(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、足場を組むことなく橋脚等の内部にアクセス可能とした橋梁構造物における橋梁内部への移動方法及びこれに用いる横移動用梯子を提供することにある。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法は、橋台上に支承部を介して橋桁を配置した橋梁構造物の桁同士の間に移動するための橋梁内部への移動方法であって、橋梁構造物の、橋台の上面であって、橋桁の幅方向の一方の側面である第一側面側に第一作業者を配置して、橋面の前記第一側面に位置する第一高欄と、前記第一側面の反対側の側面である第二側面に位置する第二高欄との間に、第一ロープを、橋桁の底面を通して架ける工程と、両側に配置された一対の主脚と、前記一対の主脚の間に、該主脚と平行に、互いに離間して配置された、その上端を前記一対の主脚の上端よりも低くしてなる一対の縦桟と、前記主脚及び縦桟と交差するように、互いに平行姿勢で離間して配置された複数の横桟と、前記一対の主脚及び縦桟の背面側に、突出する姿勢に設けられた係止部とを備える横移動用梯子を準備し、吊り下げロープの一端を前記横移動用梯子の上部に連結して、橋面の前記第一側面側に配置された第三作業者が、前記吊り下げロープの他端を持ち、前記横移動用梯子を、橋面の前記第一側面側から、橋台の第一側面側に下ろす工程と、前記第一作業者が、前記横移動用梯子を、前記第一ロープに連結した状態で移動させ、橋台の側面において、前記係止部が桁の下面と対向する姿勢で、桁の下面の両側に主脚が位置する姿勢にて、前記横移動用梯子の係止部を、橋台の上面にかけて固定する工程と、前記第一作業者が、前記固定された横移動用梯子の、桁の外側に位置する主脚側から、該横移動用梯子を下りて、かつ橋台の側面において、桁の内側に位置する主脚側に、該横移動用梯子上を横方向に移動し、桁の内側に位置する主脚に沿って該横移動用梯子を登り、桁同士の間に移動する工程とを含むことができる。これにより、通常であれば桁に阻まれて橋台の上面から作業者が桁同士の間に移動できないところ、横移動用梯子を使って桁の下側に一旦下りて、桁のない橋台の側面を横方向に移動して桁同士の間の下方まで進んだ上で、横移動用梯子を登ることで、桁を避けて桁同士の内側に入ることが可能となり、桁同士の間の保守を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の第2の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記に加えて、さらに前記横移動用梯子の係止部を橋台の上面にかけて固定する工程に先立ち、前記第一作業者が、前記横移動用梯子を、前記第一ロープに連結する工程を含むことができる。これにより、横移動用梯子を桁の下面の両側に主脚が位置するように移動させる作業を、第一作業者は第一ロープに沿ってスムーズに行うことが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の第3の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一ロープを橋桁の底面を通して架ける工程に先立ち、第一高欄に、前記第一ロープの一端を固定するための第一ロープ取付材を、第二高欄に、前記第一ロープの他端を固定するための第二ロープ取付材(b)を、それぞれ固定する工程を含むことができる。これにより、第一ロープを第一高欄や第二高欄に直接固定する場合に比べて、第一ロープ取付材、第二ロープ取付材を利用することで、第一ロープの取付位置で高欄が傷む事態を回避できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第4の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一ロープを橋桁の底面を通して架ける工程に先立ち、橋面と、橋台の上面との間を移動するための昇降梯子を、前記第一側面及び/又は第二側面に設置する工程を含むことができる。これにより、橋台の上面に下りるための梯子が常設されていない橋梁構造物であっても、安全に作業者が橋台上面にアクセスすることができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第5の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、前記第一ロープを橋桁の底面を通して架ける工程が、橋台の上面の前記第二側面側に第二作業者を配置し、前記第二作業者が、細長く延長された棒の先端側を、支承部の外側において、前記第一作業者に向けて伸ばす工程と、前記第一作業者が、前記第一側面側で前記棒の先端側を受けて、該棒に前記第一ロープを接続する工程と、前記第二作業者が、前記棒を引き寄せて、該棒の先端側に接続された前記第一ロープを受ける工程とを含むことができる。
【0017】
さらにまた、本発明の第6の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が、前記棒に前記第一ロープを接続する工程が、前記第一ロープの先端に接続された、該第一ロープよりも軽量のリードロープを、前記棒の先端側に設けられたワイヤ接続部に接続する工程を含み、前記第二作業者が、前記棒を引き寄せて、該棒の先端側に接続された前記第一ロープを受ける工程が、前記棒の先端側に接続されたリードロープを、前記棒を用いて前記第二側面側に引き寄せる工程と、前記第二作業者が前記リードロープを受けた後、前記リードロープを第二側面側に引っ張り、該リードロープに接続された前記第一ロープを前記第二側面側に引き寄せる工程とを含むことができる。これにより、重量のある第一ロープを直接棒の先端側に接続するのでなく、軽量なリードロープを一旦、棒の先端側に接続した後、このリードロープを棒で引き寄せることにより、リードロープの受け渡し作業を軽い力でも送り側から受け側に行うことができる。さらに第二作業者がリードロープを第二側面側で取得した後は、力を要する作業も手元のリードロープに対して行い易くなるので、リードロープを引っ張って、より重い第一ロープを引き寄せることが可能となる。このように、重い第一ロープを直接やりとりするのでなく、より軽いリードロープの授受を先に行った上で、このリードロープを用いて行うようにして、作業をよりスムーズにかつ安全に行うことができる。
【0018】
さらにまた、本発明の第7の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程に先立ち、前記第一ロープと異なる第二ロープを、前記第一側面と第二側面の間で、橋桁の底面を通して架ける工程を含み、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程において、前記第二ロープを第一作業者に連結することができる。これにより、第一ロープを横移動用梯子の吊下ろし等に利用する一方で、第二ロープを命綱を繋ぐロープや命綱そのものに利用して、橋台の上面にいる第一作業者の安全性を高めることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第8の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程に続き、
【0020】
前記第二作業者(B)が桁同士の間にいる第一作業者(A)に対し、前記第一ロープに沿って作業袋を届ける工程を含むことができる。これにより、作業に必要な器具、材料を作業袋に入れて、桁同士の間にいる第一作業者に対して安全に送ることが可能となる。
【0021】
さらにまた、本発明の第9の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、前記第一ロープよりも前記第二ロープを高い張力で緊結することができる。上記構成により、橋桁の下面に架けた2つのロープの内、横移動用梯子等の運搬に用いる第一ロープを緩やかに繋いで作業を行い易くする一方で、第二ロープはぴんと張った状態として、安全綱として好適に利用できる。
【0022】
さらにまた、本発明の第10の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記横移動用梯子の係止部を橋台の上面にかけて固定する工程に先立ち、前記橋台の上面に、前記第一作業者が、前記横移動用梯子を固定するための第一アンカーを固定する工程を含み、前記横移動用梯子の係止部を橋台の上面にかけて固定する工程が、前記横移動用梯子を、前記第一アンカーに緊結する工程を含むことができる。これにより、第一アンカーを用いて横移動用梯子を橋台に確実に固定して、橋台近辺の点検及びメンテナンス作業を安全かつ効果的に行うことができる。
【0023】
さらにまた、本発明の第11の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記橋台の上面に前記第一アンカーを固定する工程が、前記橋台の上面に、前記第一作業者が、前記第一アンカーを打ち込むための穴を削孔する工程を含むことができる。これにより、現場で第一作業者が直接穴を削孔して、第一アンカーを確実に固定することが可能となる。
【0024】
さらにまた、本発明の第12の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程の後、第一作業者が、前記橋台の上面の、桁同士の間であって前記第一側面側に、第二アンカーを固定する工程と、前記横移動用梯子を、前記第二アンカーに緊結する工程を含むことができる。これにより、桁の下面の外側に固定した第一アンカーに加えて、桁同士の間に固定した第二アンカーに対しても横移動用梯子を固定することで、より安定的に橋台に固定でき、横移動用梯子の信頼性を高めることができる。
【0025】
さらにまた、本発明の第13の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程の後、第一作業者が、前記橋台の上面の、桁同士の間であって前記第二側面側に、第三アンカーを固定する工程と、前記第一ロープを、前記第三アンカーに連結する工程と、前記第一ロープに沿って、前記第一作業者に対し、作業袋を届ける工程を含むことができる。これにより、作業に必要な器具、材料を作業袋に入れて、桁同士の間にいる第一作業者に対して安全に送ることが可能となる。
【0026】
さらにまた、本発明の第14の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、さらに、前記第一作業者が桁同士の間に移動する工程の後、第一作業者が、桁同士の間で、除土作業を行う工程を含むことができる。これにより、アクセス困難であった桁同士の間に作業者が安全に移動でき、直接除土作業を行えるため、従来困難であった堆積土砂による橋桁の腐食の問題を低減、解消して橋梁構造物の保全が可能となる。
【0027】
さらにまた、本発明の第15の形態に係る橋梁構造物における橋梁内部への移動方法によれば、上記何れかに加えて、前記横移動用梯子を橋台の第一側面側に下ろす工程において、前記吊り下げロープを2本、前記横移動用梯子の上部の左右に、それぞれ連結して、前記複数の吊り下げロープの送り出し量を調整しながら、前記横移動用梯子を橋台の上面に下ろすようにすることができる。これにより、横移動用梯子の左右を吊り下げロープでそれぞれ吊り下げて、横移動用梯子の傾き姿勢を調整し易くできる。
【0028】
さらにまた、本発明の第16の形態に係る横移動用梯子によれば、橋台上に支承部を介して橋桁を配置した橋梁構造物の桁同士の間に移動するために用いる横移動用梯子であって、両側に配置された一対の主脚と、前記一対の主脚の間に、該主脚と平行に、互いに離間して配置された一対の縦桟と、前記主脚及び縦桟と交差するように、互いに平行姿勢で離間して配置された複数の横桟と、前記一対の縦桟の背面側の上部から、突出する姿勢に設けられた係止部とを備え、前記一対の縦桟は、その間隔を、桁の下面よりも長くしており、かつ前記一対の縦桟は、その上端を、前記一対の主脚の上端よりも低くしており、前記複数の横桟の内、上端に位置する上横桟の中間から、前記一対の縦桟の上端を突出させており、前記一対の主脚及び一対の縦桟が、桁同士の間と平行な橋台の側面と面する姿勢で、かつ前記係止部が桁の下面と対向する姿勢で、前記一対の縦桟同士の間に、桁の下面を挟み込むように、前記係止部を、橋台の上面に引っ掛け可能とすることができる。上記構成により、通常であれば桁に阻まれて橋台の上面から作業者が桁同士の間に移動できないところ、横移動用梯子を使って桁の下側に一旦下りて、桁のない橋台の側面を横方向に移動して桁同士の間の下方まで進んだ上で、横移動用梯子を登ることで、桁を避けて桁同士の内側に入ることが可能となり、桁同士の間の保守を行うことが可能となる。
【0029】
さらにまた、本発明の第17の形態に係る横移動用梯子によれば、上記何れかの構成に加えて、さらに、前記一対の主脚の背面側から突出された、前記係止部よりも低いスペーサを備えることができる。上記構成により、横移動用梯子を橋台の側面にかけた際、スペーサが橋台側面に触れることで、横移動用梯子が橋台側面から離間して保持されることとなり、使用者が横桟に足をかける際、横桟と橋台側面との間の空間があることでつま先を入れ易くでき、横移動用梯子を昇降し易い状態とできる。
【0030】
さらにまた、本発明の第18の形態に係る横移動用梯子によれば、上記何れかの構成に加えて、前記主脚と縦桟の間隔を、前記縦桟同士の間隔と略等しくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部品を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施形態1)
【0033】
本発明の実施形態1に係る橋梁内部への移動方法は、
図3の斜視図に示すような、橋梁構造物の橋桁1の下面であって、桁同士の間の桁間部に作業者が移動できるようにするための方法である。作業者が橋台や橋脚の上面から、桁同士の間に移動しようとしても、
図3に示すように桁が邪魔になって、移動できない。橋梁構造物は、経年使用により桁間部に土砂が堆積して、この土砂が含む水分によって腐食が生じる。このため、桁同士の間である桁間部の点検や土砂の除去などの清掃といった保全作業を行うことで、橋梁構造物の予防保全が図られ、長期に渡って橋梁構造物を安定的に使用可能となり、ひいては橋梁の維持管理コストを削減することが期待される。しかしながら、上述の通り桁間部へのアクセスが桁によって阻害されることから、従来は高所作業車を用いたり、桁の下方に足場を組むなどの作業が必要となって、保全作業の下準備のために時間とコストが相当かかってしまい、これが橋梁管理者である地方自治体等の負担となって、予防保全が進んでいなかった。
【0034】
そこで本実施形態1においては、
図4に示すように横移動用梯子100を用いて、これを橋台や橋脚に固定することにより、足場を組むことなく作業者が桁間部に移動できるようにしたものである。なお、以下の説明においては横移動用梯子を橋台に固定する方法について説明するが、本発明は橋脚に対しても同様に利用できることはいうまでもない。よって本明細書においては説明の容易さのため、特に断りのない限り、橋台に橋脚も含める意味で使用する。
(横移動用梯子100)
【0035】
まず、橋梁内部への移動方法に用いる横移動用梯子100を、
図5〜
図10に基づいて説明する。これらの図において、
図5は実施形態1に係る横移動用梯子100を示す正面図、
図6は
図5の横移動用梯子100の側面図、
図7は
図5の横移動用梯子100のVII−VII線における端面図、
図8は
図5の横移動用梯子100の平面図、
図9は
図5の横移動用梯子100を橋台2に係止した様子を示す斜視図、
図10は
図9を背面側から見た斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す横移動用梯子100は、両側に配置された一対の主脚110と、一対の主脚110の間に配置された一対の縦桟120と、これら主脚110及び縦桟120と交差するように配置された複数の横桟130と、一対の縦桟120の背面において上部から突出する姿勢に設けられた係止部140とを備える。この横移動用梯子100を、後述する
図31に示すように、作業者が入りたい桁間部への移動を妨げる桁の下方に配置することで、横移動用梯子100を一旦下って桁を迂回した上で登り、桁間部に安全にかつ容易に移動できるようになる。
【0036】
この横移動用梯子100は、吊り下げて受け渡す作業が容易なように、軽量であることが好ましい。十分な強度を発揮しつつ軽量な部材として、アルミニウムが好適に利用できる。また樹脂製や木製としてもよい。
(主脚110)
【0037】
主脚110は、左右にそれぞれ設けられている。また縦桟120は、主脚110と平行で、かつ互いに離間して配置されている。
図5の例では、主脚110と縦桟120の間隔を、縦桟120同士の間隔とほぼ一致させている。これにより、横移動用梯子100を設計し易く、また使用時において作業者が扱い易くなる。
(横桟130)
【0038】
一方、横桟130は、主脚110や縦桟120の間で、互いに平行姿勢で離間して配置されている。これによって、作業者は横桟130に足をかけて、主脚110の延長方向に沿って横移動用梯子100を上り下りできる。また横桟130の少なくとも一部は、主脚110同士の間を渡している。
図5の例では、最下端に位置する下横桟133と、中間の中横桟132を、それぞれ左右の主脚110を結ぶように延長している。このように左右に延長された横桟130を設けたことで、作業者は一方の主脚110側から、他方の主脚110側に、横桟130に沿って横方向に移動することができる。
【0039】
このような横方向に移動するための延長された横桟130は、横桟のすべてをそのように延長する必要はなく、
図5に示すように、一部の横桟130は主脚110と縦桟120の間のみを渡す短い長さの短横桟134とすることができる。これによって部材数を減らし、横移動用梯子100の軽量化を図ることができる。また横桟が多いと運搬時や保管時等に干渉し易くなるので、長い横桟を必要最小限とすることで利便性を向上できる。
図5の例では、通常の梯子を2つ、横並びに離間して並べて、横桟で部分的に連結している態様と捉えることができる。
(実施形態2)
【0040】
ただ本発明は、
図5の構成に限定するものでなく、例えば
図11に示す実施形態2に係る横移動用梯子200のように、すべての横桟130を、左右の主脚110を渡すように延長してもよい。
(桁下面ガイド部)
【0041】
また、各縦桟120の上端が、各主脚110の上端よりも低くなるように縦桟120と主脚110を固定している。
図5の例では、主脚110と縦桟120の下端を揃えているので、主脚110よりも縦桟120を短くしている。さらに複数の横桟130の内、上端に位置する上横桟131の中間から、一対の縦桟120の上端を突出させるように、上横桟131を固定している。さらにまた、
図31等に示すように、一対の縦桟120の間隔を、桁の下面である下フランジ1Uの幅よりも長くしている。これによって、縦桟120同士の間の空間に下フランジ1Uを配置して、縦桟120を下フランジ1Uのガイドとして利用し、横移動用梯子100の位置決めすることができる。
(係止部140)
【0042】
加えて、一対の縦桟120の背面側には、係止部140を設けている。上述の通り、縦桟120同士の間で下フランジ1Uを左右から挟み込むように、縦桟120間の空間を利用して横移動用梯子100を位置決めした状態で、横移動用梯子100が桁の下方に延在するよう、係止部140でもって橋台2に係止する。係止部140は、
図8の平面図に示すように横移動用梯子100の背面側に突出させている。また
図6、
図7、
図9、
図10の例では、係止部140は縦桟120の上端から少し下がった位置において、縦桟120と略直角方向に突出するように固定されている。これにより、
図7の断面図に示すように、係止部140を橋台2の上面に引っ掛けて、横移動用梯子100を橋台2に係止できる。
【0043】
また係止部140を安定的に固定するため、縦桟120の上端の背面から、係止部140の端縁に向かって斜め方向に筋交い状に延長された補強部142を固定している。これにより、横移動用梯子100の両端に位置する主脚110にも係止部140を設けて、幅方向に離間した位置で横移動用梯子100を係止して、より横移動用梯子100を保持できる。また、係止部140を増やすことで縦桟120から交差する方向に伸ばした係止部140の強度を高め、安定的に横移動用梯子100を橋台2に固定できる。
【0044】
この横移動用梯子100では
図8の平面図及び
図9、
図10の斜視図に示すように、係止部140を縦桟120の背面のみならず、主脚110の背面にも設けている。このように各主脚110の背面にもそれぞれ係止部140を設けることで、一対の縦桟120の係止部140と加えて計4つの係止部140が設けられ、より強固にかつ安定的に横移動用梯子100を橋台2に係止できる。
【0045】
なお、係止部140は
図8に示すように必ずしも4つ設ける必要はなく、3つあるいは2つ以上とすることもできる。
(実施形態3)
【0046】
また縦桟の長さは、必ずしも上下の横桟を渡す長さにする必要はない。例えば
図12に示す実施形態3に係る横移動用梯子300のように、上横桟131の上方にのみ突出するように縦桟120Cを設けてもよい。
【0047】
図5の例では、横桟130の数を5本、主脚110と縦桟120の数をそれぞれ2本、2本とした例を示している。本発明においては、横桟や縦桟の数は、横移動用梯子を使用する橋梁構造物の桁や橋台の大きさ等に応じて、適宜設定できる。
(実施形態4)
【0048】
ただ、桁下面ガイド部を省略する場合は、縦桟を設けない構造とすることもできる。このような例を実施形態4に係る横移動用梯子400として
図13の正面図に示す。この横移動用梯子400は、一対の主脚110の間に横桟130を平行に設けている。この構成では、横移動用梯子400を桁の下方に固定する際に、概ね主脚110の中央に桁下面の中心が位置するように、横移動用梯子400の固定位置を作業者が調整する。利点としては、下フランジの幅が主脚同士の幅よりも十分に狭い限りは利用できるので、下フランジの幅が異なる橋梁構造物に対して柔軟に使用できることが挙げられる。また、構成が簡単であり製造コストも削減できる。
(スペーサ150)
【0049】
また、
図6等に示すように、主脚110の背面側には、スペーサ150を突出させている。スペーサ150の突出量は、係止部140の突出量よりも小さくする。これによって、
図7等に示すように横移動用梯子100を橋台2に係止した際、スペーサ150が橋台2の側面に接触して、横移動用梯子100と橋台2側面との間にスペーサ150の長さに相当する隙間が形成される。この結果、作業者が横移動用梯子100を昇降あるいは横移動する際、横桟130と橋台2側面との間の空間があることでつま先を奥まで入れることができ、横桟130に足をかけ易くなる。
【0050】
このように横移動用梯子100は、橋台2の側面に配置する際、一対の主脚110及び一対の縦桟120を桁同士の間と平行な橋台2の側面と面する姿勢として、一対の縦桟120同士の間で、下フランジ1Uを挟み込むことができる。この状態で、
図7の端面図に示すように、係止部140を、橋台2の上面に引っ掛けることができる。
(橋梁構造物における橋梁内部への移動方法)
【0051】
次に、以上の横移動用梯子100を用いて、橋梁構造物の橋梁内部に作業者を移動させる方法を、
図14〜
図32に基づいて説明する。これらの図において
図14は第一ロープRP1を第一側面6と第二側面7の間に、橋桁1の下面を通して渡す様子を示す模式断面図、
図15は
図14の橋梁構造物の側面図、
図16は第一高欄4Aにロープ取付材4Cを固定する様子を示す斜視図、
図17は第二作業者OP2が棒RRを第一側面6側に送り出す様子を示す模式断面図、
図18は伸縮式の棒RRを示す模式平面図、
図19は第二作業者OP2が棒RRを第一側面6側に送り出す様子を示す模式平面図、
図20は第二作業者OP2が、棒RRを引き寄せる状態を示す模式断面図、
図21は第二作業者OP2が、リードロープLRを引っ張って第一ロープRP1を引き寄せる状態を示す模式断面図、
図22は第二作業者OP2が固定式の棒RRを第一作業者OP1に送り出す様子を示す模式断面図、
図23は
図17の状態から、第一ロープRP1を第一側面6と第二側面7の間に橋桁1の底面を通して架けた状態を示す模式断面図、
図24は第二ロープRP2を橋桁1の下面にかけた状態を示す模式断面図、
図25は
図24の側面図、
図26はアンカーを固定した状態を示す模式断面図、
図27は
図26の側面図、
図28は横移動用梯子100を懸吊する状態を示す模式断面図、
図29は横移動用梯子100を橋台2に固定した状態を示す模式断面図、
図30は
図29の側面図、
図31は第一作業者OP1が桁間部に移動する様子を示す模式断面図、
図32は第二アンカー42、第三アンカー43を固定する様子を示す模式断面図を、それぞれ示している。ここでは、
図3等に示したように、作業者が橋台2の上面から桁間部に直接移動できない状態、すなわち橋桁1の桁で桁間部への移動が阻害される状態を考える。
(第一ロープRP1の設置作業)
【0052】
まず、橋台2の上面であって、橋桁1の幅方向の一方の側面である第一側面6側と、橋桁1の幅方向の他方の側面であって第一側面6の反対側の側面である第二側面7側との間に、第一ロープRP1を、橋桁1の底面を通して架ける。ここでは、
図14に示すように、橋面の第一側面6(
図14において右側)に位置する第一高欄4Aと、第二側面7(
図14において左側)に位置する第二高欄4Bに、第一ロープRP1の両端を架ける例を考える。はじめに、第一側面6側に第一作業者OP1を、第二側面7側に第二作業者OP2を、それぞれ配置する。また橋面の第一側面6側に、第三作業者OP3を配置する。この状態で、第三作業者OP3が第一高欄4Aに第一ロープRP1を接続する。
(ロープ取付材4C)
【0053】
第一ロープRP1は、第一高欄4Aに直接接続することもできるが、ロープを取り付けるための別部材として、ロープ取付材4Cを用意することもできる。例えば
図15や
図16に示すように、第一ロープ取付材4C1を、必要に応じて一又は複数の角材などの適当な台の上に載せた状態で第一高欄4Aにセットし、この第一ロープ取付材4C1に第一ロープRP1を固定する。この方法であれば、第一ロープRP1を第一高欄4Aに直接取り付ける方法に比べ、第一高欄4Aを不用意に傷付けたり、歪みや曲がりが生じる事態を回避できる。なお、第一ロープ取付材4C1の断面視における高さは、高欄の横桟の高さと一致させる必要はなく、適宜調整できる。
【0054】
第一ロープ取付材4C1は、金属製のパイプや木製、あるいは樹脂製の棒材、角材などが利用できる。第一ロープ取付材4C1を第一高欄4Aの内側に配置することで、第一高欄4Aの外側に第一ロープRP1を垂らすように配置する。必要に応じて第一ロープ取付材4C1を、下面から角材などで指示したり、紐で第一高欄4Aに締結するなどして、第一高欄4Aの縦框の内側に固定する。この第一ロープ取付材4C1に、第一ロープRP1の一端を締結する等して固定する。
【0055】
また、第一ロープRP1の他端は、後述する手順で第二側面7側に渡した後、第三作業者OP3が第二高欄4Bに取り付けた第二ロープ取付材4C2に連結する。第二ロープ取付材4C2は、第一ロープ取付管と同様に構成することができる。
【0056】
なお、第一作業者OP1が橋面側で第一ロープRP1の一端を固定した後、橋台2の上面に移動して第二作業者OP2との間で第一ロープRP1の他端の受け渡し作業を行うこともできる。また第二作業者OP2が第一ロープRP1の他端を受け取った状態で、自身で第一ロープRP1の他端を保持したまま橋面側に移動したり、あるいは第一作業者OP1が橋面に上がって第二側面7側に移動して第二作業者OP2から第一ロープRP1の他端を受け取り、これを第二ロープ取付材4C2に連結することもできる。この場合は、第三作業者を省略することができる。
【0057】
このようにして、第一ロープRP1の一端を橋面の第一側面6側に固定した状態で、第一ロープRP1の他端を橋面から橋台2の上面側に垂らして、橋台2の上面の第一側面6側に位置する第一作業者OP1がこれを受け取る。そして、第一作業者OP1はこの第一ロープRP1の他端を、橋台2の上面の第二側面7側に位置する第二作業者OP2との間で、受け渡し作業を行う。
【0058】
上述の通り、橋台2の上面には2名の作業者として、第一作業者OP1を第一側面6側に、第二作業者OP2を第二側面77側に、それぞれ配置している。一般に橋台2の上面には、
図3に示すように支承部5を介して橋桁1が載置されているため、橋桁1が妨げとなって作業者が橋台2の上面を自由に移動することができない。そこで、橋台2の上面であって、橋桁1の両側側面に生じる空間に、第一作業者OP1、第二作業者OP2をそれぞれ配置する。
(昇降梯子30の設置作業)
【0059】
作業者が橋台の上面に移動するには、予め橋梁構造物に常設された梯子や階段などが存在する場合はこれを利用する。このような昇降手段が常設されていない場合は、
図15に示すように昇降梯子30を架ける。昇降梯子30は、橋面から橋台2の上面まで到達できる十分な長さを備えたものを使用する。これにより、橋台の上面に下りるための昇降手段が常設されていない橋梁構造物であっても、安全に作業者が橋台上面にアクセスすることができる。
【0060】
そして、第一ロープRP1の他端を、第一作業者OP1から第二作業者OP2側に移動させる。ここでは、第二作業者OP2が、棒RRを使って第一作業者OP1から第一ロープRP1を受け取る。まず、第二作業者OP2は
図17に示すように、細長く延長された棒RRの先端側を、第一作業者OP1に向かって伸ばしていく。一方、第二作業者OP2は、棒RRの先端側を受けて、この棒RRに第一ロープRP1を接続する。その後、第一作業者OP1は、棒RRを再度引き寄せて、この棒RRの先端側に接続された第一ロープRP1を受ける。これにより、橋桁に阻まれて作業者が自由に移動できない橋台や橋脚の上面で第一ロープRP1を受け渡す作業を安全に行うことができる。
(棒RR)
【0061】
ここで棒RRは、
図18に示すように伸縮式とすることが好ましい。棒RRの先端側には、ワイヤを接続するためのワイヤ接続部WFを設けている。これにより、簡単な構成でワイヤを接続して、ワイヤをたぐり寄せることが可能となる。一方で棒RRは、作業者が扱い易いよう、軽量であることが望ましい。
【0062】
伸縮式の棒RRには、ロッド式に伸縮可能な棒材が利用できる。例えば釣り竿のような、軽量で可撓性に優れた材質が好適に利用できる。伸縮可能な長さは、橋桁1の幅に応じて設定され、数m程度に延長できるものが好ましい。例えば50cm〜5m程度に長さを可変自在とする。また棒RRの伸縮動作は、手動式としても電動式としてもよい。このような伸縮式の棒RRを用いたことで、橋台の上面で徐々に伸ばしながら送り出すように使用できる。また非使用時には収縮して嵩張らず、携行性にも優れる。
(ワイヤ接続部WF)
【0063】
ワイヤ接続部WFは、ワイヤを接続可能な構成が適宜利用できる。例えば、鉤爪状やL字状に折曲させて、ワイヤを係止可能としたフックや、一部を開閉可能とした環状のリングや環等を、ワイヤ接続部WFとして利用できる。またワイヤ接続部WFは、棒RRの先端縁に固定することが好ましいが、必ずしも先端でなくとも、例えば先端から少し話した位置に固定してもよい。
(領域RN)
【0064】
第一作業者OP1は、棒RRを第二作業者OP2側に渡すための領域として、橋台2の上面であって、支承部5の側面側を利用できる。
図19の平面図に示すように、一般に支承部5は、橋台2の上面の端縁に配置されるのでなく、端縁から距離d離して配置されることが多い。そこで、この空間、すなわち橋台2の上面の内で、支承部5を配置した部分と橋台2の端縁との間の領域RNを、棒RRを置く領域として利用する。第二作業者OP2は、
図17の断面図に示すように、橋桁1と橋台2の隙間であって、かつ
図19の平面図に示すように、支承部5と橋台2の端縁との間の領域RNに、棒RRを通して、先端を第一作業者OP1に向かって送り出す。例えば第二作業者OP2が、棒RRを手元で徐々に伸ばしながら、第一作業者OP1のいる第一側面6側に棒RRを繰り出していく。
【0065】
特に、第二作業者OP2は、橋桁1に遮られて第一側面6側を見通すことことができず、視界が悪い中で第一作業者OP1に棒RRを送り出さねばならない。そこで、支承部5と橋台2の端縁との間の領域RNを利用して、この上に棒RRを置いて送り出すようにしたことで、第二作業者OP2の作業の負荷を軽減して、簡単に行えるようにできる。また棒RRの先端を受け取る第一作業者OP1にとっても、姿を視認し難い第二作業者OP2から送り出される棒RRの先端が届けられる部位を予め把握することができる。このようにして、狭い作業空間においても、互いに安全かつ確実に作業を行うことができる。
(リードロープLR)
【0066】
第二作業者OP2から送り出された棒RRの先端を、第一作業者OP1が受け取ると、第一作業者OP1はこの棒RRに第一ロープRP1を接続する。ここで、直接第一ロープRP1を接続することもできるが、好ましくは、第一ロープRP1よりも軽量のリードロープLRを介在させる。すなわちリードロープLRの一端を第一ロープRP1に接続して、リードロープLRの他端を、棒RRの先端に取り付ける。そして第二作業者OP2が、
図20に示すように棒RRを手元に引き寄せて、橋桁1の下面にリードロープLRを通した上で、第二側面7側でリードロープLRを引き出し、棒RRの先端からリードロープLRを外して、このリードロープLRの他端側を受け取る。ここでリードロープLRの長さは、橋桁1の横幅よりも長くする。すなわち、橋桁1の下面にリードロープLRを通した状態では、未だ第一ロープRP1が引かれていない状態とする。これによって、第二作業者OP2が棒RRを引き寄せる際は、第一ロープRP1の重量が印加されず、軽いリードロープLRと棒RRの重さのみに抑えることができ、作業性に優れる。
【0067】
またリードロープLRは、予め第一ロープRP1の先端に接続しておくことが好ましい。例えば第一ロープRP1を垂らす前に、橋桁1の上面である橋面側でリードロープLRの接続作業を行っておく。これであれば、広い安全な場所で作業できるので、作業の効率化が図られる。
【0068】
このようにして、橋桁1の下面にリードロープLRを通した状態で、第二作業者OP2がリードロープLRを手で引いて、リードロープLRの一端側に接続された第一ロープRP1を第二側面7側に引き寄せる。この際、第一ロープRP1は、リードロープLRと同様、支承部5と橋台2の端縁との間の領域RNに載せた状態で引っ張ってもよいが、必ずしも橋台の上面に載せた状態に維持する必要はなく、
図21に示すように、橋台2の側面側に出した状態で、引っ張ってもよい。既に第二作業者OP2がリードロープLRを棒RRから外して直接把持しているため、手に力を込め易い姿勢でリードロープLRを引っ張ることが可能となり、第一ロープRP1を橋台2等に載せて支える必要は、必ずしもない。
【0069】
この方法であれば、重量のある第一ロープRP1を直接棒の先端側に取り付けて棒を引っ張るよりも、軽い力で第二作業者OP2はリードロープLRを引き寄せることができる。そして棒RRの先端からリードロープLRをたぐり寄せた後、リードロープLRを直接引っ張って第一ロープRP1を手元に引き寄せることができる。また、重量のある第一ロープRP1を引くのに、動きが制約される棒でなく、自由度の高いリードロープLRを持って作業できるので、第二作業者OP2は力を入れやすくなり、また棒を使用しない分、動き易くなるので、作業性は格段に向上される。このように、重い第一ロープRP1を直接やりとりするのでなく、より軽いリードロープLRの授受を介在させることで、作業をよりスムーズにかつ安全に行える利点が得られる。すなわち軽量なリードロープLRを介することで、棒RRで引き寄せる際には軽い力でも物理的に送り側から受け側にリードロープLRの受け渡し作業を行うことができ、さらにリードロープLRを受け側で取得した後は、力を要する作業を手元のリードロープLRに対して行い易くできる。この結果、安全性の向上と作業性の効率化が図られ、より短時間で作業を進められるようにしたことで、人件費などの削減にも寄与し得る。
【0070】
以上の例では、第二作業者OP2が棒RRを使って第一ロープRP1をたぐり寄せる方法を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば第一作業者側が棒を使って、第一ロープRP1を第二作業者に送ってもよい。例えば第一作業者が棒の先端側にリードロープLRを連結し、この棒の先端側を第二作業者側に向けて送り出す。第二作業者は、棒の先端を受けて、リードロープLRを棒の先端から外し、同様にリードロープLRを引っ張って第一ロープを受けることができる。
【0071】
さらに、以上の例では伸縮式の棒RRを使用したが、必ずしも伸縮式であることを要せず、長さが固定の棒材を用いてもよい。この場合は、第二作業者OP2が棒を橋台の上面に置いて、徐々に送り出すか、あるいは
図22に示すように第二作業者OP2が棒FRを橋桁の側面側で、棒FRの先端を橋台の側面から、あるいは橋台の下方から、第一作業者に向かって振り回すようにして送る。第一作業者は手で棒FRの先端側を受け取ると、後は同様にしてリードロープLRを棒FRの先端側に連結して第二作業者OP2側に送り出すことができる。棒FRは支えがなくとも十分に振り回せるよう、軽量であることが望ましい。この方法であれば、棒を伸縮式とせずとも、ワイヤの受け渡しに利用できる。ただ、棒の非使用時には嵩張るため、例えば橋面に棒を置く等の工程が必要となる。
【0072】
あるいはまた、棒の先端側にリードロープLRを接続する作業を、第一作業者に行わせる他、第二作業者が行うようにしてもよい。例えば
図22に示すように、第一側面6側でリードロープLRを鉛直下方に垂らした状態とし、第二作業者OP2が第二側面7側からでも、リードロープLRの位置を視認できるようにする。この状態で、第二作業者OP2が棒FRの先端を操作して、棒FRの先端のワイヤ接続部であるフックをリードロープLRに引っ掛ける。そして引っ掛けた後は、棒FRを操作してリードロープLRを手元にたぐり寄せる。リードロープLRを第二作業者OP2側で受けた後は、同様にしてリードロープLRを引っ張り、第一ロープRP1を引き寄せることが可能となる。この方法であれば、第一作業者を不要にできる。
【0073】
あるいはまた、棒等の器具を用いることなく、直接第一作業者OP1から反対側に位置する第二作業者OP2側に向かって第一ロープRP1を受け渡すこともできる。例えば、第一作業者OP1が第一ロープRP1を手で操作して、反対側に位置する第二作業者OP2側に向かって投げる。ここでは、ターザンロープの要領で、第一ロープRP1の先端を振り子状に揺らす。例えば第一ロープRP1の先端を、橋台2の側面で垂らした状態から、第一作業者OP1は第一ロープRP1の中間を握って引っ張るなどして、第二作業者OP2のいる第二側面7側に向かって振り子式に大きく揺らす。これにより、第一ロープRP1の先端は、先端に固定したフックの重量などにより放物線を描いて第一側面6側から第二側面7側に大きく振れるので、第一ロープRP1の中間部分が橋桁1の右側面から橋桁1の底面に当たって、さらに左側面を上昇しようとする。この結果、第二作業者OP2のいる第二側面7側まで第一ロープRP1が届くので、第二作業者OP2はこれを受け止め易くなる。あるいは、第一作業者が第一ロープの先端を、直接、第二作業者に向かって投げて渡してもよい。例えば第一作業者が、第一ロープRP1を下手投げの要領で第二作業者に向かって投げる。
【0074】
このようにして第一ロープRP1を、第一側面6側から橋桁1の下面を通して第二側面7側に渡した状態で保持する。ここでは
図23に示すように、橋桁1の上面すなわち橋面側にいる第三作業者OP3が第二側面7側に移動し、第二作業者OP2から、第一ロープRP1の他端側の先端を受け取る。第三作業者OP3は必要に応じて、第一ロープRP1の先端を第二高欄4Bに係止する等して、不意に落下させないように保持する。
【0075】
なお、この第一ロープRP1の他端を第二高欄4Bに連結する作業は、第二作業者OP2が行ってもよい。例えば第二作業者OP2が第一ロープRP1の先端を持ったまま橋台の上面から橋面に移動して、自身でこの第一ロープRP1の先端を第二高欄4Bや第二ロープ取付管に連結する。あるいは、第四作業者を予め橋面の第二側面側に配置して、第四作業者が第一ロープの先端を第二作業者から受け取って、これを第二側面側に保持する作業を行ってもよい。
【0076】
このようにして、
図14に示すように第一ロープRP1を第一側面6と第二側面7の間に、橋桁1の底面を通して架けることができる。この方法であれば、特別な設備を用意することなく、比較的容易にかつ安全に、第一ロープRP1を橋梁構造物の底面側を回して第一側面6と第二側面7との間に架けることが可能となる。
【0077】
一般に、橋台の根元への移動と異なり、作業者の橋台の上面への移動については、
図15に示すように橋面と橋台上面との間に梯子30をかけたり、あるいは常設された階段や梯子などを利用するなどして、比較的安全に行える。一方、橋台の上面でなく、根元側への移動は、橋梁構造物の設置場所によっては相当な高度差があったり、危険を伴うことがある。これに対して、本実施形態に係る吊足場の架設方法では、安全かつ簡単に移動可能な橋台の上面への移動のみで、架設作業を完了できる利点が得られる。
【0078】
またこの方法であれば、数名の作業者(ここでは2名)で殆どの作業を終えることができる。すなわち、少人数でも安全に、吊足場の架設作業を行うことができ、省力化、低コスト化に寄与し、ひいては橋梁の点検整備の充実や長寿命化、安全確保に貢献できる。
(第二ロープRP2の設置作業)
【0079】
以上のようにして、第一ロープRP1を、橋桁1の下面を通して第一側面6と第二側面7との間に渡すことができる。また、第一ロープRP1とは別に第二ロープRP2を、橋桁1の下面を通して第一側面6と第二側面7との間に渡すこともできる。特に、第一ロープRP1は横移動用梯子100の吊下ろしや、作業に必要な工具や材料の送り出し等に利用する一方で、第二ロープRP2を第一作業者OP1の移動時の命綱等のガードロープに利用することで、橋台の上面にいる第一作業者OP1の安全性を高めることができる。
【0080】
第二ロープRP2は、上述した第一ロープRP1と同様の方法で架けることができる。この場合、第一ロープRP1の次に第二ロープRP2を架ける他、第二ロープRP2を先に架けた後に第一ロープRP1を架けてもよく、また第一ロープRP1と第二ロープRP2を同時に架けるように作業を進めてもよい。好ましくは、先に何れかのロープを架けた後、他方のロープをこれに沿って架けるようにすることで、ロープを渡す作業を省力化できる。例えば、第一側面6側で先に架けた一方のロープにナスカンのような鐶をかけ、鐶に他方のロープを繋いで、第二側面7側に送り出す。第二側面7側から、上述した棒などを用いて先端に鐶をかけて引き寄せることで、スムーズな送り出しが可能となる。
【0081】
第二ロープRP2は、
図24、
図25に示すように、橋桁1の下面を通して第一側面6と第二側面7との間に渡した状態で、緊結し、ぴんと貼った状態とする。これにより、命綱を第二ロープRP2に架けやすくなる。一方、第一ロープRP1は弛緩した状態で第一側面6と第二側面7との間を渡している。
(緩衝材20)
【0082】
なお、第二ロープRP2を橋桁1の底面に這わせて緊結する際、第一ロープRP1が橋桁の下面と側面の隅部に接触する。この状態で作業中に第一ロープRP1が橋桁と間でずれると、第一ロープRP1が摩耗したり損傷を受けることが考えられる。そこで、
図24に示すように、橋桁1の隅部に、緩衝材20を配置してもよい。これによって、第一ロープRP1が直接橋桁1と触れることを避け、摩耗を低減することが可能となる。図の例では緩衝材20は、橋桁1の下端隅部を覆うように断面視L字状に形成された板状としている。ただ、緩衝材20の形状はこれに限らず、例えばH鋼状の隅部を挟み込むような断面視C字状やU字状としたり、あるいは第一ロープRP1をガイドする滑車状としてもよい。また緩衝材20は、潤滑性に優れた材質、例えばテフロンやフッ素樹脂等が挙げられる。
(アンカー)
【0083】
また、橋台2の上面にアンカーを固定することもできる。アンカーは横移動用梯子100を橋台2に固定する際に利用する。あるいは、第一ロープRP1を張設する部位としても利用できる。アンカーの固定は、作業者が橋台2の上面に、アンカーを打ち込むための穴を削孔する等して行う。このように現場で作業者が直接穴を削孔することで、所望の位置にアンカーを確実に固定することが可能となる。例えばアンカーボルトのボルト頭やねじ穴に、ワイヤやチェーンを巻き付けたりフックを係止するなどして、横移動用梯子100や第一ロープRP1を固定、あるいは連結する。
【0084】
図26及び
図27に示す例では、橋台2の上面において第一側面6側に、第一作業者OP1が、第一アンカー41を打ち込む。この第一アンカー41を用いて、横移動用梯子100を固定する。また必要に応じて第二側面7側に、第二作業者OP2が、第四アンカーを打ち込んでもよい。
【0085】
第一アンカー41を固定する作業は、横移動用梯子100を吊り下げる前であれば任意のタイミングで行うことができる。例えば第一ロープRP1の受け渡し作業の前、あるいは第二ロープRP2の受け渡し作業の前に行ってもよい。好ましくは、第二ロープRP2の受け渡し作業の後に行う。これにより、第一作業者OP1が固定作業を行う際には第二ロープRP2をガードロープと利用でき、安全性の向上を図ることが可能となる。
(横移動用梯子100を懸吊する工程)
【0086】
以上のようにして、第一ロープRP1と第二ロープRP2を、橋桁1の下面を通して第一側面6と第二側面7との間に渡した状態で、横移動用梯子100を橋面から吊り下げて橋台2の上面に移動させる。まず、上述した
図5等に示す横移動用梯子100を準備し、橋面の第一側面6側に位置させる。横移動用梯子100の上部には、予め吊り下げロープHRを連結しておく。例えば上横桟131に吊り下げロープHRの一端を締結する。
(吊り下げロープHR)
【0087】
この状態で、
図28に示すように、橋面の第一側面6側に位置する第三作業者OP3が、吊り下げロープHRの他端を持って、横移動用梯子100を吊り下げ、ゆっくりと下ろす。一方で、橋台2の上面の第一側面6側に位置する第一作業者OP1は、上方から降下される横移動用梯子100が、橋面から橋台2の上面を通って側面側に位置するように、横移動用梯子100を受け止める。この際、第一作業者OP1は第二ロープRP2に命綱を繋いでおき、作業の安全性を図る。
【0088】
なお吊り下げロープHRは1本に限らず、複数本用意してもよい。例えば吊り下げロープHRを2本、横移動用梯子100の上部の左右に、それぞれ連結して、複数の吊り下げロープHRの送り出し量を調整しながら、横移動用梯子100を橋台2の上面に下ろすようにしてもよい。これにより、横移動用梯子100の左右を吊り下げロープHRでそれぞれ吊り下げて、横移動用梯子100の傾き姿勢を調整し易くできる。
【0089】
また横移動用梯子100を、第一ロープRP1と連結する。ここでは第一作業者OP1が、上方から下ろされた横移動用梯子100を、第一ロープRP1に連結する。例えばナスカン等の鐶を用いて上横桟131と第一ロープRP1を接続する。これによって、続く作業である第一ロープRP1に沿って横移動用梯子100を橋台2の第一ロープRP1から橋桁1の下面に向かって移動させる作業を行い易くなる。
【0090】
なお、横移動用梯子100に第一ロープRP1を連結する作業は、第三作業者OP3が行うこともできる。例えば予め横移動用梯子100に第一ロープRP1を連結した状態で、吊り下げロープHRで吊り下げて橋台2の上面側に移動させてもよい。
(横移動用梯子100を横方向に移動させる工程)
【0091】
このようにして、横移動用梯子100を橋面から橋台2の上面に移動させると、第一作業者OP1は、第一ロープRP1に沿って横移動用梯子100を橋桁1の下面に移動させる。すなわち、第三作業者OP3が上から下に移動させた横移動用梯子100を、第一作業者OP1は第一側面6側から橋桁1の下方側の横方向に向かって移動させる。
【0092】
第一作業者OP1は、橋台2の上面で吊り下げロープHRを持って横移動用梯子100を橋台2上面から下方に吊り下げつつ、第一ロープRP1を使用して橋台2の側面から中央方向に移動させる。このとき、横移動用梯子100は、その係止部140が、桁同士の間と平行な橋台2の側面と面する姿勢となるようにしておく。この状態で横移動用梯子100を横方向に移動させる際、
図28に示すように、横移動用梯子100の左側の主脚110が桁の下面である下フランジ1Uと干渉しないよう、横移動用梯子100をさらに降下させる。上述の通り、第一ロープRP1は第二ロープRP2と異なり、第一高欄4Aから第二高欄4Bに緩やかに張っているため、横移動用梯子100の自重で下方に垂れることができ、左側の主脚110を下フランジ1Uの下方に潜らせて、横移動用梯子100を更に左方向に移動させることができる。このようにして、左側の主脚110が下フランジ1Uを越えた姿勢で、主脚110同士の間の中間部に下フランジ1Uを位置させる。すなわち、下フランジ1Uの左右両側に主脚110が位置するようにして、
図29に示すように、横移動用梯子100の係止部140を、橋台2の上面に係止して固定する。係止部140は、
図30に示すように縦桟120の上部側の背面から略垂直に突出しているので、係止部140を橋台2の上面に載置することで、横移動用梯子100が保持される。また横移動用梯子100の背面からはスペーサ150が突出しており、スペーサ150が橋台2の側面に当接して、縦桟120が橋台2側面に沿って鉛直姿勢となるように安定的に保持されと共に、横移動用梯子100と橋台2側面との間に空間が形成されて、作業者が横桟130に足をかける際のストロークが確保される。
【0093】
この状態で、必要に応じて第一アンカー41に横移動用梯子100を固定する。例えば
図30に示すように、打ち込んだ第一アンカー41のねじ頭に、横移動用梯子100の上横桟131を緊結する。これによって、横移動用梯子100が不意に外れる事態を回避できる。
(桁間部に移動する工程)
【0094】
この状態で、第一作業者OP1は、橋台2の上面の第一側面6側から、横移動用梯子100を使って、桁同士の間である桁間部に移動する。ここでは、
図31に示すように、第一作業者OP1が、横移動用梯子100の主脚110の内、桁の外側に位置する主脚110側(
図29において右側)から、横桟130に足をかけて、この横移動用梯子100を下りる。そして第一作業者OP1は、横移動用梯子100の最下段の下横桟133まで降りた状態で、あるいは第一作業者OP1の頭が下フランジ1Uよりも低い位置まで移動した状態で、足をかけている横移動用梯子100の横桟130に沿って、横方向に移動する。そして、橋桁1を避けて下フランジ1Uの下方を通過して、桁の内側に位置する主脚110側(
図29において左側)まで移動すると、この主脚110に沿って横移動用梯子100を登り、横移動用梯子100を降りて桁間部まで移動する。
【0095】
このようにして、通常であれば桁に阻まれて橋台2の上面から作業者が桁同士の間に移動できないところ、横移動用梯子100を使って桁の下側に一旦下りて、桁のない橋台2の側面を横方向に移動して桁同士の間の下方まで進んだ上で、横移動用梯子100を登ることで、桁を避けて桁同士の内側に入ることが可能となる。
(保守作業を行う工程)
【0096】
そして桁間部に移動した第一作業者OP1は、この部位の保守作業を行う。例えば、桁間部に溜まった土砂を除いて洗浄する除土作業を行う。これにより、アクセス困難であった桁同士の間に作業者を安全に移動させて、直接除土作業を行えるため、従来困難であった堆積土砂による橋桁の腐食の問題を低減、解消して橋梁構造物の保全が可能となる。この結果、足場の架設や高所作業車などを要することなく、簡単な方法で桁間部へのアクセスを可能とし、橋梁の保守作業のコストや期間を削減し、もって橋梁の保守を促進して橋梁の長寿命化や維持コストの削減を図り、限られたリソースでの社会基盤の維持管理に資することができる。
(第二アンカー42)
【0097】
また、横移動用梯子100をより安定的に固定するために、第二アンカー42を桁間部の橋台2上面に設けることができる。例えば
図32に示すように、第一作業者OP1が桁同士の間に移動した後、桁同士の間の橋台2の上面の内、第一側面6側に、第二アンカー42を固定する。第二アンカー42は第一アンカー41と同様、橋台2上面に穿孔して固定される。そして横移動用梯子100を、第二アンカー42に固定する。また第二アンカー42に横移動用梯子100を固定する方法も、第一アンカー41と同様、アンカーのねじ頭やホール等を利用してワイヤを締結、緊結する等の方法が利用できる。これにより、桁の下面である下フランジ1Uの外側に固定した第一アンカー41に加えて、桁間部に固定した第二アンカー42も利用することで、桁を挟んで左右で横移動用梯子100を固定して、さらに横移動用梯子100を安定的に保持できる。
(第三アンカー43)
【0098】
加えて、桁間部に第一ロープRP1を保持するための第三アンカー43を設けることもできる。
図32に示す例では、桁間部に移動した第一作業者OP1が、橋台2の上面の内、第二側面7側に第三アンカー43を固定する。そして第一ロープRP1を第三アンカー43に連結する。このようにすることで、第一ロープRP1に沿って橋面側の第三作業者OP3から、作業に必要な器具、材料等を作業袋に入れて、桁間部にいる第一作業者OP1に対して送出し易くできる。また必要に応じて、橋台2の上面であって橋桁1の外側に第四アンカー44を設けてもよい。
【0099】
なお、これらのアンカーは、橋梁構造物の建設時に予め設けておくこともできる。
【解決手段】吊り下げロープHRの一端を横移動用梯子100の上部に連結して、橋面の第一側面6側から、橋台2の第一側面6側に下ろす工程と、第一作業者OP1が、横移動用梯子100を、第一ロープRP1に連結した状態で移動させ、橋台2の側面において、係止部140が桁の下面と対向する姿勢で、桁の下面の両側に主脚110が位置する姿勢にて、横移動用梯子100の係止部140を、橋台2の上面にかけて固定する工程と、第一作業者OP1が、固定された横移動用梯子100の、桁の外側に位置する主脚110側から、該横移動用梯子100を下りて、かつ橋台2の側面において、桁の内側に位置する主脚110側に、該横移動用梯子100上を横方向に移動し、桁の内側に位置する主脚110に沿って該横移動用梯子100を登り、桁同士の間に移動する工程とを含む。