(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592507
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/199 20060101AFI20191007BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20191007BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20191007BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
C08G63/199
C08L67/03
C08K3/105
C08J5/18CFD
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-511290(P2017-511290)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公表番号】特表2017-525822(P2017-525822A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】KR2015008827
(87)【国際公開番号】WO2016032188
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年7月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0111843
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム ソルフィ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジイエ
(72)【発明者】
【氏名】キム スンギ
(72)【発明者】
【氏名】ドンバン スン
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0329980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/199
C08K 3/105
C08L 67/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸に由来する残基を含むジカルボン酸由来残基;および
下記の化学式1の4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートに由来する残基、および下記の化学式2の4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールに由来する残基を含むジオール由来残基;を含む共重合ポリエステル樹脂と、
アルカリ金属化合物と、
アルカリ土類金属化合物とを含み、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が0.01乃至1になる含有量で含まれ
、
前記アルカリ金属化合物は、これに由来するアルカリ金属元素の含有量が5乃至500ppmになる含有量で含まれ、
前記アルカリ土類金属化合物は、これに由来するアルカリ土類金属元素の含有量が20乃至1000ppmになる含有量で含まれる
ポリエステル樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記アルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ金属元素を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属化合物は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ土類金属元素を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素を含み、酢酸塩、脂肪族カルボン酸塩、炭酸塩またはアルコキシドの形態を有する化合物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジオール由来残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、およびエチレングリコールに由来する残基をさらに含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸由来残基は、テレフタル酸(terephthalic acid)、ジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate)、脂環族ジカルボン酸(cycloaliphatic dicarboxylic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、アジピン酸(adipic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、ナフタレンジカルボン酸(naphthalenedicarboxylic acid)、およびコハク酸(succinic acid)からなる群より選択される一つ以上のジカルボン酸またはその誘導体に由来する残基を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記共重合ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸由来残基の100モル%に対して、
4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート由来残基の0.1乃至10モル%、4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノール由来残基の0.1乃至12モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来残基の0.1乃至15モル%、ジエチレングリコール由来残基の2乃至15モル%、およびエチレングリコール由来残基の48乃至97.7モル%を含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
初期溶融比抵抗値が100MΩ/sq以下であり、
前記初期溶融比抵抗値の測定後、120秒以下の時間が経過した後に溶融比抵抗値を測定した時、前記初期溶融比抵抗値との測定値差が20MΩ/sq以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
熱収縮フィルム形態を有する、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱収縮フィルムは、収縮開始温度が60℃以下であり、60℃で最大熱収縮率が4%以上である、請求項9に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱収縮フィルムは、95℃で最大熱収縮率が70%以上である、請求項9に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、
前記4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールを含むジオールを反応させてエステル化反応および重縮合反応を行う段階を含み、
前記エステル化反応段階または重縮合反応段階の少なくとも一つの段階は、アルカリ金属化合物と、アルカリ土類金属化合物の存在下で行われ、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が0.01乃至1になる含有量で用いられる請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記エステル化反応段階は、前記ジカルボン酸に対してジオールを1.2乃至3.0のモル比で投入し、230乃至265℃の反応温度、および1.0乃至3.0kg/cm2の圧力下で、100乃至300分間行われる、請求項12に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記重縮合反応段階は、触媒、安定剤、および呈色剤からなる群より選択された1種以上の添加剤の存在下で行われる、請求項12に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記重縮合反応段階は、260乃至290℃の反応温度および400乃至0.1mmHgの減圧条件下で行われる、請求項12に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮率に優れ、低い温度で熱収縮が可能であると共に、熱収縮フィルムなどの状態で絶縁性を損傷させることなく、密着性を向上させることができるポリエステル樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性プラスチック製品は、加熱により収縮する性質を利用し、収縮包装、収縮ラベル(label)などのフィルム用途に広く用いられる。そのうち、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリエステル(polyester)系プラスチックフィルムなどが各種容器などのラベル(label)やキャップシール(cap seal)、または直接包装などの目的で用いられてきた。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、焼却時に塩化水素ガスおよびダイオキシンの原因になる物質が発生される問題があって規制対象となっている。また、この製品をPET容器などの収縮ラベルとして利用すれば、容器をリサイクルして利用する時にはラベルと容器を分離しなければならない煩わしさがあった。
【0004】
また、ポリスチレン(polystyrene)系フィルムは、収縮工程による作業安定性がよく、製品の外形が良好な反面、耐薬品性がよくないため、印刷する時には特殊な組成のインクを用いなければならない問題がある。同時に、常温での保管安定性が不足して自ずから収縮するなど寸法が変形される短所がある。
【0005】
前述した問題を解決するために、ポリエステル(polyester)樹脂からなるフィルムが前記二つの原料で作るフィルムを代替する原料として研究開発されている。一方、PET容器の使用量が増加することによって再利用時に別途にラベルを分離せずに再生が容易なポリエステルフィルムの使用量が増加する傾向にあるが、従来の熱収縮ポリエステルフィルムは、収縮特性において問題点があった。つまり、急激な収縮率挙動変化により収縮時にシワや不均一な収縮が成形中に頻繁に発生する問題点があり、またポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムと比較すると、低温での収縮性が落ちたため、これを補完するために高温で収縮しなければならず、この場合、PET容器の変形または白濁が発生する問題点があった。
【0006】
これによって、収縮率に優れ、低温収縮性が向上した共重合ポリエステル樹脂およびこれを含む熱収縮フィルムなどが継続して要求されている。
【0007】
一方、前記ポリエステル樹脂を用いて熱収縮フィルムなどフィルム状態成形品を得ようとする場合、このような成形品またはその中間体である溶融シートの密着性をより向上させる必要がある。これは前記ポリエステル樹脂を用いてより薄くて均一な厚さのフィルムを速い速度で生産するためには、前記フィルム状態成形品などの製造過程で押出機から押出される溶融シートを冷却手段(例えば、冷却ロール)に密着および固化させる必要があるためである。しかも、最近は最終生産しようとするフィルム厚さがより薄くなりながら、このような必要性はより一層増加している実情である。
【0008】
これによって、従来は前記溶融シートに静電気印加剤などを添加して印加性および密着性を向上させる方法を適用したが、このような場合、前記ポリエステル樹脂およびこれを含む熱収縮フィルムなどの絶縁特性が大きく低下することがある。
【0009】
このような問題点を解決するために、静電気印加剤を用いる代わりに、エアナイフを用いて風の力で溶融シートを密着させたり、回転する冷却ロールなどに表面張力が低い液体を噴射または塗布して溶融シートの密着性を改善する方法が考慮されたことがある。しかし、これら方法の場合、全体工程が複雑になり、工程制御が難しくなる短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、収縮率に優れ、低い温度で熱収縮が可能であると共に、熱収縮フィルムなどの成形品状態で絶縁性を損傷させることなく、密着性を向上させることができるポリエステル樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
芳香族ジカルボン酸に由来する残基を含むジカルボン酸由来残基;および
下記の化学式1の4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートに由来する残基、および下記の化学式2の4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールに由来する残基を含むジオール由来残基;を含む共重合ポリエステル樹脂と、
アルカリ金属化合物と、アルカリ土類金属化合物とを含み、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が約0.01乃至1になる含有量で含まれるポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
このようなポリエステル樹脂組成物において、前記アルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ金属元素を含むことができ、前記アルカリ土類金属化合物は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ土類金属元素を含むことができる。また、一例において、前記アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素を含み、酢酸塩、脂肪族カルボン酸塩、炭酸塩またはアルコキシドの形態を有する化合物になることができる。
【0015】
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、前記アルカリ金属化合物は、これに由来するアルカリ金属元素の含有量が約5乃至500ppmになる含有量で含まれ、前記アルカリ土類金属化合物は、これに由来するアルカリ土類金属元素の含有量が約20乃至1000ppmになる含有量で含まれてもよい。
【0016】
そして、前記ポリエステル樹脂組成物において、前記ジオール由来残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、およびエチレングリコールに由来する残基をさらに含むことができる。
【0017】
また、前記ジカルボン酸由来残基は、テレフタル酸(terephthalic acid)、ジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate)、脂環族ジカルボン酸(cycloaliphatic dicarboxylic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、アジピン酸(adipic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、ナフタレンジカルボン酸(naphthalenedicarboxylic acid)、およびコハク酸(succinic acid)からなる群より選択される一つ以上のジカルボン酸またはその誘導体に由来する残基を含むことができる。
【0018】
具体的な一例において、前記組成物中に含まれる共重合ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸由来残基の100モル%に対して、
4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート由来残基の約0.1乃至10モル%、4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノール由来残基の約0.1乃至12モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来残基の約0.1乃至15モル%、ジエチレングリコール由来残基の約2乃至15モル%、およびエチレングリコール由来残基の約48乃至97.7モル%を含むことができる。
【0019】
前述したポリエステル樹脂組成物、例えば、熱収縮フィルムなどの成形品状態にある組成物は、初期溶融比抵抗値(面抵抗)が約100MΩ/sq以下であり、前記初期溶融比抵抗値の測定後、120秒以下の時間が経過した後に溶融比抵抗値を測定した時、前記初期溶融比抵抗値との測定値差が約20MΩ/sq以下である特性を示して、適切な静電気印加性および優れた密着性を示すことができる。
【0020】
また、前記ポリエステル樹脂組成物は、成形前のチップ、ペレットまたは粉末などの状態を有することができるだけでなく、押出または射出により成形された成形品、例えば、熱収縮フィルム形態などを有することができる。
【0021】
前記ポリエステル樹脂組成物が熱収縮フィルムなどの形態を有する場合、このような熱収縮フィルムは、収縮開始温度が約60℃以下であり、60℃で最大熱収縮率が約4%以上であり、95℃で最大熱収縮率が約70%以上である特性などを示して、従来知られたポリエステル樹脂などで得られたフィルムに比べて収縮率に優れ、低い温度で熱収縮が可能な特性を示すことができる。
【0022】
一方、本発明はまた、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、
前記4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールを含むジオールを反応させてエステル化反応および重縮合反応を行う段階を含み、
前記エステル化反応段階または重縮合反応段階の少なくとも一つの段階は、アルカリ金属化合物と、アルカリ土類金属化合物の存在下で行われ、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が約0.01乃至1になる含有量で用いられる前述したポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0023】
このようなポリエステル樹脂組成物の製造方法において、前記エステル化反応段階は、前記ジカルボン酸に対してジオールを約1.2乃至3.0のモル比で投入し、約230乃至265℃の反応温度、および約1.0乃至3.0kg/cm
2の圧力下で、約100乃至300分間行われてもよい。
【0024】
また、前記重縮合反応段階は、触媒、安定剤、および呈色剤からなる群より選択された1種以上の添加剤の存在下で行われ、約260乃至290℃の反応温度および約400乃至0.1mmHgの減圧条件下で行われてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるポリエステル樹脂組成物およびこれを含む熱収縮フィルムなどは、従来のポリエステル樹脂などに比べて収縮率に優れ、PVCと類似な低い温度で熱収縮が可能であるため、フィルムの熱収縮工程で引き起こされたPET容器の変形または白濁を防止することができ、収縮速度の調節が容易であるため、成形不良を減少させることができる。したがって、このようなポリエステル樹脂組成物を用いて優れた収縮特性などを有する熱収縮フィルムなどを提供することができる。
【0026】
また、前記ポリエステル樹脂組成物を適用する場合、最終製造された熱収縮フィルムなどの状態で絶縁性を適切に維持した状態で、溶融シートなどの静電気印加性および密着性をより向上させることができる。したがって、このようなポリエステル樹脂組成物を用いて、優れた特性を有する熱収縮フィルムなどをより薄くて均一な厚さに速い速度で生産することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変換を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定の実施例を詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。本発明を説明するに当たり、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0028】
以下の明細書で、「残基」とは、特定の化合物が化学反応に参加した時、その化学反応の結果物に含まれ、前記特定の化合物に由来する一定の部分または単位を意味する。例えば、前記ジカルボン酸由来「残基」またはジオール由来「残基」のそれぞれは、エステル化反応または重縮合反応により形成されるポリエステルでジカルボン酸成分に由来する部分またはジオール成分に由来する部分を意味し得る。
【0029】
一方、発明の一実施形態によれば、芳香族ジカルボン酸に由来する残基を含むジカルボン酸由来残基;および
下記の化学式1の4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートに由来する残基、および下記の化学式2の4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールに由来する残基を含むジオール由来残基;を含む共重合ポリエステル樹脂と、
アルカリ金属化合物と、アルカリ土類金属化合物とを含み、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が約0.01乃至1になる含有量で含まれるポリエステル樹脂組成物が提供される。
【0032】
従来知られたポリエステル樹脂のフィルムは、急激な収縮率挙動変化により収縮時にシワや不均一な収縮が成形中に頻繁に発生する問題点があり、またポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムと比較すると、低温での収縮性が落ちたため、これを補完するために高温で収縮しなければならず、この場合、PET容器の変形または白濁が発生する問題点があった。
【0033】
そこで、本発明者らは、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート、および4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールを含むジオールを用いて共重合ポリエステル樹脂およびこれを含む熱収縮フィルムなど成形品を提供する場合、収縮率に優れ、PVCと類似な低い温度で熱収縮が可能であるため、フィルムの熱収縮工程で引き起こされたPET容器の変形または白濁を防止することができ、収縮速度の調節が容易であるため、成形不良を減少させることができるという点を実験を通じて確認した。
【0034】
また、一実施形態のポリエステル樹脂組成物は、そのエステル化反応および重合反応の製造過程で、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の特定の添加剤が用いられ、特に、これら2種の添加剤が特定の金属含有量比(重量比;以下同じ)を充足させるように用いられる。このように、特定の添加剤が重合後でなく、その製造過程中に特定の含有量比で用いられることによって、最終製造された熱収縮フィルムなどの絶縁性が適切な水準で維持可能であると共に、このようなフィルムの形成過程中に、押出機で押出された溶融シートなどに適切な静電気印加性が与えられて、冷却ロールなど冷却手段に対する優れた密着性が実現可能であることが確認された。その結果、一実施形態のポリエステル樹脂組成物を用いて、優れた特性を有する熱収縮フィルムなどをより薄くて均一な厚さに速い速度で生産することが可能になる。
【0035】
以下、一実施形態のポリエステル樹脂組成物を各成分別により具体的に説明する。
【0036】
まず、前記ポリエステル樹脂組成物には、前記4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートと4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールの特定ジオールに由来する残基と、テレフタル酸など芳香族カルボン酸に由来する残基を含む共重合ポリエステル樹脂が含まれる。このような特定ジオールに由来する残基を含むことによって、他のジオールを用いる場合と比較して、共重合ポリエステル樹脂の構造中に残留応力と関係した一定水準以上の分子鎖長さが確保され得る。したがって、このような共重合ポリエステル樹脂およびこれを含む組成物を用いて熱収縮フィルムなど成形品を得るようになると、延伸による残留応力が大きくなって熱量供給時に残留応力解消による収縮力が高くなり得る。その結果、収縮率に優れ、低温収縮性が向上した熱収縮フィルムなどが得られる。
【0037】
このような4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート由来残基と、4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノール由来残基は、前記共重合ポリエステル樹脂に含まれている全体ジオール由来残基中に約2乃至17モル%の含有量で含まれてもよい。したがって、前記共重合ポリエステル樹脂の結晶化による成形性不良を抑制することができる。もし、前記特定ジオール由来残基の含有量が過度に低くなれば、一実施形態の組成物を用いて熱収縮フィルムを形成しても所望の水準の収縮特性向上効果を達成しにくくなることもある。反対に、前記特定ジオール由来残基の含有量が過度に高くなれば、過延伸による白化現象が発生して熱収縮フィルムとして良好に活用されないこともある。前述した特定ジオール由来残基の含有量を充足させるために、後述する共重合ポリエステル樹脂およびこれを含む組成物の製造過程で、これに対応する約2乃至17モル%の含有量で前記特定ジオールを用いることができる。
【0038】
また、前記共重合ポリエステル樹脂に含まれるジオール由来残基は、前述した特定ジオール由来残基以外に、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、およびエチレングリコールに由来する残基をさらに含むことができる。
【0039】
また、このようなジオール由来残基と共に含まれる前記ジカルボン酸由来残基は、テレフタル酸(terephthalic acid)、ジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate)、脂環族ジカルボン酸(cycloaliphatic dicarboxylic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、アジピン酸(adipic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、ナフタレンジカルボン酸(naphthalenedicarboxylic acid)、およびコハク酸(succinic acid)からなる群より選択される一つ以上のジカルボン酸またはその誘導体に由来する残基を含むことができる。
【0040】
そして、より具体的な一例において、前記組成物中に含まれる共重合ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸由来残基の100モル%に対して、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート由来残基の約0.1乃至10モル%、4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノール由来残基の約0.1乃至12モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来残基の約0.1乃至15モル%、ジエチレングリコール由来残基の約2乃至15モル%、およびエチレングリコール由来残基の約48乃至97.7モル%を含むことができる。したがって、熱収縮フィルムなどの状態で収縮率および低温収縮特性などの収縮特性に優れるだけでなく、成形性および機械的物性など諸般物性に優れたフィルムなどを得ることができる。
【0041】
そして、このような各ジオール由来残基の含有量を充足させるために、後述する共重合ポリエステル樹脂およびこれを含む組成物の製造過程で、これに対応するそれぞれの含有量で前述したジオールを用いることができる。
【0042】
一方、一実施形態のポリエステル樹脂組成物は、前述した共重合ポリエステル樹脂、安定剤などの添加剤と共にアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物を含む。以下でより詳細に説明するが、このようなアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、共重合ポリエステル樹脂の製造のためのエステル化反応段階または重縮合反応段階の進行中に添加されて、その存在下で前記エステル化反応段階または重縮合反応段階が行われ得る。その結果、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が錯体を形成することと予測され、これによって、前記ポリエステル樹脂組成物およびこれから形成された熱収縮フィルムなど成形品に適切な静電気印加性を付与することができると見られる。しかも、このような静電気印加性が時間により実質的に低下しない特性を有するため、冷却ロールなど冷却手段に対する優れた密着性を発現および維持することができる。また、前述した特定の添加剤の使用、共重合ポリエステル樹脂の製造過程での使用および特定の含有量比での使用により、前記熱収縮フィルムなどの絶縁性低下を減らした状態で前記優れた密着性の発現および保持が可能になり、前記添加剤の使用により共重合ポリエステル樹脂などの溶融粘度やこれに伴う機械的物性が低下することも最小化することができる。
【0043】
前述した特性は、前記特定の添加剤の樹脂製造過程での使用だけでなく、これら特定の添加剤の含有量比によっても達成され得るが、このような特定の添加剤の含有量比は、前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物に由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比、より具体的に、重量比が約0.01乃至1、あるいは約0.05乃至0.5になる含有量と定義され得る。
【0044】
一方、前述したアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、最終製造された共重合ポリエステル樹脂またはこれを含む一実施形態の組成物中に、その化合物自体の形態で含まれてもよいが、これに由来するアルカリ金属元素またはイオンや、アルカリ土類金属元素またはイオンが分離された状態で存在することもできる。したがって、前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物に由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比は、前述した存在形態、例えば、金属元素、イオン、錯イオンまたはこれらの中の少なくとも一つを含む化合物などの存在形態に関係なく、これら添加剤に由来して共重合ポリエステル樹脂または組成物に含まれているアルカリ金属またはアルカリ土類金属の総金属含有量(総重量)から算出および定義され得る。より具体的に、前記アルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比は、前記の存在形態に関係なく、これらに含まれている(アルカリ土類金属の総原子、イオンおよび錯イオンの総重量)/(アルカリ金属の総原子、イオンおよび錯イオンの総重量)の重量比として算定され得る。
【0045】
そして、前記アルカリ金属化合物は、任意のアルカリ金属が有機基と結合された化合物になることができ、例えば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ金属元素を含むことができる。また、前記アルカリ土類金属化合物は、多様なアルカリ土類金属が有機基と結合された化合物になることができ、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択された1種以上のアルカリ土類金属元素を含むことができる。
【0046】
より具体的な一例において、前記アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、前述したアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、これらが結合された酢酸塩、脂肪族カルボン酸塩、炭酸塩またはアルコキシドの形態を有する化合物になることができる。
【0047】
このようなアルカリ金属化合物の最も代表的な例としては、水酸化リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム、酢酸カリウムまたは炭酸カリウムなどが挙げられ、前記アルカリ土類金属化合物の最も代表的な例としては、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウムまたは酢酸バリウムなどが挙げられる。また、これらの中で選択された2種以上を用いることができることはもちろん、前記で例示した化合物以外にもアルカリ金属またはアルカリ土類金属が有機基に結合された多様な塩形態の化合物を用いることもできる。
【0048】
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、前記アルカリ金属化合物は、これに由来するアルカリ金属元素の含有量が約5乃至500ppm、あるいは約20乃至200pmになる含有量で含まれ、前記アルカリ土類金属化合物は、これに由来するアルカリ土類金属元素の含有量が約20乃至1000ppm、あるいは約60乃至600ppmになる含有量で含まれてもよい。ただし、すでに前述したアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が約0.01乃至1になる関係を満たす限度内で、前記の含有量範囲で含まれてもよい。
【0049】
もし、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の含有量が過度に低くなる場合、一実施形態の組成物から形成される溶融シートに適切な静電気印加性または密着性などが与えられないことがあり、反対にアルカリ金属化合物の含有量が過度に高くなる場合、不純物として作用して重合時の反応性が低下することがある。また、アルカリ土類金属化合物の含有量が過度に高くなれば、重合時の反応性が低下したり、押出された溶融シートまたは熱収縮フィルムなど成形品のヘイズが高くなることがある。
【0050】
前述したポリエステル樹脂組成物は、例えば、製造された直後に測定された初期溶融比抵抗値が約100MΩ/sq以下、あるいは約10乃至70MΩ/sqであり、前記初期溶融比抵抗値の測定後、120秒以下、あるいは0乃至120秒、あるいは1乃至120秒の時間が経過した後に溶融比抵抗値を測定した時、前記初期溶融比抵抗値との測定値差が約20MΩ/sq以下、あるいは約5MΩ/sq以下である特性を満たすことができる。
【0051】
このように、初期溶融比抵抗値が一定水準以下に低く、時間による低下程度が低いことから、前記組成物から得られる溶融シートに適切な静電気印加性が与えられ、前記溶融シートが冷却ロールなど冷却手段に対して優れた密着性を示して、より薄くて均一な厚さのフィルムなどをより速い速度で製造できるようになる。同時に、前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物が一定の含有量比で用いられ、共重合ポリエステル樹脂の製造過程中に用いられて、初期溶融比抵抗値が一定水準以上に制御されることによって、前記組成物から形成された熱収縮フィルムなどの絶縁性を一定水準以上に維持することができる。
【0052】
一方、発明の他の実施形態によれば、本発明はまた、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、
前記4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4’−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノールを含むジオールを反応させてエステル化反応および重縮合反応を行う段階を含み、
前記エステル化反応段階または重縮合反応段階の少なくとも一つの段階は、アルカリ金属化合物と、アルカリ土類金属化合物の存在下で行われ、
前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、これらに由来するアルカリ土類金属元素/アルカリ金属元素の含有量比が約0.01乃至1になる含有量で用いられる前述した一実施形態のポリエステル樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0053】
このような他の実施形態の製造方法において、前記ジカルボン酸および特定ジオールを含むジオールの使用量と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の使用量などはすでに前述した一実施形態の組成物での各成分の含有量に対応するため、これに関する追加的な説明は省略する。
【0054】
また、このような製造方法において、前記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物は、エステル化反応段階の初期または末期に添加されることもでき、エステル交換反応のための重縮合反応段階の初期に添加されることもでき、その他エステル化反応および重縮合反応段階が終結する前の任意の段階で添加されることもできる。
【0055】
そして、第1段階であるエステル化反応段階は、バッチ(Batch)式または連続式で行うことができ、それぞれの原料は、別途に投入することもできるが、適切にはジオールにジカルボン酸をスラリー形態で作って投入することもできる。
【0056】
そして、前記エステル化反応は、前記ジカルボン酸に対してジオールを約1.2乃至3.0のモル比で投入し、約230乃至265℃、あるいは約245乃至255℃の反応温度、および約1.0乃至3.0kg/cm
2の圧力下で行うことができる。また、前記エステル化反応時間は、通常約100乃至300分程度がかかるが、これは反応温度、圧力、および用いられるジカルボン酸に対するジオールのモル比により適切に変化可能であるため、これに限定されるのではない。
【0057】
一方、前記エステル化反応には触媒が必要でないが、反応時間短縮のために選択的に触媒を投入することもできる。
【0058】
前述したエステル化反応が完了した後には、重縮合反応が行われるが、ポリエステル樹脂の重縮合反応時に一般に用いられる成分として触媒、安定剤および呈色剤からなる群より選択された1種以上の添加剤などを選択的に用いることができる。
【0059】
この時、使用可能な触媒としては、チタニウム
系触媒、ゲルマニウム
系触媒およびアンチモン
系触媒などがあるが、特にこれに限定されるのではない。
【0060】
前記チタニウム系触媒は、シクロヘキサンジメタノール系誘導体をテレフタル酸重量に対して約15%以上共重合させたポリエステル樹脂の重縮合触媒として用いられる触媒であり、アンチモン系触媒に比べて少量を用いても反応が可能であり、またゲルマニウム系触媒より安価な長所を有する。
【0061】
具体的に使用可能なチタニウム系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシドとシリコンジオキシド共沈物およびチタニウムジオキシドとジルコニウムジオキシド共沈物などがある。
【0062】
この時、前記重縮合触媒の使用量は、最終共重合ポリエステル樹脂の色相に影響を与えるため、所望の色相と用いられる安定剤および呈色剤により変わり得るが、好ましくは、最終共重合ポリエステル樹脂の重量に対してチタニウム元素量を基準に約1乃至100ppm、あるいは約1乃至50ppmがよく、シリコン元素量を基準に約10ppm以下が適切である。これは、前記チタニウム元素量が約1ppm未満であれば所望の重合度に到達しにくく、約100ppmを超えれば最終樹脂の色相が黄色くなって所望の色相を得られないためである。
【0063】
また、その他添加剤として安定剤および呈色剤などを用いることができる。使用可能な安定剤としては、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリエチルホスホノアセテートなどがあり、その添加量はリン元素量を基準に最終樹脂の重量に対して約10乃至100ppmであることが好ましい。これは、前記安定剤の添加量が約10ppm未満であれば所望の明るい色相を得にくく、約100ppmを超えれば所望の高重合度に到達できない問題があるためである。
【0064】
また、色相を向上させるために使用可能な呈色剤としては、コバルトアセテートおよびコバルトプロピオネートなどの呈色剤が挙げられ、その添加量は最終樹脂重量に対して約100ppm以下が好ましい。同時に、前記呈色剤以外にも、従来公知となった有機化合物を呈色剤として用いることができる。
【0065】
一方、このような成分が添加された後に行われる重縮合反応は、約260乃至290℃および約400乃至0.1mmHgの減圧条件下で実施され得るが、これに特に限定されない。
【0066】
前記重縮合段階は、所望の固有粘度に到達するまで必要な時間の間に実施されるが、反応温度は、一般に約260乃至290℃であり、好ましくは約260乃至280℃、より好ましくは約265乃至275℃である。
【0067】
前述した方法で製造された一実施形態のポリエステル樹脂組成物は、成形前のチップ、ペレットまたは粉末などの状態を有することができるだけでなく、押出または射出などの別途の成形工程により形成された成形品、例えば、熱収縮フィルム形態のようなフィルムまたはシート形態などを有することができる。
【0068】
前記ポリエステル樹脂組成物が熱収縮フィルムなどの形態を有する場合、このような熱収縮フィルムは、収縮開始温度が約60℃以下、あるいは約40乃至60℃、あるいは約50乃至60℃であり、60℃で最大熱収縮率が約4%以上、あるいは約4乃至10%、あるいは約5乃至9%であり、95℃で最大熱収縮率が約70%以上、あるいは約73乃至90%の特性などを示して、従来知られたポリエステル樹脂などで得られたフィルムに比べて収縮率に優れ、低い温度で熱収縮が可能な特性を示すことができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されると解釈されないと言える。
【0070】
実施例1
テレフタル酸100モルを基準に、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸8モル、4,4−(オキシビス(メチレン)ビス)シクロヘキサンメタノール2モル、1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル、ジエチレングリコール10モル、およびエチレングリコール72モルを3kgバッチ反応器で混合しながら、温度を徐々に255℃まで上げながらエステル化反応させた。この時、発生する水を系外に流出させながらエステル化反応を行い、水の発生、流出が終了されると攪拌機と冷却コンデンサおよび真空システム付き重縮合反応器に生成物を移した。
【0071】
前記重縮合反応器で、生成物にテトラブチルチタネートを0.5gになるように添加し、トリエチルホスフェートを0.4gになるように添加し、コバルトアセテートを0.5gになるように添加した後に、内部温度を240℃で275℃まで上げながら圧力を常圧で維持した状態で一次に重縮合反応を行った。次に、マグネシウムアセテートのアルカリ土類金属化合物を反応中期に30ppm、カリウムアセテートのアルカリ金属化合物を500ppm入れて反応を継続して行った。以降、50mmHgの圧力下で40分間低真空反応を行い、エチレングリコールを取り出し、再び0.1mmHgまで徐々に減圧して高真空雰囲気で所望の固有粘度になるまで反応を行った。このように重縮合反応を行った後、生成物を吐出し、チップ状に切断した。
【0072】
このように製造された共重合ポリエステル樹脂および添加剤を含む組成物を用いて熱収縮フィルムを製造した。
【0073】
実施例2〜3
下記表1のように、アルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物の使用量および含有量比を変更させたことを除き、実施例1と同様な方法で共重合ポリエステル樹脂、これを含む組成物および熱収縮フィルムを製造した。
【0074】
比較例1
下記表1のように、アルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物を用いないことを除き、実施例1と同様な方法で共重合ポリエステル樹脂、これを含む組成物および熱収縮フィルムを製造した。
【0075】
比較例2〜4
下記表1のように、アルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物の使用量および含有量比を変更させたことを除き、実施例1と同様な方法で共重合ポリエステル樹脂、これを含む組成物および熱収縮フィルムを製造した。
【0076】
試験例
前記実施例および比較例により製造された熱収縮フィルムの物性を次の方法で測定して下記表1に共に示した。
【0077】
(1)ガラス転移温度(Tg):ティー・エイ・インスツルメント(TA instrument)社の示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry)を用いて測定した。
【0078】
(2)固有粘度(IV):150℃のオルト−クロロフェノールに0.12%濃度に溶解した後、35℃の恒温槽でウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0079】
(3)熱収縮率:10cmm×10cmmの正方形で裁断し、延伸比(DR)がMD:TD=1:5、延伸速度10mm/min、延伸温度85度に延伸した後、下記表1に記載されたような温度で60秒間オーブンに入れて熱収縮させた後、試料の縦および横方向の長さを測定して下式により計算した。
−熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/(収縮前の長さ)
(4)溶融比抵抗/面抵抗(MΩ/sq):直径が5cmである試験管に間隔が1cmであり、電極面積が1cm
2である白金電極を設置し、実施例および比較例の組成物または熱収縮フィルムを40g入れた後、窒素雰囲気下で275℃に溶融させた後、抵抗測定器を用いて初期溶融比抵抗を測定した(初期測定値)。
【0080】
(5)時間による溶融抵抗値変化(MΩ/sq):実施例および比較例の組成物などが製造された後、1乃至10秒内に初期溶融比抵抗を(4)のように測定した後、約120秒経過後に再び溶融比抵抗を測定し、その変化量を算出した。
【0081】
【表1】
【0082】
前記表1を参照すると、実施例および比較例の組成物および熱収縮フィルムは共に低い収縮開始温度を有し、優れた熱収縮率を示すことが確認された。
【0083】
また、実施例の組成物などは、初期溶融比抵抗値が適切水準を維持するだけでなく、時間の経過による変化量が小さいため、優れた静電気印加性および密着性を示しながらも、フィルム状態でポリエステル樹脂フィルム特有の適切な絶縁性を維持することが確認された。
【0084】
これに比べて、比較例の場合、溶融比抵抗値の初期値が高いか、またはその時間による変化程度が大きいため、優れた静電気印加性および密着性を示すことができないことが確認された。
【0085】
以上で本発明の内容の特定部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者に、このような具体的技術は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項とそれらの等価物により定義されると言える。