(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592418
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】熱エネルギー回収装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
F01D 17/20 20060101AFI20191007BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20191007BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20191007BHJP
F01K 27/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
F01D17/20 F
F01D17/00 P
F01D17/00 Q
F01K23/10 Z
F01K27/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207929(P2016-207929)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-71356(P2018-71356A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松田 治幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−079881(JP,A)
【文献】
特開昭50−144813(JP,A)
【文献】
特開昭58−122308(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0132704(US,A1)
【文献】
特開2016−014329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00
F01D 17/20
F01K 23/10
F01K 25/10
F01K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される気相の加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収部と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器に送るポンプと、
前記蒸発器に前記加熱媒体を供給するための供給流路と、
前記蒸発器から前記加熱媒体を排出するための排出流路と、
前記排出流路に設けられており、前記蒸発器に供給される前記加熱媒体の圧力を調整可能な圧力調整弁と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記蒸発器に供給される気相の加熱媒体の圧力が基準値未満であるときに当該加熱媒体の圧力が前記基準値以上となるように前記圧力調整弁の開度を調整する圧力調整部と、
前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整後、あるいは、前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整と同時に、前記ポンプの回転数を上げる回転数調整部と、を有する、熱エネルギー回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記回転数調整部は、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が下限値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げる、熱エネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記供給流路から分岐しており、負荷側へ前記気相の作動媒体を供給するための分岐流路と、
前記分岐流路への前記気相の作動媒体の流入量と前記供給流路への前記気相の作動媒体の流入量とを調整する流量調整弁と、をさらに備え、
前記制御部は、前記分岐流路への前記気相の作動媒体の供給量が所定量以上となるように前記流量調整弁の開度を調整する流量調整部を有し、
前記回転数調整部は、前記流量調整部による前記流量調整弁の開度の調整及び前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整の後、あるいは、前記流量調整部による前記流量調整弁の開度の調整及び前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整と同時に、前記ポンプの回転数を上げる、熱エネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記回転数調整部は、前記蒸発器から流出した加熱媒体の温度が規定値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げる、熱エネルギー回収装置。
【請求項5】
外部から供給される気相の加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収部と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器に送るポンプと、を備える熱エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記蒸発器に供給される加熱媒体の圧力が基準値未満であるときに当該加熱媒体の圧力が前記基準値以上となるように前記加熱媒体の圧力を調整する圧力調整工程と、
前記圧力調整工程の後、前記ポンプの回転数を上げる回転数調整工程と、を含む、熱エネルギー回収装置の運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載の熱エネルギー回収装置の運転方法において、
前記回転数調整工程では、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が下限値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げる、熱エネルギー回収装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場の各種設備から排出される排ガス等の蒸気(気相の加熱媒体)から動力を回収する熱エネルギー回収装置が知られている。例えば、特許文献1には、外部の熱源から供給される気相の加熱媒体により作動媒体を加熱する蒸発器と、蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、膨張機に接続された発電機と、膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮された作動媒体を蒸発器へ送る循環ポンプと、蒸発器に接続された蒸気配管と、を備えるバイナリー発電装置(熱エネルギー回収装置)が開示されている。蒸気配管は、蒸発器に気相の加熱媒体を供給する供給配管と、蒸発器から加熱媒体を排出する排出配管と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−194210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような熱エネルギー回収装置では、動力回収量をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、動力回収量を上げることが可能な熱エネルギー回収装置及びその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明者らは、従来調整されていなかった蒸気圧(蒸発器へ供給される気相の加熱媒体の圧力)に着目した。すなわち、蒸発器へ供給される気相の作動媒体の圧力が高められると、当該加熱媒体の温度が上がるので、その分蒸発器で作動媒体が加熱媒体から受け取ることが可能な熱量が増える。そして、蒸発器での作動媒体の加熱媒体からの受熱量が増えた分ポンプの回転数を上げることが可能となり、これにより動力回収量を増やすことが可能であることに想到した。
【0007】
本発明は、このような観点からなされたものである。具体的に、本発明は、外部から供給される気相の加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収部と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器に送るポンプと、前記蒸発器に前記加熱媒体を供給するための供給流路と、前記蒸発器から前記加熱媒体を排出するための排出流路と、前記排出流路に設けられており、前記蒸発器に供給される前記加熱媒体の圧力を調整可能な圧力調整弁と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記蒸発器に供給される気相の加熱媒体の圧力が基準値未満であるときに当該加熱媒体の圧力が前記基準値以上となるように前記圧力調整弁の開度を調整する圧力調整部と、前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整後、あるいは、前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整と同時に、前記ポンプの回転数を上げる回転数調整部と、を有する、熱エネルギー回収装置を提供する。
【0008】
本熱エネルギー回収装置では、圧力調整部による圧力調整弁の開度の調整によって蒸発器に供給される気相の加熱媒体の圧力が基準値以上に調整されることにより、蒸発器で作動媒体が気相の加熱媒体から受け取ることが可能な熱量が大きく確保される。このため、回転数調整部がポンプの回転数を上げることによって蒸発器での作動媒体の受熱量、すなわち、動力回収部での動力の回収量が増大する。
【0009】
この場合において、前記回転数調整部は、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が下限値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、作動媒体が気液二相の状態で膨張機に流入することを抑制しつつ、動力回収部での動力の回収量を増やすことができる。
【0011】
また、前記熱エネルギー回収装置において、前記供給流路から分岐しており、負荷側へ前記気相の作動媒体を供給するための分岐流路と、前記分岐流路への前記気相の作動媒体の流入量と前記供給流路への前記気相の作動媒体の流入量とを調整する流量調整弁と、をさらに備え、前記制御部は、前記分岐流路への前記気相の作動媒体の供給量が所定量以上となるように前記流量調整弁の開度を調整する流量調整部を有し、前記回転数調整部は、前記流量調整部による前記流量調整弁の開度の調整及び前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整の後、あるいは、前記流量調整部による前記流量調整弁の開度の調整及び前記圧力調整部による前記圧力調整弁の開度の調整と同時に、前記ポンプの回転数を上げてもよい。
【0012】
この態様では、負荷側への気相の作動媒体の供給量を所定量以上確保しつつ、動力回収部での動力回収量を増やすことができる。
【0013】
あるいは、前記熱エネルギー回収装置において、前記回転数調整部は、前記蒸発器から流出した加熱媒体の温度が規定値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げてもよい。
【0014】
この態様では、蒸発器から流出した加熱媒体(例えばドレン)の温度を規定値以上に維持しつつ、すなわち、当該加熱媒体の有効活用を可能にしつつ、動力回収部での動力回収量を増やすことができる。
【0015】
また、本発明は、外部から供給される気相の加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収部と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器に送るポンプと、を備える熱エネルギー回収装置の運転方法であって、前記蒸発器に供給される加熱媒体の圧力が基準値未満であるときに当該加熱媒体の圧力が前記基準値以上となるように前記加熱媒体の圧力を調整する圧力調整工程と、前記圧力調整工程の後、前記ポンプの回転数を上げる回転数調整工程と、を含む、熱エネルギー回収装置の運転方法を提供する。
【0016】
本運転方法では、圧力調整工程で蒸発器に供給される気相の加熱媒体の圧力が基準値以上に調整されることにより、蒸発器で作動媒体が気相の加熱媒体から受け取ることが可能な熱量が大きく確保される。このため、回転数調整工程でポンプの回転数を上げることによって蒸発器での作動媒体の受熱量、すなわち、動力回収部での動力の回収量が増大する。
【0017】
前記熱エネルギー回収装置の運転方法において、前記回転数調整工程では、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が下限値以上となる範囲で前記ポンプの回転数を上げることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、作動媒体が気液二相の状態で膨張機に流入することを抑制しつつ、動力回収部での動力の回収量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、動力回収量を上げることが可能な熱エネルギー回収装置及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収装置の構成の概略を示す図である。
【
図2】
図1に示される熱エネルギー回収装置の制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収装置の構成の概略を示す図である。
【
図4】
図3に示される熱エネルギー回収装置の制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収装置について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示されるように、熱エネルギー回収装置は、蒸発器10と、膨張機12と、動力回収部14と、凝縮器16と、ポンプ18と、循環流路20と、供給流路32と、排出流路34と、制御部40と、を備えている。循環流路20は、蒸発器10、膨張機12、凝縮器16及びポンプ18をこの順に直接に接続している。
【0023】
蒸発器10は、外部の加熱媒体供給源100(例えばボイラ)から供給される気相の加熱媒体(蒸気)と作動媒体とを熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。蒸発器10は、加熱媒体が流れる第1流路10aと、作動媒体が流れる第2流路10bと、を有している。
【0024】
供給流路32は、加熱媒体供給源100で生じた加熱媒体を蒸発器10に供給するための流路であり、第1流路10aの上流側の端部に接続されている。このため、第1流路10aには、供給流路32を通じて加熱媒体供給源100から気相の加熱媒体が供給される。
【0025】
排出流路34は、蒸発器10から加熱媒体を排出するための流路であり、第1流路10aの下流側の端部に接続されている。このため、蒸発器10で作動媒体と熱交換した後の加熱媒体(例えばドレン)は、排出流路34を通じて蒸発器10から排出される。排出流路34には、加熱媒体供給源100から蒸発器10に供給される加熱媒体の圧力を調整可能な圧力調整弁V1が設けられている。
【0026】
本実施形態の熱エネルギー回収装置は、供給流路32から分岐した分岐流路36をさらに備えている。分岐流路36は、加熱媒体供給源100で生成された気相の加熱媒体を負荷側(プロセス側)に供給するための流路である。分岐流路36には、加熱媒体供給源100から分岐流路36へ流入する気相の作動媒体の流量と、加熱媒体供給源100から供給流路32へ流入する気相の作動媒体の流量と、を調整する流量調整弁V2が設けられている。
【0027】
膨張機12は、循環流路20における蒸発器10の下流側の部位に設けられている。膨張機12は、蒸発器10から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機12として、蒸発器10から流出した気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるスクリュロータを有する容積式のスクリュー膨張機が用いられている。
【0028】
動力回収部14は、膨張機12に接続されている。本実施形態では、動力回収部14として発電機が用いられている。この動力回収部14は、膨張機12のスクリュロータに接続された回転軸を有している。動力回収部14は、前記回転軸が前記スクリュロータの回転に伴って回転することにより電力を発生させる。なお、動力回収部14として、発電機の他、圧縮機等が用いられてもよい。
【0029】
凝縮器16は、循環流路20における膨張機12の下流側の部位に設けられている。凝縮器16は、膨張機12から流出した作動媒体を外部から供給される冷却媒体(冷却水等)で冷却することにより凝縮(液化)させる。
【0030】
ポンプ18は、循環流路20における凝縮器16の下流側の部位(凝縮器16と蒸発器10との間の部位)に設けられている。ポンプ18は、液相の作動媒体を所定の圧力まで加圧して蒸発器10へ送り出す。ポンプ18としては、インペラをロータとして備える遠心ポンプや、ロータが一対のギアからなるギアポンプ、スクリュポンプ、トロコイドポンプ等が用いられる。
【0031】
制御部40は、負荷側への気相の作動媒体の供給量を確保したうえで、できるだけ動力回収部14での動力の回収量(本実施形態では発電量)を増やすために圧力調整弁V1の開度、流量調整弁V2の開度及びポンプ18の回転数を制御する。具体的に、制御部40は、圧力調整部42と、回転数調整部44と、流量調整部46と、を有している。
【0032】
圧力調整部42は、蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の圧力Pv0が基準値x未満であるときに当該加熱媒体の圧力Pv0が基準値x以上となるように圧力調整弁V1の開度を調整する(下げる)。なお、蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の圧力Pv0は、供給流路32に設けられた圧力センサ51により検出される。
【0033】
回転数調整部44は、圧力調整部42による圧力調整弁V1の開度の調整後、あるいは、圧力調整部42による圧力調整弁V1の開度の調整と同時に、ポンプ18の回転数を上げる。具体的に、回転数調整部44は、膨張機12に流入する作動媒体の過熱度Troが下限値α以上となる範囲でポンプ18の回転数を上げる。なお、膨張機12に流入する作動媒体の過熱度Troは、循環流路20のうち蒸発器10と膨張機12との間の部位に設けられた温度センサ52及び圧力センサ53の各検出値に基づいて求められる。
【0034】
流量調整部46は、分岐流路36への気相の作動媒体の供給量が所定量以上となるように流量調整弁V2の開度を調整する。本実施形態では、分岐流路36への気相の作動媒体の供給量は、分岐流路36に設けられた圧力センサ54の検出値Pv2に基づいて算出される。
【0035】
以下、
図2を参照しながら、制御部40の制御内容について説明する。
【0036】
本エネルギー回収装置が起動されると、制御部40(流量調整部46)は、圧力センサ54の検出値Pv2が所定値εよりも大きいか否か、すなわち、負荷側に供給される気相の作動媒体が所定量よりも多いか否かを判定する(ステップS11)。この結果、前記検出値Pv2が所定値ε以下である場合、制御部40(流量調整部46)は、流量調整弁V2の開度を上げ(ステップS12)、ステップS11に戻る。一方、前記検出値Pv2が所定値εよりも大きい場合、制御部40(回転数調整部44)は、膨張機12に流入する作動媒体の過熱度Troが下限値α以上でかつ上限値β以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0037】
この結果、過熱度Troが下限値α以上でかつ上限値β以下ではない場合、制御部40(回転数調整部44)は、過熱度Troが上限値βよりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。そして、過熱度Troが上限値βよりも大きい場合、制御部40(回転数調整部44)は、ポンプ18の回転数を上げ(ステップS15)、ステップS11に戻る一方、過熱度Troが上限値βよりも大きくない場合、つまり、過熱度Troが下限値αよりも小さい場合、制御部40(回転数調整部44)は、ポンプ18の回転数を下げ(ステップS16)、ステップS11に戻る。
【0038】
ステップS13において、過熱度Troが下限値α以上でかつ上限値β以下である場合(ステップS13でYESの場合)、制御部40(圧力調整部42)は、蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の圧力Pv0が基準値x以上でかつ設定値y以下であるか否かを判定する(ステップS17)。この結果、圧力Pv0が基準値x以上でかつ設定値y以下である場合、制御部40(圧力調整部42)は、ステップS11に戻る一方、圧力Pv0が基準値x以上でかつ設定値y以下ではない場合、制御部40(圧力調整部42)は、圧力Pv0が基準値x未満か否かを判定する(ステップS18)。なお、設定値yは、基準値xよりも大きな値であり、例えば加熱媒体供給源100に許容される圧力の上限値に設定される。
【0039】
その結果、圧力Pv0が基準値x未満ではない場合、つまり、圧力Pv0が設定値yよりも大きい場合、制御部40(圧力調整部42)は、圧力Pv0の値を小さくするために圧力調整弁V1の開度を上げ(ステップS19)、ステップS11に戻る。一方、圧力Pv0が基準値x未満である場合、制御部40(圧力調整部42)は、蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の圧力Pv0を上げるために圧力調整弁V1の開度を下げる(ステップS20)。これにより、蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の温度が上昇する。このため、蒸発器10で作動媒体が加熱媒体から受け取ることが可能な熱量が増大する。
【0040】
そこで、制御部40(回転数調整部44)は、ポンプ18の回転数を上げる(ステップS21)。これにより、動力回収部14での動力の回収量が増大する。
【0041】
ステップS20において圧力調整弁V1の開度を下げたことにより、分岐流路36を通じて負荷側へ供給される気相の加熱媒体の流量が増加するので、制御部40は、流量調整弁V2の開度を下げ(ステップS22)、ステップS11に戻る。なお、ステップS20〜S22は、同時に行われてもよい。
【0042】
以上に説明したように、本熱エネルギー回収装置では、圧力調整部42による圧力調整弁V1の開度の調整(ステップS20の操作)によって蒸発器10に供給される気相の加熱媒体の圧力Pv0が基準値x以上に調整されることにより、蒸発器10で作動媒体が気相の加熱媒体から受け取ることが可能な熱量が大きく確保される。このため、回転数調整部44がポンプ18の回転数を上げること(ステップS21の操作)によって蒸発器10での作動媒体の受熱量、すなわち、動力回収部14での動力の回収量が増大する。
【0043】
また、回転数調整部44は、膨張機12に流入する作動媒体の過熱度Troが下限値α以上となる範囲でポンプ18の回転数を上げるので、作動媒体が気液二相の状態で膨張機12に流入することを抑制しつつ、動力回収部14での動力の回収量を増やすことができる。
【0044】
また、流量調整部46は、分岐流路36への気相の作動媒体の供給量が所定量以上となるように流量調整弁V2の開度を調整するので、負荷側への気相の作動媒体の供給量を所定量以上確保しつつ、動力回収部14での動力回収量を増やすことができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、
図3及び
図4を参照しながら、本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0046】
本実施形態の熱エネルギー回収装置は、分岐流路36、流量調整弁V2及び流量調整部46を有していない。本実施形態では、制御部40の回転数調整部44は、蒸発器10から流出した加熱媒体(例えばドレン)の温度T1が規定値T0以上となり、かつ、膨張機12に流入する作動媒体の過熱度Troが下限値α以上となる範囲でポンプ18の回転数を上げる。なお、蒸発器10から流出した加熱媒体の温度T1は、排出流路34に設けられた温度センサ55により検出される。以下、
図4を参照しながら、本実施形態の制御部40の制御内容について説明する。
【0047】
本熱エネルギー回収装置が起動されると、制御部40は、蒸発器10から流出した加熱媒体の温度T1が規定値T0よりも大きいか否かを判定する(ステップS31)。その結果、前記温度T1が規定値T0以下であれば、制御部40(圧力調整部42)は、蒸発器10で加熱媒体が作動媒体に与える熱量を減少させるために圧力調整弁V1の開度を上げ(ステップS32)、ステップS11に戻る。一方、前記温度T1が規定値T0よりも大きい場合、制御部40は、ステップS13に進む。なお、ステップS13以降のフローについては、ステップS22を備えない点を除き、第1実施形態のそれと同じであるので、説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、蒸発器10から流出した加熱媒体(例えばドレン)の温度T1を規定値T0以上に維持しつつ、すなわち、当該加熱媒体の有効活用を可能にしつつ、動力回収部14での動力回収量を増やすことができる。
【0049】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
例えば、第1実施形態では、圧力センサ54の代わりに流量センサが設けられ、流量調整部46は、その流量センサの検出値が所定量以上となるように流量調整弁V2の開度を調整してもよい。また、分岐流路36に流量調整弁V2が設けられる代わりに、供給流路32と分岐流路36との接続部に三方弁が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 蒸発器
12 膨張機
14 動力回収部
16 凝縮器
18 ポンプ
20 循環流路
32 供給流路
34 排出流路
36 分岐流路
40 制御部
42 圧力調整部
44 回転数調整部
46 流量調整部
V1 圧力調整弁
V2 流量調整弁