【文献】
Robert Mabry et al.,Protein Engineering, Design & Selection,2010年,vol.23, no.3,115-127
【文献】
Christoph Spiess et al.,Molecular Immunology,2015年,67,95-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各HCのアミノ酸配列が、配列番号4であり、各LCのアミノ酸配列が、配列番号3であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列が、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列が、配列番号8であり、L1のアミノ酸配列が、配列番号23であり、L2のアミノ酸配列が、配列番号24である、請求項1または2に記載の二重特異性抗体。
各HCのアミノ酸配列が、配列番号4であり、各LCのアミノ酸配列が、配列番号3であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列が、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列が、配列番号9であり、L1のアミノ酸配列が、配列番号23であり、L2のアミノ酸配列が、配列番号24である、請求項1または3に記載の二重特異性抗体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
より具体的には、本発明は、IgG及び2つのscFvを含む二重特異性抗体であって、
(a)該IgGが、2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)を含み、各HCが、重鎖CDR(HCDR)1〜3を含む重鎖可変領域(HCVR1)を含み、各軽鎖が、軽鎖CDR(LCDR)1〜3を含む軽鎖可変領域(LCVR1)を含み、HCDR1のアミノ酸配列が、配列番号10であり、HCDR2のアミノ酸配列が、配列番号11であり、HCDR3のアミノ酸配列が、配列番号12であり、LCDR1のアミノ酸配列が、配列番号16であり、LCDR2のアミノ酸配列が、配列番号17であり、LCDR3のアミノ酸配列が、配列番号18であり、
(b)各scFvが、重鎖可変領域(HCVR2)及び軽鎖可変領域(LCVR2)を含み、HCVR2が、HCDR4〜6を含み、LCVR2が、LCDR4〜6を含み、HCDR4のアミノ酸配列が、配列番号13であり、HCDR5のアミノ酸配列が、配列番号14であり、HCDR6のアミノ酸配列が、配列番号15であり、LCDR4のアミノ酸配列が、配列番号19であり、LCDR5のアミノ酸配列が、配列番号20であり、LCDR6のアミノ酸配列が、配列番号21または配列番号22であり、
各scFvが各scFvのHCVR2のN末端で、ポリペプチドリンカー(L1)を介して、該IgG抗体に各IgG HCのC末端で連結され、
各scFvのHCVR2が、HCVR2のC末端で、第2のポリペプチドリンカー(L2)を介して、同一のscFvのLCVR2に同一のscFvのLCVR2のN末端で連結される、二重特異性抗体を提供する。
【0012】
本発明の二重特異性抗体は、CGRP及びIL−23のp19サブユニットに結合する。
【0013】
好ましくは、LCDR6のアミノ酸配列は、配列番号21である。
【0014】
更に好ましくは、LCDR6のアミノ酸配列は、配列番号22である。
【0015】
本発明の二重特異性抗体の更なる一実施形態において、各HCのHCVR1のアミノ酸配列は、配列番号5であり、各LCのLCVR1のアミノ酸配列は、配列番号7であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列は、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号8または配列番号9である。
【0016】
好ましくは、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号8である。
【0017】
更に好ましくは、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号9である。
【0018】
本発明の二重特異性抗体の依然更なる一実施形態において、各HCのアミノ酸配列は、配列番号4であり、各LCのアミノ酸配列は、配列番号3であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列は、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号8または配列番号9である。
【0019】
好ましくは、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号8である。
【0020】
更に好ましくは、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号9である。
【0021】
本発明の上記の実施形態の好ましい一態様において、L1のアミノ酸配列は、配列番号23であり、L2のアミノ酸配列は、配列番号24である。
【0022】
本発明の二重特異性抗体の好ましい一実施形態において、各HCのアミノ酸配列は、配列番号4であり、各LCのアミノ酸配列は、配列番号3であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列は、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号8であり、L1のアミノ酸配列は、配列番号23であり、L2のアミノ酸配列は、配列番号24である。
【0023】
本発明の二重特異性抗体の更に好ましい一実施形態において、各HCのアミノ酸配列は、配列番号4であり、各LCのアミノ酸配列は、配列番号3であり、各scFvのHCVR2のアミノ酸配列は、配列番号6であり、各scFvのLCVR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、L1のアミノ酸配列は、配列番号23であり、L2のアミノ酸配列は、配列番号24である。
【0024】
本発明の二重特異性抗体の構築時、化学的及び物理的安定性に関連付けられる重要な問題に対処した。標的化される両方の抗原(CGRP及びIL−23のp19サブユニット)に対する結合親和性を維持しながら、物理的安定性分子の発現、一本鎖断片可変領域(scFv)のVH/VL界面の安定化、熱及び塩依存性安定性の増加、凝集の低下、高濃度での溶解性の増加、ならびに/または二重特異性抗体の結合表面における静電分布の再平衡化などの、二重特異性抗体に関連付けられ得る無数の問題を全て十分に克服するために、出発二重特異性抗体における多くの変更が必要とされた。
【0025】
本発明の二重特異性抗体は、熱安定性かつ物理的安定性である。更に、本発明の二重特異性抗体はまた、低凝集も呈し得る。更に、本発明の二重特異性抗体はまた、ヒトCGRP及びヒトIL23p19(IL−23のp19サブユニット)も中和するだけでなく、両方のリガンドに同時に結合もし得る。現在主張される抗体はまた、2つの異なる別個の抗体の異なる分子的特徴を満たさなくてはならない製剤条件を見出す課題も回避し得る。
【0026】
本発明の第1の二重特異性抗体のIgG部分は、2つの同一の重鎖(IgG HC)(配列番号4)を含む。
【0027】
各IgG HCはそのC末端で、第1のポリペプチドリンカー(L1)(配列番号23)を介して、IL−23のp19サブユニットに特異的に結合する同一のscFv部分に結合される。
【0028】
各重鎖scFv部分(HCVR2)(配列番号6)はそのC末端で、第2のポリペプチドリンカー(L2)(配列番号24)を介して、scFv軽鎖(LCVR2)(配列番号8)に結合される。
【0029】
IgG
4 HCのN末端残基から開始し、scFv LCのC末端残基で終結する、本発明の第1の二重特異性抗体の各同一の重鎖部分の完全直鎖状アミノ酸配列は、配列番号1に提供される。
【0030】
同様に、可変ドメインのN末端残基から開始し、LCカッパ定常領域のC末端残基で終結する、本発明の第1の二重特異性抗体の各同一のLCの完全アミノ酸配列は、配列番号3に提供される。
【0031】
例証される本発明の第1の二重特異性抗体の様々な領域と、リンカーとの関係は、以下の通りである(アミノ酸の番号付けは、直鎖番号付けを適用し、可変ドメインへのアミノ酸の割り当ては、www.imgt.orgで入手可能なInternational Immunogenetics Information System(登録商標)に基づき、CDRドメインへのアミノ酸の割り当ては、表1(a)〜(c))に反映されているように、周知のKabat(Kabat et al.,Ann.NY Acad.Sci.190:382−93(1971)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991))及びNorth(North et al.,A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations,Journal of Molecular Biology,406:228−256(2011))の番号付け慣習に基づく。
【表1-a】
【表1-b】
【表1-c】
【0032】
例証される本発明の第2の二重特異性抗体、LCDR6は、例証される本発明の第2の二重特異性抗体のLCDR6が以下の配列、QTYWSTPFT(配列番号22)を有するように、配列番号1の684(Q684T)位でスレオニン(T)をグルタミン(Q)に置換する操作された単一アミノ酸変化を組み込む。いかなる追加の変化もなされず、結果として、例証される本発明の第2の二重特異性抗体の全ての残りのアミノ酸配列は、上述の例証される第1の二重特異性抗体のものと同一である。
【0033】
IgG
4 HCのN末端残基から開始し、scFv LCのC末端残基で終結する、配列番号22を有するLCDR6を含む、本発明の第2の二重特異性抗体の各同一の重鎖部分の完全直鎖状アミノ酸配列は、配列番号2に提供される。
【0034】
同様に、LC可変ドメインのN末端残基から開始し、LC定常領域のC末端残基で終結する、本発明の第2の二重特異性抗体の各同一のLCの完全アミノ酸配列は、配列番号3に提供される。
【0035】
本発明は、HCのそれぞれがLCのそれぞれと鎖間ジスルフィド結合を形成し、HCのそれぞれが他のHCと鎖間ジスルフィド結合を形成し、scFvのそれぞれがHCVR2とLCVR2との間に鎖間ジスルフィド結合を形成する、二重特異性抗体を更に提供する。表1(a)及び(b)に提示される、例証される本発明の二重特異性抗体に従うと、HCのそれぞれ及びLCのそれぞれの鎖間ジスルフィド結合が、HCのシステイン残基133(配列番号1及び配列番号2のもの)とLCのシステイン残基214(配列番号3のもの)との間に形成され、少なくとも2つの鎖間ジスルフィド結合が、2つのHC間に形成され、第1の鎖間ジスルフィド結合が、HCのシステイン残基225(配列番号1または配列番号2のもの)と他方のHCのシステイン残基225(配列番号1または配列番号2のもの)との間に形成され、第2の鎖間ジスルフィド結合が、HCのシステイン残基228(配列番号1または配列番号2のもの)と他方のHCのシステイン残基228(配列番号1または配列番号2のもの)との間に形成され、scFvの鎖内ジスルフィド結合が、HCVR2のシステイン残基503(配列番号1または配列番号2のもの)とLCVR2のシステイン残基694(配列番号1または配列番号2のもの)との間に形成される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態に従うと、HCのグリコシル化を含む二重特異性抗体が提供される。表1(a)及び(b)に例証される本発明の二重特異性抗体に従うと、HCのグリコシル化は、配列番号1または配列番号2のアスパラギン残基296で生じる。
【0037】
本明細書に提供されるアミノ酸配列を考慮すれば、当業者は、この知識を使用して、本明細書に上述される任意の二重特異性抗体またはその断片をコードし、発現するDNA分子を設計することができる。したがって、本発明は、本発明に従う二重特異性抗体またはその断片をコードする全てのDNA配列を包含する。
【0038】
特に、本発明は、本発明の二重特異性抗体のHC、scFv、第1のポリペプチドリンカーL1、及び第2のポリペプチドリンカーL2を含むポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA分子を提供する。
【0039】
本発明の一実施形態に従うと、コードされたポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0040】
本発明の代替的な一実施形態に従うと、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2である。
【0041】
本発明はまた、配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び配列番号3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供する。
【0042】
本発明はまた、配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び配列番号3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供する。
【0043】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体のHC、scFv、第1のポリペプチドリンカーL1、及び第2のポリペプチドリンカーL2を含むポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA分子を含む組み換え宿主細胞も提供し、ポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号1または配列番号2であり、DNA分子は、本発明の二重特異性抗体のLCを含むポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含み、LCのアミノ酸配列は、配列番号3であり、細胞は、本発明の二重特異性抗体を発現することができ、該二重特異性抗体は、IL23p19に結合する2つのscFvに共役したCGRPに結合するIgGを含む。
【0044】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体のHC、scFv、第1のポリペプチドリンカーL1、及び第2のポリペプチドリンカーL2を含むポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA分子で形質転換された組み換え宿主細胞も提供し、ポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号1または配列番号2であり、DNA分子は、本発明の二重特異性抗体のLCを含むポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含み、LCのアミノ酸配列は、配列番号3であり、該二重特異性抗体は、IL23p19に結合する2つのscFvに共役したCGRPに結合するIgGを含む。
【0045】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体を生成するためのプロセスも提供し、このプロセスは、二重特異性抗体が発現されるような条件下で、本発明の組み換え宿主細胞を培養することと、発現された二重特異性抗体を回収することとを含む。
【0046】
本発明はまた、該プロセスによって生成される、本発明に従う二重特異性抗体も提供する。
【0047】
好ましくは、組み換え宿主細胞は、CHO、NS0、HEK293、及びCOS細胞からなる群から選択される哺乳動物宿主細胞である。
【0048】
本発明はまた、自己免疫疾患の治療を必要とする患者に、有効量の本発明の二重特異性抗体を投与することを含む、自己免疫疾患を治療する方法も提供する。
【0049】
本発明はまた、CD及び/またはUCなどのIBDの治療を必要とする患者に、有効量の本発明の二重特異性抗体を投与することを含む、CD及び/またはUCなどのIBDを治療する方法も提供する。
【0050】
本発明はまた、PsA及び/または強直性脊椎炎の治療を必要とする患者に、有効量の本発明の二重特異性抗体を投与することを含む、PsA及び/または強直性脊椎炎を治療する方法も提供する。
【0051】
本発明はまた、治療における使用のための、本発明の二重特異性抗体も提供する。
【0052】
本発明はまた、CD及び/またはUCなどのIBDを含む自己免疫疾患の治療における使用のための、本発明の二重特異性抗体も提供する。
【0053】
本発明はまた、PsA及び/または強直性脊椎炎を含む自己免疫疾患の治療における使用のための、本発明の二重特異性抗体も提供する。
【0054】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む薬学的組成物も提供する。
【0055】
本発明の別の実施形態は、潰瘍性大腸炎及び/またはクローン病の治療のための薬物の製造における、本発明の二重特異性抗体の使用を含む。
【0056】
本発明の更なる一実施形態は、乾癬性関節炎及び/または強直性脊椎炎の治療のための薬物の製造における、本発明の二重特異性抗体の使用を含む。
【0057】
定義
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、2つの一本鎖可変断片(scFv)に共役した免疫グロブリンG抗体(IgG)を含む分子を指す。本明細書で言及される場合、本発明の二重特異性抗体は、IgG及び2つのscFvを含み、各scFvは、各scFvのHCVR2のN末端で、ポリペプチドリンカー(L1)を介して、該IgG抗体に各IgG HCのC末端で連結され、各scFvのHCVR2は、HCVR2のC末端で、第2のポリペプチドリンカー(L2)を介して、同一のscFvのLCVR2に同一のscFvのLCVR2のN末端で連結される。本発明の二重特異性抗体のIgG及びscFvは、2つの異なる抗原(それぞれ、CGRP及びIL−23のp19サブユニット)に特異的に結合する。注目すべきことに、本発明の二重特異性抗体は、IL−23のp19サブユニットには結合するが、IL−12と共有されるIL−23のp40サブユニットには結合しない。
【0058】
本明細書で言及される場合、「一本鎖可変断片」(scFv)という用語は、ポリペプチドリンカー(L2)を介して接続された重鎖可変領域(HCVR2)及び軽鎖可変領域(LCVR2)を含むポリペプチド鎖を指す。更に、本明細書で言及され(かつ以下の模式図に表され)る場合、各scFvのHCVR2は、a)そのN末端で、ポリペプチドリンカー(L1)を介して、IgGの1つのHCのC末端に連結され、b)L1は、そのC末端で、第2のポリペプチドリンカー(L2)を介して、同一のscFvのLCVR2のN末端に連結される。更に、本発明の各scFvは、(かつ以下の模式図に表される場合)同一のポリペプチド鎖のHCVR2のシステイン残基とLCVR2のシステイン残基との間に形成されたジスルフィド結合を含む。
【化1】
【0059】
本明細書で互換的に使用される「親(parent)抗体」または「親(parental)抗体」は、例えば、アミノ酸置換及び構造変化を通して、二重特異性抗体のIgG及びscFvのうちの1つの調製において使用されるアミノ酸配列によってコードされた抗体である。親抗体は、マウス、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体であり得る。
【0060】
「Kabat番号付け」または「Kabat標識付け」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当該技術分野において認識されているこれらの用語は、ある抗体の重鎖及び軽鎖可変領域内で他のアミノ酸残基よりも可変的である(すなわち、超可変である)アミノ酸残基を番号付けするシステムを指す(Kabat,et al.,Ann.NY Acad.Sci.190:382−93(1971)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991))。
【0061】
「North番号付け」または「North標識付け」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当該技術分野において認識されているこれらの用語は、ある抗体の重鎖及び軽鎖可変領域内で他のアミノ酸残基よりも可変的である(すなわち、超可変である)アミノ酸残基を番号付けするシステムを指し、少なくとも部分的に、(North et al.,A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations,Journal of Molecular Biology,406:228−256(2011)に記載される多数の結晶構造との親和性伝播クラスター化に基づく。
【0062】
「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、動物を指し、好ましくはこの用語は、ヒトを指す。特定の実施形態において、対象、好ましくはヒトは、IL−23及びCGRPの両方の生物活性のレベルの低下またはその低下から恩恵を被る、疾患または障害または病態(例えば、自己免疫障害)を更に特徴とする。別の実施形態において、対象、好ましくはヒトは、IL−23及びCGRPの両方の生物活性のレベルの低下またはその低下から恩恵を被る、障害、疾患、または病態を発症するリスクにあることを更に特徴とする。
【0063】
二重特異性抗体の操作
本発明の二重特異性抗体の構築時、化学的及び物理的安定性に関連付けられる重要な問題に遭遇した。遭遇した問題は、不良な発現から無発現、不良な濾過回収率、低い熱安定性、高い塩依存性凝集、ダイアボディ形成(及び濾過を通してダイアボディを低減する上での課題)、高い溶液粘度、低い結合親和性、ならびに交差反応性を含んだ。
【0064】
例えば、IgG−scFv型式化二重特異性抗体を構築する上での初期の試みは、親IL−23抗体(米国特許第9,023,358号に記載されるIL−23抗体)が二重特異性抗体のIgG抗体部分を含み、親CGRP抗体(例えば、米国特許第9,073,991号を参照されたい)が二重特異性抗体のscFv部分を含む、構築物を含んだ。初期に試みられた他の構築物はscFv部分を含む親IL−23抗体を含んだ一方で、CGRP抗体は二重特異性抗体のIgG部分を含んだ。更に、初期の構築物は、重鎖及び軽鎖の両方の場合、それぞれアミノ末端またはカルボキシル末端を含む様々な配置で、IgG部分に共役したscFv部分を含んだ。更に、初期の構築物は、HCVR2及びLCVR2の配置の異なるscFv部分を含んだ(例えば、IgG部分(CまたはN末端)−リンカー1−LCVR2またはHCVR2−リンカー2−LCVR2またはHCVR2のうちの他方)。更に、親IL−23抗体構築物は、重鎖生殖系列フレームワークVH5−51及び1−69と、軽鎖生殖系列フレームワークVK02、VK12、及びVKB3との組み合わせを含んだ。親CGRP抗体構築物(IgG部分を含む場合)は、定常領域(CH)内に(天然IgG
4に由来する)3つのアミノ酸変異を有するIgG
4サブクラス構造を含んだ。初期構築物は、ヒトIgG4−Fc哺乳動物発現ベクターにクローニングされた。しかしながら、(上述の)初期に生成された二重特異性構築物は、1つ以上の上述の化学的及び/または物理的問題(複数可)を呈した。例えば、scFv部分がN末端に位置する構築物は、scFv部分がC末端に位置する構築物と比較して、複数の安定性の問題を呈する。
【0065】
二重特異性抗体の静電表面を計算し、荷電したパッチを特定し、破壊した。広範なタンパク質安定性研究を実行し、構築された二重特異性抗体を熱安定性特性ならびに(それぞれの親抗体との比較での)CGRP及びIL−23結合特性についてスクリーニングした。
【0066】
したがって、化学的及び物理的改変を行って、本発明の二重特異性抗体の化学的及び物理的安定性を改善した。scFv形式の親IL−23抗体に対する改変を、HCDR4、HCDR5、LCDR4、LCDR5、及びLCDR6において行って、化学的及び物理的安定性を改善した。構築されたHCVR及びLCVRを、以下の式、CGRP IgG(C−末端)−L1−HCVR2−L2−LCVR2に従って、IL−23 scFv形式に組み合わせた。IL−23 scFvを安定化するためのジスルフィド結合を、IL−23 scFvのHCVR2(G503C)とLCVR2(G694C)との間に操作した(アミノ酸の番号付けは、表1(a)及び(b)に提示の例証される二重特異性抗体に基づいて、直鎖状番号付けを適用する)。更に、エフェクター機能の低減をもたらす、Fc受容体媒介炎症機構に結合する能力または補体を活性化する能力の低減のため、二重特異性抗体のIgG部分内の親CGRP抗体をIgG
4サブクラスに操作した。これらの化学的及び物理的改変を含む、操作したIL−23 scFv構築物CGRPIgG構築物を、発現ベクターに挿入した。
【0067】
より具体的には、本発明の二重特異性抗体は、IgG
4−PAA Fc部分を含有する。IgG
4−PAA Fc部分は、227位にセリンからプロリンへの変異(S227P、配列番号1または配列番号2)、233位にフェニルアラニンからアラニンへの変異(F233A、配列番号1または配列番号2)、及び234位にロイシンからアラニンへの変異(L234A、配列番号1)を有する。S227P変異は、半抗体形成(IgG
4抗体内の半分子の動的交換の現象)を防ぐヒンジ変異である。F233A及びL234A変異は、既に低いヒトIgG
4アイソタイプのエフェクター機能を更に低減する。
【0068】
IgG
4サブクラスとしてのCGRP IgGと、6つの異なるCDR変異(米国特許第9,023,358号に記載される親IL−23抗体と比較して、K28P及びT58VでのHCVR2(配列番号6)、ならびにL30G、L54K、E55L、及びM90Q/M90TでのLCVR2(配列番号8または配列番号9))(表1(a)及び(b)に反映される、例証される二重特異性抗体に表される、K487P及びT517VでのHCVR2、ならびにL624G、L648K、E649L、及びM684Q/M684TでのLCVR2、アミノ酸の番号付けは、表1(a)及び(b)に提示される、例証される二重特異性抗体に基づいて、直鎖状番号付けを適用する)とを有するIL−23 scFvを含有する二重特異性抗体を、初期の構築物において実証される発現、(親分子と比較して、IL−23の)親和性、及び熱安定性の問題を改善するものとして特定した。M90T変異(配列番号9、(米国特許第9,023,358号に記載される親IL−23抗体との比較で)は、CGRP及びIL−23p19への結合に悪影響を与えずに分子の光安定性を改善することが見出されている。更に、これらの変異は、カニクイザルにおいてクリアランス率の有意な低減をもたらした。上記の改変のうちのいずれも、親単一抗体の初期の特徴においては特定されなかった。
【0069】
二重特異性抗体の結合及び活性
本発明の二重特異性抗体は、ヒトCGRP及びヒトIL23p19の両方に結合し、インビトロまたはインビボで、少なくとも1つのヒトCGRP生物活性及び少なくとも1つのヒトIL−23生物活性を中和する。本発明の二重特異性抗体は、インビトロで、CGRPの存在及び不在下でIL−23の阻害剤である。本発明の二重特異性抗体は、インビトロで、IL−23の存在及び不在下でCGRPの阻害剤である。
【0070】
例証される本発明の第1の二重特異性抗体(二重特異性抗体1)は、ヒトCGRPに対して26.0±26.0pMの範囲内の、及びヒトIL23p19に対して213.0±184.0pMの37℃での結合親和性(K
D)を有することを特徴とする。
【0071】
例証される本発明の第2の二重特異性抗体(二重特異性抗体2)は、ヒトCGRPに対して約77.0pMの、及びヒトIL23p19に対して215pMの37℃での結合親和性(K
D)を有することを特徴とする。
【0072】
本二重特異性抗体はCGRPを効果的に中和し、この中和は飽和量のヒトIL−23の存在によっては影響されない。本二重特異性抗体はヒトIL−23を効果的に中和し、この中和は飽和量のヒトCGRPの存在によっては影響されない。
【0073】
二重特異性抗体の発現
それらが作動可能に連結している遺伝子の発現を指向することができる発現ベクターは、当該技術分野において周知である。発現ベクターは、宿主細胞からのポリペプチド(複数可)の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドであり得る。(HC、scFv、L1、及びL2を含む)第1のポリペプチド鎖ならびに(LCを含む)第2のポリペプチド鎖は、それらが1つのベクター内で作動可能に連結している異なるプロモーターから独立して発現されても、またはあるいは、第1及び第2のポリペプチド鎖は、それらが2つのベクター(1つが第1のポリペプチド鎖を発現し、1つが第2のポリペプチド鎖を発現する)内で作動可能に連結している異なるプロモーターから独立して発現されてもよい。
【0074】
宿主細胞は、本発明の第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、または第1及び第2のポリペプチド鎖の両方を発現する、1つ以上の発現ベクターで安定かつ一過的にトランスフェクト、形質転換、形質導入、または感染されている細胞を含む。本発明の二重特異性抗体を生成する宿主細胞株の作製及び単離は、当該技術分野において既知である標準的技術を使用して達成され得る。哺乳動物細胞は、二重特異性抗体の発現に好ましい宿主細胞である。具体的な哺乳動物細胞は、HEK293、NS0、DG−44、及びCHOである。好ましくは、二重特異性抗体は、宿主細胞が培養され、二重特異性抗体が回収または精製され得る培地に分泌される。
【0075】
抗体の哺乳動物発現がグリコシル化をもたらすことは、当該技術分野において周知である。典型的には、グリコシル化は、抗体のFc領域内の高度に保存されたN−グリコシル化部位で生じる。N−グリカンは典型的には、アスパラギンに結合する。例として、表1(a)及び(b)に提示される、例証される二重特異性抗体の各HCは、配列番号1または配列番号2のアスパラギン残基296でグリコシル化される。
【0076】
二重特異性抗体が分泌されている培地は、従来の技術によって精製され得る。例えば、培地は、従来の方法を使用して、タンパク質AまたはGカラムに適用され、そこから溶出され得る。可溶性凝集体及び多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって、効果的に除去され得る。生成物は、例えば、−70℃で直ちに凍結されても、冷蔵されても、または凍結乾燥されてもよい。
【0077】
いくつかの例において、本発明の二重特異性抗体を生成するためのプロセスは、ダイアボディの形成をもたらし得る。ダイアボディは、scFvの二価形成物であり、HCVR2及びLCVR2領域が単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、可変ドメインが同一のポリペプチド鎖の相補ドメインと対合する代わりに、可変ドメインが他のポリペプチド鎖または異なる分子の相補ドメインと対合する。例えば、二重特異性抗体が第1のポリペプチド(便宜上1A及び1Bとし、1A及び1BのそれぞれがHC、scFv、L1、及びL2を含む)、ならびに2つの第2のポリペプチド(便宜上2A及び2Bとし、2A及び2BのそれぞれがLCを含む)を含む場合、1AのHCVR2は、1AのLCVR2と対合する代わりに、1BのLCVR2の相補ドメインと対合する。
【0078】
治療使用
本明細書で使用される場合、「治療」及び/または「治療すること」は、本明細書に記載される障害の進行の緩徐化、妨害、抑止、制御、または停止が存在し得る全てのプロセスを指すことが意図されるが、全ての障害症状の完全な消失は必ずしも示さない。治療は、CGRP及び/もしくはIL−23のレベルの低下またはCGRP及び/もしくはIL−23の生物活性の低下から恩恵を被る、哺乳動物における、特にヒトにおける、疾患または病態の治療のための本発明の二重特異性抗体の投与を含み、(a)疾患の更なる進行を阻害すること、すなわち、その発達を抑止することと、(b)疾患を軽減すること、すなわち、疾患もしくは障害の退行を引き起こすか、またはその症状もしくは合併症を緩和することとを含む。
【0079】
本発明の二重特異性抗体は、IBD(CD及びUCなど)、PsA、ならびに強直性脊椎炎を含む自己免疫疾患を治療することが期待される。
【0080】
薬学的組成物
本発明の二重特異性抗体は、患者への投与に好適な薬学的組成物に組み込まれ得る。本発明の二重特異性抗体は、単独で、または単回用量もしくは複数回用量で薬学的に許容される担体及び/もしくは希釈剤とともに、患者に投与され得る。そのような薬学的組成物は、選択された投与様式に適切であるように設計され、薬学的に許容される希釈剤、担体、ならびに/または賦形剤(分散剤、緩衝剤、界面活性剤、保存剤、可溶化剤、等張剤、及び安定剤など)が必要に応じて使用される。該組成物は、例えば、開業医にとって一般に既知である製剤化技術の概要を提供する、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,22
nd Edition,Loyd V,Ed.,Pharmaceutical Press,2012に開示される従来の技術に従って設計され得る。薬学的組成物に好適な担体としては、本発明の二重特異性抗体と組み合わせたときに分子の活性を保持し、かつ患者の免疫系とは非反応性である、任意の材料が挙げられる。本発明の薬学的組成物は、二重特異性抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0081】
本発明の二重特異性抗体を含む薬学的組成物は、本明細書に記載される疾患もしくは障害のリスクにあるか、またはそれを呈する患者に、標準的投与技術を使用して投与され得る。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、「有効」量の本発明の二重特異性抗体を含有する。有効量は、所望される治療結果を達成するのに(投薬量及び期間及び投与手段で)必要な量を指す。有効量の二重特異性抗体は、疾患の状態、個体の年齢、性別、体重、ならびに抗体または抗体部分が個体において所望される応答を誘発する能力などの要因に従って変動し得る。有効量はまた、二重特異性抗体のいかなる毒性または有害効果よりも、治療上有益な効果が勝るようなものでもある。
【実施例】
【0083】
別段述べられる場合を除いて、実施例全体を通して言及される、例証される二重特異性抗体は、上記の表1(a)及び(b)に明記される、例証される本発明の二重特異性抗体を指す。
【0084】
二重特異性抗体の発現及び精製
上記の表1(a)及び(b)に明記される、例証される本発明の二重特異性抗体(二重特異性抗体1)を、本質的に以下のように発現させ、精製する。IgG HC−リンカーL1−scFv HCVR2−リンカーL2−scFv LCVR2を含むポリペプチド(配列番号1のポリペプチド)をコードするDNAポリヌクレオチド配列、及びIgG LCを含むポリペプチド(配列番号3のポリペプチド)をコードする第2のDNAポリヌクレオチド配列を含有する、グルタミンシンセターゼ(GS)発現ベクターを、電気穿孔によってGSノックアウトチャイニーズハムスター細胞株(CHO)にトランスフェクトする。発現ベクターは、SV初期プロモーター(サルウイルス40E)及びGSの遺伝子をコードする。GSの発現は、CHO細胞によって必要とされるアミノ酸であるグルタミンの生化学的合成を可能にする。トランスフェクション後の細胞は、50μMのL−メチオニンスルホキシミン(MSX)でバルク選択を受ける。MSXによるGSの阻害を利用して、選択の厳密性を増加させる。宿主細胞ゲノムの転写活性領域に発現ベクターcDNAを組み込んだ細胞が、内在的レベルのGSを発現するCHO野生型細胞に対して選択され得る。トランスフェクトされたプールを低密度でプレーティングして、安定した発現細胞のクローンに近い成長を可能にする。これらのマスターウェルを二重特異性抗体の発現についてスクリーニングし、その後、無血清懸濁培養物中で拡大して、生成に使用する。例証される二重特異性抗体が分泌されている浄化培地を、20mMのTRIS(pH8.0)などの適合性緩衝剤で平衡化したタンパク質A親和性カラムに適用する。カラムを洗浄して、非特異的結合構成成分を除去する。例えば、20mMのクエン酸(pH3.0)などのpHステップまたは勾配によって、結合した二重特異性抗体を溶出させ、Tris(pH8)緩衝剤で中和する。SDS−PAGEまたは分析的サイズ排除などによって、二重特異性抗体画分を検出し、その後、プールする。可溶性凝集体及び多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって、効果的に除去され得る。二重特異性抗体1には、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する。一般的な技術を使用して、二重特異性抗体1を濃縮及び/または無菌濾過する。これらのクロマトグラフィーステップ後の二重特異性抗体1の純度は、97%超(単量体)である。二重特異性抗体は、−70℃で直ちに凍結されても、4℃で数ヶ月間保管されてもよい。
【0085】
二重特異性抗体1と比較して、684(Q684T)位でスレオニン(T)をグルタミン(Q)に置換する(配列番号1対配列番号2)、操作された単一アミノ酸変化を組み込む、例証される本発明の第2の二重特異性抗体(本明細書以下、二重特異性抗体2と呼ぶ)を、一過的にトランスフェクトされたCHO中で、ならびにタンパク質A及び疎水性相互作用クロマトグラフィーによって発現させる。IgG HC−リンカーL1−scFv HCVR2−リンカーL2−scFv LCVR2を含むポリペプチド(配列番号2のポリペプチド)をコードするDNAポリヌクレオチド配列、及びIgG LCを含むポリペプチド(配列番号3のポリペプチド)をコードする第2のDNAポリヌクレオチド配列を含有するグルタミンシンセターゼ(GS)発現ベクターを、ポリエチレイミン(polyethyleimine)による化学処理によってGSノックアウトチャイニーズハムスター細胞株(CHO)に一過的にトランスフェクトする。残りの発現及び精製ステップは、二重特異性抗体1のものと同一である。これらのクロマトグラフィーステップ後の二重特異性抗体2の純度は、98%超(単量体)である。
【0086】
IL−23及びCGRPに対する二重特異性抗体の結合親和性
ヒトCGRP及びヒトIL−23の結合親和性を、HBS−EP+(10mMのHepes(pH7.4)+150mMのNaCl+3mMのEDTA+0.05重量体積%の表面活性剤P20)泳動緩衝剤で使用準備したBiacore3000機器で、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって決定する。4つ全てのフローセル(Fc)に固定化タンパク質A(標準的NHS−EDCアミンカップリングを使用して生成)を含有するCM5チップ(Biacore P/N BR−1000−12)を使用して、捕捉方法論を用いた。泳動緩衝剤中に希釈することによって、約2μg/mLで二重特異性抗体試料を調製する。泳動緩衝剤中に希釈することによって、25、12.5、6.25、3.13、0.78、0.39、0.20、0.10、及び0(ブランク)nMの最終濃度でヒトIL−23を調製する。泳動緩衝剤中に希釈することによって、12.5、6.25、3.13、0.78、0.39、0.20、0.10、及び0(ブランク)nMの最終濃度でヒトCGRPを調製する。
【0087】
各分析サイクルは、(1)異なる二重特異性抗体試料を、ヒトIL−23またはCGRPのいずれかからの20−100RU最大応答シグナルを促進するレベルで、別個のフローセル(Fc2、Fc3、及びFc4)上に捕捉することと、(2)100μL/分、120秒間で、4つ全てのFcに各ヒトIL−23またはヒトCGRP濃縮を注射し、その後、600秒間緩衝剤フローに戻して、解離相を監視することと、(3)10mMのグリシン(pH1.5)を、30秒間10μL/分で全てのセルに注射することによって、チップ表面を再生することと、(5)HBS−EP+泳動緩衝剤中でチップ表面を平衡化することとからなる。標準的二重参照を使用してデータを処理し、BiaEvaluationソフトウェア(バージョン4.1)を使用して1:1の結合モデルに対してフィットさせて、会合速度(k
on、M
−1s
−1単位)、解離速度(k
off、s
−1単位)、及びR
max(RU単位)を決定する。K
D=k
off/k
onの関係から平衡解離定数(K
D)を計算し、これはモル単位によるものである。
【表2】
【表3】
【0088】
これらの結果は、本発明の例証される二重特異性抗体が、37℃でヒトIL−23及びヒトCGRPに結合することを実証する。
【0089】
二重特異性抗体の溶解性及び安定性分析
(a)溶解性
二重特異性抗体1を、10mMのクエン酸(pH6、150mMのNaClを有する及び有さない(それぞれC6及びC6Nと省略))中に透析する。分子量フィルター(Amicon30kDa限外濾過フィルター、Milliporeカタログ番号UFC903024)を通した遠心分離によって、50または約100mg/mLのいずれかまで試料を濃縮する。両方の試料の一部分に、0.02体積%の最終濃度になるまでTween−80を添加する(それぞれC6T及びC6NTと更に省略)。冷蔵条件及び室温条件下での溶解性、凍結解凍安定性、及び保管安定性について、選択製剤を分析する。
【0090】
C6及びC6N製剤において、溶解性は、95mg/mL超の二重特異性抗体濃度として特性評価される。上述のように濃縮した後、沈殿または相分離について試料を室温で目視検査し、その後、暗所で、4℃にて1週間保管し、再目視検査する。−5℃で更に1週間、及び−10℃で更に1週間保管した後、同一の試料に対してこの手順を繰り返す(溶解した物質のレベルのために、試料は凍結しないことに留意されたい)。溶解性分析の結果を、表4に示す。二重特異性抗体1は、いずれの製剤または保管温度においても、いかなる目に見える沈殿または相分離も示さなかった。
【表4】
【0091】
(b)凍結解凍安定性
製造中、精製された医薬品有効成分(API)は典型的には、薬物製品(DP)の前方処理まで凍結状態で保持される。二重特異性抗体1を、高濃度での凍結解凍安定性について試験する。C6及びC6N中、50及び100mg/mLの製剤を、3回の緩徐な凍結解凍サイクルに供する。凍結及び解凍の速度は、より大きな製造容器内で生じる速度を模倣するように制御する。真空下にない棚凍結乾燥器を使用して、温度サイクルを表5に示されるように制御する。
【表5】
【0092】
3回のサイクル後、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、材料を高分子量(HMW)ポリマー形成及び10ミクロン超の粒子の光遮蔽について分析する。結果を、表6に示す。二重特異性抗体1は、全ての試験条件下で一貫して低い割合のHMWポリマーをもたらした。
【表6】
【0093】
(c)冷蔵及び室温安定性
ジェネリック薬物製品(DP)製剤、10mMのクエン酸、0.02%のTween−80(pH6.0、150mMのNaClを有する及び有さない(それぞれC6T及びC6NTと省略))下の冷蔵及び室温安定性を、2及び4週間の保持時間後、SEC及び粒子計数によって評価する。結果を、それぞれ表7及び8に示す。データは、二重特異性抗体1が低い可溶性(HMW%)及び不溶性(10ミクロン以上の粒子数)安定性を有することを実証する。
【表7】
【表8】
【0094】
(d)粘度
室温で、4つの製剤(C6、C6N、C6T、及びC6NT)中100mg/mLで、二重特異性抗体1の粘度を分析する。25℃で、1000秒−1の剪断速度を使用して、m−VROC(Rheosense)で測定を行う。結果を表9に示し、C6N及びC6NT製剤の両方における二重特異性抗体1の有意に低い粘度を例証する。粘度の有意な低減は、塩含有製剤中の二重特異性抗体1について観察される。
【表9】
【0095】
(e)光安定性
二重特異性抗体1及び二重特異性抗体2の光安定性を、1つの製剤条件(C6NT)下、50mg/mLタンパク質の濃度で特性評価する。二重特異性抗体1を、20%のInternational Conference on Harmonization(ICH)Expert Working Group推奨の曝露レベル(Q1B−Stability Testing:Photostability Testing of New Drug Substances and Products,Nov 1996)に曝露する。これは、可視光の240,000ルクス時間、及び40ワット時間/m
2の近UV光に等しい。カタログ04030−307−CW可視ランプ及び04030−308近UVランプを備えたBahnson ES2000光チャンバ(Environmental Specialties,Bahnson Group Company)を使用する。8,000ルクスの強度の可視光に30時間、及び10ワット/m
2の近UV光に4時間、試料を曝露する。全ての曝露は、タイプIホウケイ酸ガラスのHPLCバイアル内、25℃である。曝露後、HMWポリマー形成パーセントをSECによって決定し、表10に示す。結果は、二重特異性抗体2内のQ684T変異(配列番号1対配列番号2)が、分子の光安定性を著しく改善することを実証する。
【表10】
【0096】
IL−23及びCRGPの同時結合
BIAcore3000機器(GE Healthcare Life Sciences)を使用して、本発明の二重特異性抗体がヒトIL−23及びヒトCGRPに同時に結合し得るかどうかを判定する。25℃で平衡化した、HBS−EP+(10mMのHepes(pH7.4)+150mMのNaCl+3mMのEDTA+0.05重量体積%の界面活性剤P20)泳動緩衝剤で、この機器を使用準備する。4つ全てのフローセル(Fc)に固定化タンパク質A(標準的NHS−EDCアミンカップリングを使用して生成)を含有するCM5チップ(Biacore P/N BR1000−12)を使用して、二重特異性抗体の捕捉方法論を用いる。二重特異性抗体1及び2を泳動緩衝剤中に希釈し、個々のフローレーンに注射して、約900RUの抗体を捕捉する。泳動緩衝剤中10nMのヒトCGRPを二重特異性抗体表面に注射し、結合を観察する。二重特異性抗体内の全てのCGRP結合部位が飽和することを確実にするために、20nM及びその後40nMのCGRPペプチドの追加の注射を行う。結合シグナルの無〜最小の増加が観察され、これは、全ての利用可能な抗CGRP結合部位が占有されていることを証明する。その後、150nMのヒトIL−23溶液を注射する。二重特異性抗体がCGRP及びIL−23の両方に同時に結合することができる場合、シグナル増加が観察されるはずである。二重特異性抗体1及び2について、結合シグナルの有意な増加が観察され、したがって、これらの二重特異性抗体がヒトCGRP及びヒトIL−23の両方に同時に結合することができることを実証する
【0097】
二重特異性抗体1は、ヒトIL−12には結合しない
BIAcore2000機器を使用して、本発明の二重特異性抗体がヒトIL−12に結合するかどうかを判定する。述べられない限り、試薬及び材料はGE Healthcare Life Sciences(Upsala,Sweden)から購入し、測定は25℃で実行し、HBS−P緩衝剤(150mMの塩化ナトリウム、0.005重量体積%の界面活性剤P−20、及び10mMのHEPES(pH7.4))を泳動緩衝剤及び試料緩衝剤として使用する。アミンカップリングキットを使用して、タンパク質A(Calbiochem)をCM5センサーチップのフローセル1、2、3、及び4に固定化する。二重特異性抗体1(2μg/mLに希釈)をまずフローセル2に捕捉する(80μL/分で5秒間の注射によって、二重特異性抗体1捕捉の460の応答単位(ΔRU)をもたらす)。フローセル1は、タンパク質Aのみの対照である。次に、ヒトIL−12(Peprotech)を2分間注射(667nM)し、いかなる追加の結合シグナルも観察されない(0ΔRU)。IL−12に対して特異的な市販の抗体(STELARA(登録商標)の商品名で販売される抗ヒトIL−12抗体)は、ヒトIL−12に結合する。
【0098】
結果は、二重特異性抗体1がヒトIL−12には結合しないことを実証する。更に、同一のチップを使用して、抗IL−12特異的抗体はヒトIL−12に結合する。
【0099】
Kit225細胞内、インビトロでのIL−23媒介Stat3活性の阻害
Kit225は、T細胞慢性リンパ性白血病を有する患者から確立されたヒトT細胞株である。Kit225細胞はIL−23Rを天然に発現し、STAT3のリン酸化及びSTAT3パスウェイの活性化によってヒトIL−23に応答する。IL−23がSTAT3パスウェイを活性化する能力は、STAT3ルシフェラーゼ構築物で安定的にトランスフェクトされたKit225細胞内のルシフェラーゼ活性を測定することによって評価される。
【0100】
Kit225−Stat3−luc(クローン3)細胞を、アッセイ培地(10%のFBS、10ng/mLのヒトIL−2、及び1×ペニシリンプラスピューロマイシンを含有するRPMI1640)内で通例通り培養する。アッセイ当日、500×gで5分間(RT)の遠心分離によって細胞を収集し、大量の無血清RPMI1640培地で洗浄し、無血清OPTI−MEM培地中に再懸濁する。1ウェル当たり50,000個のKit225細胞(50μL中)を、白色/透明底部のTC処理した96ウェルプレートに添加し、ヒトIL−23の存在下、抗体で処理する。
【0101】
各試験について、1ウェル当たり25μLの4×抗体溶液を添加する。0〜126790pMの二重特異性抗体1の用量範囲を評価する(二重特異性抗体1のMWに基づく最終濃度、MW=197178Da)。25μLの4×ヒトIL−23(hIL−23)を、(MW=60000Daに基づいて)50pMの最終濃度になるまで各ウェルに添加する。「培地単独」及び「hIL−23単独」対照には、アッセイ培地を単独で使用する。0〜100000pMの用量範囲(抗体2のMWに基づく最終濃度、MW=150000Da)で試験した、IL−23のp19サブユニットを標的化するIL−23中和抗体(陽性対照抗体)を陽性対照として使用する。0〜126,790pMの用量範囲(MW=150000Daに基づく最終濃度)で試験した、アイソタイプ対照抗体(ヒトIgG4−PAA)を陰性対照として使用する。試験は3連で実行する。96ウェルプレートを組織培養インキュベーター(37℃、95%の相対湿度、5%のCO2)内に4時間置く。100μL/ウェルのBright−Glo Luciferase溶液(Promega)を添加して、処理時にアッセイを停止させる。ルミノメーター(Perkin Elmer Victor3)を使用して、プレートを読み取る。結果を濃度として表し、50%のIL−23誘導性Stat3活性は、二重特異性抗体1または陽性対照抗体のいずれかによって阻害され(IC
50)、データの4つのパラメータのシグモイド曲線フィットを使用して計算される(Sigmaプロット)。
【0102】
結果は、抗体1が、濃度依存的な様式で、Kit225細胞内のヒトIL−23誘導性Stat3活性を阻害することを実証する。阻害は、陽性対照抗体について観察される阻害と同等である(二重特異性抗体1の1671±236pMのIC
50対陽性対照抗IL−23p19抗体の466±31pM)。
【0103】
CGRPの存在下のIC
50は上述のものと同等であるため、アッセイへの50nMのCGRPの添加は、二重特異性抗体1の活性を改変しない。
【0104】
陰性対照抗体は、いかなる試験濃度でも、Kit225細胞内のStat3活性を阻害しない。
【0105】
二重特異性抗体1はヒトIL−23を効果的に中和し、IL−23阻害はCGRPの存在によっては影響されない。
【0106】
インビトロでの、SK−N−MC細胞内のCGRPによって誘導されるcAMP生成の阻害
SK−N−MC細胞は、CGRP受容体を内在的に発現するヒト神経芽細胞腫細胞株である。この受容体は、細胞内Gαsタンパク質に機能的にカップリングされている。受容体を天然アゴニストで刺激すると、CGRPペプチドはcAMPの合成の増加をもたらす。細胞内に存在するcAMPの量は、標準的インビトロ技術を使用して検出することができるため、このパラメータを受容体活性の基準として使用する。
【0107】
培養したSK−N−MCを、10%の熱失活FBS(Gibco)、非必須アミノ酸(Gibco)、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL−グルタミン、100U/mLのペニシリン、及び10μg/mLのストレプトマイシンで補助したMEM(Hyclone)内で、約70%のコンフルエンスになるまで成長させる。新鮮な培地を提供した後、細胞を37℃で一晩インキュベートする。アッセイ当日、Accutase(MP Biomedicals)を使用して細胞を剥離させ、アッセイ緩衝剤(Mg
++及びCa
++を1:2で混合したHBSS/DPBS、3.3mMのHEPES、0.03%のBSA、0.5mMのIBMX)中に再懸濁し、3000〜5000個/ウェルで、384ウェルのポリD−リジンコーティングされた白色プレート(BD Biosciences)に播種する。
【0108】
二重特異性抗体1を、10nMから0.5pMまで、アッセイ緩衝剤中1:3に希釈する(二重特異性抗体のMWは200kDaである)。希釈した二重特異性抗体1、陽性対照抗体(米国特許第9,073,991号に記載されるCGRP中和抗体)、またはアイソタイプ対照抗体(ヒトIgG4−PAA)を、ヒトIL−23(10nM、最終濃度)または等体積の緩衝剤と混合し、細胞とともに室温で30分間インキュベートする。ヒトCGRPペプチド(Bachem H−1470)をそのEC
80濃度(0.8nM)で添加し、プレートを室温で60分間インキュベートする。小分子基準拮抗剤(Kb=0.01nM)である10nMのBIBN4096(Tocris)を使用して、シグナルウィンドウを確立する。HTRF技術(均一時間分解蛍光測定、Cisbio)を販売者の説明書に従って使用して、細胞内cAMPの量を定量化する。簡潔には、溶解緩衝剤中のcAMP−d2共役体及び抗cAMP−クリプテート共役体を、処理した細胞とともに室温で60〜90分間インキュベートする。EnVisionプレートリーダー(Perkin−Elmer)を使用してHTRFシグナルを直ちに検出して、665〜620nMでの蛍光の比率を計算する。各実験のために生成したcAMP標準曲線を使用して、生データをcAMP量(ピコモル/ウェル)に変換する。4つのパラメータの理論曲線フィッティングプログラム(ActivityBase v5.3.1.22またはGenedata Screener v12.0.4)を使用して、濃度応答曲線の上下範囲から相対EC
50値を計算し、等式Kb=(IC50)/[1+([Ag]/EC50)]を使用して、アゴニスト補正IC50値としてKb値を推定する。
【0109】
結果は、二重特異性抗体1が、用量依存的な様式で、CGRP刺激cAMP生成を阻害することを実証し、推定Kbは0.02nMであり、最大効果は基準拮抗剤及び陽性対照抗体によって生成されたものに等しい。10nMのヒトIL−23の存在は、二重特異性抗体1または陽性対照抗体による阻害には影響を与えなかった。アイソタイプ対照抗体は、いかなる試験濃度でも、CGRP誘導性cAMP生成を阻害しなかった。
【表11】
【0110】
インビボでのヒトIL−23誘導性マウスIL−22生成の阻害
ヒトIL−23の投与は、正常なBalb/cマウスにおいてインビボでのマウスIL−22の発現を誘導する。
【0111】
二重特異性抗体1が、インビボでのマウスIL−22のヒトIL−23誘導性発現を遮断するかどうかを理解するために、正常なBalb/cマウス(N=5)に、67nm/kgの例証される二重特異性抗体1(分子量200kDa)、またはアイソタイプ対照抗体(陰性対照抗体として使用されるヒトIgG4−PAA、67nmol/kg、分子量150kDa)のいずれかを腹腔内注射する。注射の2日後、マウスを50nmol/kgのヒトIL−23の腹腔内注射によって負荷する。ヒトIL−23負荷の5時間後、マウスを屠殺し、血清を収集する。市販のELISA(eBioscience、カタログ番号88−7422−88)を製造者の説明書に従って使用して、収集した血清をマウスIL−22発現について分析する。
【表12】
【0112】
結果は、二重特異性抗体1がmIL−22発現のヒトIL−23誘導性増加を遮断することを実証する。二重特異性抗体1で処置したマウスの血清中のマウスIL−22レベルは、ナイーブマウスの血清中で観察されたマウスIL−22レベルと同等である(p<0.0001、不等分散によるt検定)。アイソタイプ対照抗体は、マウスIL−22のヒトIL−23誘導性発現を阻害しない。二重特異性抗体1は、インビボでヒトIL−23を効果的に中和する。
【0113】
二重特異性抗体1の投与は、ラット皮膚血流中のカプサイシン誘導性増加を防ぐ
カプサイシン誘導性レーザードプラ撮像(LDI)血流法は、皮膚に局所的に適用され、炎症を誘導するカプサイシン溶液に基づき、これは、LDIを使用して監視され得る血流の局所的変化によって検出される。この方法は、一過性受容器電位陽イオンチャネルサブファミリーVメンバー1(TRPV1)受容体のカプサイシン活性化、その後、皮膚の血管でのCGRPの局所的放出及びCGRP受容体の活性化に依存する。カプサイシン誘導性皮膚血管拡張モデルは、前臨床(ラット、非ヒト霊長類(NHP))モデルにおける標的結合を評価するために適用されており、臨床への橋渡しである。この研究の目的は、二重特異性抗体1が、ラット腹部皮膚においてCGRP媒介カプサイシン誘導性皮膚血管拡張を防ぐことができるかどうかを判定することである。
【0114】
二重特異性抗体1、陽性対照(米国特許第9,073,991号に記載されるCGRP中和抗体)、及びアイソタイプ対照抗体(ヒトIgG4−PAA)を、PBS中に調製する。LDI測定の5日前に、ルイスラット(1群当たりn=8)を4mg/kgのそれぞれの抗体で皮下処置し、実験前に一晩絶食させる。研究操作者は、処置に対して盲検である。実験当日、ラット腹部を剪毛し、LDI機器(Moor LDI Laser Doppler Imager、モデルLDI2−IR)下、加熱空気チャンバ内の加熱パッド上にラットを置く。研究全体を通して、温度及びBP監視のために直腸温度計及び血圧測定用カフを使用する。スキャニング前の約20分間、2.0±0.5%のイソフルラン麻酔下で、ラットを安定化する。この安定化期間中、(可視の血管及び高基礎血流範囲から離れた)3つのネオプレンOリングの正確な位置付けのために、予備スキャンを得る。ベースライン温度(約37℃)が安定化した後、撮像スキャンを2回のベースラインスキャンで開始する。第2のスキャンの完了後、8μLのカプサイシン溶液を3つのOリングのそれぞれに適用する(60μLのEtOH、40μLのTween20、及び100μLの精製H
2Oの溶液中50mgのカプサイシン)。2.5分毎のスキャンで、スキャニングを更に25分間継続する。スキャンの完了後、心臓穿刺を介して血液試料を得て、血漿を分析する。対象となる領域の分析のためにMoor v.5.3ソフトウェアを、ならびに所与の時点での対象となる領域からのシグナルの平均化及びベースライン(ベースライン値は2回のベースラインスキャンの平均であった)からの変化パーセントとして報告される血流の変化の分析のためにMicrosoft Excelワークシートを使用して、LDI反復スキャンを分析する。分析したデータをGraphpad Prism6に入力して、グラフ化する。ANOVA、その後、テューキーの多重比較を使用して、統計分析する。結果を
図1に例証する(n=8、ANOVAとともにテューキーの多重比較、***アイソタイプ対照抗体と比較してp<0.001)。
【0115】
二重特異性抗体1及び陽性対照抗体は、CGRP媒介カプサイシン誘導性皮膚血管拡張を阻害する。対照的に、アイソタイプ対照抗体は、CGRP媒介カプサイシン誘導性皮膚血管拡張を阻害しない。
【0116】
サルにおける二重特異性抗体1の非臨床薬物動態
二重特異性抗体1の血清薬物動態を、以下のように決定する。雄のカニクイザルに、6.7mg/kgの本発明の二重特異性抗体1(PBSの溶液(PH7.4)中に調製)を静脈内(N=1)または皮下(N=2)のいずれかで投与する。
【0117】
血液試料(約1mL)を収集(大腿静脈から(例えば、抗凝固剤を含有しない)血清分離管へと静脈内で、かつ血清へと処理)を、用量前ならびに後続して、用量の1、6、12、24、48、72、96、120、144、168、240、336、504、及び672時間後に収集する。定量的MSによって、血清試料を総IgGについて分析する。ビオチン化ヤギ抗hIgG(Southern Biotech、2049−08)及びストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズで、試料を免疫沈降させる。免疫沈殿後、試料を還元し、アルキル化し、トリプシン消化する。選択されたトリプシンペプチドを抗体曝露の代替基準として使用して、総IgG濃度を決定する。Thermo Q−Exactive Orbitrap LC/MSシステムを使用して、データの検出及び統合を実行する。
【0118】
100%のカニクイザル血清(Bioreclamation)中への既知の量の例証される二重特異性抗体の希釈によって、試験抗体の標準曲線を生成する。二重特異性抗体1の標準曲線範囲は、(それぞれ12,800ng/mL及び25ng/mLの定量化の上限及び下限で)25〜12,800ng/mLである。
【0119】
ゼロ時間(抗体投与)から投与の672時間後までの濃度対時間プロファイルを使用して、薬物動態パラメータ(クリアランス値)を計算し、Phoenix(WinNonLin6.4、Connect1.4)を使用して、非区画分析を介して決定する。結果を、表13にまとめる。
【表13】
配列
第1のコードされたポリペプチド;IgG HC、L1、scFv HCVR2、L2、及びscFv LCVR2(配列番号1)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFADRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYPFTRYVMHWVRQAPGQCLEWMGYINPYNDGVNYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNWDTGLWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASDHIGKFLTWYQQKPGKAPKLLIYGATSKLTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYWSTPFTFGCGTKVEIK
第2のコードされたポリペプチド;IgG HC、L1、scFv HCVR2、L2、及びscFv LCVR2(配列番号2)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFADRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYPFTRYVMHWVRQAPGQCLEWMGYINPYNDGVNYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNWDTGLWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASDHIGKFLTWYQQKPGKAPKLLIYGATSKLTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQTYWSTPFTFGCGTKVEIK
第3のコードされたポリペプチド;IgG LC(配列番号3)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSGYHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDALPPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
IgG重鎖(配列番号4)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFADRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSL
IgG重鎖可変領域1(HCVR1)(配列番号5)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFGNYWMQWVRQAPGQGLEWMGAIYEGTGKTVYIQKFADRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARLSDYVSGFGYWGQGTTVTVSS
scFv重鎖可変領域2(HCVR2)(配列番号6)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYPFTRYVMHWVRQAPGQCLEWMGYINPYNDGVNYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNWDTGLWGQGTTVTVSS
IgG軽鎖可変領域1(LCVR1)(配列番号7)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSGYHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDALPPTFGGGTKVEIK
scFv軽鎖可変領域2(LCVR2)(配列番号8)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASDHIGKFLTWYQQKPGKAPKLLIYGATSKLTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYWSTPFTFGCGTKVEIK
scFv軽鎖可変領域2(配列番号9)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASDHIGKFLTWYQQKPGKAPKLLIYGATSKLTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQTYWSTPFTFGCGTKVEIK
HCDR1(配列番号10)
KASGYTFGNYWMQ
HCDR2(配列番号11)
AIYEGTGKTVYIQKFAD
HCDR3(配列番号12)
ARLSDYVSGFGY
HCDR4(配列番号13)
KASGYPFTRYVMH
HCDR5(配列番号14)
YINPYNDGVNYNEKFKG
HCDR6(配列番号15)
ARNWDTGL
LCDR1(配列番号16)
RASKDISKYLN
LCDR2(配列番号17)
YYTSGYHS
LCDR3(配列番号18)
QQGDALPPT
LCDR4(配列番号19)
KASDHIGKFLT
LCDR5(配列番号20)
YGATSKLT
LCDR6(配列番号21)
QQYWSTPFT
LCDR6(配列番号22)
QTYWSTPFT
ポリペプチドリンカー1(配列番号23)
GGGGSGGGGSGGGGS
ポリペプチドリンカー2(配列番号24)
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
FRH1−1(配列番号25)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSC
FRH1−2(配列番号26)
WVRQAPGQGLEWMG
FRH1−3(配列番号27)
RVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYC
FRH1−4(配列番号28)
WGQGTTVTVSS
FRH2−1(配列番号29)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSC
FRH2−2(配列番号30)
WVRQAPGQCLEWMG
FRH2−3(配列番号31)
RVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYC
FRH2−4(配列番号32)
WGQGTTVTVSS
FRL2−1(配列番号33)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC
FRL2−2(配列番号34)
WYQQKPGKAPKLLI
FRL2−3(配列番号35)
GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC
FRL2−4(配列番号36)
FGCGTKVEIK
FRL1−1(配列番号37)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC
FRL1−2(配列番号38)
WYQQKPGKAPKLLI
FRL1−3(配列番号39)
GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC
FRL1−4(配列番号40)
FGGGTKVEIK
重鎖定常領域(配列番号41)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSL
軽鎖定常領域(配列番号42)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC