特許第6592495号(P6592495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592495電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592495
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20191007BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20191007BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20191007BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20191007BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20191007BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/0583
   H01M4/02 Z
   H01M4/13
   H01G11/12
   H01G11/84
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-233205(P2017-233205)
(22)【出願日】2017年12月5日
(65)【公開番号】特開2019-102315(P2019-102315A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
(72)【発明者】
【氏名】菅野 佳実
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−054716(JP,A)
【文献】 特公昭43−020754(JP,B1)
【文献】 特開2016−170888(JP,A)
【文献】 特開2011−003518(JP,A)
【文献】 米国特許第05525441(US,A)
【文献】 特開2016−076329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/12
H01G 11/84
H01M 4/00−4/62
H01M 10/0583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、
並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、
前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、
前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であり、
前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層されたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記正極電極の前記正極本体の表裏面と周面を覆う張出し部と、前記電極接続部の表裏面および周面を覆う接続部を具備する数珠繋ぎ状のセパレータで前記正極電極が覆われ、
前記セパレータの張出し部の外周輪郭と前記負極電極の負極本体の外周輪郭が前記つづら折り状態で揃えられるとともに、
前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭が配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、
並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、
前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、
前記正極電極における前記複数の電極接続部の長さが同一とされ、前記負極電極における前記複数の電極接続部の長さが同一とされ、
前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、
前記重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭が重ね合わせ層ごとに位置ずれされ、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に配置されたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項4】
前記基準重ね合わせ部を基準として、
一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされ、
他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされたことを特徴とする請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、
並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、
前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、
前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、
前記基準重ね合わせ部を基準として、
一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされ、
他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項6】
前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭が配置されたことを特徴とする請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、直線状、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記基準重ね合わせ部を基準とした一側へのつづら折り部分と他側へのつづら折り部分のどちらか一方または両方に接続電極端子が導出されたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
並んで配置された複数の正極本体および隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、
並んで配置された複数の負極本体および隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極を用い、
前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの正極電極に前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極をセパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部を構成し、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極を交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層し、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極を交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭を配置することを特徴とする請求項9に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
前記複数の電極接続部の長さが同一の正極電極と、前記複数の電極接続部の長さが同一の負極電極を用い、
前記基準重ね合わせ部を基準として、
一側への重ね合わせにおいて、重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭を重ね合わせ層ごとに位置ずれするように、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に入るように重ね合わせ、
他側への重ね合わせにおいて、重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭を重ね合わせ層ごとに位置ずれするように、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に入るように重ね合わせることを特徴とする請求項9に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
前記基準重ね合わせ部を基準として、
一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくなるように重ね合わせ、
他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくなるように重ね合わせることを特徴とする請求項9に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
前記基準重ね合わせ部を基準とした一側へのつづら折り部分と他側へのつづら折り部分のどちらか一方または両方に接続電極端子を導出したことを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項14】
前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、直線状、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であることを特徴とする請求項9〜請求項13のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン、ウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいては、電池容量並びに充電電流及び放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極どうしの面積を大きくすることが必要である。電気化学セルの構造としては、一対の帯状の電極を帯状のセパレータを介して対向させてケースに収め、電解液を電極及びセパレータに含浸させた構造が知られている。
【0003】
例えば、帯状の電極及び帯状のセパレータを巻回し、筒状又はコイン状のケースに収容した構造、扁平状に変形させた後にラミネートフィルムに収容した構造が知られている。
近年、ウエアラブル機器の薄型化の要求に対応して、帯状の電極及び帯状のセパレータをつづら折り形状とした構成も検討されている。例えば、以下の特許文献1では、帯状の電極をセパレータ袋体に収容した構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−243455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、帯状の電極をセパレータ袋体に収容する構成では、巻回、積層、つづら折り等を行う場合に電極の積層位置(対面位置)がずれる可能性がある。特に、つづら折り構造の電極を採用する場合、帯状の電極がセパレータ袋体に収容された状態で交互に折り曲げられるため、電極の対向面が位置ずれする可能性が高くなる。
例えば、積層数が少ない場合は対面位置ずれの寸法が小さいので構造的な誤差範囲として吸収できることもあるが、積層数が多い場合、位置ずれの寸法も大きくなるので、電極の位置ずれが無視できなくなるおそれがある。
【0006】
特に電池の容量を大きくするために積層数を大きくした電気化学セルを構成する場合、積層した電極毎の対面位置ずれが無視できなくなるおそれがあった。
例えば、つづら折り状の電極を複数積層する場合、1つ下の電極を周回するように次の電極を折り込むので、周回する際の回り込み誤差、つづら折りする際の折り曲げ部分の誤差、積層位置決めの誤差などが累積され、電極毎の対面位置ずれの誤差が大きくなる。
したがって、従来の電気化学セルにおいては、電極の積層位置(対面位置)がずれることを抑制する上で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、以上説明のような従来の実情に鑑みなされたものであり、つづら折り構造の電極を用いて積層型の電気化学セルを構成する場合、積層した電極毎の対面位置ずれを抑制できる構造とした電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
「1」上記課題を解決するため、本発明の一形態に係る電気化学セルは、並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であり、前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層されたことを特徴とする。
【0009】
数珠繋ぎ状の正極本体または負極本体の途中部分を重ねた基準重ね合わせ部を境としてその一側と他側に個別につづら折り状とするならば、一側のつづら折り部分に生じている正極本体の対面位置の位置ずれ量が他側のつづら折り部分に生じている正極本体の対面位置の位置ずれ量に影響を及ぼさない構造を採用できる。一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分とでそれぞれの位置ずれ量を少なくしておけば、積層構造全体として正極本体の対面位置ずれ量を小さくできる。
【0010】
この点、積層するべき全ての正極本体が繋がって端部側から順次つづら折り状に重ね合わされる構造であると、重ね合わせ構造の始端側から終端側まで位置ずれが順次累積されて大きくなる。このため、正極本体の対面位置の位置ずれ量が大きくなる問題がある。
一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分で生じる正極本体の位置ずれ量を少なくしておくことにより、積層構造全体とした場合の正極本体の対面位置ずれを抑制できる。正極本体の対面位置ずれを抑制することで、電気化学セルの容量低下を防止できる。
【0011】
「2」前記一形態の電気化学セルでは、前記正極電極の前記正極本体の表裏面と周面を覆う張出し部と、前記電極接続部の表裏面および周面を覆う接続部を具備する数珠繋ぎ状のセパレータで前記正極電極が覆われ、前記セパレータの張出し部の外周輪郭と前記負極電極の負極本体の外周輪郭が前記つづら折り状態で揃えられるとともに、前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭が配置された構成を採用できる。
【0012】
電気化学セルの積層構造において、負極本体の外周輪郭の内側に正極本体の外周輪郭が配置されていることが望ましい。正極本体の外周輪郭のはみ出し量が大きい場合、電気化学セルに適用されるイオンを構成する金属の析出のおそれ、容量低下のおそれを生じる。
このため、前記正極本体の表裏面と周面を覆う張出し部を有するセパレータで前記正極電極を覆う構成を採用し、セパレータの張出し部の外周輪郭と前記負極本体の外周輪郭をつづら折り状態で重ねて揃えることが好ましい。
【0013】
「3」本発明の一形態に係る電気化学セルは、並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、前記正極電極における前記複数の電極接続部の長さが同一とされ、前記負極電極における前記複数の電極接続部の長さが同一とされ、前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、前記重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭が重ね合わせ層ごとに位置ずれされ、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に配置されたことを特徴とする。
【0014】
電気化学セルの構造において、負極本体の外周輪郭の内側に正極本体の外周輪郭が配置されていることが望ましい。正極本体のはみ出し量が大きい場合、電気化学セルに適用されるイオンを構成する金属の析出のおそれ、容量低下のおそれがある。基準重ね合わせ部分を境とする一側と他側の重ね合わせ部分において、位置ずれ量の最大の層であっても正極本体の外周輪郭が負極本体の外周輪郭の内側に配置されていることでこれらの問題を回避できる。
【0015】
数珠繋ぎ状の正極本体と負極本体を交互に端部から単純に重ね合わせると、電極接続部と電極接続部の長さが同一の場合、重ね合わせの層数増加に応じ、重ね合わせ誤差等によって負極本体に対する正極本体の重ね合わせ位置が徐々にずれてくる。
正極本体と負極本体を交互に単純に重ね合わせるのではなく、数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極に数珠繋ぎ状の途中部分の負極電極を重ね合わせた基準重ね合わせ部を構成し、この基準重ね合わせ部の一側につづら折り状に、また、他側につづら折り状にそれぞれつづら折り構造とする。これにより、基準重ね合わせ部の一側でのつづら折り回数と他側でのつづら折り回数を全体のつづら折り回数より小さくできるので、基準重ね合わせ部の一側と他側における個々の対面位置ずれ量を小さくできる。
【0016】
「4」前記一態様の電気化学セルにおいて、前記基準重ね合わせ部を基準として、一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされ、他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされた構成を採用できる。
【0017】
数珠繋ぎ状の正極電極と帯状の負極電極をつづら折りしながら重ね合わせる構造とすると、電極接続部どうしの長さが同じ場合、重ね合わせの数が増える度に正極本体の位置ずれ量が累積されて大きくなる。この構造であっても、基準重ね合わせ部の一側と他側とで個々に正極本体の位置ずれ量を抑えておけば、正極本体の位置ずれ量の累積を小さくすることができ、正極本体の位置ずれ量を抑制した電気化学セルを提供できる。
【0018】
「5」本発明の一形態に係る電気化学セルは、並んで配置された複数の正極本体と、隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、並んで配置された複数の負極本体と、隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に配置されるセパレータを備え、前記数珠繋ぎ状の途中部分の正極電極の1つまたは2つに前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極を前記セパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部が構成され、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、他側に前記数珠ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極が交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層され、前記基準重ね合わせ部を基準として、一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされ、他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくされたことを特徴とする。
「6」前記一形態の電気化学セルでは、前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭が配置された構成を採用できる。
「7」前記一形態の電気化学セルでは、前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、直線状、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であることが好ましい。
「8」前記一形態の電気化学セルにおいて、前記基準重ね合わせ部を基準とした一側へのつづら折り部分と他側へのつづら折り部分のどちらか一方または両方に接続電極端子が導出された構成を採用できる。
【0019】
基準重ね合わせ部の一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分の一方または両方から接続電極端子を導出できる。これらの接続電極端子を利用し、電気化学セルを収容する缶体などとの接続が可能となる。また、接続電極端子の導出位置を調整することで、負極本体から導出した接続電極端子または正極本体から導出した接続電極端子から、缶体までの接続距離を調整できる。このため、正極側と負極側において接続電極端子を介する缶体への確実な接続が可能となる。また、正極側と負極側において接続電極端子を缶体に接続する場合、適正な導出位置を選択することでこれら接続電極端子の側方への突出量を少なくすることができる。これにより、缶体内に隙間無くつづら折り構造を収容することができ、無駄のない構造の電気化学セルを提供できる。
【0020】
「6」前記一形態の電気化学セルにおいて、前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、直線状、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極である構成を採用できる。
【0021】
数珠繋ぎ状の正極本体と負極本体の形状は、直線状、L字状、U字状などいずれの形状であっても良い。いずれの形状であっても、途中部分で両者を重ねて基準重ね合わせ部を構成し、基準重ね合わせ部を境として一側と他側につづら折り構造とすることで目的の電気化学セルを構成できる。
【0022】
「9」本発明の一態様に係る電気化学セルの製造方法は、並んで配置された複数の正極本体および隣り合う2つの前記正極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の正極電極と、並んで配置された複数の負極本体および隣り合う2つの前記負極本体を接続する電極接続部を有する数珠繋ぎ状の負極電極を用い、前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの正極電極に前記数珠繋ぎ状の途中部分の1つまたは2つの負極電極をセパレータを介し重ね合わせて基準重ね合わせ部を構成し、この基準重ね合わせ部を基準として、一側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極を交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層し、他側に前記数珠繋ぎ状の正極電極と前記数珠繋ぎ状の負極電極を交互に前記セパレータを介しつづら折り状に積層することを特徴とする。
【0023】
基準重ね合わせ部を境として一側と他側に別々につづら折りする構造を採用することで、一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分に生じている位置ずれ量を相互に影響ない構成とできる。一側と他側の個々のつづら折り部分の位置ずれ量を少なくしておけば、積層構造全体としての正極本体の位置ずれ量を小さくできる。
【0024】
この点、積層するべき全ての正極本体が数珠繋ぎ状の端部側から繋がって順次重ね合わされる構造になると、重ね合わせ構造の始端側から終端側まで位置ずれが順次累積されて大きくなる。このため、正極本体の位置ずれ量が大きくなる問題がある。
一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分に生じている位置ずれ量を相互に影響ない構成とすることで、それぞれのつづら折り部分で生じる位置ずれ量を少なくしておくことで積層構造全体の位置ずれ量を抑制できる。
【0025】
10」前記一態様の電気化学セルの製造方法では、前記正極電極と前記負極電極の重ね合わせ部分において、重ね合わせ方向に沿って見た前記負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭を配置することが好ましい。
【0026】
電気化学セルの構造において、負極本体の外周輪郭の内側に正極本体の外周輪郭が配置されていることが望ましく、正極本体のはみ出し量が大きい場合、電気化学セルに適用されるイオンを構成する金属の析出のおそれ、容量低下のおそれがある。上述の製造方法では、負極本体の外周輪郭の内側に前記正極本体の外周輪郭が入るように重ね合わせることで電気化学セル用のイオンを構成する金属の析出のおそれのない、容量低下のおそれのない電気化学セルを提供できる。
【0027】
11」前記一態様の電気化学セルの製造方法において、前記複数の電極接続部の長さが同一の正極電極と、前記複数の電極接続部の長さが同一の負極電極を用い、前記基準重ね合わせ部の一側と他側を基準として、一側への重ね合わせにおいて、重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭を重ね合わせ層ごとに位置ずれするように、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に入るように重ね合わせ、他側への重ね合わせにおいて、重ね合わせ方向に沿って見た前記正極本体の外周輪郭を重ね合わせ層ごとに位置ずれするように、該位置ずれ量が最大の層において前記正極本体の外周輪郭が前記負極本体の外周輪郭の内側に入るように重ね合わせることが好ましい。
【0028】
電気化学セルの構造において、負極本体の外周輪郭の内側に正極本体の外周輪郭が配置されていることが望ましく、正極本体のはみ出し量が大きい場合、電気化学セルに適用されるイオンを構成する金属の析出のおそれ、容量低下のおそれがある。基準重ね合わせ部を境として表面側と裏面側に別々につづら折りする構造を採用することで、正極本体の外周輪郭を負極本体の外周輪郭の内側に配置する構造とし易くなり、電解質成分析出のおそれを解消でき、容量低下のおそれを生じない電気化学セルを提供できる。
【0029】
12」前記一態様の電気化学セルの製造方法において、前記基準重ね合わせ部を基準として、一側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくなるように重ね合わせ、他側への前記正極電極と負極電極の重ね合わせにおいて、重ね合わせの始端側より終端側において、前記正極本体と前記負極本体の重ね合わせ方向に沿って見た個々の外周輪郭の位置ずれ量が大きくなるように重ね合わせることが好ましい。
【0030】
数珠繋ぎ状の正極電極と数珠繋ぎの負極電極をつづら折りしながら重ね合わせる構造とすると、電極接続部どうしの長さが同じであって、電極接続部どうしの長さが同じ場合、重ね合わせの数が増える度に正極本体の位置ずれ量が累積されて大きくなる。この構造であっても、基準重ね合わせ部を境として一側と他側に別々につづら折りする構造を採用することで、それぞれの位置ずれ量を抑えておけば、正極本体の位置ずれ量の累積を小さくすることができ、結果的に位置ずれ量を抑制した電気化学セルを提供できる。
【0031】
13」前記一態様の電気化学セルの製造方法において、前記基準重ね合わせ部を基準とした一側へのつづら折り部分と他側へのつづら折り部分のどちらか一方または両方に接続電極端子が導出することが好ましい。
【0032】
基準重ね合わせ部の一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分から接続電極端子を導出できる。これらの接続電極端子を利用し、電気化学セルを収容する缶体などと接続が可能となる。また、接続電極端子の導出位置を調整することで、負極本体から導出した接続電極端子または正極本体から導出した接続電極端子から、缶体までの接続距離を調整できる。このため、正極側と負極側において接続電極端子を介する缶体への確実な接続が可能となる。また、正極側と負極側において接続電極端子を缶体に接続する場合、適正な導出位置を選択することでこれら接続電極端子の側方への突出量を少なくすることができる。これにより、缶体内に隙間無くつづら折り構造を収容することができ、無駄のない構造の電気化学セルを提供できる。
【0033】
14」前記一態様の電気化学セルの製造方法において、前記数珠繋ぎ状の正極本体と前記数珠繋ぎ状の負極本体のどちらか一方または両方が、直線状、L字状またはU字状のいずれかに連結された負極電極または正極電極であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本形態により、数珠繋ぎ状の正極本体または負極本体の途中部分を重ねた基準重ね合わせ部を境としてその一側と他側に個別につづら折り状とするならば、一側のつづら折り部分に生じている正極本体の対面位置の位置ずれ量が他側のつづら折り部分に生じている正極本体の対面位置の位置ずれ量に影響を及ぼさない構造を採用できる。一側のつづら折り部分と他側のつづら折り部分とでそれぞれの位置ずれ量を少なくしておけば、積層構造全体として正極本体の対面位置ずれ量を小さくした電気化学セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態に係る電池の平面図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3】第1実施形態に係る電池に組み込まれている積層体の一例を示す斜視図である。
図4】同電池に組み込まれている正極構造体の一例を示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係る電池に組み込まれている正極構造体の展開図である。
図6】第1実施形態に係る電池に組み込まれている正極構造体を製造する工程の一例を示す工程図である。
図7図3に示す積層体を構成する場合に用いる正極構造体と負極構造体を重ね合わせて基準重ね合わせ部を構成した状態を示す説明図である。
図8図7に示す状態から正極構造体と負極構造体の一部をつづら折りした状態を示す説明図である。
図9】第2実施形態に係る電池に組み込まれる正極構造体と負極構造体の一例を示す説明である。
図10図9に示す正極構造体と負極構造体を重ね合わせて基準重ね合わせ部を構成した状態を示す説明図である。
図11図10に示す状態から正極構造体と負極構造体の一部をつづら折りした状態を示す説明図である。
図12】第3実施形態に係る電池に組み込まれる正極構造体と負極構造体の一例を示す説明である。
図13図12に示す正極構造体と負極構造体を重ね合わせて基準重ね合わせ部を構成した状態を示す説明図である。
図14図13に示す状態から正極構造体と負極構造体の一部をつづら折りした状態を示す説明図である。
図15】第4実施形態に係る電池に組み込まれる正極構造体と負極構造体の一例を示す説明である。
図16】第1実施形態に係る電池を製造する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、電気化学セルの一例として、コイン型のリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0037】
<第1実施形態>
[電池]
図1に示すように、本実施形態の電池1は、平面視円形をなしている。図2を併せて参照し、電池1は、積層体2と、積層体2に含浸される不図示の電解質溶液と、積層体2を収容する外装体10と、を備えている。
【0038】
[積層体]
図3に示すように、積層体2は、つづら折り形状に折り畳まれた負極電極3と、負極電極3と互い違いに積層するように負極電極3と交差する方向につづら折り形状に折り畳まれた正極構造体4を備えている。正極構造体4のみの構成について図4に概要を示す。
【0039】
[負極電極]
つづら折り形状から展開した状態の負極電極3は帯状をなし、複数の電極接続部3aと複数の張出し部(負極本体)3bを数珠繋ぎ状に連結した形状とされ、図3に示すように複数の負極本体3bを後述する正極本体5bと重ねるようにつづら折りされている。
なお、後述する正極電極5も負極電極3と同様に数珠繋ぎ状に形成され、つづら折りされている。
【0040】
図2に示すように、負極電極3は、負極集電体20と、負極集電体20の両面に形成された負極活物質層22と、を備えている。なお、後に説明するように、負極集電体20は帯状をなしている。図3に示すように、負極電極3の一端部には、負極集電体20の延出部(負極電極端子)21が形成されている。負極電極端子21は、負極集電体20のうち、負極電極3の長手方向において負極本体3bよりも外側に延在されている部分である。
【0041】
例えば、負極集電体20は、銅、ニッケル及びステンレス等の金属材料で形成されている。負極活物質層22は、負極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。例えば、負極活物質層22は、黒鉛等の炭素材料で形成されている。例えば、導電助剤としては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。
【0042】
[正極構造体]
図3図4に示すように、正極構造体4は、正極電極5と、正極電極5を覆うセパレータ6を備えている。正極構造体4は、正極電極5とセパレータ6とを一体化したものである。正極構造体4の外形は、負極電極3の外形と実質的に同じ大きさである。
【0043】
[正極電極]
正極電極5は、展開すると図5に示すように帯状をなしている。より具体的に正極電極5は、複数の電極接続部5aと、複数の正極本体5bを数珠繋ぎ状に接続している。以下、正極電極5の長手方向と直交する方向を「正極電極5の幅方向」という。電極接続部5aは、正極電極5の幅方向内側に窪んでいる。
図5に示すように正極電極5を展開した状態において、正極本体5bは、正極電極5の長手方向で電極接続部5aと隣り合う位置に配置されている。正極本体5bは、正極電極5の幅方向で電極接続部5aよりも外側に円弧状に張り出している。この実施形態で正極本体5bは、円板状をなし、電極接続部5aを介し12個直線状に接続されている。
【0044】
図4に示すように、正極構造体4のつづら折り構造において、各正極本体5bは互いに実質的に平行に配置されている。電極接続部5aは、正極電極5の長手方向において各正極本体5bの端縁に連なっている。すなわち、電極接続部5aは、隣り合う2つの正極本体5bどうしを直列接続している。
【0045】
図3図5を併せて参照し、正極電極5の外形(積層方向に沿って平面視した場合の外周輪郭)は、負極電極3の外形(積層方向に沿って平面視した場合の外周輪郭)よりも若干小さい。すなわち、正極電極5における電極接続部5a及び正極本体5bの外形は、負極電極3における電極接続部3a及び負極本体3bの外形よりも若干小さい。
【0046】
図2に示すように、正極電極5は、帯状の正極集電体30と、正極集電体30の両面に形成された正極活物質層32を備えている。図4または図5に示すように、正極電極5の一端部には、正極集電体30の延出部(正極電極端子)31が形成されている。正極電極端子31は、正極集電体30のうち、正極電極5の長手方向において正極本体5bよりも外側に延在されている部分である。
【0047】
例えば、正極集電体30は、アルミニウム及びステンレス等の金属材料で形成されている。正極活物質層32は、正極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。例えば、正極活物質層32は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム等の複合金属酸化物で形成されている。例えば、導電助剤としては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。
【0048】
[セパレータ]
図5に示すように、セパレータ6は、展開状態で帯状をなしている。セパレータ6は、上述した正極電極5と同様、複数の電極接続部6aと、6つの張出し部6bを備えている。セパレータ6における電極接続部6a及び張出し部6bの外形は、負極電極3における電極接続部3a及び負極本体3bと実質的に同じ大きさである。
【0049】
セパレータ6は、リチウムイオン導電性を有する細孔構造の薄膜である。例えば、セパレータ6は、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)等のポリオレフィン並びにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料で形成されている。セパレータ6は、図6に示す一対の第一セパレータ41及び第二セパレータ42どうしが熱融着により一体化されることで形成されている。なお、図5においては、一対の第一セパレータ41及び第二セパレータ42を切り出して負極電極3の外形と実質的に同じ大きさとされた状態の第一セパレータ41及び第二セパレータ42を示している。
【0050】
[積層体]
本実施形態の積層体2は、図5に示す構成のセパレータ6を備えた正極構造体4と、セパレータ6の平面視外形と相似外形の負極電極3をそれぞれ交互に重なるようにつづら折りして積層することで構成されている。
積層体2を図3に示すように積層方向に沿って平面視した場合、セパレータ6の張出し部6bの円形状の外周輪郭の内側に正極本体5bの円形状の外周輪郭が配置されている。
【0051】
本実施形態の積層体2は、負極電極3と正極構造体4を一部を除いてそれぞれ交互に重なるようにつづら折りすることで構成されている。積層体2を図3に示す状態として積層方向に沿って平面視した場合、負極電極3の負極本体3bの円形状の外周輪郭の内側に正極本体5bの円形状の外周輪郭が配置されている。この配置関係は、積層体2の全ての正極本体5bにおいて同等である。
【0052】
図7は本実施形態の積層体2において、負極電極3と正極構造体4からなるつづら折り構造を展開した状態の一例を示す。換言すると、図7は、負極電極3と正極構造体4をつづら折り構造とする前の状態を示す。
この例において図7に示すように正極電極端子31を左側にして帯状の正極構造体4が水平配置され、この正極構造体4に対し、逆U字状の負極電極3が重ねられている。図7において示されている正極電極端子31は図3に示す正極電極端子31より誇張して長く描かれている。
【0053】
この例において正極構造体4は12個の正極本体5bが1列に数珠繋ぎ状に接続され、その左端側に正極電極端子31が形成されている。また、負極電極3は6個1列の数珠繋ぎ状の負極本体3bが2列設けられて逆U字状に接続されている。負極電極3の1列目の一端側の負極本体3bと2列目の一端側の負極本体3bとが接続され、負極電極3が逆U字状に形成されるとともに、1列目の他端側の負極本体3bに負極電極端子21が形成されている。図7において示されている負極電極端子21は図3に示す負極電極端子21より誇張して長く描かれている。
また、正極構造体4に設けられているセパレータ6の張出し部6bの外形と負極電極3に形成されている負極本体3bの外形は本来ほぼ同形状であるが、図7では両電極を区別し易くするために張出し部6bの外形を負極本体3bの外形より若干小さく描いている。
【0054】
図7に示すように左端部側(正極電極端子31を形成した側)から6番目の正極本体5bの上(正確には、セパレータ6の張出し部6bの上)に1列目の一端側の負極本体3bが重ねられ、7番目の正極本体5bの上(正確には、セパレータ6の張出し部6bの上)に2列目の一端側の負極本体3bが重ねられている。換言すると、一列数珠繋ぎ状の正極構造体4の中央部(途中部分)に逆U字型の負極電極3の一端側の2個の負極本体3bが両者でT字を描くように重ねられ、この重ねられた部分が基準重ね合わせ部aとされている。
【0055】
図7に示す状態において基準重ね合わせ部aの右側6個の正極本体5bと右列側(2列目)6個の負極本体3bが倒L字型に配置されている。このため、図7に示す状態から、正極本体5bと負極本体3bを交互につづら折りすることで右側6個の正極本体5bと右列側6個の負極本体3bをつづら折りすることができる。図7に(1)、(2)、(3)に示す順序で正極本体5bと負極本体3bを交互につづら折りすることができ、参考のためにこれらを途中までつづら折りした状態を図8に示す。
【0056】
次に、図7に示す状態において基準重ね合わせ部aの左側6個の正極本体5bと左列側(1列目)6個の負極本体3bが逆L字型に配置されているので、図7に示す状態から、正極本体5bと負極本体3bを交互につづら折りすることで左側6個の正極本体5bと左列側6個の負極本体3bをつづら折りすることができる。
右側のつづら折りと左側のつづら折りが完了したならば、基準重ね合わせ部aの正極本体5bどうしを折り重ねることで図2図3に示す積層体2が得られる。
【0057】
なお、図3に示す積層体2と図4に示すつづら折り状の正極構造体4は、理想的につづら折りされた構造のモデルとして描いている。ところが、生産現場において実際につづら折り構造を製造する場合、電極接続部3a、5aの長さが均一であると、つづら折りする場合に1つ下の層に配置した正極本体5bと負極本体3bの厚さが加わり、積層した電極全体厚が徐々に大きくなる。このため、全ての正極電極5の正極本体5bの中心を全ての負極電極3の負極本体3bの中心に正確に位置合わせすることは容易ではない問題がある。
このため、図2図4では略しているが、積層体2において、つづら折りして重ね合わせた層ごとに厳密には正極本体5bに位置ずれを生じている。
【0058】
しかし、本実施形態の積層体2においては、重ね合わせ方向に沿って平面視した場合、全ての正極本体5bの円形状の外周輪郭が多少の位置ずれを有しているとしても、負極本体3bの円形状の外周輪郭の内側に配置されている。また、積層体2においては、重ね合わせ方向に沿って平面視した場合、全ての正極本体5bの円形状の外周輪郭が多少の位置ずれを有しているとしても、負極電極3の負極本体3bの円形状の外周輪郭の内側に配置されている。
このように積層体2において位置ずれを小さくできるのは、基準重ね合わせ部aを境として一側と他側に個々につづら折りした構造を採用したためである。この理由については後に詳述する。
【0059】
[外装体]
図1及び図2を併せて参照し、外装体10は、正極缶体11と、負極缶体12と、正極缶体11と負極缶体12との間を電気的に絶縁するガスケット13を備えている。
正極缶体11及び負極缶体12は、偏平型の有底円筒状をなしている。正極缶体11の内径は、負極缶体12の外径よりも若干大きい。負極缶体12の筒状部が正極缶体11に挿入された状態で、積層体2は、負極缶体12の底面と正極缶体11の底面との間に挟まれている。
【0060】
ガスケット13は、負極缶体12の筒状部の外周面と正極缶体11の筒状部の内周面との間に配置されている。このガスケット13により、積層体2が外装体10に封止されている。図2図3を併せて参照し、正極缶体11は、正極集電体30の延出部31と接続されており、正極として機能する。一方、負極缶体12は、負極集電体20の延出部21と接続されており、負極端子として機能する。なお、図2においては、正極缶体11と負極缶体12に接続した電極端子21、31の図示を省略している。
【0061】
本実施形態の電池1にあっては、積層体2において基準重ね合わせ部aを介し一側と他側、換言すると表側と裏側に個々につづら折りした構造を採用している。
積層体2において基準重ね合わせ部aを介し表側と裏側に個々につづら折りした構造とすることで以下の特徴を有する。
【0062】
積層体において積層数が多い構造の場合、電極接続部3a、5aが同じ長さであると仮定すると、積層の度に正極本体5bの中心位置が負極本体3bの中心位置に対して少しずつ位置ずれを生じる。これは、つづら折りする場合に積層した負極本体3bと正極本体5bの積み重ねにより徐々に積層体が厚くなること、つづら折りする場合の折り曲げ精度の影響、正極本体5bなどの位置合わせのズレによる影響、などの複合的要因からなる。
【0063】
また、電池1を構成する場合、容量を確保するために正極本体5bと負極本体3bの外形をできるだけ大きく形成し、電極接続部3a、5aの長さをできるだけ短く形成し、つづら折り状態において電極接続部3a、5aの外側への張出量をできるだけ小さくする設計がなされていることにも影響されて対面位置ずれが大きくなる。
なお、図2図4では、電極接続部3a、5aの折り曲げ部分について、余裕を持たせた形状に描いたが、実際の構成では電極接続部3a、5aの折り曲げ部分はこれらの図より張出量の少ない、曲率半径の小さい折り曲げ部分とされる。
【0064】
従って、正極本体5bや負極本体3bの積層数が6〜8層程度などのように少ない積層数の場合は位置ずれ量が小さいが、これらより積層数が多い場合には位置ずれ量が無視できなくなり、積層数によっては正極本体5bの外周輪郭が負極本体3bの外周輪郭からはみ出すおそれがある。平面視した場合の負極本体3bの外周輪郭から正極本体5bの外周輪郭がはみ出す場合、はみ出し量が大きいとリチウムイオン電池においては、金属リチウム析出のおそれがある。
【0065】
この点において数珠繋ぎの途中に設けた基準重ね合わせ部aを介し表側と裏側に個々につづら折りした構造を採用していると、数珠繋ぎの端部から順次つづら折りする場合に比べて位置ずれ量の累積を少なくすることができる。従って、本実施形態の構造を採用することで、正極本体5bの対面位置ずれの少ない電池1を提供できる。
【0066】
即ち、本実施形態の構造では、基準重ね合わせ部aを境としてその表側に生じている正極本体5bの対面位置の位置ずれ量が裏側に生じている正極本体5bの対面位置の位置ずれ量に影響を及ぼさない構造になっている。従って、基準重ね合わせ部aを境としてその表側と裏側に生じている個々の正極本体5bの対面位置ずれ量を少なくしておけば、電池1の全体として正極本体5bの対面位置ずれ量を小さくできる。
【0067】
また、数珠繋ぎ状の正極本体と負極本体の端部から順次つづら折りした構造であると、重ね合わせ構造の始端側から終端側まで位置ずれが順次累積されて大きくなる。このため、正極本体の対面位置の位置ずれ量が大きくなる問題がある。本実施形態では、この問題を解消できる。
【0068】
ところで、第1実施形態の構造においては、正極本体5bを12個、負極本体3bを12個設け、電極本体のみで24層構造の電気化学セルに本発明を適用したが、本発明を適用する電極本体の積層数は特に制限はなく、何層構造であっても適用可能である。
【0069】
<第2実施形態>
図9図11は、第2実施形態の電池に適用される積層体を構成するための負極電極53と正極構造体54を示す。
第2実施形態の負極電極53と正極構造体54はいずれも展開状態で平面視L字型に形成されている。電極接続部53aと負極本体53bを数珠繋ぎ状に形成して負極電極53を形成している点は第1実施形態の負極電極3の構造と同等である。その他、集電体層や活物質層を備えた構造についても負極電極53は負極電極3の構造と同等である。第1実施形態の負極電極3と第2実施形態の負極電極53は平面視構造のみが異なる。
【0070】
正極構造体54について、電極接続部55aと正極本体55bを数珠繋ぎ状に形成している点について第1実施形態の正極構造体4と同等構造である。その他、集電体層や正極活物質層を備えた構造について、正極構造体54は第1実施形態の正極構造体4と同等構造である。また、電極接続部55aと正極本体55bをセパレータ56で覆っている構造についても第1実施形態の構造と同等である。即ち、電極接続部55aをセパレータ56の電極接続部56aで覆い、正極本体55bをセパレータ56の張出し部56bで覆った構造について同等であり、張出し部56bの外形が負極電極53の負極本体53bの外形と同等形状であることも同様である。第1実施形態の正極構造体4と第2実施形態の正極構造体54は平面視形状のみが異なる。
【0071】
図9に示す例では第1実施形態を示す図7の場合と同様に、正極構造体54に設けられているセパレータ56の張出し部56bの外形と負極電極53に形成されている負極本体53bの外形は本来ほぼ同形状であるが、図9では両電極を区別し易くするために張出し部56bの外形を負極本体53bの外形より若干小さく描いている。
【0072】
第2実施形態の構造では、図10に示すようにL字型の負極構造体53の角部に位置する負極本体53bの上に正極構造体54の角部に位置する正極本体55b(正確には張出し部56b)を重ねて、全体が十字状となるように配置する。図10に示す重ね合わせ状態において、負極本体53bと正極本体55b(正確には張出し部56b)の重ね合わせ部分が基準重ね合わせ部bとなる。
図10に示すように基準重ね合わせ部bを形成したならば、基準重ね合わせ部bの右側に位置する6個の正極本体55b(正確には張出し部56b)と基準重ね合わせ部bの上側に位置する5個の張出し部56bとを用いて図10の(1)〜(4)に示すように順次つづら折りする。
【0073】
即ち、図10の(1)に示すように正極本体55b(正確には張出し部56b)を負極本体53bの裏側に折り返し、その裏側に(2)に示すように負極本体53bを折り返し、次いで(3)、(4)に示すように順次正極本体55b(正確には張出し部56b)と負極本体53bを折り返す操作を交互に繰り返す。
このつづら折りによって、基準重ね合わせ部bの右側に位置する6個の正極本体55bと基準重ね合わせ部bの上側に位置する5個の張出し部56bを交互に折り畳むことができる。
図11は参考のために、基準重ね合わせ部bの右側に位置する2つの正極本体55bと基準重ね合わせ部bの上側に位置する2個の張出し部56bを折り返して重ね合わせたつづら折り途中の状態を示している。
【0074】
上述のつづら折りが完了した後、図10に示す基準重ね合わせ部bの左側に位置する6個の負極本体53bと基準重ね合わせ部bの下側に位置する5個の正極本体55b(正確には張出し部56b)を交互に図10の紙面表側につづら折りするならば、残りの負極本体53bと正極本体55bのつづら折りを完了できる。
図10を基に説明したつづら折り構造では、基準重ね合わせ部bの表面側(一側)と裏面側(他側)にそれぞれ負極本体53bと正極本体55bがつづら折りされている。
【0075】
本実施形態では、積層体の全体として正極本体55bと負極本体53bとで合わせて24層構造である。しかし、基準重ね合わせ部bの表面側(一側)と裏面側(他側)を個々に見ると、電極接続部55aを介した6個の正極本体55bの折り重ねと、電極接続部53aを介した6個の負極本体55bの折り重ねによるつづら折り構造とされている。
このため、6個の正極本体55bの折り重ねによる位置ずれの累積で済むので、先の第1実施形態の構造と同様、正極本体55bの位置ずれは小さくなる。この事情は、基準重ね合わせ部bの表面側(一側)と裏面側(他側)で同等である。
従って、第2実施形態の構造においても、第1実施形態の構造と同等の作用効果が得られる。即ち、正極本体55bの位置ずれ量を抑制できる。
【0076】
なお、第1実施形態の電池構造では、基準重ね合わせ部a、aどうしを重ね合わせていることで、一部同極どうしの重ね合わせ構造となっていたので、電池構成上の電極積層効率の面では不利であったが、第2実施形態の構造では、正極本体55bと負極本体53bを完全な交互積層構造にできるので、電池の構造的にはより好ましい構造となる。
【0077】
<第3実施形態>
図12図14は、第3実施形態の電池に適用される積層体を構成するための負極電極63と正極構造体64を示す。
第3実施形態の負極電極63と正極構造体64はいずれも展開状態で帯状かつ数珠繋ぎ状に形成されている。電極接続部63aと負極本体63bを数珠繋ぎ状に形成して負極電極63を形成している点は第1実施形態の負極電極3の構造と同等である。その他、集電体層や活物質層を備えた構造についても負極電極63は負極電極3の構造と同等である。
【0078】
正極構造体64について、電極接続部65aと正極本体65bを数珠繋ぎ状に形成している点について第1実施形態の正極構造体4と同等構造である。その他、集電体層や正極活物質層を備えた構造について、正極構造体64は第1実施形態の正極構造体4と同等構造である。また、電極接続部65aと正極本体65bをセパレータ66で覆っている構造についても第1実施形態の構造と同等である。即ち、電極接続部65aをセパレータ66の電極接続部66aで覆い、正極本体65bをセパレータ66の張出し部66bで覆った構造について同等であり、張出し部66bの外形が負極本体63bの外形と同一形状であることも同等である。
【0079】
図12に示す例では第1実施形態を示す図7の場合と同様に、正極構造体64に設けられているセパレータ66の張出し部66bの外形と負極電極63に形成されている負極本体63bの外形は本来ほぼ同形状であるが、図12では両電極を区別し易くするために張出し部66bの外形を負極本体63bの外形より若干小さく描いている。
【0080】
第3実施形態の構造では、図13に示すように負極構造体63の長さ方向に沿って左側から7番目の位置の負極本体63bの上に正極構造体64の長さ方向に沿って上から6番目の位置の正極本体65b(正確には張出し部66b)を重ねて、全体が十字状となるように配置する。図13に示す重ね合わせ状態において、負極本体63bと正極本体65b(正確には張出し部66b)の重ね合わせ部分が基準重ね合わせ部cとなる。
【0081】
図10に示すように基準重ね合わせ部cを形成したならば、基準重ね合わせ部cの右側に位置する5個の正極本体65b(正確には張出し部66b)と基準重ね合わせ部cの上側に位置する5個の張出し部56bとを用いて図13の(1)〜(4)に示すように順次つづら折りする。
即ち、図13の(1)に示すように正極本体65b(正確には張出し部66b)を負極本体63bの裏側に折り返し、その裏側に(2)に示すように負極本体63bを折り返し、次いで(3)、(4)に示すように順次正極本体65b(正確には張出し部66b)と負極本体63bを折り返す操作を交互に繰り返す。
【0082】
このつづら折りによって、基準重ね合わせ部cの右側に位置する5個の正極本体65bと基準重ね合わせ部bの上側に位置する5個の張出し部63bを交互に折り畳むことができる。
図14は参考のために、基準重ね合わせ部cの右側に位置する2つの正極本体65bと基準重ね合わせ部cの上側に位置する2個の張出し部66bを折り返して重ね合わせたつづら折り途中の状態を示している。
【0083】
上述のつづら折りが完了した後、図14に示す基準重ね合わせ部cの左側に位置する6個の正極本体65b(正確には張出し部66b)と基準重ね合わせ部cの下側に位置する6個の負極本体63bを交互に図14の紙面表側につづら折りするならば、残りの負極本体63bと正極本体65bのつづら折りを完了できる。
図14を基に説明したつづら折り構造では、基準重ね合わせ部cの表面側(一側)と裏面側(他側)にそれぞれ負極本体63bと正極本体65bがつづら折りされている。
【0084】
本実施形態では、積層体の全体として正極本体65bと負極本体63bとで合わせて24層構造である。しかし、基準重ね合わせ部cの表面側(一側)と裏面側(他側)を個々に見ると、電極接続部65aを介した6個の正極本体65bの折り重ねと、電極接続部63aを介した6個の負極本体65bの折り重ねによるつづら折り構造とされている。
このため、6個の正極本体65bの折り重ねによる位置ずれの累積で済むので、先の第1実施形態の構造と同様、正極本体65bの位置ずれは小さくなる。この事情は、基準重ね合わせ部bの表面側(一側)と裏面側(他側)で同等である。
従って、第3実施形態の構造においても、第1実施形態の構造と同等の作用効果が得られる。即ち、正極本体65bの位置ずれ量を抑制できる。
【0085】
なお、第1実施形態の電池構造では、基準重ね合わせ部a、aどうしを重ね合わせていることで、一部同極どうしの重ね合わせ構造となっていたので、電池構成上の電極積層効率の面では不利であったが、第3実施形態の構造では、正極本体65bと負極本体63bを完全な交互積層構造にできるので、電池の構造的にはより好ましい構造となる。
【0086】
<第4実施形態>
図15は、第4実施形態の電池に適用される積層体を構成するための負極電極73と正極構造体4を示す。
第4実施形態の負極電極73と正極構造体4はいずれも展開状態で帯状かつ数珠繋ぎ状に形成されている。電極接続部73aと負極本体73bを数珠繋ぎ状に形成して負極電極73を形成している点は第1実施形態の負極電極3の構造と同等である。その他、集電体層や活物質層を備えた構造についても負極電極73は負極電極3の構造と同等である。
【0087】
この例において図15に示すように正極電極端子31を左側にして帯状の正極構造体4が水平配置され、この正極構造体4に対し、逆U字状の負極電極73が重ねられる。
この例において正極構造体4は12個の正極本体5bが1列に数珠繋ぎ状に接続され、その左端側に正極電極端子31が形成されている。また、負極電極73は6個1列の数珠繋ぎ状の負極本体73bが2列設けられて逆U字状に接続されている。負極電極73の1列目の一端側の負極本体73bと2列目の一端側の負極本体73bとが接続され、負極電極73が逆U字状に形成されるとともに、1列目の一端側の負極本体73bに負極電極端子21が形成されている。
また、正極構造体4に設けられているセパレータ6の張出し部6bの外形と負極電極73に形成されている負極本体73bの外形は本来ほぼ同形状であるが、図15では両電極を区別し易くするために張出し部6bの外形を負極本体73bの外形より若干小さく描いている。
【0088】
図15に示すように左端部側(正極電極端子31を形成した側)から6番目の正極本体5bの上(正確には、セパレータ6の張出し部6bの上)に1列目の一端側の負極本体73bが重ねられ、7番目の正極本体5bの上(正確には、セパレータ6の張出し部6bの上)に2列目の一端側の負極本体73bが重ねられる。換言すると、一列数珠繋ぎ状の正極構造体4の中央部(途中部分)に逆U字型の負極電極73の一端側の2個の負極本体73bが両者でT字を描くように重ねられ、この重ねられた部分が基準重ね合わせ部dとされる。
【0089】
基準重ね合わせ部dを構成したならば、正極電極端子31を形成した側の正極本体5b(正確には、セパレータ6の張出し部6b)と負極電極端子21を形成した1列目の負極本体73bを順次つづら折りする。また、これらのつづら折りが終了したならば、残りの正極本体5b(正確には、セパレータ6の張出し部6b)と2列目の負極本体73bを順次つづら折りすることで全体のつづら折り構造を実現できる。
【0090】
第4実施形態の構成では、積層体の全体として正極本体5bと負極本体73bとで合わせて24層構造である。しかし、基準重ね合わせ部dの表面側(一側)と裏面側(他側)を個々に見ると、電極接続部5aを介した6個の正極本体5bの折り重ねと、電極接続部73aを介した6個の負極本体5bの折り重ねによるつづら折り構造とされている。
【0091】
このため、6個の正極本体5bの折り重ねによる位置ずれの累積で済むので、先の第1実施形態の構造と同様、正極本体5bの位置ずれは小さくなる。この事情は、基準重ね合わせ部dの表面側(一側)と裏面側(他側)で同等である。
従って、第4実施形態の構造においても、第1実施形態の構造と同等の作用効果が得られる。即ち、正極本体5bの位置ずれ量を抑制できる。
【0092】
以上説明したように、正極本体の数珠繋ぎ構造の形状と負極本体の数珠繋ぎ構造の形状はいずれの形状であっても、両者でつづら折りが可能な形状であればよい。
これまで説明した負極本体3bと正極本体5bについて、いずれも電極接続部3a、5aを介し直線状あるいはU字状やL字状に配置した電極構造について説明した。しかし、負極電極3、正極電極5は、これらの形状に限る必要は無く、折れ曲がり形状、曲線状などの形状に接続された形状であっても、つづら折り状に折り畳み可能であれば良く、正極電極または負極電極の形状は問わない。
【0093】
また、これまで説明した実施形態では、電極接続部3a、5aの長さを全て同一とした構造について説明した。しかし、電極接続部3a、5aの長さが一定である必要は無く、異なっていても良い。例えば、つづら折り構造とする場合、折り返しの始端側より終端側において電極接続部3a、5aの長さが長くなる構成を採用しても良い。また、つづら折り構造とする場合、折り返しの始端側より終端側において電極接続部3a、5aの長さが徐々に長くなる構成を採用しても良い。
これらの構造を採用することにより、積層数に応じて積層体の厚さが増加しても、常に同じ位置に正極本体5bを配置することが可能となる。このため、大量生産時などにおいて大量の電池1を製造する場合であっても、電極接続部3a、5aの長さの管理が可能である場合は、上述の構造を採用しても良い。
【0094】
更に、前記実施形態では、積層体2を外装体10に封入してコイン型とした例を挙げて説明したが、本発明はこの構造に限定されるものではなく、積層体2をラミネートフィルムからなるラミネートパックに封入し、積層体2と電気的に接続したリード線をラミネートパックから外部に突出させた構造を採用しても良い。
ラミネートフィルムからなるラミネートパックである場合、正極缶体11および負極缶体12とガスケット13からなる缶体構造よりも封止性に優れているので、電池としての長期信頼性に優れる特徴を有する。
【0095】
[電池の製造方法]
次に、上述した電池1の製造方法の一例について説明する。
図16に示すように、電池1の製造方法は、正極電極5を所定形状に加工する電極加工工程S1と、正極電極5をセパレータ6で覆う電極被覆工程S2と、被覆した正極電極5を別途所定形状に加工した負極電極3と組み合わせる電極組み合わせ工程S3と、正極構造体4と負極電極3とをセパレータ6を介した状態に交互に重ねてつづら折り形状に折り畳むつづら折り工程S4と、電極端子接続工程S5を含む。
【0096】
まず(すなわち、電極加工工程S1の前)、正極活物質層32及び負極活物質層22を形成するための構成材料を含む塗布液(スラリー)を調整する。以下、正極活物質層32を形成するための構成材料を含む塗布液を「正極用スラリー」、負極活物質層22を形成するための構成材料を含む塗布液を「負極用スラリー」という。正極用スラリーは、上述の正極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。負極用スラリーは、上述の負極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。なお、スラリーの溶媒としては、結着剤及び増粘剤を溶解し、かつ活物質及び導電助剤を分散するものであればよい。
【0097】
次に、正極集電体30及び負極集電体20を用意する。
そして、正極集電体30の両面に正極用スラリーを塗布する。その後、正極用スラリーを乾燥させる。これにより、正極集電体30の両面に正極活物質層32を形成して正極用シートを得る。そして、正極用シートをスリッター等で上述した帯状に切り出して正極電極5を得る(電極加工工程S1)。
【0098】
一方、負極集電体20の両面に負極用スラリーを塗布する。その後、負極用スラリーを乾燥させる。これにより、負極集電体20の両面に負極活物質層22を形成して負極用シートを得る。そして、負極用シートをスリッター等で上述した帯状に切り出して負極電極3を得る。
なお、電極加工工程S1では(すなわち、電極被覆工程S2の前)、正極電極5の外形を、負極電極3の外形よりも小さくする。
【0099】
次に、図6に示すように、正極電極5を、セパレータ6を構成する第一セパレータ41と第二セパレータ42とで挟んで覆い、これらを熱溶着して一体化する(電極被覆工程S2)。第一セパレータ41及び第二セパレータ42は、展開状態(図6の平面視)において、正極電極5の長手方向に延びる長方形状をなしている。なお、第一セパレータ41及び第二セパレータ42の外形は、正極電極5における電極接続部5a及び正極本体5bを覆い、かつ延出部31を露出させる程度の大きさであればよい。熱融着により正極電極5をセパレータ6と一体化した正極構造体4とする。
【0100】
第一セパレータ41及び第二セパレータ42と正極電極5を熱融着させて正極構造体シートを得る。そして、正極構造体シートをスリッター等で上述した帯状に切り出して図5に示す正極構造体4を得る。このとき、展開状態において、正極構造体4の外形を、負極電極3の外形と実質的に同じ大きさにする。
【0101】
次に、正極構造体4と負極電極3とを図7に示すように基準重ね合わせ部aで重ねるように組み合わせ(電極組み合わせ工程:S3)、次いで、基準重ね合わせ部aを境としてその右側(一側)と左側(他側)とで個々につづら折り形状に折り畳み、最後に基準重ね合わせ部分aを折り返すことで積層体2を得る(つづら折り工程:S4)。
【0102】
積層体2の側方に負極電極端子21と正極電極端子31が突出されるので、積層体2に不図示の電解質溶液を含浸させた後、電解質溶液を含浸した積層体2を外装体10内に挿入し、負極電極端子21を負極缶体12側に電気的に接続し、正極電極端子31を正極缶体11側電気的に接続する(電極端子接続工程:S5)。
次いで、積層体2を外装体10内に封入することで電池1が完成する。
【0103】
このように製造された電池1であるならば、基準重ね合わせ部aを介した一側と他側でのつづら折り構造によって、上述の優れた作用効果を奏する電池1を得ることができる。
【符号の説明】
【0104】
a、b、c、d…基準重ね合わせ部、1…電池、2…積層体、3…負極電極、3a…電極接続部、3b…負極本体(張出し部)、4…正極構造体、5…正極電極、5a…電極接続部、5b…正極本体(張出し部)、6…セパレータ、6a…電極接続部、6b…張出し部、10…外装体、11…正極缶体、12…負極缶体、13…ガスケット、20…負極集電体、21…負極電極端子(延出部)、22…負極活物質層、30…正極集電体、31…正極電極端子(延出部)、32…正極活物質層、41…第一セパレータ、42…第二セパレータ、53、63…負極電極、53a、63a…電極接続部、53b、63b…負極本体、54、64…正極構造体、54a、64a…電極接続部、54b、64b…正極本体、73…負極電極、73a…電極接続部、74b…負極本体、S1…電極加工工程、S2…電極被覆工程、S3…電極組み合わせ工程、S4…つづら折り工程、S5…電極端子接続工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16