(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592661
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】パターン切削用マルチビーム・ツール
(51)【国際特許分類】
H01J 37/305 20060101AFI20191010BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
H01J37/305 B
H01L21/30 541W
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-89383(P2015-89383)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-211041(P2015-211041A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】14165967.2
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】エルマー プラツグマー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ロシュナー
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−178437(JP,A)
【文献】
特開2004−282038(JP,A)
【文献】
特開2005−129944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/305
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物(7)に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラム(9)を備える、複数の荷電粒子ビームで前記対象物(7)を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置(1)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを含み、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記各粒子光学カラムは:
−照光系(11)、
−ビーム成形デバイス(12)及び
−投影光学系(16)を備え、
前記照光系(11)は、それぞれのビームを生成し、前記ビームを、前記ビーム成形デバイスを照光する実質的にテレセントリックなビームにするように構成され、前記ビーム成形デバイス(12)は、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、前記投影光学系(16)は、前記ビーム成形デバイス内で画定した前記ビーム形状の画像を前記対象物(7)上に投影するように構成され、
前記各ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイの前記アパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は、前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記アパーチャによって形成された前記長方形形状は、前記線格子方向(D1)を横断して向けられ、
前記各アパーチャ・アレイ・に関して、前記アパーチャの前記長方形形状は、特定方向(D2、Y)に沿って均一に向けられ、
前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、前記各アレイ内の前記長方形形状が前記それぞれのアレイに特定の方向に沿って均一に向けられた少なくとも2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備え、前記アレイ特定方向は、互いに異なる、帯電粒子マルチビーム処理装置(1)。
【請求項2】
前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項1に記載の装置。前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項2又は3に記載の装置。前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項2又は3に記載の装置。前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項2又は3に記載の装置。前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項2又は3に記載の装置。前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ、第2のアレイ内の長方形形状が前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた2つの交錯アパーチャ・アレイ(231、232)を備える、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項3】
平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物(7)に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラム(9)を備える、複数の荷電粒子ビームで前記対象物(7)を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置(1)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを含み、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記各粒子光学カラムは:
−照光系(11)、
−ビーム成形デバイス(12)及び
−投影光学系(16)を備え、
前記照光系(11)は、それぞれのビームを生成し、前記ビームを、前記ビーム成形デバイスを照光する実質的にテレセントリックなビームにするように構成され、前記ビーム成形デバイス(12)は、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、前記投影光学系(16)は、前記ビーム成形デバイス内で画定した前記ビーム形状の画像を前記対象物(7)上に投影するように構成され、
前記各ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイの前記アパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は、前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記アパーチャによって形成された前記長方形形状は、前記線格子方向(D1)を横断して向けられ、
前記アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、非長方形アパーチャ・アレイ(202)を更に備え、前記非長方形アパーチャは、前記長方形アパーチャの形状とは異なる形状を有し、前記非長方形アパーチャ・アレイは、前記長方形アパーチャ・アレイと交錯する、帯電粒子マルチビーム処理装置(1)。
【請求項4】
前記非長方形アパーチャは、正方形、円形又は六角形の形状を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物(7)に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラム(9)を備える、複数の荷電粒子ビームで前記対象物(7)を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置(1)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを含み、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記各粒子光学カラムは:
−照光系(11)、
−ビーム成形デバイス(12)及び
−投影光学系(16)を備え、
前記照光系(11)は、それぞれのビームを生成し、前記ビームを、前記ビーム成形デバイスを照光する実質的にテレセントリックなビームにするように構成され、前記ビーム成形デバイス(12)は、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、前記投影光学系(16)は、前記ビーム成形デバイス内で画定した前記ビーム形状の画像を前記対象物(7)上に投影するように構成され、
前記各ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイの前記アパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は、前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記アパーチャによって形成された前記長方形形状は、前記線格子方向(D1)を横断して向けられ、
前記各カラムに関して、前記長方形形状のアパーチャは、前記それぞれのアパーチャ・
アレイ・デバイス内で均一に向けられ、第1の群のカラムは、第1の方向に沿って向けた長方形形状を有し、第2の群のカラムは、第2の方向は、前記第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けた長方形形状を有する、帯電粒子マルチビーム処理装置(1)。
【請求項6】
前記第2の群のカラムは、第2の方向は、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って向けた長方形形状を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物(7)に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラム(9)を備える、複数の荷電粒子ビームで前記対象物(7)を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置(1)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを含み、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記各粒子光学カラムは:
−照光系(11)、
−ビーム成形デバイス(12)及び
−投影光学系(16)を備え、
前記照光系(11)は、それぞれのビームを生成し、前記ビームを、前記ビーム成形デバイスを照光する実質的にテレセントリックなビームにするように構成され、前記ビーム成形デバイス(12)は、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、前記投影光学系(16)は、前記ビーム成形デバイス内で画定した前記ビーム形状の画像を前記対象物(7)上に投影するように構成され、
前記各ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイの前記アパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は、前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記アパーチャによって形成された前記長方形形状は、前記線格子方向(D1)を横断して向けられ、
前記複数の粒子光学カラム(9、461)は、2次元構成(460)で配置され、前記2次元構成の少なくとも1つの方向に沿って、前記カラム(461)は、通路(465)を形成するカラム・オフセット(CX)だけ離間し、前記カラム・オフセットは、隣接する前記カラム間の最小ピッチ(DY)の少なくとも2倍の幅である、帯電粒子マルチビーム処理装置(1)。
【請求項8】
平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物(7)に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラム(9)を備える、複数の荷電粒子ビームで前記対象物(7)を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置(1)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを含み、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記各粒子光学カラムは:
−照光系(11)、
−ビーム成形デバイス(12)及び
−投影光学系(16)を備え、
前記照光系(11)は、それぞれのビームを生成し、前記ビームを、前記ビーム成形デバイスを照光する実質的にテレセントリックなビームにするように構成され、前記ビーム成形デバイス(12)は、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、前記投影光学系(16)は、前記ビーム成形デバイス内で画定した前記ビーム形状の画像を前記対象物(7)上に投影するように構成され、
前記各ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイの前記アパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は、前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記アパーチャによって形成された前記長方形形状は、前記線格子方向(D1)を横断して向けられ、
前記アパーチャ・アレイ・デバイスは、前記ビーム成形デバイス内に平行に、好ましくは互いに直に隣接するように配置した少なくとも2つの連続するプレート(411、421)を備え、前記各プレートは、前記プレートのアパーチャが、対応するサブビームの形状(401、402)を形成するために相互に対応、協働するアパーチャ・アレイ(410、420)を有し、前記形状は、ビーム方向に沿って見た前記プレートの相対位置によって画定され、前記プレートは、前記ビーム方向を横断する前記プレートの前記相対位置を修正する位置決めデバイスを備える、帯電粒子マルチビーム処理装置(1)。
【請求項9】
請求項1に記載の、対象物(7)を露光する帯電粒子マルチビーム処理装置(1)において使用するように構成した帯電粒子マルチビーム成形デバイス(12)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを備え、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記ビーム成形デバイスは、荷電粒子の照光ビームによって照射され、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、
前記ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−前記帯電粒子マルチビーム処理装置(1)の前記投影光学系(16)により投影したときに、選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイのアパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記ビーム成形デバイスは、前記アパーチャによって形成した前記長方形形状が前記線格子方向(D1)を横断して向けられるように前記線格子方向(D1)に対して方向付け可能である、帯電粒子マルチビーム成形デバイス(12)。
【請求項10】
請求項4に記載の、対象物(7)を露光する帯電粒子マルチビーム処理装置(1)において使用するように構成した帯電粒子マルチビーム成形デバイス(12)であって、前記対象物(7)は、所与の線格子方向(D1)に沿って向けた線パターンを備え、前記対象物の前記露光は、前記線格子方向(D1)に対して実施され、前記ビーム成形デバイスは、荷電粒子の照光ビームによって照射され、前記照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、
前記ビーム成形デバイス(12)は、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)であって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャ(24、26、81、201、202、231、232)を備え、前記多数のアパーチャのそれぞれは、前記対象物(7)に向かう名目上の経路を有する前記それぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス(200、203)、並びに
−前記帯電粒子マルチビーム処理装置(1)の前記投影光学系(16)により投影したときに、選択した前記サブビームが前記対象物に到達しないように、選択した前記サブビームを前記それぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイス(230、233)を含み、
前記アパーチャ・アレイのアパーチャは、ビーム方向に沿って見た長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺(aX)及び長辺(aY)を有し、前記長辺は前記短辺の少なくとも2倍であり、
前記ビーム成形デバイスは、前記アパーチャによって形成した前記長方形形状が前記線格子方向(D1)を横断して向けられるように前記線格子方向(D1)に対して方向付け可能である、帯電粒子マルチビーム成形デバイス(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の加工(具体的にはナノパターニング若しくは半導体リソグラフィ)又は対象物の検査のためのプログラム可能な帯電粒子マルチビーム装置に関する。より詳細には、本発明は、平行に配置しそれぞれの粒子ビームを対象物に向けて誘導するように構成した複数の粒子光学カラムを備える、複数の荷電粒子ビームで対象物を露光するための帯電粒子マルチビーム処理装置であって、各粒子光学カラムは、照光系、ビーム成形デバイス及び投影光学系を備える、帯電粒子マルチビーム処理装置に関する。照光系は、それぞれのビームを生成し、このビームを、ビーム成形デバイスを照光する(好ましくは実質的にテレセントリックな)ビームにするように働く。ビーム成形デバイスは、照光ビームの形状を多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成され、アパーチャ・アレイ・デバイス及び偏光アレイ・デバイスを含む。アパーチャ・アレイ・デバイスは、多数のアパーチャを備え、前記アパーチャのそれぞれは、対象物に向かう名目上の経路を有するそれぞれのサブビームの形状を画定し、偏光アレイ・デバイスは、選択したサブビーム(のみ)をそれぞれの名目上の経路から偏光するので、選択したサブビームは対象物に到達せず、残りのサブビームは、対象物に画像化される所望のパターンを表す。投影光学系は、ビーム成形デバイス内で画定したビーム形状の画像を対象物上に投影するように働く。更に、本発明は、そのような帯電粒子マルチビーム処理装置のカラム内で使用するビーム成形デバイス(パターン画定デバイスとも呼ぶ)であって、荷電粒子の照光ビームによって照射され、照光ビームの形状を、多数のサブビームから構成される所望のパターンにするように構成したビーム成形デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のマルチカラム(又は「多軸」)構成は、本出願人の特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
本出願人は、以下のような場合等の、帯電粒子マルチビーム・リソグラフィ及びナノパターニングの分野並びに関連技術に適切ないくつかの解決策及び技法を開発している:イオン・マルチビームを生成するCHARPAN(帯電粒子ナノパターニング)を使用する場合、並びに電子マルチビームを生成するeMET(電子マルチビーム・マスク露光ツール)又はマスク描画用MBMW(マルチビーム・マスク・ライタ)、及び基板、具体的にはシリコン・ウェハ上への直接描画リソグラフィのための電子マルチビームを生成するPML2(投影マスクレス・リソグラフィ)を使用する場合。この関係で、本出願人の名前の関連特許文献は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5である。
【0004】
図1は、マルチカラム帯電粒子光学装置2用真空筐体10、対象物チャンバ3を有するマルチカラム・ライタ・ツール1の概略断面図を示し、対象物チャンバ3の上にマルチカラム帯電粒子光学装置がカラム・ベースプレート4により組み付けられる。対象物チャンバ3内にあるのは、X−Yステージ5、例えばレーザ干渉計で制御された空気軸受真空ステージであり、空気軸受真空ステージの上に、適切な取扱い系を使用して基板チャック6が載置される。好ましくは静電チャックであるチャック6は、シリコン・ウェハ等の基板7を保持する。帯電粒子マルチビーム・リソグラフィに関して、基板は、例えば電子又はイオン・ビーム感光性レジスト層8で被覆される。
【0005】
マルチカラム光学装置2は、複数のサブカラム9を備える(サブカラム9は、特許請求の範囲で請求する「カラム」に相当し、示すカラムの数は、より良く明快にするように図では減らしてあり、現実の実装形態でマルチカラム装置内に存在するかなり多数のカラムを表す)。好ましくは、サブカラム9は、同一の機構を有し、相互に平行な軸で並べて設置される。各サブカラムは、電子又はイオン供給源11a、抽出系11b、及び広いテレセントリックな帯電粒子ビームをパターン画定デバイス(PDD)12に送出する静電多電極集光光学装置11cを含む照光系11、並びに3つのレンズを備える縮小帯電粒子投影光学装置16を有し、パターン画定デバイス(PDD)12は、サブビーム(「ビームレット」)の形状を画定する複数のアパーチャを通るビームのみを通すように構成され、このサブビームが前記アパーチャを透過する。図示の実施形態では、第1のレンズは加速型静電多電極レンズ16aである一方で、第2のレンズ16b及び第3のレンズ16cは、特に電子を使用する場合、両方とも磁気レンズであるか、又は特許文献1で概説するように例えば粒子がイオンである場合、静電レンズである。
【0006】
投影帯電粒子光学装置16の加速型第1のレンズは、低い運動エネルギー(例えば5keV)の粒子でPDD12を動作させる一方で、縮小投影光学装置の交差部では高いビーム・エネルギー(例えば50keV)を与え、こうしてクーロン相互作用の確率を最小にするという重要な利点をもたらす。更に、基板での高いビーム・エネルギーは、対象物、具体的には帯電粒子感光層8を露光する際に帯電粒子の前方散乱を低減するのに有益である。
【0007】
投影光学装置の第1のレンズは第1の交差部を形成する一方で、第2のレンズは第2の交差部を形成する。各サブカラムのこの位置には、PDD内で偏光したビームをフィルタ除去するように構成した停止プレート15がある。サブカラムの第3のレンズ16c及び停止プレート15は、適切な締結手段18によりカラム・ベースプレート4上に組み付けた基準プレート17上に組み付けられる。基準プレート17の上に組み付けるのは、位置合せ軸外し光学系の部品19である。
【0008】
基準プレートは、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムベースのセラミック材料等の熱膨張が少ない適切な基材から製作され、このセラミック材料は、重量がわずかで、弾性係数が高く、熱伝導率が高いという利点を有するものであり、少なくとも基準プレートの関連部品を導電性コーティングにより適切に被覆して(静電気を流出可能にすることによって)帯電を防止できるようにする。
【0009】
図2Aの縦断面詳細でわかるように、PDD12は、好ましくは連続構成で積み重ねた3つのプレート:「アパーチャ・アレイ・プレート」(AAP)20、「偏光アレイ・プレート」(DAP)30及び「フィールド境界アレイ・プレート」(FAP)40を備える。用語「プレート」は、それぞれのデバイスの全体形状を指すものであり、単一プレート構成要素が通常は実装形態の好ましい様式であるにもかかわらず、プレートを単一プレート構成要素として実現することを必ずしも示すわけではないことに留意する価値がある。更に、いくつかの実施形態では、アパーチャ・アレイ・プレート等の「プレート」はいくつかのサブプレートから構成できる。プレートは、好ましくは、Z方向に沿って互いに平行に、ある相互距離で配置される。
【0010】
AAP20の平坦な上面は、集光光学装置/投影系11に対して画定された電位界面を形成する。AAPは、例えば薄肉中心部22を有する一枚の正方形又は矩形シリコン・ウェハ(約1mmの厚さ)21から作製できる。プレートは、導電性保護層23によって被覆でき、この導電性保護層23は、(特許文献6にあるように)水素イオン又はヘリウム・イオンを使用する場合は特に有利となる。電子又は重イオン(例えばアルゴン又はキセノン)を使用する場合、層23も21及び22それぞれの表面区分によってもたらされるシリコンであってもよく、それにより層23とバルク部品21/22それぞれとの間に界面がなくなる。
【0011】
AAP20は、薄肉部22を横断する開口によって形成した複数のアパーチャ24を備える。図示の実施形態では、アパーチャ24が実現され、このアパーチャ24は、開口の下方出口25がアパーチャ24の主要部よりも広いように層23内に製作した真直ぐな外形及びAAP20のバルク層の「後退」(retrograde)外形を有する。真直ぐな外形及び後退外形の両方とも、反応性イオン・エッチング等の最新構造化技法で製作できる。後退外形は、開口を通るビームのミラー帯電効果を強力に低減する。
【0012】
DAP30は、複数の開口33を備えるプレートであり、この開口33の位置は、AAP20のアパーチャ24の位置と対応し、開口33は個々のサブビームを偏光するように構成した電極35、38を備え、個々のサブビームはDAP30のそれぞれの経路から開口33を選択的に通過する。DAP30は、例えばASIC回路を有するCMOSウェハを後処理することによって製作できる。DAP30は、例えば正方形又は矩形形状を有する一枚のCMOSウェハから作製され、中心部32を保持する枠を形成する肉厚部31を備え、この中心部32は、薄肉になっている(しかし適切には22の厚さと比較するとより厚くてもよい)。中心部32のアパーチャ開口33は、24と比較するとより広い(例えば各側で約2μm)。CMOS電子機器34は、MEMS技法により実現される電極35、38を制御するために使用される。各開口33に隣接して、「接地」電極35及び偏光電極38が備えられる。接地電極35は、電気的に相互接続され、共通の接地電位に接続され、帯電を防止する後退部36、及びCMOS回路への不要なショートカットを防止する隔離区分37を備える。接地電極35は、CMOS回路34のこれらの部品に接続でき、これらの部品は、シリコン・バルク部分31及び32と同じ電位にある。
【0013】
偏光電極38は、静電位を選択的に印加するように構成され、そのような静電位が電極38に加えられると、電界が発生し、対応するサブビームへの偏光を生じさせ、サブビームをその名目上の経路から偏光させる。電極38も同様に、帯電を防止するための後退区分39を有することができる。電極38のそれぞれは、その下側部でCMOS回路34内のそれぞれの接触部位に接続される。
【0014】
接地電極35の高さは、ビーム間のクロストーク効果を抑制するために偏光電極38の高さよりも高い。
【0015】
図2Aに示すような上流に向けた電極を有するDAP30を有するPDD12の構成は、いくつかの可能な形態のうちの1つにすぎない。
図2Bに示すように、変形形態PDD12’は、CMOS回路34を有する平坦面を上向きにする一方で接地電極35及び偏光電極38を下流に向けるように配置した、倒立型(inverted)DAP30’を有することができる。例えば接地電極及び偏光電極を埋込した更なるDAP構成を当業者は容易に考案できる(特許文献7等本出願人の名前の他の特許を参照)。
【0016】
FAPとして働く第3のプレート40は、下流の縮小帯電粒子投影光学装置の第1のレンズ部に面する平坦面を有し、したがって投影光学装置の第1のレンズ16aに対して画定された電位界面を実現する。FAP40の肉厚部41は、シリコン・ウェハの一部から作製され、薄肉中心区分42を有する正方形又は矩形の枠である。FAP40は、AAP20及びDAP30の開口24、33に対応する複数の開口43を備えるが、AAP20及びDAP30の開口24、33と比較するとより広い。
【0017】
PDD12及び具体的にはPDD12の第1のプレート、AAP20は、幅広帯電粒子ビーム50によって照光され(本明細書における「幅広」ビームとは、ビームがAAP内に形成したアパーチャ・アレイの領域全体を覆うほど十分に広いことを意味する)、このようにして幅広帯電粒子ビーム50は、アパーチャ24を通って送出されるとマイクロメートル寸法の何千ものビーム51に分割される。ビーム51は、妨げられることなくDAP及びFAPを横断することになる。
【0018】
既に述べたように、偏光電極38がCMOS電子機器により電力供給されると常に、偏光電極と対応する接地電極との間に電界が発生することになり、通過するそれぞれのビーム52に小さいが十分な偏光がもたらされる(
図2A)。偏光されたビームは、開口33及び43それぞれが十分に広く作製されているので妨げられることなくDAP及びFAPを横断できる。しかし、偏光されたビーム52は、サブカラムの停止プレート15でフィルタ除去される(
図1)。したがって、DAPによって影響を受けないビームのみが基板に到達することになる。
【0019】
縮小帯電粒子光学装置16の縮小率は、ビームの寸法及びPDD12内でのビームの相互距離、並びに対象物での構造の所望の寸法を考慮して適切に選択される。この縮小率は、PDDではマイクロメートル寸法のビームを可能にする一方で、基板上ではナノメートル寸法のビームが投影される。
【0020】
AAPにより形成された(影響を受けない)ビーム51の集団は、投影帯電粒子光学装置の予め定義した縮小率Rで基板に投影される。したがって、基板では、幅がそれぞれBX=AX/R及びBY=AY/Rを有する「ビーム・アレイ・フィールド(BAF)」が投影され、式中、AX及びAYは、X及びY方向それぞれに沿ったアパーチャ・アレイ・フィールド寸法を示す。基板での個々のビームのビーム寸法は、それぞれbX=aX/R及びbY=aY/Rによって示され、式中、aX及びaYは、X及びY方向それぞれに沿って測定したDAP30の段階でのビーム51の大きさを示す。
【0021】
図2A及び
図2B(並びに以下の類似の図面)に示した個々のビーム51、52は、かなりより多数、典型的には何千ものサブビームを表し、2次元X−Yアレイに配置されることに留意する価値がある。出願人は、例えば、数千もの(例えば262,144本)プログラム可能なビームを有するイオン並びに電子マルチビーム・カラムに関してR=200の縮小率を有するマルチビーム帯電粒子光学装置を実現した。出願人は、基板で約82μm×82μmのビーム・アレイ・フィールドを有するそのようなカラムを実現している。こうした例は説明の目的で述べており、限定例として解釈すべきではない。
【0022】
図2で概説した構成を使用して、上記の種類の多数のサブカラムが、最先端の集積回路デバイス製造用基板として使用される300mmシリコン・ウェハ等の基板の領域内に適合するような直径を有するサブカラムを実装する。450mmのシリコン・ウェハ寸法に適した、193nm液浸光学リソグラフィ・ツール、EUVリソグラフィ・ツール及びナノインプリント・リソグラフィ・ツールの開発が進行中である。スループットの損失なしに、本明細書で提示するマルチカラム構成は、対応するより多数のサブカラムを提供することによって、450mm直径のシリコン・ウェハ寸法等あらゆる他のウェハ寸法に適合できる。
【0023】
集積回路、特にマイクロプロセッサの最近の進歩は、新規なリソグラフィ、蒸着及びエッチング技法のみならず、革新的な回路設計によっても可能になった。最も強力な革新は、非特許文献1によって記載されるように、2次元回路設計から1次元回路設計へ進展したことであった。この目的で、均一な線格子方向D1に沿って延びる通常の線パターン(
図3A)は、193nm液浸(水浸)光学リソグラフィ、層蒸着及びエッチングのステップを使用して製作する。次に「相補的リソグラフィ」露光を実施して、対応するレジスト露光及びレジスト現像(
図3C)を用いることにより垂直方向D2(「切削方向」)に沿って切削部(
図3B)を生じさせ、続いてエッチングのステップを実施して通常の線パターン(
図3D)内に切削を達成する。このようにして各切削部は、それぞれの線内に中断部を表す。
【0024】
切削パターンの最小特徴寸法CA、CB等の様々な次元パラメータに関する半導体産業の現在の要件を表1に列挙する。
【0025】
【表1】
【0026】
表1の通常字体の数字は、KLA−Tencorリソグラフィ・ユーザ・フォーラムにおける上記引用文献、及び非特許文献2から取得した。斜体の数字は推定値である。例えば、KLA−Tencorリソグラフィ・ユーザ・フォーラムの引用文献では、P及びLはノード間で0.71倍縮小されることが示されている。
【0027】
限界寸法CAに対する最小切削パターンに要求される限界寸法の均一性(CDU)及びオーバーレイ(OL)も表1に示す。
図3Bに画定した切削パターン間の最小距離CC及び切削パターンの最小周期CPも表1に示す。
【0028】
今日まで、13.5nm波長ベースのEUV(極端紫外線)リソグラフィの開発は遅れており、したがって2015年には、193nm液浸光学リソグラフィによる切削パターンを露光する必要があると思われる。193nm液浸スキャナ・リソグラフィ技法の最小ピッチは、約80nmである。したがって、KLA−Tencorリソグラフィ・ユーザ・フォーラムにおける上記引用文献で概説したように、10nm論理技術ノードではCP=40nmとして4つの異なるマスクで切削パターンを露光する必要がある(表1)。NA=0.25の開口数を有するEUVリソグラフィは、より良好な解像度能力を実現する。したがって、10nm論理技術ノードに関して、EUV露光の切削パターンを1つのマスクのみで可能にする可能性がある。このように、EUVリソグラフィに対する継続的な強い産業上の関心がある。しかし、EUVリソグラフィの参入は10nm又は7nm論理ノードまで押し上げられる可能性がある。更に、EUVリソグラフィには克服すべき大きな障害があり、そのため半導体産業は、切削パターン露光に適した代替リソグラフィの可能性にますます本格的に興味をもつようになっている。ナノインプリント・リソグラフィは1つの可能性であるが、マスタ・テンプレート製作、スタンプ・レプリカの実用寿命、スタンプの欠陥検査及び修復、並びにインプリンティング中に欠陥が発生する可能性等のいくつかの困難がある。別の代替形態としては、電子マルチビーム直接描画が、サブ10nm解像度能力を提供しマスクを必要としないので高い産業上の注目及び関心を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第7,214,951号
【特許文献2】米国特許第8,183,543号
【特許文献3】米国特許第7,199,373号
【特許文献4】米国特許第8,304,749号
【特許文献5】米国特許第8,222,621号
【特許文献6】米国特許第6,858,118号
【特許文献7】米国特許第8,198,601B2号
【特許文献8】米国特許第7,276,714号
【特許文献9】米国特許第8,546,767号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Yan Borodovsky「EUV、EBDWはARFの代替又は発展形態であるか?(EUV,EBDW- ARF Replacement or Extension?)」、(米国)、KLA−Tencorリソグラフィ・ユーザ・フォーラム、2010年2月21日
【非特許文献2】Yan Borodovsky「MPプロセッサのためのMP処理(MPProcessing for MPProcessors)」、(米国)、SEMATECHマスクレス・リソグラフィ及びマルチビーム・マスク・ライタ・ワークショップ、2010年5月10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
上記を考慮すると、1次元回路設計に構造を描画するための効率的な手法を可能にする、改良されたマルチビーム・ツールに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この目的は、パターン画定デバイス、及びそのようなパターン画定デバイス構成を組み込んだ帯電粒子マルチビーム処理装置によって満たされるものであり、所与の線格子方向に沿って向けられた線パターンを含む対象物及び対象物のこの線格子方向に対する露光の実施のために、パターン画定デバイスは、
−アパーチャ・アレイを備えるアパーチャ・アレイ・デバイスであって、前記アパーチャ・アレイは、多数のアパーチャを備え、多数のアパーチャのそれぞれは、対象物に向かう名目上の経路を有するそれぞれのサブビームの形状を画定する、アパーチャ・アレイ・デバイス、及び
−選択したサブビームが対象物に到達しないように、選択したサブビームをそれぞれの名目上の経路から偏光するように構成した偏光アレイ・デバイスを含み、
前記アパーチャ・アレイのアパーチャは、ビームの方向に沿って見て長方形形状を形成するように構成され、前記長方形形状は、短辺及び長辺を有し、長辺は、少なくとも短辺の2倍であり、アパーチャによって形成した長方形形状は、線格子方向を横断して向けられる。例えば、ビーム成形デバイスは、アパーチャの長方形形状が線格子方向を横断して向けられるように前記線格子方向に対して方向付け可能とすることができる。
【0033】
この解決策を用いると、サブビームに、対象物上での切削形状を画定可能にする形状が与えられる。このことは、対象物上に生成される基礎をなす構成に対する処理時間を著しく低減することになる。一般には、上記した線パターンを有するシリコン・ウェハ等の処理される対象物に関して、線パターンの向きは、事前に、即ち対象物をマルチビーム処理装置内に載置する前に既知である。例えば円形ウェハのノッチにより、向きを指定、決定する方法は周知である。このようにして、対象物は、十分に定義した所定の向きの線格子方向でマルチビーム処理装置内に載置される。更に、ウェハの実際の向きを検出し必要に応じてその向きを調節する「プリアライナ」を使用して適切な向きを達成できる。一変形形態として、(例えば装置のX又はY方向に沿った)線格子方向は、例えば角それぞれの描画工程の開始時に指定する入力パラメータとして、処理する各対象物に対して定義できる。
【0034】
この解決策を用いると、サブビームに、対象物上での切削形状を画定可能にする形状が与えられる。このことは、対象物上に生成される基礎をなす構成に対する処理時間を著しく低減することになる。
【0035】
一般には、上記した線パターンを有するシリコン・ウェハ等の処理される対象物に関して、線パターンの向きは、事前に、即ち対象物をマルチビーム処理装置内に載置する前に印刷構成から既知である。したがって、(例えば装置のX又はY方向に沿った)線格子方向は、例えばそれぞれの描画工程の開始時に指定する入力パラメータとして、処理される各対象物に対して定義できる。更に、基板及び基板が保持する構造の向きを指定、決定する方法は、周知である。例えば、十分に定義され、事前に描画された構造及びその向きは、入射した1次リソグラフィ・ビームによって構造から生じた2次電子の信号により記録できる。このようにして、対象物は、十分に定義した所定の向きの線格子方向でマルチビーム処理装置内に載置できる。
【0036】
本発明の第1の態様では、アパーチャ・アレイ・デバイスのアパーチャは、それぞれのサブビームの形状を直接画定する。したがって、この場合、アパーチャ・アレイのアパーチャは、長方形形状を有し、この長方形形状は、例えば所望の形状の切削線に従って形成できる。適切な選択によれば、長方形形状の長辺は、前記長方形形状の短辺の少なくとも2倍となり、対象物の線パターンの線格子方向を横断して向けられる。
【0037】
代替態様は、2つ(以上の)連続するプレートを備える複合アパーチャ・アレイ・デバイスを実現する。これらのプレートは、パターン画定デバイス内で平行に、好ましくは互いに直に隣接するように適切に配置される。各プレートは、プレートのアパーチャが、対応するサブビームの形状を形成するように互いに対応、協働したアパーチャ・アレイを有することができ、前記形状は、ビーム方向に沿って見たプレートの相対位置によって画定される。本態様の更なる発展形態では、これらのプレートは、ビーム方向を横断するプレートの相対位置を修正する位置決めデバイスを備えることができ、このことにより、1つの複合アパーチャ・アレイ・デバイスで可変形状を画定可能にする。
【0038】
本発明の適切な発展形態では、アパーチャの長方形形状は、各それぞれのカラムのアパーチャ・アレイ・デバイスで各アパーチャ・アレイのための特定方向に沿って均一に向けることができる。(本明細書では、用語「カラム」及び「サブカラム」は、マルチカラム・デバイスの個々のカラムを示すために無差別に使用される。)更に、アパーチャ・アレイ・デバイス(又は少なくともいくつかのアパーチャ・アレイ・デバイス)は、各アレイ内の長方形形状がそれぞれのアレイに対する特定方向に沿って均一に向けられた、少なくとも2つの交錯アパーチャ・アレイを備えることができ、このアレイの特定方向は、互いに異なる。具体的には、アパーチャ・アレイ・デバイスのそれぞれは、第1のアレイ内の長方形形状が第1の方向に沿って均一に向けられ第2のアレイ内の長方形形状が第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けられた、2つの交錯アパーチャ・アレイを備えることができる。このことにより、異なる線の向きの領域を備える対象物構成の効率的な処理が可能になる。
【0039】
別の発展形態は、本発明を一般のパターニング手順と非常に柔軟な様式で組み合わせることである。この場合、アパーチャ・アレイ・デバイスの少なくとも一部は、非長方形アパーチャ・アレイを更に備えることができ、前記非長方形アパーチャは、長方形アパーチャの形状とは異なる形状、好ましくは正方形、円形又は六角形の形状を有し、前記非長方形アパーチャ・アレイは、長方形アパーチャ・アレイと交錯する。
【0040】
別の手法は、異なるカラムに異なる向きのアパーチャを使用することである。したがって、有利には、各カラムに関して、それぞれのアパーチャ・アレイ・デバイス内に長方形形状のアパーチャを均一に向ける間、第1の群のカラムは、第1の方向に沿って向けた長方形形状を有することができ、一方で第2の群のカラムは、第1の方向を横断する第2の方向に沿って向けた長方形形状を有することができる。好ましくは、第2の方向は、第1の方向に直交できる。
【0041】
各カラムは、画像を対象物上に投影する投影光学系を有し、画像は、等方性又は異方性のブラー(blur)を含むことがある。本発明の別の発展形態は、投影光学系によって発生した異方性のブラーを用い、この異方性のブラーは、それぞれのアパーチャ・アレイ・デバイスのアパーチャの長方形形状の長辺に対応する方向に沿って向けた最大ブラー軸及びその反対方向に沿って向けた最小ブラー軸を有する。このことは、各切削線がそれぞれの線を適切に遮ることを保証しながら、線方向に沿った切削線位置の高度な明確化に寄与する。
【0042】
複数の粒子光学カラムに対して対象物を位置決めするステージに関連して、本発明の別の可能な利点は、対象物を同時に複合的に描画するマルチカラム系の効率的な使用である。具体的には、対象物ステージは、各カラムが対象物上の事前定義したそれぞれのカラム露光領域内に1組の画像を生成するような一連の位置を通して対象物を移動させるように構成でき、カラムのカラム露光領域は、対象物上の対象露光領域の適用範囲に結び付く。したがって、各カラムは、対象物上の特定領域内(のみ)に描画し、このことは、対応する描画パターンの実装及び計算を容易にする。例えば、カラムのカラム露光領域は、対象物上の1つのダイ・フィールド領域に対応できる。代替的に、カラムのカラム露光領域は、対象物上の2つの隣接するダイ・フィールド領域に対応でき、続く描画ステップでは、2つのダイ・フィールドそれぞれの結合を1つのカラムに変更できる。これを用いると、非常に小型のツール構成を実現することが可能であり、これは、所与のクリーン・ルーム領域内でいくつかのツールのクラスタ化を目的とする場合、非常に重要である。
【0043】
更に、個々のカラムへのアクセスを容易にしてカラムに描画工程用パータン・データを提供するために、複数の粒子光学カラムは2次元配置で配置でき、2次元配置の(少なくとも)1つの方向に沿って、カラムは、通路を形成するカラム・オフセットだけ離間され、前記カラム・オフセットは、配置内で隣接するカラム間の最小ピッチの少なくとも2倍の幅である。
【0044】
本発明の別の態様は、パターン画定デバイスと他の光学構成要素との間に滑らかな界面をもたらすことによってサブビームの形状の質を改良することである。即ち、それぞれのパターン画定デバイスは、(i)ビーム方向に沿って見たパターン画定デバイスの最初の要素としての第1の境界デバイスであって、照光系の方に向けた第1の面を有する第1の境界デバイス、及び(ii)ビーム方向に沿って見たパターン画定デバイスの最後の要素としての最終プレート・デバイスであって、投影光学系の方に向けた最終面を有する最終プレート・デバイスを含むことができる。有利には、第1の面及び最終面は、−それぞれのパターン画定デバイスのアパーチャ・アレイ・デバイスのアパーチャに対応するそれぞれの開口アレイを除いて−平坦である。具体的には、第1の境界デバイスは、アパーチャ・アレイ・デバイス自体によって実現できるか、又は個別のプレート形状デバイスによって実現できる。
【0045】
以下、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。図面は本発明のいくつかの実施形態を例として示し本発明の適切な実装形態を表すが、本発明に対する限定として解釈すべきではない。図面は以下を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】マルチカラム・ライタ・ツールの概略断面図である。
【
図2A】
図1のツールのカラムのうち1つの、上流に向けた偏光電極を有するパターン画定デバイスの断面図である。
【
図2B】電極を下流に向けたパターン画定デバイスの変形形態の図である。
【
図3A】1次元回路設計及びそのような構成内に定義したいくつかの次元パラメータを示す図である。
【
図3B】1次元回路設計及びそのような構成内に定義したいくつかの次元パラメータを示す図である。
【
図3C】1次元回路設計及びそのような構成内に定義したいくつかの次元パラメータを示す図である。
【
図3D】1次元回路設計及びそのような構成内に定義したいくつかの次元パラメータを示す図である。
【
図4A】対象物に対するカラムの第1の構成の部分平面図である(矩形構成)。
【
図4B】カラムの第2の構成の図である(ひし形構成)。
【
図5A】本発明の第1の実施形態によるアパーチャ・アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図5B】本発明の第1の実施形態による偏光アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図6A】従来技術による正方形アパーチャ画像を有する対象物撮影部位の露光を示す図である。
【
図6B】従来技術による正方形アパーチャ画像を有する対象物撮影部位の露光を示す図である。
【
図7A】本発明による対象物撮影部位の露光を示す図である。
【
図7B】本発明による対象物撮影部位の露光を示す図である。
【
図8】0.25nm刻みの7.5nmから12.25nmの間の異なる線幅に対応する様々な照度プロファイルのシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】0.5nm刻みの15.0nmから25.0nmの間の異なる線幅に対応する様々な照度プロファイルのシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】パターン画定デバイスのレベルでの矩形構成用カラム構成の断面図である。
【
図11】
図10のカラム構成でのウェハの露光を示す図である。
【
図12】
図10の構成のための1つのサブカラムによるダイ領域の描画露光を示す図である。
【
図13】パターン画定デバイスのレベルでのひし形構成用カラム構成の断面図である。
【
図14】
図13のカラム構成でのウェハの露光を示す図である。
【
図15】
図13の構成のための1つのサブカラムによるダイ領域の描画露光を示す図である。
【
図16】2方向に切削部を描画するのに適したアパーチャの向きを示す図である。
【
図17】
図16の配置のための矩形構成用カラム構成の断面図である。
【
図20】長方形アパーチャ及び正方形アパーチャを有する2つのアパーチャ・アレイを有するアパーチャ・アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図21A】
図20の2つのアパーチャ・アレイの両方による描画工程を示す図である。
【
図21B】
図20の2つのアパーチャ・アレイの両方による描画工程を示す図である。
【
図23】2つの主方向それぞれに沿って向けられた長方形アパーチャを有する2つのアパーチャ・アレイを有するアパーチャ・アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図24A】
図23の2つのアパーチャ・アレイのうち1つによる露光に対応する偏光アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図24B】
図23の2つのアパーチャ・アレイのうち1つによる露光に対応する偏光アレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図25A】複合アパーチャ・アレイ・プレートを一緒に形成する2つのアレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図25B】複合アパーチャ・アレイ・プレートを一緒に形成する2つのアレイ・プレートの平面詳細図である。
【
図27】同じアレイ・プレートで異なる長方形形状の形成を示す図である。
【
図28】X方向に広幅の距離を有する矩形構成のための、パターン画定デバイスのレベルでの更に別のカラム構成の断面図である。
【
図29】
図28のカラム構成でのウェハの露光を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下で示す実施形態は、ミックス・アンド・マックス(mix−and−max)・リソグラフィ用に設計したパターン切削用マルチビーム・ツールに関し、このミックス・アンド・マックス・リソグラフィでは、基板(例えばシリコン・ウェハ)が、例えば長さDX及び幅DY(典型的にはDX=33mm、DY=26mm)を有するダイ・フィールドを有する193nm液浸スキャナ・ツールで露光される。1つのダイ・フィールドは、いくつかのチップを含むことができ、典型的にはそのようになる。実施形態は、限定するものではなく、したがって本発明は他の構成及び適用例にも同様に言及できる。特に、値DX及びDY並びに本明細書で提示する他の寸法は、適切とみなしたように適合できる。本開示内の用語「上側」、「下側」及び「上部」、「底部」のような関連用語は、「垂直」軸に沿って下方に進むと思われるビームの方向に関すると理解されたい。この垂直軸は、Z方向(縦方向)と同一視され、Z方向に対してX方向及びY方向が交差する。
【0048】
本発明に適した小型サブカラム構成60及び70の例を対象物の面に関する構成の平面詳細図を示す
図4A及び
図4Bそれぞれに示す。
図4Aでは、アパーチャ・アレイ・フィールド62を有する1つのサブカラム61(象徴的に円で表す)を使用して1つのダイ・フィールド領域63(異なる様式の網掛けで示す)を露光する一方で、
図2Bでは、アパーチャ・アレイ・フィールド72を有する1つのサブカラム71を使用して2つのダイ・フィールド領域73を露光する。
【0049】
DX=33mm及びDY=26mmであると仮定すると、
図4Aの場合、サブカラム61の直径は約24mmであり、アパーチャ・アレイ・フィールド62の寸法は約8.2mm×8.2mmである一方で、
図4Bの場合、サブカラム71の直径は約40mmであり、アパーチャ・アレイ・フィールド72は約16.4mm×16.4mmである。アパーチャの周期を16μmであると仮定すると、アパーチャ・アレイ・フィールド62は、512×512=262,144本のビームを実現できる一方でアパーチャ・アレイ・フィールド72は1024×1024=1,048,576本のビームを実現できる。
【0050】
一変形形態では、アパーチャ・アレイ・フィールドは、対応する正方形のアパーチャ・アレイ・フィールドと同じ対角長さを有する矩形であるように選択することもできる。
【0051】
本出願人の詳細な帯電粒子光学装置シミュレーションに基づき、約16.4mm×16.4mmのアパーチャ・アレイ・フィールドを使用する場合、内径が約40mmのサブカラムが生成され、約8.2mm×8.2mmのアパーチャ・アレイ・フィールドを使用する場合、内径が約24mmのサブカラムが生成される可能性がある。どちらの場合も、特に基板で50keV電子を使用し帯電粒子投影光学装置を通るビームの合計電流を1μA未満に制限した場合、非常に低い(1シグマ、<5nm)ビーム・ブラーを得る可能性がある。
【0052】
最新技術のAAPデバイスでは、アパーチャは四角形形状を有し、DAP及びFAPの対応するより大きなアパーチャも四角形形状を有する。このことが、非常に複雑なパターンでも描画可能にする。そのような複雑なパターンは、例えばマルチビーム・マスク描画で必要とされる。マスク描画に関して、パターン密度は、通常は非常に高く、例えば全面積の最大75%に達する。サブ20nm193nm液浸光リソグラフィで必要とする最先端のマスクを描画する際、例えばセリフ(角における追加パターン)、「強力」又は「積極的」なOPC(光近接効果補正)パターンとして、及び特にサブ15nmリソグラフィに対するILT(インバース・リソグラフィ技術)曲線パターンとしても、高度に複雑なマスク・パターンを描画する必要がある。したがって、そのような最先端のマスクに対して、マスク・パターン密度は20%を十分に上回る。
【0053】
基板における相補的リソグラフィに関して、切削パターン密度は、表1で概説したように最大10%である。更に、切削部の形状は、全て矩形であり、最も小さい矩形は、寸法CA×CB(CA=L+2nm、CB=2×CA)を有する。表1を参照。全てのより大きな矩形は通常の線格子に垂直な方向で最も小さい矩形の数倍である(
図3Bを参照)。
【0054】
切削パターン露光用マルチビーム・ツール
本発明は、パターン切削用マルチビーム・ツールに最適なパターン画定デバイス(PDD)を提案する。更に、本発明は、偏光アレイ・プレート(DAP)を有するPDDに提供した既定のデータ経路速度で最大ウェハ・スループットを達成することを可能にするものであり、偏光アレイ・プレート(DAP)は、対象とするスループットに必要な切替え速度を実現するCMOS回路を有する。
【0055】
図5A及び
図5Bは、本発明の第1の実施形態の一部を形成するアパーチャ・アレイ・プレート(AAP)及び偏光アレイ・プレート(DAP)それぞれの平面詳細図である。本発明の第1の実施形態は、辺長さaX及びaYの矩形開口81を有するAAP820を含み、この辺長さaX及びaYの矩形開口81はPX及びPYそれぞれの周期を有してアレイに配置される。AAP820と合致するDAP830では、偏光アレイ・プレート(DAP)の対応する開口82も矩形であるがより大きく(例えば各辺で約2μm)、そのために、辺長さaX及びaYを有しAAPアパーチャ81によって形成される矩形ビーム51は、対応するアパーチャ82を通過できる。
【0056】
本発明によれば、比率aY/aXの適切な値は、2から4(4を含む)の間であり、好ましくは2(2を含まず)から2.5の間の範囲であり、典型的には
図5Aの例で略記した2.5である。
【0057】
FAPの開口は、ビーム51及び偏光ビーム52も同様に通過できるように十分な幅(
図2A及び
図2Bを参照)の正方形又は矩形形状を有することができる。
【0058】
一例として、aX=1.6μm及びaY=4μmを有する矩形アパーチャ開口を有するAAPを使用して例えばCA=12nm及びCB=24nmを有する切削パターンを生成でき、この切削パターンはL=10nm及びP=20nmの線パターンを有する5nm論理ノード(表1)で必要とされる。R=200の縮小率を有する投影光学装置を使用すると、矩形ビームは、bX=8nm及びbY=20nmの辺長さを有する対応する画像をシリコン・ウェハ基板に露光することになる。帯電粒子投影光学装置の収差のために、ビームはぼやけ、丸い端部を有することになる。レジスト内の帯電粒子の前方散乱のために、現像されたレジスト・パターンを広くするレジスト・ブラー及びレジスト処理が生じる。(ショット・ノイズの影響を最小にするために)50keV電子及び適切なレジスト材料及びレジスト露光線量を使用すると、典型的には4nmの広がりが観察される。したがって、現像されたレジスト・パターンは、
図3Cに示す、寸法CEA=12nm及びCAB=24nmを有する形状に対応する形状を含むことになる。5nm論理ノードに対する3nm、3シグマのオーバーレイ(OL)要件(表1)は、
図3Cから明らかである。
【0059】
パターン配置要件に応じて、様々なマルチビーム露光モードを選択できる。重複ビーム・ショットを使用するマルチビーム露光技法は、特許文献5及び特許文献8で説明されている。
【0062】
X方向及びY方向にビーム寸法が半分のショット重複を有する矩形ビームを使用する場合、即ち物理的格子寸法がX及びYそれぞれのビーム幅の半分である場合、異なるアドレス格子を得て切削パターン・エッジを設置する。
【0063】
図8は、様々な照度プロファイルのシミュレーション結果による非常に微細な刻みの線幅を変更する可能性を示し、この照度プロファイルは、0.25nm刻みの異なる線幅に対応する。7.75nm、10.0nm及び12.25nm線幅のための照度プロファイルの例を示し、それぞれ、左側、中央及び右側の欄に対応する。各欄では、上の枠は、線幅に対するエッジ位置誤差を示し、中央の枠は、照度プロファイルを示し、下の枠は、露光線量を10%増大させた場合の線幅に対するエッジ位置の偏差を示す。
図8に示す照度プロファイル・シミュレーションは、例えば線格子方向D1における10nmショット幅及び5nm物理的格子、即ちビーム寸法の半分を有する重複ショットのためものである。中央の列の照度プロファイル枠で分かるように、シリーズは2つの重複ショットで始まり、右ショットは、最大露光線量レベルに対応し、より低い線量レベルを有する左ショットは、より高い結合照度プロファイルを達成するために追加される(誤差関数の形態を有する)。照度プロファイルの0.5のレベル(破線で示す)は、レジスト現像をもたらす局所線量である。左ショットの線量レベルは、左エッジが0nmを示す位置においてであるように選択される。最初のシミュレーションの右エッジは、7.5nmにおいてである。次のシミュレーションでは、第3のショットが、7.75nm幅のレジスト線の達成を目標とする低線量レベルで追加される。第3のショットの線量レベルを変更することにより、シミュレーションは、線幅が0.25nmのステップでは最大12.25nmの線幅まで変更されることを示す。
図8では、7.75nm、10.0nm及び12.25nm線幅それぞれの照度プロファイル・シミュレーションの例を示す。
図8の最上列の枠では、目標とするエッジ位置からの偏差を示す。線幅が7.50nmである場合を除いて、線幅が7.75nmから12.25nmの間である全ての場合において、線エッジ位置の偏差は、±0.12nmよりも小さい。
【0064】
図8の下の列の枠は、露光線量を10%変化させた場合の線エッジ位置の変化を示す。パターン切削用マルチビーム・ツールにおいて、線量レベルは少なくとも±1%以内に保持されることになる。したがって、全てのケースにおいて、露光線量レベルの1%の不確かさを考慮に入れると<0.1nmの線エッジ位置の変化がある。
【0065】
図9は、
図8と類似するが、ビーム寸法が10nmの物理的格子を有する20nmである切削方向D2に沿った状況のための、0.5nm刻みの15.0nmから25.0nmの間の異なる線幅に基づく図の様々な照度プロファイルのシミュレーション結果を示す。
図9は、線幅が、±0.2nmよりも小さい目標線端部位置からの偏差で0.5nm刻みで15.5nmから25.0nmまで変化し得ることを示す。1%の線量変化での線エッジ位置の変化は、<0.15nmである。
【0066】
10nmビーム寸法シミュレーション(切削方向D2に沿ったプロファイル)に関して、20nmビーム寸法に関するシミュレーション(即ち線格子方向D1に沿ったプロファイル)と比較して、より良好なブラーが想定された。このことは、向上した解像度の矩形ビームをbX向けに達成するように、目的によって帯電粒子光学カラムのパラメータを調節するという本発明の更なる態様を反映する。小さなビーム方向での基板におけるこの向上した解像度の矩形ビームは、例えば帯電粒子投影光学装置内に位置決めした静電多重極電極内に四重極場を生じさせることによって、帯電粒子光学装置内にX−Y非点収差を生じさせることにより達成できる。このことは、解像度が長いビーム方向で悪化し、小さいビーム幅の方向で改良されることを生じることになる。切削部を他の方向で生成する場合、四重極場を90°回転して他の方向に沿った所望の効果を得る。
【0067】
したがって、本明細書で説明するマルチビーム露光技法が、5nm論理ノードの切削パターン露光例に関して3nmの3シグマCDU及び3nmの3シグマOL目標を満たすのに適していることは当業者には明らかであろう。この結果、3nm論理ノード及び更にはより小さな論理ノードに関する条件も満たすことができることも明白であろう。
【0068】
露光間の重複が4分の1のビーム幅等の異なる値を取るマルチビーム露光モードを使用する可能な形態もあることを述べるべきである。そのようなより微細なマルチビーム露光モードの実装が、表1で示される技術ノードに関して表1に挙げたものよりも高い要件の場合必要とすることができる。
【0069】
パターン切削用マルチビーム・ツールのスループット
図10は、パターン切削用マルチビーム・ツールのカラム構成の一例を示す。示されるのは、マルチビーム・ツールのPDDデバイス12のレベルでの断面概略図である。カラム構成100は、例えば24mmの内径を有するサブカラム101の構成として実現される(円はサブカラム101の実装面積を象徴化する)。各サブカラムのPDDデバイスは、矩形アパーチャを有する約8.2mm×8.2mmのアパーチャ・アレイ・フィールド102を有する(
図5A及び
図5B)。
図10のアパーチャ・アレイ・フィールドの図は、寸法通りではない。450mmウェハ寸法の露光に関して、例えば
図10に示すようにカラム100は194個のサブカラム101を備えることになる。
【0070】
図11は、DX=33mm及びDY=26mmの場合の450mmウェハの対象露光領域111の対応する露光110を示す。1つのカラムによって描画される対象物上の領域(カラム露光領域)は、好ましくはただ1つのダイ領域である。したがって、PDD102Aを有するサブカラム101Aはダイ領域112Aを露光することになり、PDD102Bを有するサブカラム101Bはダイ領域112Bを露光することになり、PDD102Cを有するサブカラム101Cはダイ領域112Cを露光することになり、PDD102Dを有するサブカラム101Dはダイ領域112Dを露光することになり、以下同様である。
【0071】
図12は、サブカラムによる1つのダイ領域の描画露光を示す。寸法DX×DYのダイ領域120は、好ましくは露光ストライプの蛇行、即ち+X方向のストライプ121及び−X方向のストライプ122で描画される。例えば8.2mm×8.2mmのアパーチャ・フィールド及び200:1の縮小を実現するサブカラムを使用する場合、ウェハ基板におけるビーム・アレイ・フィールドは、約41μm×41μmである。少なくとも1μmの重複が与えられ、そのためにDY=26mmでは、650本の露光ストライプがあることになる。ストライプ露光を蛇行状に行うと、ステージの戻り回数の最小化を可能にする。
【0072】
サブカラム露光は平行に行われるので、450mmウェハの全体領域の描画に必要な移動は、(長さ33mmである露光ストライプに対して)X方向に±16.5mm、Y方向に±13mmであり、これらは1つのストライプから次のストライプへのステップの間に及ぶ。X方向のステージ戻しには、ほんの少しの追加距離だけ追加する必要がある。したがって、全ウェハの領域を走査する必要はないので、マルチビーム・ツールのウェハ・ステージは、非常に小型形式で作製でき、これは本発明の著しい利点である。
【0073】
当然、上述の数字及び寸法は、当業者には明らかであるように個々の用途及びノード寸法に修正、適合できる。具体的には、300mmシリコン・ウェハの露光については、それに応じたより少ない数のサブカラムしか必要としないことになる。
【0074】
図13は、サブカラム131がX方向(DX)におけるダイ・フィールドの長さの2倍のX方向のピッチ、及びY方向(DY)におけるダイ・フィールドの長さの2倍のY方向のピッチを有する別の例示的カラム構成130を示し、
図4Bに示す構成に対応する。サブカラムは、「交互配置」され、即ち、次の近接するサブカラムの中心が、例えばX方向のDXとY方向のDYとの結合距離等で、X又はY方向と一致しない距離にある。例えばDX=33mm及びDY=26mmのダイ・フィールドを有する直径が450mmのシリコン・ウェハの露光に関して、
図13に示す適切なカラム構成は、例えば内径が40mmの103個のサブカラム131から構成できる。各サブカラム内には、矩形アパーチャを有する例えば16.4mm×16.4mmのアパーチャ・アレイ・フィールドを有するPDD132がある(
図5A及び
図5B)。
【0075】
図14は、
図13のカラム構成130を用いる、450mmウェハ111の対象露光領域の露光140を示す。このことは、
図4Bで概説したように、各サブカラムに(2DX)×DYのカラム露光領域を露光させるように行われる。したがって、PDD132Aを有するサブカラム131Aは領域141Aを露光することになり、PDD132Bを有するサブカラム131Bは領域141Bを露光することになり、PDD132Cを有するサブカラム131Cは領域141Cを露光することになり、PDD132Dを有するサブカラム131Dは領域141Dを露光することになり、以下同様である。
【0076】
図15を参照すると、寸法(2DX)×DYの領域150のうち1つのサブカラム描画露光がやはり、好ましくは露光ストライプ151、152の蛇行により実施される。ストライプ151は、+X方向に作製され、ストライプ152は−X方向に作製される。例えば16.4mm×16.4mmのアパーチャ・フィールド及び200:1の縮小を実現するサブカラムを使用する場合、ウェハ基板におけるビーム・アレイ・フィールドは、約82μm×82μmである。少なくとも2μmの重複を与えることができ、そのためにDY=26mmでは、80μm幅及び66mm長さの325本の露光ストライプがあることになる。
【0077】
サブカラム露光は、平行に行われるので、450mmウェハの領域の描画に必要な移動は、(66mm長さである露光ストライプに対して)X方向に±33mm、Y方向に±13mmであり、これらが1つのストライプから次のストライプへのステップから生じる。X方向のステージ戻しには、ほんの少しの追加距離だけ追加する必要がある。したがって、同様に、全ウェハを走査する必要はないので、パターン切削用マルチビーム・ツールのウェハ・ステージは、非常に小型形式で作製でき、これは本発明の著しい利点である。
【0078】
表2は、本発明により可能になる2つの例示的ケースに関する、マルチビーム・ツールの450mmウェハのスループット性能のデータを掲載する。ケースAは、サブカラムが2つのダイ・フィールド領域(66mm×26mm)を露光する構成を示し、ケースBは、サブカラムが1つのダイ・フィールド領域(33mm×26mm)を露光する構成を示す。
【0080】
所与のデータ経路速度に関して、ケースBは、ケースAの2倍のスループットを実現できる。25%のオーバーヘッド(ウェハの交換及び位置合せ、露光オーバーヘッド、ステージ戻りオーバーヘッド)では、得られたスループットは、4WPH(対応する数のサブカラムによる1時間当たりの300mm又は450mmシリコン・ウェハ)。
【0081】
表3は、この修正マルチビーム露光モードを使用したツールのデータを掲載する。表からわかるように、ウェハのスループットは、240Gbits/sデータ経路速度及び4A/cm
2電流密度を有するケースBに関して8WPHまで向上できる(25%のオーバーヘッドを含む)。20%のプログラム可能なビームを「オン」にしたにもかかわらず、カラムを通る電流は<0.5μAである。
【0083】
上記は、可能なマルチビーム・ツールのカラム構成及びウェハ露光方策の例示的な例であり、本発明を上に示した例に限定する意味ではないことを述べるべきである。当業者は、300mmシリコン・ウェハ描画用等の適切な適合形態を容易に得ることができる。更に、基板は、例えばGaAs等の別の材料のウェハ、又は例えば導電層及びレジストで被覆した6インチのガラス・プレート等の正方形形状の基板であってもよい。
【0084】
更に、DX=33mm及びDY=26mmのダイ・フィールド寸法は、この寸法を最新技術のウェハ露光用リソグラフィ・ツールに従って選択したとしても、同様に例示的目的のためであることを述べるべきである。マルチビーム・ツール構成は、他のダイ・フィールド寸法に簡単に適合できる。
【0085】
X及びY方向への切削パターン露光用マルチビーム・ツール
本発明の更なる態様は、2方向以上に沿った切削部の描画に対処する。
図16を参照すると、X及びY方向両方への切削が望ましいケースにおいて、サブカラム161を有するカラム構成160をパターン画定デバイス(PDD)で用いることが適している場合があり、この場合、アパーチャ・アレイ・フィールドは、例えば
図16に示すように交互にY方向162又はX方向163それぞれのいずれかに切削するように成形する。
【0086】
例えば、450mmシリコン・ウェハ上で1つの33mm×26mmダイ・フィールドを露光するサブカラムの場合、
図17は、例えば24mm内径の211個のサブカラム171を有するカラム構成170を示す。例えば8.2mm×8.2mmのアパーチャ・アレイ・フィールドは、X方向172又はY方向173のいずれかに切削するように成形される。
図18は、
図17のサブカラム構成170に従ったX及びY方向に切削部を有する第1のウェハ露光180を示し、このサブカラム構成は(例えば)特定のダイ・フィールド181を露光してY方向に切削部を生成し、他の特定のダイ・フィールド182に関してはX方向に切削部を生成する。フィールド183及び184は、露光しないままである。
図19に示す第2のウェハ露光190では、切削パターンは、両方向、即ち露光173を有するダイ・フィールド191及び露光172を有するダイ・フィールド192を含むように完成させる。このことは、完全なカラム構成を、本例ではX方向に沿ったオフセットによる相補的構成まで移動させることによって達成され、したがってダイ・フィールドの全てが相補的切削構成のサブカラムで露光される。
【0087】
両次元におけるパターン切削用マルチビーム・ツールのスループットは、パターン切削を1次元のみで実現する場合と比較したマルチビーム・ツールのスループットの約半分である。ウェハは両方の露光でチャック上に維持されるので、1回のウェハ交換時間及び1回のウェハ位置合せ時間のみを必要とする。
【0088】
アパーチャ・アレイ・フィールドを現場で変更する場合のマルチビーム・ツール
図20〜
図22は、本発明の更なる発展形態を示す。
図20が
図5Aに類似の詳細平面図を示すAAP200では、2つ(以上の)組のアパーチャ開口201及び202が設けられる。この発展形態は、本出願人の特許文献9で開示したものと同様の概念を実装するが、様々な描画手順を可能にする新規な使用のために、異なる構成のアパーチャ形状を有する。例えば、第1の組は、寸法aX
1及びaY
1を有する
図5Aに示すものと似た矩形開口を有する一方で、第2の組は、aY
2=aX
2=aX
1を有する正方形開口を有する。2つの組のいずれも、
図21A及び
図21B(
図2Bに類似の縦断面図)、並びに
図22A及び
図22B(
図20と対応するDAP230の詳細平面図)で示す次の描画工程ステップで使用できる。
図21Aは、第1の組201の矩形開口24によって形成したビーム51で切削パターンを露光する1つの工程ステップを示す。第2の組202の正方形開口26は、連続するプレートのうち1つ、例えばDAP230で阻止されるビーム53を生成することになる。
図22Aは、DAP230における状況を対応する平面詳細図で示す。別の描画工程ステップに関して、
図21B及び
図22Bに示すように、AAPは他のプレートに対して変位する。その結果、ビーム51は阻止される一方で、この構成は、ここでビーム53及び偏光ビーム54を通過させる。正方形ビーム53を露光に使用すると(
図22B)、X及びYに同じ解像度を有する高度に複雑なパターンを生成できる。したがって、本発明のこの発展形態は、切削パターンをマルチビーム・ツールで露光できるだけでなく、可能性としてはより低いスループットでではあるが複雑なパターンで露光できることを可能にする。矩形開口を有するアパーチャ・アレイと比較して、基板での解像度は、小さな幅のアパーチャの露光ビームによる露光のためにより良好であることは明らかであろう。FAP240は、通常、DAP230に対して固定相対位置に留まる。FAP240の開口は、DAP230の対応する開口33と同じであるか、又は好ましくはそれらよりも大きい。
【0089】
図23に示す変形形態では、複数組のアパーチャは両方とも、異なる向きで矩形開口を備えることができる。この構成は、異なるリソグラフィ層に対して線パターンが異なる方向で生成されるチップ設計で特に有利である。したがって、特定のリソグラフィ層に対して一方向に切削パターンを生じさせ、別のリソグラフィ層に対してもう一方向に切削パターンを生じさせる必要がある。この場合、可能な最高のスループットでX又はY方向に切削パターンを柔軟に露光するマルチビーム・ツールを生成することが可能となる。
【0090】
本発明のこの変形実施形態によれば、
図23は、それぞれが寸法aX
1、aY
1及びaX
2、aY
2を有する2つの組231及び232の矩形アパーチャ開口を備える構成を有するAAP230を示す。本実施形態の図に示すように、aX
1=aY
2及びaY
1=aX
2である。にもかかわらず、寸法同士の関係は、他の実施形態では異なってもよいことは明らかであろう。というのは、一方又は両方の組の矩形アパーチャの寸法も同様に変更できるためである。AAP203は、複数組のアパーチャ開口のうち選択した組を通過させるように、対応するDAP233に関して異なる動作位置に位置決めできる。
図24Aに示す1つの位置では、アパーチャ開口231の組によって生成したビーム51は、Y方向における切削露光に利用される。AAPの適切なX/Y変位により、第2の位置は、
図24Bに示すように選択され、アパーチャ開口232の組で生成したビーム55は、X方向におけるパターン切削に利用される。
【0091】
複合アパーチャ・アレイ・デバイス
図25〜
図27に示す本発明の別の発展形態では、複合AAPは、複数の、好ましくは2つのプレート・デバイス411、421を備え、これらのプレート・デバイス411、421は、アパーチャ・アレイ・プレートのアパーチャを一緒に画定する。
図25A及び
図25Bの平面詳細図からわかるように、各プレート・デバイス411、421は、1次アパーチャ・アレイ410、420を備え、プレート・デバイスの1次アパーチャは、
図26に示すようにビームレットの形状を画定するように協働する。(
図25〜
図27のそれぞれは、3×3アパーチャを含む領域を示す。)プレート・デバイスは、PDD内に連続して平行に、好ましくは直に隣接するように(即ちプレート・デバイスの間に他の構成要素が位置決めされない)配置される。プレート・デバイスは、アクチュエータ(図示せず)、例えば圧電アクチュエータを備え、この圧電アクチュエータは、ビーム方向を横断するプレート・デバイスの相互位置の調節を可能にする。適切なアクチュエータが当業者に公知である(例えば本出願人の特許文献9を参照)。
【0092】
プレート・デバイス411、421のアパーチャ410、420の形状は、例えば共通の辺長さの正方形である。適切には、この辺長さは、アパーチャ410、420を使用して画定される長方形形状の最大辺長さよりも長い。
図26を参照すると、所望の長方形形状401(網掛けした領域)は、形状401の2つの辺がアパーチャ410、420のうち1つの縁部の2つによって画定されるようにアパーチャ410、420を重ね合わせることによって画定される。形状の適切な選択は、ビーム方向を横断するプレート・デバイス411、421の相対位置を適切に調節することによって達成される。したがって、同じ組のプレート・デバイスにより異なる形状及び異なる向きを画定することが可能である。例えば、
図27に示すように、
図26の形状401の向きに直交する向きを有する長方形形状402は、プレート・デバイス410’、420’を修正相対位置に再調節することによって容易に得られる。
【0093】
非小型サブカラム構成を有するマルチビーム・ツール
図28は、カラム列間に通路465を形成するように、サブカラム461が拡大距離、例えば
図10の配置と比較して2倍互いに離間した列で配置される更に別の例示的カラム構成460を示す。したがって、サブカラム461は、X方向に増分ピッチCXを有するが、Y方向(DY)には単一ピッチを有する。適切な選択は、ピッチCXが隣接するサブカラム間のピッチの2倍であるようなものであり、ピッチCXは、ここではY方向(DY)の単一ピッチに対応する。他の実施形態(図示せず)では、ピッチはより大きくてもよい。言い換えれば、ピッチCXは、Y方向(DY)の単一ピッチを維持する一方で、X方向(DX)のダイ・フィールドの長さの(少なくとも)2倍であるように選択できる。例えばDX=33mm及びDY=26mmのダイ・フィールドを有する直径が450mmのシリコン・ウェハの露光に関して、
図28に示す適切なカラム構成は、例えば内径が24mmの103個のサブカラム461を備えることができる。各サブカラム内には、上記で説明した矩形アパーチャを有する例えば8.2mm×8.2mmのアパーチャ・アレイ・フィールドを有するPDD462がある。
【0094】
図29は、
図28のカラム構成460を用いる、450mmウェハ111の対象露光領域の露光466を示す。この露光は、
図4Aと同様であるが各カラムに対して2倍の領域で、各サブカラムが(2×DX)×DYのカラム露光領域を露光するように行われる。したがって、例えばPDD462Aを有するサブカラム461Aは、領域460Aを露光することになり、以下同様である(領域は網掛けにより示す)。これらの領域の描画露光は、
図15を参照して上記で説明したものと対応する。
【0095】
サブカラムのこの構成は、方向の少なくとも1つでは、例えばX方向に沿っては小型ではなく、このことは、サブカラムの列の間の(本例ではY方向に沿った)通路465を使用することにより、
図28に象徴化した各サブカラムへのデータ経路463を容易に提供するという利点をもたらす。
図28の構成内の各サブカラムが、
図29で概説した2つのダイ・フィールドを露光する必要があることを欠点として見る場合があり、これは、より高い走査ストライプ速度をもたらすより高いデータ経路速度を提供することによって補償できる。この補償では、特定の露光線量を実現するために、ビーム・アレイ・フィールド462内の電流密度又はプログラム可能なビームの数のいずれかを増加することが可能である(
図29)。
【符号の説明】
【0097】
1 帯電粒子マルチビーム処理装置
7 対象物
9 粒子光学カラム
11 照光系
12 ビーム成形デバイス
16 投影光学系
24 アパーチャ
111 対象露光領域
120 カラム露光領域
200 アパーチャ・アレイ・デバイス
230 偏光アレイ・デバイス
231 交錯アパーチャ・アレイ