(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592488
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】電子たばこ
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
A24F47/00
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-194129(P2017-194129)
(22)【出願日】2017年10月4日
(62)【分割の表示】特願2015-506059(P2015-506059)の分割
【原出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-29608(P2018-29608A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514218458
【氏名又は名称】フォンテム ホールディングス 1 ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】110000132
【氏名又は名称】大菅内外国特許事務所特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン リク
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0036346(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/091593(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101228969(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 11/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(10)と、前記筐体内のヒーター(40)とを備えた電子たばこであって、
前記筐体(10)内にメッシュ材料の平坦な薄層(32)を備え、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)は前記筐体(10)内の液体と接触しており、
液体が前記ヒーター(40)と直接接触しないように、かつ、前記ヒーター(40)により加熱された空気が、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)を通って流れると共に前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)の上又は中の液体を蒸発させるように、前記ヒーター(40)は前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)から長手方向に離隔して配置されている、ことを特徴とする電子たばこ。
【請求項2】
前記ヒーター(40)は、前記筐体(10)内の液体貯蔵部(34)を通って延びる中央開口部(36)と一列に並んだ空気通路(38)を有するヒーターサポート(28)の中に設けられている、請求項1に記載の電子たばこ。
【請求項3】
前記ヒーターサポート(28)に接したコレクター(30)をさらに含み、前記コレクターは、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)から4mm未満離隔している、請求項2に記載の電子たばこ。
【請求項4】
前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)は、2mm未満の厚さを有する繊維材料を含む、請求項1に記載の電子たばこ。
【請求項5】
前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)の外側領域は前記液体と接触しており、かつ、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)の内側領域は、前記液体貯蔵部(34)を通って延びる前記中央開口(36)を覆っている、請求項2に記載の電子たばこ。
【請求項6】
前記筐体(10)内の1つ以上の吸気口と、前記ヒーター(40)を含む通路(38)と、前記液体貯蔵部(34)を通って排気口(42)まで延びている中央開口部(36)とを含む、前記筐体(1)を通る流路をさらに含み、前記ヒーターは前記筐体内の全ての液体よりも前記1つ以上の吸気口に近接している、請求項2に記載の電子たばこ。
【請求項7】
前記筐体(10)中の流量センサー(20)及び電子回路と電気的に接続された電池(16)をさらに備え、
前記ヒーター(40)は、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)から長手方向に離隔したヒーターサポート(28)内のヒーターコイルであり、前記ヒーターコイルは、前記電子回路に電気的に接続され、
前記ヒーターサポート(28)内の通路(38)と、液体貯蔵部(34)を通って排気口(42)まで延びている中央開口部(36)とを含む、前記筐体(10)内の空気流路をさらに備える、請求項1に記載の電子たばこ。
【請求項8】
前記空気流路が、前記筐体(10)内の1つ以上の吸気口と、前記流量センサー(12)内の開口部とをさらに含む、請求項7に記載の電子たばこ。
【請求項9】
筐体(10)内にヒーター(40)を有する電子たばこ内の液体を蒸発させる方法であって、
メッシュ材料の平坦な薄層(32)まで液体を導くことと、
ヒーター(40)に電流を供給することと、
前記ヒーター(40)を介して空気を加熱することと、を含み、
液体が前記ヒーター(40)と直接接触しないように、かつ、前記加熱された空気が、前記ヒーターから前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)を通って下流へ導かれると共に前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)の上又は中の液体を蒸発させるように、前記ヒーター(40)が前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)から長手方向に離隔している、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記蒸発した液体を前記加熱された空気に混入させて、蒸発した液体及び加熱された空気の混合物を形成することと、
前記混合物を、液体貯蔵部(34)内の中央開口部(36)を通って排気口(42)まで流すことと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヒーターサポートの通路内に前記ヒーター(40)を配置することと、
前記通路を前記空気が通り抜けるとともに、前記筐体(10)の吸気口を介して前記筐体(10)内に周囲の空気を取り込むことと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒーターサポート(28)内の通路(38)内に前記ヒーターを配置することを含み、前記液体貯蔵部(34)内の前記中央開口部(36)は、前記ヒーターサポート(28)内の前記通路(38)の長さよりも少なくとも5倍大きい長さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記空気は、前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)を通って導かれる際に、200℃〜300℃に加熱される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱された空気が前記メッシュ材料の平坦な薄層(32)を通り抜けた後、前記液体貯蔵部(34)を取り囲んでいる環状流路(56)を通して前記加熱された空気を導くことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子たばこは、本物の巻きたばこの代用としてますます喫煙者によって使用される。一般に、電子たばこは、液体ニコチン、又は他の液体物質を蒸発させるためにワイヤーコイルヒーターを使用する。吸い口で利用者が吸入すると、センサーによって検出され、電子回路にバッテリーからヒーターに電流を供給させる。液体がワイヤーコイルヒーターと接触して、蒸気又は霧を作り出す。また、利用者が吸入すると、周囲の空気を電子たばこ筐体の1つまたは複数の吸気口に典型的に吸い込む。蒸気は、筐体を通って進む空気の流れに混入され、利用者に吸入される。
【0002】
電子たばこには、本物の紙巻きたばこを上回る多くの利点がある。最初に、タール及び肺がんと関連があるたばこ中の他の化学物質が、単に電子たばこには存在しないだけで、本物の紙巻きたばこと関係がある肺がんのリスクが大幅に回避される。電子たばこは、蒸気又はミストを発生し、煙は出ない。その結果、電子たばこの使用においては同様の受動喫煙の問題はない。また、電子たばこには燃焼物質が存在しないので、火災の危険性は排除される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの電子たばこの設計は、さまざまな成功の度合いで、提案され使用されている。既存の設計ではあるが短い寿命、十分でない噴霧、液滴の異なるサイズによって引き起こされる不均一性の蒸気、及び熱し過ぎた蒸気などの、さまざまな欠点がある。したがって、電子たばこを改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
今や既存の設計を上回る大幅な改善を提供する新しい電子たばこが、発明されている。この新しい電子たばこでは、メッシュ要素は液体貯蔵と接触している。ヒーターは、メッシュ要素から離隔し、メッシュ要素を通って流れる空気を加熱するために配置される。加熱された空気は、メッシュの中の又はメッシュ上の液体を蒸発させる。蒸気は、利用者に吸入される。
【0005】
別の態様では、ヒーターは、液体貯蔵を通って延びる中央開口部と一列に並ぶ空気通路を有するヒーターハウジング内部に配置されてもよい。あるいは、液体貯蔵の外側の周囲にある環状流路を用いてもよい。
【0006】
現在の電子たばこは、流量センサー、回路基板及びヒーターと電気的に接続された筐体中の電池を含んでもよい。筐体を通る流路は、筐体内の1つまたは複数の吸気口、ヒーターを含む通路、及び液体貯蔵を通って排気口まで延びている中央開口部を通って形成されてもよい。
【0007】
別の態様では、電子たばこの液体を蒸発させる方法は、液体貯蔵からメッシュ要素まで液体を送ることを含む。電流は、排気口又は電子たばこのマウスピースで吸入の検知に任意に反応して、ヒーターに供給される。メッシュ要素上又はメッシュ要素中の液体を蒸発させる加熱された空気であって、ヒーターは空気を加熱し、加熱された空気はメッシュ要素を通って送られる。蒸発した液体は、加熱された空気に混入され、それからマウスピースまで液体貯蔵を通り抜けるか又は液体貯蔵の周辺に流れることができる。
【0008】
さらに他の目的及び利点は、例として提供される以下の詳細な説明から明らかになるであろうし、本発明の限定の明細書として意図されない。その上、本発明は、記載した要素及び工程のサブコンビネーションにおいても存在する。
【0009】
図面において、同じ参照番号は、図のそれぞれに同じ要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示す電子たばこの構成要素の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を詳細に参照すると、
図1および
図2に示すように、電子たばこは、ねじ山又は他の取り付け具によって、後方部14に取り付けられた前方部12を任意に備えた筐体10を有する。電池16及び回路基板24は
前方部12の内部に収容されてもよく、
上記回路基板24は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/208,257号に更に記載されるよう
に、流量センサー20及びヒーターコイル40と電気的に接続され
ている。液体貯蔵
(液体貯蔵部)34は、筐体10の後方部14の内部に収容される。液体貯蔵34は、繊維材料であってもよく、筐体の後方部14の中に直接に
一塊(ひとかたまり)に緩く備え付けられるか、又は別の構成要素若しくはカートリッジ
内に又はその一部として備え付けられてもよい。液体貯蔵は、液体ニコチン、又は蒸発及び吸入用の別の液体を含んでもよい。
発泡体又は多孔性金属又はセラミックなどの他の材料は、液体貯蔵34として任意に用いられてもよい。
【0012】
ヒーターコイル40は、ヒーターサポート28を貫通して通路38内に配置されてもよい。ヒーター筐体、例えば、セラミック材料は、筐体内に固定される。
随意に設けられるコレクター30は、ヒーターサポート28の後端部に取り付けられてもよく、通路もコレクター30の中心を通って延びる。使用される場合、コレクター30は、Silastic(商標登録)シリコーンエラストマー、又は他の高温不活性シリコンエラストマー若しくはプラスチック材料で作られてもよい。
【0013】
液体貯蔵34の前端部のメッシュ要素又はスクリーン32は、コレクター30の後端部からわずかに間隔を置き、寸法BBは約0.5〜2、又は4mm、及び典型的に約1mmである。メッシュ32は、ガラス繊維、又は他の多孔質材料であってもよく、液体ニコチンなどの液体貯蔵の液体を吸い上げることができる。メッシュ32は、約0.1〜2mm、0.2〜1mm、又は0.3〜0.6mm、典型的な4mmの範囲の厚さ又は
図2の寸法AAを有してもよい。
【0014】
開口部36は、メッシュ32から液体貯蔵34の中心を通って筐体10の後端部の排気口42まで延びる。流路は、1つまたは複数の吸気口18、センサー20の貫通開口、流管22、通路38及び排気口42に通じる開口部36を通って筐体10を通り抜けて形成されてもよい。特に明記しない限り、図面に示す構成要素の位置は重要ではなく、構成要素は、必要又は所望に応じて位置を変えてもよい。
【0015】
さらに、
図1及び
図2を参照すると、使用例では、利用者は、排気口42で吸入する。センサー20は、吸入を検出し、ヒーターコイル40に電流を供給する。空気は、吸気口18を通って筐体の流路に吸い込まれる。気流は、通路38を通り抜け、ヒーターコイル40によって熱せられる。加熱量は、設計によって異なってもよい。その一例として、通路の出口において200〜300℃の空気温度は、ヒーターの電力及びヒーターを通った又は過ぎた空気流特性を調節することによって使用されてもよい。使用される場合、コレクター30は、熱風を集めメッシュ32まで誘導する手助けをしてもよい。また、コレクター30は、メッシュ32から離れてヒーターコイル40及びヒーターサポート28の間に間隔を置くために用いられてもよい。コレクターは、任意にヒーターサポート28の一部となってもよい。
【0016】
メッシュ32は、薄いシート又は層として提供され、十分に開いた構造を有しており、したがって加熱された空気は過剰な流動抵抗がなく通り抜けることができる。メッシュ32は、繊維の表面上に、及び/又は繊維間のすき間に液体を吸い上げ保持でき、また空気を通すことができる緩いガラス繊維、ガラス繊維織物若しくは同様の材料のシート又は層であってもよい。あるいは、耐熱性発泡材料を、メッシュの代わりに用いてもよい。
【0017】
加熱された空気は、メッシュ32を通り抜けて流れる。これはメッシュ中の又はメッシュ上の液体を加熱し、液体を霧化又は気化する。蒸気は、加熱された空気に混入され、利用者に吸入された空気及び蒸気の混合物で、メッシュ32から開口部36及び排気口42を通って流れ続ける。加熱された空気は、メッシュ32及び開口部36を通り抜けるにつれて、かなり冷却することができ、したがって利用者は、例えば25〜50℃の快感温度で排気口から空気を吸入する。
【0018】
図3及び
図4は、同様の動作を有する代替設計を示すが、
図1及び
図2のように、液体貯蔵を通り抜けるというよりはむしろ液体貯蔵要素54の外側の周囲に広がっている空気流路を備えている。
図3及び
図4の代替設計では、液体貯蔵は、環状流路56によって囲まれており、織物又はメッシュ管52から排気口42まで通じている。また、
図3及び
図4に示すように、メッシュ管52は、液体貯蔵と接触してプレート部62を有する。メッシュ管52のネック部64は、プレート部62からヒーター28に向かって延びている。液体貯蔵54の液体は、プレート部を通って、ネック部64の中に吸い込む。ネック部を通って外に向かって放射状に拡散している加熱された空気は、液体を気化して霧又は蒸気を作り出し、霧又は蒸気は流路56を通って引き込まれ利用者に吸入される。織成チューブ62は、綾織りで製造され、切断端部のほつれを防止するために、熱刃で切断されてもよい。もちろん、
図2に示す薄い平らなメッシュ構成要素32は、
図3に示すように環状流路56を有する実施形態でも用いられてもよい。
【0019】
上述の設計では、液体はヒーターコイルに直接接触しない。このことはヒーターコイル40に集まる沈着物及び液体残渣に起因する加熱効率の損失を回避する。ヒーターコイルへの熱衝撃
及び腐食が低減されるので、ヒーターコイルの寿命を長くすることも可能に
なる。また、液体を低温で蒸発させるので、蒸発は向上する。ヒーターコイル自体は、500℃の範囲内の温度で動作することができる。このことは、液体が蒸発する
際に、液体の化学変化を引き起こす場合がある。ヒーターコイルと液体の間の接触を避けることによって、及び加熱された空気を使用して液体を蒸発することによって、蒸発中に生じる化学変化を低減することができる。
【0020】
更に、ヒーターコイル40が液体と接触しないので、ヒーターコイルは、銀又はニッケルクロムなどの、耐食性材料でメッキされてもよい。液体によって接触した場合に分解されるであろうこれらの種類の材料の使用は、ヒーターコイルの寿命を延ばす。ヒーターコイルの寿命をはるかに長くすることができるので、ヒーターコイルは、既存の設計には普通にあることだが、使い捨てアイテムではなく、再利用可能な部品として製造することができる。このことは、低コストが可能になる。
【0021】
既存の既知の電子たばこでは、加熱装置又はコイルは、液体を蒸発させ得る前に、最初にニコチン液体を加熱する必要がある。
本発明の電子たばこは、ヒーターコイル40が液体ではなく空気を加熱する
ので、この最初の工程を省略する。したがって、本明細書に記載の新しい設計も、既知の設計と比較してより速い蒸発を達成する。
【0022】
このようにして、新たな設計が示され、説明されてきた。もちろん、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更及び置換を行うことができる。したがって、本発明は、下記の特許請求の範囲及びそれらの均等物による場合を除いて、限定されるべきではない。