(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(RS)−5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(1);(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(2);(RS)−4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(3);(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(4);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(5);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(6);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(7);4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(8);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド、単一ジアステレオマー(9);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ホモキラルジアステレオマー)(10および11);4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド、単一エナンチオマー性アトロプ異性体(12);(RS)−4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(13);4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(14);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(24);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−ヒドロキシエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(25);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−フルオロエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)、(26);4−(2−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−ヒドロキシエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(27);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−N7,N7−ジメチル−9H−カルバゾール−1,7−ジカルボキシアミド(ラセミ体)(28);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−クロロ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(29);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(30);9−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−8−フルオロ−5H−ピリド[4,3−b]インドール−6−カルボキシアミド(ラセミ体)(31);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(ラセミ体)(32);または9−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−8−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール−6−カルボキシアミド(ラセミ体)(33)である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第一の態様は、式(I):
【化1】
[式中:
2本の点線は2つの単結合または2つの二重結合のいずれかを意味し;R
1bはその2本の点線が2つの単結合である時にだけ存在し;
Xは:
(i)2本の点線が2つの単結合である場合に、CR
2aR
2bまたはNR
2bであるか;あるいは
(ii)2本の点線が2つの二重結合である場合に、CR
2aまたはNであり;
Qは:
【化2】
であり;
R
1aは、H、−CN、−CF
3、−CH
3、−CR
6aR
6bOH、−CH
2CH
2OH、−CH(OH)CH
2OH、−CH
2CH
2F、−NHR
7または−C(O)NR
8aR
8bであり;
R
1bは、存在する時には、Hまたは−CH
3である:ただし、R
1aがHであるならば、その時にはR
1bもHであり;
R
2aは、H、FまたはClである:ただし、R
1aがH以外の基であるならば、その時にはR
2aはHであり;
R
2bは、存在する時には、R
2aと同じであり;
R
3は、F、Cl、−CNまたは−CH
3であり;
R
4は、H、F、Cl、−OCH
3または−OCF
3であり;
R
5は、−CNまたは−C(O)CH=CH
2であり;
R
6aおよびR
6bは、独立して、Hまたは−CH
3であり;
R
7はC
1−4アルキルであり;および
R
8aおよびR
8bは、独立して、Hまたは−CH
3である]
で示される化合物またはその塩を提供する。
【0026】
本発明の第二の態様は、式(II):
【化3】
[式中:
2本の点線は2つの単結合または2つの二重結合のいずれかを意味し;R
1bとR
2bはその2本の点線が2つの単結合である時にだけ存在し;
Qは:
【化4】
であり;
R
1aは、H、−CN、−CF
3、−CH
3、−CR
6aR
6bOH、−CH(OH)CH
2OH、−NHR
7または−C(O)NR
8aR
8bであり;
R
1bは、存在する時には、Hまたは−CH
3である:ただし、R
1aがHであるならば、その時にはR
1bもHであり;
R
2aは、HまたはFである:ただし、R
1aがH以外の基であるならば、その時にはR
2aはHであり;
R
2bは、存在する時には、R
2aと同じであり;
R
3は、F、Cl、−CNまたは−CH
3であり;
R
4は、H、F、Cl、−OCH
3または−OCF
3であり;
R
5は−C(O)CH=CH
2であり;
R
6aおよびR
6bは、独立して、Hまたは−CH
3であり;
R
7はC
1−4アルキルであり;および
R
8aおよびR
8bは、独立して、Hまたは−CH
3である]
で示される化合物またはその塩を提供する。
【0027】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、2本の点線が2つの二重結合であり、XがCR
2aである化合物を提供する。この実施態様の化合物は、式(Ia):
【化5】
[式中:Q、R
1a、R
2aおよびR
3は第一の態様または第二の態様にて定義されるとおりである]
で示される構造を有する。
【0028】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、2本の点線が2つの単結合を意味し、XがCR
2aR
2bである化合物を提供する。この実施態様の化合物は、式(Ib):
【化6】
[式中、Q、R
1a、R
1b、R
2a、R
2bおよびR
3は第一の態様または第二の態様にて定義されるとおりである]
で示される構造を有する。
【0029】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、2本の点線が2つの二重結合を意味し、XがNである化合物を提供する。この実施態様の化合物は、式(Ic):
【化7】
[式中、Q、R
1aおよびR
3は第一の態様にて定義されるとおりである]
で示される構造を有する。
【0030】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、2本の点線が2つの単結合を意味し、XがNR
2aである化合物を提供する。この実施態様の化合物は、式(Id):
【化8】
[式中、Q、R
1a、R
1b、R
2aおよびR
3は第一の態様にて定義されるとおりである]
で示される構造を有する。
【0031】
R
1aがH以外の基である、式(Ib)で示されるテトラヒドロカルバゾール化合物および式(Id)で示される化合物もまた、R
1aが結合する炭素原子にキラル中心があり、そのためにこのキラル中心でS−およびR−異性体として存在し得る。これらの異性体は分離可能であって、安定している。1の実施態様は、そのような式(Ib)の化合物をR
1aが結合する炭素にキラル中心のあるS−異性体として提供する。1の実施態様は、そのような式(Ib)の化合物をR
1aが結合する炭素にキラル中心のあるR−異性体として提供する。もう一つ別の実施態様は、そのような式(Id)の化合物をR
1aが結合する炭素にキラル中心のあるS−異性体として提供する。さらなる実施態様は、そのような式(Id)の化合物をR
1aが結合する炭素にキラル中心のあるR−異性体として提供する。
【0032】
アトロプ異性体は単結合軸の回りの束縛回転よりもたらされる立体異性体であり、その回転障壁は個々の回転異性体の単離を可能とするほどに十分に高い。(LaPlanteら、J. Med. Chem., 54:7005 (2011))。R
3が水素以外の基であり、Qが水素以外のR
4で置換されたフェニル、置換1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル、置換3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル、2,3,4,5−テトラヒドロ[b][1,4]オキサゼピン−9−イルまたは置換イソインドリン−4−イルである、式(I)の化合物は、三環式テトラヒドロカルバゾール/カルバゾールと、Q基との間の結合に立体軸がある。この結合により接続される環での置換が非対称性を有するため、およびこの結合の回りで立体障害により惹起される回転の制限のため、式(I)のそのような化合物は回転異性体を形成しうる。仮に回転エネルギーの障壁が十分に高ければ、この結合の回りで束縛回転がゆっくりとした速度で生じ、その速度は分離されるアトロプ異性体を異なる化合物として単離させるのに十分である。かくして、式(I)のこれらの化合物は、キラル固定相でのクロマトグラフィーなどの特定の環境下で、個々のアトロプ異性体に分離され得る2つの回転異性体を形成しうる。式(I)のかかる化合物は、2つのアトロプ異性体の混合物として、または単一のアトロプ異性体として提供され得る。式(I)のかかる化合物は、分離可能であり、外界温度および生理的温度で溶液の状態にて安定していることが判明した。アトロプ異性体の絶対空間配置は単結晶X線結晶構造解析により決定され得る。式(I)のこれらの化合物は、個々のアトロプ異性体として、あるいは式(I)の2つのアトロプ異性体をある割合で含む混合物として提供され得る。
【0033】
1の実施態様は式(I)の化合物またはその塩を提供し、それでは1種類だけのアトロプ異性体が提供されるか、1種だけのアトロプ異性体を少量の他のアトロプ異性体と混合して提供される。絶対配置が帰属されていない場合には、その得られるアトロプ異性体は、特定の条件下にあるキラル固定相でクロマトグラフィーに付す間に他のアトロプ異性体との関連で溶出する順序で特定され得る。
【0034】
式(I)の化合物はアトロプ異性体であって、その中で式(I)の各アトロプ異性体の化合物はその相補的アトロプ異性体を実質的に含まない形態にて提供され得る。本明細書中で使用される場合、「実質的に含まない」なる語は、少なくとも95%のアトロプ異性純度で、好ましくは99%のアトロプ異性純度で、より好ましくは少なくとも99.5%のアトロプ異性純度で提供される式(I)の化合物をいう。
【0035】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)または式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、R
1aがH、−CF
3または−C(CH
3)
2OHであり;R
1bがHであり;R
2aがHまたはFである:ただし、R
1aがH以外の基であるならば、その場合R
2aはHであり;R
2bが、存在する時には、R
2aと同じであり;R
3がFであり;R
4がHであり;R
5が−C(O)CH=CH
2であって;Qが第1の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。
【0036】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)または式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、R
1aがH、−CN、−CF
3、−CR
6aR
6bOHまたは−NHR
7であり;R
2aがHであり;R
3がFまたはClであり;R
4がH、F、Clまたは−OCH
3であり;R
5が−C(O)CH=CH
2であり;R
6aがHまたは−CH
3であり;R
6bがHまたは−CH
3であり;R
7がC
2−3アルキルであって;Qが第1の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。
【0037】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)または式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、Qが
【化9】
であり;
R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4およびR
5が第2の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。この実施態様には、R
1aがHまたは−CF
3であり、R
3がFである化合物が含まれる。また、この実施態様には、R
1aがHまたは−CF
3であり;R
2aがHであり;R
3がFであり;R
4がHである、式(Ia)の化合物も含まれる。
【0038】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)または式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、Qが
【化10】
であり;
R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4およびR
5が第2の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。この実施態様には、R
1aがHまたは−CF
3であり、R
3がFである、化合物が含まれる。この実施態様には、R
1aがHまたは−CF
3であり;R
2aがHであり;R
3がFであり;R
4がHである、式(Ia)の化合物も含まれる。
【0039】
1の実施態様は、式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、Qが
【化11】
であり;
R
1aがH、−CH
3、−CF
3、−CR
6aR
6bOHまたは−C(O)NR
8aR
8bであり;R
1bがHであり;R
2aがHまたはFである:ただし、R
1aがH以外の基であるならば、その場合R
2aはHであり;R
2bがHまたはFである:ただし、R
2aとR
2bは同じであり;R
3がFまたはClであり;R
4がH、F、Clまたは−OCH
3であって;R
8aおよびR
8bが、各々、−CH
3である、化合物を提供する。
【0040】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)または式(Ib)の化合物あるいはその塩であって、Qが
【化12】
であり;
R
1aがH、−CF
3または−C(CH
3)
2OHであり;R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4およびR
5が第2の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFであり、R
4がHである、化合物も含まれる。
【0041】
1の実施態様は、式(I)、式(Ic)または式(Id)あるいはその塩であって、Qが
【化13】
であり;
R
1aがH、−CF
3または−C(CH
3)
2OHであり;R
1b、R
2b、R
3、R
4およびR
5が第1の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFまたはClであり;R
4がHである化合物も含まれる。R
2bがHである化合物も含まれる。
【0042】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
3がF、Clまたは−CNであり;R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
4、R
5およびQが第1の態様にて定義されるとおりである、化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFまたは−CNである化合物が含まれる。この実施態様には、R
3が−CNである化合物も含まれる。
【0043】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
3がFまたはClであり;R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
4、R
5およびQが第1の態様にて定義されるとおりである化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFである化合物が含まれる。この実施態様には、R
3がClである化合物も含まれる。
【0044】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
3がCl、−CNまたは−CH
3であり;R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
4、R
5およびQが第1の態様にて定義されるとおりである化合物を提供する。この実施態様には、R
3が−CNまたは−CH
3である化合物が含まれる。この実施態様には、R
3が−CH
3である化合物も含まれる。
【0045】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
5が−C(O)CH=CH
2であり;R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4およびQが第1の態様にて定義されるとおりである化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFまたは−Clである化合物が含まれる。XがCR
2aR
2bまたはCR
2aである化合物も含まれる。
【0046】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
5が−CNであり;R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4、R
5およびQが第1の態様にて定義されるとおりである化合物を提供する。この実施態様には、R
3がFまたは−Clである化合物が含まれる。XがCR
2aR
2bまたはCR
2aである化合物も含まれる。
【0047】
1の実施態様は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)または式(Id)の化合物あるいはその塩であって、R
1aが−CN、−CF
3、−CH
3、−CR
6aR
6bOH、−CH
2CH
2OH、−CH(OH)CH
2OH、−CH
2CH
2F、−NHR
7または−C(O)NR
8aR
8bであり;R
1b、R
2a、R
2b、R
3、R
4、R
5、R
6a、R
6b、R
7、R
8a、R
8bおよびQが第1の態様にて定義されるとおりである化合物を提供する。この実施態様には、R
1aが−CN、−CF
3または−CH
3である化合物が含まれる。この実施態様には、R
1aが−C(CH
3)
2OH、−CH
2CH
2OH、−CH(OH)CH
2OH、−CH
2CH
2Fまたは−C(O)N(CH
3)
2である化合物も含まれる。
【0048】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、(RS)−5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(1);(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(2);(RS)−4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(3);(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(4);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(5);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(6);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(7);4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(8);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド、単一ジアステレオマー(9);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ホモキラルジアステレオマー)(10および11);4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド、単一エナンチオマー性アトロプ異性体(12);(RS)−4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(13);
【0049】
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー)(14);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(24);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−ヒドロキシエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(25);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−フルオロエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)、(26);4−(2−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(2−ヒドロキシエチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(27);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−N7,N7−ジメチル−9H−カルバゾール−1,7−ジカルボキシアミド(ラセミ体)(28);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−クロロ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(29);4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(ラセミ体)(30);9−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−8−フルオロ−5H−ピリド[4,3−b]インドール−6−カルボキシアミド(ラセミ体)(31);5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(ラセミ体)(32);or 9−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−8−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール−6−カルボキシアミド(ラセミ体)(33)を提供する。
【0050】
本発明は、その精神または本質的特性より逸脱することなく、他の特異的形態にて具現化され得る。本発明は本明細書に記載の発明の態様および/または実施態様のすべての組み合わせを包含する。本発明のあらゆるすべての実施態様は他のいずれの実施態様とも組み合わされて新たな実施態様を記載し得ると理解される。実施態様の個々の要素は、各々、いずれかの実施態様からの他のあらゆる要素と組み合わされて、新たな実施態様を記載するとも理解されるべきである。
【0051】
定義
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な記載を読むことで、当業者によってさらに容易に理解されるであろう。明瞭にするのに、別個の実施態様に関連して前後に記載される本発明の特定の特徴を合わせて一の実施態様を形成してもよいことが分かるであろう。反対に、簡潔にするために、単一の実施態様に関連して記載される本発明の種々の特徴をそのサブコンビネーションを形成するのに合わせてもよい。ここで同定される実施態様は例示を意図とするものであり、制限を目的とするものではない。
【0052】
本願明細書にて特記されない限り、単数は複数をも包含して言及するものである。例えば、「a」および「an」は、一または一以上のいずれをもいう。
本明細書で用いるように、「化合物」なる語は、少なくとも1つの化合物をいう。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物および式(I)の2個以上の化合物を包含する。
【0053】
特に断りがなければ、原子価が満たされていないヘテロ原子はいずれも、原子価を満たすのに十分な水素原子を有するものとされる。
ここに記載の定義は、出典明示により本願明細書の一部とされる、特許、特許出願および/または特許出願公報に記載の定義に優先する。
【0054】
本発明を記載するのに使用される種々の用語の定義が以下に列挙される。これらの定義は、(特定の場合で限定されない限り)個々に、またはより大きな基の一部として、明細書を通して使用される用語に適用される。
本願明細書を通して、その基および置換基は、安定した部分および化合物を提供するように当業者により選択され得る。
【0055】
当該分野にて使用される慣習に従って、
【化14】
は、部分または置換基のコアまたは骨格構造への結合点である、結合を表すのに、本願明細書の構造式にて使用される。
【0056】
ここで使用される「アルキル」なる語は、例えば、1〜12個の炭素原子、1〜6個の炭素原子および1〜4個の炭素原子を含有する、分枝鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基をいう。アルキル基の例は、以下に限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルおよびi−プロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチル)およびペンチル(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、3−メチルペンチルおよび4−メチルペンチルを包含する。記号「C」の後に数字が下付きで示される場合、その下付き文字は特定の基が含有しうる炭素原子の数をより具体的に限定する。例えば、「C
1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0057】
「ヒドロキシアルキル」なる語は、分岐鎖および直鎖の両方の飽和アルキル基が1または複数のヒドロキシル基で置換されている基を包含する。例えば、「ヒドロキシアルキル」は−CH
2OH、−CH
2CH
2OHおよびC
1−4ヒドロキシアルキルを包含する。.
【0058】
「医薬的に許容される」なる語は、本願明細書にて、正当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症がなく、利益/危険が合理的な割合で均衡している、使用に適する、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形をいうのに使用される。
【0059】
式(I)の化合物は非晶質固体または結晶固体として提供され得る。凍結乾燥を利用して式(I)の化合物を非晶質固体として提供することができる。
【0060】
式(I)のある化合物は遊離形態にて(イオン化しないで)存在してもよく、あるいは本発明の範囲内でもある塩を形成しうる。特記されない限り、本発明の化合物への言及は、遊離形態への、およびその塩への言及を包含するものと理解される。「塩」なる語は無機および/または有機酸で形成される酸性塩を意味する。医薬的に許容される(すなわち、毒性がなく、生理学的に許容される)塩、例えばそのアニオンが塩の毒性または生物学的活性に有意に寄与しない塩等が好ましい。しかしながら、他の塩であっても、例えば調製の間に利用され得る単離または精製工程において有用であるかもしれず、かくして本発明の範囲内にあると考えられる。式(I)の化合物の塩は、例えば、式(I)の化合物を、一定量、例えば当量の酸と、塩が沈殿するなどの媒体中にて反応させることにより、または水性媒体中にて反応させ、つづいて凍結乾燥させることにより形成され得る。
【0061】
典型的な酸付加塩として、アセタート(酢酸またはトリハロ酢酸、例えば、トリフルオロ酢酸で形成されるアセタート)、アジパート、アルギナート、アスコルバート、アスパルタート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート、ビスルファート、ボラート、ブチラート、シトラート、カンホラート、カンホルスルホナート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコナート、ドデシルスルファート、エタンスルホナート、フマラート、グルコヘプタノアート、グリセロホスファート、ヘミスルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、塩酸塩(塩酸で形成される)、臭化水素酸塩(臭化水素で形成される)、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホナート、ラクタート、マレアート(マレイン酸で形成される)、メタンスルホナート(メタンスルホン酸で形成される)、2−ナフタレンスルホナート、ニコチナート、ニトラート、オキサラート、ペクチナート、ペルサルファート、3−フェニルプロピオナート、ホスファート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、サチリラート、スクシナート、サルファート(硫酸で形成されるサルファート等)、スルホナート(本明細書に記載されるスルホナート等)、タートラート、チオシアナート、トシラート等のトルエンスルホナート、ウンデカノアート等が挙げられる。
【0062】
さらには、式(I)の化合物の溶媒和物(例、水和物)も本発明の範囲内にあると認識されるべきである。「溶媒和物」なる語は、式(I)の化合物と、1または複数の溶媒分子(有機または無機のいずれであってもよい)とが物理的結合したものを意味する。この物理的結合は水素結合を包含する。場合によっては、例えば1または複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合に、溶媒和物は単離能を有するであろう。「溶媒和物」は溶液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。典型的な溶媒和物として、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物、イソプロパノール溶媒和物、アセトニトリル溶媒和物および酢酸エチル溶媒和物が挙げられる。溶媒和の方法は当該分野にて公知である。
【0063】
種々のプロドラッグの形態が当該分野において周知であり、以下の文献:
a)Wermuth,C.G.ら、The Practice of Medicinal Chemistry, Chapter 31, Academic Press (1966);
b)Bundgaard,H.ら、Design of Prodrugs, Elsevier (1985);
c)Bundgaard,H.、Chapter 5, 「プロドラッグの設計および用途(Design and Application of Prodrugs)」, A Textbook of Drug Design and Development、113-191頁、Krogsgaard-Larsen,P.ら編、Harwood Academic Publishers (1991);および
d)Testa,B.ら、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH (2003)
に記載される。
【0064】
加えて、式(I)の化合物は、その調製の後で、単離かつ精製され、式(I)の化合物を99重量%以上の量で含有する(「実質的に純粋な」)組成物を得、次にそれをここに記載されるように使用または処方する。かかる「実質的に純粋な」式(I)の化合物はまた、ここで本発明の一部を形成するものと考えられる。
【0065】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な純度にまで単離し、効果的な治療剤に処方しても分解しない、十分に強固な化合物であることを意図とする。本発明は安定な化合物を具現化するものとする。
【0066】
「治療上の有効量」は、Btkに対する阻害剤として作用するのに効果的な、あるいは多発性硬化症および関節リウマチなどの自己免疫性および/または炎症性および/または増殖性病態を治療または予防するのに効果的な量の本発明の化合物を単独で、または当該量の特許請求の範囲の化合物を組み合わせて、あるいは当該量の本発明の化合物を他の活性成分と組み合わせて含むものとする。
【0067】
本明細書で用いるように、「治療する」または「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける病態の治療に及び、(a)特に、哺乳類が病態に罹りやすいが、まだ罹患していると診断されていない場合に、該哺乳類が病態に罹患することを妨げること;(b)病態を阻害すること、すなわち、病態の進行を阻むこと;および/または(c)病態を緩和すること、すなわち、病態の退行を生じさせることを包含する。
【0068】
本発明の化合物は、本発明の化合物中に存在する原子のすべての同位体を包含するものとする。同位体は、原子番号が同じであるが、質量数が異なる、それらの原子を包含する。一般例であって、限定するものではなく、水素の同位体は重水素(D)およびトリチウム(T)を包含する。炭素の同位体は
13Cおよび
14Cを包含する。同位体で標識された本発明の化合物は、一般に、当業者に既知の慣用的技術により、さもなければ使用される標識されていない試薬の代わりに同位体で標識された適当な試薬を用い、ここに記載の方法と類似する方法により調製され得る。例えば、メチル(−CH
3)は−CD
3などの重水素化メチル基も包含する。
【0069】
式(I)で示される化合物は、治療されるべき症状に適するいずれかの手段によって、部位特異的治療の必要性または送達されるべき式(I)の化合物の量に応じて投与され得る。
【0070】
式(I)の化合物と、一または複数の非毒性の医薬的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(包括的に、本願明細書にて「担体」物質という)と、所望により他の活性成分とを含む一連の医薬組成物もまた、本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物は、いずれか適当な経路、好ましくはかかる経路に適する医薬組成物の形態にて、および意図する治療に効果的な用量にて投与されてもよい。本発明の化合物および組成物は、例えば、経口的に、粘膜的に、あるいは非経口的に、例えば血管内的に、静脈内的に、腹腔内的に、皮下的に、筋肉内的に、および胸骨内的に、従前の医薬的に許容される担体、アジュバントおよびベヒクルを含有する投与単位製剤にて投与されてもよい。例えば、医薬担体はマンニトールまたは乳糖および微結晶セルロースの混合物を含有してもよい。該混合物は、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびクロスポビドンなどの崩壊剤等の添加成分を含有してもよい。担体の混合物はゼラチンカプセルに充填されてもよく、あるいは錠剤として圧縮されてもよい。医薬組成物は、例えば、経口剤形または注入剤として投与されてもよい。
【0071】
経口投与の場合、該医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体カプセル、懸濁液または液剤の形態であってもよい。医薬組成物は、好ましくは、特定量の活性成分を含有する投与単位の形態で製造される。例えば、医薬組成物は約0.1〜1000mg、好ましくは約0.25〜250mg、より好ましくは約0.5〜100mgの範囲にある一定量の活性成分を含む錠剤またはカプセルとして提供されてもよい。ヒトまたは他の哺乳類の適当な日用量は、患者の状態および他の因子に応じて大きく変化してもよいが、慣用的操作を用いて決定することができる。
【0072】
本明細書に記載の医薬組成物はいずれも、例えば、許容され、かつ適切ないずれの経口製剤を介しても送達され得る。典型的な経口製剤として、限定されないが、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性および油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードおよびソフトカプセル、液体カプセル、シロップおよびエリキシルが挙げられる。経口投与用医薬組成物は経口投与用医薬組成物を製造する分野にて公知のいずれかの方法に従って調製され得る。医薬的に口に合う調製物を提供するために、本発明に係る医薬組成物は、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、粘滑剤、酸化防止剤および保存剤より選択される少なくとも1つの物質を含有しうる。
【0073】
錠剤は、例えば、式(I)の少なくとも1つの化合物を、錠剤の製造に適する少なくとも1つの非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合することにより調製され得る。代表的な賦形剤は、限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムおよびリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えば、微結晶セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、コーン澱粉およびアルギン酸などの造粒および崩壊剤;例えば、澱粉、ゼラチン、ポリビニルピロリドンおよびアカシアなどの結合剤;および、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの滑沢剤を包含する。加えて、錠剤は、コーティングされないか、あるいは不快な味の薬物の嫌な味をマスクするか、または崩壊を妨げ、活性成分が消化管で吸収されるのを遅らせ、それにより活性成分の効果を長期間にわたって持続させるために公知技法によりコーティングさせることもできる。典型的な水溶性味マスキング材料は、限定されないが、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースおよびヒドロキシプロピル−セルロースを包含する。代表的な遅延材料は、限定されないが、エチルセルロースおよびセルロースアセタートブチラートを包含する。
【0074】
ハードゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物を、例えば、炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;およびカオリンなどの少なくとも1つの不活性な固体希釈剤と混合することにより調製され得る。
【0075】
ソフトゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物を、例えば、ポリエチレングリコールなどの少なくとも1つの水溶性担体;および例えば落花生油、流動パラフィンおよびオリーブ油などの少なくとも1つの油性媒体と混合することにより調製され得る。
【0076】
水性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物を、水性懸濁液の製造に適する少なくとも1つの賦形剤と混合することにより調製され得る。水性懸濁液の製造に適する典型的な賦形剤は、限定されないが、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガムなどの沈殿防止剤;例えば、天然に存するホスファチド、例、レシチンなどの分散または湿潤剤;例えば、ポリオキシエチレンステアラートなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物;例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物;例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールより誘導される部分エステルとの縮合生成物;ならびに例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールより誘導される部分エステルとの縮合生成物を包含する。水性懸濁液はまた、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn−プロピルなどの少なくとも1つの保存剤;少なくとも1つの着色剤;少なくとも1つの矯味矯臭剤;および/または少なくとも1つの甘味剤(限定されないが、例えば、シュークロース、サッカリンおよびアスパルタームを含む)を含有し得る。
【0077】
油性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物を、例えば、落花生油;オリーブ油;ゴマ油;およびココナッツ油などの植物油に;あるいは例えば、流動パラフィンなどの鉱油に懸濁させることにより調製され得る。油性懸濁液はまた、例えば、蜜ロウ;硬質パラフィン;およびセチルアルコールなどの少なくとも1つの増粘剤を含有し得る。口当たりのよい油性懸濁液を提供するために、少なくとも1つの上記される甘味剤、および/または少なくとも1つの矯味矯臭剤が該油性懸濁液に添加され得る。油性懸濁液はさらに、限定されないが、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびアルファ−トコフェロールなどの酸化防止剤を含む、少なくとも1つの保存剤を含有し得る。
【0078】
分散性粉末または顆粒は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物を、少なくとも1つの分散剤および/または湿潤剤;少なくとも1つの沈殿防止剤;および/または少なくとも1つの保存剤と混合することにより調製され得る。適切な分散剤、湿潤剤および沈殿防止剤は上記されるとおりである。典型的な保存剤は、限定されないが、例えば、酸化防止剤、例、アスコルビン酸を包含する。加えて、分散性粉末および顆粒は、少なくとも1つの賦形剤(限定されないが、例えば、甘味剤;矯味矯正臭剤;および着色剤を含む)を含有し得る。
【0079】
少なくとも1つのその式(I)の化合物のエマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンとして調製され得る。式(I)の化合物を含むそのエマルジョンの油相は既知の方法で既知の成分より構成されてもよい。油相は、限定されないが、例えば、オリーブ油および落花生油などの植物油;例えば、流動パラフィンなどの鉱油;およびそれらの混合液により提供され得る。その相は乳化剤を含んでいるだけかもしれないが、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪または油、あるいは脂肪と油の両方との混合物を含んでもよい。適切な乳化剤は、限定されないが、例えば、天然に存するホスファチド、例、大豆レシチン;例えば、ソルビタンモノオレアートなどの脂肪酸とヘキシトール無水物より誘導されるエステルまたは部分エステル;および、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどの部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物を包含する。安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に親水性乳化剤を配合するのが好ましい。油と脂肪の両方を含むのも好ましい。乳化剤を、安定剤と一緒に配合してまたは配合することなく、いわゆる乳化ワックスを製造し、そのワックスは油および脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を製造する。エマルジョンはまた、甘味剤、矯味矯正臭剤、保存剤および酸化防止剤を含有し得る。本発明の処方での使用に適する乳化剤およびエマルジョン安定剤は、単独での、あるいは当該分野にて周知のワックスまたは他の材料と合わせた、ツウィーン(Tween)60、スパン(Span)80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアラート、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリルジステアラートを包含する。
【0080】
式(I)の化合物はまた、例えば、医薬的に許容され、かつ適切ないずれかの注射可能な形態を通して、静脈内的に、皮下的に、および/または筋肉内的に送達され得る。注射可能な形態の典型例は、限定されないが、例えば、許容されるベヒクルと、例えば水、リンガー溶液および生理食塩液などの溶媒とを含む滅菌水溶液;水中油型滅菌ミクロエマルジョン;および水性または油性懸濁液を包含する。
【0081】
非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張滅菌注射溶液または懸濁液の形態であってもよい。これらの溶液および懸濁液は、経口投与用製剤の使用に言及される一または複数の担体または希釈剤を用いて、あるいは他の適当な分散または湿潤剤および沈殿防止剤を用いることで、滅菌粉末または顆粒より調製され得る。該化合物は水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガントガムおよび/または種々の緩衝剤に溶かされてもよい。他のアジュバントおよび投与方法は医薬分野にて十分かつ広く知られている。活性成分はまた、生理食塩水、デキストロースまたは水を包含する適切な担体との組成物、またはシクロデキストリン(すなわち、カプチソール(Captisol)(登録商標)、可溶化共溶媒(すなわち、プロピレングリコール)または可溶化ミセル(すなわち、ツィーン80)との組成物として注射により投与されてもよい。
【0082】
滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中溶液であってもよい。とりわけ、許容される、使用可能なベヒクルおよび溶媒は、水、リンガー(Ringer’s)溶液および生理食塩液である。加えて、滅菌性固定油が溶媒または懸濁化媒体として慣用的に使用される。この目的には、合成モノまたはジグリセリドを含む、刺激の少ない固定油が使用されてもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製にて有用であることがわかる。
【0083】
水中油型滅菌性注射可能なミクロエマルジョンは、例えば、1)少なくとも1つの式(I)の化合物を、例えば大豆油とレシチンの混合液などの油相に溶かし;2)式(I)の化合物を含有する油相を水およびグリセロールの混合液と合わせ;および3)その合わせたものを処理してミクロエマルジョンを形成することにより調製され得る。
【0084】
滅菌水性または油性懸濁液は当該分野において既知の方法に従って調製され得る。例えば、滅菌の水性溶液または懸濁液は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールなど)で調製され得;滅菌の油性懸濁液は、滅菌の非毒性の許容される溶媒または懸濁化媒体(例えば、滅菌性固体油、例、合成モノ−またはジ−グリセリドなど);および脂肪酸(例えば、オレイン酸など)で調製され得る。
【0085】
本発明の医薬組成物に使用されてもよい、医薬的に許容される担体、アジュバントおよびベヒクルは、以下に限定されないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナートなどの自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、ツィーン、クレモホール(CREMOPHOR(登録商標))界面活性剤(BASF)などのポリエトキシ化ヒマシ油または他に類似する高分子送達マトリックスなどの医薬剤形に使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク、緩衝剤、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース基剤物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を包含する。アルファ−、ベータ−およびガンマ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンまたは2−および3−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学的に修飾された誘導体、あるいは他の可溶化誘導体もまた、有利には、ここに記載の製剤における化合物の送達を強化するのに使用されてもよい。
【0086】
本発明の医薬的に活性な化合物は慣用的な製薬方法に従って処理され、ヒトおよび他の哺乳類を含む、患者に投与するための医薬品を製造することができる。その医薬組成物は、滅菌処理などの慣用的な製薬工程に供されてもよく、および/または保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤等などの慣用的アジュバントを含有してもよい。錠剤およびピルは付加的に腸溶性コーティングを施して調製され得る。そのような組成物はまた、湿潤剤、甘味剤、矯味矯臭剤および香料などのアジュバントを含んでもよい。
【0087】
化合物の投与量ならびに本発明の化合物および/または組成物で病態を治療するための治療計画は、種々の要因(対象の年齢、体重、性別および病状、疾患の型、疾患の重篤度、投与経路および頻度、および利用される個々の化合物を含む)に依存する。このように、投与計画は大きく変化するが、標準的な方法を用いて大まかに決定され得る。約0.001〜100mg/体重kg、好ましくは約0.0025〜約50mg/体重kg、最も好ましくは約0.005〜10mg/体重kgの日用量が適しているかもしれない。その日用量は一日に1ないし4回の用量で投与され得る。他の投与計画は週に1回の投与および隔日に1回の投与のサイクルを含む。
【0088】
治療用では、本発明の活性化合物は、通常、指示の投与経路に適する1または複数のアジュバントと合わせられる。経口投与されるならば、該化合物は、ラクトース、シュークロース、澱粉粉、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合され、次に一般的な投与用に打錠またはカプセル化される。かかるカプセルまたは錠剤は、活性化合物をヒドロキシプロピルメチルセルロースに分散させて提供されるように、放出制御製剤を含有してもよい。
【0089】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの式(I)の化合物を含み、所望により医薬的に許容されるいずれかの担体、アジュバントおよびベヒクルより選択されるさらなる試剤を含んでもよい。本発明のもう一つ別の組成物は、本明細書に記載の式(I)の化合物またはそのプロドラッグ、および医薬的に許容される担体、アジュバントまたはベヒクルを含む。
【0090】
有用性
本発明の化合物は、Btkの調節を含め、キナーゼ活性を調節する。本発明の化合物により調節され得るキナーゼ活性の他の型は、限定されるものではないが、BMX、Btk、ITK、TXKおよびTEc、ならびにその変異体などのTecファミリーのキナーゼを包含する。
【0091】
従って、式(I)の化合物は、キナーゼ活性の調節、特にBtk活性の選択的阻害に付随する症状の治療において有用性がある。かかる症状は、サイトカインレベルが細胞内シグナル伝達の結果として調節される、B−細胞介在性疾患を包含する。
【0092】
本明細書で使用されるように、「治療する」または「治療」なる語は、応答的および予防的手段のいずれか一方またはその両方であって、例えば、疾患または障害の発症を阻害または遅らせ、症候群または病態の完全なまたは部分的な軽減を達成し、および/または疾患または障害および/またはその徴候を緩和、改善または治癒するように設計された手段を包含する。
【0093】
Btkの阻害剤としてのその活性に鑑みて、式(I)の化合物は、クローン結腸炎および潰瘍性結腸炎、喘息、対宿主移植片疾患、慢性閉塞性肺疾患などの炎症性疾患;グレーブス病、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、乾癬などの自己免疫疾患;骨吸収疾患、骨関節炎、骨粗鬆症、多発性骨髄腫関連の骨障害などの破壊性骨障害;急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病などの増殖性障害;充実性腫瘍を含む血管由来の障害、眼新血管形成(ocular neovasculization)および小児血管腫などの血管性障害;敗血症、敗血性ショックおよび細菌性赤痢などの感染性疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、または外傷に起因する神経変性疾患などの神経変性疾患、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、およびHIV感染、CMV網膜炎、AIDSなどの各々のがんおよびウイルス性疾患を含むが、これらに限定されない、サイトカイン関連の症状の治療に有用である。
【0094】
さらに具体的には、本発明の方法で治療され得る特定の症状または疾患は、限定されないが、(急性または慢性)膵炎、喘息、アレルギー、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強皮症、シェグーレン症候群、慢性甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、クローン病、乾癬、対宿主移植片疾患、エンドトキシンにより誘発される炎症性反応、結核、アテローム性動脈硬化症、筋肉変性、カヘキシー、乾癬性関節炎、ライター症候群、痛風、外傷性関節炎、風疹性関節炎、急性滑膜炎、膵臓β−細胞疾患;重度好中球浸潤により特徴付けられる疾患;リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎症状、カワサキ病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、皮膚筋炎、ぶどう膜炎、抗VIII因子疾患、強直性脊椎炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、抗リン脂質症候群、ANCA関連血管炎、皮膚筋炎/多発性筋炎、脳マラリア、慢性肺炎症性疾患、珪肺症、肺サルコイドーシス、骨吸収疾患、同種移植拒絶反応、感染による発熱および筋肉痛、感染に続発するカヘキシー、骨髄形成、瘢痕組織形成、潰瘍性結腸炎、胸焼け(pyresis)、インフルエンザ、骨粗鬆症、骨関節炎、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、敗血症、敗血症性ショックおよび細菌性赤痢;アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血または外的損傷により惹起される神経変性疾患;充実性腫瘍、眼新血管形成および小児血管腫を含む血管性障害;急性肝炎感染(A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎を含む)、HIV感染およびCMV網膜炎、AIDS、ARCまたは悪性腫瘍、およびヘルペスを含むウイルス性疾患;卒中、心筋虚血、心臓発作での虚血、臓器低酸素症、血管過形成、心臓および腎臓再灌流傷害、血栓症、心臓肥大、トロンビン誘発性血小板凝集、内毒素血症および/または毒素性ショック症候群、プロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼ−2に関連の症状、および尋常性天疱瘡を包含する。
【0095】
好ましい治療方法は、その症状が、クローンおよび潰瘍性結腸炎、同種移植拒絶反応、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、尋常性天疱瘡および多発性硬化症より選択される、ところの方法である。あるいはまた、好ましい治療方法は、その症状が、卒中より惹起される脳虚血性虚血性再灌流傷害および心筋梗塞より惹起される心臓虚血性再灌流傷害を含む、虚血性再灌流傷害より選択される、ところの方法である。もう一つ別の好ましい治療方法は、症状が多発性硬化症であるところの方法である。
【0096】
加えて、本発明のBtk阻害剤は、プロスタグランジン・エンドペロキシド・シンターゼ−2(PGHS−2)(シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)とも称される)などの誘発性プロ炎症性タンパク質の発現を阻害する。従って、さらなるBtk関連の症状として、浮腫、無痛覚症、発熱、および神経筋痛、頭痛、がんにより惹起される痛み、歯痛および関節痛などの疼痛が挙げられる。本発明の化合物はまた、ウマ感染性貧血ウイルスを含むが、これに限定されないレンチウイルス感染;またはネコ免疫不全、ウシ免疫不全ウイルスおよびイヌ免疫不全ウイルスを含むレトロウイルス感染などの獣医学的ウイルス感染の治療に使用されてもよい。
【0097】
「Btk関連の症状」または「Btk関連の疾患または障害」なる語が本明細書中で用いられる場合、仮に何度も繰り返されるとしても、その各々は上記したすべての症状を、ならびにBtkキナーゼ活性により影響を受ける他のいずれの症状をも包含するものとする。
【0098】
「治療的に効果的な量」は、単独で、あるいは組み合わせて投与した場合にBtkを阻害するのに効果的である、本発明の化合物の量を包含するものとする。
【0099】
1の実施態様は、そのようなBtkキナーゼ関連症状を治療する方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物をその治療を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。かかる症状を治療するのに治療的に効果的な量が投与されてもよい。この実施態様の方法は、アレルギー障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患(SLE、関節リウマチ、多発性血管炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症、アレルギー性鼻炎、多発性硬化症(MS)、移植片拒絶反応、I型糖尿病、膜性腎炎、炎症性腸疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫甲状腺炎、風邪および温暖凝集素症、エバンス症候群、溶血性尿毒症症候群/血栓性血小板減少性紫斑病(HUS/TTP)、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、末梢性ニューロパシー(例、ギラン・バレー症候群)、尋常性天疱瘡および喘息を含むが、これらに限定されない)の治療などのBtkキナーゼ関連症状を治療するのに利用されてもよい。
【0100】
Btkキナーゼ関連症状の治療方法は、少なくとも1つの式(I)の化合物を単独であるいは相互におよび/またはかかる症状の治療に有用な別の適切な治療剤と組み合わせて投与することを含んでもよい。少なくとも1つの式(I)の化合物およびかかる症状を治療するための別の適切な治療剤の治療的に効果的な量が投与されてもよい。従って、「治療的に効果的な量」はまた、Btkキナーゼ関連症状を治療するのに効果的な請求に係る化合物を組み合わせた量を含むものとする。化合物の組み合わせは相乗的な組み合わせであることが好ましい。例えば、Chouら、Adv. Enzyme Regul., 22:27-55(1984)によって記載されるような相乗作用は、組み合わせて投与された場合に、化合物の作用(この場合、Btkの阻害)が単一の薬剤として単独で投与した時の化合物の相加作用よりも大きい時に生じる。一般に、相乗作用は化合物の最適濃度未満の濃度で端的に示される。相乗作用は、細胞毒性が低いとの観点から、抗Btk作用を、あるいは個々の成分と比べてその組み合わせた他の有益な作用を高めることができる。
【0101】
そのような他の治療剤の例として、コルチコステロイド、ロリプラム、カルホスチン、サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID)、4−置換イミダゾ[1,2−a]キノキサリン(米国特許第4,200,750号に開示);インターロイキン−10、グルココルチコイド、サリチラート、酸化窒素および他の免疫抑制剤;デオキシスペルグアリン(DSG)などの核転座阻害剤;イブプロフェン、セレコキシブおよびロフェコキシブなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);プレドニゾンまたはデキサメタゾンなどのステロイド;アバカビルなどの抗ウイルス剤;メトトレクサート、レフルノミド、FK506(タクロリムス、PROGRAF(登録商標))などの抗増殖剤;アザチプリンおよびシクロホスファミドなどの細胞毒性薬;テニダップ、抗TNF抗体または可溶性TNF受容体、およびラパマイシン(シロリムスまたはRAPAMUNE(登録商標))またはその誘導体などのTNF−α阻害剤が挙げられる。
【0102】
上記した他の治療剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用される場合、それらは、例えば、Physicians’Desk Reference(PDR)に示される量にて、そうでなければ当業者により決定される量にて使用されてもよい。本発明の方法において、そのような他の治療剤は、本発明の化合物を投与する前に、それと同時に、またはその後に投与されてもよい。本発明はまた、上記されるような、IL−1、IL−6、IL−8、IFN−γおよびTNF−α介在疾患を含むBtkキナーゼ関連症状の治療能を有する医薬組成物を提供する。
【0103】
本発明の組成物は、上記される他の治療剤を含有してもよく、例えば、製薬の分野にて周知の方法などの技法に従って、慣用的な固体または液体ビヒクルまたは希釈剤、ならびに所望の投与方法に適する型の医薬品添加物(例、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、矯味矯臭剤等)を利用することにより処方されてもよい。
【0104】
もう一つ別の実施態様は療法にて用いるための式(I)の化合物を提供する。この実施態様において、療法における使用は治療的に効果的な量の式(I)の化合物の投与を包含してもよい。
【0105】
もう一つ別の実施態様は療法にて用いるための式(I)の化合物を提供する。この実施態様において、療法における使用は治療的に効果的な量の式(I)の化合物の投与を包含してもよい。
【0106】
本発明はまた、アレルギー障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患の治療または予防用の医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。この実施態様において、医薬を製造するための使用はアレルギー障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患を予防して処理するために治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを包含してもよい。
【0107】
本発明はまた、がんの治療用の医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。この実施態様は、医薬を製造するための使用を包含してもよく、アレルギー障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患を予防して処理するために治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを包含する。
【0108】
本発明はさらに、1または複数の式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、組成物を包含する。
本発明はさらに、1または複数の式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、組成物を包含する。
【0109】
「医薬的に許容される担体」は、生物学的活性剤を動物に、特に哺乳油動物に送達するのにその分野にて一般に許容される媒体をいう。医薬的に許容される担体は当業者の管理する権限内にある多くの要因に従って処方される。これらの要因は、限定されるものではないが、処方される活性剤の型および特性;活性剤を含有する組成物が投与される予定の対象;その組成物の意図する投与経路;および標的とされる治療指標を包含する。医薬的に許容される担体は、水性および非水性の両方の液体媒体を、ならびに種々の固体および半固体の剤形を包含する。そのような担体は、活性剤の他に多くの異なる成分および添加剤を含むことができ、かかる付加的な成分は、種々の理由で、例えば、当業者に周知の活性剤の安定化、結合剤等の理由で製剤中に含まれる。適切な医薬的に許容される担体、およびそれを選択する際の要因は、例えば、その出典を明示することにより本明細書の一部とされる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(1985)などの入手が容易な種々の供給源に記載されており、それで理解される。
【0110】
式(I)の化合物は、治療されるはずの症状に適する、部位特異的治療の必要性または送達される薬物の量に応じて変化しうる、どのような手段により投与されてもよい。皮膚関連疾患では一般に局所投与が好ましく、がんまたは前がん状態では全身治療が好ましいが、他の送達方法を排除するものではない。例えば、該化合物は、錠剤、カプセル、顆粒、散剤またはシロップを含む液体製剤の形態などで経口的に;液剤、懸濁液、ゲルまたは軟膏の形態などで局所的に;舌下的に;バッカル的に;皮下、静脈内、筋肉内または胸骨下注射または注入技法(例えば、滅菌注射水性または非水性溶液または懸濁液)などで非経口的に;吸入噴霧によるなどで経鼻的に;クリームまたは軟膏の形態などで局所的に;坐剤の形態などで経直腸的に;またはリポソームを用いて送達されてもよい。毒性がなく、医薬的に許容されるビヒクルまたは希釈剤を含有する投与単位製剤が投与されてもよい。該化合物は即時放出または持続放出に適する形態にて投与されてもよい。即時放出または持続放出は適切な医薬組成物で、あるいは特に持続放出の場合に、皮下移植または浸透ポンプなどの装置で達成され得る。
【0111】
局所投与用の典型的な組成物はプラスチベース(鉱油をポリエチレンでゲル化したもの)などの局所用担体を含む。
【0112】
経口投与用の典型的な組成物は、例えば、バルクを分け与えるための微結晶セルロース、沈殿防止剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および当該分野にて公知の剤などの甘味剤または矯味矯臭剤を含んでもよい懸濁液;および、当該分野にて知られる剤などの、例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはラクトースおよび/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および潤滑剤を含有してもよい即時放出性錠剤を包含する。本発明の化合物はまた、例えば、成型、圧縮または凍結乾燥された錠剤で舌下および/またはバッカル投与により送達されてもよい。典型的な組成物はマンニトール、ラクトース、シュークロース、および/またはシクロデキストリンなどの速溶性希釈剤を含んでもよい。かかる製剤には、セルロース(アビセル(AVICEL)(登録商標))またはポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)および/または無水マレイン酸コポリマー(例、グラントレス(Gantrez))などの粘膜と粘着しやすくする賦形剤;および、ポリアクリルコポリマー(例、カルボポール(Carbopol)934)などの放出調節剤を含んでもよい。潤滑剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、着色剤および安定化剤が製造および使用を容易にするのに添加されてもよい。
【0113】
経鼻用アエロゾルまたは吸入投与用の典型的な組成物は、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、吸収および/または生物学的利用能を強化するための吸収促進剤、および/または当該分野において公知の剤などの他の可溶化剤または分散剤を含有しうる液剤を包含する。
【0114】
非経口投与用の典型的な組成物は、例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンガー溶液、生理食塩水などの適切な毒性のない非経口的に許容される希釈体または溶媒、あるいは他の適切な分散または湿潤剤、および沈殿防止剤(合成モノ−またはジ−グリセリドおよび脂肪酸(オレイン酸を含む)を含む)を含有してもよい、注射用溶液または懸濁液を包含する。
【0115】
経直腸投与用の典型的な組成物は、例えば、常温で固体であるが、直腸腔にて液化および/または溶解し、薬物を放出するカカオ脂、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールなどの適切な非刺激性の賦形剤を含有してもよい坐剤を包含する。
【0116】
本発明の化合物の治療的に効果的な量は当業者によって決定されてもよく、それは哺乳動物で1日当たり体重1kgに付き約0.05〜1000mg;1−1000mg;1−50mg;5−250mg;250−1000mgの典型的な投与量で活性化合物を含み、それは単回用量で投与されてもよく、あるいは1日当たり1〜4回とする個々に分割された用量の形態にて投与されてもよい。ある特定の対象についての個々の用量レベルおよび投与頻度は一定ではなく、利用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用時間、対象の種類、年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事、投与経路および投与時間、排せつ率、薬物の併用、および個々の症状の重篤度を含む、種々の要素に依存することが理解されよう。治療するのに好ましい対象は、動物を包含し、最も好ましくはヒトなどの哺乳類種ならびにイヌ、ネコ、ウマ等などの人に慣れた動物である。このように、「患者」なる語が本願明細書にて使用される場合、この用語は、Btk酵素レベルが介在して影響を受ける、すべての対象、最も好ましくは哺乳類種を包含するものとする。
【0117】
下記の「実施例」のセクションにて具体的に示される式(I)の実施例の化合物が後記する1または複数のアッセイにて試験された。
【0118】
1の実施態様において、式(I)の化合物は、ヒト組換えBtk酵素アッセイで測定した場合に、0.4nM以下、例えば、0.001〜0.4nMのIC
50値でBtk酵素を阻害する。この実施態様には、0.3nM以下、例えば、0.001〜0.3nMのIC
50値でBtk酵素を阻害する式(I)の化合物が含まれる。この実施態様の別の化合物は0.25nM以下、例えば、0.001〜0.25nMのIC
50値でBtk酵素を阻害する。
【0119】
1の実施態様において、式(I)の化合物は、抗ヒトIgMで刺激したラモスRA1B細胞において細胞内カルシウム流出を阻害するのに、IC
50値が25nM以下の、例えば、0.1〜25nMの有用な効能を有する。この実施態様には、20nM以下、例えば、0.1〜20nMのIC
50値で、および15nM以下、例えば0.1〜15nMのIC
50値で抗ヒトIgMで刺激したラモスRA1B細胞にて細胞内カルシウム流出を阻害するのに効能を有する式(I)の化合物が含まれる。
【0120】
1の実施態様において、式(I)の化合物は、ヒト組換えBtk酵素アッセイで測定した場合に、0.4nM以下、例えば、0.001〜0.4nMのIC
50値でBtk酵素を阻害し、25nM以下の、例えば、0.1〜25nMのIC
50値で抗ヒトIgMで刺激したラモスRA1B細胞にて細胞内カルシウム流出を阻害する。
【0121】
1の実施態様において、式(IIa)の化合物は、ヒト組換えBtk酵素アッセイで測定した場合に、0.4nM以下、例えば、0.001〜0.4nMのIC
50値でBtk酵素を阻害し、20nM以下の、例えば、0.1〜20nMのIC
50値で抗ヒトIgMで刺激したラモスRA1B細胞にて細胞内カルシウム流出を阻害する。
【0122】
調製方法
本発明の化合物は有機合成の分野における当業者に公知の多くの方法を用いて調製され得る。本発明の化合物は、下記の方法を、有機合成化学の分野にて公知の合成方法と一緒に用いて、あるいは当業者により理解されるようにそれに変形を加えて合成され得る。好ましい方法は、下記の方法に限定されないが、それらの方法を包含する。反応は、利用される試薬および材料に適切であり、変形がなされるのに適する溶媒または混合溶媒中で行われる。分子上の官能基が提案される変換と適合しなければならないことは有機合成の分野における当業者により理解されるであろう。これは、時に、合成工程の順序を修飾する判断を、または本発明の所望の化合物を得るために他のプロセスのスキームよりも好ましい一の特定のスキームを選択する判断を求めることとなる。
【0123】
中間体の化合物または式(I)の化合物に存在する官能基のいくつかは、それらの化合物を調製するのに、あるいは該中間体を他の中間体または式(I)の化合物に変換するのに使用されるいくつかの反応条件に対して不安定であるかもしれず、あるいは適していないかもしれないことは有機合成の分野における当業者により理解されるであろう。この場合には、官能基は、利用され得る反応条件に対して安定しているか、あるいはより適している別の官能基に変換されることにより保護されてもよい。これらの保護された官能基は、次に、合成の後半で原官能基に戻すように変換され得る。その例が、カルボン酸エステルとしてのカルボン酸の保護、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)誘導体またはベンジルオキシカルボニル(Cbz)誘導体としての第1または第2アミンの保護、または2−トリメチルシリルエトキシメチル(SEM)誘導体としてのカルバゾールまたはテトラヒドロカルバゾール窒素の保護である。保護基の使用は文献にて詳しく記載されており、当業者に対して多くの変形を記載する権威ある参考書が、Wuts,P.ら、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 第4版、Wiley-Interscience (2006) である。
【0124】
式(I)の特定の化合物を意味する化合物3はスキーム1に示される方法を用いて調製され得る。
【0126】
置換カルバゾールカルボキシアミドまたはテトラヒドロカルバゾールカルボキシアミド
1(ここで、YはBr、Clまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシなどの適切な基である)は、ボロン酸またはボロン酸エステル
2(ここで、Rは、例えば、H、アルキルであるか、または一緒になって所望により置換されてもよい1,3,2−ジオキサボラランまたは1,3,2−ジオキサボリナンを形成する)と反応し(ここで、Arは式(I)の基Qの1の基に相当する)、化合物
3を提供し得る。この反応は、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたはリン酸三カリウムなどの適切な塩基、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドまたは1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドなどの適切な触媒を用いることにより、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中、所望により水またはエタノールなどの1または複数の適切な共溶媒との溶媒中で行われてもよい。かかるカップリング反応はスズキ−ミヤウラ(Suzuki-Miyaura)カップリング反応として周知であり、化学文献(例えば、Heravi, M. ら、Tetrahedron, 68: 9145 (2012) およびその中で引用される参考文献を参照のこと)に記載される。
【0127】
別法として、置換カルバゾールカルボキシアミドまたはテトラヒドロカルバゾールカルボキシアミド
1は、化学文献(例えば、Ishiyama, T. ら、Tetrahedron, 57: 9813 (2001) およびその中で引用される参考文献を参照のこと)にて公知の方法を用いて、対応するボロン酸またはボロン酸エステル
4(ここで、Rは、例えば、H、アルキルであるか、または一緒になって所望により置換されてもよい1,3,2−ジオキサボラランまたは1,3,2−ジオキサボリナンを形成する)に変換され得る。かかる反応の例が、
1と、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)などの試薬との、酢酸カリウムなどの塩基、および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドなどの適切な触媒の存在下における適切な溶媒中での反応である。別法として、化合物
1(ここで、YはBrである)を、ブチルリチウムまたは塩化イソプロピルマグネシウムなどの有機金属試薬と反応させ、つづいてトリメチルボラートまたはトリ−イソプロピルボラートなどのホウ酸エステルで処理し、次にその得られたボロン酸エステルを加水分解に供し、ボロン酸
4(R=H)を得ることができる。化合物
4と、適切な化合物
5(ここで、Arは式(I)の基Qの1の基に相当し、YはBr、Clまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシなどの適切な基である)とを、上記されるスズキ−ミヤウラカップリング反応を用いて反応させ、化合物
3を得ることもできる。
【0128】
化合物
2は、化合物
4を化合物
1から調製するのに記載される方法と同じ方法を用い、化合物
5より調製され得る。
【0130】
スキーム2に示されるように、立体障害により、aで示される結合の回りで回転の制限がもたらされ、化合物
3aはアトロプ異性として知られるキラリティーを見せ、2種のエナンチオマー
3bおよび
3cとして存在し得る。(スキーム2において、Qは例示を目的としてテトラヒドロイソキノリン−5−イル基として示される。)キラル固定相でのクロマトグラフィーなどのある条件下で、エナンチオマーのアトロプ異性体は、クロマトグラムにて2つの別個のピークとして観察され得る。かかる化合物はエナンチオマーの混合物として単離することができ、そのエナンチオマーは固定相でのプレパラティブクロマトグラフィーなどの当該分野にて公知の方法を用いて分離され得る。分離されたエナンチオマーは、適切な貯蔵および取り扱い条件下で、単離可能であって安定的である。
【0131】
ある場合には、化合物
3はテトラヒドロカルバゾールカルボキシアミド(ここで、点線は単結合を意味する)であり、R
1aおよびR
1bは相互に異なる。一例が、スキーム3に示される、
3dであって、R
1aは水素以外の基である。(これは例示に過ぎず、制限を意味するものではない。)この場合には、2個のキラル中心があり:R
1aの結合点、およびaで示される結合は上記されるとおりである。かくして、4種のジアステレオマー(
3e、
3f、
3gおよび
3h)が存在し得る。したがって、化合物
3dは、4種すべてのジアステレオマーの混合物として、単一のジアステレオマーとして、あるいは2種またはそれ以上のジアステレオマーの混合物として存在してもよい。ジアステレオマーの対(
3eと
3h、または
3fと
3g)のラセミ混合物が存在可能である。上記されるように、そのジアステレオマーはキラル固定相でのクロマトグラフィーなどの文献に記載の方法を用いて分離されてもよい。
【0133】
ある場合には、化合物
3は、キラル性テトラヒドロカルバゾールカルボキシアミド
1または
4の単一のエナンチオマーより調製され得る。これらの場合、化合物
3をもたらすスズキ−ミヤウラ反応から2種のジアステレオマーの混合物が生成され得る。その一例がスキーム3に示される
3iおよび
3jであり、ここでR
1、R
3およびR
4はすべて水素以外の基である。(これらは例示に過ぎず、何ら制限するものではない。)適切な化合物
1または
4の一つのエナンチオマーより形成される化合物
3iはジアステレオマー
3eと
3fの混合物であり、それに対して適切な化合物
1または
4の別のエナンチオマーより形成される化合物
3jはジアステレオマー
3gと
3hの混合物であろう。上記されるように、これらのジアステレオマーは、クロマトグラフィーまたは選択的結晶化などの文献に記載の方法を用いて分離されてもよい。
【0134】
1または
4がキラル性テトラヒドロカルバゾールカルボキシアミドである場合には、スズキ−ミヤウラカップリング反応の間にキラル誘導化が起こり、化合物
3を得ることができる。これらの場合には、ジアステレオマーの混合物は等モルでない混合物で得ることができ、すなわち、化合物
3は、結合aを一の絶対配置で有する1または複数のジアステレオマーが結合aを反対の絶対配置で有する1または複数のジアステレオマーよりも多量に存在する、ジアステレオマーの混合物であり得る。
【0135】
7で示される式(I)のある化合物は、スキーム4で特定される方法を用いて調製され得る。
【0137】
これらの方法は、第2アミンを担持する化合物
6(すなわち、XHは式(I)のQ基に相当し、その中でR
5はHで置換される)を適切な試剤R
5−Z(ここで、ZはClまたはOHなどの脱離基を意味する)と反応させて化合物
7(ここで、XR
5はかかる反応よりもたらされる式(I)のQ基の一つに相当する)を得る。アミンのかかる反応は文献にて記載される。そのような反応の一例は、化合物
6のアミンをカルボン酸塩化物またはカルボン酸無水物でアシル化することであり、通常は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリルまたはジクロロメタンなどの適切な溶媒中、一般にはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、または水酸化ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどの無機塩基の水溶液などの塩基の存在下で行われる。あるいはまた、ピリジンなどの溶媒を用いることができ、その場合には該溶媒は塩基として供することもできる。
【0138】
スキーム4に示される反応のもう一つ別の例が、化合物
6のアミンを、文献に記載される多数のアミドカップリング試薬のいくつかを用いて、例えば、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスファート(BOPまたはカストロ(Castro)試薬としても知られる)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスファート(HATUとしても知られる)、あるいはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDCとしても知られる)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBTとしても知られる)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOATとしても知られる)などの試薬との組み合わせを用いて、カルボン酸でアシル化することである。かかる反応は、通常、酢酸エチル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジン−2−オンなどの適切な溶媒中、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で行われる。
【0139】
スキーム4のある種の化合物
6(ここで、XHは式(I)のQ基に相当し、その中でR
5はHと置換される)はスキーム5に示されるように調製され得る。
【0141】
化合物
1と、ボロン酸またはボロン酸エステル
8(ここで、XPはスキーム4のXHと類似しており;PはHあるいはアミンの保護基として文献に記載される、例えば、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Cbz)などの適切なアミン保護基のいずれかとすることができる)とを、上記される(スキーム1にて記載の)スズキ−ミヤウラカップリングを用いる反応に付して、必要ならば、保護基Pを除去した後に、対応する化合物
6を得ることができる。化合物
8のPがHであるならば、化合物
6を直接得ることができる。
【0142】
スキーム1にて説明される方法と同様にして、スキーム4の化合物
6(ここで、XHは式(I)のQ基に相当し、その中でR
5はHで置換される)を調製するための別法がスキーム5にも示される。スキーム1のボロン酸またはボロン酸エステル
4(ここで、Rは、例えば、H、アルキルであるか、または一緒になって所望により置換されてもよい1,3,2−ジオキサボラランまたは1,3,2−ジオキサボリナンを形成する)と、化合物
9(ここで、YはBr、Clまたはトリフルオロスルホニルオキシなどの適切な脱離基である)との上記されるスズキ−ミヤウラカップリングを用いる反応でも化合物
6が提供され得る。上記されるように、PはHであるか、またはPは適切な保護基であり得、その場合には脱保護により化合物
6を提供し得る。
【0143】
さらに、化合物
8は、化合物
4を化合物
1から調製するのに記載されるのと同じ方法(スキーム1)を用いて、化合物
9より調製され得る。
【0144】
式(I)の化合物を調製するのに使用される化合物
1(スキーム1を参照のこと)はスキーム6に記載の操作を用いて調製され得る。
【0146】
置換された2−アミノ安息香酸
10(文献に記載されるか、または文献に記載の操作を用いて調製される)は、文献に記載の方法を用いて、例えば、水性塩酸中にて亜硝酸ナトリウムで処理することにより対応するジアゾニウム塩に変換し、つづいて塩化スズ(II)で還元することで塩酸塩としての対応する2−ヒドラジニル安息香酸
11に変換され得る。
11を適切なシクロヘキサノン
12と、適切な触媒を含む適当な溶媒中で、例えば、塩酸を含むエタノール中、またはp−トルエンスルホン酸もしくはトリフルオロ酢酸を含むトルエン中で、あるいは酢酸中(この場合には、溶媒は触媒として供することもできる)で反応させることで、対応する置換されたテトラヒドロカルバゾール
13を提供し得る。この反応は、一般に、フィッシャー(Fischer)インドール合成として知られており、化学分野において公知である(例えば、Kamata,J.ら、Chem. Pharm. Bull., 52:1071(2004)を参照のこと)。別法として、該フィッシャー・インドール合成は2つの連続工程にて実施され得る:
11を(pートルエンスルホン酸などの適切な触媒を所望により含んでもよいエタノールまたはトルエンなどの適切な溶媒中等の)適切な条件下で
12と反応させ、中間体のヒドラゾンを形成させ、それを単離し、次に適切な条件(例えば、塩酸を含むエタノール、塩化亜鉛を含む酢酸、またはトリフルオロ酢酸を含むトルエン)下でさらに反応させて化合物
13を得ることができる。
【0147】
化合物
13のカルボン酸は、化学文献にて記載の方法を用いて、例えば、化合物
13を、塩化オキサリルまたは塩化チオニルで処理することにより対応する酸塩化物に変換し、つづいてアンモニアで処理することにより;あるいは化合物
13をカルボジイミドなどのカップリング剤またはEDCとHOATの混合物の存在下でアンモニアまたは塩化アンモニウムで処理することにより、化合物
14の対応するカルボキシアミド(スキーム1に示される化合物
1の一例の化合物)に変換され得る。R
1bとR
2bが共にHである化合物
14の場合、化合物
14の対応するカルバゾール
16(スキーム1に示される化合物
1のもう一つ別の例の化合物)への変換は、化学文献に記載の方法、例えば、化合物
14を適切な溶媒中にてDDQなどの酸化剤で処理することにより行われ得る。
【0148】
別法として、アミド形成と酸化の工程の順番を逆にし、化合物
13(R
1bとR
2bが共にHである)を化合物
16に変換することができる。かくして、化合物
13(R
1bとR
2bが共にHである)を上記の操作または類似する操作を用いて酸化し、対応する化合物
15を得ることができる。次に化合物
15のカルボン酸は、上記の操作または類似する操作を再び用いて、第一アミドに変換し、対応する化合物
16を得ることができる。
【0149】
化合物
13および
14(R
1aとR
1bは相互に異なる)はキラル中心を有し、そのために2つのエナンチオマーとして存在する。スキーム6に示される化合物
13および
14の調製はラセミ生成物を提供することができ、それはスキーム1に示されるような式(I)の化合物の調製に使用されてもよい。別法として、化合物
13および
14は、キラル固定相でのクロマトグラフィーなどの周知の方法を用いて、別々のエナンチオマーに分割されてもよい。
【0150】
有機合成の分野の当業者であれば、置換基R
1aのいくつかは、スキーム1、4、5および6に記載の式(I)の化合物または中間体の化合物を調製するのに使用される反応条件に適合しない可能性があることを認識するであろう。適合しない場合には、特定の合成工程の間は別の置換基をR
1aの代わりに用い、その置換基を化学文献に記載の方法を用いて合成の適切な段階でR
1aに変換してもよい。あるいはまた、ある場合には、適切な保護基を用いて特定の合成工程の間でR
1aを保護し、合成の適切な段階でそれを除去してもよい。そのような場合は当業者に明らかであろう。かかる合成の変形例をスキーム7に示す。
【0151】
特定の置換基R
1aおよびR
1bを担持するスキーム1に示される化合物
1は、前駆体の化合物
17より調製され得る。化合物
17はスキーム6に記載の方法を用いて調製され得るが、スキーム6において化合物
12の代わりに3−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルが使用される。(化合物
17の数種の例が文献に記載されており、例えば、中間体47−2および48−1ならびに実施例73−1が米国特許第8,084,620号に記載される。)化合物
17のカルボン酸エステルをR
1aおよびR
1bに変形するいくつかの方法がスキーム7に示されており;これらの方法のいくつかならびに他の方法も米国特許第8,084,620号の実施例にて説明されている。スキーム7の化合物
18、
20および
22はスキーム1に示される化合物
1の一例である。
【0153】
化合物
17のエステル部分は、水素化アルミニウムリチウムなどの適切な還元剤を用いてテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で処理することにより化合物
18(R
aとR
bが共にHである)の対応する第一カルビノールに還元することができる。別法として、化合物
17のエステル部分は、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中、塩化メチルマグネシウムまたはメチルリチウムなどの適切な試薬で処理することにより、化合物
18(R
aとR
bが共にメチルである)の対応する第三カルビノールに変換することができる。
【0154】
化合物
17のエステル部分は、例えば、メタノール、エタノールまたはテトラヒドロフランなどの適切な共溶媒中、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、化合物
19の対応するカルボン酸に加水分解され得る。化合物
19のカルボン酸の部分は、例えば、N,O−ジメチルヒドロキサマート(通常、ワインレブアミド(Weinreb amide)と称される)に変換され、つづいて塩化メチルマグネシウムまたはメチルリチウムなどの試薬で処理し、その後でこのようにして形成されたケトンを水素化ホウ素ナトリウムなどの適切な還元剤で還元することにより、化合物
18の第二カルビノール部分(R
aおよびR
bの一方はHであり、他方はメチルである)に変換され得る。別法として、化合物
19のカルボン酸の部分は、酸塩化物に変換し、つづいてアンモニアあるいは第一または第二アミンで処理するか、あるいはHATU、BOPまたはEDCとHOBTもしくはHOATとの組み合わせなどの適切なカップリング試薬の存在下でアンモニアまたは塩化アンモニウムまたは第一もしくは第二アミンで処理するか、などの種々の方法のある方法を用いて化合物
20のアミドに変換され得る。
【0155】
化合物
17の点線が単結合に相当する場合には、エステル部分を担持する炭素原子は、化合物
17をリチウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基とテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で反応させ、その得られたアニオンをヨードメタンなどのアルキル化剤で処理することによりアルキル化され、化合物
21(ここで、R’はメチルである)を得ることができる。次に、化合物
21のエステル部分は、上記される化合物
18を調製するのに使用されるとの同じ方法により化合物
22(ここで、R
aおよびR
bは共にHであるか、共にメチルであるか、一方がHで、他方がメチルである)のカルビノール基に変換され得る。
【0156】
式(I)の化合物を調製するのに使用されるスキーム1の特定の化合物はまた、スキーム8に示される操作を用いて調製されてもよい。
【0158】
スキーム6に示される適切な2−ヒドラジニル安息香酸より調製される化合物
23(例えば、米国特許第8,084,620号、中間体48−1を参照のこと)は、適切なハロゲン化試薬で処理することにより化合物
24(ここで、R
3はハロゲン原子である)を生成し得る。例えば、化合物
23をN−クロロスクシンイミドなどの塩素化剤と反応させて化合物
24(ここでR
3はClである)を得、化合物
23を1−(クロロメチル)−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン−ビス(テトラフルオロボラート)[セレクトフルオール(SELECTFLUOR)(登録商標)]などのフッ素化剤と反応させて化合物
24(ここでR
3はFである)を得ることができる。化合物
24の対応する化合物
25(スキーム1の化合物の一例の化合物である)への変換は、そのうちのいくつかはスキーム7にて記載される、文献に記載の方法を用いて達成され得る。
【0159】
スキーム9に示されるように、化合物
26は化合物
27(スキーム1の化合物
5の一例の化合物である)に変換され得る。同様にして、化合物
28は化合物
29(スキーム1の化合物
2の一例の化合物である)に変換され得る。
【0161】
スキーム9において、YはBr、Clまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシなどの適切な基を意味し;(RO)
2Bはボロン酸またはボロン酸エステルを意味し;XHは式(I)のQ基を意味し、ここでR
5はHと置換されている。化合物
26の化合物
27への変換、および化合物
28の化合物
29への変換は、スキーム4にて同様に化合物
6を化合物
7に変形するのと同じ方法を用いて達成され得る。また、化合物
26の化合物
28への変換、および化合物
27の化合物
29への変換は、スキーム1の化合物
1を化合物
4に変形するのに記載される方法を用いて達成され得る。
【0162】
ある場合において、一の中間体をもう一つ別の中間体または式(I)の化合物に変換するのに1回より多くの合成反応を必要とする場合、個々の工程の順序は変更可能である。そのような場合は有機合成の分野の当業者であれば認識されよう。一例がスキーム9に示される。化合物
26の化合物
29への変換は、(1)化合物
26のアミンを化合物
27の置換アミンに変換し、つづいて(2)化合物
27のY基を化合物
29のボロン酸またはボロン酸エステルに変換することによりなされうる。別法として、化合物
26を化合物
29とする同じ変換は、(1)化合物
26のY基を化合物
28のボロン酸またはボロン酸エステルに変換し、つづいて(2)化合物
28のアミンを化合物
29の置換アミンに変換することによりなされうる。もう一つ別の例がスキーム6に示される。化合物
13の化合物
16への変換は、(1)化合物
13のカルボン酸を化合物
14のカルボキシアミドに変換し、つづいて(2)化合物
14をカルバゾール
16に酸化することによりなされうる。別法として、化合物
13を化合物
16とする同じ変換は、(1)化合物
13をカルバゾール
15に変換し、つづいて(2)化合物
15のカルボン酸を化合物
16のカルボキシアミドに変換することによりなされうる。
【0163】
実施例
本発明の化合物、および本発明の化合物の調製に用いられる中間体は、次の実施例に示される操作および関連操作を用いて調製され得る。これらの実施例に使用される方法および条件、およびこれらの実施例にて調製される実際の化合物は、限定を意味するものではなく、本発明の化合物がどのように調製され得るかの説明を意図とする。これらの実施例にて使用される出発材料および試剤は、本明細書に記載の操作により調製されない場合には、一般に、市販されているか、または化学文献にて報告されているか、あるいは化学文献に記載の操作を用いることで調製され得るかのいずれかである。本発明は次の実施例にてさらに具体的に説明される。実施例は単なる例示であると認識すべきである。上記の開示および実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確かめることができ、その精神および範囲から逸脱することなく、種々の変形および修飾を加え、本発明を種々の使用および条件に適応させることができる。結果として、本発明は本明細書にて後述される例示としての実施例により制限されるものではなく、むしろ添付した特許請求の範囲により限定される。
【0164】
所定の実施例における「乾燥させて濃縮し」なる語は、一般に、無水硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムのいずれかを用いて有機溶媒の溶液から残りの大部分の水を除去し、つづいて濾過し、その濾液から(一般に、減圧下、かつその調製される物質の安定性に適する温度で)溶媒を除去することをいう。カラムクロマトグラフィーは、一般に、フラッシュクロマトグラフィー技法(Still,W.ら、J. Org. Chem., 43:2923(1978))を用いるか、あるいはIsco中圧クロマトグラフィー装置(Teledyne Corporation)を用いるプレパックのシリカゲルカートリッジを用いて、指示される溶媒または混合溶媒で溶出して実施される。プレパラティブ高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)は、分離される物質の量に適する大きさの逆相カラム(ウォーターズ・サンファイアー(Waters SunFire)C18、ウォーターズ・エックスブリッジ(Waters XBridge)C18、フェノメネックス(PHENOMENEX)(登録商標)アキシア(Axia)C18、YMC S5 ODS等)を用い、一般に、水中メタノールまたはアセトニトリルの濃度を増大させる勾配で、さらに0.05%または0.1%トリフルオロ酢酸または10mM酢酸アンモニウムを含有し、カラムの大きさおよび分離が達成されるのに適する溶出速度で溶出して実施された。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、一の形態の超臨界または臨界前の流体CO
2およびアルコールなどの極性有機修飾剤を含有する移動相を用いる順相HPLCを用いてキラル混合物を分離した。(White,C.ら、J. Chromatography A, 1074:175(2005))。エナンチオマーまたはジアステレオマーのキラルSFC分離は個々のケースで記載される条件を用いて行われた。質量スペクトルのデータは電子噴射イオン化を用いる液体クロマトグラフィー−質量スペクトロメトリーにより得られた。
【0165】
単結晶x−線回折データは、Cu Kα照射(λ=1.5418Å)を用いてブルカー(Bruker)−AXS APEX2 CCDシステムに集められた。測定される強度データのインデックス作成および処理は一式のAPEX2ソフトウェアパッケージ/プログラム(the APEX2 User Manual, v1.27を参照のこと;Bruker AXS,Inc.,WI 53711 USA)でなされた。指示があれば、データ収集の間、結晶はオックスフォード・クリオシステムズ・クリオストリーム・クーラー(Oxford Cryosystems cryostream cooler)(Cosier,J.ら、J. Appl. Cryst., 19:105(1986))の冷却流で冷却された。その構造は、直接的方法により解決され、観察された反射光に基づき、結晶学的パッケージSHELXTLを用いて精密化された(the APEX2 User Manual, v1.27を参照のこと;Bruker AXS,Inc., WI 53711 USA)。誘導された原子パラメーター(座標および温度因子)がフルマトリックス最小二乗法を通して精密化された。その精密化で最小化された関数が
【化24】
であった。Rは
【化25】
と定義され、一方で
【化26】
であり、ここでwは観察される強度の誤差に基づく適切な重み関数である。差の分布図が精密化のあらゆる段階で検査された。等方性温度因子の理想とする位置に水素が導入されたが、水素パラメーターに変化はなかった。Stoutら、X-Ray Structure Determination:A Practical Guide、MacMillan(1968)に記載の操作に従って単位格子パラメーターを得た。
【0166】
化学名はChemBioDraw Ultra、version 12.0(CambridgeSoft)を用いて決定された。
【0168】
中間体1
(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド
【化27】
【0169】
中間体1A: 4−ブロモ−2,5−ジフルオロ安息香酸
【化28】
【0170】
1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン(640mg、2.35ミリモル)の乾燥ジエチルエーテル(10mL)中溶液をドライアイス−アセトン浴中で冷却し、ヘキサン中2.5M n−ブチルリチウム(1.04mL、2.59ミリモル)を滴下して処理した。該溶液を−78℃で30分間攪拌し、次にドライアイス片で処理した。5分後に冷却浴を取り外し、混合物を室温に加温しながらさらに30分間攪拌した。混合物をEtOAcおよび水で希釈した。有機相を分離し、NaHCO
3飽和水溶液で2回洗浄した。水相を合わせ、1M HCl水溶液で酸性にし、DCMで2回抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮して4−ブロモ−2,5−ジフルオロ安息香酸(297mg、収率53%)を白色の固体として得た。
【0171】
中間体1B: 4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩
【化29】
【0172】
4−ブロモ−2,5−ジフルオロ安息香酸(2.50g、10.6ミリモル)およびヒドラジン(3.81mL、121ミリモル)のN−メチル−2−ピロリジノン(2mL)中混合物を95℃で4時間加熱した。該混合物を冷却し、NaCl−氷浴中で冷却した6M HCl水溶液(400mL)に激しく攪拌しながら注いだ。得られた沈殿物を濾過で集め、6M HCl水溶液(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩(1.88g、純度71%、収率44%)を黄色固体として得、それをさらに精製することなく用いた。
【0173】
中間体1Bの別合成:
2−アミノ−4−ブロモ−5−フルオロ安息香酸(10.0g、42.7ミリモル)の37%水性HCl(42.7mL)および水(14.3mL)の混合液中懸濁液をNaCl−氷浴にて攪拌し、亜硝酸ナトリウム(3.24g、47.0ミリモル)の水(15.7mL)中溶液を滴下して処理した。添加が終了したなら、該混合物をさらに30分間攪拌した。塩化スズ(II)・二水和物(28.9g、128ミリモル)の37%水性HCl(27.5mL)中溶液を滴下して加えた。冷却浴を取り外し、混合物を室温で45分間攪拌した。粘度のある懸濁液を濾過し、沈殿物を集め、水で十分に洗浄し、減圧下で一夜乾燥させた。固体を音波処理に付しながらMeOHでトリチュレートし、沈殿物を濾過で集め、MeOHで洗浄し、乾燥させた。濾液を濃縮し、その残渣をDCMでトリチュレートした。得られた固体を濾過で集め、乾燥させ、その2つの固体を合わせ、4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩(5.37g、収率44%)を白色の固体として得た。質量スペクトル m/z 249、251(M+H)
+
【0174】
中間体1C: 5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸
【化30】
【0175】
4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩(5.00g、17.5ミリモル)および(RS)−3−トリフルオロメチルシクロヘキサノン(4.07g、24.5ミリモル)の酢酸(8.0mL)中混合物を78℃で18時間攪拌した。混合物を室温に冷却して濃縮した。残渣をEtOAcに懸濁させ、沈殿物を濾過で集めて乾燥させた。濾液を濃縮し、残渣をDCMに懸濁させた。沈殿物を濾過で集め、乾燥させ、その2つの沈殿物を合わせ、5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(4.10g、収率55%)を明橙色の固体として得た。質量スペクトル m/z 380、382(M+H)
+
【0176】
中間体1:
5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(2.00g、5.26ミリモル)、NH
4Cl(2.81g、52.6ミリモル)およびHATU(2.20g、5.79ミリモル)のDMF(25mL)中溶液をトリエチルアミン(3.67mL、26.3ミリモル)で処理し、その混合物を室温で90分間攪拌した。氷水(30mL)を添加し、その混合物を30分間攪拌した。沈殿物を濾過で集め、水(60mL)で洗浄した。集めた固体をトルエン(30mL)に2回懸濁させ、真空下で濃縮し、ついで乾燥させた。残渣を10%MeOH/EtOAc−ヘキサン(0−100%の勾配)で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーに供し、5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(1.55g、収率74%)を明黄色の固体として得た。質量スペクトル m/z 379、381(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.46(d,J=9.9Hz,1H)、3.46(dd,J=16.1、4.4Hz,1H)、3.11(dd,J=16.4、5.3Hz,1H)、3.06−2.93(m,1H)、2.92−2.80(m,1H)、2.79−2.59(m,1H)、2.37−2.23(m,1H)、1.86−1.65(m,1H)
【0177】
中間体2
5−ブロモ−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド
【化31】
【0178】
中間体1Bを中間体1に変換するのに使用される操作に従って、4,4−ジフルオロシクロヘキサノンが5−ブロモ−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 347、349(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、DMSO−d
6)δ 11.34(s,1H)、8.12(br.s,1H)、7.64(d,J=10.1Hz,1H)、7.57(br.s,1H)、3.54(t,J=14.4Hz,2H)、2.97(t,J=6.6Hz,2H)、2.31(tt,J=13.9、6.7Hz,2H)
【0179】
中間体3
4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化32】
【0180】
中間体3A: 5−ブロモ−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸
【化33】
【0181】
4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩[中間体1B](12.0g、42.0ミリモル)およびシクロヘキサノン(12.4g、126ミリモル)の酢酸(90mL)中混合物を90℃で一夜攪拌した。その混合物を室温に冷却し、沈殿物を濾過で集め、水で洗浄し、乾燥させて5−ブロモ−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(5.02g、16.1ミリモル、収率38%)を明黄色の固体として得た。質量スペクトル m/z 312、314(M+H)
+
【0182】
中間体3B: 4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸
【化34】
【0183】
5−ブロモ−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(5.00g、16.0ミリモル)およびDDQ(8.00g、35.2ミリモル)のTHF(60mL)中混合物を60℃で3時間攪拌した。該混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、NaHCO
3飽和水溶液、水および1M水性HClで連続して洗浄し、乾燥させ、濃縮して粗4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸(5.30g、収率86%、純度80%)を得、それをさらに精製することなく用いた。
【0184】
中間体3:
4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸(4.70g、15.3ミリモル)、HOBT(2.34g、15.3ミリモル)およびEDC(2.92g、15.3ミリモル)のTHF(70mL)中混合物を室温で30分間攪拌した。水性水酸化アンモニウム(0.891mL、22.9ミリモル)を加え、該混合物を室温で一夜攪拌した。その混合物を濃縮し、残渣をEtOAcに溶かし、水で2回、ついでNaHCO
3飽和水溶液で洗浄し、乾燥させて濃縮した。残渣をDCMでトリチュレートし、4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(3.40g、収率73%)を明褐色の固体として得た。質量スペクトル m/z 307、309(M+H)
+、290、292(M+H−NH
3)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 8.73(dd,J=8.1、0.9Hz,1H)、7.83(d,J=9.9Hz,1H)、7.69−7.63(m,1H)、7.54(ddd,J=8.2、7.1、1.2Hz,1H)、7.29(ddd,J=8.1、7.1、1.0Hz,1H)
【0185】
中間体4
4−ブロモ−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化35】
【0186】
中間体3Aを中間体3に変換するのに使用される操作に従って、5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸[中間体1C]が4−ブロモ−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 416、418(M+H+CH
3CN)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 8.83(d,J=8.6Hz,1H)、8.00(d,J=0.7Hz,1H)、7.89(d,J=9.8Hz,1H)、7.52(dd,J=8.4、1.1Hz,1H)
【0187】
中間体5
(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド
【化36】
【0188】
中間体5A:(RS)−5−ブロモ−2−(エトキシカルボニル)−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸
【化37】
【0189】
4−ブロモ−5−フルオロ−2−ヒドラジニル安息香酸・塩酸塩[中間体1B](5.37g、18.8ミリモル)、エチル (RS)−3−オキソシクロヘキサンカルボキシラート(3.52g、20.7ミリモル)および酢酸(3.23mL、56.4ミリモル)のトルエン(90mL)中混合物を110℃で20時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をトルエン(43mL)およびTFA(11mL)で希釈した。混合物を90−94℃で一夜攪拌した。混合物を冷却し、EtOAcで希釈し、音波処理に付し、沈殿物を濾過で集めた。濾液を濃縮し、残渣を音波処理に供してEtOAcに懸濁させ、別の沈殿物を得、それも濾過で集め、EtOAcで洗浄した。固体を合わせ、MeOHで2回トリチュレートして固体を得た。濾液を合わせ、濃縮し、残渣をMeOHでトリチュレートし、さらなる固体を得た。それらの固体を合わせ、(RS)−5−ブロモ−2−エトキシカルボニル−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(3.38g)を淡黄色の固体として得た。質量スペクトル m/z 384、386(M+H)
+
【0190】
中間体5B: エチル (RS)−5−ブロモ−8−カルバモイル−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−2−カルボキシラート
【化38】
【0191】
(RS)−5−ブロモ−2−(エトキシカルボニル)−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸(0.513g、1.34ミリモル)、EDC(0.384g、2.00ミリモル)およびHOBT(0.307g、2.00ミリモル)のTHF(10mL)およびDCM(1.7mL)中混合物を室温で20分間攪拌した。水性NH
4OH(28%、0.078mL、2.00ミリモル)を添加し、混合物を室温で60分間攪拌した。その混合物をEtOAcで希釈し、NaHCO
3飽和水溶液で2回、次にブラインで洗浄した。水層をEtOAcで抽出し、有機層を合わせ、乾燥させて濃縮した。残渣を音波処理に供してMeOHにトリチュレートさせ、エチル (RS)−5−ブロモ−8−カルバモイル−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−2−カルボキシラート(0.432g、収率84%)を黄色の固体として得た。質量スペクトル m/z 383、385(M+H)
+
【0192】
中間体5:
エチル (RS)−5−ブロモ−8−カルバモイル−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−2−カルボキシラート(10.0g、26.1ミリモル)の−78℃でのTHF(200mL)中溶液に、エーテル中1.6Mメチルリチウム(49mL、78ミリモル)を30分間にわたって滴下して処理した。混合物を−78℃で45分間攪拌し、次にさらなるメチルリチウム溶液(33mL)で25分間にわたって処理した。該混合物を−78℃でさらに90分間攪拌し、ついでNH
4Cl飽和水溶液で処理し、室温までの加温に供した。混合物をEtOAcで希釈し、水およびブラインで連続して洗浄した。水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、乾燥させて濃縮した。残渣をEtOAc(約100mL)に溶かし、シリカゲルのパッドを上に乗せたセライト(Celite)(登録商標)のパッドを通して濾過した。そのセライト(登録商標)およびシリカゲルをEtOAc(約1000mL)でさらに洗浄した。合わせた濾液を濃縮し、(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(9.24g、収率96%)を淡黄色の固体として得た。質量スペクトル m/z 369、371(M+H)
+
【0193】
中間体6および7
(R)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(I−6)、および
(S)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(I−7)
【化39】
【0194】
(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体5]のサンプルはキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルパック(CHIRALPAK)(登録商標)OD−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(70:30)、150mL/分、40℃)によって分離された。カラムより溶出する第1のピークから(R)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体6]を得た。カラムより溶出する第2のピークから(S)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体7]を得た。2つのエナンチオマーの質量スペクトルおよび
1H NMRスペクトルは同じであった。質量スペクトル m/z 369、371(M+H)
+;
1H NMR(500MHz、DMSO−d
6)δ 10.96(s,1H)、8.07(br.s,1H)、7.55(d,J=10.3Hz,1H)、7.50(br.s,1H)、4.24(s,1H)、3.26(dd,J=15.8、4.4Hz,1H)、2.93(dd,J=17.1、4.6Hz,1H)、2.72(t,J=11.7Hz,1H)、2.48−2.40(m,1H)、2.12(d,J=9.2Hz,1H)、1.70−1.62(m,1H)および1.32(qd,J=12.4、5.3Hz,1H)
【0195】
別の超臨界的流体クロマトグラフィー分離:
(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体5]のサンプルがキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルパック(登録商標)AD−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(55:45)、150mL/分、40℃)によって分離された。カラムより溶出する第1のピークから(S)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体7]を得た。カラムより溶出する第2のピークから(R)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体6]を得た。
【0196】
中間体8
6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(RS)−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(ジアステレオマー混合物)
【化40】
【0197】
中間体8A: tert−ブチル 5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート
【化41】
【0198】
tert−ブチル 5−ブロモ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(0.500g、1.60ミリモル)および4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(0.488g、1.92ミリモル)のDMF(8mL)中混合物を抜気−窒素の充填のサイクルに3回供した。酢酸カリウム(0.472g、4.80ミリモル)およびPdCl
2(dppf)・DCMの複合体(0.117g、0.160ミリモル)を添加し、その混合物を抜気−窒素の充填のサイクルに2回以上供し、窒素雰囲気下にて90℃で一夜加熱した。混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、水、10%水性LiClおよび飽和ブラインで連続して洗浄し、乾燥させて濃縮した。残渣をEtOAc−ヘキサンで溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーに供し、tert−ブチル 5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(0.514g、収率89%)を白色の固体として得た。質量スペクトル m/z 360(M+H)
+
【0199】
中間体8B: tert−ブチル 5−(RS)−(8−カルバモイル−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−5−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(ジアステレオマー混合物)
【化42】
【0200】
(S)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体7](0.155g、0.420ミリモル)、tert−ブチル 5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(0.181g、0.504ミリモル)、2M水性K
3PO
4(0.630mL、1.26ミリモル)およびTHF(3mL)の混合物を抜気−窒素の充填のサイクルに3回供した。混合物を1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド(0.014g、0.021ミリモル)で処理し、該混合物を抜気−窒素の充填のサイクルに2回以上供した。混合物を室温で一夜攪拌し、次にEtOAcで希釈し、水および飽和ブラインで連続して洗浄し、乾燥させて濃縮した。残渣をEtOAc−ヘキサン(50−70%の勾配)で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーに供し、tert−ブチル 5−(RS)−(8−カルバモイル−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−5−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(ジアステレオマー混合物)(0.178g、収率81%)をオフホワイトの固体として得た。質量スペクトル m/z 522(M+H)
+
【0201】
中間体8:
tert−ブチル 5−(RS)−(8−カルバモイル−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−5−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(ジアステレオマー混合物)(0.178g、0.341ミリモル)およびTFA(5mL)の混合物を室温で30分間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣をEtOAcで希釈し、1.5M水性K
2HPO
4および飽和ブラインで連続して洗浄し、乾燥させ、濃縮して6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(RS)−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(ジアステレオマー混合物)を得、それをさらに精製することなく用いた。質量スペクトル m/z 422(M+H)
+
【0202】
中間体9および10
6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ジアステレオマー)
【化43】
【0203】
粗6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(RS)−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(ジアステレオマー混合物)[中間体8]をプレパラティブ逆相HPLCに供した。カラムより溶出する第1のピークから、NaHCO
3飽和水溶液で中和した後、6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの一のジアステレオマー[中間体9](0.036g、収率25%)を第2のピークにある1−2%のジアステレオマーで汚染された状態で得た。カラムより溶出する第2のピークから、NaHCO
3飽和水溶液で中和した後、6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの別のジアステレオマー[中間体10](0.031g、収率20%)を第1のピークにある8%のジアステレオマーで汚染された状態で得た。両方のジアステレオマーの質量スペクトルは中間体8のスペクトルと同じであった。HPLC保持時間(カラム:クロモリス(CHROMOLITH)(登録商標)スピード(Speed)ROD 4.6x50mm;溶媒:0.1%TFA含有のMeOH−水、4.0mL/分;勾配:4分間にわたって10−90%):中間体9−1.88分間;中間体10−2.02分間であり;アトロプ異性結合の回りの絶対配置は帰属されなかった。
【0204】
中間体11
(RS)−3−フルオロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化44】
【0205】
中間体8を調製するのに用いた操作に従って、4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体3]が(RS)−3−フルオロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 360(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.85(d,J=10.4Hz,1H)、7.60(d,J=8.2Hz,1H)、7.53−7.46(m,1H)、7.45−7.41(m,1H)、7.40−7.36(m,1H)、7.36−7.30(m,1H)、6.93−6.86(m,1H)、6.85−6.78(m,1H)、4.50−4.27(m,2H)、3.30−3.07(m,2H)、2.85−2.68(m,1H)、2.62−2.43(m,1H)
【0206】
中間体12
(RS)−3,3,6−トリフルオロ−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド
【化45】
【0207】
中間体8を調製するのに用いた操作に従って、5−ブロモ−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体2]が、(RS)−3,3,6−トリフルオロ−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 400(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ 10.10(br.s,1H)、7.34−7.29(m,1H)、7.27−7.23(m,1H)、7.20(d,J=9.8Hz,1H)、7.15(dd,J=7.4、1.3Hz,1H)、4.81−4.55(m,2H)、3.75−3.59(m,1H)、3.47(ddd,J=12.8、7.9、4.6Hz,1H)、3.01(t,J=6.6Hz,2H)、2.68−2.17(m,6H)
【0208】
中間体13
(RS)−3−フルオロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩
【化46】
【0209】
中間体8を調製するのに用いた操作に従って、4−ブロモ−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体4]が、(RS)−3−フルオロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩に変換された。質量スペクトル m/z 428(M+H)
+、469(M+H+CH
3CN)
+
【0210】
中間体14
6−フルオロ−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド・TFA塩(ジアステレオマー混合物)
【化47】
【0211】
中間体8を調製するのに用いた操作に従って、(RS)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体1]が、ジアステレオマー混合物としての(RS)−3−フルオロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩に変換された。質量スペクトル m/z 432(M+H)
+、473(M+H+CH
3CN)
+
【0212】
中間体15
(RS)−4−(3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化48】
【0213】
中間体15A: tert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−カルボキシラート
【化49】
【0214】
8−ブロモ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン[PCT公開番号WO2012/149236の実施例10に記載の操作に従って調製](1.20g、5.61ミリモル)、ジ−tert−ブチル ジカルボナート(1.43mL、6.17ミリモル)およびトリエチルアミン(2.34mL、16.8ミリモル)のTHF(20mL)中溶液を室温で5時間攪拌した。反応は観察されず、そこで該混合物を濃縮した。残渣を1,4−ジオキサン(25mL)に溶かし、K
2CO
3(0.775g、5.61ミリモル)で、そしてさらなるジ−tert−ブチル ジカルボナート(1.43mL、6.17ミリモル)で処理し、混合物を90℃で3日間加熱した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をEtOAc−ヘキサン(0−50%の勾配)で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーに付して精製し、tert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−カルボキシラート(1.37g、収率78%)を明褐色の油状物として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ 7.75(d,J=7.5Hz,1H)、7.27(dd,J=8.0、1.5Hz,1H)、6.78(t,J=8.2Hz,1H)、4.38(dd,J=5.1、4.2Hz,2H)、3.92−3.87(m,2H)、1.56(s,9H)
【0215】
中間体15:
中間体8を調製するのに用いた操作に従うが、工程Bにおいて(S)−5−ブロモ−6−フルオロ−2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体7]の代わりに4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体3]を用いて、tert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−カルボキシラートが(RS)−4−(3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 362(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.76(d,J=10.4Hz,1H)、7.56(d,J=8.2Hz,1H)、7.35(ddd,J=8.2、7.1、1.2Hz,1H)、7.24−7.18(m,1H)、6.98−6.89(m,2H)、6.87−6.81(m,1H)、6.67(dd,J=7.3、1.6Hz,1H)、4.16−3.96(m,2H)、3.43−3.34(m,2H)
【0216】
中間体16
(RS)−3−フルオロ−4−(2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩
【化50】
【0217】
中間体8を調製するのに用いた操作に従うが、tert−ブチル 5−ブロモ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラートの代わりに、tert−ブチル 9−ブロモ−3,4−ジヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−5(2H)−カルボキシラート[PCT公開番号WO2012/170752の中間体D53に記載の操作に従って調製]を用い、4−ブロモ−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体4]がTFA塩としての(RS)−3−フルオロ−4−(2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに変換された。質量スペクトル m/z 444(M+H)
+
【0218】
中間体17
3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化51】
【0219】
中間体15を調製するのに用いた操作に従って、4−ブロモ−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体3]が、黄色のガラス状固体としての3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに収率12%で変換された。質量スペクトル m/z 355(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ 8.56(d,J=8.1Hz,1H)、7.58−7.48(m,2H)、7.37−7.20(m,2H)、1.56(s,12H)
【0220】
中間体18
(RS)−4−(3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩
【化52】
【0221】
中間体18A: tert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−4(3H)−カルボキシラート
【化53】
【0222】
中間体15Aを調製するのに使用される操作に従って、8−ブロモ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン[PCT公開番号WO2012/149236の実施例331に記載の操作に従って調製]が、褐色油としてのtert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−4(3H)−カルボキシラートに収率65%で変換された。質量スペクトル m/z 274、276(M+H−C
4H
8)
+
【0223】
中間体18:
3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[中間体17](38mg、0.107ミリモル)、tert−ブチル 8−ブロモ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−4(3H)−カルボキシラート(37.2mg、0.113ミリモル)、K
3PO
4(45.5mg、0.215ミリモル)および1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセンパラジウム ジクロリド(3.5mg、5.36マイクロモル)のTHF(1.5mL)および水(0.2mL)中混合物に窒素をパージし、60℃で一夜攪拌した。混合物を室温に冷却し、セライト(登録商標)を通して濾過し、濃縮した。残渣をDCM(2mL)に溶かし、TFAで処理し、混合物を室温で30分間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣をプレパラティブ逆相HPLC(YMC C18カラム、5μm、30x250mm、アセトニトリル−水+0.1%TFAで溶出する、10−100%の勾配)に供して(RS)−4−(3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩(23.6mg、収率58%)を褐色の固体として得た。質量スペクトル m/z 378(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.78(d,J=10.3Hz,1H)、7.57(d,J=8.3Hz,1H)、7.36(ddd,J=8.3、7.0、1.3Hz,1H)、7.18(t,J=7.8Hz,1H)、7.01−6.94(m,2H)、6.94−6.88(m,1H)、6.84(d,J=7.5Hz,1H)、3.70−3.57(m,2H)、3.07−2.88(m,2H)
【0224】
実施例1
(RS)−5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド
【化54】
【0225】
3,3,6−トリフルオロ−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[中間体12](47mg、0.118ミリモル)およびDIEA(62μL、0.353ミリモル)の3:1 DCM−THF(0.5mL)中混合物を、0℃にて塩化アクリロイル(11μL、0.129ミリモル)で処理した。10分間攪拌した後、該混合物をDCMで希釈し、水で洗浄し、乾燥させて濃縮した。残渣をEtOAcでトリチュレートし、(RS)−5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(47mg、収率84%)を白色の固体として得た。質量スペクトル m/z 454(M+H)
+;
1H NMR(500MHz、DMSO−d
6)δ 11.20(s,1H)、8.14(br.s,1H)、7.62(d,J=10.7Hz,1H)、7.55(br.s,1H)、7.42−7.26(m,2H)、7.19−7.11(m,1H)、7.00−6.70(m,1H)、6.14(d,J=16.6Hz,1H)、5.88−5.62(m,1H)、4.95−4.66(m,2H)、3.80−3.48(m,2H)、2.94(t,J=5.5Hz,2H)、2.48−2.08(m,6H)
【0226】
表1に列挙される実施例は、指示される出発材料を用い、実施例1に記載の一般的操作または同様の操作により調製された。
【0228】
実施例5
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化55】
【0229】
(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[実施例2]のサンプル(13mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルセル(CHIRALCEL)(登録商標)AS−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(70:30)、150mL/分、100バール、35℃;サンプル調製物:1mLのMeOH中に3mg;注入量:1.5mL)により分離した。カラムより溶出する第1のピークから4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの一のエナンチオマー性アトロプ異性体[実施例5](5.2mg)を得た。質量スペクトル m/z 414(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、DMSO−d
6)δ 11.55(s,1H)、8.25(br.s,1H)、7.99(d,J=10.6Hz,1H)、7.74(d,J=8.2Hz,1H)、7.66(br.s,1H)、7.53−7.39(m,2H)、7.38−7.17(m,2H)、7.08−6.54(m,3H)、6.28−6.01(m,1H)、5.83−5.54(m,1H)、5.12−4.69(m,2H)、3.89−3.41(m,2H)、2.71−2.28(m,2H、残りのDMSOピークで覆い被される)。実施例5の絶対配置は帰属されなかった。
【0230】
実施例6
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化56】
【0231】
(RS)−5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[実施例1]のサンプル(42mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルセル(登録商標)AS−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(65−35)、150mL/分、100バール、35℃;サンプル調製物:1mLのMeOH−DMF(9:1)中に7mg;注入量:1.75mL)で分離した。カラムより溶出する第1のピークから5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの一のエナンチオマー性アトロプ異性体[実施例6](5mg)を得た。質量スペクトル m/z 454(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.50(d,J=10.6Hz,1H)、7.41−7.31(m,2H)、7.19(d,J=3.3Hz,1H)、6.97−6.70(m,1H)、6.25(dd,J=16.7、1.8Hz,1H)、5.84−5.70(m,1H)、4.98−4.86(m,2H)、3.93−3.78(m,1H)、3.78−3.53(m,1H)、3.09−2.93(m,2H)、2.73−2.34(m,3H)、2.30−2.07(m,3H);実施例6の絶対配置は帰属されなかった。
【0232】
実施例7
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化57】
【0233】
(RS)−4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[実施例4]のサンプル(20mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:IC(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(60:40)、140mL/分、100バール、30℃;サンプル調製物:1mLのMeOHに2.5mg;注入量:1.7mL)により分離した。カラムより溶出する第2のピークから4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの一のエナンチオマー性アトロプ異性体[実施例7](5.8mg)を得た。質量スペクトル m/z 482(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 8.02−7.90(m,2H)、7.56−7.45(m,2H)、7.37−7.28(m,1H)、7.19−7.08(m,1H)、6.96−6.85(m,1H)、6.71(dd,J=16.7、10.7Hz,1H)、6.24(t,J=15.7Hz,1H)、5.88−5.63(m,1H)、5.06−4.92(m,2H)、3.80(td,J=12.4、5.6Hz,1H)、3.72−3.55(m,1H)、2.74−2.57(m,1H)、2.56−2.35(m,1H);実施例7の絶対配置は帰属されなかった。
【0234】
実施例8
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化58】
【0235】
(RS)−4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド[実施例3]のサンプル(76mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルパック(登録商標)IC 3x25cm;5μM;移動相:CO
2−MeOH(55:45)、140mL/分、30℃;サンプル調製物:1:1 MeOH−DCMに溶かした;注入量:2.0mL)により分離した。カラムより溶出する第1のピークから4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの一のエナンチオマー性アトロプ異性体[実施例8](31.1mg)を得た。質量スペクトル m/z 416(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.80(d,J=10.5Hz,1H)、7.59(m,2H)、7.37(ddd,J=8.2、7.1、1.2Hz,1H)、7.27(dd,J=7.6、1.6Hz,1H)、7.20−7.14(m,1H)、7.11(d,J=7.9Hz,1H)、7.02−6.91(m,2H)、6.47(dd,J=16.8、1.8Hz,1H)、5.97−5.89(m,1H)、4.28−4.07(m,4H);実施例8の絶対配置は帰属されなかった。
【0236】
実施例9
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ジアステレオマー)
【化59】
【0237】
6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの単一ジアステレオマー[中間体9](0.036g、0.085ミリモル)およびDIEA(0.060mL、0.342ミリモル)のTHF(2mL)中混合物を室温にて塩化アクリロイル(6.9μL、0.085ミリモル)で処理した。混合物を30分間攪拌し、EtOAcで希釈し、水および飽和ブラインで連続して洗浄し、乾燥させて濃縮した。その残渣をEtOAc−ヘキサン(50−75%の勾配)で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーに付して精製した。得られた材料をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルパック(登録商標)AS−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(65:35)、150mL/分、35℃)によりさらに精製した。カラムより溶出する第2のピークから5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの単一ジアステレオマー(0.030g、収率73%)を白色の固体として得た。質量スペクトル m/z 476(M+H)
+;アトロプ異性結合の回りの絶対配置は決定されなかった。
【0238】
実施例10および11
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ホモキラルジアステレオマー)
【化60】
【0239】
実施例1を調製するのに使用される操作に従って、6−フルオロ−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド・TFA塩(ジアステレオマー混合物)[中間体14]が5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(4種のジアステレオマーの混合物)に収率49%にて変換された。質量スペクトル m/z 486(M+H)
+
【0240】
この材料のサンプル(107mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラル(Chiral)IC(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(70:30)、85mL/分;サンプル調製物:1mLのMeOHに10.7mg;注入量:1.0mL)により分離した。該カラムより溶出する第3のピークが5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[実施例10]の一のホモキラルなジアステレオマー(14.5mg)を提供した。
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.49(d,J=10.4Hz,1H)、7.38−7.28(m,2H)、7.24−7.13(m,1H)、6.99−6.68(m,1H)、6.26(dd,J=16.8、1.8Hz,1H)、5.87−5.71(m,1H)、4.93−4.87(m,2H)、3.77(quin,J=6.2Hz,2H)、3.08(dd,J=16.4、4.6Hz,1H)、2.83(dd,J=16.3、11.4Hz,1H)、2.67−2.40(m,3H)、2.08−1.86(m,3H)、1.66−1.43(m,1H)
【0241】
該カラムより溶出する第4のピークが5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド[実施例11]の別のホモキラルなジアステレオマー(21.2mg)(第3のピークとして溶出された約2%のホモキラルなジアステレオマー[実施例10]で汚染された)を提供した。
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 7.48(d,J=10.5Hz,1H)、7.36−7.27(m,2H)、7.19−7.11(m,1H)、6.98−6.70(m,1H)、6.26(d,J=16.8Hz,1H)、5.86−5.68(m,1H)、4.99−4.75(m,2H)、3.96−3.56(m,2H)、3.09(dd,J=16.5、5.3Hz,1H)、2.90−2.75(m,1H)、2.74−2.33(m,3H)、2.24−2.07(m,1H)、1.95(dd,J=15.2、2.9Hz,1H)、1.82(d,J=16.0Hz,1H)、1.49(qd,J=12.2、5.2Hz,1H)
【0242】
両方のホモキラルなジアステレオマーの質量スペクトルは、その混合物のスペクトル:m/z 486(M+H)
+と同じであった。実施例10および11の絶対配置は帰属されなかった。
【0243】
実施例12
4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化61】
【0244】
実施例1を調製するのに使用される操作に従って、(RS)−3−フルオロ−4−(2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩[中間体16]が(RS)−4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドに収率77%にて変換された。質量スペクトル m/z 498(M+H)
+
【0245】
この材料のサンプル(63mg)をキラル超臨界的流体クロマトグラフィー(カラム:キラルパック(CHIRALPAK)(登録商標)OJ−H(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH(80:20)、85mL/分;サンプル調製物:1mLのMeOH中に15.75mg;注入量:2.0mL)により精製した。カラムより溶出する第2のピークから4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの単一のエナンチオマー性アトロプ異性体(21.3mg)を得た。質量スペクトル m/z 498(M+H)
+;
1H NMR(400MHz、MeOH−d
4)δ 8.05−7.83(m,2H)、7.55−7.32(m,3H)、7.28−6.97(m,2H)、6.36(m,2H)、5.77(br.s,1H)、4.90(br.s,1H)、4.28−3.74(m,2H)、3.05(br.s,1H)、2.28−2.04(m,1H)、1.85(br.s,1H);アトロプ異性結合の回りの絶対配置は帰属されなかった。
【0246】
指示される出発材料および操作を用い、上記される操作により調製されたさらなる実施例を表2に示す。
【0248】
(a)実施例1を調製するのに使用される操作または類似する操作に従って調製される。
(b)ラセミ化合物を超臨界的流体クロマトグラフィーに付すことにより調製される。
絶対配置は帰属されなかった。
【0249】
比較例15
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化62】
【0250】
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例2を分離する間に、カラムより溶出する第2ピークより単離され、実施例5を単離し、比較例12(6.1mg)を提供した。この材料は実施例5と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例12の絶対配置は帰属されなかった。
【0251】
比較例16
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化63】
【0252】
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3,3,6−トリフルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例1を分離する間に、カラムより溶出する第2ピークより単離され、実施例6を単離し、比較例13(5mg)を提供した。この材料は実施例6と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例13の絶対配置は帰属されなかった。
【0253】
比較例17
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化64】
【0254】
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例4を分離する間に、カラムより溶出する第1ピークより単離され、実施例7を単離し、比較例14(5.9mg)を提供した。この材料は実施例7と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例14の絶対配置は帰属されなかった。
【0255】
比較例18
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化65】
【0256】
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例3を分離する間に、カラムより溶出する第2ピークより単離され、実施例8を単離し、比較例15(32.1mg)を提供した。この材料は実施例8と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例15の絶対配置は帰属されなかった。
【0257】
比較例19
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ジアステレオマー)
【化66】
【0258】
中間体10から実施例9を調製するのに使用される操作に従って、6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−5−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの他のジアステレオマー[中間体11]が5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(S)−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの単一ジアステレオマー(白色の固体として)に収率76%で変換された。質量スペクトル m/z 476(M+H)
+。アトロプ異性結合のまわりの絶対配置は決定されなかった。
【0259】
比較例20および21
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミド(単一ホモキラルジアステレオマー)
【化67】
【0260】
5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの2つのさらなるホモキラルジアステレオマーがキラル超臨界的流体クロマトグラフィーにより実施例10および11を分離する間に単離された。カラムより溶出する第1のピークから5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドの一のホモキラルジアステレオマー[比較例20](15.0mg)を得た。この材料は実施例10と同じNMRスペクトルを有し、従って実施例10と比較例20はエナンチオマーであった。
【0261】
カラムより溶出する第2のピークから5−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−6−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボキシアミドのもう一つ別のホモキラルジアステレオマー[比較例21](21.2mg)が第1のピークとして溶出された約2%のホモキラルジアステレオマー[比較例20]で汚染された状態で得られた。この材料は実施例11と同じNMRスペクトルを有し、従って実施例11と比較例21はエナンチオマーであった。
【0262】
両方のホモキラルジアステレオマーの質量スペクトルはその混合物のスペクトルと同じであった:m/z 486(M+H)
+。比較例10および21の絶対配置は決定されなかった。
【0263】
比較例22
4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化68】
【0264】
4−(5−アクリロイル−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン−9−イル)−3−フルオロ−7−(トリフルオロメチル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例12を単離する間に、カラムより溶出する第1ピークより単離され、比較例22(20.5mg)を提供した。この材料は実施例12と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例22の絶対配置は帰属されなかった。
【0265】
比較例23
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(単一エナンチオマー性アトロプ異性体)
【化69】
【0266】
4−(4−アクリロイル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−8−イル)−3−フルオロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー性アトロプ異性体が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィーによって実施例14を単離する間に、カラムより溶出する第2ピークより単離され、比較例23を提供した。この材料は実施例14と同じ質量スペクトルおよびNMRスペクトルを有した。比較例23の絶対配置は決定されなかった。
【0267】
実施例24
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(アトロプ異性体1)
【化70】
【0268】
中間体24A: 4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸
【化71】
【0269】
5−ブロモ−6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸、(793mg、2.413ミリモル)のTHF(30mL)中溶液に、DDQ(1096mg、4.83ミリモル)を添加し、その混合物を60℃で18時間攪拌した。混合物を濃縮した。その粗生成物をISCOフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル/DCM:MeOH:HOAc 93.5:5:1.5)に供した。4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸(350mg、1.024ミリモル、収率42.5%)を褐色の固体として得た。LCMS:1.19分間、M+H 324
【0270】
中間体24B: 4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド
【化72】
【0271】
4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボン酸(350mg、1.078ミリモル)、塩化アンモニウム(288mg、5.39ミリモル)、BOP(525mg、1.186ミリモル)およびTEA(1.503mL、10.78ミリモル)のDMF(5.0mL)中混合物を室温で60分間攪拌した。その混合物をEtOAc(15mL)で希釈し、1.0M HCl水溶液(2x15mL)で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させて濃縮した。粗製物:4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(203mg、0.596ミリモル、収率55.3%)を褐色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、メタノール−d
4)δ 8.77(d,J=8.2Hz,1H)、8.08(s,1H)、7.71−7.62(m,1H)、7.60−7.49(m,1H)、7.30(ddd,J=8.2、7.2、1.0Hz,1H)
【0272】
中間体24C: tert−ブチル 5−(1−カルバモイル−3−クロロ−9H−カルバゾール−4−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート
【化73】
【0273】
4−ブロモ−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(80mg、0.247ミリモル)、tert−ブチル 5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(89mg、0.247ミリモル)、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセンパラジウム ジクロリド(8.06mg、0.012ミリモル)および2.0M水性三塩基性リン酸カリウム(0.618mL、1.236ミリモル)のジオキサン(4.0mL)中混合物を窒素下の密封バイアル中にて60℃で18時間攪拌した。混合物をEtOAc(15mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(2x15mL)および水性1.0M HCl(15mL)で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させて濃縮した。粗生成物をISCOフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル/DCM−EtOAc 100:0〜0:100の勾配)に供した。tert−ブチル 5−(1−カルバモイル−3−クロロ−9H−カルバゾール−4−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(90mg、0.180ミリモル、収率72.7%)を白色の泡沫体として得た。LCMS:1.21分間、2M+H 324
【0274】
実施例24:
tert−ブチル 5−(1−カルバモイル−3−クロロ−9H−カルバゾール−4−イル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシラート(70mg、0.147ミリモル)のDCM(1.0mL)中溶液に、TFA(1.0mL)を添加し、その混合物を室温で30分間攪拌した。混合物を濃縮し、粗3−クロロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩を得た。
【0275】
3−クロロ−4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド・TFA塩およびTEA(0.102mL、0.735ミリモル)のDCM(1.0mL)中溶液に、塩化アクリロイル(0.013mL、0.162ミリモル)の0℃でのDCM(0.5mL)中溶液を添加し、その混合物を室温で30分間攪拌した。粗生成物をISCOフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘキサン−EtOAc 100:0〜0:100の勾配)に供し、4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(43.52mg、0.096ミリモル、収率65.4%)を得た。LCMS:0.88分間、M+H 430
【0276】
4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミド(33mg)が、キラル超臨界的流体クロマトグラフィー(キラルIC(3x25cm、5μm);移動相:CO
2−MeOH 60−40、850mL/分;サンプル調製物:5mLのMeOHに85mg)により分離された。カラムより溶出する第1のピークから4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの一のエナンチオマー(11.99mg)を白色の粉末として得た。
1H NMR(400MHz、メタノール−d
4)δ 8.11(s,1H)、7.59(d,J=8.2Hz,1H)、7.52−7.41(m,2H)、7.39−7.28(m,1H)、7.26−7.13(m,1H)、6.89−6.79(m,1H)、6.74−6.50(m,2H)、6.32−6.10(m,1H)、5.88−5.62(m,1H)、4.95(d,J=13.7Hz,2H)、3.83−3.54(m,2H)、2.66−2.49(m,1H)、2.37(m,1H);LCMS:0.88分間、M+H 430;カラムより溶出する第2のピークから4−(2−アクリロイル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)−3−クロロ−9H−カルバゾール−1−カルボキシアミドの別のエナンチオマー(10.78mg)を白色の粉末として得た。
1H NMR(400MHz、メタノール−d
4)δ 8.11(s,1H)、7.59(d,J=8.2Hz,1H)、7.52−7.41(m,2H)、7.38−7.29(m,1H)、7.24−7.16(m,1H)、6.90−6.79(m,1H)、6.73−6.52(m,2H)、6.32−6.13(m,1H)、5.86−5.64(m,1H)、4.97(m,2H)、3.82−3.55(m,2H)、2.58(m,1H)、2.44−2.27(m,1H);LCMS:0.88分間、M+H 430
【0277】
表1に列挙される実施例は、適切な出発材料を用い、上記の実施例について記載される一般的な操作により、あるいは当業者に公知の同様の操作により調製された。
【0279】
生物学的アッセイ
本発明の化合物の薬理学的特性は多くの生物学的アッセイによって確かめることができる。下記の例示としての生物学的アッセイが本発明の化合物を用いて実施された。
【0280】
ヒト組換えBtk酵素アッセイ
V字型ボトムの384−ウェルプレートに、試験化合物、ヒト組換えBtk(1nM、Invitrogen Corporation)、蛍光標識されたペプチド(1.5μM)、ATP(20μM)およびアッセイバッファー(20mM HEPES(pH 7.4)、10mM MgCl
2、0.015%Brij35界面活性剤および4mM DTT/1.6%DMSO)を30μLの最終容量で添加した。室温で60分間インキュベートした後、35mM EDTA(45μL)を各サンプルに添加することで反応を停止させた。反応混合物をキャリパー製ラバチップ(LABCHIP)(登録商標)3000(Caliper、Hopkinton、MA)で蛍光基質とリン酸化生成物を電気泳動により分離することで解析した。阻害データは、100%阻害として酵素不含の対照反応と、0%阻害として阻害剤不含の対照とを比較することで算定された。用量応答曲線を作成し、キナーゼ活性の50%を阻害するのに必要とされる濃度(IC
50)を測定した。化合物をDMSOに10mMで溶かし、11種の濃度で評価した。
【0281】
ラモスFLIPRアッセイ
フェノールレッドを減じ、0.1%BSA(Sigma A8577)を含有する50mM HEPES(Invitrogen 15630-130)を含むRPMI(Invtrogen 11835-030)にラモス(Ramos)RA1 B細胞(ATCC CRL-1596)を2x10
6個の細胞/mLの密度で添加し、それをカルシウムローディングバッファー(プロベネシド感受性アッセイ用のBDバルクキット、#640177)にその容量の半分まで加え、暗所にて室温で1時間インキュベートした。色素負荷細胞をペレット状にし(Beckmann GS-CKR、1200rpm、室温、5分間)、室温でRPMI(フェノールレッドを減じ、50mM HEPESおよび10%FBSを含む)に1x10
6個の細胞/mLの密度で再懸濁させた。150μLのアリコート(150,000個の細胞/ウェル)を96ウェルのポリ−D−リジン被覆のアッセイプレート(BD 35 4640)に載せ、軽く遠心分離(Beckmann GS-CKR、800rpm、5分間、ブレーキを掛けない)に供した。次に、50μLの化合物の0.4%DMSO/RPMI(フェノールレッドを減じ、50mM HEPESおよび10%FBSを含む)中希釈物をウェルに加え、プレートを暗所にて室温で1時間インキュベートした。そのアッセイプレートを上記されるように軽く遠心分離に供し、その後でカルシウム濃度を測定した。FLIPR1(分子デバイス)を用い、ヤギ抗−ヒトIgM(Invitrogen AHI0601)を2.5μg/mLまで添加することで細胞を刺激した。細胞内カルシウム濃度の変化を180秒間測定し、阻害%を刺激の存在だけで認められるカルシウムレベルのピークと比較して決定した。ラモスアッセイは細胞膜を通って細胞内部に移動する化合物の能力を測定する。IC
50値が低いほど細胞内部への移動能が大きいことを意味する。
【0282】
表3は、ヒト組換えBtk酵素アッセイおよびラモスFLIPRアッセイにおいて、実施例1、3および5−14を評価することで得られたBtk IC
50値、およびラモス IC
50値を示す。
【0284】
表4は、ヒト組換えBtk酵素アッセイおよびラモスFLIPRアッセイにおいて実施例5−12および14ならびに比較例15〜23を評価することに由来するBtk IC
50値およびラモス IC
50値を示す。
【0286】
a ヒト組換えBtk酵素アッセイでのIC
50(nM)
b ラモスFLIPRアッセイでのIC
50(nM)
c 比較例でのヒト組換えBtk酵素アッセイにおけるIC
50値の、その対応する実施例での値に対する割合
d 比較例でのラモスFLIPRアッセイにおけるIC
50値の、その対応する実施例での値に対する割合
【0287】
実施例5〜12および14で示される例示としての式(I)の化合物は、その立体異性体である比較例15〜23と比べ、Btkの効能を改善することが見出された。効能の増加はBtk IC
50値が下がることにより示される。表4に示されるように、Btkアッセイの報告において、実施例5〜12および14はBtk IC
50値が0.4nM未満であった。その一方で、比較例15〜23はBtk IC
50値が1.5〜28nMの範囲にあった。実施例5〜12および14のBtk IC
50値と、その対応する立体異性体のBtk IC
50値との対比もまた表4に報告されている。Btkの割合は、対応する立体異性体(比較例15〜23)のBtk IC
50活性値の、式(I)の実施例でのBtk IC
50値に対する割合として報告される。Btk IC
50の割合が高いほど、実施例の化合物がその比較例の立体異性体と比べて効能が改善されたことを示す。実施例5〜12および14で示される、例示としての式(I)の化合物は、その立体異性体と比べて、少なくとも19倍あるいはそれ以上の効能の改善を示した。
【0288】
実施例5〜12および14で示される例示としての式(I)の化合物は、その立体異性体である比較例15−23と比べ、ラモスFLIPRアッセイにおいて効能を改善することが見出された。効能の増加はラモスIC
50値が下がることにより示される。表4に示されるように、ラモスアッセイの報告において、実施例5〜12および14はラモスIC
50値が23nM未満であった。その一方で、比較例15〜23はラモスIC
50値が65nMよりも大きかった。実施例5〜12および14のラモスIC
50値と、その対応する立体異性体のラモスIC
50値との対比もまた表4に報告されている。ラモスの割合は、対応する立体異性体(比較例15〜23)のラモスIC
50活性値の、式(I)の実施例でのラモスIC
50値に対する割合として報告される。ラモスIC
50の割合が高いほど、実施例の化合物がその比較例の立体異性体と比べて効能が改善されたことを示す。実施例5〜12および14で示される、例示としての式(I)の化合物は、その立体異性体と比べて、少なくとも9.4倍あるいはそれ以上のラモス効能の改善を示した。
【0289】
実施例5〜12および14で示される例示としての式(I)の化合物を、その立体異性体である比較例15−23と比べ、利点のあることが見出された。式(I)の化合物は、その立体異性体と比べ、Btk効能の強化およびラモス活性の増加の組み合わせにおいて意外な利点を有する。実施例5〜12および14は、その立体異性体と比べ、少なくとも19倍よりも大きなBtk効能の改善と、少なくとも9.4倍よりも大きなラモス効能の改善との組み合わせを示した。
【0290】
これらの結果は分子の絶対3次元配置が式(I)の化合物の効能にとって重要であることを示す。
【0291】
ヒト組換えBtk解離透析アッセイ
試験化合物をヒト組換えBtk(100nM)と一緒にBtk阻害のIC
50の25倍の濃度または200nM(そのいずれか高い方の濃度)で1.5時間インキュベートした。インキュベーションはアッセイバッファー(20mM HEPES pH7.5、10mM MgCl
2、2mMジチオスレイトール、50μg/mLのウシ血清アルブミンおよび0.015%Brij35)中で行われた。次に反応混合物を1Lのアッセイバッファーに対して6時間毎に2回透析した。ついで透析された反応混合物(0.5μL)が、最終Btk濃度が1nMであるように(まだ結合したままのいずれの阻害剤も一緒に)、ATP(2mM)および基質ペプチド(5μM Src−tide、AnaSpec)の溶液(100μL)に希釈された。アッセイはマトリックスポリプロピレン384ウェルプレートでなされた。反応プログレス曲線はキャリパー製ラバチップ(登録商標)を用いて基質とリン酸化産物を電気泳動分離(圧力−1.2psi、下流電圧−500V、上流電圧−2300V)に付すことによりモニターされた。反応速度は直線位相で測定され、Btk活性の回復%はリン酸化ペプチド産物のフラクションを実施例の阻害剤を含まないDMSO処理のBtk対照反応物と比較することにより2時間で評価された。Btkを含まない対照反応物も背景シグナルを測定するのに使用された。可逆的阻害剤はBtk活性をほぼ完全に回復させるであろうし、一方で不可逆的阻害剤はBtk活性をほとんどまたは全く回復させないであろう。