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特許6592551免疫調節活性を有する細胞集団、その調製方法、及び、その使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592551
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】免疫調節活性を有する細胞集団、その調製方法、及び、その使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/15 20150101AFI20191007BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20191007BHJP
   A61K 35/35 20150101ALI20191007BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20191007BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20191007BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A61K35/15
   A61K35/28
   A61K35/35
   C12N5/078ZNA
   C12N5/0775
   A61P25/00
   A61P37/00
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-72015(P2018-72015)
(22)【出願日】2018年4月4日
(62)【分割の表示】特願2014-510832(P2014-510832)の分割
【原出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-134086(P2018-134086A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】11166808.3
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513290554
【氏名又は名称】ティゲニックス エス.エー.ユー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】オルガ デ ラ ローサ
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/048222(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症を有する対象を治療するための免疫調節性細胞集団を含む医薬組成物を製造する方法であって、
i)末梢血白血球(PBL)集団を用意する工程;
ii)該PBLを、MBP13-32(配列番号1)、MBP83-99(配列番号2)、MBP111-119(配列番号3)、MBP146-170(配列番号4)、MOG1-20(配列番号5)、MOG35-55(配列番号6)及びPLP139-154(配列番号7)を含む多発性硬化症関連抗原のプールの存在下において、間葉系幹細胞(MSC)を含む細胞集団と接触させる工程;
iii)免疫調節性細胞集団を単離する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記MSC集団が、脂肪組織に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記免疫調節性細胞集団中の細胞が、CD62-L、FOXP3及びCTLA4からなる群から選択される1以上のマーカーを発現する、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記免疫調節性細胞集団中の細胞が、CD127を発現しない、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記多発性硬化症関連抗原が、低アフィニティ条件下で使用され、該低アフィニティ条件が、0.1μMの濃度での該多発性硬化症関連抗原の使用を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の方法に従って医薬組成物を製造する工程を含む、多発性硬化症の治療のための医薬を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、免疫調節性細胞、免疫調節性細胞の提供方法、及び、それを必要とする哺乳
動物の免疫調節のための、該細胞の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
調節性T細胞:全ての免疫応答はT細胞によって制御されている。自己免疫応答を誘発す
る潜在能力を備えた自己反応性細胞には、正常なT細胞レパートリーの一部が含まれるが
、健全な状態においては、免疫抑制細胞によって、それらの活性化が阻止されている。最
初は、1970年代に、抑制性T細胞について記述がなされたが、ごく最近になって、T-細胞
サブセットの特徴付けが大きく前進し、このときに、調節性T細胞(Treg細胞)として改名
されている。
【0003】
調節性(抑制)活性を有する、様々なCD4+、CD8+、ナチュラルキラー細胞、及びγδT細
胞サブセットが存在する。2種の主要なタイプのTreg細胞が、CD4+集団において特徴付け
られている。すなわち、内在性の、胸腺で生成されるTreg細胞、及び、末梢-誘導性の、I
L-10又はTGF-β分泌性T-reg細胞(TrI細胞)である。胸腺で生成される、CD4+CD25+で、Fox
p3を発現する内在性T-reg細胞は、遊走し、末梢に維持される。
【0004】
Treg細胞のインビトロ調製法(免疫異常及び炎症性疾患の治療におけるそれらの使用の
ための該調製法)は、当技術分野において公知である。例えば、国際特許出願WO2011/0482
22は、間葉系幹細胞を末梢血白血球と接触させることによりTreg細胞を調製する方法を提
供している。
【0005】
Tregの脂肪-由来幹細胞誘導:ヒト脂肪-由来間葉系幹細胞(hASC)は、低レベルのHLAクラ
スI分子を発現するが、HLAクラスII、CD40、CD80又はCD86分子を欠いている、低免疫原性
の間葉型細胞に分化することができる多能性成体幹細胞の供給源である。さらには、増殖
させたhASCは、細胞接触-依存的メカニズム、及び、活性化された免疫系細胞によって放
出されるサイトカインに応答して分泌される可溶性因子の双方によって、免疫系細胞の活
性化、増殖、及び機能を阻害することが報告されている。関節リウマチ(RA)及びクローン
病の実験モデルは、hASC治療の潜在的な標的である、自己免疫疾患/炎症性疾患のモデル
としての研究対象である。コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウス及び炎症性腸疾患(IBD)マウ
スの双方において明らかとなったデータは、hASCの注入によって、両疾患の発生率及び重
症度が大いに低減されることを報告した。hASC治療がその後の疾患ピークの誘導が誘発さ
れる場合に保護効果を有することが実証された。この重症度の臨床的低減には、Th1応答
の下方制御によって媒介される、局所及び全身性の抗炎症性作用が伴っていた。これらの
データには、hASCが短い期間の間にリンパ系器官まで遊走し、さらに消失可能であるとい
う事実が随伴した。さらなる分析により、前記治療後に起こる自己反応性Tエフェクター
応答を抑制する能力を有する、抗原特異的CD4+CD25+FoxP3+調節性T細胞(Treg)のデノボ生
成が実証された。RA患者において実施された該エクスビボ研究は、hASCが、様々なメカニ
ズムでコラーゲン-反応性T細胞に強い抑制性反応を働かせることを示した。そのうちの1
つは、自己反応性T細胞の増殖を阻害するコラーゲン特異的Treg細胞の生成であった。hAS
Cは、自己-PBMCに対する用量依存的様式の抑制能力を備えたCD4+CD25brightFOXP3+Tregの
選択的誘導によって、その免疫抑制活性を発揮しているようである。
【0006】
多発性硬化症:多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の慢性炎症及び脱髄性(demyelin
ising)プロセスを介して、免疫系がCNSを攻撃する、自己免疫状態である。MSにおける寛
解の誘導は、自己免疫の予防において重要な役割を果たすCD4+CD25+FOXP3+Tregの刺激と
関連付けられている。多数の研究が、CNSの炎症性疾患及び脱髄性疾患を含む様々なヒト
自己免疫疾患における、Tregの数的又は機能的欠損を報告している。MS患者の研究は、Tr
eg機能の回復が、ヒトにおける将来有望な治療的アプローチであるという仮説を、さらに
支持している。実際、再発-寛解性MSを有する患者において、Tregの最適以下の抑制能力
が観察されている。例えば、臨床的に使用される免疫調節薬、酢酸グラチラマーに応答す
る患者は、末梢血及び脳脊髄液中のCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞のレベルが高いことが報告
されている。MS用に使用される別の臨床薬であるインターフェロンβは、療法の開始後、
Tregのデノボ生成の刺激を介して、Treg活性の再正常化を誘導する。MSの動物モデルであ
る、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)において、疾患経過はTreg欠乏によって悪化し、E
AEのいくつかのモデルにおける疾患に対する自然防御は、抗原特異的Tregと関連している
。これらのデータは、MS患者における免疫機能障害が、抑制に対するエフェクターT細胞
の抵抗性の結果ではなく、Tregに固有のものであり得ることを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
一態様において、本発明は、受容対象の治療において使用するのに適した免疫調節性細
胞の調製、増殖、及び/又は生成に関する。該免疫調節性細胞、並びに、それを含むキッ
トは、本発明のさらなる態様を構成する。
【0008】
別の態様において、本発明は、前記免疫調節性細胞の医薬としての使用、並びに、多発
性硬化症の治療用医薬の調製における、該免疫調節性細胞の使用に関する。本発明は、併
用療法における前記方法の使用にも関するものであり、言い換えれば、本発明の免疫調節
性細胞は、第2の若しくは更なる薬剤と同時に又は別々に(例えば、逐次的に)、1以上の薬
剤とともに共投与される。
【0009】
別の態様において、本発明は、前記免疫調節性細胞及び医薬担体を含む、医薬組成物に
関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】異なる条件下で生成されたTreg細胞の割合。TR1は、MSプールペプチドの存在下でのPBLとhASCの共培養を表す。TR2は、ペプチドの非存在下でのhASCとの共培養を表す。TR3は、hASCの非存在下かつプールペプチドの存在下で実施された培養を表す。Tr4は、hASC及びプールペプチドの非存在下で実施された培養を表す。グラフは、3つの独立した実験の平均値及び標準偏差を示す。
図2】異なる条件下で生成されたTreg細胞の表現型。TR1は、PBLのhASC及びMSプールペプチドとの共培養を表す。TR2は、ペプチドの非存在下でのPBLのhASCとの共培養を表す。TR3は、hASCの非存在下かつプールペプチドの存在下で実施された培養を表す。TR4は、hASC及びプールペプチドの非存在下で実施された培養を表す。グラフは、CD4+CD25bright(Treg)集団のゲート化集団上でのCD103、CD127及び細胞内染色FOXP-3の発現の百分率の平均値を示す。各グループについて、3つの独立した実験を行った。
図3-8】ポリクローナルTreg細胞及び抗原駆動性(driven)Treg細胞の増殖の阻害。TR1(図3〜5)は、hASC及びMSプールペプチドとの共培養を表す。TR2(図6〜8)は、ペプチド非存在下でのhASCとの共培養を表す。上段は、刺激因子としてプールペプチド又は抗CD3/CD28マイクロビーズを使用した、抗原駆動性Treg細胞での増殖の百分率を示す。下段は、刺激因子として該プールペプチド又は該ポリクローナル刺激を使用した、ポリクローナルTreg細胞での増殖の百分率を示す。実験は、各ドナーから単離された細胞の数に応じて、1:1、1:4又は1:20の比(Treg:PBMC)で行った。各グループ(TR1/TR2)について、3つの独立した実験を行った。
図9】抗原特異的及び非特異的駆動性リンパ球における増殖の阻害。hASC及びMSプールペプチドとの共培養を表す。達した最大増殖は、右側の黒いバーにおいて示されている100%である。グレーのバーは、無関係なペプチドであるFlu HAの存在下における、異なる比率のCD3陽性T細胞の増殖(培養において達した最大増殖を基準とした増殖の百分率)を示す。黒のバーは、プールMSペプチドの存在下における、異なる比率のCD3陽性T細胞の増殖(培養において達した最大増殖を基準とした増殖の百分率)を示す。実験は、1:5、1:11又は1:21の比(Treg:PBMC)で行った。三つ組の平均値及び標準偏差をグラフに示す。(達した最大増殖は、右側の黒いバーにおいて示されている100%である。)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫調節特性を有する免疫調節性細胞の調製、増殖、及び/又は生成のため
の方法を提供する。該免疫調節性細胞及びその使用は、本発明のさらなる態様を構成する
【0012】
(定義)
本願明細書の理解を促進するために、本発明の文脈におけるいくつかの用語及び表現の
意味を以下に説明する。必要に応じ、説明全体にわたって、さらなる定義が含められるだ
ろう。
【0013】
本願明細書において使用される「アロジェネイックな」という用語は、同種の異なる個
体からのものを意味するように解釈されるものとする。2以上の個体は、1以上の遺伝子座
の遺伝子が同一でない場合に、互いにアロジェネイックであると言われる。
本願明細書において使用される「自己の」という用語は、同一の個体からのものを意味
するように解釈されるものとする。
【0014】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、主要組織適合遺伝子複合体MHCと複合体形成した
表面外来抗原を提示する細胞集団を意味する。体内のほぼ全ての細胞が、T細胞に抗原を
提示することができるが、「抗原提示細胞」(APC)という用語は、表面MHC II(HLA DP、DQ
、DR)を発現する分化した細胞に本願明細書では限定され、この発現が誘導される細胞(例
えば、限定されないが、B-細胞及びCD4 PHA芽球)及び単球-マクロファージ系統に由来す
る細胞(例えば、限定されないが、樹状細胞)の両方を含む。
【0015】
細胞集団に適用される「単離された」という用語は、ヒト又は動物の体から単離された
細胞集団であって、インビボ又はインビトロで前記細胞集団に関連する1以上の細胞集団
を、実質的に含まないものを意味する。
【0016】
「MHC」(主要組織適合遺伝子複合体)という用語は、細胞表面抗原提示タンパク質をコ
ードする遺伝子のサブセットを意味する。ヒトにおいては、これらの遺伝子は、ヒト白血
球抗原(HLA)遺伝子と称される。本願明細書において、略語MHC又はHLAは、互換的に使用
される。「対象」という用語は、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウ
マ、ネコ、イヌ、ネズミ、又はマウス)及び霊長類(例えば、サル又はヒト)を含む、哺乳
動物を意味する。好ましい実施態様において、該対象はヒトである。
【0017】
「免疫調節性」という用語は、免疫系の1以上の生物学的活性の阻害又は低減を意味し
、これには、免疫応答及び炎症性状態の下方制御、並びに、サイトカインプロファイル、
細胞障害活性及び抗体産生における変化が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
免疫調節性細胞の文脈において使用される場合、「抗原特異的」という用語は、非自己
抗原及び自己抗原の両方を含む特異的抗原(複数可)と関連する又はそれによって活性化
される免疫系の1以上の生物学的活性(限定されないが、T-細胞増殖など)を阻害又は低減
させる能力を有する細胞を意味する。
【0019】
「免疫調節性」という用語は、「抗原特異的免疫調節性」を含むように解釈されるもの
とする。
本願明細書において使用される「免疫調節性作用物」、「免疫調節性細胞集団」、又は
「免疫調節性細胞(複数可)」という用語は、1以上の免疫系細胞(例えば、限定されない
が、T細胞)の1以上の生物学的活性(例えば、限定されないが、増殖、分化、プライミング
、エフェクター機能、サイトカインの産生又は抗原の発現)を阻害又は低減させる、作用
物、細胞(複数可)、又はその集団を意味するように解釈されるものとする。
【0020】
「T-細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)を発現するリンパ球のサブセットである
免疫系の細胞を意味する。「調節性T細胞」という用語(本願明細書において、T-reg細胞
とも称される)は、免疫系の活性化を能動的に抑制し、病理学的な自己反応性、即ち自己
免疫疾患を予防する、T細胞サブセットを意味する。「調節性T細胞」又は「T-reg細胞」
という用語は、内在性T-細胞(CD4+CD25+FoxP3+T-reg細胞としても知られる)及びFoxP3分
子を発現しない適応性T-細胞(Tr1細胞又はTh3細胞としても知られる)の両方を含むように
解釈されるものとする。
【0021】
本発明の特に好ましい実施態様において、前記免疫調節性作用物、細胞(複数可)又はそ
の集団は、調節性T細胞であるが、前記方法の別の実施態様において、それらは、調節性T
細胞の免疫抑制機能を果たすことができるように改変された、他の表現型の細胞であって
もよい。例えば、他の表現型の細胞は、前記改変に先立って、次の能力の1以上を欠いて
いてもよい:混合リンパ球反応の抑制;細胞傷害性T細胞反応の抑制;DC成熟の阻害;炎
症性サイトカインのT細胞産生の阻害。
【0022】
本願明細書において使用されるように、細胞表面マーカーについて使用される「陰性」
又は「-」は、ある細胞集団において、20%未満、10%未満、好ましくは、9%未満、8%未満
、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の細胞が当該マーカーを発
現するか、又はいずれの細胞も当該マーカーを発現しないことを意味するように解釈され
るものとする。細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来の方法及び装置(例えば、市販
の抗体及び当技術分野で公知の標準的なプロトコルとともに使用される、Beckman Coulte
r Epics XL FACSシステム)を使用する、特定の細胞表面マーカーのフローサイトメトリー
によって、測定することができる。
【0023】
本願明細書において使用されるように、「間葉系幹細胞」という用語(本願明細書にお
いて、「MSC」とも称される)は、間充織に元々由来する多能性細胞型を意味するように解
釈されるものとする。
【0024】
本願明細書において使用されるように、細胞表面マーカーについて使用される場合、「
有意な発現」という表現又はそれと均等な用語である「陽性」及び「+」は、ある細胞集
団において、20%超、好ましくは、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、
95%超の細胞、又は、全ての細胞が、当該マーカーを発現することを意味するように解釈
されるものとする。
【0025】
細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来の方法及び装置(例えば、市販の抗体及び当
技術分野において公知の標準的なプロトコルとともに使用される、Beckman Coulter Epic
s XL FACSシステム)を使用する、特定の細胞表面マーカーのフローサイトメトリーによっ
て測定することができ、それは、従来の方法及び装置(例えば、市販の抗体及び当技術分
野で公知の標準的なプロトコルとともに使用される、Beckman Coulter Epics XL FACSシ
ステム)を使用し、バックグラウンドシグナルを超える、フローサイトメトリーにおける
特定の細胞表面マーカーのシグナルを示す。該バックグラウンドシグナルは、従来のFACS
解析において、各表面マーカーを検出するために使用されている特異的抗体と同じアイソ
タイプの非特異的抗体によってもたらされるシグナル強度として定義される。陽性とみな
されるマーカーについては、従来の方法及び装置(例えば、市販の抗体及び当技術分野で
公知の標準的なプロトコルとともに使用される、Beckman Coulter Epics XL FACSシステ
ム)を使用して、観察される特定のシグナルが、バックグラウンドシグナル強度よりも、2
0%強く、好ましくは、30%強く、40%強く、50%強く、60%強く、70%強く、80%強く、90%強
く、500%強く、1000%強く、5000%強く、10000%強く、或いはそれを上回る。
【0026】
さらには、前記細胞表面マーカー(例えば、細胞受容体及び膜貫通タンパク質)に対する
市販の公知のモノクローナル抗体を、関連細胞の同定に使用することができる。
「結合組織」という用語は、間充織に由来する組織を意味し、その組織の細胞が、細胞
外基質の中に含まれるという点で特徴付けられる、いくつかの組織を含む。結合組織の例
には、脂肪及び軟骨組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本願明細書において使用される「線維芽細胞」という用語は、滑膜細胞のような線維芽
細胞を含むように解釈されるものとする。
本願明細書において使用されるように、直接、患者又は対象について使用される場合、
「治療する(treat)」、「治療(treatment)」及び「治療すること(treating)」という用語
は、多発性硬化症に関連する1以上の症状の寛解を意味するように解釈されるものとし、
ここで、該寛解は、本発明の免疫調節性細胞の投与に起因する。
【0028】
「併用療法」という用語は、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は、移植された臓器及び組
織の拒絶反応を含む免疫学的に媒介される疾患を含むがこれらに限定されない障害に関連
する、1以上の症状の寛解のための本発明にならって、本発明の免疫調節性細胞又はそれ
を含む医薬組成物を、他の活性薬剤又は治療様式とともに使用することを意味する。これ
らの他の薬剤又は治療には、前記障害の治療のための公知の薬物及び療法、例えば、限定
されないが、コルチコステロイド及び非ステロイド性抗炎症性化合物などが含まれ得る。
「PBL」という用語は、末梢血白血球、リンパ球又は単球を意味するように解釈される
ものとする。
【0029】
本発明の免疫調節性細胞又はその医薬組成物は、コルチコステロイド、非ステロイド性
抗炎症性化合物、又は炎症の治療に有用な他の薬剤と併用することもできる。本発明の作
用物の、これらの他の療法又は治療様式との併用は、同時であってもよく、あるいは、逐
次的に与えられてもよい。すなわち、該免疫調節性細胞又はそれを含む医薬組成物が、他
の療法又は治療様式の前に又は後に与えられ得るように、該2つの治療を分けることがで
きる。担当医は、免疫調節性細胞又はそれを含む医薬組成物を、他の薬剤、療法又は治療
様式と組み合わせて施す適切な順序を判断するだろう。
【0030】
(詳細な説明)
一態様において、本発明は、単離された免疫調節性細胞、その集団及び組成物を提供す
る。本発明の免疫調節性細胞は、多発性硬化症の免疫調節において驚くべき効力を有する
【0031】
一実施態様において、前記免疫調節性細胞は、調節性T細胞であり、特に好ましい実施態様において、該免疫調節性細胞は、Foxp3+CD4+CD25+T-reg及び/又はIL-10/TGFb-産生性調節性Tr1細胞である。本発明の単離された免疫調節性細胞は、好ましくは、細胞表面マーカー、CD62-LFOXP3、CTLA4、CD104及びGITRのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は、好ましくはそれらの全てを発現する(すなわち、それ(ら)について陽性である)ことを特徴とする。好ましくは、前記MSCは、前記細胞表面マーカー(CD62-LFO
XP3、CTLA4、CD104及びGITR)のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、及び、好ましくは
それらの全ての、有意な発現レベルを有することを特徴とする。
【0032】
本発明の単離された免疫調節性細胞は、より好ましくは、細胞表面マーカー、CD62-L、
FOXP3及びCTLA4の少なくとも1つ、2つ、又は、好ましくは全てを発現する(すなわち、そ
れ(ら)について陽性である)ことを特徴とする。好ましくは、前記MSCは、前記細胞表面
マーカー(CD62-L、FOXP3及びCTLA4)の少なくとも1つ、2つ、又は、好ましくは全ての、有
意な発現レベルを有することを特徴とする。それらがCD127を発現しない(すなわち、それ
について陰性である)ことがさらに好ましい。
【0033】
本発明の単離された免疫調節性細胞は、エクスビボで調製、増殖又は生成されることが
好ましい。本発明の免疫調節性細胞は、限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質、ミ
エリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、プロテオリピドタ
ンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴプロテイン、ミエリン関連オリゴデンド
ロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、ヒートショックタ
ンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質群、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミ
エリンタンパク質22、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ、並びに、それら
の断片、バリアント及び混合物などの、1以上の多発性硬化症関連抗原に抗原特異的であ
る(又は、それ(ら)によって活性化される免疫応答を優先的に調節する)ことが好ましい
。本発明の免疫調節性細胞は、限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質ペプチド、ミ
エリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、及びプロテオリピドタンパク質、並びに、そ
れらの断片、バリアント及び混合物など、例えば、限定されないが、配列番号1〜7によっ
て表されるものなどの、1以上の多発性硬化症関連抗原に抗原特異的である(又は、それ(
ら)によって活性化される免疫応答を優先的に調節する)ことが好ましい。
【0034】
本発明の抗原特異的免疫調節性細胞は、多発性硬化症のインビトロモデルにおいて、免
疫応答の調節における改善された効力を有することが実証されている。本発明の一実施態
様において、本発明の免疫調節性細胞は、限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質、
ミエリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、プロテオリピド
タンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴプロテイン、ミエリン関連オリゴデン
ドロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、ヒートショック
タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質群、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢
ミエリンタンパク質22、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ、並びに、それ
らの断片、バリアント及び混合物などの、1以上の多発性硬化症関連抗原への曝露によっ
て、エクスビボで生成される。本発明の免疫調節性細胞は、限定されないが、ミエリン塩
基性タンパク質ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、及びプロテオリ
ピドタンパク質、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物など、例えば、限定され
ないが、配列番号1〜7によって表されるものなどの、1以上の多発性硬化症関連抗原への
曝露によって、エクスビボで生成されることが好ましい。
【0035】
本発明は、本質的に前記免疫調節性細胞を含むか、或いは、少なくとも細胞数で80%、8
5%、90%、95%の該免疫調節性細胞を含む、本発明の免疫調節性細胞の集団を、さらに提供
する。
【0036】
一態様において、本発明は、本発明の免疫調節性細胞の調製、増殖及び/又は生成のた
めの方法に関する。一実施態様において、該免疫調節性細胞は、調節性T細胞であり、特
に好ましい実施態様において、該免疫調節性細胞は、Foxp3+CD4+CD25+T-reg及び/又はIL-
10/TGFb-産生性調節性Tr1細胞である。前記方法は、MSC及び/又は線維芽細胞を含む細胞
集団を、1以上の多発性硬化症関連抗原の存在下で、PBLと接触させることを含む。
【0037】
本発明の方法に従って調製、増殖及び/又は生成される免疫調節性細胞は、本発明のさ
らなる態様を構成する。
該免疫調節性細胞は、細胞表面マーカー、CD62-L、FOXP3及びCTLA4を発現することが特
に好ましい。それらが、CD127を発現しない、すなわち、それについて陰性であることが
さらに好ましい。
【0038】
したがって、別の実施態様において、本発明は、以下の工程を含む、多発性硬化症を有
する対象の治療方法を提供する:
i)PBL集団を用意する工程;
ii)該PBLを、1以上の多発性硬化症関連抗原の存在下で、MSC及び/又は線維芽細胞を含
む細胞集団と接触させる工程;
iii)該免疫調節性細胞集団を単離する工程;及び
iv)該免疫調節性細胞集団を前記対象に投与する工程。
【0039】
「MSC」及び/又は「線維芽細胞集団」という用語は、次のいずれかを意味するように使
用されるものとする:本質的に間葉系幹細胞を含む複数の細胞;本質的に線維芽細胞を含
む複数の細胞;本質的に間葉系幹細胞及び線維芽細胞を含む複数の細胞。該MSC及び/又は
線維芽細胞集団中の細胞数と、単離される調節性T細胞との比は、それぞれ、1:1〜1:150
であることが好ましい。該MSC及び/又は線維芽細胞における細胞数と、PBLとの比は、1:3
0〜1:5であることがさらに好ましい。したがって、一実施態様において、これはおよそ、
PBL25個につき1個のMSC、PBL25個につき1個のMSC及び1個の線維芽細胞、又はPBL10個につ
き1個のMSCとなり得る。
【0040】
本発明の免疫調節性細胞を調製、増殖及び/又は生成するための前記方法において、MSC
(例えば、限定されないが、MSC及び/又は線維芽細胞集団)は、PBLとともにインビトロで
培養される。培養期間は、好ましくは、2時間〜21日、より好ましくは、5〜17日である。
さらなる実施態様において、該培養は、少なくとも2、4、5、若しくは6日間、又はそれよ
り長く行われる。培養期間は、約15日であることが特に好ましい。この共培養は、免疫調
節性細胞の生成をもたらし、対象の治療に使用することができる前記PBLの増殖された集
団を提供する。
【0041】
本発明の方法(複数可)は、好ましくは、温度及び二酸化炭素が制御された環境で、例え
ば、インキュベーターで実施される。該方法は、好ましくは、地域差を考慮して、およそ
哺乳動物の体温で、例えば、摂氏37度で実施される。二酸化炭素濃度が0%〜10%、より好
ましくは、1%〜5%である環境で、本発明の方法が行われることも好ましい。
【0042】
(PBLの調製)
上述の本発明の方法によって調製される免疫調節性細胞の、意図されるレシピエントに
関して、該方法に使用するPBLは、自己由来又はアロジェネイックな由来のいずれのもの
であってもよい。しかしながら、それらが自己由来のものであること(すなわち、それら
が、後に前記免疫調節性細胞、又は、その何らかの治療、医薬若しくは医薬組成物を与え
られる対象から得られていたこと)が好ましい。全血から末梢血白血球を単離する方法は
、当技術分野において公知であり、フィコール・ハイパック及び/又は赤血球溶解手順又
は市販の手段、例えばLeucoPREP(商標)細胞分離装置(Becton Dickinson & Co.)及びHIS
TOPAQUE(商標)(Sigma Diagnostics)溶液などの使用が含まれる。
【0043】
(線維芽細胞)
本発明の方法に使用される線維芽細胞は、細胞外基質の合成及び維持に関連する、間充
織由来の結合組織であり、滑膜細胞のような線維芽細胞を含むように解釈されるものとす
る。該線維芽細胞は、任意の好適な動物から、最も好ましくは、ヒトから得ることができ
る。
【0044】
(MSC)
本発明の方法に使用されるMSCは、好ましくは、結合組織に由来する。好ましい実施態
様において、該MSCは、脂肪組織に由来し、さらに好ましい実施態様においては、脂肪組
織の間質画分に由来する。別の実施態様において、前記MSCは、硝子軟骨の軟骨細胞から
得られる。さらなる実施態様において、前記MSCは、皮膚から得られる。別の実施態様に
おいて、前記MSCは、骨髄から得られる。
【0045】
前記MSCは、任意の好適な動物由来の、最も好ましくは、ヒト由来の、結合組織の任意
の好適な供給源から得ることができる。該細胞は、病的ではない哺乳動物供給源から、好
ましくは、出生後のもの(例えば、げっ歯類;霊長類)から得られることが好ましい。好ま
しい実施態様において、前記MSCは、限定されないが、脂肪組織の間質画分、硝子軟骨、
骨髄又は皮膚などの結合組織の供給源から得られる。最も好ましくは、前記方法のMSCは
、病的ではない、出生後の、ヒトの間質脂肪組織から得られる。
【0046】
本発明の方法によって調製される免疫調節性細胞の、意図されるレシピエントに関して
、上述の方法に使用するMSC及び/又は線維芽細胞は、アロジェネイックな(ドナー)由来又
は自己(対象)由来のいずれのものであってもよい。該方法の一実施態様において、前記MS
C及び/又は線維芽細胞は、アロジェネイックな由来のものである。
【0047】
本発明の方法に使用されるMSC及び/又は線維芽細胞は、好ましくは、(i)APCに特異的な
マーカーを発現しないこと、(ii)IDOを構成的には発現しないこと、(iii)IFN-γによる刺
激時にIDOを発現すること、及び、MSCについては、(iv)少なくとも2つの細胞系統に分化
する能力を示すことを特徴とする。
【0048】
(MSC表現型マーカー)
本発明の方法に使用されるMSCは、好ましくは、APC表現型に関連するマーカーについて
陰性である。したがって、前記MSCは、次のマーカー、CD 11b;CD 11c;CDl 14;CD45;HLAIl
のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は、好ましくはその全てについて陰性である
ことが好ましい。さらには、前記MSCは、好ましくは、次の細胞表面マーカー、CD31;CD34
;CD133のうちの少なくとも1つ、2つ、又は、好ましくはその全てについて陰性である。
【0049】
特定の実施態様において、本方法に使用されるMSCは、好ましくは、次の細胞表面マー
カー、CD9、CD44、CD54、CD90及びCD105のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は、
好ましくはその全てを発現する(すなわち、それ(ら)について陽性である)ことを特徴と
する。好ましくは、前記MSCは、前記細胞表面マーカー(CD9、CD44、CD54、CD90及びCD105
)のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、及び、好ましくはその全ての、有意な発現レ
ベルを有することを特徴とする。
【0050】
任意に、前記MSCは、細胞表面マーカーCD106(VCAM-1)について陰性であってもよい。本
発明の方法において使用するのに好適なMSCの例は、当技術分野において、例えば、その
全体が引用により本願明細書に組み込まれている、国際特許出願WO2007/039150において
、説明されている。
【0051】
(分化)
本発明の方法において使用するのに好適なMSCは、増殖して、少なくとも2つ、より好ま
しくは、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又はそれを上回る数の細胞系統に分化する能力を示し
得る。前記MSCが分化することができる細胞系統の、説明のための非限定的な例には、骨
細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋細胞、心筋細胞、造血支持間質細胞、内皮細胞、
神経細胞、星状細胞、及び肝細胞が含まれる。MSCは、従来の方法により、増殖して他の
系統の細胞に分化することができる。分化した細胞を、それらの未分化の対応物から特定
し、次いで単離する方法は、当技術分野において周知の方法によって、行うこともできる
【0052】
(MSC細胞培養)
前記MSCは、エクスビボで増殖させることもできる。すなわち、単離後、前記MSCを、培
地においてエクスビボで維持して増殖させることができる。そのような培地は、例えば、
抗生物質(例えば、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン)を添加
した、又は、抗生物質を添加しない、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)及び2mMグルタ
ミンで構成され、これに2〜20%のウシ胎仔血清(FBS)を補う。使用する細胞に合わせて、
培地及び/又は培地サプリメントの濃度を必要に応じて変更又は調節することは、当業者
の技術の範囲内である。血清は、生存能及び増殖に必要な、細胞性及び非細胞性の因子及
び成分を含むことが多い。血清の例には、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血
清(CS)、ウシ胎仔血清(FCS)、ウシ新生仔血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ブタ
血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)などが含まれる。前記MSCがヒト由来の
ものである場合に、前記細胞培養培地にヒト血清を、好ましくは、自己由来のヒト血清を
補うことも、本発明の範囲内である。補体カスケードの成分を不活性化するのに必要であ
ると考えられる場合、血清を、55〜65℃で熱失活させ得ることが理解される。血清濃度の
調節、培地からの血清の除去を利用して、1以上の所望の細胞型の生存を促進することも
できる。好ましくは、前記MSCには、約2%〜約25%のFBS濃度が、有益となるだろう。別の
実施態様において、前記MSCは、血清が、血清アルブミン、血清トランスフェリン、セレ
ニウム、及び組換えタンパク質の組み合わせで置き換えられ、限定されないが、当技術分
野において公知の、インスリン、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び塩基性線維芽細胞増殖
因子(bFGF)を含む、限定組成の培地で増殖させることができる。
【0053】
多くの細胞培養培地は、既にアミノ酸を含んでいるが、細胞の培養前に補充を要するも
のもある。そのようなアミノ酸には、限定されないが、L-アラニン、L-アルギニン、L-ア
スパラギン酸、L-アスパラギン、Lシステイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタ
ミン、L-グリシンなどが含まれる。
【0054】
一般的には、細胞培養において抗菌剤も使用して、細菌、マイコプラズマ、及び真菌の
コンタミネーションを軽減する。典型的には、使用される抗生物質又は抗真菌化合物は、
ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるけれども、限定されないが、アンホテリ
シン(Fungizone(登録商標))、アンピシリン(ampicilhn)、ゲンタマイシン、ブレオマイシ
ン、ハイグロマイシン(hygromacin)、カナマイシン、マイトマイシンなども含み得る。
【0055】
ホルモンも、細胞培養において有利に使用することができ、これには、限定されないが
、D-アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、b-エストラ
ジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロラクチン、プロゲステロン、ソマトスタ
チン/ヒト成長ホルモン(HGH)などが含まれる。
【0056】
(増殖した細胞)
一実施態様において、前記MSC及び/又は線維芽細胞は、本発明の方法における使用の前
に増殖されていてもよい。細胞増殖のための方法は、当技術分野において公知である。
【0057】
(照射された細胞)
一実施態様において、前記MSC及び/又は線維芽細胞は、本発明の方法におけるそれらの
使用の前に照射されていてもよい。細胞の照射は、その増殖能力及び生存時間を低減させ
る。
【0058】
照射は、電離放射線の制御された適当な線源、例えば、ガンマ照射装置などを使用して
行うことができる。照射条件は、当業者が実験的に調整して、前記MSC及び/又は線維芽細
胞の長期間の増殖停止を引き起こす照射量を与えるのに必要な曝露時間を決定しなければ
ならない。一実施態様において、前記照射量は、1〜100Gy;5〜85Gy、10〜70Gy、12〜60Gy
からなる群から選択される範囲内であるが、該照射量が、15〜45Gyの範囲内であることが
特に好ましい。
【0059】
(IFN-γで刺激した細胞)
一実施態様において、前記MSC及び/又は線維芽細胞は、本発明の方法における使用の前
に、インターフェロンγで刺激することができる。MSCの、その刺激のためのIFN-γ処理
は、当技術分野において公知であり、当業者によって行われ得る。
【0060】
(マイトマイシンCで処理したMSC)
一実施態様において、前記MSC及び/又は線維芽細胞は、本発明の方法における使用の前
に、マイトマイシンCで処理することができる。MSCのマイトマイシンC処理は、当技術分
野において公知であり、当業者によって行われ得る。
【0061】
さらには、所望ならば、前記MSC及び/又は線維芽細胞は、本発明の方法における使用の
前に、照射、IFN-γ及びマイトマイシンCからなる群から選択される複数の処理に供する
ことができる。
【0062】
前記MSCの維持条件は、細胞を未分化形態のままにしておく細胞性因子も含み得る。分
化の前に、細胞の分化を阻害するサプリメントを培地から除去しなければならないことは
、当業者にとって明らかである。全ての細胞がこれらの因子を必要とするわけではないこ
とも明らかである。実際、これらの因子は、細胞型によっては好ましくない効果を誘発す
ることがある。
【0063】
抗原特異的免疫調節性細胞の調製方法:
(抗原(複数可))
免疫調節性細胞の調製及び/又は生成のための前記方法において使用される多発性硬化
症関連抗原は、単一抗原、複数の抗原、又は、該抗原(複数可)を発現及び/又は提示す
る細胞型であってよい。一実施態様において、該抗原は、以下を含む群から選択される:
自己免疫患者由来の自己抗原の混合物、ペプチド抗原、核酸、改変ペプチドリガンド、組
換えタンパク質又はそれらの断片。
一実施態様において、前記抗原は、関節炎に関連している(限定されないが、コラーゲ
ン抗原など)。
【0064】
一実施態様において、前記多発性硬化症関連抗原は、以下を含む群から選択される:ミ
エリン塩基性タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタ
ンパク質、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴプロテイン
、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タ
ンパク質、ヒートショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、NOGO A
、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエス
テラーゼ、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物。
【0065】
さらなる実施態様において、前記多発性硬化症関連抗原は、以下を含む群から選択され
る:ミエリン塩基性タンパク質ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質及
びプロテオリピドタンパク質、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物。
【0066】
さらなる実施態様において、前記多発性硬化症関連抗原は、以下を含む群から選択され
る:ミエリン塩基性タンパク質(MBP13-32、MBP83-99、MBP111-119、MBP146-170)、ミエリ
ンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG1-20、MOG35-55)及びプロテオリピドタンパク
質(PLP139-154)、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物。
そのような抗原の選択、単離、精製及び調製のための方法は、当業者に公知である。
【0067】
以下において、「本発明の免疫調節性細胞」という用語は、本願明細書に記載された本
発明の方法によって調製、増殖及び/又は生成される、全ての免疫調節性細胞を意味する
ように解釈されるものとし、これには、免疫調節性細胞及び抗原特異的免疫調節性細胞の
双方が含まれる。一実施態様において、前記免疫調節性細胞は、調節性T細胞であり、特
に好ましい実施態様において、前記免疫調節性細胞は、Foxp3+CD4+CD25+T-reg及び/又はI
L-10/TGFb-産生性調節性Tr1細胞である。
【0068】
(さらなる薬剤)
本発明の好ましい実施態様において、免疫調節性細胞の調製、増殖又は生成のための前
記方法は、本発明の免疫調節性細胞の収率を高めるのに適した1以上の薬剤の存在下にお
いて行われる。好ましくは、MSC及び/又は線維芽細胞をPBLと接触させる工程は、該薬剤
の存在下において行われる。そのような薬剤は、好ましくは、限定されないが、小分子な
どのMSC刺激因子、サイトカイン及び/又は増殖因子である。好適な薬剤には、限定されな
いが、以下からなる群から選択されるものが含まれる:IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、
IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、
IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-
30、LPS、G-CSF、M-CSF、GMC-SF、Kit-L、VEGF、Flt-3リガンド、PDGF、FGF-2、TPO、IL-
11、IGF-1、MGDF、NGF、TGF-b、HMG、サリドマイド、5-アザシチジン、トリコスタチン-A
、バルプロ酸、成長ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、下垂体アデニル酸シクラーゼ
活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニン、骨形態形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(E
GF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF.α)、線維芽細胞増殖因子(FGF)。
【0069】
前記方法の一実施態様において、前記薬剤は、LPS(グラム陰性細菌エンドトキシンリポ
多糖)である。前記LPS濃度が、0.01〜100μg/mlであることが好ましく、該濃度が、1〜50
μg/ml、例えば、約10μg/mlであることがさらに好ましい。
【0070】
別の実施態様において、前記薬剤は、GM-CSF及びIL-4のいずれかである。GM-CSF及びIL
-4は、ともにサイトカインである。その濃度は、1〜2000IU/mlであることが好ましく、該
濃度は、500〜1000IU/mlであることがさらに好ましい。
【0071】
前記方法のさらなる実施態様において、前記薬剤IL-4及びGM-CSFの双方を、本発明の方
法に使用する。GM-CSFの濃度とIL-4の濃度との比が、5:1〜1:1であること、及び、前記薬
剤の各々の濃度が、1〜2000IU/mlであることが好ましく、該濃度が、500〜1000IU/mlであ
ることがさらに好ましい。したがって、一実施態様において、これはおよそ、500IU/mlの
IL-4に対して、1000IU/mlのGM-CSFとすることができる。
【0072】
(免疫調節性細胞の選択)
いくつかの態様において、本発明は、受容対象への投与に好適な免疫調節性細胞を提供
する。したがって、前記免疫調節性細胞は、相対的な表現型均一性を有することが好まし
い。したがって、本発明の方法の任意の工程において、本発明の免疫調節性細胞は、不均
一な細胞培養から選択される。本発明の免疫調節性細胞及び抗原特異的免疫調節性細胞は
、当業者に公知の従来の手段によって、選択及び単離することができる。そのような手法
の例には、FACS及び免疫磁気細胞選別が含まれる。
【0073】
一実施態様において、本発明は、本発明の細胞を識別するための方法又はアッセイを提
供する。該方法は:
i)単離された細胞集団を用意すること;
ii)CD62-L、FOXP3及びCTLA4からなる群から選択される、1つ、2つ又は全てのマーカー
の発現を測定すること;及び
iii)前記マーカーの少なくとも1つ、2つ又は34について陽性である細胞を選択すること
、を含む。
【0074】
i)の単離された細胞集団は、好ましくは、本発明の方法に従って生成される細胞集団で
ある。ii)及びiii)による細胞の検出及び選択の方法は、先に述べたとおり、当技術分野
において周知である(例えば、FACS)。さらなる実施態様においては、工程ii)で、マー
カーCD127の発現も測定し、工程iii)で、該マーカーの発現について陰性である細胞を選
択する。
【0075】
(細胞増殖)
前記方法の一実施態様において、本発明の免疫調節性細胞は、その後、当技術分野にお
いて公知の培養技術、又は本願明細書に開示されている方法を用いて、エクスビボで数を
増殖させることができる。別の処理方法として、前記発明の免疫調節性細胞を、直接イン
ビボで投与することができる。
【0076】
(細胞の貯蔵)
前記細胞は、当技術分野において公知の任意の手段によって保存することができ、これ
には、限定されないが、密封容器における室温での貯蔵、又は凍結保存が含まれる。
【0077】
(抗原特異的免疫調節性細胞又はその集団の使用)
本発明は、本発明の方法に従って調製、増殖及び/又は生成される免疫調節性細胞の、
多発性硬化症の治療、最も好ましくは、前記PBLを得た対象の治療における使用も、提供
する。
【0078】
したがって、別の態様において、前記免疫調節性細胞は、医薬として使用される。以下
において、「本発明の免疫調節性細胞」という用語は、本願明細書に記載の本発明の方法
によって調製、増殖及び/又は生成される全ての免疫調節性細胞を意味するように解釈さ
れるものとし、これには、増殖させた、及び、増殖させていない、免疫調節性細胞、及び
、抗原特異的免疫調節性細胞の双方が含まれる。
【0079】
(医薬組成物)
本発明は、多発性硬化症に関連する1以上の症状の、治療、予防、及び寛解のための医
薬組成物を提供する。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫調節性細胞及び医薬担体を含
む、医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物という)に関する。前記細胞型の2以上の組
み合わせは、本発明により提供される医薬組成物の範囲内に含まれている。
【0080】
本発明の医薬組成物は、予防的又は治療的有効量の1以上の予防因子又は治療因子(すな
わち、本発明の免疫調節性細胞)、及び、医薬担体を含む。好適な医薬担体は、当技術分
野において公知であり、好ましくは、米国連邦政府又は州政府の規制当局によって承認さ
れているもの、又は、米国薬局方、若しくは、欧州薬局方、若しくは、動物、特にヒトに
おいて使用するための、他の一般的に認識されている薬局方に収載されているものである
。「担体」という用語は、前記治療因子とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形
剤、又はビヒクルを意味する。所望ならば、前記組成物は、少量のpH緩衝剤を含むことも
できる。好適な医薬担体の例は、E W Martinによる「Remington's Pharmaceutical Scien
ces」に記載されている。そのような組成物は、好ましくは精製された形態の、予防的又
は治療的有効量の予防因子又は治療因子を、対象への適切な投与のための形態を提供する
ように、好適な量の担体とともに含む。処方は、投与様式に適合すべきである。好ましい
実施態様において、前記医薬組成物は、無菌であり、かつ、対象、好ましくは動物対象、
より好ましくは哺乳動物対象、最も好ましくはヒト対象への投与に好適な形態である。
【0081】
本発明の医薬組成物は、様々な形態であってよい。これらには、例えば、凍結乾燥製剤
、液体溶液又は懸濁液、注射可能な及び注入可能な溶液などの、固体、半固体、及び液体
剤形などが含まれる。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療用途による。
【0082】
(療法における細胞の使用)
本発明の免疫調節性細胞集団、又は、それを含む医薬組成物の、それを必要とする対象
への投与は、従来の手段によって行うことができる。一実施態様において、本発明の組成
物は、全身投与(例えば、経直腸、経鼻、頬側、経膣、植込みリザーバー経由、又は吸入
経由)用に調製することができる。別の実施態様において、本発明の組成物は、局所投与
用に調製することができる。本発明の組成物は、非経口的な経路により投与することがで
きる。組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病巣
内、リンパ内及び頭蓋内経路により、投与することができる。
【0083】
さらなる実施態様においては、前記細胞を、インビトロ(例えば、移植又は生着前の移
植片として)又はインビボのいずれかで、所望の組織に移植すること、直接、動物組織に
移植することを含む方法によって、前記細胞集団を、前記対象に局所投与する。前記細胞
は、任意の適切な方法によって所望の組織に移植することができ、そのような方法は、一
般に、組織の種類によって異なる。例えば、移植片を、細胞を含む培地に浸すこと(又は
それを注入すること)によって、該細胞を該移植片に移植することができる。あるいは、
細胞を組織内の所望の部位に播種して集団を確立することができる。細胞は、(細胞を播
種することができる)カテーテル、トロカール、カニューレ、ステントなどの装置などを
使用して、インビボの部位へ移植することができる。
【0084】
本発明の細胞集団及び医薬組成物は、併用療法において使用することができる。特定の
実施態様において、前記併用療法は、1以上の抗炎症薬に対して不応性である炎症性疾患
を有する対象に施される。別の実施態様において、前記併用療法は、限定されないが、以
下のものなどの、他の種類の抗炎症薬と共に使用される:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID
)、ステロイド性抗炎症薬、β-アゴニスト、抗コリン薬(anticholingeric agents)、及び
メチルキサンチン。NSAIDの例には、限定されないが、以下のものが含まれる:イブプロ
フェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシ
ン、ケトロラク(ketoralac)、オキサプロジン、ナブメントン(nabumentone)、スリンダク
(suhndac)、トルメチン(tolmentin)、ロフェコキシブ、ナプロキセン、ケトプロフェン、
ナブメトンなど。そのようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-I及び/又
はCOX-2)を阻害することによって機能する。ステロイド性抗炎症薬の例には、限定されな
いが、以下のものが含まれる:グルココルチコイド、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒド
ロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アザルフィ[オタ]ジ
ン(azulf[iota]dine)、並びに、トロンボキサン及びロイコトリエンなどのエイコサノイ
ド。インフリキシマブなどのモノクローナル抗体も、使用することができる。
【0085】
上記実施態様に従って、本発明の併用療法は、前記抗炎症薬の投与より前に、同時に、
又は、その後に、使用することができる。さらに、そのような抗炎症薬は、リンパ組織イ
ンデューサー及び/又は免疫調節薬として本願明細書に特徴付けられる薬剤を、包含しな
い。
【0086】
(キット)
さらなる実施態様において、本発明は、本発明の免疫調節性細胞によって対象を治療す
るのに有用なキットを提供する。該キットは、i)本発明の方法に従って調製、増殖及び/
又は生成される免疫調節性細胞集団、又は、その医薬若しくは医薬組成物、並びに、ii)
限定されないが、シリンジ、注射装置、カテーテル、トロカール、カニューレ及びステン
トなどの、前記細胞を投与するための装置、を含む。さらなる実施態様において、本発明
の前記キットは、iii)対象の治療において使用するための説明書を含んでもよい。
本発明の様々な実施態様を、以下の実施例によって説明するが、これは、本願明細書に
記載されている発明を説明するものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0087】
本実験の目的は、多発性硬化症の治療のために、アロジェネイックな脂肪由来幹細胞の
存在下において、中枢神経系関連のタンパク質に由来するペプチドを使用して、抗原特異
的Treg細胞を「インビトロ」で生成すること、さらには、ポリクローナルTregによる抑制
活性又は駆動性ペプチドの存在下で生成される抗原特異的T-regによる抑制活性の比較に
よって、特異性を実証することであった。
【0088】
(材料及び方法)
健全ドナーサンプル:吸引脂肪組織を、健全成人ドナー由来のヒト脂肪組織から得て、
DelaRosaらの文献「Requirement of IFN-gamma mediated Indoleamine 2,3 dioxygenase
expression in the modulation of lymphocyte proliferation by human adipose-derive
d stem cells.」Tissue Eng Part A (2009)に記載されているように処理した。該hASCを
継代数4〜12で使用した。バフィーコートは、マドリード自治州の国立輸血センターによ
って提供された。末梢血リンパ球は、Ficoll Paque Plus(GE Healthcare Biosciences AB
、ウプサラ)を用いる密度勾配遠心により、該バフィーコートから単離した。
【0089】
ペプチド選択:
ペプチドは、その免疫原性及びMHC IIで提示される能力に基づいて選択した。これらの
要件に基づいて7種のペプチドを選択し、各ドナーにつき1種のペプチドを使用するのでは
なく、該7種のペプチドのプールを、Treg誘導について低アフィニティ条件(0.1μMの低濃
度を意味する。)下で使用した。
【0090】
ミエリン塩基性タンパク質ペプチド(MBP13-32、MBP83-99、MBP111-119、MBP146-170)、
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG1-20、MOG35-55)及びプロテオリピドタ
ンパク質(PLP139-154)を等濃度でプールし、DMSO中、1mMの最終ストック濃度とした。培
養において、プールペプチドを0.1μMで使用した。
【0091】
使用したペプチドを表1に示す。
【表1】
【0092】
(実施例1:ASC媒介性Treg生成及び特性評価)
特異的Tregの生成に使用する反応性ペプチドのプールを選択したら、hASC-媒介性MS-特
異的Treg増殖を実施した。
PBMCを、MSプールペプチドの存在下及び非存在下で、完全培地及びIL-2(100UI/ml)で、
hASCと共培養した。実験開始の48時間前に、FBSを補ったDMEM培地を使用して、ASCを、1
ウェル当たり40000個の細胞でプレーティングした。実験開始の24時間前に、PBMCを解凍
し、(単球の付着を避けるために)完全RPMIを含む非接着性ウェルプレート上で静止状態に
しておいた。0日目にASCから培地を回収し、PBMCを、前記ASCウェルプレートに、1ml当た
り100万個で、RPMIとともに添加した。各ウェルは2mlの体積であった。ASCとPBMCの比は
、PBMC 200万個につき40000個であった(1:50)。RPMI完全培地及びIL-2(100UI/ml)によるh
ASCとの該共培養を、インキュベーターにおいて、37℃、5%CO2で、0.1μMのMSプールペプ
チドの存在下及び非存在下で行った。培地は3日ごとに新しくした。共培養の15日後に、
細胞を回収し、表現型及び機能の特性評価に使用した。
【0093】
共培養の15日後に細胞を回収した。該細胞の一部を使用して、該Tregの表現型を決定す
るために、表現型の特性評価を行った。残りの細胞を使用して、CFSE染色した自己PMCSに
対する増殖アッセイを行った。hASC及びMSプールペプチドとの共培養から単離されたTreg
細胞を、TR1と名付けた。ペプチドの非存在下でのhASCとの共培養から単離されたTreg細
胞を、TR2と名付けた。hASCの非存在下かつプールペプチドの存在下で単離されたTreg細
胞を、TR3とした。hASC及びプールペプチドの非存在下で単離されたTreg細胞を、TR4と名
付けた。
2つの異なる特性評価実験を行った。
【0094】
第1の実験は、4つの異なる共培養について行った:
1. PBMC + hASC + IL-2 (TR2)
2. PBMC + hASC + ペプチドプール + IL-2 (TR1)
3. PBMC + ペプチドプール + IL-2 (TR3)
4. PBMC + IL-2 (TR4)。
【0095】
培養を15日間維持した。その後、該4つの共培養由来の細胞を、マルチパラメトリック
な免疫蛍光法により、表面マーカー(CD25、CD4、CD103、GITR、CD127、細胞内FOXP-3、..
.)について特徴付けし、TR1及びTR2共培養細胞について、CD4+CD25brightサブセットを、
免疫磁気分離法を使用することにより単離し、これらを、以下の機能性実験において、さ
らに分析した。
【0096】
第2の実験は、TR1単離Tregについて実施した。
1. PBMC + hASC + ペプチドプール + IL-2:単離されたTreg(TR1)
培養を15日間維持した。その後、細胞を、マルチパラメトリックな免疫蛍光法により、
表面マーカー(CD25、CD4、及び細胞内FOXP-3)について特徴付けし、CD4+CD25brightサブ
セットを、免疫磁気分離法を使用して単離した。
【0097】
(実施例2:ASC媒介性ミエリン特異的Tregの機能性評価)
CFSE染色:3体のドナーからのPBMCを、30μMのCFSE(Sigma Aldrich)で染色し、37℃で15分
間インキュベートした。未結合のCFSEを、等量のFCS(Invitrogen)を使用してクエンチし
、その後、細胞をPBSで2回洗浄した。CFSE標識した自己PBMC 2 x 105細胞/ウェルを、平
底96-ウェルプレートのウェルにおいて、1:1、1:4、1:20及び1:50のサプレッサー(S)比で
、インキュベートした。TR1及びTR2集団は、共培養アッセイにおいてPBMCの増殖を有意に
阻害した場合に、抑制を媒介するとみなした。CFSEのデータは全て、Cell Quest(商標)
ソフトウェアを使用して分析した。
前記ミエリン特異的Treg細胞の抑制性能力は、自己PBMCのCFSE増殖アッセイにより試験
した。
抑制率は、100%増殖又は0%抑制の対照培養を基準とする、1世代より多く分裂した細胞
の百分率を使用することにより計算した。
【0098】
(機能性アッセイ1)
前記PBMC細胞を、96-ウェルプレートにおいて、最終数200,000細胞/ウェルまでの、上
昇していく濃度の単離Treg細胞(TR1及びTR2)とともに培養した。共培養を6日にわたって
放置した。
【0099】
自己リンパ球の増殖を誘導するため、前記TR1及びTR2細胞集団を、次の2つの異なる刺
激を使用して、それぞれ2通りにした:ポリクローナル刺激(Pan T細胞活性化/増殖キット)
及び抗原特異的刺激(MS特異的Tregの生成に使用したプールペプチドを使用する。)。最後
に、細胞を回収し、CFSEの変化をFACSによって分析した。
【0100】
(機能性アッセイ2)
100,000個の自己PBMCを、1ml当たり50UIのIL-2、及び、前記プールMSペプチド又は無関
係なペプチド(FLU-HA)のいずれかの下で、上昇していく数のMS特異的Treg(TR1)の存在下
、6日にわたって培養して、自己PBMCの増殖を誘導した。その後、細胞を回収し、CD3につ
いて染色した。CFSEの変化をFACSによって分析した。
【0101】
(結果)
Treg数及び表現型に対するペプチド特異性の効果
hASC及びMSプールペプチドとの共培養から単離されたTreg細胞を、TR1と名付けた。ペ
プチドの非存在下でのhASCとの共培養から単離されたTreg細胞を、TR2と名付けた。hASC
の非存在下かつプールペプチドの存在下で単離されたTreg細胞を、TR3とした。hASC及び
プールペプチドの非存在下で単離されたTreg細胞を、TR4と名付けた。
【0102】
図1に示すとおり、TR1及びTR2共培養は、hASCの非存在下で誘導されたPBMC(TR3、TR4)
よりも、有意に高いTreg細胞率を示した。これらのデータは、抗原駆動性PBMC培養が、非
駆動性培養とほぼ同等のTreg率を誘導することを示し、前記ペプチドが、ASCの調節性T細
胞を生成する能力に影響を及ぼさなかったことを意味している。
前記抗原駆動性Treg(TR1)が、ポリクローナルTreg(TR2)と同じ集団に属することを実証
するために、本発明者らは、Treg細胞に特徴的な3つのマーカー、CD103、CD127及びFOXP3
を、表現型的に分析した。図2に示すとおり、TR1及びTR2細胞については、ほぼ同じ表現
型が見られたが、非ASC誘導性Treg(TR3及びTR4)は、FOXP3及びCD103の割合が低かった。
あらゆる調節性T細胞種についてこれまで記載されてきたとおり、全ての場合において、C
D127の発現は陰性であった。
【0103】
MS特異的誘導Treg:
本発明者らは、単離されたTreg細胞の機能性を実証することを目指した。この目的のた
めに、TR1及びTR2条件由来のCD4+CD25+調節性T細胞を単離した。
【0104】
(機能性アッセイ1)
アッセイ1用に、自己PBMC 2 x 105細胞/ウェルを、平底96-ウェルプレートにおいて、1
:1、1:4、1:20及び1:50のサプレッサー(S)比で、インキュベートした。TR1及びTR2集団は
、共培養アッセイにおいてPBMCの増殖を有意に阻害した場合に、抑制を媒介するとみなし
た。
上昇していく数のTreg細胞の存在下におけるPBMC増殖の百分率は、PBMC単独の場合に見
られる100%の増殖に対する相対百分率で表現した。3つの個別実験の結果が、図3〜8に示
されており、これは、TR1細胞が、MSプールペプチドを使用した場合に、自己PBMCの増殖
を抑制することができたということを示している。抗CD3/CD28のような強力な増殖誘導原
と比べると、MSペプチドを使用する抑制は、より低かったが、ポリクローナル刺激で達す
る増殖及び活性化のレベルは、ペプチドによるものよりも高いものである。
予想したとおり、TR2ポリクローナルTregは、プールペプチドを刺激因子として使用し
た場合、増殖の有意な減少を誘導しなかった。
これらの結果は、TR1細胞が、より高い割合のMS特異的T細胞を効果的に含んでいること
を示している。
【0105】
(機能性アッセイ2)
アッセイ2用に、PBMC 1 x 105細胞/ウェルを、平底96-ウェルプレートにおいて、1:5、
1:11及び1:21のサプレッサー(S)比でインキュベートした。TR1細胞のみを使用した。TR1
は、共培養アッセイにおいてPBMCの増殖を有意に阻害した場合に、抑制を媒介するとみな
した。MS特異的Tregが、特異的ペプチドの存在下においてのみ、自己T細胞の増殖を抑制
できるのかどうかを調査するために、本発明者らは、無関係なペプチドの存在下での共培
養を行った。MS誘導自己リンパ球におけるMS特異的Tregの抑制能力を、flu誘導自己リン
パ球におけるMS特異的Tregと比較する。図9は、達した最大増殖を基準とする、MS及びflu
ペプチドの存在下における増殖の百分率を示す。PBMCに加えられるプールMSペプチドにお
けるMS特異的Tregの存在は、自己T細胞コンパートメントの増殖を阻害することが、結果
により確認される。この阻害は、無関係なペプチドを使用した場合、有意に低かった。
【0106】
これらの結果は、単離された前記MS特異的Tregが、MSプールペプチドの存在下で誘導さ
れる自己T細胞増殖を優先的に阻害するTregの集団を含んでいることを示している。
【0107】
(結論)
まとめると、これらの結果は、Treg生成のための前記方法は、抗原特異的Tregを含むTr
eg細胞集団を生成できたが、該細胞集団は、有意に低い程度に、非特異的免疫抑制能力を
保持していたということを示している。概して、hASC/PBMC共培養から単離されたポリク
ローナルTregは、自己PBMCの増殖を抑制できると結論づけることもできる。しかしながら
、MS特異的Tregの生成は、他のペプチド(前記無関係なペプチド、FLU-HAなど)ではなくMS
ペプチドに対して反応する自己T細胞を優先的に阻害する。
【0108】
(概要)
中枢神経系のタンパク質由来のプールMSペプチド(ミエリン塩基性タンパク質ペプチド
(MBP13-32、MBP83-99、MBP111-119、MBP146-170)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タン
パク質(MOG1-20、MOG35-55)及びプロテオリピドタンパク質(PLP139-154))を、Treg誘導
系に添加し、MS特異的Tregを、ポリクローナルTregとほぼ同等の割合で生成した。MS特異
的Treg(本願明細書においてTR1と称される)は、ポリクローナルTreg細胞のように、表現
型的にCD4+CD25highFOXP3lowCD127negCD103low/negであると特徴付けられた。MS特異的Tr
egは、前記ペプチドプール及び低IL-2濃度で誘導される自己PBMCの増殖を抑制することが
できた。PBMCは、抗CD3/CD28マイクロビーズで刺激された場合の、MS特異的調節性T細胞
による阻害にも感受性であった。
【0109】
興味深いことに、非特異的ペプチドを使用した場合、MS特異的Tregの阻害能力は低減さ
れ、したがって、本発明の細胞集団は、MSペプチドT細胞増殖の調節において、より高い
効力を示す点において「抗原特異的」であるが、該細胞集団は、非MS関連T細胞応答を調
節する(低減された)能力をなお保持していると結論づけることができる。
【0110】
(更なる特徴)
言及し得る本発明の更なる特徴は、以下のとおりである:
a)本質的に、CD62-L、CD127、FOXP3、CTLA4、CD104及びGITRを発現する細胞から成る、単離された免疫調節性細胞集団
b)エクスビボで生成される、単離された免疫調節性細胞集団であって、本質的に、多発
性硬化症関連抗原に対して指向化された(directed)細胞、又は、該エクスビボ生成の間
に1以上の多発性硬化症関連抗原に曝露された細胞から成る、前記細胞集団
c)前記細胞が、CD62-L、CD127、FOXP3、CTLA4、CD104及びGITRを発現することを特徴とする、b)の細胞集団
d)単離された調節性T細胞又はその細胞集団を、1以上の多発性硬化症関連抗原の存在下
において、間葉系幹細胞集団と接触させることを含む、免疫調節性細胞の調製、増殖及び
/又は生成のための方法
e)前記多発性硬化症関連抗原が、以下を含む群から選択される、d)の方法:ミエリン塩基性タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴプロテイン、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、ヒートショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質群、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物
f)前記多発性硬化症関連抗原が、以下を含む群から選択される、e)の方法:ミエリン塩基性タンパク質ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質及びプロテオリピドタンパク質、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物
g)前記抗原が、配列番号:1〜7並びにそれらの断片、バリアント及び混合物からなる群から選択される、f)の方法
h) a)からc)の細胞、又は、d)からg)の方法に従って調製される細胞を含む、医薬組成物
i)多発性硬化症の治療における、a)からc)の細胞集団、d)〜g)の方法に従って調製される細胞、又はh)の医薬組成物の使用
j)多発性硬化症の治療用組成物の製造における、a)〜c)の細胞集団、d)〜g)の方法に従って調製される細胞、又はh)の医薬組成物の使用。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
本質的に、CD62-L、FOXP3及びCTLA4の1以上を発現する、多発性硬化症関連抗原に特異的な免疫調節性細胞から成る、単離された細胞集団。
(構成2)
前記細胞が、CD62-L、FOXP3及びCTLA4の各々を発現する、構成1記載の細胞集団。
(構成3)
前記細胞がCD127を発現しない、構成1又は2記載の細胞集団。
(構成4)
前記細胞が、調節性T細胞である、構成1〜3のいずれか1項記載の細胞集団。
(構成5)
前記細胞が、エクスビボで生成され、かつ該エクスビボ生成の間に、1以上の抗原に指向化又は曝露される、構成1〜4のいずれか1項記載の細胞集団。
(構成6)
単離された調節性T細胞又はその細胞集団を、1以上の多発性硬化症関連抗原の存在下において、間葉系幹細胞(MSC)集団と接触させることを含む、抗原特異的免疫調節性細胞の、調製、増殖及び/又は生成のための方法。
(構成7)
i)単離された細胞集団を用意すること、
ii)CD62-L、FOXP3及びCTLA4からなる群から選択される1以上のマーカーの発現を測定すること、及び
iii)該マーカーのうちの少なくとも1つ、2つ又は3つについて陽性である細胞を選択すること、
を含む、細胞集団の選択方法。
(構成8)
以下の工程を含む、多発性硬化症を有する対象の治療方法:
i)PBL集団を用意する工程;
ii)該PBLを、1以上の多発性硬化症関連抗原の存在下において、MSC及び/又は線維芽細
胞を含む細胞集団と接触させる工程;
iii)該免疫調節性細胞集団を単離する工程;及び
iv)該免疫調節性細胞集団を該対象に投与する工程。
(構成9)
前記MSC集団が脂肪組織に由来する、構成6又は8記載の方法。
(構成10)
前記多発性硬化症関連抗原が、以下からなる群から選択される、構成1〜5のいずれか1項記載の細胞集団、又は、構成6、8若しくは9のいずれか1項記載の方法:ミエリン塩基性タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴプロテイン、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、ヒートショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22、及び2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物。
(構成11)
前記多発性硬化症関連抗原が、ミエリン塩基性タンパク質ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質及びプロテオリピドタンパク質、並びに、それらの断片、バリアント及び混合物を含む群から選択される、構成10記載の方法。
(構成12)
構成1〜5のいずれか1項記載の細胞、又は、構成6、9、10若しくは11のいずれか1項記載の方法に従って調製される細胞を含む、医薬組成物。
(構成13)
多発性硬化症の治療において使用するための、構成1〜5のいずれか1項記載の細胞集団、構成6、9、10若しくは11のいずれか1項記載の方法に従って調製される細胞、又は構成12記載の医薬組成物。
(構成14)
多発性硬化症の治療用医薬の製造における、構成1〜5のいずれか1項記載の細胞集団、構成6、9、10若しくは11のいずれか1項記載の方法に従って調製される細胞、又は請求項12記載の医薬組成物の使用。
(構成15)
多発性硬化症の治療方法であって、それを必要とする対象に、構成1〜5のいずれか1項記載の細胞集団、構成6、9、10若しくは11のいずれか1項記載の方法に従って調製される細胞、又は構成12記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]