:運動性による分離。この分離では、物質は、所定の時間内に物質が自身の運動性により移動する距離に基づいて分画される。
(e)光学分画法:光学力を用いた分離は一般的に、個別の対象物の検査に基づいた、光学系に情報を伝え)、且つ影響を与えるフィードバック機構を用いない。
(f)直接光学分離:光学力を用いた分離は一般的に、個別の対象物の検査に基づいた、光学系に情報を伝え、且つ影響を与えるフィードバック機構を用いる。
(g)誘電泳動分離:誘電泳動を用いた分離。負荷される電界における物質の位置、並びに物質及びその環境の誘電応答に応じて、力が対象物に及ぼされる。
(h)電気泳動分離:電気泳動を用いた分離。負荷される電界における物質の位置、並びに物質及びその環境の電荷に応じて、力が対象物に及ぼされる。
(i)磁気分離:磁力を用いた分離。負荷される磁場における物質の位置、並びに対象物の磁気特性に応じて、力が対象物に及ぼされる。
(j)表面張力分離:物質の表面張力又は表面化学特性を用いた分離。これは、例えば、特定の物質がそこに引き寄せられるか又はそこで安定となり得る流体界面の形成を伴ってもよい。
【0089】
さらに特に、血液の選別のための例示的な分離は、(a)沈降速度法分離による、いくつかの又は全ての他の血液細胞型からの、且つ/又は血漿若しくは流体媒体からの、1つ又は複数の血液細胞型の分離、(b)(a)と同様だが平衡分離を伴う分離、(c)沈降により、溶液から赤血球(RBC)すなわちRBC及び白血球(WBC)だけを除去すること、(d)沈降を用いて血漿から血小板を濃縮すること、(e)誘電泳動、電気泳動又は磁気分離を用いたRBCの抽出、(f)光ピンセット及び光学分画法を含む光学技法を用いて溶液から血小板を濃縮又は抽出すること、及び(g)特定の細胞型と結合し得るとともに、上記の分離技法のいずれかによって作用し、その後、細胞型に応じて非結合性であっても、そうでなくてもよい薬剤(機能化ビーズ等)を用いた血液成分の分離を含む。
【0090】
血液を選別する場合、複合アプローチは、最も効果的であり得り、例えば下記のように、まず沈降速度法分離を用いてRBC及びWBCを抽出し、次に光学分画法を用いて血小板を抽出及び濃縮する。光学分画工程を実施すると、血小板を濃縮するだけでなく(例えば、最後に遠心分離工程によっても行われるであろう)、血小板アフェレーシス(aphoresis)の例として血小板によって誤って回収されたWBCに対して強い抑制を加える第2段階をもたらすであろう。このような濃縮工程はまた、血小板分画又は血漿分画からWBCを濾過するような濾過を含む。
【0091】
装置300は、血液の分画に関して記載されているが、装置300が、このような血液の分画に加えて広範な分離に利用できることは当業者によって理解されるであろう。また、装置300は、本発明の連続的に連結する分離段階の1つの特定の実施形態と考えてもよい。
【0092】
細胞「洗浄」はまた、装置100、200又は300の特筆すべき用途である。このような洗浄は、貯蔵、保存又は他の医療目的のために溶媒の変更を含み得る。このような洗浄はまた、目的の細胞をこのような混入の無い別の溶媒の流れに分離することによって、細菌等の混入物を含有する溶媒を除去することから成り得る。上述のように、精子分離はまた、装置100、200又は300の特筆すべき用途である。
【0093】
選別機器100、200又は300の一部、又は機器からの排出物(output)を、光学的に検査してもよい。これは、直輝光画像法(direct bright-light imaging)又は蛍光画像法を利用した、カメラ等による直接的な画像化であってもよい。そうでなければ、より高度な技法(例えば、分光分析、透過型分光分析、スペクトル画像法、又は動的光散乱法又は散乱波分光分析等の散乱法)であってもよい。多くの場合、これらの検査領域は、流動機器に直接組み込まれて注入工程、排出工程、又は中間工程を特徴付けることができる。それらは診断又は記録を保持するものであってもよく、又は、それらを使用して、処理が行われる程度又は流速若しくは使用される各溶液の量に関するフィードバック等について全工程に情報を伝えてもよい。場合によっては、光学検査領域を添加剤(例えば、特定の物質又は病気の存在下で結合及び/又は蛍光発光するよう機能化される溶液又はビーズの一部に結合するか又は影響を与える化学物質)と併用してもよい。血液選別の例に関して、これらの技法を用いて、細胞濃度を測定し、病気を検出し、血液を特徴付ける他のパラメータを検出してもよい。
【0094】
選別機器100、200又は300の一部、又は機器からの排出物を、電子的に特徴付け得る。例えば、選別機器の一部には電子機器が内蔵されていてもよい。電子機器の例としては、(a)コンデンサ、(b)電子流速計、(c)流体のバルク伝導性(これにより、濃度又は組成を測定し得る)を検出する抵抗計、又は(d)pH測定機器を備えてもよい。血液選別の用途の場合、細胞濃度、鉄分、流速、細胞の総数、電解液濃度、pH及び他のパラメータの測定結果は、選別機器の有用な部分となり得る。
【0095】
選別機器100、200又は300の流れ成分は受動的であり、注入及び排出の流速によって外的に完全に制御され得る。あるいは、機器に組み込まれる活性流れ構成部品(別個に図示せず)が存在し、この部品は例えば、電子的、光学的、熱的、機械的又は他の影響により部分的に又は完全に開閉するバルブであってもよい。血液選別の用途の場合、選別機器100、200又は300は、1つ又は複数の溶液を選別し且つ/又は送達する統合方法を有してもよい。例えば、消耗選別機器を製造して、貯蔵槽の側に変形可能膜を備えてもよい。この貯蔵槽を溶液で満たしてもよく、溶液は例えば、患者との生体適合性があるとともに、血液を希釈するのに使用し得る緩衝剤である。別の例では、貯蔵槽を抗凝固剤で満たしてもよい。このような流体の送達及び/又は使用は、機械的影響(例えば、膜を加圧して流体を送達する)により積極的に制御され得る。あるいは、別の機構を用いて流体を送達してもよい。特に重要なことは、簡素化及びコスト削減のため、選別における種々の工程で必要とされる様々な流体溶液を統合することである。これらの成分を統合することにより、実質的に簡素化し、且つ所有及び運転の総コストを削減し得る。また、混入及びエラーの危険性を減らし得る。注入溶液及び緩衝溶液、又は流体を保持するこのような貯蔵槽を、例えば
図14及び
図15に示す。
【0096】
機器100、200又は300は、1つ又は複数の流体又は流体成分が生物学的又は化学的に検査される領域(別個に図示せず)を含んでもよい。これはpH測定、特定の生体物質又は化学物質の在否、又は他の測定を含んでもよい。血液選別の用途の場合、これは、病気の検出、血漿中の様々な細胞型又は物質の濃度特徴、鉄分の特徴、血液型の判定、又は血液の性質、血液型又は血液の種類の他の評価を含み得る。
【0097】
機器100、200又は300は、紫外光への露光等の光学方法、又は他の方法を用いて溶液を殺菌する領域(別個に図示せず)を含んでもよい。殺菌は、機器の初期部に存在するか、又は試料溶液の緩衝、洗浄、希釈又は他の影響のために添加される溶液に作用してもよい。そうでなければ、殺菌は、処理される試料溶液の一部又は全てに作用してもよい。血液選別の用途の場合には、全血以外の、機器内に使用される溶液の光学殺菌が重要となり得る。また、血液又は特定の分画の殺菌…
【0098】
機器100、200又は300は、1つ又は複数の表面が特定の物質と物理的に又は化学的に相互作用するように構成されているような材料から成り得る。例えば、表面は、溶液から物質を抽出するべく、又は診断するべく、特定の物質が付着するように機能化されてもよい。血液選別の用途の場合、機能化表面を用いて、望まない物質を特定の分画から抽出してもよい。あるいは、機能化表面を用いて、病気の検出等のために物質又は物質タイプが存在する程度を測定する目的で、低濃度の物質を回収してもよい。
【0099】
選別機器100、200又は300は、並行して選別するが、流れを分離する物理的な壁を有さない領域を含有し得る。例えば、並行選別領域は、複数の注入口120及び排出口130を有してもよく、これらのうちのいくつかは、互いに機能的に同様である。複数の並行ソーターを区別する物理的な仕切りを有する代わりに、溶液及び流れの物理特性の結果として分割が生じる。並行するソーター領域を接触させると、より簡素で安価な装置による高い選別速度が得られる。領域は表面と接触しないように作用する場合もある。血液選別の場合、これらの領域を用いることで、コスト及び複雑性を減少しつつ、表面との接触を最小限にし、且つ選別速度を最大にするであろう。
【0100】
機器100、200又は300は、流速又は流れ特徴を制御するように設計される領域(別個に図示せず)を有し得る。例えば、多くの場合、層流が必要とされ、特定の流れプロファイルが所望される場合が多い。他の場合には、機器のいくつかの領域は、同一の流速及び挙動を有していなけらばならない。このような理由のために、流れ挙動に影響を与える形及び他の特性を有する領域が必要とされる場合が多い。場合によっては、非常に対称的な流れを設計することでこれを実施する。他の場合には、流れ領域の直径における大きな変化、及び/又は貯蔵槽の存在は、均一な流速の維持を助ける。他の場合には、非常に綿密に設計されたチャネルは、必要とされる流速を正確に均衡させる。層流を維持するために、チャネルの大きさが徐々に変わる領域が重要であり得る。障害物又は仕切りはまた、層流を維持するように作用し得る。血液選別の場合、流れ調整は、分画の収率及び純度を維持しながら、高い選別速度を達成するために重要である。
【0101】
別個に示されてはいないが、機器100、200又は300は、流体の機械的混合のために設計される領域(例えば、乱流を促進させる領域)を含有してもよい。例えば、大きい寸法を有する領域に入る高速の幅広の流れを有する領域は、乱流及び混合を生じ得る。血液選別の場合、混合領域は、希釈剤又は抗凝固剤と血液とを混合してもよく、又は必要に応じて他の溶液を一緒に混合してもよい。
【0102】
機器100、200又は300は、細胞又は物質を或る方法で整列させる領域(別個に図示せず)を含有してもよい。このことはせん断流れによって実施される場合もあるが、電界等の外場を負荷することで実施されてもよい。
【0103】
機器100、200又は300は、細胞を溶解させるか又は物質を破壊するように設計された領域(別個に図示せず)を含有してもよい。これらのことはせん断流れ、振動、穴への押込み、電気的手段又は他の手段によって実施されてもよい。血液選別の場合、これは或る細胞型又は形成し得る凝集体を排除するのに有益である。それはまた、診断目的(例えば、病気の検出又は細胞の含有量に関するパラメータの測定)に有益である。
【0104】
機器は、例えば、浸透圧を変化させる薬剤を導入することによって、又は物理圧を変化させることによって、細胞又は対象物を膨潤又は脱水させる領域(別個に図示せず)を含有し得る。これは、例えば、平衡選別の前の工程として実施して、細胞又は対象物の密度を調整してもよい。それを実施して、或る成分を消すか、又はそれに衝撃を与えてもよい。血液選別の例として、これは、後段階の精製工程として実施して、望ましくない成分を除去又は中和してもよい。
【0105】
機器100、200又は300は、1つ又は複数の溶液を加熱又は冷却する領域(別個に図示せず)を含有してもよい。これを実施することで、粘度又は密度等の物理特性に影響を与え得る。さもなければ、それを実施することで、化学反応速度又は化学安定性等の化学特性に影響を与え得る。さもなければ、それを実施することで、運動性、代謝速度又は生存度等の生物学特性に影響を与え得る。例えば、1つの流体の流れが、別の流れよりも高温で存在すると、運動能力のある精子はより高温の流体から離れより低温の流体へと移動し得る。また、それは、次の処理工程の準備等で、システム水準適合性のために実施され得る。血液選別の例として、患者に戻される溶液を適温で維持して、患者を冷やさないようにし得る。貯蔵される溶液を処理の間、冷却して、これらの分画を保存又はそれらを次の処理又は貯蔵工程のために用意しておいてもよい。
【0106】
機器100、200又は300は、処理の実行時に使用されるであろう溶液を貯蔵するか、又は処理の実行時に生成され得る貯蔵槽(別個に図示せず)を備えてもよい。これらの貯蔵槽が選別機器に一体となっていることで、機器の使用を簡潔にし、さらなる部材の必要性を減少させる。血液選別の例として、貯蔵槽は、抗凝固剤、希釈剤、ディリュータント及び処理に必要とされる任意の他の溶液を含有してもよい。選別された分画又は廃分画を保持するであろう貯蔵槽を組み込んでもよい。
【0107】
機器100、200又は300は、拡散によって混合を促進する領域(別個に図示せず)を含有してもよい。例えば、2つの層流を接触させることで混合する場合、多くの細い接触流れを平行化すると、拡散により全体の混合速度が高まる。血液選別の例として、拡散混合領域を使用して、希釈剤、抗凝固剤、又は他の溶液を全血又は血液分画と混合してもよい。
【0108】
同様に別個に示されてはいないが、機器は、システムから気泡を除去する泡トラップを有する領域を含有してもよい。これは、主流領域の上方の領域への流れを有する領域から気泡が浮上できる領域を備えることで実施される。血液選別の例として、これは、システムに負荷をかける又は実行することで小さい気泡を患者又は回収試料に移動させないことを補償する簡潔な方法で実施され得る。
【0109】
上述のように、機器100、200又は300は、蠕動ポンプを使用すると生じるような、流れ中のどんな脈動も抑制するよう作用する領域(別個に図示せず)を含有してもよい。脈動を抑制する1つの方法は、機器内に「泡トラップ」を組み入れることである。流体中の圧力が増加したり、減少したりすると、エアポケットが流体と接触して、エアポケットを圧縮する。したがって、エアポケットはショックアブソーバとして機能し、流れを滑らかにする。さらに他の機器(例えば、高圧下で曲げ得るたわみ部材)を用いてもよく、これより、圧力及び流速を均等にする。血液選別の用途の場合には、脈動の減少区域は、より正確で滑らかな流れ、それゆえより高い選別速度、純度及び収率を得るであろう。
【0110】
機器100、200又は300は、機器の状態を明らかにする領域(別個に図示せず)を含有してもよい。消耗品の場合、この領域は、機器が殺菌されたか、又は使用されたかを指示し得る。血液選別の用途の場合、1つの機器にはインジケータが必要とされ、このインジケータは、選別機器が殺菌されたこと、及び、機器がまだ使用されていないか又は汚染されていないことを立証する。
【0111】
選別機器100、200又は300、又は選別システム全体は、流れソーターの精密水準測量に関する機構を含み得る。このことは、ソーターによっては、機器が精密水準ではない場合、浮力が意図していない流れを引き起こし、選別収率及び純度への負の影響を有し得るので重要である。さらに、選別機器は、機器が均衡をとれているかどうか、又は均衡する度合いを明らかにする要素を含有してもよい。例えば、機器は、電子又は重力に基づく均衡を選別機器自体に組み入れてもよい。このような機器の1つの例は成形チャネルであり、チャネル内に流体及び気泡を有する。気泡の位置により機器の傾斜角を明らかにし得る。別のこのような機器は軌道内で金属球を使用して、傾斜角を明らかにし得る。別の明示では、光学整列(例えば、光源を表面から跳ね返すか、又は光源をウェッジを介して通過させてその向きを同一にする)を使用する。血液選別の用途の場合、水準測量制御部及びインジケータは、高収率及び高純度の製品を保証するのに重要である。
【0112】
選別機器100、200又は300、又は選別システム全体は、機器及び/又は溶液の、均一且つ/又は一定の温度を維持する機構(別個に図示せず)を含み得る。このことは、熱的に誘導される浮力を取り除くため重要であり、この浮力は、意図していない流れを引き起こし、選別収率及び純度への負の影響を有し得る。さらに、選別機器は、機器内、又は全体として選別システム内にインジケータを有してもよく、このインジケータは、1つ又は複数の成分の温度及び/又は温度均一性を示す。血液選別の用途の場合には、温度均一性制御部及びインジケータは、高収率及び高純度の製品を保証するのに重要である。
【0113】
選別機器100、200又は300、又は選別システム全体は、1つ又は複数の注入又は廃液の液位(level)及び濃度を測定する機構(別個に図示せず)を含み得る。これらの測定結果を使用して、汎用モニタリング又は他の用途のために、操作速度、完了時間、エラー状態を評価し得る。血液選別の用途の場合には、量及び濃度インジケータを使用して、十分な試料が回収された時間を特定し得るか、又は溶液の不足又は枯渇が起こった時間を検出し得る。
【0114】
最後に、選別機器100、200又は300、又は選別システム全体は、標準的なボトムアップ充填又は排気を用いて、1つ又は複数の流体を備えるシステムを準備する方法を有し得る。パージを、機器を水抜きすることによって、又は機器中に溶液を流すことによって、同様に実施してもよい。選別実行の初期段階にて、準備溶液をほとんど消費して所望の溶液が得られるまで、準備溶液を廃棄してもよい。同様に、選別実行の後段階にて、流体を用いて、システム内に選別される物質を押込んで、廃棄物及び最大収率を最小限にするようにしてもよい。
【0115】
様々な選別機器100、200又は300は、ユーザが溶液の1つ又は複数の分画を抽出することができる汎用機器を備えるシステムにおいて利用され、S値(大きさ、密度、又は大きさ×密度)の範囲により決定される。
図26は、本発明に従う1つの実施形態による例示的な選別及び分離システム2600を説明するブロック図である。この汎用ソーターは、各注入チャネル及び各排出チャネルにおける流速を、ユーザ制御部(ユーザ入力2610)に応じて変更するであろう。このユーザ制御部により、ユーザは、各排出チャネルを通って出るS値の範囲を決定することができるであろう。この機器は、試料の様々な精製、洗浄、分離及び診断評価を実施する、有用な実験道具であろう。この機器は、研究、開発及びプロトタイピング用途に関する重要な基盤でもある。
【0116】
選別ハードウェアは、温度制御されていてもよく又はされていなくてもよい単一エンクロージャ(enclosure)に含有され得る。このハードウェアは、(1)数個の排出又は注入を有する消耗流動板2620(例えば、選別機器100、200又は300)、(2)数個のコンピュータ制御可能な蠕動ポンプ2625、(3)温度制御及びモニタリング装置2630、(4)貯蔵容器ホルダ(すなわち、貯蔵槽2635及び2640)から成る。選別は、流速、温度、及び制御又は診断目的のために含まれ得る任意の他のさらなる要素をモニターし、且つ制御するコンピュータ2650によって制御される。
【0117】
流動板2620は、上述のように、多くの用途に好適な単純な汎用機器であってもよい。流動板2620は、4個の注入及び2〜10個の排出を有してもよい。流動板2620は無菌にされ、準備され、シールされた状態で提供されてもよい。貯蔵槽は、流動板の一部であってもよく、又は使用前に流動板に取り付けられる別個の無菌部材であってもよい。中心選別領域の全て又は一部は、カバーガラスでカバーされて、光ピンセット、光学誘電泳動、又は試料のレーザ消滅/切断により処置されることができるようにし得る。
【0118】
コンピュータ2650制御は、ポンピング及び温度制御のためにハードウェアの測定及び制御を行う。このコンピュータはまた、付加され得る他のハードウェアコンポーネントに適応する。ユーザソフトウェアは、全てのポンプの同時制御に対して非常に好適なフロントエンドを提供する。それぞれのポンプ速度を制御するのに必要な計算を実施することで、ユーザは特定の選別用途のための望ましい流れを得られるであろう。
【0119】
当該システム2600は、単独で、又はさらなるレーザ装置と併用して多くの選別用途を可能とするのに十分普遍的であるであろう。これらの用途は、蛍光による細胞同定、高強度レーザ照射による細胞死滅、光学誘電泳動を用いた細胞分画法、運動性に基づく運動性細胞分画法、拡散性による対象物の受動選別、及び受動的な流体ゾーン密度選別を含むが、これらに限定されない。受動的な流体ゾーン密度選別用途は、数が多く、且つ広範囲に拡張され、通常、さらなるハードウェアを最小限含むか又は全く含まずに実施することができる。
【0120】
受動流体選別を使用する、このような汎用選別システム2600に関する例示的な使用及び用途、及び/又は光勾配力(以下に記載)の使用について、下記の表で概略を説明する。
【0121】
【表1】
【0122】
図27は、本発明に従う1つの実施形態による例示的なバイオリアクターの生成物精製及び分離システム2700を説明するブロック図である。バイオリアクターは、モノクローナル抗体、組換えタンパク質生成物、ウイルス及びウイルス抗体並びに生細胞塊の生成において使用される。バイオリアクターの最も一般的な利用は、様々な薬物療法の生成におけるものである。バイオリアクターは基本的に、細胞を理想条件下で高濃度で成長させることによって機能する。細胞が成長する間、バイオリアクターに培養液を流す。この培養液は細胞の廃棄物を回収し、さらに細胞に栄養を与える。バイオリアクターを流れた培養液は次に、生成物を得るために処理される。生成物を回収するために、廃棄物で満たされた培養液は、多種多様なプロセスによって濾過され、その1つはビーズカラムクロマトグラフィによる。このプロセスは、完了するのに長い時間を要し、非常に高価で、且つ最終生成物を高いパーセンテージで得ることができない。本発明はこれらの課題を3つ全て解決する。
【0123】
このバイオリアクター生成物精製機2700は、廃棄培養液から要求される生成物を迅速に、容易に、且つ正確に除去するであろう。廃棄培養液は、1つのチャネル2701を通ってソーターに流れ込み、同時に、適切な親和性部位でコートされたビーズの溶液は、第2のチャネル2702を介してソーターに流れ込むであろう。両チャネルは、第1の攪拌機2705に通じており、この第1の攪拌機2705においてそれらは混合されるであろう。混合中、生成物は、ビーズ上の部位と結合するであろう。次に、混合物は、注入緩衝液(注入チャネル2715)と共に第1の分離領域2710を通過するであろう。受動拡散性選別の使用により、選択された生成物を有するビーズはチャネル2718を通って排出され、廃液は、チャネル2716を通って排出され、廃棄されるであろう。受動拡散性選別は、大きいビーズが1つのチャネル内に留まり、一方、より軽い分子がチャネルのもう一方に拡散するため、達成される。ビーズ溶液はそれから、チャネル2718を流れ、変性溶液が、第2のチャネル2720を流れる。これらのチャネルは両方とも、第2の攪拌機2725へと流れ、この第2の攪拌機2725において互いに混合されるであろう。それらが混合されている間、変性溶液は、生成物とビーズとの間の結合を破壊するであろう。混合の後、溶液は、チャネル2730を通る別の緩衝溶液と共に排出チャネル2735を流れ、第2の分離領域2740に流れ込むであろう。受動拡散性選別の使用により、ビーズは、下部チャネル2745を流れ、廃棄物として廃棄される。精製及び回収された生成物は、上部チャネル2750を流れるであろう。この精製方法は、コストを削減し、時間を短縮し、且つ最終生成物の収率を高めるはずである。
【0124】
図4は、本発明に従う1つの実施形態によるホログラフィック光トラッピングシステム400を概略的に説明し、ホログラフィック光トラッピングシステム400は、装置100、200又は300と一般的に併用される。ホログラフィック光トラッピングに関するさらなる詳細は、第5の関連出願に利用できる。
図4に示されるようなホログラフィック光トラッピング装置又はシステム400において、光は、レーザシステムから入射し、下向き矢印で示されるように入り、システム400の動力を供給する。
【0125】
位相パターニング光学素子401は好ましくは、動的光学素子(DEO)であり、動的表面を有し、「PAL−SLMシリーズX7665」(浜松ホトニクス(日本)製)、「SLM512SA7」又は「SLM512SA15」(共に、ボールダー・ノンリニア・システムズ(Boulder Nonlinear Systems)(ラフィーエット、コロラド州)製)等の位相限定空間光変調器(SLM)でもある。これらの動的位相パターン化光学素子401は、コンピュータ制御されて、媒体中に符号化されたホログラムによってビームレットを発生させる。このホログラムを変更して、ビームレットを発生させ、ビームレットの形状を選択することができる。
図4の左下に発生する位相パターン402は、水405中に懸濁される1μm直径のシリカ球404で満たされる右下に示されるトラップ43を生成する。このように、システム400は、左下に示される動的ホログラムにより制御される。
【0126】
レーザビームは、レンズ406、407を通って、ダイクロイックミラー408へと移動する。ビームスプリッタ408は、ダイクロイックミラー、光バンドギャップミラー、全方位ミラー又は他の同様の機器を含む。ビームスプリッタ408は、光トラップ403を形成するのに用いられる光の波長を選択的に反射し、他の波長を透過させる。ビームスプリッタ408の領域から反射される光の一部はそれから、符号化位相パターニング光学素子の領域を通過する。この光学素子はほぼ、集束(対物)レンズ409の平面後部開口に接合する平面に設けられる。
【0127】
単一のビーム光トラッピング(レーザ又は光ピンセットとも呼ばれる)において、第5の関連出願の発明以前には、高開口数レンズが、許容可能な光トラップに必要不可欠であると考えられていた。この考えの根拠は、光トラッピングでは、作用する光の電界での勾配を使用して、粒子をトラップすることにある。大きいトラッピング力を有するためには、電界(又は光線の数密度)における大きい勾配を有することが必要不可欠であると考えられていた。これを達成する方法は、通常、高開口数レンズに光照射野を通すことである。
【0128】
大きい視野内の試料の観測及びトラッピングにおける懸念は、このような観測及びトラッピングが開口数の低い対物レンズを伴うであろうということである。従来技術の教示と反対に、第5の関連出願の発明は、低開口数レンズ、例えば、
図4における対物レンズ409を提供する。この状況において観測及びトラップする能力は、低倍率レンズによって得られる大きい視野から利益を得るであろうあらゆる用途(例えば、微細な製造部品を設置する、又は細胞等の多数の対象物を扱う)において有用であるであろう。
【0129】
本発明による例として、水105中に懸濁される3ミクロンのシリカ球104を、かつてない低開口数を有するレンズ109を用いてトラップした。使用されるレンズ109はニコン製、(a)開口数が0.10のPlan4x、(b)開口数が0.25のPlan10xであった。
【0130】
好適な位相パターニング光学素子は、どのように光の集束ビーム又は他のエネルギー源を方向付けるかに応じて、透過型又は反射型として特徴付けられる。透過型回折光学素子は、光のビーム又は他のエネルギー源を透過させるが、一方で反射型回折光学素子はビームを反射する。
【0131】
位相パターニング光学素子401はまた、静的表面又は動的表面を有するように分類されてもよい。好適な静的位相パターニング光学素子の例としては、格子(回折格子、反射格子及び透過格子を含む)等の1つ又は複数の固定表面領域、ホログラム(多色性ホログラムを含む)、ステンシル、光成形ホログラフィックフィルタ、多色性ホログラム、レンズ、ミラー、プリズム及び波長板等を有する光学素子が挙げられる。静的透過型位相パターニング光学素子は、固定表面によって特徴付けられる。
【0132】
しかしながら、いくつかの実施形態において、位相パターニング光学素子401自体が可動であり、それにより、レーザビームに対して、位相パターニング光学素子401を移動して適切な領域を選択することによって、もう1つの固定表面領域の選択を可能とする。
【0133】
静的位相パターニング光学素子は、スピンドルに取り付けられ、制御電動モーター(図示せず)で回転され得る。静的位相パターニング光学素子は、固定表面及び個別領域を有する。透過型又は反射型のいずれかの静的位相パターニング光学素子の他の実施形態において、固定表面は、実質的に連続的な変化領域を含有する非均質表面、又は個別領域と実質的に連続的な変化領域との組み合わせを有する。
【0134】
それらの機能に時間依存的な側面を有する好適な動的位相パターニング光学素子の例としては、コンピュータ発生回折パターン、位相シフト材料、液晶位相シフトアレイ、マイクロミラーアレイ(ピストン型マイクロミラーアレイを含む)、空間光変調器、電気光学偏向器、音響光学変調器、可変ミラー、反射型MEMSアレイ等が挙げられる。動的位相パターニング光学素子401に関して、位相パターニング光学素子401を包含する媒体405は、変更可能なホログラムを符号化して、パターン化された位相シフトを光の集束ビームに付与する。その結果、光の集束ビームの位相プロファイルがそれに対応して変化(回折又は収束等)する。さらに、媒体405を変更して、光トラップ403の位置における変化をもたらしてもよい。動的位相パターニング光学素子401の利点は、媒体405が変更して独立して各光トラップ403を移動可能な点である。
【0135】
ビームレットの位相プロファイルが外周であまり強くなく、且つ外周より内側の領域でより強いような実施形態において、後部開口を約15%未満だけいっぱいにする(overfill)ことは、後部開口をいっぱいにしないで形成された光トラップより、外周でより大きい強度を有する光トラップを形成するのに有用である。
【0136】
いくつかの実施形態において、光トラップの形状は、その原形状からポイント光トラップ(point optical trap)、光渦、ベッセルビーム、オプティカルボトル、光回転子又は光ケージの形状へと変化させてもよい。光トラップは、二次元又は三次元で移動されてもよい。位相パターニング光学素子はまた、例えばガウシアンモードをガウス−ラゲールモードに変換することによって、特定の位相モードをレーザ光に付与するのに有用である。したがって、1つのビームレットをガウス−ラゲールモードに形成してもよく、その一方で別のビームレットをガウシアンモードで形成してもよい。ガウス−ラゲールモードの利用は、放射圧を減少させることによってトラッピングを大きく高める。
【0137】
1. イメージングシステム
現在の器具設計では、主イメージングシステム110に高解像度CCDカメラを使用する。CCDカメラ(
図5における参照符号511を参照)の主な利点は、この技術が成熟したものであるため、好ましいコスト/パフォーマンス比率である。CCDカメラの別の利点は広いダイナミックレンジ及びデジタル出力を生成しやすいことである。画像は、コンピュータ画面(
図5における参照符号510を参照)上に表示され、トラップの位置を選択する基準の枠組を提供し、且つオペレータがレーザに偶発的に曝される可能性を最小限にする。
【0138】
2. ユーザインターフェース
a.対象表示
ユーザインターフェースは、CCDカメラにより取得された視野を表示するコンピュータ画面から成る。ユーザは、マウスでトラップ位置を指定する。位置を消去するオプションもある。
【0139】
下記により詳細に記載されるように、ユーザはまた、検体を損傷させないようにトラップ毎の電力を指定することができる。また、トラップが検体の屈折率と、検体によって変わると予想される懸濁化媒体の屈折率との差に依存するため、トラップ電力を変更し得ることが望ましい。
【0140】
b.ホログラム
トラップ位置を指定する目的は、ホログラム計算のための入力を提供することである。ホログラムは基本的に、フーリエ変換することにより望ましいトラップアレイが生成される関数である。しかしながら、液晶ディスプレイの場合には、この関数は位相物体(すなわち、波面の位相をどんなエネルギーも吸収することなく変化させる物体)である。
【0141】
c.トラップの組を選択する方法
トラップを用いて、対象物を特定の方向に動かしたいことがしばしばある。これは、マウスを使用して線を作成する(ドラッグする)ことによって達成され得る。コンピュータプログラムは、標的に対する連続追跡を失うことなく標的を少しずつ動かすように、連続的に展開され、且つ十分に互いに接近している一連のトラップに対する呼出として、線を解釈する。
【0142】
本発明はまた、トラップの高さを変える機能を含む。レーザビームが対物レンズ409の光軸と平行であるならば、トラップはレンズ409の焦点面と同じ高さで形成される。トラップの高さを変えることは、トラップを形成する光ビームが、顕微鏡の対物レンズ409に入るときにわずかに収束(又は分散)するように、ホログラムを調整することによって達成される。トラップの高さを調整することは、レンズを使用することで実現できるが、ホログラフィック光トラッピング(HOT)のみが、それぞれの個々のトラップの高さをあらゆる他のトラップとは独立して調整することができる。このことは、液晶ホログラムにより生じる位相変調を調整するコンピュータプログラムによって達成される。
【0143】
3. 試料ホルダー
a.概要
本発明の試料チャンバ700(
図7A及び
図7Bを参照)は、安価で使い捨てできる。本発明の試料チャンバ700は、下記に示されるが、本発明の別の目的は、柔軟な設計を作ることであり、この設計は、異なる用途に関して変更され得る。試料チャンバ700に加えて、本発明の様々な他の分離段階、例えば装置100、200若しくは300、又は、
図13〜
図24並びに
図26及び
図27を参照して以下に記載される他の分離段階を利用してもよい。
【0144】
試料チャンバ700は、顕微鏡スライド701の表面上に横たわっている。試料チャンバ700は、検体又は対象物を導入する一連のチャネル703を含む。チャネル703は、細いチューブ704(市販)により供給槽又は回収槽に連結される。試料又は対象物は、液状媒体に懸濁され、チャネル703を通って作用領域に導入されるであろう。試料チャンバ700は、カバースリップ705によって被覆される。
【0145】
b.試料チャンバの製造
本発明に従う1つの実施形態において、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)樹脂を使用してチャンバ700を製造する。このプロセスは、コンピュータ上で標準的なCAD/CAM法を用いて、チャネル703の所望パターンを作成すること、及び従来のフォトレジスト/エッチング技法を用いてパターンをフォトマスクに転写することを伴う。次にフォトマスクをネガティブマスクとして使用して、シリコンウエハ上にエッチングされたチャネルの逆パターンを作成する。チャネル703の深さは、エッチング時間によって制御される。シリコンウエハは、実際の試料チャンバ700のネガティブ複製である。最終工程は、PDMSをウエハ上に注いで重合することによってポジティブ試料チャンバ700を作製することから成る。これより、ガラススライド701に結合し、カバースリップ705を上に横たわらせたPDMS型が生じる。ガラスのPDMAに対する結合は、露出表面を活性化する酸素エッチングで達成される。
【0146】
いくつかのさらなる工程が、均一な品質を確実にするために必要である。例えば、PDMS溶液/硬化剤(hardner)は、泡形成を妨げるために真空中で維持される。このシリコンウエハをシラン化して、PDMSがウエハに付着するのを防ぐ。複製物を洗浄すること及び適切な環境制御を維持することを伴う様々な工程が存在する。これらは標準技術を象徴する。
【0147】
チャネル703は、グルー714を用いて保持される小さいシリンジ針706を用いてマイクロボアチューブ704に連結され、針706はPDMS型を通って、各チャネル703に連結する小さい円形ウェル707に挿入される。試料溶液をチャネル703中にマイクロポンプ708を用いて導入する。
【0148】
図7Bは、710においてシリンジポンプ708を介して試料を導入するための一般的な整列の図を示す。媒体を711において導入し、廃棄物を71において回収し、所望の回収物を713において回収する。
【0149】
図8は、上記のプロセスから実際に作製されるような、
図7Bにおける図の走査型電子顕微鏡写真の画像を示す。チャネルは、幅およそ50ミクロン及び深さ50ミクロンである。
図9は、研究対象の検体の操作が実行されるであろう「作用」量の走査型電子顕微鏡写真の画像である。図は、チャネル703が平らで、きれいであることをはっきりと示す。チャネル703は、断面が矩形であるが、他の形を考案してもよい。チャネル703は、試料が「作用領域」に流れるように設計される。この「作用領域」の形状は実験要求に対して個別設計され得る。
【0150】
c.ホログラフィック光トラップ
複数のトラップポイントを順にアドレスする、よって時分割方式である走査された光トラップとは異なり、ホログラフィック光トラップは、トラップのそれぞれを連続的に照明する。走査された光トラップが連続的に照射されるトラップと同じトラップ力を達成するためには、少なくとも同じ時間平均強度を提供する必要がある。これは、走査されるトラップが、少なくともトラップ領域の数に比例して、より高いピーク強度を有していなくてはならないことを意味する。このより高いピーク強度は、トラップされる物質における光により生じる損傷の機会を高める。この損傷は、少なくとも3つの機構、すなわち、(1)局所熱をもたらす単一光子の吸収、(2)光化学変換をもたらす単一光子の吸収、及び(3)光化学変換をもたらす多光子の吸収から生じ得る。事象(1)及び(2)は、トラップする物質によって、且つ周囲の流状媒体によって弱く吸収される光の波長を選択することによって緩和され得る。事象(3)は、より一般的な問題であり、一つには長波長光を用いて作業することによって、緩和される。このように、ホログラフィック光トラップは、一定時間の間に単一ポイントで又はより高い強度で、総力を発揮することによって潜在的に対象物を損傷させるのではなく、より少量の力を対象物上のいくつかのポイントに連続的に分配して、より穏やか且つ効果的に繊細な物質を操作し得る。
【0151】
本発明に従う1つの実施形態において、設計は、チャネル703のあらゆる設計パターンが標準CAD/CAMコンピュータプログラムで設計され得るという点で、自由である。パターンの複雑性は、チャネル703が互いに影響を及ぼさないように十分離れている限り要因とはならない。
図7B及び
図8において参照され得るように、複数組のチャネル703が容易に適応されるので、単一チップを2つ以上の実験に使用することができる。さらに、型が作製されると、その型を用いて何千もの試料チャンバを製造し得るので、この手法は容易に大量生産技術に適応できる。単一チャンバの限界コストは、大量生産の場合、およそ数セントとなるであろうと推定される。
【0152】
4. 光学システム
ホログラフィック光トラップの初期バージョンは、様々な材料から製造された固定ホログラムを使用した。これらは、ホログラムを使用して最高数百個のトラップを作成する原理を実証するのに妥当であった。しかしながら、これらのホログラムの主な欠点は、それらが静的であること、及び単一のホログラムを作成するのに何時間もかかることであった。1秒に何度もホログラムを形成可能なコンピュータ駆動液晶ディスプレイを製造するハードウェアの出現によって、光トラップの動的機器としての使用は、実用的な実現となっている。ソフトウェア制御は、レーザビーム操縦を制御するプログラムの単純なインプレメンテーションによる分離及びトラッピングの自動化を可能にする。ホログラムをコンピュータ計算する原理を以下に記載する。
【0153】
b.顕微鏡
光学系410は標準的な高品質光学顕微鏡から成る。対物レンズは、作動距離の長い集光レンズと連結する高開口数レンズ409である。高開口数の対物レンズ409はトラッピングに用いられる。作動距離の長い集光レンズは、画像における解像度を多少減少させ得るが、トラッピングを損なうことはなく、試料スライドの近くに余分な空間を設けてチューブ及び貯蔵槽を収容する。対象物を、により保持することによって移動し得る。
【0154】
本発明に従う1つの実施形態において、おおよそ2mWのレーザ出力を採用して、トラップにおいて200マイクロワットを生成する。2Wレーザから利用可能な出力レベルは、約1,000個のトラップを作成するのに十分である。緑色レーザ(532nm)を用いるが、532nm付近の値を吸収する物質で作用する遠赤色レーザを含む他の波長を使用してもよい。
【0155】
トラッピングは、屈折率勾配に依存するので、屈折率が周囲の媒体の屈折率と近い物質は、より高い出力レベルを有するトラップを必要とする。また、物質の耐破損性は、トラップ出力に従って変化するので、ユーザがこのパラメータを制御できることが望ましいであろう。ユーザは、グラフィカルインターフェースに表示される「出力スライダー」を用いて任意の特定のトラップの出力レベルを上げてもよい。
【0156】
c.液晶ホログラム(空間光変調器、すなわちSLMとも称される)
空間光変調器408は本質的に、静電界によって制御される液晶アレイであり、静電界はコンピュータプログラムによって制御され得る。液晶アレイは、付与される電界の強さに応じて変化する量によって光の位相を遅らせる特性を有する。
【0157】
ネマチック液晶機器は、ディスプレイに、又は大きい位相限定変調深さが必要とされる(2π以上)用途に用いられる。ネマチック液晶分子は通常、機器の表面に平行して置かれ、液晶の複屈折性のため最大位相差(リターダンス、遅延)を与える。電界が付与されると、分子は電界に平行して傾斜する。電圧が増加すると、異常軸に沿った屈折率、及びしたがって複屈折率は、事実上減少して機器の位相差を減少させる。
【0158】
d.レーザ
有用なレーザは、固体レーザ、ダイオード励起レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、アレキサンドライトレーザ、自由電子レーザ、VCSELレーザ、ダイオードレーザ、Ti−サファイアレーザ、ドープYAGレーザ、ドープYLFレーザ、ダイオード励起YAGレーザ及びフラッシュランプ励起YAGレーザを含む。10mW及び5Wの間で動作するダイオード励起Nd:YAGレーザが好ましい。生体物質を検査するためのアレイを形成するのに用いられるレーザビームの好ましい波長は、赤外、近赤外、可視赤、緑及び可視青波長を含み、約400nm〜約1,060nmの波長が最も好ましい。
【0159】
図5は、対象物を選別するホログラフィック光トラッピングシステムの概略図であり、ホログラフィック光トラッピングシステムは、本発明による1つの実施形態により装置100、200又は300と併用される。1つのこのような実施形態において、光トラッピングシステム500(
図5参照)(アリックス社 シカゴ、イリノイ州)が販売するBioRyxシステム等)は、NixonTE2000シリーズの顕微鏡501を備え、顕微鏡501には、ホログラフィック光トラッピングユニット505を用いて光トラップを形成するマウントが取り付けられている。転換器502は、容器が取り付けられており、マウントを介して顕微鏡501に直接嵌め込まれている。画像を形成するため、照明源503を対物レンズ504の上方に設け、試料506を照明する。本発明によると、試料506は、装置100、200又は300分離段階の1つのである。
【0160】
1つの実施形態において、光トラップシステム400(
図4及び
図5参照)は、光学素子に近接する第1の光チャネルの一端、及び第1チャネルと直交して形成される第2の光チャネルと交差し且つ連通する第1の光チャネルの他端を備える。第2の光チャネルは、顕微鏡レンズを搭載するタレット又は「転換器」の基部内に形成される。転換器は、NixonTE200シリーズの顕微鏡に嵌まるようになっている。第2の光チャネルは、やはり第2の光チャネルと直交する第3の光チャネルに連通する。第3の光チャネルは、転換器の上面から転換器の基部を通って横切り、対物レンズである集束レンズ409に平行である。集束レンズ409は上部及び底部を有し、後部開口を形成する。第3の光チャネルにおいて第2の光チャネルと集束レンズの後部開口との間には、ダイクロイックミラービームスプリッタ408が配置される。
【0161】
光トラップを形成する光トラップシステム内の他の構成部品は、位相パターニング光学素子401から発せられるビームレットを第1の光チャネルを介して反射する第1のミラー、第1の光チャネル内に設置され、第1のミラーによって反射したビームレットを受けるように配置される第1組の転送光学素子406、第1の光チャネル内に設置され、第1組の転送レンズを通過するビームレットを受けるように位置合わせされる第2組の転送光学素子407、及び第1の光チャネルと第2の光チャネルの交差点に配置され、第2組の転送光学素子及び第3の光チャネルを通過するビームレットを反射するように位置合わせされる第2のミラー408を備える。
【0162】
光トラップを生成するために、レーザビームをレーザ507(
図5参照)からコリメータ及び光ファイバー末端508を通して導き、回折光学素子509の動的表面から反射させる。光ファイバーのコリメータ末端から出る光ビームは、回折光学素子の動的表面により、複数のビームレットに回折される。各ビームレットの数、タイプ及び方向は、動的表面媒体に符号化されるホログラムを変更することによって、制御及び変更され得る。ビームレットはその後、第1のミラーから反射されて第1組の転送光学素子を通って第1の光チャネルを進み第2組の転送光学素子を通って第2のミラーへと移送され、ダイクロイックミラー509で対物レンズ504の後部開口まで導かれ、対物レンズ504を通って収束される。したがって、光トラップを形成するのに必要不可欠な光勾配条件を得る。画像を形成するために、ダイクロイックミラー509を通って分割される光の部分は、光データストリームを形成する第3の光チャネルの下部を通過する(
図4参照)。
【0163】
生体物質の試料の分光は、分光又は偏光後方散乱のいずれかに好適な画像照明源503によって達成されてもよく、前者は化学的同一性を査定するのに有用であり、後者は核の大きさ等の内部構造の寸法を測定するのに好適である。このような分光法を使用することで、いくつかの実施形態において、細胞を調べる。コンピュータ510を使用して、スペクトルデータを解析し、例えば、X若しくはY染色体、又は癌の疑いのある細胞型、前癌状態の細胞型及び/若しくは非癌細胞型のいずれかを有する細胞を同定するか、又は様々なタイプの血液細胞を同定してもよい。コンピュータプログラムは次に、この情報を適用して、光トラップが選択される細胞型を包含するようにする。包含された細胞はその後、その包含された細胞と化学物質との反応又は結合に基づき同定され得る。
【0164】
本発明の方法及びシステムは、各光トラップの動き及び内容をトラッキングする半自動化又は自動化プロセスとして役立つ。動きは、ビデオカメラ511、スペクトル又は光データストリームを介してモニターされ、細胞の選択及び光トラップの生成を制御するコンピュータプログラムを提供する。
【0165】
他の実施形態において、細胞の動きは、位相パターニング光学素子を符号化することで生じる、各光トラップの所定の動きに基づいてトラッキングされる。さらに、いくつかの実施形態において、コンピュータプログラムを使用して、各光トラップに包含されるそれぞれの細胞の記録をとる。
【0166】
光データストリームをそれから、検分し、ビデオ信号に変換し、モニターし、又はオペレータの目視検査によって、分光分析的に、及び/又はビデオモニタリングにより解析してもよい。光データストリームを光検出器で処理して強度をモニターするか、又は任意の好適な機器で処理して光データストリームをコンピュータによる使用に適応するデジタルデータストリームに変換してもよい。
【0167】
SLM(空間光変調器)を採用しないアプローチでは、動きは、対象物を第1組の光トラップから第2組、第3組及びそれから第4組等の光トラップ等に送ることで達成される。対象物を第1の位置から第2の位置に移動させるために、静的位相パターニング光学素子をスピンドルを中心として回転させて、対応する第2組の所定位置で第2組の光トラップを生成する第2の領域にレーザビームを整列させる。第1の位置に対して適宜近接する第2組の光トラップを構成することにより、プローブは、第1組の光トラップから第2組の光トラップへと通過し得る。順序は、位相パターニング光学素子の回転により、例えば、プローブを第2組の所定位置から第3組の所定位置へ、第3組の所定位置から第4組の所定位置へ、且つ第4組の所定位置から通過させ続けて、所望の位置に対応する適宜の領域を整列させる。1組の光トラップの完了と次の光トラップの生成との間の時間間隔は、プローブが次の組の光トラップに送られてから、流れ去ることを確実にする継続時間である。
【0168】
広い近傍から狭い近傍への対象物のねじれ形動きにおいて、細胞のねじれ形動きも同様に起こる。しかしながら、対象物は、第1組の光トラップから第2組の光トラップへ通過し、第2の位置及び続く位置へと移動するので、トラップの組を2つの対象物の近傍に同時にあまりにも近接させずに、トラップのねじれ形配列が対象物を密集させて一箇所に集めさせる。トラップの組を2つの対象物の近傍に同時にあまりにも近接させると、対象物は不適切な光トラップによって包含されることがある。
【0169】
対象物、すなわち細胞がトラップと相互作用すれば、スペクトル方法を用いて細胞を検査することができる。陽性結果を示したこれらの細胞(すなわち、標識物質と反応又は結合した細胞)のスペクトルを、非弾性分光又は偏光後方散乱に好適なイメージング照明を用いて得てもよい。コンピュータはスペクトルデータを解析して、所望のターゲットを同定し、位相パターニング光学素子がそれらの所望のターゲットを分離するようにしてもよい。アッセイの完了時に、コンピュータ及び/又はオペレータにより廃棄する細胞及び回収する細胞の選択が行われ得る。
【0170】
光蠕動(peristalsis)(
図13参照)は、マイクロ流体チャネル1301においてトラップ1300の平行線を採用する既存のプロセスであり、マイクロ流体チャネル1301は、トラップの第1のラインがオフになると、ライン間の間隔により、1つのラインにトラップされている粒子1302を他のラインにおけるトラップに引き込むように配置される。光蠕動は、(用途に関連して後述されるように)蛍光標識物質の代替物として、且つそれと併用して使用されてもよい。プロセスは、トラップのラインの配置によって指定される所望の方向に粒子を移動させるように時間を計ったトラップのラインの消滅時間を計ることで動作する。粒子の一方の側又は他方の側におけるトラップのラインのオン又はオフを選択することにより、粒子を前方又は後方に移動させ得る。したがって、多数のトラップを採用することにより、多数の粒子を所定方向に一斉に移動させ得る。これより、トラップに引き付けられる粒子を所定の領域に移動させて、及び、必要であれば、そこで回収することができる。このプロセスはまた、装置100、200又は300内で利用される様々な流体の流れに利用し得る。
【0171】
同様に、所定方向に向かうラインのトラップ間の間隔を徐々に減らすこと及び/又はトラップのラインの湾曲を変更することによって、粒子を集束パターンに掃引してそれらを凝縮させ得る。このようなパターンを逆転させると、粒子は分散することになる。
【0172】
トラップのラインの間の間隔が、比較的大きいと粒子の動きを速くし、また比較的小さいとそれらを遅くする。同様に、選択されるトラップ又はラインの強度、したがってそれらの粒子に対する効果を変化させることもまた採用され得る。流れを収束させ又は分散させることにより、粒子を結合又は分離させることができる。さらに光蠕動は、粘性抵抗又は電界の差動効果と組み合わされて、例えば、物質を細かく分離する、複雑且つ特定の組のパラメータ値を得ることができる。トラップ力及び他の力を拮抗させることで、この2つの力の均衡点により、粒子がトラップ力で移動するのか他の力で移動するのかが決まる。
【0173】
本発明に従う1つの実施形態において、光蠕動を、一連の位相パターンを繰り返すホログラフィックシステムで実施して、対応する一連のホログラフィック光トラッピングパターンを実施してもよい。このようなパターンを、プリズム面に搭載される反射型回折光学素子の表面起伏に符号化して、各パターンをモータによって所定の場所に回転させてもよい。同様に、透過型回折光学素子をディスクの周囲に配置して、パターンが循環するよう回転させてもよい。また、フィルム上に符号化される切換可能な位相格子及び位相ホログラムを使用してもよい。
【0174】
外部付勢力(流体の流れ等)によって直線アレイを超えて駆動される粒子については、トラップ力が外部駆動力よりかなり大きい場合、粒子はトラップされる。付勢力が大きい場合、粒子の流れはアレイを超える。これらの極端な状態の間では、付勢力は粒子の種々の分画について様々な程度でトラップ力を上回り、アレイの主軸方向に沿って粒子をトラップからトラップへとホップさせる。アレイを45°回転させた場合、ゼロ正味偏向が観測される。これは、(1)ポジティブ及びネガティブ偏位が同じ確率で生じるので、又は(2)粒子は[11]方向に固定され、対角線方向にアレイを飛び越えるためである。
【0175】
アレイによって大きい影響を与えられる粒子は、付勢力によってより大きい影響を与えられる粒子よりも、大きい角度に偏向し得る。粒子に与えられる光勾配力は、おおよそa
3(a=半径)として変化する。粒子へのストークス抵抗は、「a」として変化する。したがって、大きい粒子はトラップアレイによって過度に影響を受け、より小さい粒子は、小さい偏向となる。最適な偏角付近にアレイを配向すること、及び強度を調整することにより、最も大きい粒子をホッピング状態とする。したがって、小さい粒子よりも偏向を大きくする。別個に偏向された粒子を回収するか、又は第1のアレイの下流にあるさらなるアレイによってさらに分画してもよい。
【0176】
分画用のいくつかの従来技術は、付与される力の方向への分離を達成する。しかしながら、このような技術は、連続的にではなく試料の回分に対して動作する。
【0177】
微小分画用の他の従来技術は、障害又は障壁の2次元格子から成る微小加工分子篩を採用する。例えば、障壁の非対称配置は、分子篩を通過する粒子のブラウン運動を修正し、粒子が粒子の拡散係数に依存する経路を進むようにする。しかしながら、微小加工格子の使用は目詰まりが生じ、粒子サイズ及びタイプに合わせて調節できない。
【0178】
図10において、本発明による、粒子を選別する例が例示される。例示される実施例は横偏向を例示するが、光蠕動が同一のシステム内で得られ得る。ビデオ画像の表示は、物質の光に基づく分離を示し、この場合、粒径に基づいて対象物を分離するよう調整される。左上のチャネルにおける流れは、1μm、2.25μm及び4.5μmの粒子を含み、別の流れが左下から入る。重ねられた線はそれぞれ、システムレーザ出力がオフであるときの各チャネルの流れを示す。レーザ出力をオンにすると、相互作用領域(重ねられた緑のボックスで示される)における光は、上部の流れから4.5μmの粒子を摘出し、それらを重ねられた白い経路で示される右下のチャネルに送る。
【0179】
6. 血液細胞の選別における用途
a.背景
本発明に従う1つの用途において、光トラッピング技術を用いた高分解能で高スループットの細胞ソーターが実施される。細胞選別のための新しい基準としてこの技術を実施する必要性は、従来のフローサイトメータ、多くの選別課題に必要不可欠な細胞の特徴を高分解能で測定できないことにより明示されている。
【0180】
b.ホログラフィック光トラップを用いた選別
本発明の高分解能で高スループットな細胞選別を実施する方法は、以下の要素、すなわち、マイクロ流体の開発、光トラップシステムの開発(集束システム用のトラップピング要素、及び分離システム用のトラップ要素)、高分解能蛍光発光測定、システム制御(ホログラム計算を含む)、及び機械設計を有する。
【0181】
第1の要素は、注入試料を運ぶ1つの流体注入チャネルと、注入チャネルから分離された細胞を運ぶ2つの排出チャネルとを有するフローセルである。第2の要素は、「集束」機能(この「集束機能」は、従来のフローサイトメータにおける液滴流を形成するノズルに相当する)を行うトラップの組である。第3の要素は検出システムであり、最後に第4の要素は選別システムである。
図11A及び
図11Bは、これらの4つの要素の関係を示す。同様の機能は、装置100、200又は300で利用される流体の流れで実施され得る。
【0182】
本発明のこの提案された実施形態が高スループットの達成を可能とする必要不可欠な特徴は、平行のラインで同時に、且つ互いに接近して物質を流す特有の能力である。この初期実施態様に関して、10個の注入ライン1100がそれぞれ10ミクロンだけ分離しているフローシステムが作製される。これにより、注入槽からの流れに対する全幅が110ミクロンに設定される。排出チャネル1102、1103はそれぞれ、注入チャネル301と同様の110ミクロン幅であり、
図11A及び
図11Bに示されるように、注入チャネル301に平行に流れる。「排出チャネル」1102、1103に導入されるのは、注入チャネル1101で維持されるのと同じ流速でこれらのチャネルへ供給される緩衝溶液である。3つのこれらのチャネル1101、1102、1103は全て、目的の流れ範囲を覆う層流を維持するように設計される。また、装置100、200又は300に関して上記したような選別段階を利用してもよい。特定の細胞が注入チャネル1101から排出チャネル1102、1103の一方に送られる選別領域では、3つの流れは全て、隣接しているが、それらの間の機械分離をもたない。層流は、特定の外部力を導入して任意の物質を1つの流れチャネルから別のチャネルへ移動させない限り、それぞれの流れ中にその物質を維持する。
【0183】
集束トラップ1105は注入細胞1106に作用し、それらは共に、流れの明確なラインを進むため、注入細胞1106は、オペレータにより設定される最小距離1106で互いに分離される。チャネル1101、1102、1103における流速は、この最小距離1106によって、分離機能を実行している機器の「更新」速度によって、且つ所望の全細胞処理速度によって、設定される。
【0184】
集束システムは、静的ホログラムの組によって確立される低強度トラップ1105のパターンから成る。この静的ホログラムの組は回転ホイールに備え付けられており、パターンは回転パターンの関数として変化する。ほとんどの下流集束トラップは、固定強度及び固定位置を有しており、細胞の流れのライン間での分離を維持するだけに役立つ。上流トラップ1105は、強度と位置とを共に時間変化させ、塊状細胞における流れを乱し、個別の、すなわち塊状ではない細胞を通過させるように作用することが可能である。
【0185】
選別判定を行う際の基準となる測定は、集束トラップ1105の下流領域において行われるか、又は集束システムをさらに超えた領域において行わ得る。この初期システムに関して、測定は高分解能蛍光検出から成るであろう。しかしながら、将来、他の能動的選別基準(例えば、散乱測定)を実施してもよく、また、受動的技法(例えば、上に概略を説明したような、光学検出を用いた技法)を採用してもよい。
【0186】
機器の最終要素は、選別基準を利用して細胞を排出チャネル1102、1103のうちの1つに移すか、又はそれらを注入チャネル1101の流れに留める、分離システムである。この要素の重要なパラメータは、分離を引き起こす動的トラップ1105のアレイを実施するのに使用される高開口数対物レンズ1104の視野である。この視野の幅は、個別のチャネルの幅と同じ110ミクロンである。しかしながら、長さは、流量、チャネルの深さ、及びこれらのトラップを制御するのに使用される光学機器の更新速度に依存する。
【0187】
現在、本発明に従う1つの実施形態は、光トラッピングシステムを駆動するのに非常に有効な位相マスクを作製する空間光変調器を含む。これらの機器は30Hz以上の更新速度を有する。10ミクロンの推定されるチャネルの深さを用い、且つ精子細胞は1ミクロン単位で移動されるべきであることを仮定すると、空間光変調器の10回の更新を使用して、細胞を注入チャネル1101の中心から、排出チャネル1102又は1103のいずれかの中心に移動させる。30Hzの更新値を用いると、これら10単位の実施は1/3秒で起こるであろう。3mm/秒の流速では、これらの10単位は流れの方向において1mmの長さで実施される。したがって、分離成分に関する対物レンズ1104は、110ミクロン×1,000ミクロンの作用領域を有するであろう。本計画(project)の重要な開発分野は、このレンズアセンブリの設計である。レンズの設計におけるトレードオフは通常、視野と開口数との間で行われる。すなわち、特定の複雑性を有するレンズアセンブリに関して、これらの領域の1つの性能の著しい向上は、他の領域の性能の低下を伴う。集積回路電子工学の高分解能リソグラフィック製造等の分野において使用される高分解能レンズが極めて複雑であるのはこのためである。しかし、本発明はこれらのレンズアセンブリの完全な性能レベルを必要としない。
【0188】
7. 広視野渦ピンセットの使用に関する開示
広視野でのピンセットの使用は、比較的小さい開口数を有する顕微鏡対物レンズを伴なう。軸方向で対象物を光トラップする能力は、軸方向において最も大きな勾配を有するであろう様式で光ビームを集束させることに頼っている。これは、光錐が可能な限り最も広い半径を伴なって形成されることを示す。光錐の半径は、対物レンズの開口数によって直接的に決定され、すなわち、高い開口数は大きい光錐半径を意味する。このことは、広視野が必要であることと相反する。これは従来、軸方向における広視野でのピンセットの使用を難しいものにしてきた。軸方向でのピンセットの使用における難しさに対する主な寄与の1つは、集束された光ビームの放射圧である。特に密度において周囲の媒体とよく適合する粒子、例えばポリスチレン微粒子の場合、放射圧は粒子をトラップの外へ吹き飛ばし得る。低開口数を有する対物レンズを用いると、軸方向における十分なピンセット力により放射圧を克服することは難しい。しかし、ホログラフィック光トラップは、光ビームの放射圧を大きく低減する非標準モードの光を形成する能力を有する。例えば渦トラップは、光の様々な位相がトラップの中心において相殺されるので、暗い中心を有する。この暗い中心は、ビームの中心を進んでいく光線の大部分がもはや存在しないことを意味する。これがまさに、光の放射圧の大部分を保持するビームであり、したがって、これらのビームの除去は、軸方向トラッピングの困難を大きく緩和する。他のモード、例えばドーナツ型モードは、同じ利点を有する。
【0189】
対象物又は細胞の操作(押し込み、操縦、選別)は包括的に、利用可能なビームを複数有することでより安全になる。インサーキットテスターのように、複数のピンセットは、より少ない出力が細胞の任意の特定箇所に導入されることを確実にする。これは、ホットスポットをなくし、且つ損傷の危険性を減少させる。任意の崩壊性二光子プロセスは、その吸収がレーザ出力の二乗に対して比例するので、非常に有益である。第2のピンセットを加えるだけで、特定箇所における二光子吸収を4分の1に減少させる。
【0190】
最終的に、単一の細胞だけの操作でも、ホログラフィック光トラッピングを利用することにより大きく増強される。単一の細胞は、細胞を周辺の片側に沿って持ち上げる一列のピンセットにより操作され得る。結果として得られる回転は、細胞の360°視像を可能にする。生体試料を見ることに対する利点に加えて、試料を安定に配向させる能力も存在する。これは、試料の配向に強く依存する散乱実験等の研究に対する明確な利益を有する。
【0191】
8. スピニングディスクに基づく細胞ソーター
レーザを使用して多数の部位に素早くアクセスする技術は、スピニングレーザディスク、CDプレーヤー又はDVDプレーヤーの形態ですでに存在する。これらの機器は、ディスクの回転運動とレーザの半径方向の運動とを組み合わせて、部位に途方もなく早い速度でアクセスする。例えば、典型的なDVDプレーヤーは、約2時間で、ディスク上のおよそ40億個の別個の「ビット」にアクセスし得る。このスピニングディスクアプローチと光トラッピングとの組み合わせ(
図12を参照)は、類似した速度で細胞にアクセスすることを可能にし、ホログラフィック光トラッピングはこれらの速度を100倍またはそれ以上に増加させる。
【0192】
図12は、第2及び第5の関連出願の発明に従う1つの実施形態による、スピニングディスクに基づく細胞ソーターを説明する。
図12に示されるように、対象物又は細胞は試料取込口(intake)1200で導入され、適切な試料送達システム1201を使用して、細胞は、モータ制御により回転している試料分布ディスク1202に供給される。制御及び分析システム1204と結合している画像及びトラッピングシステム1203が細胞を選別し、細胞は試料チャンバ1205及び1206内に回収される。
【0193】
細胞をディスクの表面に分布させる多くの機構が存在する。独立した細胞を収容する流体チャンバ、細胞を固定化するゲル、細胞を結合する粘着性若しくはロウ質の表面、又は細胞を凍結させて固体塊にすることさえも全て、採用され得る方法である。一旦細胞が、その相対位置を維持するように位置づけられたら、細胞を適切に測定してよい。次いで、光トラッピングを使用して、所望の又は不所望のいずれかの細胞を表面又は容量から遊離し得る。2つより多くの群に選別することが望ましい場合、各群が1回のパスで放出されてもよく、複数回のパスが遂行されてもよい。
【0194】
9. 融解可能な基体を使用する細胞及び非生体物質の選別
蛍光活性化細胞選別(FACS)等の技術は、十分に確立されているにもかかわらず、順次処理方法であるという事実が欠点になっている。生物学における標識色素の偏在性のため、これらの色素に基づいた選別は可能である。選別されるべき群がすでに先天的にこのような吸収差を示していないと仮定すると、これらの色素はしばしば、染色された検体と未染色の検体との間で或る波長又は波長範囲の吸収に差を生じる。次いで、ホログラフィック光トラップを使用して、検体を加熱し、且つ上昇した検体の温度により融解する基体中に操作して入れる。すると、包埋された検体は、バルク温度の増加とともに後に放出され得る。さらに、より迅速な、さらに並行的な処理方法が可能であり、これは細胞を広帯域の高出力光源により照明して、数々の検体全体を同時に処理する。同じ方法セットを吸収スペクトルが異なる非生体試料に適用してもよく、選択的に非生体試料に適用させてもよい。
【0195】
10. ゲルベースの選別
ホログラフィック光レーザトラップは、三次元で対象物にアクセスし且つ対象物を動かすことができるという点で、対象物の操作に対する大きな利点を解釈する。生物学的選別用途がより高度になるに従って、より多くの数の検体が、しばしば短時間で選別されなくてはならなくなった。ホログラフィック光トラップの三次元アクセスは、これらの選別用途が現実化され得ることを意味する。連続的に又は二次元基体上で選別することが困難又は不可能であったであろう、多数の細胞及び生物学的な目的とする他の検体が有効的に選別され得る。
【0196】
このような三次元選別の1つの実施の形態(implementation)は、可逆性ゲル化プロセスに頼っている。細胞はネットワーク内でゲル化され、次いで、所望の細胞又は不所望の細胞のいずれかがホログラフィック光トラップを使用してゲルから抽出される。トラップからの熱は、ゲルを融解し、退出経路(exit pathway)を提供するのに使用され得る。
【0197】
あるいは、ホログラフィック光レーザトラップで、何らかの判定基準に基づいて細胞を選択的に殺す。次いでゲル全体を溶解し、生細胞を死細胞から分離する。ただ殺す代わりに、より破壊的な熱爆発を発生させてもよく、これはより小さい成分に細胞を分解し、次いで大きさに基づいた選別を行い、特定の細胞を再び分類(grouping)又は結合してもよい。
【0198】
11. 生物学的検体の殺傷
多種多様な用途が、生物学的検体を選択的に殺す能力から利益を得る。血液から病原体を除去することは、このような用途の一つである。細胞選別は別の用途である。細胞を同定し、1つ又は複数の細胞郡を殺し、次いで死細胞を除去する。殺傷は、レーザ自体からの光エネルギーにより実行され、この機能を実行するのに光トラップを必ずしも必要としない。
【0199】
基本的に、レーザビームで、細胞を加熱するか、細胞の周囲の媒体を加熱して、細胞を傷つけ且つ殺す。ホログラフィック光トラップは、それらの汎用性及び三次元制御のため、細胞の選択的な大規模同時殺傷を可能にする。
【0200】
12. 実施例
BioRyx200システム(アリークス社(シカゴ、イリノイ州))を使用して、全血から血小板をピンセットでつまみ得る。血小板は低レーザ出力(0.2W)で532nmに関してピンセットでつままれ、三次元で容易に移動される。0.8Wで十分ではあるが、血小板を自動化トラップを通して移送するためには若干より高い出力を使用することが好ましい。抗凝固剤が存在しても、血小板にはフィブリンの短い糸がまだ付着している。長時間にわたって、血小板はカバースリップと不可逆的に結合し得る。血小板はおおよそ2〜3マイクロメータの大きさであり、これらは532nmで2〜3ミクロンのシリカとほぼ同様にピンセットでつままれる。RBCが血小板と同じ観察フレーム(viewing frame)内にある場合、RBCがトラップから十分距離が離れていたとしても、RBCは焦点外の光錐に反発する傾向がある。しかし、赤血球がレーザと接触すると、媒体の浸透圧及びレーザ出力に応じて、レーザは赤血球を破裂させ、しばしばそれらを爆発させる。種々の種類のWBCは、レーザピンセットに対して若干異なる応答を示す。包括的に、WBCはレーザピンセットから若干反発する。光トラップに対するこのような種々の応答は、トラッピングビームに対する細胞の反応により細胞の種類を分離する基礎を提供する。例えば、血小板は操縦レーザビームを用いてトラップ且つ移動されるが、RBC及び特定のWBCは反発し、さらに他のWBCは中程度にトラップ且つ移動される。
【0201】
上記の技術を組み合わせることにより、血液細胞成分を20分間に10
11個の血小板の速度で分離し得ることが計算され得る。より早い選別速度を、これらの技術を装置100、200又は300の層流選別とさらに組み合わせることにより達成してもよい。
【0202】
上記のさまざまな技術を使用して、多種多様な物質を選別し得る。精子を選別するためには、例えば、選択流中に移動又は泳いでいく運動能力のある精子、又は廃棄流中に沈降する運動能力のない若しくは生存不可能な精子等により、精子を運動性又は生存度に基づいて選別してよい。また精子は、それぞれ異なる平均運動性を有する複数チャネル中に選別されてもよい。また、精子をさまざまな病原体又は精液混合物中の他の不所望の物質から単離及び分離してもよい。上記した分離を、洗浄及び/又は冷却プロセスのために使用してもよい。さらに、運動能力のある又は生存可能な精子の収率は、例えばさまざまな流れの温度と、誘引物質及び忌避物質を添加すること等により流れ中の化学物質含有量とを操作することにより改善され得る。
【0203】
図25は、本発明のさまざまな実施形態を用いた、ウシ精子の生存度又は運動性の選別の結果を示し、高い運動性及び生存度を有する試料が、より低い生存度及び運動性を有する試料から生じた。凍結精子を解凍し、生理食塩水中ですすぎ、グリセリン、試験卵黄及び他の物質を除去して、第2の流れ中で使用される緩衝溶液又は生理食塩水、PEG及びBSAと適合する密度を設けた。あるいは、グリセリンを緩衝液流に添加してもよい。)装置200等のソーター中で0.01〜0.1ml/分の流速(最も一般的には0.025ml/分が使用される)を使用した。5〜60%又はそれ以上の生存度を有するおよそ500万細胞/mlの精子濃縮物を、注入流溶液として使用した。選別に続いて、結果は90〜100%の生存度及び運動性に達すると予測されたが、選択された流れは最高80%の生存度を有することが分かった。
【0204】
さまざまな他のソーター構成を利用してもよく、改善された結果は、層流に基づいた選別と併せたレーザ操縦の使用を介しても生じ得る。例えば、注入流に対する緩衝液流の速度を増加すると、分離領域における緩衝液チャネルの幅が増大し、精子が緩衝液流に入るために移動しなくてはならない距離が低減し(且つ、緩衝液流を出るための距離が増大し)、緩衝液流(選択流として)中の収率が増加する。また廃液チャネルの流速を増加すると、収率が改善され、注入チャネルの近くの緩衝液層中のあらゆる死精子を、廃液チャネル中に再導入させる。
【0205】
上記の選別はまた、勾配を使用して選別効率を増強してもよく、種々の特性を有する種々の流れが、例えば温度勾配、速度勾配、粘度勾配及び拡散勾配等の勾配を作製する。
【0206】
選別に加えて、本発明のさまざまな実施形態はまた、粒子又は細胞の濃度を変化させるため、例えば選択流中の粒子の濃度を増加させること、又は注入緩衝溶液を介して濃度を希釈すること等に利用してもよい。また、拡散係数を操作して、さまざまな分離流中の対象物の拡散性(又は運動性)を変更してもよい。例えば温度、化学濃度、流体粘度、流体密度、塩濃度、界面活性剤の使用等を変更することを介して、例えば対象物の流体力学半径又は表面引力を変更する。
【0207】
結果として、本発明によると、独立して操作されることが可能な複数のホログラフィック光トラップを装置100、200又は300と関連して使用して、血液細胞及び他の血液成分等の成分又は粒子を、1つの流れから別の流れへ、分離段階の一部として、操作することができる。例えば、流れ1中の目的の成分を、ホログラフィック光トラップにより、同定し且つ流れ2中に移動させ、それにより流れ1中の他の成分から分離する。
【0208】
図6は、本発明の方法実施形態を説明するフローダイアグラムであり、有用な概要を提供する。開始工程600から始めて、本方法は、複数の血液成分等の複数の成分を有する第1の流れを提供する(工程605)。第2の流れを提供し(工程610)、第1の流れを第2の流れと接触させ、それにより第1の分離領域を提供する(工程615)。複数の成分の第1の成分は、第2の流れ中に差別沈降され(工程620)、一方で同時に、複数の成分の第2の成分は第1の流れ中に留める(工程625)。第1の成分を有する第2の流れは、第2の成分を有する第1の流れから差別除去される(工程630)。さらなる分離(又は段階)が行われない場合(工程635)、本方法は終結し得る(戻り工程680)。
【0209】
さらなる分離が行われる場合(工程635)、本方法は工程640に進み、第3の流れが提供される。第1の流れを第3の流れと接触させ、それにより第2の分離領域を提供する(工程645)。ホログラフィック操作が第2のさらなる分離において使用される場合(工程650)、本方法は工程655に進み、複数のホログラフィックトラップが、通常は光波長を使用して生成される。このホログラフィックトラップを使用して、複数の成分の第2の成分を第3の流れ中に別個に移動させる(工程660)。ホログラフィック操作が第2のさらなる分離において使用されない場合(工程650)、本方法は工程665に進み、複数の成分の第2の成分を第3の流れ中に差別沈降させる。工程660又は工程665のどちらかに続いて、複数の成分の第3の成分を第1の流れ中に同時に留める(工程670)。次いで、第2の成分を有する第3の流れを、第3の成分を有する第1の流れから差別除去し(工程675)、本方法は終結してもよい(戻り工程680)。
図6において別々に説明されていないが、本方法は、第3、第4、第5等のさらなる分離段階に関して継続されてもよいことが理解されるべきである。
【0210】
本発明のさらなる実施形態を
図14〜
図24に図示する。
図14及び
図15は、装置100、200又は300のさまざまな選別段階を採用する選別システム1400及び1500(流体の流れのための貯蔵槽及び蠕動ポンプの使用を含む)を説明する。
図16は高アルペクト比フラットソーター1600の側面図であり、
図17はその平面図である。このような高アスペクト比ソーターを使用して、比較的大きな層流分離面をさまざまな流れの間に提供し、これらの流れ間に、成分分離のためのより広い接触区域を提供してもよい。
【0211】
図18は、複数のフラットソーター(ソーター1600等として1つが図示される)を有する3次元選別機器の斜視図である。
図19はマルチチャネルソーター1700の平面図である。
図20は狭い廃棄流領域1801を有するソーター1800の平面図である。
図21はさまざまなチャネルのための種々の流速を使用するソーター1900の平面図である。
図22は複数の選択チャネル2001を有するソーター2000の平面図である。
図23は収縮選別領域2105を有するソーター2100の平面図である。
【0212】
図24Aは、層1における注入チャネル(2210)、複数の選別段階(2200)を提供する層2及び排出チャネル(2230)を提供する層3を有する多層層流ソーター2200の側面図であり、
図24Bはその平面図である。また、これらのさまざまな選別段階を、無数に連続して、且つ並列接続で接続させてもよい。このような多段階ソーターの無数の他の変形が、当業者には容易に明らかであろう。
【0213】
また、チャネルの他の形状及び構成を使用してもよい。例えば、蛇行状、すなわち「ヘビ」様のチャネル構成を使用して、小さな区域内又は容積内により長い相互作用領域を提供してもよい。また、流れ制御ポストを分離領域内で使用して、チャネル内の流体の流れを制御してもよい。例えば、垂直なポストは流体の流れに対する障害物を提供し、チャネルの大きさ及びレイノルズ数を有効的に低減し、且つ層流を改善する。
【0214】
また、要約すると、且つ一例として、複数の成分の第1の成分は、複数の赤血球及び複数の白血球であってもよく、一方第2の成分は複数の血小板である。第2の分離において、複数の白血球を、ホログラフィック(光)トラッピング等の技術を使用して、複数の赤血球からホログラフィック的に分離してもよい。ホログラフィックトラッピングはまた、複数の混入物を第1の流れからホログラフィック的に除去するのに使用してもよく、又は、生物学的残屑を第1の流れからホログラフィック的に分離するのに使用してもよい。さまざまな実施形態において、第1の流れは、ドナーからの全血及び抗凝固剤を実質的に含んでもよく、第2の流れはドナーからの血漿を実質的に含み得る。さまざまな沈降工程は、沈降速度法又は沈降平衡法であり得る。さまざまな流れは、実質的に非乱流であり、実質的に層流でもあり得る。
【0215】
第1及び第2の分離領域はそれぞれ、流れの方向に対して実質的に平行な所定の長さ、及び流れの方向に対して実質的に直交する所定の深さを有し、この所定の長さ及び所定の深さは、第1の成分の第1の沈降速度から、第2の成分の第2の沈降速度から、第1の流れの第1の流速から、及び第2の流れの第2の流速から決定されている。第1の流れ及び第2の流れは実質的に同じ流速を有し得る。あるいは、第1の流れは第1の流速を有し、第2の流れは第2の流速を有してもよく、ここで第2の流速は第1の流速と比較して速い。
【0216】
また、要約すると、本発明は、液体混合物を運動能力のない構成成分に分離する装置をさらに提供し、本装置は、(1)第1の流れのための第1の注入口(120又は315)及び第2の流れのための第2の注入口(120又は320)を有する第1の選別チャネル(110又は325)であって、第1の選別チャネルは、第1の流れのための第1の排出口(130又は
図3の連続チャネル)及び第2の流れのための第2の排出口130(又は330)をさらに有し、第1の選別チャネルは、第1の流れ中の複数の成分の第1の流れ中の第1の成分を、第2の流れ中に沈降させ、それにより富化した第2の流れ及び枯渇した第1の流れを形成し、一方で同時に、複数の成分の第2の成分を第1の流れ中に留めるようになっている、第1の選別チャネルと、(2)第1の流れのための第1の排出口(
図3の連続チャネル)と結合した第1の光入射口を有し、且つ第1の光出射口(350)を有する第2の光透過性選別チャネル(110又は340)であって、第3の流れのための第2の光入射口(335)及び第3の流れ(345)のための第2の光出射口をさらに有する、第2の光透過性選別チャネルと、(3)第2の光透過性選別チャネルと結合したホログラフィック光トラップシステム(400、500)であって、第2の成分を第1の流れから第2の成分を第3の流れ中へ選択し、且つ移動させるホログラフィック光トラップを生成するようになっている、ホログラフィック光トラップシステムとを含む。
【0217】
液体中の複数の成分を分離する別の装置又はシステムは、第1の流れのための第1の注入口及び第2の流れのための第2の注入口を有する光透過性選別チャネル100、200又は300であって、第1の流れのための第1の排出口及び第2の流れのための第2の排出口をさらに有する、光透過性選別チャネルと、光透過性選別チャネルと結合したホログラフィック光トラップシステムであって、ホログラフィック光トラップシステム500は、第1の流れ中の複数の成分の第1の流れ中の第1の成分を選択し、且つ第1の成分を第2の流れ中に動かし、それにより富化した第2の流れ及び枯渇した第1の流れを形成し、一方で同時に、複数の成分の第2の成分を第1の流れ中に留める、ホログラフィック光トラップを生成するようになっているホログラフィック光トラップシステムとを備える。
【0218】
最後に、別の方法実施形態は、複数の細胞を分離することを提供し、本方法は、複数の細胞を有する第1の流れを提供すること、第2の流れを提供すること、第1の流れを第2の流れと接触させることであって、それにより第1の分離領域を提供する、接触させること、及び、複数の細胞の第1の細胞を第2の流れ中に差別沈降させ、一方で同時に、複数の細胞の第2の細胞を第1の流れ中に留めることを含む。また、この方法は通常、第1の細胞を有する第2の流れを、第2の細胞を有する第1の流れから差別除去することも含む。この方法はまた、第3の流れを提供すること、第1の流れを第3の流れと接触させることであって、それにより第2の分離領域を提供する、接触させること、及び、複数の細胞の第2の細胞を、第3の流れ中に差別沈降させ、一方で同時に、複数の細胞の第3の細胞を第1の流れ中に留める、差別沈降させることも提供する。さらに、複数の第2の細胞は、第1の流れからホログラフィック的に分離され得、複数の混入物又は生物学的残屑は第1の流れからホログラフィック的に除去され得る。
【0219】
上記の考察は血液成分を選別して種々の血液分画を作製することに焦点を当ててきたが、本発明の装置、方法及びシステムは、非運動性の、液体流内で沈降すること若しくはクリーム状になることが可能な、又は光学的に操作することが可能な、他の種類の粒子状、生物学的又は細胞性の物質に拡大されてよい。例えば、本発明の手法を使用して、非運動性細胞を第1の流れから第2の流れ中に沈降させることにより、運動能力のない又は生存不可能な精子細胞を生存可能な精子細胞から分離することができる。他の種類の細胞分離もまた実行され、島細胞を他の種類の膵臓細胞から分離する、又はそうでなければ種々の大きさの島細胞クラスタを流れ分離若しくは光ピンセットの使用(トラッピング)のいずれか又は両方を介して分離する等してよい。ウイルス、タンパク質及び種々の沈降速度を有する他の巨大分子もまた、本発明を用いて分離され得る。さまざまな分離段階とともに使用されるホログラフィック光トラッピングはまた、これらの他の種類の細胞又は粒子の分離において特に有用であり得る。
【0220】
以上のことから、本発明の新規な構想の精神及び範囲を逸脱することなく数々の変形及び変更が行われ得ることが観察されるであろう。本明細書中に説明された具体的な方法及び装置に関する制限は意図されないか、又は結論されるべきではないことが理解されるべきである。当然ながら、このような変更の全ては、添付の特許請求の範囲により包含され、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。