(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、入力側端子と出力側端子とを電気的に絶縁しながらアナログ信号量を入力側端子から出力側端子に伝送するための回路として、例えば、以下のような種々の回路が知られている。
【0003】
特許文献1には、直流電流信号が入力され、この信号を断続してパルス信号の最大周波数より高い周波数の交流に変換するチョッパと、一次側端子に上記チョッパによって変換された交流が入力されるトランスと、上記トランスの二次側端子に誘起された交流を整流、平滑する整流平滑部と、を備える信号絶縁回路が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ほぼ同一の特性を有する2つのフォトカプラと、それぞれのフォトカプラにおいて生じる歪みを打ち消し合って出力信号における歪みを低減させる歪み低減手段と、を備えるアイソレーションアンプ(絶縁アンプと同意)が記載されている。
【0005】
特許文献3には、一次側回路と、二次側回路と、一次側回路の出力側端子と二次側回路の入力側端子との間に接続され、直流成分を遮断する機能を有するコンデンサと、を備える絶縁アンプ回路が記載されている。
【0006】
特許文献4には、入力信号により振動振幅を変調可能な発振回路と、圧電セラミックスで構成される振動体と、を備える絶縁アンプが記載されている。入力信号は振動体の一次側振動部に接続された発振回路に入力され、出力信号は振動体の二次側振動部に接続された復調回路から出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の信号絶縁回路に用いられるトランスは、一次側コイルと、二次側コイルと、を備える。この一次側コイル及び二次側コイルは、一次側コイルを貫通する磁束が二次側コイルをも貫通するように配置される必要がある。したがって、二次側コイルを一次側コイルから大きく離間させて(例えば、約2.5mm以上の絶縁距離を確保しながら)配置することは難しい。
【0009】
また、特許文献2に記載のアイソレーションアンプに用いられるフォトカプラでは、受光素子への外乱光の入射を防止するために発光素子と受光素子とが近接した状態で一つのパッケージ内に封止される。このため、発光素子に接続される一次側回路と、受光素子に接続される二次側回路との間の絶縁距離を大きくとることができない。したがって、一次側回路と二次側回路との間の絶縁耐圧(以下、耐圧と称する)を十分に大きくすることは容易ではない。また、フォトカプラを用いた場合には、光(赤外線)の直進性との関係から発光素子と受光素子との位置関係が制約を受けるため、一次側回路及び二次側回路の配置の自由度を確保しにくい。
【0010】
また、特許文献3に記載の絶縁アンプ回路におけるコンデンサは、互いに対向する一対の電極を備える。コンデンサの一方の電極から他方の電極へ交流信号を伝達するためには、当該コンデンサが、当該交流信号の周波数帯域において十分に低いインピーダンスを有する必要がある。コンデンサのインピーダンスは容量値に反比例し、コンデンサの容量値は電極間距離に反比例することから、コンデンサのインピーダンスを低く抑えるためには、電極間の距離を小さく(例えば0.2〜0.3mmの範囲よりも小さく)する必要がある。その結果、一次側電極と二次側電極との間の耐圧を十分に大きくすることは容易ではない。
【0011】
また、特許文献4に記載の絶縁アンプに用いられる振動体を構成する圧電セラミックスは、Q値の温度依存性が高い材料である。このため、振動体の機械振動の伝達特性は、周囲温度の変化によって大きく変化する。したがって、振動体の一次側振動部に接続された発振回路に入力される入力信号を十分な精度で二次側振動部に接続された復調回路の出力信号として伝送することは容易ではない。
【0012】
そこで、本発明は、入出力間の耐圧が大きく、且つ入出力間の配置の自由度を確保し易い絶縁アンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面に係る絶縁アンプは、受信したアナログ入力信号を変調して無線送信可能な形式の変調信号を出力する入力部と、変調信号を電波信号として送信する入力側アンテナと、入力側アンテナから送信された電波信号を受信する出力側アンテナと、出力側アンテナにより受信された電波信号を復調してアナログ出力信号として出力する出力部と、を備える。
【0014】
この絶縁アンプでは、入力側アンテナと出力側アンテナとの間が電気的に絶縁されている。入力側アンテナから出力側アンテナまでの間では、信号は電波信号として伝送される。したがって、入力側アンテナと出力側アンテナとの間の距離が大きくなっても、信号の伝送が可能である。このため、入力側アンテナと出力側アンテナとの間の距離を十分に確保することにより、絶縁アンプの耐圧を十分に大きくすることができる。
【0015】
入力部は、アナログ入力信号をディジタル入力信号に変換するAD変換器と、ディジタル入力信号を変調信号に変調する変調回路と、を有し、出力部は、電波信号を復調してディジタル出力信号に変換する復調回路と、ディジタル出力信号をアナログ出力信号に変換するDA変換器と、を有していてもよい。この場合、入力側アンテナから出力側アンテナへ伝送される信号を、ディジタル信号を変調した信号とすることにより、アナログ信号又はアナログ信号を変調した信号を無線送信する場合と比較して、ノイズの混入による信号の精度及び線形性の低下を抑制することができる。
【0016】
絶縁アンプは、複数の出力側アンテナと、複数の出力側アンテナにそれぞれ対応する出力部とを備えていてもよい。この場合、一つのアナログ入力信号に基づくアナログ出力信号を複数の出力先に出力できるため、一つの信号を複数の装置で監視する用途に利用することができるため、絶縁アンプの汎用性が向上する。
【0017】
入力側アンテナ及び出力側アンテナは、いずれもチップアンテナであってもよい。この場合、サイズの小さいチップアンテナを用いることにより、絶縁アンプを小型化することができる。
【0018】
入力側アンテナと出力側アンテナとの間の距離は、5mm以上3m以下であってもよい。このように入力側アンテナと出力側アンテナとの間の距離を設定することにより、入力側アンテナから3mの距離での電界強度を所定値以下(例えば微弱無線局のレベル)とすることができる。これにより、絶縁アンプの設置及び使用に際し無線局の免許を受ける必要がなくなる。したがって、入力側アンテナと出力側アンテナとの間で使用される電波信号が、周波数帯域の制限及び伝送プロトコルの制約を受けることもない。このため、絶縁アンプ20の汎用性が向上する。なお、電波信号は、微弱無線信号であってもよい。
【0019】
入力部40は、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号をアナログ入力信号として受信可能であり、出力部は、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号をアナログ出力信号として出力可能であってもよい。この場合、計測信号の伝送のために広く利用されている統一信号を受信及び送信することができる。すなわち、一般の計装システムにおいては、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号は、現場(フィールド)からの信号伝送と現場への制御信号用に使われ、1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号は、計器盤内の計器・変換器類への信号分配用に使われるため、それらの分野への適用が容易となる。
【0020】
入力部及び出力部は、半導体集積回路により構成されていてもよい。この場合、サイズの小さい半導体集積回路を用いることにより、絶縁アンプを小型化することができる。
【0021】
絶縁アンプは、入力部、入力側アンテナ、出力側アンテナ及び出力部を収容する筐体を更に備えていてもよい。この場合、入力部、入力側アンテナ、出力側アンテナ及び出力部の全てが一つの筐体に収容されていることにより、アナログ入力信号が入力されアナログ出力信号を出力する単一デバイスとして絶縁アンプが構成される。このため、絶縁アンプの使い勝手が向上する。
【0022】
本発明の他の側面に係る計装システムは、計測対象から物理量を取得する計測機器と、計測機器からから物理量に応じたアナログ入力信号を受信しアナログ入力信号に応じたアナログ出力信号を出力する絶縁アンプと、絶縁アンプから出力されたアナログ出力信号に基づき計測対象を制御する制御機器と、を備え、絶縁アンプは、アナログ入力信号を変調して無線送信可能な形式の変調信号を出力する入力部と、変調信号を電波信号として送信する入力側アンテナと、入力側アンテナから送信された電波信号を受信する出力側アンテナと、出力側アンテナにより受信された電波信号を復調してアナログ出力信号として出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、入出力間の耐圧が大きく、且つ入出力間の配置の自由度を確保し易い絶縁アンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
〔計装システム〕
本実施形態に係る計装システム1は、各種の計測対象から物理量を取得し、当該物理量に基づいて上記の計測対象を制御するためのシステムである。計装システム1は、例えば、工場等の設備、又は装置を遠隔制御又は遠隔監視するシステムであってもよい。
【0027】
図1に示すように、計装システム1は、計測機器10と、絶縁アンプ20と、制御機器30と、を備える。計測機器10は、例えば工場等の建物内、又は野外環境に設置され、計測対象から物理量を取得する。計測機器10は、取得した物理量に応じた電気信号を、絶縁アンプ20を介して制御機器30に送信する。計測機器10は、センサ11と、2線式伝送器12と、を備える。
【0028】
センサ11は、計測対象から物理量を取得し、当該物理量を電気信号に変換する。物理量としては、例えば、温度、圧力、流量、電圧、電流等が挙げられる。2線式伝送器12は、センサ11から受信した電気信号の大きさに応じて(例えば電気信号の大きさに比例して)電流信号を出力する。電流信号は、例えば4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号、即ちいわゆる統一電流信号である。2線式伝送器12は、電流信号に代えて電圧信号を出力してもよい。この場合、電圧信号は、例えば1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号である。2線式伝送器12としては、例えば、ヘッドマウント型信号変換器やフィールド型信号変換器が挙げられる。なお、ヘッドマウント型信号変換器とは、配管を流れる流体から当該配管に設けられるセンサを保護するための保護管のヘッドに、センサとともに設置されるタイプの信号変換器である。
【0029】
絶縁アンプ20は、伝送路13を介して2線式伝送器12の出力側端子に接続されている。絶縁アンプ20は、2線式伝送器12から受信した電気信号の大きさに比例する大きさの電流を制御機器30に出力する。同時に、絶縁アンプ20は、入力側(即ち2線式伝送器12の側)端子と出力側(即ち制御機器30の側)端子との間を直流的に絶縁する。絶縁アンプ20及び制御機器30と計測機器10との間の距離(即ち伝送路13の長さ)は、例えば1mから100kmであってもよい。したがって、計装システム1は、現場に設置された計測機器10により各種物理量を計測し、当該物理量に基づいて、計測機器10から離れた場所で制御機器30により制御・監視対象を制御・監視するシステムであってもよい。絶縁アンプ20の詳細な構成については後述する。
【0030】
制御機器30は、絶縁アンプ20を介して計測機器10から物理量に応じた電気信号を取得し、当該電気信号に応じて上記計測対象を制御する。なお、制御機器30は、計測対象から計測機器10及び絶縁アンプ20を介して物理量を取得し、取得した物理量に基づき計測対象を単に監視するものであってもよい。なお、絶縁アンプ20は、制御機器30に内蔵されていてもよく、制御機器30の外部に配置されていてもよい。
【0031】
〔絶縁アンプ〕
図2及び
図3を参照して、絶縁アンプ20の構成について説明する。以下では、絶縁アンプ20の構成の一例として、直接変調方式の無線送信機と、スーパーヘテロダイン方式の無線受信機との組合せによる構成を説明する。ただし、絶縁アンプ20を、他の方式(例えば間接変調方式)の無線送信機と他の方式(例えばダイレクトコンバージョン方式)の無線受信機との組合せにより構成してもよい。
【0032】
絶縁アンプ20は、入力部40と、入力側アンテナ46と、出力側アンテナ51と、出力部50と、を備える。絶縁アンプ20は、例えば、入力部40、入力側アンテナ46、出力側アンテナ51及び出力部50を収容する筐体21を備えていてもよい。入力部40は、2線式伝送器12から受信したアナログ入力信号を変調して、無線送信可能な形式の変調信号を出力する。入力側アンテナ46は、変調信号を電波信号として送信する。出力側アンテナ51は、入力側アンテナ46から送信された電波信号を受信する。出力部50は、出力側アンテナ51により受信された電波信号を復調してアナログ出力信号として出力する。以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0033】
入力部40は、例えばAD変換器(アナログ・ディジタル変換器)41と、変調回路42と、CPU43と、を備える。AD変換器41は、アナログ入力信号をディジタル入力信号に変換する。AD変換器41の出力ビット数、サンプリング周波数等は、絶縁アンプ20に必要な精度、速度等に応じて適宜選択すればよい。AD変換器41は、例えば差動電流入力型のAD変換器である。
【0034】
変調回路42は、AD変換器41から受信したディジタル入力信号を変調信号に変調する。変調回路42は、例えば、発振器を内蔵し、変調信号に基づいて発振器の出力信号を変調する回路であってもよい。変調信号を生成するための変調方式は特に限定されない。変調信号の周波数帯域も特に制限されない。一例として、変調回路42は、ディジタル入力信号を予め定められたプロトコルに従ってビット列に変換し、このビット列に基づいて一次変調及び二次変調を行い、変調信号を生成する。一次変調の方式としては、例えば振幅偏移(ASK)、周波数偏移(FSK)、位相偏移(PSK)、直交振幅変調(QAM)が挙げられる。二次変調の方式としては、例えば直接拡散(DSSS)、周波数ホッピング(FHSS)、直交周波数分割多重(OFDM)、コード拡散(CDMA)が挙げられる。なお、二次変調を行うことは必須ではない。
【0035】
CPU43は、AD変換器41及び変調回路42を制御する。例えば、CPU43は、AD変換器41及び変調回路42を適切なタイミングで動作させる。一例として、CPU43は、AD変換器41が一定のタイミングで2線式伝送器12からのアナログ入力信号をサンプリングし、AD変換器41がAD変換動作を終了してディジタル信号を出力したタイミングで変調回路42に変調動作を開始させるように、AD変換器41及び変調回路42を制御する。CPU43は、AD変換器41及び変調回路42に対し、AD変換器41及び変調回路42の動作を変化させるためのパラメータを出力してもよい。
【0036】
なお、入力部40は、AD変換器41を有しなくてもよい。この場合、変調回路42は、アナログ入力信号を変調信号に変調する。入力部40がAD変換器41を有しない場合の変調方式としては、例えば振幅変調(AM),周波数変調(FM)、位相変調(PM)が挙げられる。入力部40は、例えば4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の直流電圧信号をアナログ出力信号として受信可能である。入力部40は、半導体集積回路により構成されていてもよい。
【0037】
パワーアンプ44は、変調回路42から出力された変調信号を、入力側アンテナ46から送信されるのに適した強度にまで増幅する。フィルタ45は、変調信号の周波数帯域外の信号を遮断するバンドパスフィルタである。
【0038】
入力側アンテナ46は、フィルタ45を通過した変調信号を電波信号として送信する。入力側アンテナ46は、例えばチップアンテナである。ここで、チップアンテナとは、1辺が例えば0.2mm〜5mm程度の略直方体状の外形を有する、いわゆるチップ電子部品型のアンテナである。チップアンテナは、例えばセラミック等の誘電体からなる略直方体状の基体の表面に、例えば螺旋状又はジグザグ状に導体を配置した構成を有する。入力側アンテナ46は、例えば、誘電体からなる基板の表面に所定の形状の金属箔を配置して構成されるプリントアンテナであってもよい。入力側アンテナ46は、オンチップアンテナであってもよい。例えば、入力側アンテナ46は、入力部40、パワーアンプ44及びフィルタ45の少なくとも一部と一体化された集積回路として構成されていてもよい。
【0039】
入力側アンテナ46から送信される電波信号は、例えば微弱無線信号である。即ち、当該電波信号の強度は、例えば、微弱無線局が送信する電波信号の強度の範囲内に設定される。言い換えれば、絶縁アンプ20は、例えば微弱無線局である。ここで、微弱無線局とは、電波法施行規則第6条第1項第1号に規定される無線局を意味する。即ち、微弱無線局とは、当該無線局の無線設備から3mの距離において、その電界強度が、322MHz以下の周波数帯においては500μV/m以下、322MHzを超え10GHz以下の周波数帯においては35μV/m以下、10GHzを超え150GHz以下の周波数帯においては(3.5×f)μV/m(ただしfは周波数(単位:GHz))及び500μV/mのうち小さい方以下、150GHzを超える周波数帯においては500μV/m以下である無線局である。
【0040】
出力側アンテナ51は、入力側アンテナ46から送信された電波信号を受信する。出力側アンテナ51は、例えばチップアンテナである。出力側アンテナ51は、例えばプリントアンテナであってもよい。出力側アンテナ51は、オンチップアンテナであってもよい。例えば、出力側アンテナ51は、フィルタ52、LNA53、ミキサ54及び出力部50の少なくとも一部と一体化された集積回路として構成されていてもよい。入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間の距離は、例えば5mm以上3m以下であってもよく、5mm以上30cm以下であってもよく、5mm以上5cm以下であってもよい。
【0041】
フィルタ52は、出力側アンテナ51で受信された電波信号のうち、変調回路42によって生成される変調信号の周波数帯域の外にある信号を遮断するバンドパスフィルタである。LNA53は、フィルタ52を通過した変調信号を増幅する。ミキサ54は、LNA53から受信した変調信号に、局部発振器(不図示)で生成した局部発振信号を混合し、変調信号の周波数と局部発振信号の周波数との差の周波数の中間周波数信号を生成する。
【0042】
IFフィルタ55は、ミキサ54から受信した信号のうち中間周波数信号を通過させ、不要な周波数成分(例えば変調信号の周波数と局部発振信号の周波数との和の周波数の信号)を遮断するバンドパスフィルタである。
【0043】
出力部50は、IFフィルタ55から受信した中間周波数信号を復調して、アナログ出力信号として出力する。アナログ出力信号は、例えば4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号である。出力部50は,半導体集積回路により構成されていてもよい。出力部50は、例えば復調回路56と、DA変換器(ディジタル・アナログ変換器)57と、CPU58と、を備える。復調回路56は、中間周波数信号を復調し、その結果をディジタル出力信号として出力する。復調回路56による復調動作は、変調回路42が変調信号を生成するための変調方式と同じ変調方式に基づいて行われる。
【0044】
DA変換器57は、復調回路56から出力されたディジタル出力信号をアナログ信号に変換し、アナログ出力信号として出力する。DA変換器57の入力ビット数、サンプリング周波数等は、絶縁アンプ20に必要な精度、速度等に応じて適宜選択すればよい。DA変換器57は、例えば差動電流出力式のDA変換器である。なお、入力部40がAD変換器41を有しない場合、出力部50はDA変換器57を有しない。
【0045】
CPU58は、復調回路56及びDA変換器57を制御する。例えば、CPU58は、復調回路56及びDA変換器57を適切なタイミングで動作させる。一例として、CPU58は、復調回路56が一定のタイミングでIFフィルタ55からの中間周波数信号を復調し、復調回路56が復調動作を終了してディジタル信号を出力したタイミングでDA変換器57が当該ディジタル信号をサンプリングするように、復調回路56及びDA変換器57を制御する。CPU58は、復調回路56及びDA変換器57に対し、復調回路56及びDA変換器57の動作を変化させるためのパラメータを出力してもよい。
【0046】
以上の構成により、DA変換器57が出力するアナログ出力信号は、例えば、AD変換器41に入力されるアナログ入力信号にほぼ比例する。DA変換器57が出力するアナログ出力信号は、例えば、AD変換器41に入力されるアナログ入力信号の約1倍であってもよい。
【0047】
〔本実施形態の作用効果〕
以上に説明したように、絶縁アンプ20は、受信したアナログ入力信号を変調して無線送信可能な形式の変調信号を出力する入力部40と、変調信号を電波信号として送信する入力側アンテナ46と、入力側アンテナ46から送信された電波信号を受信する出力側アンテナ51と、出力側アンテナ51により受信された電波信号を復調してアナログ出力信号として出力する出力部50と、を備える。
【0048】
この絶縁アンプ20では、入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間が電気的に絶縁されている。入力側アンテナ46から出力側アンテナ51までの間では、信号は電波信号として伝送される。したがって、入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間に一定の距離(例えば5mm〜3m)があっても、信号の伝送が可能である。このため、入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間の距離を十分に確保することにより、絶縁アンプ20の耐圧を十分に大きくすることができる。
【0049】
入力部40は、アナログ入力信号をディジタル入力信号に変換するAD変換器41と、ディジタル入力信号を変調信号に変調する変調回路42と、を有し、出力部50は、電波信号を復調してディジタル出力信号に変換する復調回路56と、ディジタル出力信号をアナログ出力信号に変換するDA変換器57と、を有していてもよい。この場合、入力側アンテナ46から出力側アンテナ51へ伝送される信号を、ディジタル信号を変調した信号とすることにより、アナログ信号又はアナログ信号を変調した信号を無線送信する場合と比較して、ノイズの混入による信号の精度及び線形性の低下を抑制することができる。
【0050】
入力側アンテナ46及び出力側アンテナ51は、いずれもチップアンテナであってもよい。この場合、サイズの小さいチップアンテナを用いることにより、絶縁アンプ20を小型化することができる。
【0051】
入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間の距離は、5mm以上3m以下であってもよい。このように入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間の距離を設定することにより、入力側アンテナ46から3mの距離での電界強度を一定以下(例えば微弱無線局のレベル)とすることができる。これにより、絶縁アンプ20の設置及び使用に際し無線局の免許を受ける必要がなくなる。したがって、入力側アンテナ46と出力側アンテナ51との間で使用される電波信号が、周波数帯域の制限及び伝送プロトコルの制約を受けることもない。このため、絶縁アンプ20の汎用性が向上する。なお、電波信号は、微弱無線信号であってもよい。
【0052】
入力部40は、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号をアナログ入力信号として受信可能であり、出力部50は、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号又は1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号をアナログ出力信号として出力可能であってもよい。この場合、計測信号の伝送のために広く利用されている統一信号を受信及び送信することができるため、汎用性を向上できる。すなわち、一般の計装システムにおいては、4mA以上20mA以下の範囲の直流電流信号は、現場(フィールド)からの信号伝送と現場への制御信号用に使われ、1V以上5V以下の範囲の直流電圧信号は、計器盤内の計器・変換器類への信号分配用に使われるため、それらの分野への適用が容易となる。
【0053】
入力部40及び出力部50は、半導体集積回路により構成されていてもよい。この場合、サイズの小さい半導体集積回路を用いることにより、絶縁アンプ20を小型化することができる。
【0054】
絶縁アンプ20は、入力部40、入力側アンテナ46、出力側アンテナ51及び出力部50を収容する筐体21を更に備えていてもよい。この場合、入力部40、入力側アンテナ46、出力側アンテナ51及び出力部50の全てが一つの筐体21に収容されていることにより、アナログ入力信号が入力されアナログ出力信号を出力する単一デバイスとして絶縁アンプ20が構成される。このため、絶縁アンプ20の使い勝手が向上する。
【0055】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、
図4に示すように、絶縁アンプ20は、複数(
図4に示す例では2個)の出力側アンテナ51と、複数の出力側アンテナ51にそれぞれ対応する出力部50とを備えていてもよい。この場合、一つのアナログ入力信号に基づくアナログ出力信号を複数の出力先に出力できるため、一つの信号を複数の装置(例えば制御用コンピュータと計器)で監視する用途に利用することができるため、絶縁アンプ20の汎用性が向上する。
【0056】
また、
図5に示すように、絶縁アンプ20は、入力部40及び入力側アンテナ46を収容する筐体21Aと、出力側アンテナ51及び出力部50を収容する筐体21Bとを備えていてもよい。この場合、例えば
図6の(a)及び(b)に示すように、絶縁アンプ20を備える電子デバイス22内の基板23上において、筐体21A及び筐体21Bを自在に配置することができる。このような入力側素子及び出力側素子の自在な配置は、一次側コイルと二次側コイルの両方を磁束が貫通する必要のあるトランスを用いた絶縁アンプ、及び一次側電極と二次側電極とを近接させるコンデンサを用いた絶縁アンプでは実現することは難しい。また、フォトカプラを用いた絶縁アンプでも、光の直進性や外乱光の入射抑制等の制約から、入力側回路と出力側回路との配置の自由度は大きいとはいえない。
【0057】
また、絶縁アンプ20が筐体21A及び筐体21Bを備える場合、1個の筐体21Aに対応して設けられる筐体21Bの数を自由に増減させることができる。例えば
図6の(c)に、絶縁アンプ20が1個の筐体21Aと3個の筐体21Bとを備える場合を示す。このような構成によれば、出力側アンテナ51、出力部50及びこれらを収容する筐体21Bの個数を増減させることにより、絶縁アンプ20の出力の個数を容易に増減させることができる。
【解決手段】絶縁アンプ20は、受信したアナログ入力信号を変調して無線送信可能な形式の変調信号を出力する入力部40と、変調信号を電波信号として送信する入力側アンテナ46と、入力側アンテナ46から送信された電波信号を受信する出力側アンテナ51と、出力側アンテナ51により受信された電波信号を復調してアナログ出力信号として出力する出力部50と、を備える。