(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の面取ツールは、高速回転させるための回転駆動源も面取ツールと一緒に支持して取り廻す必要があり、取り廻しが困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、取り廻しが容易な面取ツールと、面取ツールを容易に取り廻すことができるツール支持セット及び面取システムとの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、
前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し前記刃部は、前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋が、前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜し
、先端側に前記支持シャフトを有し、前記支持シャフトに対して偏心したベースシャフトを有する面取ツールである。
【0007】
請求項
6の発明は、前記すくい面と前記逃げ面との交差角が鈍角である請求項1
乃至5の何れか1の請求項に記載の面取ツールである。
【0008】
請求項
7の発明は、前記すくい面は、凹状に傾斜している請求項1
乃至6の何れか1の請求項に記載の面取ツールである。
【0010】
請求項
2の発明は、
面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し、前記刃部は、前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋は、
前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜していると共に、ベルヌイ螺旋であ
る面取ツールである。
【0011】
請求項
3の発明は、
面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し、前記刃部は、前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋は、
前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜していると共に、均一半径の円弧螺旋であ
る面取ツールである。
【0012】
請求項
4の発明は、
面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し、前記刃部は、前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋は、
前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜していると共に、アルキメデス螺旋であ
る面取ツールである。
【0013】
請求項8の発明は、1対の前記刃部が、共通の前記段差突部における前記支持シャフトの軸方向の両側に備えられている請求項1乃至7の
何れか1の請求項に記載の面取ツールである。
【0014】
請求項9の発明は、前記段差突部は、前記支持シャフトの軸方向に離れた2箇所に対をなして配置され、前記刃部は、1対の前記段差突部の互いの対向位置に配置されている請求項1乃至8の
何れか1の請求項に記載の面取ツールである。
【0015】
請求項10の発明は、1対の前記刃部が、共通の前記段差突部における前記支持シャフトの周方向の2箇所に配置されている請求項1乃至9の何れか1の請求項に記載の面取ツールである。
【0016】
請求項
5の発明は、
面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し、前記刃部は、前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋が、前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜し、前記段差突部は、前記支持シャフトの軸方向の途中位置に配置され、前記支持シャフトの先端には、テーパー部が備えられてい
る面取ツールである。
【0017】
請求項11の発明は、回転可能に支持されるホルダ支持部と、面取対象孔の開口縁を面取する面取ツールであって、支持シャフトと、前記支持シャフトの端面又は前記支持シャフトから側方に突出する段差突部の段差面をすくい面とし、前記支持シャフトの側面又は前記段差突部の側面と前記すくい面とを連絡する傾斜面を逃げ面とする刃部と、を有し、前記刃部は前記支持シャフトの中心軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状の刃筋を有し、前記刃筋が前記支持シャフトの軸方向に対して傾斜している面取ツールと、前記面取ツールを保持しかつ、前記ホルダ支持部の回転中心軸に対して前記支持シャフトの中心軸がオフセットした配置となるように前記ホルダ支持部に支持されるツールホルダと、前記ホルダ支持部に対して前記ツールホルダを傾動可能又は移動可能に支持するホルダ支持機構と、前記支持シャフトの中心軸が前記ホルダ支持部の回転中心軸から遠ざかる側に前記ツールホルダを付勢する付勢手段と、前記ホルダ支持部に設けられ、前記付勢手段の付勢により前記ツールホルダと当接し、前記ホルダ支持部の回転中心軸と前記支持シャフトの中心軸とが平行になる原点位置に前記ツールホルダを位置決めする位置決め部と、備えるツール支持セットである。
請求項12の発明は、回転可能に支持されるホルダ支持部と、請求項1乃至
10の何れか1の請求項に記載の面取ツールを保持しかつ、前記ホルダ支持部の回転中心軸に対して前記支持シャフトの中心軸がオフセットした配置となるように前記ホルダ支持部に支持されるツールホルダと、前記ホルダ支持部に対して前記ツールホルダを傾動可能又は移動可能に支持するホルダ支持機構と、前記支持シャフトの中心軸が前記ホルダ支持部の回転中心軸から遠ざかる側に前記ツールホルダを付勢する付勢手段と、前記ホルダ支持部に設けられ、前記付勢手段の付勢により前記ツールホルダと当接し、前記ホルダ支持部の回転中心軸と前記支持シャフトの中心軸とが平行になる原点位置に前記ツールホルダを位置決めする位置決め部と、備えるツール支持セットである。
【0018】
請求項13の発明は、請求項
11又は12に記載のツール支持セットの前記ホルダ支持部を回転可能に支持し、その回転中心軸を前記面取対象孔の中心軸に一致させて、その回転中心軸方向に直動させるツール駆動機構と、を備える面取システムである。
【発明の効果】
【0019】
[請求項1
〜5の発明]
請求項1
〜5の面取ツールを、支持シャフトの中心軸が面取対象孔に対して偏心した配置になるようにツールホルダに保持して面取対象孔の中心軸方向に移動し、刃筋を面取対象孔のエッジに当接させると、そのエッジに対して刃筋が面取対象孔の中心軸方向から見ても径方向から見ても斜めに交差した状態になる。この状態でツールホルダを面取対象孔の中心軸方向に移動して刃部を面取対象孔のエッジに押し付けると、エッジが切削されていく。また、切削された面に逃げ面が乗り上がることで、面取ツールが面取対象孔の径方向に傾動又は移動し、刃筋のうちエッジに切れ込む部分が移動すると共に、エッジのうち刃部が切れ込んでいる位置も移動していく。そして、面取ツールを面取対象孔の中心軸方向に移動しながらその中心軸回りに回転させるか、又は、面取ツールを面取対象孔の中心軸方向で面取対象孔の開口縁に接近及び離間させる動作を繰り返しかつ、離間している間に面取ツールを面取対象孔の中心軸回りに回転させる動作を行って、面取対象孔の全周のエッジを面取りすることができる。このように、本発明の面取ツールでは、面取ツールを高速回転させる駆動源を使わずに、面取対象孔の開口縁のエッジを面取りすることができる。即ち、面取ツールの取り廻しが容易になる。
【0020】
[請求項
6の発明]
請求項
6の面取りツールは、すくい面と逃げ面との交差角が鈍角であるため、強度を確保することができる。
【0021】
[請求項
7の発明]
請求項
7の面取りツールは、すくい面が凹状に傾斜しているので、すくい角の確保が容易となる。
【0022】
[請求項
1の発明]
請求項
1の面取りツールは、支持シャフトに対して偏心したベースシャフトを有する構成となっているので、支持シャフトをエッジに宛がった状態で、ベースシャフトの中心軸を軸に回転するだけでエッジ全体を切削することができる。
【0023】
[請求項
2〜4の発明]
刃筋の形状としては、ベルヌイ螺旋(請求項
2の発明)、円弧螺旋(請求項
3の発明)、アルキメデス螺旋(請求項
4の発明)、インボリュート螺旋が挙げられる。
【0024】
[請求項8の発明]
請求項8の面取ツールは、1対の刃部を共通の段差突部における支持シャフトの軸方向の両側に備えているので、面取対象孔の外部から支持シャフトを面取対象孔に接近させてその開口縁のエッジを面取りすることもできるし、面取対象孔の内部に支持シャフトを通して面取対象孔の開口縁のエッジを面取りすることもできる。
【0025】
[請求項9の発明]
請求項9の面取ツールでは、段差突部を支持シャフトの離れた2箇所に備え、1対の刃部が1対の段差突部の互いの対向位置に配置されているので、ワークを貫通する面取対象孔の両端部の開口縁のエッジを効率良く面取りすることができる。
【0026】
[請求項10の発明]
請求項10の面取ツールの構造によれば、面取対象孔の軸方向に対してワークの外面が傾斜していても、効率良く面取りを行うことができる。
【0027】
[請求項
5の発明]
請求項
5の面取ツールは、支持シャフトのテーパー部の案内により、支持シャフトの先端部を面取対象孔に容易に挿入することができる。
【0028】
[請求項
11〜13の発明]
請求項
11〜13のツール支持セット及び面取システムによれば、面取ツールを高速回転させる駆動源を使わずに、面取対象孔の開口縁のエッジを面取りすることができる。即ち、面取ツールの取り廻しが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を
図1A〜
図7に基づいて説明する。
図1Aに示すように、本実施形態の面取ツール10は、ベース軸部11(本発明の「ベースシャフト」に相当する)の先端同軸上に中間シャフト12が延び、その中間シャフト12の先端の偏心した位置から支持シャフト13が延びた構造をなしている。ベース軸部11、中間シャフト12及び支持シャフト13は何れも断面円形の丸棒状をなし、ベース軸部11、中間シャフト12、支持シャフト13の順で段階的に縮径している。
【0031】
以下、ベース軸部11及び中間シャフト12の中心軸を「第1中心軸J1」といい、支持シャフト13の中心軸を「第2中心軸J2」ということとする。
【0032】
支持シャフト13の先端部には、テーパー部13Tが備えられ、先端寄り位置には、段差突部20が設けられている。
図2に示すように、段差突部20は、支持シャフト13の側面から段付き状に突出している。
【0033】
図1B及び
図1Cに示すように、段差突部20は、側面20Sと、段差面20D、20Dとを備えている。段差面20D,20Dと、支持シャフト13の側面13Mとの交差角θ1は鋭角になっていて、段差面20D,20Dは、支持シャフト13の第2中心軸J2に対して凹状に傾斜している。段差突部20の側面20Sは、第1側面20A及び一対の第2側面20B,20Bから構成される。第1側面20Aは、支持シャフト13の軸方向(即ち、第2中心軸J2の軸方向)と平行になっている。第2側面20Bは、第1側面20Aの上下の両端から、支持シャフト13に近づくように傾斜している。第1側面20Aと第2側面20Bとの交差角θ2は鈍角になっている。
【0034】
本実施形態の面取ツール10は、段差突部20のうち、段差面20D,20Dと、第2側面20B,20Bと、が交差する稜線20R,20Rの一部を刃筋21S,21Sとする刃部21,21(
図2)を備えている。また、段差面20D,20Dと、第2側面20B,20Bとの交差角θ3は、鈍角になっている。
【0035】
なお、以下では、刃部21,21を区別する場合には、段差突部20のうち支持シャフト13の先端側の刃部21を第1の刃部21といい、その反対側の刃部21を、第2の刃部21という。また、
図2に示すように、これら第1と第2の刃部21,21は、対称形状をなしている。
【0036】
詳細には、
図3に示すように、第1中心軸J1と第2中心軸J2とに直交する第1基準線L1と側面20Sとの交点のうち第1中心軸J1に近い側を第1交点P1、遠い側を第2交点P3とすると、第2中心軸J2から段差突部20の側面20Sまでの距離は、第1交点P1に対して第1基準線L1より
図3の左側に僅かにずれた第1位置P2で最も小さく、第2交点P3に対して第1基準線L1より
図3の左側に僅かにずれた第2位置P4で最も大きくなっている。そして、第1位置P2から第2位置P4に向かう
図3における右側の段差突部20の側面20Sも、その反対側の左側の段差突部20の側面20Sも、共に外側に膨らみかつ、第2位置P4に近づくに従って第1中心軸J1からの距離が大きくなるように湾曲している。
【0037】
ここで、本実施形態の面取ツール10は、稜線20R,20Rの一部がベルヌイ螺旋になっている。具体的には、稜線20R,20Rは、稜線20Rを第2中心軸J2の軸方向からみたときに、
図3の前記右側のうち第1位置P2から第2交点P3の手前の中間位置P5までがベルヌイ曲線になっている。そして、稜線20R,20Rは、第1中心軸J1に近い位置(即ち、第1位置P2に近づくほど)ほど第1中心軸J1の軸方向で互いに離れ、第1中心軸J1から遠ざかるほど(即ち、第2位置P4に近づくほど)、第1中心軸J1の軸方向で互いに近づいていて、第2中心軸J2に対して傾斜して延びている(
図1)。即ち、稜線20R,20Rの一部は、ベルヌイ曲線が第2中心軸J2に対して傾斜して螺旋状に延びるベルヌイ螺旋となっている。なお、中間位置P5から第2位置P4までがベルヌイ曲線より第2中心軸J2側に接近した曲線になって中間位置P5までのベルヌイ曲線に連続している。また、前述の右側の側面20Sと左側の側面20Sは第2位置P4で滑らかに連続している。
【0038】
これら両稜線20R,20Rのうち上述した
図3の右側の部分における中間位置P6から第2位置P4までの間が、刃部21,21の刃筋21S,21Sになっている。また、
図2に示すように、段差面20Dのうち刃筋21Sに対応する部分が、各刃部21のすくい面23をなす一方、側面20Sを構成する第2側面20Bのうち刃筋21Sに対応する部分が、刃部21の逃げ面24になっている。なお、
図3に示すように、前記中間位置P6は、例えば、第1基準線L1と第2中心軸J2とに直交する第2基準線L2を
図3における反時計回り方向に傾けて稜線20Rと交差する位置となっている。
【0039】
図4には、面取ツール10を備えた面取システム41が一部概念化して示されている。この面取システム41は、本発明に係る「ツール駆動機構」として6軸垂直多関節のロボット40を備える。ロボット40の先端フランジ40Fには、ツール保持セット30Sが取り付けられている。ツール支持セット30Sは、ロボット40の先端フランジ40Fに取り付けられるホルダ支持部33と、そのホルダ支持部33に支持されて、面取りツール10が嵌合固定される本発明に係るツールホルダ30と、を有している。ホルダ支持部33は、ロボット40の先端フランジ40Fに回転中心軸J0を中心に回転可能に取り付けれ、そのホルダ支持部33にツールホルダ30が傾動可能に取り付けられている。
【0040】
ツールホルダ30は、例えば、一端有底の円筒体31の一端面から連結突片32が張り出した構造をなしている。円筒体31の内側はツール嵌合孔31Aになっていて、そこに面取ツール10のベース軸部11が嵌合固定される。また、連結突片32の先端部は半円状をなし、その半円状の円弧の中心部に、ピン孔32Aが貫通形成されている。
【0041】
ホルダ支持部33は、例えば、円板状の取付フランジ33Fの表側面の中央に直方体状の支持部本体33Sを備える。そして、ホルダ支持部33がロボット40の先端フランジ40Fに取付フランジ33Fの裏側面が重ねられかつ、心出しされた状態で取り付けられる。
【0042】
支持部本体33Sには、取付フランジ33Fと反対側に開放する内部空間33Kが備えられている。支持部本体33Sのうち内部空間33Kを挟んで
図4の紙面と直交する方向に対向する1対の第1側壁33A,33A(
図4には、一方の第1側壁33Aが示されている)の間隔は、前述の連結突片32の厚さと略同一になっている。一方、内部空間33Kを挟んで
図4の左右方向で対向する第2側壁33B,33Bの間隔は、前述の連結突片32の横幅より大きくなっている。
【0043】
1対の第1側壁33A,33Aには、内部空間33Kの開口より奥側位置に、取付フランジ33Fの中心軸と直交する図示しない支持孔が形成されている。そして、ツールホルダ30の連結突片32が内部空間33Kに受容され、支持孔と連結突片32のピン孔32Aとに支持ピン39が挿通され、これによりツールホルダ30がホルダ支持部33に傾動可能に支持されている。なお、各第1側壁33Aに形成された図示しない支持孔と連結突片32のピン孔32Aと支持ピン39とによって、本発明の「ホルダ支持機構」が構成されている。
【0044】
また、一方の第2側壁33Bの内面には、内部空間33Kの開口近傍にストッパ突部34(本発明の「位置決め部」に相当する)が形成され、連結突片32がストッパ突部34に当接することで、ツール嵌合孔31Aの中心軸と取付フランジ33Fの中心軸(即ち、回転中心軸J0)とが一致した原点位置にツールホルダ30が位置決めされる。
【0045】
さらに、他方の第2側壁33Bには、ストッパ突部34と対向する位置にプランジャ支持孔35が形成され、そこにプランジャ36が直動可能に収容されている。また、プランジャ支持孔35におけるホルダ支持部33の外面側端部は蓋体38によって閉塞され、蓋体38とプランジャ36との間には圧縮コイルばね37(本発明の「付勢手段」に相当する)が収容されている。これにより、プランジャ36が連結突片32に押し付けられ、ツールホルダ30が原点位置に保持されるように付勢されていると共に、プランジャ36側への傾動を許容されている。
【0046】
なお、面取ツール10をツールホルダ30に取り付ける際には、ツールホルダ30の傾動中心軸(即ち、支持ピン39の中心軸)と前述した第2基準線L2とを平行に配置し、第2中心軸J2を第1中心軸J1に対してストッパ突部34側に配置する。
【0047】
本実施形態の面取ツール10、ツール支持セット30S及び面取システム41の構成に関する説明は、以上である。次に、面取システム41を使用して、ロボット40のティーチングプレイバックによりワーク90に形成された面取対象孔91の両開口縁を面取りする場合について説明する。なお、その面取対象孔91は、ワーク90の外面と直交した状態でワーク90を貫通している。また、面取対象孔91は、その中心軸に本実施形態の面取ツール10の第1中心軸J1を重ねた状態で丁度面取りを行うことができる大きさになっている。
【0048】
以下の動作をティーチングによりロボット40に憶えさせる。まず、面取対象孔91の中心軸に面取ツール10の第1中心軸J1を重ねた状態で、面取ツール10を第1中心軸J1の軸方向に前進させる。すると、
図5(A)に示すように、第1の刃部21の中間位置P6の近傍に面取対象孔91の一端側のエッジ93が当接するので、そこを初期位置にして面取ツール10を第1中心軸J1を中心にして365度回転させると共に、第1中心軸J1と平行に面取対象孔91側に前進させる。その際の面取ツール10の回転方向は、第1の刃部21においてエッジ93に最初に当接した初期当接位置から、第2位置P4へと向かう側に設定する。また、第1中心軸J1の軸方向の移動量は、第1の刃部21の刃筋21Sに沿って、初期当接位置から第2位置P4まで移動したときの第1中心軸J1の方向における距離に設定する。
【0049】
次いで、段差突部20が面取対象孔91の内面から離れるように面取ツール10を平行移動し、
図7に示すように、段差突部20が面取対象孔91を通過する位置まで面取ツール10を前進させる。そして、面取対象孔91の中心軸に面取ツール10の第1中心軸J1を重ねた状態で、面取ツール10を第1中心軸J1の軸方向に後退させて、第2の刃部21を面取対象孔91の他端側のエッジ93に当接させる。以下、面取対象孔91の一端側のエッジ93に対するティーチングと同様に、面取ツール10を第1中心軸J1を中心にして面取ツール10を365度回転させながら、第1中心軸J1と平行に面取対象孔91側に後退させる。そして、段差突部20が面取対象孔91の内面から離れるように面取ツール10を平行移動してから、面取ツール10を面取対象孔91から離脱させる。
【0050】
上述の如くティーチングした動作をプレイバックすると、面取ツール10が第1中心軸J1の軸方向に移動して第1の刃部21の刃筋21Sが面取対象孔91の一端側のエッジ93に当接する。このとき、刃筋21Sは、第1中心軸J1の軸方向から見ても(
図5(A)参照)、第1中心軸J1と直交する回転半径方向から見ても(
図2参照)、エッジ93に対して斜めに交差した状態になる。
【0051】
この状態で面取ツール10が第1中心軸J1の軸方向に移動することで、第1の刃部21が面取対象孔91のエッジ93に押し付けられ、エッジ93が切削されていく。このとき、第1の刃部21のうち第1段差面20Dがすくい面23となり、第2側面20Bが面が逃げ面24となってエッジ93が切削される。
【0052】
そして、切削された面に第1の刃部21の逃げ面24が乗り上がることで、面取ツール10が回転半方向に傾動して刃筋21Sのうちエッジ93に切れ込む部分が移動すると共に、エッジ93のうち第1の刃部21が切れ込む部分も移動していく。また、このとき、面取ツール10は、第1中心軸J1の軸方向に移動しながら第1中心軸J1回りに回転もするので、これによってもエッジ93のうち第1の刃部21が切れ込んだ部分が移動していく。
【0053】
そして、
図5(A)〜
図5(E)に示すように、面取対象孔91の全周に亘ってエッジ93が面取りされ、最終的に段差突部20の側面20Sが面取対象孔91の内側面にした状態になる。
図6には、
図5(A)〜
図5(E)が重ねて示されている。なお、
図5及び
図6は、面取りツール10の動きをわかりやすくするために、
図1に示される第1中心軸J1と、第2中心軸J2との距離を大きくしている。
【0054】
次いで、面取ツール10が前進して
図7に示すように、段差突部20が面取対象孔91を通過してから後退し、第2の刃部21の刃筋21Sが面取対象孔91の他端側のエッジ93に当接する。そして、一端側のエッジ93を第1の刃部21が面取りする場合と同様にして、他端側のエッジ93が第2の刃部21によって面取りされてから、面取ツール10が面取対象孔91から離脱する。
【0055】
このようにして本実施形態の面取ツール10、ツール支持セット30S及び面取システム41によれば、面取ツール10を高速回転させる駆動源を使わずに、面取対象孔91の開口縁92のエッジ93を面取りすることができる。即ち、面取ツール10を容易に取り廻すことができ、従来より少ないエネルギーで面取対象孔91のエッジ93の面取り加工を行うことができる。また、刃筋21Sの形状の大部分がベルヌイ螺旋になっているので、そのベルヌイ螺旋の範囲では、刃筋21Sのどの位置が面取対象孔91のエッジ93に当接しても、面取対象孔91のエッジ93に対する刃筋21Sの角度が一定になる。これにより、面取対象孔91の周方向における面取り形状の均一化が図られる。
【0056】
さらには、面取ツール10は、刃部21を共通の段差突部20における第1中心軸J1の軸方向の両側に備えているので、上述したように面取対象孔91の外部から支持シャフト13を面取対象孔91に接近させてその開口縁92のエッジ93を面取りすることもできるし、面取対象孔91の内部に支持シャフト13を通して面取対象孔91の開口縁92のエッジ93を面取りすることもできる。また、逃げ面24を傾斜面としたので、加工後のエッジ93に逃げ面24が乗り上がり易くすることができる。
【0057】
本実施形態の面取ツール10は、支持シャフト13のテーパー部13Tの案内により、支持シャフト13の先端部を面取対象孔91に容易に挿入することができる。また、すくい面23と逃げ面24との交差角を鈍角としたので、刃部21の強度を確保することができる。さらに、すくい面23を凹状に傾斜させたので、すくい角の確保が容易となる。
【0058】
さらに、本実施形態の面取ツール10は、支持シャフト13から側方に突出する段差突部20に刃部21を備えた構造になっているので、支持シャフト13の側面を面取対象孔91の内側面に当接させて、刃筋21Sと面取対象孔91のエッジ93とが当接する位置に容易に決めすることができる。しかも、支持シャフト13のテーパー部13Tの案内により、支持シャフト13の先端部を面取対象孔91に容易に挿入することができる。
【0059】
なお、面取対象孔91の中心軸に面取ツール10における第1中心軸J1を重ねた状態で、面取ツール10を第1中心軸J1の軸方向に直進させたときに、第1の刃部21と面取対象孔91のエッジ93とが当接しない場合には、以下のようにティーチングすればよい。即ち、支持シャフト13の先端部を面取対象孔91に突入させてから、面取ツール10を第1基準線L1の方向に移動して
図5の右上に示すように支持シャフト13の側面を面取対象孔91の内周面に当接させる。そして、第1中心軸J1の軸方向に移動して第1の刃部21を面取対象孔91の一端側のエッジ93に当接させる。この状態で、面取対象孔91の中心軸を回転中心軸として面取ツール10を回転させながら直進させればよい。これにより、前述の場合と同様に、面取対象孔91のエッジ93を面取りすることができる。
【0060】
[第2実施形態]
本実施形態の面取ツール10Vは、
図8に示されており、前記第1実施形態の面取ツール10に比べ、支持シャフト13が長くなっていて、その支持シャフト13の基端位置と先端寄り位置の2箇所に段差突部50,51を備えている。そして、それら段差突部50,51の互いの対向位置に刃部21,21を備えている。本実施形態の面取ツール10Vの構成によっても、ワーク90を貫通する面取対象孔91の両端部のエッジ93を効率良く面取りすることができる。
【0061】
[第3実施形態]
本実施形態の面取ツール10Wは、
図9〜
図13に示されている。
図9に示すように、本実施形態の面取ツール10Wは、ベース軸部11の先端同軸上に支持シャフト59を備え、その支持シャフト59の先端寄り位置から段差突部60が突出した構造をなしている。ベース軸部11及び支持シャフト59の中心軸である第1中心軸J3の軸方向から見ると、
図10に示すように、段差突部60は、第1中心軸J3に対してオフセットした第2中心軸J4を中心とする円形状をなしている。そして、段差突部60の側面60Sである円に対して支持シャフト59の側面59Sである円が内接している。
【0062】
ここで、支持シャフト59の側面59Sのうち上記内接位置から180度離れた位置を第1基準位置P8とすると、
図11に示すように段差突部60の両稜線60R,60Rは、第1基準位置P8から離れるに従って互いに離れ、第1基準位置P8から左右にそれぞれ90度離れた位置からは、
図12に示すように互いに平行になっている。また、段差突部60は、
図10に示すように、前記内接位置と第1基準位置P8とに直交する第3基準線L3に対して対称であると共に、
図11に示すように、軸方向においても対称な形状となっている。そして、稜線60Rのうち段差突部60の周方向と軸方向との両方向で対称配置された4つの螺旋曲線部分を刃筋61Sとする4つの刃部61が段差突部60に備えられている。
【0063】
本実施形態の面取ツール10Wによれば、面取ツール10Wを時計回りに回転させながら前進又は後退させる動作と、面取ツール10Wを反時計回りに回転させながら前進及び後退させる動作との何れによっても面取りを行うことができる。これにより、例えば、面取対象孔91の軸方向に対してワーク90の外面が傾斜しているような場合や、
図13に示すように、ワーク90の角部に跨がって面取対象孔91の開口が形成されている場合であっても、それら面取対象孔91のエッジ93を容易に面取りすることができる。その場合、面取ツール10Wを回転中心軸方向で面取対象孔91の開口縁92に接近及び離間させる動作を繰り返しかつ、離間している間に面取ツール10Wを回転中心軸回りに回転させる動作を行って、面取対象孔91の全周のエッジ93を面取りすればよい。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
(1)上記実施形態の面取りツール10,10V,10Wは、ベース軸部11及び中間シャフト13の第1中心軸J1と、支持シャフト13の第2中心軸J2とがズレるように配置されていたが、第1中心軸J1と第2中心軸J2とが同軸上にあってもよい。この場合、第2中心軸J2が回転軸に対して偏心するように配置されていればよく、例えば、取付フランジ33Fの中心軸に対してツール嵌合孔31Aの中心軸が偏心した位置に配置してもよい。
【0066】
(2)面取りツール10,10V,10Wを第1中心軸J1側に向けて傾斜可能な構成であれば上記実施形態に限らず、他の構成であってもよい。例えば、特許5550187号公報に開示されているツールホルダを用いてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、支持シャフト13の先端(テーパー部13T)の形状は、先端側に向かうにつれて窄まるテーパー状に形成されていたが、先端の形状が半球状に形成されてもよいし、支持シャフト13と同径の円柱状に形成されてもよい。
【0068】
(4)
図14(A)に示すように、支持シャフト13Xの先端にテーパー部13Tを設けない構成としてもよい。また、
図14(B)に示すように、支持シャフト13S段差突部20を設けない構成とし、支持シャフト13Sの先端に刃筋21Sが形成されてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、テーパー部13Tが支持シャフト13の中心を先端とする円錐形状となっていたが、
図15に示すように、テーパー部13Tの先端が、ベース軸部11の中心を先端とする偏心円錐形状であってもよい。
【0070】
(6)上記実施形態では、段差突部20の第2側面20Bと段差突部20の段差面20D,20Dとの交差角が、鈍角になっていたが、鋭角であってもよい。
【0071】
(7)上記実施形態では、段差突部20の側面20Sが第1側面20Aと第2側面20B,20Bとから構成されていたが、側面20Sが第2側面20B,20Bを有さない構成であってもよい。このとき、第1側面20Aと段差面20Dとが交差する稜線が刃筋となる。また、その際、段差突部20の第1側面20Aと段差面20Dとの交差角は、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。
【0072】
(8)上記実施形態では、
図1Bに示すように、段差突部20の第1側面20Aは支持シャフト13の第2中心軸と平行に延びていたが、段差突部20の第1側面20Aが第2中心軸J2に対して傾斜又は湾曲するように延びていてもよい。なお、第2側面20Aが傾斜又は湾曲して延びる場合には、第1側面20Aが第2中心軸J2の軸方向において段差突部20の端部に近づくほど、支持シャフト13に近づく構成であることが好ましい。
【0073】
(9)上記実施形態では、刃筋21Sの形状としてベルヌイ螺旋を例示したが、例えば、円弧螺旋、アルキメデス螺旋、インボリュート螺旋であってもよい。