特許第6592616号(P6592616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592616
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/172 20190101AFI20191007BHJP
   H04L 12/66 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   G06F16/172
   H04L12/66 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-556207(P2018-556207)
(86)(22)【出願日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2017036311
(87)【国際公開番号】WO2018110047
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-241398(P2016-241398)
(32)【優先日】2016年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昭徳
【審査官】 吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−057041(JP,A)
【文献】 特開2010−282430(JP,A)
【文献】 特表2008−537814(JP,A)
【文献】 特開2002−373108(JP,A)
【文献】 特開2001−101061(JP,A)
【文献】 特開2000−250803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00−16/958
H04L 12/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントとサーバとの間の通信を中継する中継装置であって、
クライアントから送信された、クライアントにおける所定の状態変化に対して設定されたイベントを識別するイベント特定情報を受信するイベント受信部と、
イベント特定情報と、データ取得要求コマンドとを対応付けて記録する記録部と、
前記イベント受信部で受信したイベント特定情報に対応付けられたデータ取得要求コマンドを前記記録部から取得するコマンド取得部と、
前記コマンド取得部がイベント特定情報に対応付けられたデータ取得要求コマンドを取得すると、サーバにデータ取得要求コマンドを送信するコマンド送信部と、
前記コマンド送信部によるコマンド送信を制御するコマンド送信制御部と、
サーバから、データ取得要求コマンドに応答して送信されたデータを受信するデータ受信部と、
受信したデータをメモリに書き込むキャッシュ制御部と、
クライアントから送信されたデータ取得要求コマンドを受信するコマンド受信部と、
前記メモリに書き込まれているデータをクライアントに送信するデータ送信部と、
前記データ送信部によるデータ送信を制御するデータ送信制御部と、を備え
前記データ受信部がサーバからデータを受信してから所定時間が経過するまでの間に、前記コマンド受信部がデータ取得要求コマンドを受信すると、前記データ送信制御部は、前記データ送信部に、前記メモリに書き込まれているデータを送信させる、
ことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
当該中継装置は、複数のクライアントと、サーバとの間の通信を中継する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記コマンド送信制御部は、前記データ受信部がサーバからデータを受信してから所定時間が経過するまでの間、前記コマンド送信部によるコマンド送信を停止させる、
ことを特徴とする請求項に記載の中継装置。
【請求項4】
前記コマンド送信制御部は、前記データ受信部がサーバからデータを受信してから所定時間が経過した後、前記イベント受信部がイベント特定情報を受信し又は前記コマンド受信部がデータ取得要求コマンドを受信すると、前記コマンド送信部にデータ取得要求コマンドを送信させる、
ことを特徴とする請求項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記データ受信部がデータを受信すると、前記キャッシュ制御部が、受信したデータをメモリに上書きする、
ことを特徴とする請求項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記コマンド送信制御部は、当該中継装置とサーバ間の通信速度を計測し、計測した通信速度と所定の基準速度との比較結果にもとづいて、イベント特定情報にもとづくデータ取得要求コマンドの送信可否を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項7】
当該中継装置は、医療施設のローカルエリアネットワークに接続する機器である複数のクライアントと、ローカルエリアネットワークの外部に設置される外部サーバとの間の通信を中継する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアントとサーバとの間の通信を中継する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、病院情報管理サーバと医療業務支援システムとがLAN(ローカルエリアネットワーク)を介して接続される病院情報システムを開示する。近年のクラウドコンピューティングの普及により様々な分野でクラウドサーバが一般化してきているが、医療施設においても同様に、病院情報管理サーバをLAN外部に配置する形態に移行することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−64169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまで医療施設内でLANに接続していた管理サーバをLANの外部に配置すると、クライアントと管理サーバとの間の通信速度が遅くなったり、また通信が不安定となる可能性が高まる。医師は非常にタイトなスケジュールを組まれており、LAN外部に配置された管理サーバから必要なデータが取得できなかったり、または取得に時間がかかると、スケジュール通りに業務をこなせない事態も生じうる。そこでLAN外部に配置された管理サーバから効率的にデータを取得する仕組みの構築が望まれる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、LAN外部に配置された管理サーバから、データを効率的に取得する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の中継装置は、クライアントとサーバとの間の通信を中継する中継装置であって、クライアントから送信されたイベント特定情報を受信するイベント受信部と、イベント特定情報と、データ取得要求コマンドとを対応付けて記録する記録部と、イベント受信部で受信したイベント特定情報に対応付けられたデータ取得要求コマンドを取得するコマンド取得部と、サーバにデータ取得要求コマンドを送信するコマンド送信部と、コマンド送信部によるコマンド送信を制御するコマンド送信制御部と、サーバからデータ取得要求コマンドに応答して送信されたデータを受信するデータ受信部と、受信したデータをメモリに書き込むキャッシュ制御部と、クライアントから送信されたデータ取得要求コマンドを受信するコマンド受信部と、メモリに書き込まれているデータをクライアントに送信するデータ送信部と、データ送信部によるデータ送信を制御するデータ送信制御部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例にかかる情報処理システムの構成を示す図である。
図2】中継装置の構成を示す図である。
図3】マスタテーブルの例を示す図である。
図4】情報処理システムの基本動作を示すシーケンス図である。
図5】イベント通知およびコマンド送信のタイミングチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例にかかる情報処理システム1の構成を示す図である。情報処理システム1は、複数のクライアント3a〜3n(以下、特に区別しない場合には「クライアント3」と呼ぶ)を有する医療施設情報システム2と、管理サーバ5およびデータベース(DB)6を有するサーバシステム4と、クライアント3と管理サーバ5との間の通信を中継する中継装置10とを備える。中継装置10はルータ装置であって、医療施設情報システム2におけるLAN(ローカルエリアネットワーク)を構築して、複数のクライアント3の間で通信できるようにするとともに、LANを外部のネットワーク7に接続してクライアント3とネットワーク7上の機器とを通信できるようにする。
【0010】
実施例の医療施設情報システム2は、内視鏡検査を実施するために必要な様々な種類のクライアント3を備える。クライアント3は医療施設のLANに接続する機器であって、スコープにより撮影される内視鏡画像を表示、記録するための内視鏡観察装置、使用済みのスコープを洗浄するための洗浄機、終了した検査のレポート作成に利用される端末装置(パーソナルコンピュータ)などを含む。クライアント3は、LAN外部の管理サーバ5と中継装置10を介して通信する。
【0011】
サーバシステム4は、インターネットなどのネットワーク7を介して、医療施設情報システム2に接続される。管理サーバ5は、検査のオーダデータや、内視鏡観察装置で撮影された内視鏡画像などを医療施設情報システム2から受信し、DB6に記録する。管理サーバ5は、DB6に記録されたオーダデータや内視鏡画像を、中継装置10から送信されるデータ取得要求コマンドに応答して中継装置10に送信する。
【0012】
クライアント3である内視鏡観察装置は、検査の開始前に、当日分のオーダデータを管理サーバ5から取得して、表示装置にオーダ一覧を表示し、医療従事者はオーダ一覧の中から、これから実施する検査のオーダデータを選択する。検査のオーダデータが選択されることで、これから実施する内視鏡検査で撮影される内視鏡画像が、オーダデータに紐付けて管理されるようになる。内視鏡観察装置によるオーダデータの取得処理は各検査の開始前に必ず実施されるが、中継装置10と管理サーバ5との間の通信障害等によりオーダデータの取得に時間がかかると、検査を開始できないという問題が生じる。また医師は検査終了後、検査レポートの作成のために内視鏡検査で撮影した全ての内視鏡画像を管理サーバ5から端末装置に読み込むが、この読込に時間がかかると、レポート作成作業をなかなか開始できない。
【0013】
このような問題を解決するために、実施例の中継装置10は、クライアント3における所定のイベントの発生を契機として、クライアント3で必要になるであろうデータを管理サーバ5から予め受信してメモリにキャッシュしておく「データ事前取得機能」を有する。中継装置10は、データを事前取得した後、クライアント3からデータ取得要求コマンドを受信すると、メモリにキャッシュしたデータをクライアント3に送信する。中継装置10は、クライアント3から送信されたデータ取得要求コマンドを受信した時点で、当該データ取得要求コマンドにより要求されたデータは既にメモリに一時記憶されているため、当該データをすぐにクライアント3に送信できる。
【0014】
図2は、中継装置10の構成を示す。中継装置10は、第1通信部20、コマンド取得部30、コマンド送信制御部32、データ送信制御部34、キャッシュ制御部36、記録部38、メモリ40および第2通信部50を備える。
【0015】
図2において、さまざまな処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、回路ブロック、メインメモリ、その他のLSIなどで構成することができ、ソフトウェア的には、メインメモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0016】
医療施設には、様々な種類のクライアント3が設置されているが、以下では、クライアント3が内視鏡観察装置である場合を例にとる。
図3は、記録部38に記録されているマスタテーブルの例を示す。記録部38は、クライアント3の種類ごとにマスタテーブルを記録している。図3は、内視鏡観察装置用のマスタテーブルを示しているが、記録部38は、洗浄機用のマスタテーブル、端末装置用のマスタテーブルもそれぞれ記録している。
【0017】
マスタテーブルは、内視鏡観察装置で生じうるイベントを識別するイベント特定情報と、データ取得要求コマンドとを対応付けて記録する。イベントは、内視鏡観察装置における所定の状態変化に対して予め設定されており、内視鏡観察装置は、所定の状態変化が生じると、当該状態変化を示すイベントを特定する情報(以下、「イベントID」と呼ぶ)を自動で送信する機能を有している。
【0018】
図3に示すマスタテーブルでは、内視鏡観察装置のイベントとして、「電源オン」、「スコープ接続」、「検査開始」、「検査終了」、「オーダ一覧表示」、「電源オフ」が設定されている。なお実際のマスタテーブルには、イベントIDとして、アルファベットや数字の組み合わせとなる文字列が使用されてよい。
【0019】
内視鏡観察装置は、マスタテーブルに設定されている各イベントの発生を自動検出する機能モジュールを有している。たとえば「電源オン」イベント、「電源オフ」イベントは、電源管理モジュールにより検出される。「スコープ接続」イベントは、スコープが接続されたときの電気信号を取得するスコープ管理モジュールにより検出される。「検査開始」イベント、「検査終了」イベント、「オーダ一覧表示」イベントは、医療従事者による入力インタフェース(キーボードやマウスなど)の操作入力を監視する操作監視モジュールにより検出される。実施例の内視鏡観察装置を含むクライアント3は、設定されたイベントの発生を検出すると、そのイベントIDを中継装置10に送信する。
【0020】
図3に示すマスタテーブルには、「電源オン」イベントおよび「検査終了」イベントに対して、「オーダ取得要求コマンド」が対応付けられており、その他のイベントには、データ取得要求コマンドが対応付けられていない。なお「オーダ取得要求コマンド」は、当日分のすべてのオーダデータの取得を要求するコマンドである。中継装置10は、クライアント3からイベントIDを通知されると、通知されたイベントIDにデータ取得要求コマンドが対応付けられている場合に、当該データ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信する。この例では、中継装置10が「電源オン」のイベントID、または「検査終了」のイベントIDを通知されると、オーダ取得要求コマンドを中継装置10に送信する。
【0021】
内視鏡観察装置は、1日の検査業務開始前には電源オフの状態にあり、検査業務を開始する際に電源がオンされる。また内視鏡観察装置は、1つの内視鏡検査が終了すると、次の内視鏡検査の開始準備を行う。内視鏡検査の開始前、内視鏡観察装置は、当日分の全オーダデータを取得して表示装置にオーダ一覧を表示する。そのため内視鏡観察装置の電源がオンされた後、および内視鏡検査が終了した後には、内視鏡観察装置が全オーダデータの取得処理を実施する可能性が極めて高い。そのためマスタテーブルは、「電源オン」イベントと、「検査終了」イベントに、「オーダ取得要求コマンド」を対応付けて記録している。なおマスタテーブルは、医療施設の運用にしたがって作成されるため、必要に応じて適宜更新可能とされてよい。
【0022】
図2に戻り、第1通信部20は、クライアント3との間の通信を実施し、イベント受信部22、コマンド受信部24およびデータ送信部26を有する。イベント受信部22は、クライアント3から送信されたイベント特定情報(イベントID)を受信する。コマンド受信部24は、クライアント3から送信されたデータ取得要求コマンドを受信する。上記した例では、医療従事者が、内視鏡観察装置にオーダ一覧を表示させるときに、内視鏡観察装置が、医療従事者の操作入力にもとづいて、オーダ取得要求コマンドを送信する。データ送信部26は、クライアント3に、管理サーバ5から取得したデータを送信する。データ送信部26によるデータ送信は、データ送信制御部34により制御される。
【0023】
第2通信部50は、管理サーバ5との間の通信を実施し、コマンド送信部52およびデータ受信部54を有する。コマンド送信部52は、管理サーバ5にデータ取得要求コマンドを送信する。なおコマンド送信部52によるコマンド送信は、コマンド送信制御部32により制御される。データ受信部54は、管理サーバ5から、データ取得要求コマンドに応答して送信されたデータを受信する。
【0024】
図4は、情報処理システム1の基本動作を示すシーケンス図である。このシーケンス図では、理解を容易にするために、同種のクライアント3が1台である場合を前提とし、また条件分岐によるフローも含めている。クライアント3は、イベントの発生を検出すると(S10)、イベントIDを中継装置10に送信する(S12)。
【0025】
中継装置10において、イベント受信部22が、クライアント3から送信されたイベントIDを受信する(S14)。イベント受信部22は、受信したイベントIDをコマンド取得部30に供給する。コマンド取得部30は、記録部38に記録されたマスタテーブルを参照して、受信したイベントIDにデータ取得要求コマンドが対応付けられているか判断する(S16)。ここでクライアント3が内視鏡観察装置である場合、図3を参照すると、「スコープ接続」イベント、「検査開始」イベント、「オーダ一覧表示」イベント、「電源オフ」イベントには、データ取得要求コマンドが対応付けられていない。そこで、これらのイベントIDを受信した場合、コマンド取得部30は、イベントIDにデータ取得要求コマンドが対応付けられていないことを判断して(S16のN)、次のイベントIDが送信されるのを待機する。
【0026】
一方で、受信したイベントIDにデータ取得要求コマンドが対応付けられている場合(S16のY)、コマンド取得部30は、イベントIDに対応付けられたデータ取得要求コマンドを取得する(S18)。図3を参照して、コマンド取得部30は、「電源オン」または「検査終了」のイベントIDを取得すると、データ取得要求コマンドとして、オーダ取得要求コマンドを取得する。
【0027】
コマンド送信制御部32は、コマンド送信部52によるコマンド送信を制御する。コマンド取得部30がデータ取得要求コマンドを取得すると、コマンド送信制御部32は、コマンド送信部52に、データ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信させる(S20)。
【0028】
管理サーバ5は、中継装置10からデータ取得要求コマンドを受信すると、DB6を検索して、当該コマンドに対応するデータを抽出する(S22)。管理サーバ5は、データ取得要求コマンドに応答して抽出したデータを中継装置10に送信する(S24)。
【0029】
中継装置10において、データ受信部54は、管理サーバ5から、データ取得要求コマンドに応答して送信されたデータを受信する(S26)。キャッシュ制御部36は、受信したデータをメモリ40に書き込む(S28)。このときキャッシュ制御部36は、データに関連づけて、データ受信部54がデータを受信した日時情報をメモリ40に記憶させる。メモリ40は、データを一時記憶するキャッシュメモリである。このように実施例の中継装置10は、クライアント3で将来的に必要になるであろうデータを、所定のイベントの発生を契機として管理サーバ5から予め受信してメモリ40に一時記憶するデータ事前取得機能を有している。
【0030】
その後、クライアント3は、データ取得要求コマンドを中継装置10に送信する(S30)。コマンド受信部24は、クライアント3から送信されたデータ取得要求コマンドを受信する。データ送信制御部34は、データ送信部26によるデータ送信を制御し、最も単純な制御としては、コマンド受信部24がデータ取得要求コマンドを受信すると、データ送信部26に、メモリ40に書き込まれているデータをクライアント3に送信させてよい(S44)。
【0031】
なお図4には、データの信頼性を担保するために、メモリ40に一時記憶されたデータが新しいデータであるか判定するためのフローを示している。データ送信制御部34は、データ受信部54が管理サーバ5からデータを受信してから所定時間が経過するまでの間に、コマンド受信部24がデータ取得要求コマンドを受信したか否かを判定する(S32)。なおメモリ40において、データには、データの受信日時情報が関連づけられており、データ送信制御部34は、データの受信日時と、コマンド受信部24におけるコマンドの受信日時とから、所定時間が経過しているか否かを判定する。
【0032】
オーダデータに関して説明すると、オーダデータは、前日までに予約した患者の検査に対して発行されるケースがほとんどであるが、当日の緊急検査に対して発行されることもある。医療施設では、緊急検査であっても、オーダデータを発行して、内視鏡画像などの検査結果をオーダデータに紐付けることが好ましい。そのためメモリ40に古いオーダデータ、たとえば検査業務の開始直後に取得したデータが記憶されていても、その後緊急検査のオーダデータが発行されて追加されている可能性がある。
【0033】
そこでデータ受信部54が管理サーバ5からデータを受信してから所定時間が経過するまでの間に、コマンド受信部24がデータ取得要求コマンドをクライアント3から受信した場合(S32のN)には、メモリ40に書き込まれているデータが新しく、信頼できるものと判断して、データ送信制御部34は、データ送信部26に、メモリ40に書き込まれているデータをクライアント3に送信させる(S44)。データの新旧を判断するための所定時間は、データの種類に依存して定められる。たとえばオーダデータの場合、所定時間は「5分」程度の時間に設定されてよい。
【0034】
一方で、データ受信部54が管理サーバ5からデータを受信してから所定時間が経過した後に、コマンド受信部24がデータ取得要求コマンドをクライアント3から受信した場合(S32のY)には、メモリ40に書き込まれているデータが古く、信頼できないものと判断して、データ送信制御部34は、データ送信部26に、メモリ40に書き込まれているデータをクライアント3に送信させない。このときデータ送信制御部34は、コマンド受信部24が受信したデータ要求コマンドをコマンド取得部30に提供する。コマンド取得部30がデータ取得要求コマンドを取得すると、コマンド送信制御部32は、コマンド送信部52に、データ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信させる(S34)。
【0035】
管理サーバ5は、中継装置10からデータ取得要求コマンドを受信すると、DB6を検索して、当該コマンドに対応するデータを抽出する(S36)。管理サーバ5は、データ取得要求コマンドに応答して抽出したデータを中継装置10に送信する(S38)。
【0036】
中継装置10において、データ受信部54は、管理サーバ5から、データ取得要求コマンドに応答して送信されたデータを受信する(S40)。キャッシュ制御部36は、受信したデータをメモリ40に上書きする(S42)。なおキャッシュ制御部36は、データに関連づけて、データ受信部54がデータを受信した日時情報をメモリ40に記憶させる。キャッシュ制御部36が、データをメモリ40に書き込むと、データ送信制御部34は、データ送信部26に、メモリ40に書き込まれているデータをクライアント3に送信させる(S44)。
【0037】
このように図4に示すシーケンスによれば、中継装置10のデータ事前取得機能により、クライアント3がデータ取得要求コマンドを送信した時点で、既に中継装置10はデータを管理サーバ5から取得しているため、中継装置10と管理サーバ5との間の通信環境に影響を受けることなく、中継装置10は、すみやかにデータをクライアント3に送信できる。
【0038】
なお図4に示すシーケンスでは、1台のクライアント3のみを対象としたが、医療施設によっては、複数台の同種のクライアント3を有している。たとえば大規模な医療施設では、十台以上の内視鏡観察装置を有しているところもある。
【0039】
図5は、イベント通知およびコマンド送信のタイミングチャートの例を示す。このタイミングチャートにおいて、横軸は時間軸を表現する。クライアント3a、3b、3c、3dは、同種の機器であり、ここでは内視鏡観察装置である。タイミングチャートにおける各矢印の意味は、以下のとおりである。
【0040】
(Eと数字の組み合わせで表現される実線矢印)
オーダ取得要求コマンドが対応付けられたイベントIDの通知を示す。ここでE1〜E4は、電源オンイベントの通知を示し、E5は検査終了イベントの通知を示す。なお図5では、オーダ取得要求コマンドが対応付けられていないイベントIDの通知については省略している。
(Cと数字の組み合わせで表現される点線矢印)
オーダ取得要求コマンドの送信を示す。
(Dと数字の組み合わせで表現される太実線矢印)
オーダデータの送信を示す。
【0041】
まずクライアント3bが、電源オン通知E1を中継装置10に送信する。中継装置10は、電源オン通知E1を受信した時点で、まだメモリ40にオーダデータを記憶していない。そこで中継装置10において、コマンド送信部52は、オーダ取得要求コマンドC1を管理サーバ5に送信し、管理サーバ5は、オーダデータD1を中継装置10に送信する。中継装置10において、データ受信部54がオーダデータD1を受信すると、キャッシュ制御部36がオーダデータを、受信時刻t1に関連づけてメモリ40に書き込む。
【0042】
時刻t1から所定時間(たとえば5分)が経過するまでの間に、中継装置10は、クライアント3dから電源オン通知E2とオーダ取得要求コマンドC2を受信し、クライアント3bからオーダ取得要求コマンドC3を受信し、クライアント3cから電源オン通知E3を受信し、クライアント3aから電源オン通知E4を受信する。中継装置10においてコマンド送信制御部32は、データ受信部54が管理サーバ5からオーダデータを受信した時刻t1から所定時間が経過するまでの間、コマンド送信部52によるコマンド送信を停止させる。
【0043】
コマンド送信制御部32は、電源オン通知の受信のたびに、コマンド送信部52からオーダ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信させることも可能である。これによりメモリ40には、クライアント3からデータ取得要求コマンドが送信された時点で、最新のオーダデータが記憶された状態をつくりだすことができる。しかしながら、電源オン通知の受信のたびに管理サーバ5からオーダデータを送信させると、中継装置10と管理サーバ5との間の通信負荷が高まり、好ましくない。そこで時刻t1から所定時間が経過するまでの間、コマンド送信制御部32は、コマンド送信部52によるコマンド送信を停止させて、中継装置10と管理サーバ5との間の通信負荷を軽減させる。
【0044】
また時刻t1から所定時間が経過するまでの間に、コマンド受信部24がクライアント3からデータ取得要求コマンドを受信すると、データ送信制御部34は、データ送信部26に、メモリ40に書き込まれているデータを当該クライアント3に送信させる。このタイミングチャートでは、時刻t1から所定時間の経過前に、コマンド受信部24が、クライアント3dからオーダ取得要求コマンドC2を、クライアント3bからオーダ取得要求コマンドC3を受信しており、データ送信制御部34は、クライアント3dにオーダデータD2を、クライアント3bにオーダデータD3を、データ送信部26から送信させている。なおオーダデータD1、オーダデータD2、オーダデータD3は、同じオーダデータである。
【0045】
図4のS32に関して説明したように、中継装置10は、メモリ40に書き込んだオーダデータの信頼性を高めるべく、時刻t1から所定時間が経過すると、最新のオーダデータの送信を管理サーバ5に要求する。タイミングチャートにおいて、コマンド受信部24がクライアント3cからオーダ取得要求コマンドC4を受信した時刻t2は、時刻t1から所定時間経過後の時刻である。そこでコマンド送信制御部32は、コマンド送信部52に、オーダ取得要求コマンドC5を管理サーバ5に送信させる。
【0046】
管理サーバ5は、オーダ取得要求コマンドC5に応答して、最新のオーダデータD4を中継装置10に送信する。中継装置10において、データ受信部54がオーダデータD4を受信すると、キャッシュ制御部36がオーダデータを、受信時刻t3に関連づけてメモリ40に上書きする。また同時に、データ送信制御部34が、クライアント3cにオーダデータD5を、データ送信部26から送信させる。なおオーダデータD4、オーダデータD5は、同じオーダデータである。
【0047】
このタイミングチャートでは、時刻t3から所定時間が経過するまでの間に、コマンド受信部24がクライアント3aからオーダ取得要求コマンドC6を受信しており、データ送信制御部34は、クライアント3aにオーダデータD6を、データ送信部26から送信させている。なお時刻t3から所定時間が経過するまでの間、コマンド送信制御部32は、コマンド送信部52によるコマンド送信を停止させる。
【0048】
続いて、時刻t4で、イベント受信部22が、クライアント3dから検査終了通知E5を受信する。時刻t4は、時刻t3から所定時間経過後の時刻である。そこでコマンド送信制御部32は、コマンド送信部52に、オーダ取得要求コマンドC7を管理サーバ5に送信させる。管理サーバ5は、オーダ取得要求コマンドC7に応答して、最新のオーダデータD7を中継装置10に送信する。中継装置10において、データ受信部54がオーダデータD7を受信すると、キャッシュ制御部36がオーダデータを、受信時刻t5に関連づけてメモリ40に上書きする。
【0049】
以上のように、コマンド送信制御部32は、データ受信部54が管理サーバ5からオーダデータを受信してから所定時間が経過した後、イベント受信部22が検査終了通知E5を受信し、またコマンド受信部24がオーダ取得要求コマンドC4を受信すると、コマンド送信部52にデータ取得要求コマンドを送信させる。このように中継装置10は、管理サーバ5との間の通信負荷が過剰になることを避けつつ、最新のデータをメモリ40に記憶させるように、データの取得処理を実施する。
【0050】
図5に示すように、コマンド送信制御部32は、クライアント3からのイベント通知(実際にはイベントIDの通知)にもとづくデータ取得要求コマンドの送信制御と、クライアント3からのデータ取得要求コマンドにもとづくデータ取得要求コマンドの送信制御とを実施している。具体的には、オーダ取得要求コマンドC1、C7が、クライアント3からのイベント通知にもとづいており、オーダ取得要求コマンドC5が、クライアント3からのデータ取得要求コマンドにもとづいている。
【0051】
ここでイベント通知にもとづいたデータ取得要求コマンドの送信は、データの事前取得を目的としたものであるため、コマンド送信に適切でない環境下においてまで実施する必要はない。たとえば中継装置10と管理サーバ5との間の通信環境が著しく悪化している場合にまで、データの事前取得を行う必要性は乏しい。そこでコマンド送信制御部32は、中継装置10と管理サーバ5との間の通信速度を計測し、計測した通信速度と所定の基準速度との比較結果にもとづいて、イベント通知にもとづくデータ取得要求コマンドの送信可否を決定してもよい。
【0052】
一方で、クライアント3からのデータ取得要求コマンドにもとづいたデータ取得要求コマンドの送信は、通信環境の良否に関係なく、ただちに実施する必要がある。そこでコマンド送信制御部32は、コマンド受信部24がデータ取得要求コマンドをクライアント3から受信したときにコマンド送信部52にデータ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信させる場合には、計測した通信速度と所定の基準速度との比較結果によらずに、データ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信させてよい。
【0053】
以上、本発明を複数の実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
実施例では、データの受信日時から所定時間が経過したことが判定されると、コマンド送信部52がデータ取得要求コマンドを管理サーバ5に送信し、データ受信部54がデータを管理サーバ5から受信して、キャッシュ制御部36が、受信したデータをメモリ40に上書きすることを説明した。変形例ではデータ受信日時から所定時間が経過すると、キャッシュ制御部36が、メモリ40からデータを自動削除するようにしてもよい。この変形例では、コマンド受信部24が、クライアント3からデータ取得要求コマンドを受信すると、データ送信制御部34が、メモリ40にデータが記憶されているか否かを確認し、データが記憶されていればデータ送信部26から送信させ、データが記憶されていなければ、コマンド送信制御部32がデータ取得要求コマンドをコマンド送信部52から送信させるようにしてもよい。
【0055】
実施例では、クライアント3が、内視鏡検査を実施する医療施設における機器であることを説明したが、別の検査や手術を実施する医療施設における機器であってもよい。またクライアント3は、医療施設における機器に限らず、様々な分野の施設において利用される機器であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・情報処理システム、2・・・医療施設情報システム、3・・・クライアント、4・・・サーバシステム、5・・・管理サーバ、6・・・DB、7・・・ネットワーク、10・・・中継装置、20・・・第1通信部、22・・・イベント受信部、24・・・コマンド受信部、26・・・データ送信部、30・・・コマンド取得部、32・・・コマンド送信制御部、34・・・データ送信制御部、36・・・キャッシュ制御部、38・・・記録部、40・・・メモリ、50・・・第2通信部、52・・・コマンド送信部、54・・・データ受信部。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、通信を中継する技術分野に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5