(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造装置であって、
周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール及び第2ロールを有し、それら両ロールの噛み合い部に導入された前記第1シートを凹凸形状に変形させる凹凸賦形部、超音波ホーンを備えた超音波融着機を有し、凹凸形状に変形させた状態の前記第1シート上に前記第2シートを重ね合わせ、それら両シートを、前記第1ロールの凸部と前記超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加することで、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成する超音波処理部を備えており、
前記超音波ホーンの先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている、複合シートの製造装置。
前記第1ロールの前記凸部は、該第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凸の円弧状の先端面を有し、前記振動印加面の曲率半径が前記第1ロールの前記凸部の先端面の曲率半径の100%以上200%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合シートの製造装置。
前記超音波振動を印加する前の前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方を予熱する予熱手段を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合シートの製造装置。
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造方法であって、
周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール及び第2ロールを回転させながら、それら両ロールの噛み合い部に前記第1シートを導入して凹凸形状に変形させる賦形工程、凹凸形状に変形させた前記第1シートを、前記第1ロール上に保持しつつ搬送し、搬送中の前記第1シートに前記第2シートを重ね合わせる重ね合わせ工程、及び、重ね合わせた両シートを、前記第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加する超音波処理工程を具備しており、
前記超音波処理工程においては、前記超音波ホーンとして、先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている超音波ホーンを用いて超音波振動を印加することにより、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成する、複合シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明の複合シートの製造装置又は製造方法により製造される複合シートについて、
図1を参照しつつ説明する。
図1に示す複合シート10は、本発明の複合シートの製造装置又は製造方法により製造される複合シートの一例であり、
図1に示すように、第1シート1及び第2シート2が融着した複数の融着部4を有し、該融着部4に貫通孔14が形成されている。複合シート10は、第1シート1及び第2シート2が融着した融着部4を、第1方向(X方向)及び第1方向と直交する第2方向(Y方向)のそれぞれに複数有している。複合シート10における融着部4の配置パターンは、特に制限されるものではないが、
図1に示す複合シート10においては、融着部4は千鳥状に配置されている。より具体的には、複数の融着部4が直列した列が多列に形成されており、互いに隣接する列における融着部4は、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
【0013】
本発明の複合シートの製造装置又は製造方法により製造される複合シートは、融着部4を部分的に有する平坦なシートであってもよい。例えば、融着部4を、
図1に示す複合シート10と同様の千鳥状パターンに有する一方、融着部4と融着部4との間に、凸部5が実質的に形成されていないものであってもよく、例えば、製造する複合シートは、融着部4以外の部分の厚みが、第1シート1の厚みと第2シート2の厚みとの合計に対して1.2倍以下であってもよい。
【0014】
図1に示す複合シート10は、第1シート1における融着部4以外の部分の少なくとも一部が、第2シート2側とは反対側に突出した凸部5を形成している。また複合シート10は、第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)のそれぞれにおける隣り合う融着部4間に凸部5を有している。
【0015】
複合シート10は、吸収性物品の表面シート等として好ましく用いられる。吸収性物品の表面シートとして用いられるときには、第1シート1が、着用者の肌側に向けられる面(以下、肌対向面ともいう)を形成し、第2シート2が、着用時に吸収体側に向けられる面(以下、非肌対向面ともいう)を形成する。
【0016】
凸部5及び融着部4は、複合シート10の面と平行な一方向である
図1中のX方向に、交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、複合シート10の面と平行で且つ前記一方向に直交する方向である
図1中のY方向に、多列に形成されている。互いに隣接する列における凸部5及び融着部4は、それぞれ、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
複合シート10において、前記Y方向は、製造時における流れ方向(MD,機械方向)と一致し、前記X方向は、製造時における流れ方向に直交する方向(CD)と一致している。
【0017】
第1シート1及び第2シート2は、シート材料から構成されている。シート材料としては、例えば不織布、織布及び編み地などの繊維シートや、フィルムなどを用いることができ、肌触り等の観点から繊維シートを用いることが好ましく、特に不織布を用いることが好ましい。第1シート1と第2シート2を構成するシート材料の種類は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0018】
第1シート1及び第2シート2を構成するシート材料として不織布を用いる場合の不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体や、これらの不織布とフィルム等とを組み合わせた積層体を用いることもできる。第1シート1及び第2シート2を構成するシート材料として用いる不織布の坪量は、好ましくは10g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上であり、また好ましくは40g/m
2以下、より好ましくは35g/m
2以下である。不織布の坪量は10g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましく、15g/m
2以上35g/m
2以下であることが更に好ましい。
【0019】
不織布を構成する繊維としては、各種の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。不織布以外のシート材料としても、構成繊維や構成樹脂が、各種の熱可塑性樹脂からなるものが好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上のブレンド物として用いることができる。また、芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの複合繊維の形態で用いることができる。
【0020】
複合シート10は、
図1に示されるように、第1シート1側の面に、X方向及びY方向の両方向において凸部5に挟まれた多数の凹部3を有しており、個々の凹部3の底部に、貫通孔14を有する融着部4が形成されている。複合シート10は、全体として見ると、第1シート1側の面に、前記の凹部3と前記の凸部5とからなる起伏の大きな凹凸を有し、第2シート2側の面は、平坦であるか、第1シート1側の面に対して相対的に起伏が小さい略平坦面となっている。
【0021】
複合シート10における個々の融着部4は、
図2に示すように、前記Y方向に長い、略長方形状の平面視形状を有しており、それぞれの内側に、平面視形状が略長方形状の貫通孔14が形成されている。換言すると、個々の融着部4は、貫通孔14を囲む環状に形成されている。貫通孔14は、一つの融着部4に一つのみ形成されていることが好ましく、融着部4の位置との関係において予め決められた特定の位置に形成されていることが好ましい。また、貫通孔14は、平面視形状が融着部4の外周縁の平面視形状と相似形であっても相似形でなくても良いが、相似形であることが好ましい。
融着部4においては、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を構成する熱融着性樹脂が溶融固化していることによって第1シート1と第2シート2とが結合している。第1シート1及び第2シート2が、不織布等の繊維シートから構成されている場合、融着部4においては、第1シート1及び第2シート2の構成繊維は、溶融するか溶融した樹脂に埋没して、目視においては繊維状の形態を観察できないこと、すなわち外観上フィルム化した状態となっていることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の複合シートの製造装置及び製造方法の第1実施形態について説明する。本発明の複合シートの製造方法の第1実施形態においては、
図3に示す第1実施形態の複合シートの製造装置20を用いて、前述した複合シート10を製造する。
【0023】
図3に示す複合シートの製造装置20について説明すると、複合シートの製造装置20は、第1シート1及び第2シート2が融着した複数の融着部4を有し、該融着部4に貫通孔14が形成されている複合シート10を製造する装置であり、超音波ホーン42を備えた超音波融着機41と、周面部に凹凸を有する第1ロール31とを有する超音波処理部40を備えている。超音波処理部40は、互いに重ね合わせた第1シート1及び第2シート2を第1ロール31の凸部35と超音波ホーン42との間に挟んで超音波振動を印加することで、貫通孔14を形成するとともに、貫通孔14を有する融着部4を形成するようになされている。また、複合シートの製造装置20は、第1シート1を凹凸形状に変形させる凹凸賦形部30を備えている。また、複合シートの製造装置20は、超音波振動を印加する前の第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を所定の温度に予熱する予熱手段6を備えている。
【0024】
複合シートの製造装置20についてより詳細に説明する。
凹凸賦形部30は、
図3に示すように、周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1及び第2ロール31,32を有し、両ロール31,32を矢印a方向に回転させながら、それら両ロール31,32の噛み合い部33に第1シート1を導入することにより、第1シート1が、第1ロール31の周面部の凹凸の形状に沿った凹凸形状に変形するようになっている。
【0025】
図4は、第1ロール31の要部を拡大して示す斜視図である。
図4には、第1ロール31の周面部の一部が示されている。
第1ロール31は、所定の歯幅を有する平歯車31a,31b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯が、第1ロール31の周面部における凹凸形状の凸部35を形成しており、該凸部35の先端面35cが、後述する超音波融着機41の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間で、融着対象である第1及び第2シート1,2を加圧する加圧面となっている。
各歯車の歯幅(歯車の軸方向の長さ)は、複合シート10の凸部5における前記X方向の寸法を決定し、各歯車の歯の厚み(歯車の回転方向の長さ)は、複合シート10の凸部5における前記Y方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1ロール31は、その周面部が凹凸形状となっている。
本実施形態においては、各凸部35の先端面35cは、第1ロール31の回転方向が長辺で、軸方向が短辺の矩形状となっている。先端面35cは、回転方向に沿う長さが軸方向に沿う長さより長い形状であると、第1ロール31の個々の凸部35と、超音波ホーン42の振動印加面42tとの接触時間を長くし、第1及び第2シート1,2の加圧部位の温度を上げやすくすることができるので好ましい。
【0026】
第1ロール31における各歯車の歯溝部は、第1ロール31の周面における凹凸の凹部を形成している。各歯車の歯溝部の底部には、吸引孔34が形成されている。吸引孔34は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1ロール31と第2ロール32との噛み合い部33から、第1シート1と第2シート2との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1ロール31と第2ロール32との噛み合いによって凹凸形状に変形された第1シート1は、吸引孔34による吸引力によって、第1ロール31の凹凸に沿った形状に変形した状態に維持された状態で、第1シート1と第2シート2との合流部及び超音波融着機による超音波振動の印加部36に搬送される。
この場合、
図4に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1シート1に無理な伸長力を加えたり、両ロール31,32の噛み合い部33で、第1シート1を切断したりすることを抑制することができ、第1シート1を第1ロール31の周面に沿った形状に変形させ得るので好ましい。
【0027】
第2ロール32は、周面部に、第1ロール31の周面部の凹凸と互いに噛み合う凹凸形状を有している。第2ロール32は、吸引孔34を有しない以外は、第1ロール31と同様の構成を有している。そして、互いに噛み合う凹凸を有する第1及び第2ロール31,32を回転させながら、両ロール31,32の噛み合い部33に、第1シート1を導入することにより、第1シート1を凹凸形状に変形させることができる。噛み合い部33においては、第1シート1の複数個所が、第2ロール32の凸部によって第1ロール31の周面部の凹部に押し込まれ、その押し込まれた部分が、製造される複合シート10の凸部5となる。第2ロール32の周面部には、第1ロール31の凹部に挿入される複数の凸部が形成されているが、第2ロール32に、第1ロール31の凹部のすべてに対応する凸部が形成されていることは必須ではない。
【0028】
超音波処理部40は、
図3及び
図6に示すように、超音波ホーン42を備えた超音波融着機41を有しており、凹凸形状に変形させた状態の第1シート1上に第2シート2を重ね合わせた後、それら両シート1,2を、第1ロール31の凸部と超音波ホーン42との間に挟んで部分的に超音波振動を印加することで、貫通孔14を形成するとともに、該貫通孔14を有する融着部4を形成する。
【0029】
超音波融着機41は、
図3に示すように、超音波発振器(図示せず)、コンバーター43、ブースター44及び超音波ホーン42を備えている。超音波発振器(図示せず)は、コンバーター43と電気的に接続されており、超音波発振器により発生された周波数15kHz〜50kHz程度の波長の高電圧の電気信号が、コンバーター43に入力される。超音波発振器(図示せず)は、可動台45上又は可動台45外に設置されている。
コンバーター43は、ピエゾ圧電素子等の圧電素子を内蔵し、超音波発振器から入力された電気信号を、圧電素子により機械的振動に変換する。ブースター44は、コンバーター43から発せられた機械的振動の振幅を調整、好ましくは増幅して超音波ホーン42に伝達する。超音波ホーン42は、アルミ合金やチタン合金などの金属の塊でできており、使用する周波数で正しく共振するように設計されている。ブースター44から超音波ホーン42に伝達された超音波振動は、超音波ホーン42の内部においても増幅、又は減衰されて、融着対象である第1及び第2シート1,2に印加される。斯かる超音波融着機41としては、市販の超音波ホーン、コンバーター、ブースター、超音波発振器を組み合わせて用いることができる。
【0030】
第1実施形態の超音波融着機41における超音波ホーン42の先端部には、
図6及び
図7に示すように、第1ロール31の回転軸31cに直交する断面の形状(以下「軸直交断面形状」という)が、該回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面42tが形成されている。
本実施形態における振動印加面42tは、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる超音波ホーン42の本体部分42cの先端面42mからなり、第2シート2に直接当接するが、
図9(a)に示す実施形態のように、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる本体部分42cの先端面42mからなる振動印加面42tの表面に、蓄熱層42h等の表面被覆層が設けられ、第2シート2に直接当接する面が、該表面被覆層の表面htであっても良い。本発明における「振動印加面」は、超音波ホーン42の振動印加面42tと第1ロール31の凸部35の先端面35cとの間で、融着対象である第1及び第2シート1,2を加圧する際にも、軸直交断面形状が、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状を維持する硬質材料、例えば、アルミ合金やチタン合金等の金属等の硬質材料からなることが好ましい。なお、蓄熱層42h等の表面被覆層の表面ht、すなわち超音波振動の印加時に第1ロール31の凸部35と対向させる表面が、融着対象である第1及び第2シート1,2を加圧する際にも、本体部分42cの先端面42mからなる振動印加面42tと同様の、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状の軸直交断面形状を維持する場合、該表面被覆層の表面htを振動印加面42tと考えても良い。
【0031】
超音波融着機41は、可動台45上に固定されており、可動台45の位置を、第1ロール31の周面に近づく方向に向かって進退させることで、超音波ホーン42の振動印加面42tと、第1ロール31の凸部35の先端面35cとの間のクリアランス、及び積層された第1及び第2シート1,2に対する加圧力を調節可能となっている。
そして、第1ロール31の凸部35の先端面35cと超音波融着機41の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで加圧しながら、融着対象である第1及び第2シート1,2に超音波振動を印加することにより、第1シート1における、凸部35の先端面35c上に位置する部分のそれぞれが、第2シート2に融着し、融着部4が形成されるとともに、両シート1,2を貫通する貫通孔14が、溶融部分に囲まれた状態に形成される。
【0032】
第1実施形態の複合シートの製造装置20によれば、超音波ホーン42の先端部に断面円弧状の振動印加面42tが形成されているため、
図7(b)に示すように、超音波ホーン42の先端面42mが平坦で、第1ロール31の凸部35の先端面35cの軸直交断面形状が外方に向かって凸の円弧状である場合に比して、第1及び第2シート1,2における、凸部35の先端面35c上に位置する部分のシートの移動方向eにおける前端Paと後端Pbとの間の各部、例えば
図7(b)に示すP1部,P2部,P3部に対して相対的に長時間の加圧及び超音波振動の印加を行うことができる。そのため、第1シート1や第2シート2の予熱を省略したり、該予熱の程度を抑えても、第1及び第2シート1,2における、超音波ホーン42の振動印加面42tと凸部35の先端面35cとで挟んだ部分を効果的に溶融させることができる。また、超音波ホーン42の先端部に、軸直交断面形状が円弧状の振動印加面42tが形成されているため、第1及び第2シート1,2の溶融した部分にかかるせん断力が向上し、容易に貫通孔14を形成することができる。
このような作用により、第1実施形態の製造装置20によれば、超音波融着機41を用いて、第1及び第2シート1,2に貫通孔14を有する融着部4を効率よく形成することができる。また、超音波融着機の超音波ホーン42の位置を、第1ロール31の回転に伴う凸部35の移動に連動して、第1ロール31の周方向に移動させる必要もない。
図7(a)には、
図7(b)に示すP2部に対応する部位が溶融し、且つ溶融した樹脂が前後に移動して、貫通孔14が形成された状態が示されている。
【0033】
また融着部4の形成と貫通孔14の形成とを同時に行うことで、複合シートの装置構成や製造ラインを簡素化することができる。また融着部4の形成と貫通孔14の形成とを同時に行うことで、融着部4に対する貫通孔14の形成位置を一定の位置としたい場合にその実現も容易である。
【0034】
超音波ホーン42の振動印加面42tには、ローレット加工等の摩擦力を高める加工を施すことも、融着部4に一層確実に貫通孔14を形成させる観点から好ましい。
また本実施形態においては、超音波ホーン42の先端面と第1ロール31の凸部35の先端面との間のクリアランス(隙間の距離)は、個々の凸部35の、第1ロール31の回転方向の前端と後端と前後端間の中央部とで同一であるが、第1及び第2シート1,2を上端面上に保持した状態で、超音波ホーン42の先端面に対向部位に先に移動する前端(第1及び第2シート1,2の導入側)のクリアランスが、後端(第1及び第2シート1,2の出口側)のクリアランスより大きくすることも、超音波処理部に第1及び第2シート1,2をスムーズに導入する観点から好ましい。
【0035】
超音波ホーン42の先端部に形成する振動印加面42tは、
図6に示すように、第1ロール31の凸部35の先端が通る円形の軌道Ctに沿って湾曲していることが、超音波ホーン42の先端部と第1ロール31の凸部35とによる第1及び第2シート1,2の挟み込み及び融着部4形成後の時間を長くする観点から好ましく、軸直交断面(
図6及び
図7参照)において、超音波ホーン42の振動印加面42tの曲率半径は、前記円形軌道Ctの半径dに対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である。
【0036】
また本実施形態における第1ロール31の個々の凸部35は、
図7に示すように、第1ロール31の回転軸31cに直交する断面の形状が、該回転軸31cから離れる方向に向かって凸の円弧状の先端面35cを有しており、個々の凸部35の先端面35cと前述した振動印加面42tとで、軸直交断面における湾曲の向きが一致している。
【0037】
軸直交断面(
図6及び
図7参照)において、超音波ホーン42の振動印加面42tの曲率半径は、第1ロール31の凸部35の先端面35cの曲率半径に対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である。
【0038】
本実施形態における振動印加面42tは、第1ロール31の回転軸31cと平行な方向の全域に亘って、軸直交断面形状が
図7(a)に示す円弧状の形状を有しているが、回転軸31cと平行な方向における凸部35と対向しない部位等に異なる、断面形状の部分を設けても良い。例えば、
図4に示すように、第1ロール31を構成する隣り合う歯車間に空隙Gを設けた場合、超音波ホーン42の先端面における該空隙Gと対向する部位に、円弧状の振動印加面42tから突出しない平坦な部分等を設けても良い。
【0039】
第1実施形態の複合シートの製造装置20は、第1ロール31内に配置されたヒーター61を有する予熱手段6を備えている。より具体的には、第1ロール31内に配置されたヒーター61等の加熱手段、超音波振動を印加する前のシートの温度を計測可能な測温手段(図示せず)、及び測温手段の測定値に基づき、ヒーター61の温度を制御する温度制御部(図示せず)を備えている。測温手段による測定値に基づき、ヒーター61による第1ロール31の周面部の加熱温度を制御することにより、超音波振動を印加される直前の第1シート1の温度を、所望の温度に高精度に制御することができる。
好ましい実施形態において、ヒーター61は、第1ロール31に、その軸長方向に沿って埋め込まれている。またヒーター61は、第1ロール31の回転軸の周囲における外周部の近傍に、周方向に間隔を設けて複数配置されている。ヒーター61による第1ロール31の周面部の加熱温度は、図示しない温度制御部によって制御されており、複合シートの製造装置20の運転中、超音波振動の印加部36に導入される第1シート1の温度を、所定の範囲の温度に維持することができる。
【0040】
予熱手段6は、加熱対象物に外部から熱エネルギーを加えて加熱する加熱手段を備えることが好ましい。加熱手段としては、例えば、電熱線を用いたカートリッジヒーター挙げられるが、これに限られず、各種公知の加熱手段を特に制限なく用いることができる。
超音波融着機は、融着対象物に超音波振動を印加し、それにより融着対象物を発熱及び溶融させて融着させるものであり、ここでいう加熱手段には含まれない。
【0041】
本発明の第1実施形態の製造方法においては、
図3に示すように、第1及び第2ロール31,32を矢印a方向に回転させながら、原反ロール(図示せず)から繰り出した第1シート1を、それら両ロール31,32の噛み合い部33に導入して、凹凸形状に変形させる(賦形工程)。そして、凹凸形状に変形させた第1シート1を、第1ロール31上に保持しつつ搬送し、搬送中の第1シート1に、第1シート1とは別の原反ロール(図示せず)から繰り出した第2シート2を重ね合わせる(重ね合わせ工程)。そして、その重ね合わせた両シート1,2を、
図6に示すように、第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで超音波振動を印加する(超音波処理工程)。そして、超音波処理工程において、超音波振動を印加することにより、貫通孔14を形成するとともに、該貫通孔14を有する融着部4を形成する。
【0042】
第1実施形態の製造方法においては、この超音波振動の印加に先立ち、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を、該シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておくことが好ましい。すなわち、超音波振動の印加に先立ち、以下の(1)及び(2)の何れか一方又は双方を行うことが好ましい。
(1)第1シート1を、該第1シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。
(2)第2シート2を、該第2シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。
好ましくは、第1シート1を、該第1シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておくとともに、第2シート2を、該第2シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。
【0043】
第1シート1を、第1シート1の融点未満、該融点より50℃低い温度以上とする方法としては、例えば、第1ロール31上の第1シート1の温度を、第1及び第2ロール31,32の噛み合い部33と、超音波融着機による超音波振動の印加部36との間において測定し、その測定値が、前述した特定の範囲内となるように、第1ロール31の周面部の温度を制御する。第1シート1を、特定の範囲の温度に予熱する方法としては、第1シート1が、特定の範囲の温度となるように、第1ロール31の周面部の温度を第1ロール31内に配したヒーターにより制御する方法に代えて、多様な方法を用いることができる。例えば、第1ロール31の周面部の近傍にヒーターや熱風の吹き出し口、遠赤外線の照射装置を設け、それらにより、第1シート1を沿わせる前又は後の第1ロール31の周面部の温度を制御する方法、噛み合い部33において第1シート1に接触する第2ロール32を加熱し、その周面部の温度制御により第1シート1の温度を制御する方法、第1ロール31に沿わせる前の第1シート1に対して、加熱されたローラーに接触させたり、高温に維持した空間を通過させたり、熱風を吹き付けたりする方法等が挙げられる。
他方、第2シート2を、第2シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上とする方法としては、第1シート1と合流させる前の第2シートの温度を、第2シートの搬送路中に配置した測温手段で計測し、その測定値が、前述した特定の範囲内となるように、第2シートの搬送路中に配した第2シートの加熱手段(図示せず)の温度を制御することが好ましい。第2シートの加熱手段は、加熱されたローラー等を接触させる等の接触方式でもよいし、高温に維持した空間を通過させたり、熱風を吹き付けたり貫通させたり赤外線を照射する等の非接触式でもよい。
【0044】
第1シート1及び第2シート2の融点は、以下の方法により測定される。
例えば、Perkin−Elmer社製の示差走査熱量測定装置(DSC)PYRIS
Diamond DSCを用いて測定する。測定データのピーク値から融点を割り出す。第1シート1又は第2シート2が、不織布等の繊維シートであり、その構成繊維が、芯鞘型、サイド・バイ・サイド型等の複数成分からなる複合繊維である場合、そのシートの融点は、DSCにより測定した複数の融点の内、最低温度の融点を複合繊維シートの融点とする。
【0045】
第1実施形態の複合シートの製造方法においては、このように、重ね合せた第1及び第2シート1,2を、第1ロール31の凸部と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで超音波振動を印加し、貫通孔14を有する融着部4を形成される。第1実施形態の複合シートの製造方法においては、第1及び第2シート1,2の少なくとも一方を、該シートが溶融しない前述した特定の範囲の温度に予熱しておき、その上で、一方又は双方が予熱された状態の両シート1,2に対して、超音波振動を印加するのが好ましい。このとき、超音波振動を印加する際の条件、例えば、印加する超音波振動の波長、強度、両シート1,2を加圧する圧力等を調節して、超音波振動により、両シート1,2が溶融して融着部4が形成されるとともに、両シート1,2を貫通する貫通孔14が、溶融部分に囲まれた状態に形成されるようにすることが好ましい。
【0046】
第1実施形態の複合シートの製造方法によれば、超音波ホーン42の先端部に断面円弧状の振動印加面42tが形成されているため、
図7(b)に示すように、超音波ホーン42の先端面42mが平坦で、第1ロール31の凸部35の先端面35cの軸直交断面形状が外方に向かって凸の円弧状である場合に比して、第1及び第2シート1,2における、凸部35の先端面35c上に位置する部分のシートの移動方向eにおける前端Paと後端Pbとの間の各部、例えば
図7(b)に示すP1部,P2部,P3部に対して相対的に長時間の加圧及び超音波振動の印加を行うことができる。そのため、第1シート1や第2シート2の予熱を省略したり、該予熱の程度を抑えても、第1及び第2シート1,2における、超音波ホーン42の振動印加面42tと凸部35の先端面35cとで挟んだ部分を効果的に溶融させることができる。また、超音波ホーン42の先端部に、軸直交断面形状が円弧状の振動印加面42tが形成されているため、第1及び第2シート1,2の溶融した部分にかかるせん断力が向上する。
このような作用により、第1実施形態の複合シートの製造方法によれば、超音波融着機41を用いて、第1及び第2シート1,2に貫通孔14を有する融着部4を効率よく形成することができる。また、超音波融着機の超音波ホーン42の位置を、第1ロール31の回転に伴う凸部35の移動に連動して、第1ロール31の周方向に移動させる必要もない。
【0047】
また融着部4の形成と貫通孔14の形成とを同時に行うことで、複合シートの装置構成や製造ラインを簡素化することができる。また融着部4の形成と貫通孔14の形成とを同時に行うことで、融着部4に対する貫通孔14の形成位置を一定の位置としたい場合にその実現も容易である。
【0048】
第1実施形態の複合シートの製造方法によれば、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方、好ましくは両方を、ヒーター等の加熱手段によりシートが溶融しない程度の高温に予め加熱しておき、その上で、第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間で加圧しつつ超音波振動を印加し、貫通孔14を有する融着部4を形成させることにより、両シート1,2を予熱しない場合に比べて、貫通孔14を有する融着部4をより確実に形成することができるとともに、両シート1,2を融点を超える温度に予熱した場合に生じやすい不都合、例えば、溶融樹脂の搬送手段への付着やシートの搬送ロールへの巻き付き等の不都合も生じにくいため、装置のメンテナンス負担も小さい。
【0049】
第1実施形態の複合シートの製造方法により得られる複合シート10は、凹凸を有する上に凹部の底部に、貫通孔14を有する融着部4を有するため、肌触りや平面方向における液の拡散防止性に優れており、また通気性や液の引き込み性にも優れている。
複合シート10は、斯かる特性を生かして、吸収性物品の表面シートとして好ましく用いられるが、複合シート10の用途はそれに限られるものではない。
【0050】
前述した一又は二以上の効果がより確実に奏されるようにする観点から、本願発明の製造装置及び製造方法は、以下の構成を有することが好ましい。
(1)第1シート1は、第1シート1の融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、第1シート1の融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下に予熱することが更に好ましい。
(2)第2シート2は、第2シート2の融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、第2シート2の融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下の温度に予熱することが更に好ましい。
【0051】
第1シート1及び第2シート2それぞれの予熱温度は、貫通孔14の形成しやすさの観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、搬送手段への付着防止や搬送ロールへの巻きつき防止の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。
【0052】
また、融着部4、貫通孔14の形成しやすさの観点から、第1ロール31の凸部35の先端面35cと超音波ホーン42の先端面との間に挟んで第1及び第2シート1,2に加える加圧力は、好ましくは10N/mm以上、より好ましくは15N/mm以上であり、また好ましくは30N/mm以下、より好ましくは25N/mm以下であり、好ましくは10N/mm以上30N/mm以下、より好ましくは15N/mm以上25N/mm以下である。
ここでいう加圧力は、いわゆる線圧であり、超音波ホーン42の加圧力(N)を超音波ホーン42と触れる凸部35の歯幅(X方向)の合計(第1ロール31の凹部は含まない)の長さで除した値(単位長さあたりの圧力)で示す。
【0053】
また、融着部4、貫通孔14の形成のしやすさの観点から、印加する超音波振動の周波数は、好ましくは15kHz以上、より好ましくは20kHz以上であり、また好ましくは50kHz以下、より好ましくは40kHz以下であり、また好ましくは15kHz以上50kHz以下、より好ましくは20kHz以上40kHz以下である。
〔周波数の測定方法〕
レーザー変位計等でホーン先端の変位を計測する。サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで周波数を測定する。
【0054】
また、融着部、貫通孔の形成のしやすさの観点から、印加する超音波振動の振幅は、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上であり、また好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下であり、また好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは25μm以上40μm以下である。
〔振幅の測定方法〕
レーザー変位計等でホーン先端の変位を計測する。サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで振幅を測定する。
【0055】
次に、本発明の複合シートの製造装置及び製造方法の第2及び第3実施形態について説明する。
第2実施形態の複合シートの製造方法においては、
図8に要部を示す第2実施形態の複合シートの製造装置を用いて、前述した複合シート10を製造する。
第2実施形態の複合シートの製造装置は、第1ロール31内に配置されたヒーター61(予熱手段)に代えて超音波融着機41の超音波ホーン42を加熱する手段を備える点のみが、前述した複合シートの製造装置20と異なる。より具体的に、第2実施形態の複合シートの製造装置は、超音波ホーン42を加熱する手段として、超音波ホーン42に取り付けられたヒーター62を備える。
第2実施形態の複合シートの製造方法においては、ヒーター62によって加熱される超音波ホーン42の温度を制御することによって、超音波振動を印加される直前の第2シート2の温度を、該シート2の融点未満、該融点より50℃低い温度以上に加熱しておき、その状態で、第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42との間に挟んだ、第1及び第2シート1,2に超音波振動を印加する。
【0056】
超音波ホーン42を、ヒーター62等の加熱手段によって加熱する場合、超音波融着機により超音波振動を加えた状態では、第1及び第2シート1,2が発熱して、予熱手段により加熱したシートの温度が測定しにくい。そのため、加熱した超音波ホーン42を介して第1及び第2シート1,2の一方又は双方を予熱する場合は、超音波振動を生じさせることなく加熱のみを30分間行った後に該超音波ホーン42の先端面の温度を測定し、その測定値を、予熱手段により加熱したシートの温度とする。
第2実施形態について特に説明しない点は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0057】
第3実施形態の複合シートの製造方法においては、
図9(a)に要部を示す第3実施形態の複合シートの製造装置を用いて、前述した複合シート10を製造する。
第3実施形態の複合シートの製造装置は、超音波振動の印加に先立ち、第1シート及び第2シートの少なくとも一方を所定の温度に加熱する予熱手段を具備しない一方、超音波ホーン42の先端部に蓄熱層42hを備えた超音波ホーン42を具備する点のみが、前述した複合シートの製造装置20と異なる。
第3実施形態で用いる超音波ホーン42は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる本体部分42cの先端面42mからなる振動印加面42tの表面に、溶射により形成された接続層42fを介して蓄熱層42hが設けられている。また、その超音波ホーン42は、金属からなる本体部分42cの先端面42mからなる振動印加面42tと、蓄熱層42hからなる表面htとが、略同一の3次元形状を有しており、いずれも、第1ロール31の回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状の軸直交断面形状を有している。本実施形態における接続層42f及び蓄熱層42hは、振動印加面42tの表面を被覆する表面被覆層である。
図9(a)中、丸C2部分は、丸C1部分の第1ロールの回転軸に直交する断面を示す拡大断面図である。
【0058】
第3実施形態の製造方法においては、第1実施形態の製造方法と同様にして、第1シート1を、第1及び第2ロール31,32の噛み合い部33に導入して、凹凸形状に変形させた後、その凹凸形状に変形させた第1シート1を第1ロール31上に保持しつつ超音波振動の印加部36に向かって搬送し、搬送中の第1シート1に第2シート2を重ね合わせた後、その重ね合わせた両シート1,2に対し、超音波振動の印加部36において、第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで超音波振動を印加する。
【0059】
第3実施形態の製造方法によれば、複合シートの製造装置の運転開始直後においては、蓄熱層42hからなる超音波ホーン42の先端部の温度は、第1及び第2シート1,2の融点以下であるが、運転を継続すると、超音波振動により発熱した第1及び第2シート1,2の熱が蓄熱層42hに蓄えられ、蓄熱層42hの温度が、上昇して第1シート1及び第2シート2の融点以上となる。そして、蓄熱層42hの温度が、第1シート1及び第2シート2それぞれの融点以上となった状態においては、超音波振動を印加する際の条件、例えば、超音波振動の波長、強度、両シート1,2を加圧する圧力等を調節して、超音波振動の印加時に、両シート1,2が溶融するとともに、両シート1,2を貫通する貫通孔14が、溶融部分に囲まれた状態に形成されるようにすると、貫通孔14を有する融着部4を確実に形成することができるとともに、シートが溶融して生じる溶融樹脂の搬送手段への付着やシートの搬送ロールへの巻き付き等の不都合も生じにくいため、装置のメンテナンス負担も小さい。
【0060】
また第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42との間で、融着部4の形成と貫通孔14の形成とを同時に行うことで、融着部4の位置と貫通孔14の位置との間に位置ズレも生じない。
【0061】
蓄熱層42hは、少なくとも超音波ホーン42を構成する金属に比べて、熱伝導率が低い材料である蓄熱材7からなる。
蓄熱材7は、下記方法により測定した熱伝導率が2.0W/mK以下であることが好ましい。蓄熱材の熱伝導率は、超音波ホーンや大気に放熱しにくくする観点から、好ましくは2.0W/mK以下、より好ましくは1.0W/mK以下であり、また、シートを効率的に加熱する観点から、好ましくは0.1W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上であり、また好ましくは0.1W/mK以上2.0W/mK以下、より好ましくは0.5W/mK以上1.0W/mK以下である。
【0062】
〔熱伝導率の測定方法〕
蓄熱材7の熱伝導率は、熱伝導率測定装置を用いて測定する。
【0063】
蓄熱材7は、耐熱性があるものが好ましく用いられる。蓄熱性材料の耐熱温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上である。耐熱温度の上限は特にないが、例えば1500℃以下である。
【0064】
蓄熱層42hを形成する蓄熱材7は、耐摩耗性及び耐熱性に優れた合成樹脂であることが好ましい。合成樹脂は、超音波振動を受けてそれ自体も発熱する性能を有する点においても好ましい。
同様の観点から、蓄熱層42hは、ポリイミドやポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエチルケトン、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等の、ロックウエル硬度がR120以上R140以下で、耐熱温度が150℃以上500℃以下の合成樹脂からなることが好ましく、ポリイミドやポリベンゾイミダゾール等の、ロックウエル硬度がR125以上R140以下で、耐熱温度が280℃以上400℃以下の合成樹脂からなることが更に好ましい。
ここで、ロックウエル硬度は、ASTM D−785に従って測定した値であり、耐熱温度は、ASTM D−648に従って測定した値である。
【0065】
図9(a)に示す超音波ホーン42においては、
図9(b)に示すように、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる超音波ホーン42の本体部分42cの先端面42mに、溶射により一面42dから内部に至る空隙42eを有する接続層42fを形成した後、
図9(a)に示すように、該接続層42fの前記一面42d側に、蓄熱材7からなる蓄熱層42hを固定してある。溶射とは、加熱することで溶融又はそれに近い状態とした金属やセラミックスなどの溶射材料の粒子を、加速して基材面に高速で衝突させ、該基材面に被膜を形成する表面処理法である。チタン合金等の金属からなる超音波ホーン42の本体部分42cの先端面42mに、溶射により形成した接続層42fを介して、合成樹脂製の蓄熱層42hを設けることで、蓄熱層42hの形成材料として、耐摩耗性や耐熱性等に優れる一方、直接固定した場合には十分な固定強度が得られにくいポリイミド等の合成樹脂を用いた場合であっても十分な固定強度を容易に得ることができる。なお、固定強度が不十分であると、複合シート10の製造中に、蓄熱層42hが剥離する等の不都合が生じやすくなる。
【0066】
接続層42fを形成するための溶射材料としては、溶射可能で、合成樹脂製の蓄熱層42hの固定強度の向上に寄与し得るものを特に制限なく用いることができるが、チタン合金等の金属からなる超音波ホーン42の本体部分42cに対する結合力に優れ、耐摩耗性や耐熱性にも優れる観点から、タングステンカーバイド、ジルコニア、クロムカーバイド等のセラミックス、アルミマグネシウム、亜鉛アルミニウム等の合金、アルミニウム、ステンレス、チタン、モリブデン等の金属、金属とセラミックスの複合材であるサーミット等が好ましく用いられ、蓄熱層42hの固定強度を高める空隙42eを形成する観点から、セラミックスがより好ましく、タングステンカーバイドを用いることが更に好ましい。
また、接続層42fの形成材料は、合成樹脂製の蓄熱層42hを構成する合成樹脂に比して、融点が高く、蓄熱層42hを形成する際に空隙42eが形状を維持していることが、合成樹脂製の蓄熱層42hの固定強度を高める観点から好ましい。
【0067】
合成樹脂製の蓄熱層42hを接続層42fに固定する方法としては、加熱により溶融させた合成樹脂に接続層42fを浸漬する方法、加熱により溶融させた合成樹脂を接続層42fに塗工する方法、軟化させた合成樹脂の板状体を接続層42fに押し付ける方法等が挙げられる。
【0068】
接続層42fの厚みTf〔
図9(a)参照〕は、特に制限されないが、一例を挙げれば、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、また好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下である。
合成樹脂製の蓄熱層42hの厚みTh〔
図9(a)参照〕は、特に制限されないが、一例を挙げれば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、また好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
また接続層42fの厚みTfは、該厚みTfと合成樹脂製の蓄熱層42hの厚みThの合計厚みTtに対する割合が、合成樹脂の固定強度を維持しつつ、超音波振動や発熱を阻害しない観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また好ましくは85%以下、より好ましくは75%以下であり、また好ましくは30%以上85%以下、より好ましくは50%以上75%以下である。
【0069】
第3実施形態のように、超音波ホーン42の先端部に合成樹脂製の蓄熱層42hを備える複合シートの製造装置であっても、第1実施形態の複合シートの製造装置が備える予熱手段6や第2実施形態の複合シートの製造装置が備える超音波ホーン42を加熱する手段を有しても構わない。
【0070】
次に、本発明の複合シートの製造装置及び製造方法の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第1〜第3実施形態の変形例であり、矛盾しない限り、好ましい構成を含めて、第1〜第3実施形態と同様の構成を採用し得る。
第4実施形態の複合シートの製造方法においては、
図10に示す第4実施形態の複合シートの製造装置を用いて、前述した複合シート10と同様の複合シート10Aを製造する。
第4実施形態における凹凸賦形部30Aは、第2シート2を重ねる前の第1シート1を、第1ロール31の凹凸を用いて凹凸形状に変形させる。
【0071】
第4実施形態の製造装置20は、第1実施形態と同様に、第2シート2を重ねる前の第1シート1を、第1ロール31の凹凸を用いて凹凸形状に変形させる凹凸賦形部30Aを有しているが、その凹凸賦形部30Aは、
図10に示すように、第1実施形態の凹凸賦形部30Aとは異なる構成を有している。第4実施形態における凹凸賦形部30Aは、第2ロール32を有しておらず、第1シート1を第1ロール31側からの吸引によって、第1ロール31の周面部の凹凸形状に沿わせることによって、第1シート1を凹凸形状に変形させる。第1ロール31側に吸引する方法としては、例えば、前述した第1実施形態の第1ロール31における吸引孔34及び吸引源(不図示)を設ける方法が挙げられる。
【0072】
第4実施形態の製造装置20では、吸引孔34の吸引力を調整することによって、第1シート1に形成される凸部5の高さHを所望の高さに調整することができる。具体的には、吸引孔34の吸引力を強くすることにより、凸部5の高さHを高くすることができ、吸引孔34の吸引力を弱くすることにより、凸部5の高さHを低くすることができる。
【0073】
第4実施形態の製造方法では、
図10に示すように、凹凸賦形工程において、原反ロール(図示せず)から繰り出した第1シート1を、第1ロール1が有する吸引孔34による吸引力によって吸引し、第1シート1を第1ロール31の周面部の凹凸形状に沿うように変形させ、第1シート1を第1ロール31の凹凸に沿った形状に賦形する。その後、第1〜3実施形態の製造方法と同様にして、重ね合わせ工程、超音波処理工程を行い、複合シート10Aを製造する。
【0074】
尚、第4実施形態の製造装置20及び製造方法においては、凹凸賦形部30Aは吸引手段を有している必要は必ずしも無い。例えば、吸引手段に代えて、第1シート1における第1ロール31とは反対側から、該第1シート1に向けて空気流等を噴射し、該第1シート1を第1ロール31の周面部に押し付けてもよい。
【0075】
次に、本発明の複合シートの製造装置及び製造方法の第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1〜第4実施形態の変形例であり、特に記載しない点については、第1〜第4実施形態と同様の構成を採用し得る。
第5実施形態の複合シートの製造方法においては、
図11に示す第5実施形態の複合シートの製造装置を用いて、凹凸を有しない平坦な複合シート10Bを製造する。
第5実施形態の製造装置は、第1実施形態の製造装置20Bとは異なり、凹凸賦形部30を有していない。
【0076】
第5実施形態の製造装置20B及び製造方法により製造される複合シート10Bは、前述の複合シート10とは異なり、凹凸を有していない平坦なシートとなっている。具体的には、複合シート10Bでは、第1シート1には凸部5が形成されておらず、第1シート1は凹凸形状を有していない。
【0077】
第5実施形態の製造方法では、第1実施形態の製造方法とは異なり、凹凸賦形工程を行わずに重ね合わせ工程を行う。具体的には、
図11に示すように、重ね合わせ工程においては凹凸賦形されていない第1シート1と第2シート2とを重ね合わせる。その後、第1〜3実施形態と同様に超音波処理工程を行い、凹凸形状を有しない第1シート1と第2シート2とが融着部4で部分的に融着された平坦な複合シート10Bを製造する。
【0078】
本発明の製造装置又は製造方法により製造される複合シートは、以下の構成を有することが好ましい。
凸部5及び融着部4を有する複合シート10,10Aは、凸部5の高さH(
図1参照)は1〜10mm、特に3〜6mmであることが好ましい。複合シート10の単位面積(1cm
2)当たりの凸部5の数は1〜20、特に6〜15個であることが好ましい。凸部5のX方向の底部寸法A(
図1参照)は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。凸部5のY方向の底部寸法B(
図1参照)は1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。X方向の底部寸法AとY方向の底部寸法Bとの比(底部寸法A:底部寸法B)は1:1〜1:10、特に1:2〜2:5であることが好ましい。凸部5の底部面積(底部寸法A×底部寸法B)は0.5〜50mm
2、特に2〜20mm
2であることが好ましい。
【0079】
複合シート10,10A,10Bの融着部4は、X方向の寸法C(
図1参照)が0.5〜2mm、特に0.8〜1.5mmであることが好ましく、Y方向の寸法D(
図1参照)が1.0〜5.0mm、特に1.2〜3.0mmであることが好ましい。X方向の寸法CとY方向の寸法Dとの比(寸法C:寸法D)は1:1〜1:3、特に2:3〜2:5であることが好ましい。
【0080】
複合シート10,10A,10Bの融着部4は、外周縁より内側の面積が、好ましくは0.5mm
2以上、より好ましくは1.0mm
2以上であり、また好ましくは5.0mm
2以下、より好ましくは4.0mm
2以下であり、また好ましくは0.5mm
2以上5.0mm
2以下、より好ましくは1.0mm
2以上4.0mm
2以下である。融着部4の外周縁より内側の面積には、貫通孔14の面積も含まれる。
複合シート10,10A,10Bの貫通孔14の開口面積は、融着部4の外周縁より内側の面積に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上であり、また、好ましくは100%未満、より好ましくは95%以下であり、また、好ましくは50%以上100%未満、より好ましくは80%以上95%以下である。
【0081】
本発明の製造装置又は製造方法により製造される複合シートは、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品の表面シートとして好適に用いられる。
【0082】
また、吸収性物品の表面シート以外の用途に用いることもできる。
例えば、吸収性物品用のシートとして、表面シートと吸収体の間に配置されるシート、立体ギャザー(防漏壁)形成用のシート(特にギャザーの内壁を形成するシート)等に用いることができ、また、吸収性物品以外の用途として、清掃シート、特に液吸収を主とする清掃シートや、対人用の化粧シート等として用いることができる。清掃シートに用いる場合、凸部において、平滑でない被清掃面への追従性が良好であるため、第1不織布側を被清掃面に向けて使用することが好ましい。化粧シートとして用いる場合、凸部において対象者の肌に追従し、またマッサージ効果を発現するとともに、余分な化粧剤(別途使用)や汗の吸収を行うことができるため、第1不織布側を肌側に向けて使用することが好ましい。
【0083】
上述した複合シート10Bは、融着部4の配置パターンや、複合シート10Bの単位面積当たりの融着部4の面積率等を制御することにより、複合シート10Bの性能、例えば、液の透過性、硬さ等を所望の値に調整することができる。
【0084】
本発明の複合シートの製造方法及び製造装置は、上記の実施形態に何ら制限されず、適宜変更可能である。
例えば、上述した複合シート10は、第1シート1及び第2シート2が融着した融着部4を、第1方向(X方向)及び第1方向と直交する第2方向(Y方向)のそれぞれに複数有しており、第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)のそれぞれに、複数の融着部4を有するものであったが、本発明で製造する複合シートは、第1方向と第2方向とが90度以外の角度、例えば30度以上150度以下の角度や45度以上135度以下の角度で交差し、その第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに複数の融着部4を有するものであっても良い。
【0085】
また、上述した複合シート10は、個々の凹部に一つの融着部が形成されていたが、本発明で製造する複合シートは、一つの凹部に、複数の融着部を含むものであっても良い。また、複合シート10の凸部5は、四角錐台形状のものであったが、半球状のもの等であっても良い。また、互いに隣接する列における凸部5及び融着部4が、それぞれ、X方向にずれる程度は、1/2ピッチに代えて、1/3ピッチ、1/4ピッチ等であっても良く、更にX方向にずれていなくても良い。
また、融着部及び貫通孔の平面視形状は、楕円形、円形、角部を丸めた多角形(正方形、長方形、三角形、菱形等)等とすることができる。
【0086】
また、製造する複合シート10は、特開2016−116582の
図4又は
図5に示す形態で凸部及び融着部が形成されているものであっても良く、特開2016−116583号公報の
図3に示す形態で凸部及び融着部が形成されているものであっても良い。また、複合シートに存する融着部のすべてを貫通孔を有する融着部とするのに代えて、複合シートに存する融着部のうちの一部を貫通孔を有する融着部とすることもできる。例えば、帯状の複合シートにおける幅方向の中央領域における第1及び第2シートの一方又は双方に予熱を行い、貫通孔を有する融着部を形成する一方、中央領域を挟むサイド領域における第1及び第2シートの双方には予熱を行わずに、貫通孔を有しない融着部を形成することもできる。
【0087】
また上述した各実施形態においては、凹凸賦形部に存する第1ロール31と超音波処理部に存する第1ロール31、又は賦形工程で使用する第1ロール31と超音波処理工程で使用する第1ロール31が同一であり、それが、融着部4と貫通孔14との間の位置ズレ防止の観点等から好ましいが、第1ロール31と第2ロール32との間で、凹凸形状に変形させた第1シート1を、第1ロール31と同様の構成を有する他の凹凸ロールに移し替えた後、第2シート2を重ね、その両シート1,2を、該他の凹凸ロールの凸部と超音波ホーンの振動印加面とに挟んで超音波振動を印加しても良い。この場合、当該他の凹凸ロールも第1ロールと考える。
【0088】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の複合シートの製造装置及び複合シートの製造方法を開示する。
<1>
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、該融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造装置であって、
超音波ホーンを備えた超音波融着機と、周面部に凹凸を有する第1ロールとを有する超音波処理部を備えており、
前記超音波処理部は、互いに重ね合わせた前記第1シート上に前記第2シートを、前記第1ロールの凸部と前記超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加することで、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成するようになされており、
前記超音波ホーンの先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている、複合シートの製造装置。
<2>
前記複合シートは、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、
前記第2シートを重ねる前の前記第1シートを、前記第1ロールの前記凹凸を用いて凹凸形状に変形させる凹凸賦形部を備えており、
前記超音波処理部は、凹凸形状に変形させた状態の前記第1シート上に前記第2シートを重ね合わせて、前記超音波振動を印加するようになされている、前記<1>に記載の複合シートの製造装置。
<3>
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造装置であって、周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール及び第2ロールを有し、それら両ロールの噛み合い部に導入された前記第1シートを凹凸形状に変形させる凹凸賦形部、超音波ホーンを備えた超音波融着機を有し、凹凸形状に変形させた状態の前記第1シート上に前記第2シートを重ね合わせ、それら両シートを、前記第1ロールの凸部と前記超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加することで、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成する超音波処理部を備えており、前記超音波ホーンの先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている、複合シートの製造装置。
<4>
前記振動印加面は、前記第1ロールの前記凸部の先端が通る円形の軌道に沿うように湾曲している、前記<1>乃至<3>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<5>
前記第1ロールの前記凸部は、該第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凸の円弧状の先端面を有し、前記振動印加面の曲率半径が前記第1ロールの前記凸部の先端面の曲率半径の100%以上200%以下である、前記<1>乃至<4>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<6>
前記第1ロールの回転軸に直交する断面において、前記超音波ホーンの前記振動印加面の曲率半径は、前記第1ロールの前記凸部の先端が通る円形軌道の半径に対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である、前記<1>乃至<5>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<7>
前記第1ロールの回転軸に直交する断面において、前記超音波ホーンの前記振動印加面の曲率半径は、前記第1ロールの前記凸部の円弧状の先端面の曲率半径に対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である、前記<1>乃至<6>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<8>
前記超音波振動を印加する前の前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方を予熱する予熱手段を備える、前記<1>乃至<7>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<9>
前記第1シートは、該第1シートの融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、該第1シートの融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下に予熱することが更に好ましい、前記<8>に記載の複合シートの製造装置。
<10>
前記第2シートは、該第2シートの融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、該第2シートの融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下の温度に予熱することが更に好ましい、前記<8>又は<9>に記載の複合シートの製造装置。
<11>
前記超音波ホーンの先端部に蓄熱層が配されている、前記<1>乃至<10>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
【0089】
<12>
前記蓄熱層が、耐熱性及び耐摩耗性を有する合成樹脂からなる、前記<11>に記載の複合シートの製造装置。
<13>
前記蓄熱層は、前記超音波ホーンの金属からなる本体部分の先端面に、溶射により形成された接続層を介して固定されている、前記<11>又は<12>に記載の複合シートの製造装置。
<14>
前記接続層は、一面から内部に至る空隙を有する、前記<13>に記載の複合シートの製造装置。
<15>
前記接続層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、また好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下である、前記<13>又は<14>に記載の複合シートの製造装置。
<16>
前記超音波ホーンの前記振動印加面及び前記蓄熱層の表面のいずれも、前記第1ロールの回転軸に直交する断面形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である、前記<11>乃至<15>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<17>
前記蓄熱層は、少なくとも前記超音波ホーンを構成する金属に比べて、熱伝導率が低い材料である蓄熱材からなり、該蓄熱材の熱伝導率は、好ましくは2.0W/mK以下、より好ましくは1.0W/mK以下であり、また、好ましくは0.1W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上である、前記<11>乃至<16>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<18>
前記蓄熱材に用いられる蓄熱性材料の耐熱温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上であり、また、好ましくは1500℃以下である、前記<17>に記載の複合シートの製造装置。
<19>
前記蓄熱層は、ロックウエル硬度がR120以上R140以下で、耐熱温度が150℃以上500℃以下の合成樹脂からなることが好ましく、ロックウエル硬度がR125以上R140以下で、耐熱温度が280℃以上400℃以下の合成樹脂からなることが更に好ましい、前記<11>乃至<18>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<20>
前記蓄熱層は、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエチルケトン、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドから選ばれる合成樹脂からなることが好ましく、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾールから選ばれる合成樹脂からなることが更に好ましい、前記<11>乃至<19>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<21>
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、該融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造方法であって、
周面部に凹凸を有する第1ロール上に保持しつつ搬送し、搬送中の前記第1シートに前記第2シートを重ね合わせる重ね合わせ工程、及び、重ね合わせた両シートを、前記第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加する超音波処理工程を具備しており、
前記超音波処理工程においては、前記超音波ホーンとして、先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている超音波ホーンを用いて超音波振動を印加することにより、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成する、複合シートの製造方法。
<22>
前記複合シートは、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、
前記第2シートを重ねる前の前記第1シートを、前記第1ロールの前記凹凸を用いて凹凸形状に変形させる賦形工程を具備しており、
前記重ね合わせ工程においては、凹凸形状に変形させた前記第1シートに前記第2シートを重ね合わせる、前記<21>に記載の複合シートの製造方法。
<23>
第1シート及び第2シートが融着した複数の融着部を有し、前記第1シートにおける前記融着部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記融着部に貫通孔が形成されている複合シートの製造方法であって、周面部に互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール及び第2ロールを回転させながら、それら両ロールの噛み合い部に前記第1シートを導入して凹凸形状に変形させる賦形工程、凹凸形状に変形させた前記第1シートを、前記第1ロール上に保持しつつ搬送し、搬送中の前記第1シートに前記第2シートを重ね合わせる重ね合わせ工程、及び、重ね合わせた両シートを、前記第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加する超音波処理工程を具備しており、前記超音波処理工程においては、前記超音波ホーンとして、先端部に、前記第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面が形成されている超音波ホーンを用いて超音波振動を印加することにより、前記貫通孔を形成するとともに、該貫通孔を有する前記融着部を形成する、複合シートの製造方法。
【0090】
<24>
前記振動印加面は、前記第1ロールの前記凸部の先端が通る円形の軌道に沿うように湾曲している、前記<21>乃至<23>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<25>
前記第1ロールの前記凸部は、該第1ロールの回転軸に直交する断面の形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凸の円弧状の先端面を有し、前記振動印加面の曲率半径が前記第1ロールの前記凸部の先端面の曲率半径の100%以上200%以下である、前記<21>乃至<24>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<26>
前記第1ロールの回転軸に直交する断面において、前記超音波ホーンの前記振動印加面の曲率半径は、前記第1ロールの前記凸部の先端が通る円形軌道の半径に対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である、前記<21>乃至<25>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<27>
前記第1ロールの回転軸に直交する断面において、前記超音波ホーンの前記振動印加面の曲率半径は、前記第1ロールの前記凸部の円弧状の先端面の曲率半径に対して、好ましくは100%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは100%以上500%以下、より好ましくは100%以上200%以下である、前記<21>乃至<26>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<28>
前記超音波振動を印加する前の前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方を予熱しておく、前記<21>乃至<27>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。<29>
前記第1シートは、該第1シートの融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、該第1シートの融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下に予熱することが更に好ましい、前記<28>に記載の複合シートの製造方法。
<30>
前記第2シートは、該第2シートの融点より50℃低い温度以上、該融点未満に予熱することが好ましく、該第2シートの融点より20℃低い温度以上、該融点より5℃低い温度以下の温度に予熱することが更に好ましい、前記<28>又は<29>に記載の複合シートの製造方法。
<31>
前記超音波ホーンの先端部に蓄熱層が配されており、前記超音波処理工程においては、超音波振動により発熱した前記第1及び第2シートの熱を前記蓄熱層に蓄えて、第1及び第2シートの融点以上にする、前記<21>乃至<30>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<32>
前記蓄熱層が、前記超音波ホーンの先端部に耐熱性及び耐摩耗性を有する合成樹脂からなる、前記<31>に記載の複合シートの製造方法。
<33>
前記蓄熱層は、前記超音波ホーンの金属からなる本体部分の先端面に、溶射により形成された接続層を介して固定されている、前記<31>又は<32>に記載の複合シートの製造方法。
【0091】
<34>
前記接続層は、一面から内部に至る空隙を有する、前記<33>に記載の複合シートの製造方法。
<35>
前記接続層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、また好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下である、前記<33>又は<34>に記載の複合シートの製造方法。
<36>
前記超音波ホーンの前記振動印加面及び前記蓄熱層の表面のいずれも、前記第1ロールの回転軸に直交する断面形状が、該回転軸から離れる方向に向かって凹んだ円弧状である、前記<31>乃至<35>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<37>
前記蓄熱層は、少なくとも前記超音波ホーンを構成する金属に比べて、熱伝導率が低い材料である蓄熱材からなり、該蓄熱材の熱伝導率は、好ましくは2.0W/mK以下、より好ましくは1.0W/mK以下であり、また、好ましくは0.1W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上である、前記<31>乃至<36>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<38>
前記蓄熱材に用いられる蓄熱性材料の耐熱温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上であり、また、好ましくは1500℃以下である、前記<37>に記載の複合シートの製造方法。
<39>
前記蓄熱層は、ロックウエル硬度がR120以上R140以下で、耐熱温度が150℃以上500℃以下の合成樹脂からなることが好ましく、ロックウエル硬度がR125以上R140以下で、耐熱温度が280℃以上400℃以下の合成樹脂からなることが更に好ましい、前記<31>乃至<38>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<40>
前記蓄熱層は、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエチルケトン、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドから選ばれる合成樹脂からなることが好ましく、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾールから選ばれる合成樹脂からなることが更に好ましい、前記<31>乃至<39>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
【解決手段】複合シートの製造装置20は、超音波ホーン42を備えた超音波融着機41と、周面部に凹凸を有する第1ロール31とを有する超音波処理部40を備えており、超音波処理部40は、互いに重ね合わせた第1シート1及び第2シート2を、第1ロール31の凸部と超音波ホーン42との間に挟んで超音波振動を印加することで、貫通孔14形成するようになされており、超音波ホーン42の先端部に、第1ロール31の回転軸31cに直交する断面形状が、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面42tが形成されている。