(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液のガス交換を行う人工肺部から対象者に供給される血液の複数の第1の状態情報を経時情報と共に記憶すると共に、対象者から前記人工肺部へ導入される血液の複数の第2の状態情報も経時情報と共に記憶し、
前記人工肺部から対象者に供給された血液が、対象者から排出されるまでの時間情報である体内通過時間情報を有し、
前記複数の第1の状態情報のいずれかと前記複数の第2の状態情報のいずれかを比較するときに、前記体内通過時間情報に基づいて、前記複数の第1の状態情報及び前記複数の第2の状態情報から比較対象の前記第1の状態情報及び前記第2の状態情報を選択することを特徴とする体外循環管理装置。
前記人工肺部から対象者へ導入される血液の導入部分情報と、血液が対象者から排出される排出部分情報に基づいて前記体内通過時間情報を補正する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の体外循環管理装置。
前記第1の状態情報と前記第2の状態情報を測定し、これらの変化情報に基づいて前記体内通過時間情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の体外循環管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る体外循環装置1の主な構成を示す概略図である。
図1に示す、体外循環装置1は、
図1に示す対象者である例えば、患者Pの血液の体外循環を行う装置であるが、この「体外循環」には「体外循環動作」と「補助循環動作」が含まれる。
【0022】
「体外循環動作」は、体外循環装置1の適用対象である患者(被術者)Pの心臓に血液が循環しないため患者Pの体内でガス交換ができない場合に、この体外循環装置1により、血液の循環動作と、この血液に対するガス交換動作(酸素付加及び/又は二酸化炭素除去)を行うことである。
また、「補助循環動作」とは、体外循環装置1の適用対象である患者(被術者)Pの心臓に血液が循環し、患者Pの肺でガス交換を行える場合で、体外循環装置1によっても血液の循環動作の補助を行うことである。装置によっては血液に対するガス交換動作を行う機能を持つものもある。
【0023】
ところで、本実施の形態に係る
図1に示す体外循環装置1では、例えば患者Pの心臓外科手術を行う場合等に用いられる。
具体的には、体外循環装置1の遠心ポンプ3を作動させ、患者Pの静脈(大静脈)から脱血して、人工肺部である例えば、人工肺2により血液中のガス交換を行って血液の酸素加を行った後に、この血液を再び患者Pの動脈(大動脈)に戻す「人工肺体外血液循環」を行う。すなわち、体外循環装置1は、心臓と肺の代行を行う装置となる。
【0024】
また、体外循環装置1は、以下のような構成となっている。
すなわち、
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる「循環回路1R」を有し、循環回路1Rは、「人工肺2」、「遠心ポンプ3」、「ドライブモータ4」、「静脈側カニューレ(脱血側カニューレ)5」と、「動脈側カニューレ(送血側カニューレ)6」と、体外循環管理装置である例えば、コントローラ10を有している。なお、遠心ポンプ3は、血液ポンプとも称し、遠心式以外のポンプも利用できる。
【0025】
そして、
図1の静脈側カニューレ(脱血側カニューレ)5は、大腿静脈より挿入され、静脈側カニューレ5の先端が右心房に留置される。動脈側カニューレ(送血側カニューレ)6は、
図1のコネクター9を介して、大腿動脈より挿入される。
静脈側カニューレ5は、コネクター8を介して、管部である例えば、脱血チューブ11を用いて遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ(「脱血ライン」とも称す。)11は、血液を送る管路である。
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を操作させると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して人工肺2に通した血液を、管部である例えば、送血チューブ12(「送液ライン」とも称する。)を介して患者Pに戻す構成となっている。
【0026】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12の間に配置されている。人工肺2は、
図1に示すように酸素ガスを導入し、この血液に対するガス交換動作(酸素付加及び/又は二酸化炭素除去)を行う。
人工肺2は、例えば、膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カニューレ6を接続している管路である。
脱血チューブ11と送血チューブ12は、例えば、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴム等の透明性が高く、可撓性を有する合成樹脂製の管路で、外径14mm,内径10mm程度であり、可塑剤の他に、初期色調に優れ高い紫外線吸収能を有するベンゾトリアゾール系UVA(ヒンダードアミン系光安定剤)を1〜2重量%程度含有させることで、室内での蛍光灯等による紫外線劣化を防止し、安全性を向上させている。
脱血チューブ11内では、血液はV方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はW方向に流れる。
【0027】
また、体外循環装置1は、その送血チューブ12に、
図1に示すように、送血チューブ12内の血液の動脈血酸素分圧(mmHg)を計測する動脈側酸素分圧測定部18が配置されている。この酸素分圧は、血液の酸素化能力を示す指標である。
【0028】
さらに、送血チューブ12には、送血チューブ12内の血液の酸素飽和度(%)を計測する動脈側酸素飽和度測定部19が配置されている。この酸素飽和度は、血液中のヘモグロビンと結合している割合を示す指標である。
また、送血チューブ12には、送血チューブ12内の血液に流量異常等が生じたときに、かかる異常な状態のままで血液が患者Pに送られるのを阻止するためのクランプ7が形成され、操作者がこのクランプ7(チューブ閉塞装置)を使用して緊急に送血チューブ12を閉塞することができる構成となっている。
【0029】
一方、
図1の脱血チューブ11には、脱血チューブ11内の血液の静脈血酸素分圧(mmHg)を計測する静脈側酸素分圧測定部15が配置されていると共に、脱血チューブ11内の血液の酸素飽和度(%)を計測する静脈側酸素飽和度測定部16が配置されている。
また、脱血チューブ11には、脱血チューブ11内の血液のヘモグロビンの値を検出するヘモグロビン計測部17が配置されている。
また、体外循環装置1は、その脱血チューブ11に、「流量センサ14」を有している。この流量センサ14は、脱血チューブ11を通る血液の流量値を測定するセンサであり、流量値の異常も検知する。
【0030】
ところで、
図1に示す体外循環装置1のコントローラ10等は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バスを介して接続されている。
【0031】
図2は、
図1の体外循環装置1のコントローラ10と各測定部等との関係を示す概略図である。
図2に示すようにコントローラ10は、
図1に示す静脈側酸素飽和度測定部16、静脈側酸素分圧測定部15、流量センサ14、ヘモグロビン測定部17、動脈側酸素飽和度測定部19及び動脈側酸素分圧測定部18と通信可能に接続されている。
この接続は、有線のみならず無線通信であっても構わないが、有線の場合は電磁ノイズに強いRS232Cで行うのが好ましい。
【0032】
図3は、
図1のコントローラ10の主な構成を示す概略ブロック図である。
図3に示すように、コントローラ10は、「コントローラ制御部21」を有し、コントローラ制御部21は、
図1に示すドライブモータ4や静脈側酸素分圧測定部15等と通信するための通信装置22、各種情報を表示すると共に各種情報を入力可能なカラー液晶,有機EL等で形成される「タッチパネル23」を制御可能な構成となっている。
また、コントローラ10は、時刻情報を生成する計時装置24やコントローラ本体25も制御する。
【0033】
さらに、コントローラ制御部21は、
図3に示す「第1の各種情報記憶部30」、「第2の各種情報記憶部40」、「第3の各種情報記憶部50」、「第4の各種情報記憶部60」及び「第5の各種情報記憶部70」を制御する。
図4乃至
図8は、それぞれ「第1の各種情報記憶部30」、「第2の各種情報記憶部40」、「第3の各種情報記憶部50」、「第4の各種情報記憶部60」及び「第5の各種情報記憶部70」の主な構成を示す概略ブロック図である。これらの内容は後述する。
【0034】
図9乃至
図12は、
図1の体外循環装置1の主な動作例等を示す概略フローチャートである。以下、これらのフローチャートに沿って説明すると共に、
図1乃至
図8等の構成等についても説明する。
本実施の形態の体外循環装置1を使用する患者Pの酸素消費量(mL/min)に異常等が発生した場合、迅速に対応をする必要があるため、患者Pの酸素消費量(mL/min)を正確に把握することができる構成となっている。
また、併せて、
図1の人工肺2の閉塞等を迅速に把握するため人工肺2の酸素運搬量(mL/min)のデータも正確に把握することができる構成となっている。
【0035】
図1の患者Pの酸素消費量のデータを取得する前に、この酸素消費量データを求めるために必要な基礎データを取得する。
図9は、体内通過時間情報である例えば、「最終体内血流通過時間」を求めるための算出工程を示す概略フローチャートである。
すなわち、この最終体内血流通過時間は、
図1の動脈側カニューレ6から導入された血液が患者Pの体内を循環(通過)して、静脈側カニューレ5から排出されるまでの時間を示す。
【0036】
先ず、
図9のステップST(以下「ST」とする)1では、
図1のコントローラ10のタッチパネル23に、患者Pの体重(kg)、体外循環装置1の血液の設定流量(L/min)及び静脈側カニューレ5及び動脈側カニューレ6の配置場所の入力を求める入力画面が表示される。
このタッチパネル23の画面に、体外循環装置1の操作者(医療従事者等)が、患者Pの体重、例えば、60kg、流量4L/minと入力する。
また、本実施の形態では、
図1に示すように動脈側カニューレ6と静脈側カニューレ5の配置場所は、「大腿動脈」と「大腿静脈」なので、これらを入力する。
なお、動脈側カニューレ6の配置場所である大腿動脈は「導入部分情報」の一例であり、静脈側カニューレ5の配置場所である大腿静脈は「排出部分情報」の一例である。
【0037】
すると、コントローラ10は、
図4の「体重情報記憶部33」に「体重60kg」と記憶し、「流量情報記憶部34」に「4L/min」と記憶すると共に「カニューレ配置情報記憶部37」に「大腿動脈と大腿静脈」と記憶する。
【0038】
次いで、ST2へ進む。ST2では、
図4の「基本体内血流通過時間算出部(プログラム)31」が動作し、
図4の「基本体内血流通過時間算出式記憶部32」を参照する。
基本体内血流通過時間算出式記憶部32に以下の式が記憶されている。
すなわち、「基本体内血流通過時間=血流ボリューム(V_body)÷流量(Q)、血流ボリューム(V_body)=体重(W)÷13÷1.055(kg/L)」である。
ここで「1/13」は、体重あたりの血液ボリューム(量)が体重の1/13程度であることを示し、「1.055(kg/L)」は、血液の比重を示している。
そして、この式は、血液が患者Pの体内を通過する基本的な時間である「基本体内血流通過時間」が「血流ボリューム(V_body)÷流量(Q)」で定められることを示す。
【0039】
また、ST2では、基本体内血流通過時間算出式記憶部32、体重情報記憶部33及び流量情報記憶部34を参照し、これらのデータを基本体内血流通過時間算出式に代入して、「基本体内血流通過時間」を算出する。
本実施の形態では、例えば、体重60kgで、流量が4L/minのとき、基本体内血流通過時間=60÷13÷1.055÷4で、「1.09min」となる。
そして、ST2では、この1.09minを「基本体内血流通過時間記憶部35」に記憶する。
この基本体内血流通過時間は、体内通過時間情報の一例である。
本実施の形態では、この「1.09min」が、血液が患者Pの体内を通過する時間の基本情報となる。
しかし、同じ患者Pの体内を血液が通過する時間としても、通過する部位によって、その時間が変化するので、次の工程で、基本体内血流通過時間を修正する。
【0040】
ST3では、
図4の「基本体内血流通過時間修正処理部(プログラム)36」が動作し、
図4のカニューレ配置情報記憶部37と、
図5の「基本体内血流通過時間修正基準情報記憶部41」を参照する。
基本体内血流通過時間修正基準情報記憶部41には、カニューレの配置場所と基本体内血流通過時間の修正情報が対応付けて記憶されている。
例えば、「大腿動脈及び大腿静脈」の場合は、「1/3」と記憶されている。
【0041】
そこで、ST3では、カニューレ配置情報に基づき、基本体内血流通過時間修正基準情報を特定し、
図4の「基本体内血流通過時間記憶部35」のデータ、例えば、1.09minを修正する。
本実施の形態では、1.09min÷3=約0.36minとなり、この値を「最終体内血流通過時間」として、
図5の「最終体内血流通過時間記憶部42」に記憶する。
【0042】
このように、体内血流通過時間をカニューレの配置場所で修正することで、より正確な体内血流通過時間を生成することができる。
【0043】
次いで、
図1の人工肺2の酸素運搬量(mL/min)データを取得する前に、この酸素運搬量データを求めるために必要な基礎データを取得する。
図10は、「人工肺血流通過時間」を求めるための算出工程を示す概略フローチャートである。
すなわち、この人工肺血流通過時間は、
図1の脱血チューブ11から人工肺2に導入された血液が、人工肺2から排出されるまでの時間を示す。
【0044】
図10のST11では、
図5の「人工肺血流通過時間算出部(プログラム)43」が動作し、
図5の「人工肺血流通過時間算出式記憶部44」を参照する。
人工肺血流通過時間算出式記憶部44には、以下の式が記憶されている。
すなわち、「人工肺血流通過時間=人工肺ボリューム(V_lung)÷流量(Q)」であり、これは、脱血チューブ11から人工肺2に導入された血液が送血チューブ12へ排出される時間である「人工肺血流通過時間」が、「人工肺ボリューム(V_lung)÷流量(Q)」で求められることを示している。
【0045】
また、
図5の「人工肺ボリューム情報記憶部45」には、人工肺2の人工肺ボリュームの情報、例えば、「0.26L」が記憶されている。
したがって、ST11では、人工肺ボリューム情報記憶部45の「0.26L」及び
図4の流量情報記憶部34の「4L/min」を参照して、これらの数値を人工肺血流通過時間算出式記憶部44の式に代入する。
【0046】
すると、人工肺血流通過時間=0.26÷4=0.065min(3.9s)となる。
この0.065minは、人工肺血流通過時間として、
図5の「人工肺血流通過時間記憶部46」に記憶される。
本実施の形態では、この「0.065min」が、血液が人工肺2内を通過する時間となる。
この人工肺血流通過時間が「人工肺部通過時間情報」の一例となる。
【0047】
以上で患者Pの酸素消費量(mL/min)と人工肺2の酸素運搬量(mL/min)のデータを正確に算出するための基礎データの取得が完了する。
次いで、
図11及び
図12のフローチャートを用いて、実際に患者Pの酸素消費量データと人工肺2の酸素消費量データを取得する取得工程を説明する。
図11及び
図12は、患者Pの酸素消費量データと人工肺2の酸素消費量データの取得工程を説明する概略フローチャートである。
【0048】
先ず、
図11のST21では、
図6の「酸素飽和度及び酸素分圧情報取得部(プログラム)51」が動作し、
図3の計時装置24、静脈側酸素飽和度測定部16、動脈側酸素飽和度測定部19、静脈側酸素分圧測定部15、動脈側酸素分圧測定部18を参照して、各時刻の各測定部の測定データを
図6の「酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52」に記憶する。
【0049】
図13は、「酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52」に記憶される各測定データを示す概略説明図である。
図13に示すように、測定時刻データと関連付けた静脈側酸素飽和度測定部16で測定された「静脈血酸素飽和度(%)」データ、動脈側酸素飽和度測定部19で測定された「動脈血酸素飽和度(%)」データ、静脈側酸素分圧測定部15で測定された「静脈血酸素分圧(mmHg)データ及び動脈側酸素分圧測定部18で測定された「動脈血酸素分圧(mmHg)データ」が記憶されている。
【0050】
これら動脈血酸素飽和度(%)データ及び動脈血酸素分圧(mmHg)データが「第1の状態情報」の一例であり、静脈血酸素飽和度(%)データ及び静脈血酸素分圧(mmHg)データが、「第2の状態情報」の一例である。
【0051】
次いで、ST22で,計時装置24を参照して、所定時間が経過したか否かを判断する。これは、体外循環装置1が未だ過去の動脈血酸素飽和度(%)等のデータを取得していない場合に備えて、その取得の時間を確保するためである。
【0052】
次いで、ST23へ進む。ST23では、
図6の「過去データ有無確認処理部(プログラム)53」が動作して、
図5の「最終体内血流通過時間記憶部42」と「人工肺血流通過時間記憶部45」を参照し、現在時刻より「0.36min」以前及び「0.065min」以前の酸素飽和度データ及び酸素分圧データが「酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52」に記憶されているか否かを判断する。
【0053】
具体的には、
図13の現在時刻「(8)12:03:37.00」から「0.36min」以前の時刻と関連付けられている動脈血酸素飽和度(%)及び動脈血酸素分圧(mmHg)等のデータが記憶されているか否かを判断する。
また、現在時刻から0.065min以前の時刻と関連付けられている静脈血酸素飽和度(%)及び静脈血酸素分圧(mmHg)等のデータが記憶されているか否かも判断する。
【0054】
本実施の形態では、
図13に示すように、現在時刻「(8)12:03:37.00」から「0.36min」以前の時刻である「(2)12:03:01.00」に関連付けられた動脈血酸素飽和度(%)及び動脈血酸素分圧(mmHg)等のデータが記憶されている。
また、現在時刻「(8)12:03:37.00」から0.065min」以前の時刻である「(5)12:03:36.35」に関連付けられた静脈血酸素飽和度(%)及び静脈血酸素分圧(mmHg)等のデータが記憶されている。
【0055】
したがって、本実施の形態では、ST24で「以前のデータが記憶されている」と判断され、ST25へ進む。
ST25では、
図6の「第1の現在時刻生体情報抽出処理部(プログラム)54」が動作して、計時装置24と酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52を参照し、現在時刻の静脈血酸素飽和度(%)及び静脈血酸素分圧(Hg)の値を
図6の「第1の現在時刻生体情報記憶部55」に記憶する。
具体的には、
図13の時刻「(8)12:03:37.00」の静脈血酸素飽和度(%)である「72%」と静脈血酸素分圧(Hg)である「40mmHg」を第1の現在時刻生体情報記憶部55」に記憶する。
【0056】
次いで、ST26へ進む。ST26では、
図6の「第1の過去時刻生体情報抽出処理部(プログラム)56」が動作し、計時装置24、酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52及び
図5の最終体内血流通過時間記憶部42を参照する。
そして、現在時刻から最終体内血流通過時間(0.36min)前の動脈血酸素飽和度(%)及び動脈血酸素分圧(mmHg)の値を
図7の「第1の過去時刻生体情報記憶部61」に記憶する。
具体的には、
図13の時刻「(2)12:03:01.00」の動脈血酸素飽和度(%)である「97%」と動脈血酸素分圧(Hg)である「132mmHg」を
図7の「第1の過去時刻生体情報記憶部61」に記憶する。
【0057】
次いで、ST27へ進む。ST27では、
図7の「酸素消費量算出処理部(プログラム)62」が動作し、
図6の第1の過去時刻生体情報記憶部56、第1の現在時刻生体情報記憶部54、ヘモグロビン測定部17、流量センサ14を参照する。
また、
図7の「酸素消費量算出式記憶部63」を参照する。この酸素消費量算出式記憶部63には、患者Pの酸素消費量を正確に算出できる以下の式が記憶されている。
すなわち、「(過去時刻の動脈血酸素飽和度−現在時刻の静脈血酸素飽和度)×1.34(mL/g)×Hgb(g/dL)×Q(d/L(流量))+0.003(mL/mmHg/dL)×(過去時刻の動脈血酸素分圧−現在時刻の静脈血酸素分圧)×Q(d/L(流量))」である。
このうち、1.34(mL/g)は、Hgbの1mgあたりの酸素体積を示す。
【0058】
したがって、ST27では、これらの式に参照したデータを代入して、酸素消費量を算出する。
また、この求めた酸素消費量は時刻情報と共に
図7の「酸素消費量情報記憶部64」に記憶させる。
このようにして酸素消費量のデータが生成される。この式では、現在時刻で測定した静脈血は、患者Pの体内を通過する前の過去の動脈血に相当するため、患者Pの体内の通過時間(最終体内血流通過時間)を考慮した過去の動脈血と比較することで、正確な酸素消費量を求めることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、患者Pの酸素消費量を求めるために酸素飽和度と酸素分圧のデータを用いたが、本発明はこれに限らず、酸素飽和度又は酸素分圧データのみで酸素消費量を求めても構わない。
【0060】
次に、
図1の人工肺2の酸素運搬量を求める工程を説明する。
先ず、ST28で、
図7の「第2の現在時刻生体情報抽出処理部(プログラム)65」が動作し、計時装置24と
図6の酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52を参照し、現在時刻の動脈血酸素飽和度(%)及び動脈血酸素分圧(mmHg)の値を「第2の現在時刻生体情報記憶部66」に記憶する。
【0061】
具体的には、
図13の時刻「(8)12:03:37.00」の動脈血酸素飽和度(%)である「98%」と動脈血酸素分圧(mmHg)である「132mmHg」を第2の現在時刻生体情報記憶部66」に記憶する。
【0062】
次いで、ST29へ進む。ST29では、
図8の「第2の過去時刻生体情報抽出処理部(プログラム)71」が動作し、計時装置24、
図6の酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部52及び
図5の人工肺血流通過時間記憶部46を参照する。
そして、現在時刻から人工肺血流通過時間(例えば、0.065min)前の静脈血酸素飽和度(%)及び静脈血酸素分圧(mmHg)の値を
図8の「第2の過去時刻生体情報記憶部72」に記憶する。
【0063】
具体的には、
図13の時刻「(5)12:03:36.35」の静脈血酸素飽和度(%)である「72%」と静脈血酸素分圧(mmHg)である「42mmHg」を
図8の「第2の過去時刻生体情報記憶部72」に記憶する。
【0064】
次いで、ST30へ進む。ST30では、
図8の「人工肺酸素運搬量算出処理部(プログラム)73」が動作し、
図8の第2の過去時刻生体情報記憶部72、
図7の第2の現在時刻生体情報記憶部66、ヘモグロビン測定部17、流量センサ14を参照する。
また、
図8の「人工肺酸素運搬量算出式記憶部74」を参照する。この人工肺酸素運搬量算出式記憶部74には、人工肺2の酸素運搬量を算出できる以下の式が記憶されている。
すなわち、「(現在時刻の動脈血酸素飽和度−過去時刻の静脈血酸素飽和度)×1.34(mL/g)×Hgb(g/dL)×Q(d/L(流量))+0.003(mL/mmHg/dL)×(現時時刻の動脈血酸素分圧−過去時刻の静脈血酸素分圧)×Q(d/L(流量))」である。
【0065】
したがって、ST30では、これらの式に参照したデータを代入して、人工肺酸素運搬量を算出する。
また、この求めた人工肺酸素消費量は時刻情報と共に
図8の「人工肺酸素運搬量情報記憶部75」に記憶させる。
【0066】
このようにして人工肺酸素運搬量のデータが生成される。この式では、現在時刻で測定した動脈血は、人工肺2内を通過する前の過去の静脈血に相当するため、人工肺2内の通過時間(人工肺血流通過時間)を考慮した過去の静脈血と比較することで、正確な酸素運搬量を求めることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、人工肺2の酸素運搬量を求めるために酸素飽和度と酸素分圧のデータを用いたが、本発明はこれに限らず、酸素飽和度又は酸素分圧データのみで酸素消費量を求めても構わない。
【0068】
また、本実施の形態では、患者Pの酸素消費量(mL/min)と人工肺2の酸素運搬量(mL/min)を区別し、異なる基礎データ等に基づいて別々に算出する構成となっている。
この点、従来は、両者を同様の計算式等で求めていたため、体外循環装置1のチューブ内の血液ガスの測定値に変化があったとき、この変化が人工肺2の詰まりによって酸素運搬量に変化が生じたか、若しくは患者Pの状態が変わって酸素消費量に変化が生じたかを判別することが困難であった。
しかし、本実施の形態では、患者Pの酸素消費量と人工肺2の酸素運搬量とを区別して算出するため、従来と異なり、血液ガス測定値に変化が生じたとき、この変化が人工肺2の詰まりか、患者Pの状態の変化かを明確に判別することができる。
【0069】
すなわち、本実施の形態の体外循環装置1では、患者Pの酸素消費量と酸素運搬量を別個に取得するので、これらのいずれか一方の数値等に異常があったとき、いずれが異常であるあるかを迅速に特定することができる。
【0070】
以下、この点について、
図14を用いて、詳細に説明する。
図14は、体温上昇に伴う酸素消費量と酸素運搬量との関係を示す概略説明図である。
図14の時刻「(1)12:02:37.00」のとき、患者Pの体温が上昇し、その後、酸素消費が増加し、その影響が時刻「(7)・・・」と「(8)12:3:37.00」における「静脈血酸素飽和度(%)」で表れた例である。
【0071】
すなわち、
図13では、患者Pに体温上昇がなかったため、時刻(7)(8)における「静脈血酸素飽和度(%)」は「71%」「72%」であったものが、
図14では、体温上昇により、酸素消費量が増えて「65%」「63%」となっている。
したがって、上述のように、患者Pの酸素消費量を測定する際に、時刻(2)の動脈血酸素飽和度(%)と、時刻(8)の静脈血酸素飽和度(%)とを比較すると、
図14の場合は、酸素消費量が増加していることになる。
【0072】
一方、人工肺2の酸素運搬量は、本実施の形態では、過去の静脈血酸素飽和度(%)と現在の動脈血酸素飽和度(%)を比較する構成となっている。また,人工肺2の酸素運搬量は、その人工肺2の能力から一定である。
このため、
図14の時刻(7)(8)で、
図13に比べて、静脈血酸素飽和度(%)が、それぞれ「71%」「72%」から「65%」「63%」に低下しても、人工肺2は、この数値の血液に一定の酸素を付加するに過ぎない。
したがって、人工肺2の酸素運搬量を測定すると、現在の動脈血酸素飽和度(%)と過去の静脈血酸素飽和度(%)との差は変化しない。
【0073】
この点を
図13及び
図14で示すと、
図13の時刻(5)の過去の静脈血酸素飽和度(%)が「72%」で現在(時刻(8))の動脈血酸素飽和度(%)が「98%」で、差は「26」である。
一方、
図14の酸素消費量が増加した時刻(7)の過去の静脈血酸素飽和度(%)が「65%」で、これに人工肺2が酸素を付加した後の時刻(9)の動脈血酸素飽和度(%)は「91%」であり、差は「26」となる。これは、人工肺2の能力が「26」であるからである。
【0074】
このように、本実施の形態では、体温上昇という患者Pの状態変化で血液ガスに変化があった場合、その変化が患者Pの状態変化によるものであることを明確に判別することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、最新の流量センサ14の値を使用して、判断しているが、本発明はこれに限らず、一定期間内の平均的な値を用いても構わない。
【0076】
(第2の実施の形態)
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る体外循環装置の主な構成を示す概略ブロック図である。また、
図16及び
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る体外循環装置の主な動作等を示す概略フローチャートである。
本実施の形態の多くの構成や工程は、上述の第1の実施の形態と同様であるため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
上述の第1の実施形態では、患者Pの体内の血液の通過時間を,動脈血酸素飽和度(%)等のデータを取得する前に患者Pの体重や血液の流量等から定めていた。
この点、本実施の形態では、患者Pの体重や血液の流量等から患者Pの体内の血液の通過時間を定めるのではなく、実際に患者Pから動脈血酸素飽和度(%)等のデータを取得して体内の血液の通過時間を定めるものである。
【0077】
以下、具体的に説明する。
図15におけるブロック図の内容は、第1の実施の形態の「基本体内血流通過時間算出部(プログラム)31」「基本体内血流通過時間算出式記憶部32」「基本体内血流通過時間記憶部35」「基本体内血流通過時間修正処理部(プログラム)36」「基本体内血流通過時間修正基準情報記憶部41」「最終体内血流通過時間記憶部42」等の構成の代わりに追加される構成である。
本実施の形態の特徴を
図16のフローチャートに沿って説明する。
図16は体内血流通過時間算出工程を示す概略フローチャートである。
【0078】
先ず、
図16のST41では、
図15の「静脈側酸素飽和度調節部(プログラム)81」が動作し、
図1の静脈側酸素飽和度測定部15の値を測定する。
次いで、ST42へ進む。ST42では、酸素飽和度の値が70%以上か否かを判断する。
ST42で、酸素飽和度の値が70%以上でない場合は、ST43へ進み、人工肺2を動作させて、静脈側酸素飽和度測定部15の値を70%以上に調節する。
【0079】
次いで、ST44へ進む。ST44では、
図15の「動脈側酸素飽和度調節部(プログラム)82」が動作し、
図1の動脈側酸素飽和度測定部18の値が90%未満かを判断すう。
ST44で、動脈側酸素飽和度測定部18の値が90%未満のときは、ST45へ進む。ST45では、計時装置24を参照し、1分間待機する。
【0080】
次いで、ST46へ進む。ST46では、
図15の「動脈側酸素飽和度調節部(プログラム)83」が動作し、人工肺2を動作させ、
図1の動脈側酸素飽和度測定部18の値を100%とし、計時装置24を参照して、当該時刻を「開始時刻記憶部84」に記憶する。
【0081】
次いで、ST47へ進む。ST47では、
図15の「体内血液通過時間情報生成部(プログラム)85」が動作し、
図1の静脈側酸素飽和度測定部15の値が80%以上となったか否かを判断する。
ST47で、静脈側酸素飽和度測定部15の値が80%以上となったときは、計時装置24と開始時刻記憶部84を参照し、時間を計算し、当該時間を体内通過時間情報である例えば、「体内血液通過時間」として、
図15の「体内血液通過時間記憶部86」に記憶する。
【0082】
以上のように、本実施の形態によれば、実際の静脈血酸素飽和度(%)の値の変化で、患者Pの体内血液通過時間を特定するので、患者P毎に正確な体内血液通過時間を設定できる。このため,患者P毎の酸素消費量を正確に把握することができる。
【0083】
ところで、本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【0084】
1・・・体外循環装置、2・・・人工肺、3・・・遠心ポンプ、4・・・ドライブモータ、5・・・静脈側カニューレ(脱血側カニューレ)、6・・・動脈側カニューレ(送血側カニューレ)、7・・・クランプ、8、9・・・コネクター、10・・・コントローラ、11・・・脱血チューブ、12・・・送血チューブ、14・・・流量センサ、15・・・静脈側酸素分圧測定部、16・・・静脈側酸素飽和度測定部、17・・・ヘモグロビン計測部、18・・・動脈側酸素分圧測定部、19・・・動脈側酸素飽和度測定部、21・・・コントローラ制御部、22・・・通信装置、23・・・タッチパネル、24・・・計時装置、25・・・コントローラ本体、30・・・第1の各種情報記憶部、31・・・基本体内血流通過時間算出部(プログラム)、32・・・基本体内血流通過時間算出式記憶部、33・・・体重情報記憶部、34・・・流量情報記憶部、35・・・基本体内血流通過時間記憶部、36・・・基本体内血流通過時間修正処理部(プログラム)、37・・・カニューレ配置情報記憶部、40・・・第2の各種情報記憶部、41・・・基本体内血流通過時間修正基準情報記憶部、42・・・最終体内血流通過時間記憶部、43・・・人工肺血流通過時間算出部(プログラム)、44・・・人工肺血流通過時間算出式記憶部、45・・・人工肺ボリューム情報記憶部、46・・・人工肺血流通過時間記憶部、50・・・第3の各種情報記憶部、51・・・酸素飽和度及び酸素分圧情報取得部(プログラム)、52・・・酸素飽和度及び酸素分圧情報記憶部、53・・・過去データ有無確認処理部(プログラム)、54・・・第1の現在時刻生体情報抽出処理部(プログラム)、55・・・第1の現在時刻生体情報記憶部、56・・・第1の過去時刻生体情報抽出処理部(プログラム)、60・・・第4の各種情報記憶部、61・・・第1の過去時刻生体情報記憶部、62・・・酸素消費量算出処理部(プログラム)、63・・・酸素消費量算出式記憶部、64・・・酸素消費量情報記憶部、65・・・第2の現在時刻生体情報抽出処理部(プログラム)、66・・・第2の現在時刻生体情報記憶部、70・・・第5の各種情報記憶部、71・・・第2の過去時刻生体情報抽出処理部(プログラム)、72・・・第2の過去時刻生体情報記憶部、73・・・人工肺酸素運搬量算出処理部(プログラム)、74・・・人工肺酸素運搬量算出式記憶部、75・・・人工肺酸素運搬量情報記憶部、81・・・静脈側酸素飽和度調節部(プログラム)、82・・・動脈側酸素飽和度調節部(プログラム)、83・・・動脈側酸素飽和度調節部(プログラム)、84・・・開始時刻記憶部、85・・・体内血液通過時間情報生成部(プログラム)、1R・・・循環回路、P・・・患者