特許第6592775号(P6592775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592775ファイル送受信システム、および、ファイル送受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592775
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ファイル送受信システム、および、ファイル送受信方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/00 20060101AFI20191010BHJP
   H04L 29/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G06F13/00 540A
   H04L13/00 307Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-32705(P2015-32705)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-157164(P2016-157164A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勉
(72)【発明者】
【氏名】牛原 誠
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 和之
(72)【発明者】
【氏名】新本 誠
【審査官】 木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−182648(JP,A)
【文献】 特開2009−278521(JP,A)
【文献】 特開2012−134758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/00
H04L 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線端末装置および第2の無線端末装置で共通に実行されるファイルを、データ送信用の複数のパケットに変換するデータ変換部と、
前記複数のパケットを用いた合成データを記憶する合成データ記憶部と、
前記複数のパケットおよび前記合成データをマルチキャストで送信するサーバ通信部と、
を備えるサーバ装置と、
前記マルチキャストで送信された前記複数のパケットを受信可能とともに、前記合成データから前記複数のパケットを取得可能な受信部と、
前記マルチキャストで送信された前記複数のパケットから欠けパケットを検出する欠け検出部と、
前記欠けパケットの再送信要求を行う再送信要求部と、
をそれぞれに備える第1の無線端末装置および第2の無線端末装置と、
を備え、
前記サーバ通信部は、前記第1の無線端末装置から前記再送信要求を受けた欠けパケットを含む前記合成データをマルチキャストで送信し、
前記第2の無線端末装置の前記再送信要求部は、
前記欠けパケットを検出した後に、前記第1の無線端末装置の前記再送信要求による合成データによって前記欠けパケットを補完できたときは、前記再送信要求を行わず、補完できなかったときに前記再送信要求を行う、
ファイル送受信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のファイル送受信システムであって、
前記サーバ通信部は、
前記再送信要求で指定されたパケットを含む前記合成データを送信する、
ファイル送受信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のファイル送受信システムであって、
前記サーバ通信部は、
前記データ送信用の複数のパケットをマルチキャストで送信した後に前記再送信要求を受け付けると、前記合成データを送信する、
ファイル送受信システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のファイル送受信システムであって、
前記第2の無線端末装置の欠けパケットは、前記第1の無線端末装置の欠けパケットと異なる、
ファイル送受信システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のファイル送受信システムであって、
前記合成データは、連続するパケットの排他的論理和である、
ファイル送受信システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のファイル送受信システムであって、
前記無線端末装置は、
前記複数のパケットから前記ファイルを復元するデータ復元部と、
前記ファイルをアプリケーションで実行するアプリケーション実行部と、
を備え、
前記再送信要求部は、
前記アプリケーション実行部からのファイルの要求に応じて、前記再送信要求を行う、
ファイル送受信システム。
【請求項7】
サーバ装置が、第1の無線端末装置および第2の無線端末装置で共通に実行されるファイルを、データ送信用の複数のパケットに変換し、
前記サーバ装置が、前記複数のパケットをマルチキャストで送信し、
前記サーバ装置が、前記複数のパケットを用いた合成データを記憶し、
前記第1の無線端末装置および前記第2の無線端末装置が、前記マルチキャストで送信された前記複数のパケットを受信し、
前記第1の無線端末装置および前記第2の無線端末装置が、前記マルチキャストで送信された前記複数のパケットから欠けパケットを検出し、
前記第1の無線端末装置が、前記欠けパケットの再送信要求を行い、
前記サーバ装置が、前記第1の無線端末装置から前記再送信要求を受けた欠けパケットを含む前記合成データをマルチキャストで送信し、
前記第2の無線端末装置が、前記欠けパケットを検出した後に、前記第1の無線端末装置の前記再送信要求による合成データによって前記欠けパケットを補完できたときは、前記再送信要求を行わず、補完できなかったときに、前記再送信要求を行う、
ファイル送受信方法。
【請求項8】
請求項7に記載のファイル送受信方法であって、
前記第2の無線端末装置の欠けパケットは、前記第1の無線端末装置の欠けパケットと異なる、
ファイル送受信方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のファイル送受信方法であって、
前記合成データは、連続するパケットの排他的論理和である、
ファイル送受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の端末装置に対して同じファイルデータを送信するサーバ装置、ファイル送受信システム、および、ファイル送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端末装置に同時にデータを配信するシステムが各種考案されている。例えば、特許文献1には、リアルタイムデータストリーミングのシステムが記載されている。
【0003】
特許文献1では、サーバ装置は、ビデオストリーミングデータを、複数のクライアント装置(端末装置)に対してマルチキャストによって配信する。クライアント装置は、データの欠けを検出すると、サーバ装置に対して再送信要求を行う。サーバ装置は、再送信要求を受けたデータを、エラー訂正機能付きの通信(例えばTCP)を用いて、再送信要求の送信元のクライアント装置にユニキャストによって送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−507826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来のシステムでは、サーバ装置は、欠けを補完するデータを、再送信要求元のクライアント装置毎に個別送信する。例えば、複数のクライアント装置が同じデータを再送信要求していても、それぞれのクライアント装置に対して個別にデータの再送信を行う。このため、どのような状況であっても、再送信要求の回数と同じ回数でデータの再送信を行わなければならない。
【0006】
したがって、クライアント装置数が多くなり、また、データの欠けが多くなると、再送信要求および当該再送信要求によるデータの再送信に通信帯域を多く割かなければならず、通信速度の低下を招いてしまう。なお、通信帯域とは、例えば、時分割方式であれば時間スロット、周波数分割方式であれば割り当てられる周波数、コード変調方式であれば割り当てられるコードの種類である。
【0007】
また、上述の特許文献1に記載のシステムは、ビデオストリーミング用のデータ送信方式であり、そのままでは、一般的なアプリケーション用のファイルの送信には利用することができない。
【0008】
従来、一般的なアプリケーションファイルの場合、サーバ装置は、複数のクライアント装置に対して同じファイルを送信する場合であっても、これら複数のクライアント装置に対してエラー訂正機能付きのユニキャスト送信を行っていた。したがって、クライアント装置数が増加すると、個別の送信に時間がかかり、全てのクライアント装置によって同時にファイルを送信できない場合があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、クライアント装置の数の影響を受け難く、サーバ装置から複数のクライアント装置に対して、同時にファイルを送信できるサーバ装置、およびファイル送信システム、ファイル送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のサーバ装置は、データ変換部、合成データ記憶部、および、サーバ通信部を備える。データ変換部は、端末装置で実行されるファイルを、データ送信用の複数のパケットに変換する。合成データ記憶部は、複数のパケットを用いた合成データを記憶する。サーバ通信部は、合成データをマルチキャストで送信する。
【0011】
この構成では、全ての端末装置が合成データを受信できる。したがって、複数の端末装置の欠けパケットを、この合成データによって補完することが可能になる。
【0012】
また、この発明のサーバ装置のサーバ通信部は、端末装置からの再送信要求で指定されたパケットを含む合成データを送信する。
【0013】
この構成では、再送信要求を行った端末装置(第1端末装置)のみでなく、当該第1端末装置以外の端末装置(第2端末装置)も、再送信された合成データを受信できる。したがって、第2端末装置の欠けパケットを、この合成データによって補完することが可能になる。
【0014】
また、この発明のサーバ装置では、合成データは、連続するパケットの排他的論理和である。
【0015】
この構成では、合成データからパケットを容易に復元することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、端末装置の数の影響を受け難く、サーバ装置から複数の端末装置に対して、略同時にファイルを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムの構成を示す機能ブロック図
図2】本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムの概念を説明するための図
図3】本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおけるデータ構成概念を説明するための図
図4】本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおける合成データの生成方法、データ構成、およびパケットの復元方法を説明するためのデータ構成図
図5】本発明の第1の実施形態に係るサーバ装置の処理フローを示すフローチャート
図6】本発明の第1の実施形態に係る端末装置の処理フローを示すフローチャート
図7】本発明の第1の実施形態に係る端末装置の別の処理フローを示すフローチャート
図8】本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおける別の合成データの生成方法、データ構成、およびパケットの復元方法を説明するためのデータ構成図
図9】本発明の第2の実施形態に係るファイル送受信システムの構成を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システム、および、サーバ装置について、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムの構成を示す機能ブロック図である。
【0019】
図1に示すように、ファイル送受信システム10は、サーバ装置20、および、端末装置31,32,33を備える。なお、本実施形態では、端末装置は、3台の例を示しているが、2台以上であれば、本願発明のファイル送受信システムの構成を適用し、本願発明の作用効果を得ることができる。
【0020】
サーバ装置20は、データ送信部21、データ変換部22、および、データ記憶部23を備える。データ送信部21は、サーバ通信部211、および、合成データ記憶部212を備える。サーバ通信部211は、データ変換部22とアンテナ24に接続されている。また、サーバ通信部211は合成データ記憶部212に接続されている。データ変換部22は、データ記憶部23に接続されている。
【0021】
データ記憶部23には、アプリケーション用のファイル(「端末装置で実行する(実行される)ファイル」に相当」が記憶されている。データ変換部22は、データ記憶部23から読み出したファイルを、通信用の複数のパケットに変換する。データ変換部22は、通信用の複数のパケットをサーバ通信部211に与える。
【0022】
サーバ通信部211は、アプリケーション用のファイルを変換してなる複数のパケットを、アンテナ24を介してマルチキャストで送信する。例えば、サーバ通信部211は、複数のパケットからなるパケット列のヘッダにマルチキャスト用のアドレスを付けて、UDP(User Datagram Protocol)等のエラー訂正機能の無いプロトコルで送信する。
【0023】
サーバ通信部211は、複数のパケットを、データ変換部22から取得すると、合成データを生成し、合成データ記憶部212に記憶する。合成データとは、複数のパケットを用いて構成され、後にこれらの複数のパケットを復元できるように形成されたデータであり、具体的なデータ構成例は後述する。
【0024】
サーバ通信部211は、端末装置31,32,33のいずれかから再送信要求データを受信すると、再送信要求データを解析して、指定のパケットを検出する。サーバ通信部211は、指定のパケットを含む合成データを合成データ記憶部212から読み出し、マルチキャストで送信する。
【0025】
端末装置31は、端末通信部311、データ復元部312、アプリケーション実行部313、および、アンテナ317を備える。端末装置32は、端末通信部321、データ復元部322、アプリケーション実行部323、および、アンテナ327を備える。端末装置33は、端末通信部331、データ復元部332、アプリケーション実行部333、および、アンテナ337を備える。端末装置31,32,33の基本構成は、同じである。したがって、具体的な構成は、端末装置31のみで行う。
【0026】
端末装置31の端末通信部311は、送受信部314、欠け検出部315、および、再送信要求部316を備える。
【0027】
送受信部314は、マルチキャスト送信された複数のパケットを受信して記憶する。この際、送受信部314は、パケットに付随している誤り訂正機能(チェックサム)等を用いて、パケットが正確に受信できたかどうかを検出する。送受信部314は、正確に受信できていないパケットは破棄し、記憶しない。
【0028】
送受信部314は、再送信要求部316からの再送信要求を受け、再送信要求データを生成し、アンテナ317を介して、サーバ装置20に送信する。この際、送受信部314は、ユニキャスト通信によって、再送信要求データをサーバ装置20に送信する。例えば、送受信部314は、再送信要求データのヘッダにサーバ装置20のアドレスを付けて、UDP(User Datagram Protocol)等のエラー訂正機能の無いプロトコルで送信する。
【0029】
欠け検出部315は、送受信部314で記憶されている複数のパケット(パケット列)において、記憶されていないパケット(欠けパケット)を検出する。具体的には、欠け検出部315は、パケットまたはパケット列に付けられたヘッダ情報から、パケットが記憶されているべき位置にパケットが記憶されていないことを検出すると、当該位置のパケットを欠けパケットとして検出する。
【0030】
再送信要求部316は、欠け検出部315によって欠けパケットが検出されたことを取得すると、欠けパケットの番号を含む再送信要求を送受信部314に与える。
【0031】
データ復元部312は、送受信部314からパケット列を取得して、アプリケーション用のファイルを復元する。データ復元部312は、ファイルをアプリケーション実行部313に与える。
【0032】
アプリケーション実行部313は、データ復元部312から取得したファイルを、当該ファイルに関連付けされたアプリケーションを実行することによって利用する。
【0033】
次に、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムのファイル送信概念を、図2および図3を参照して説明する。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムの概念を説明するための図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおけるデータ構成概念を説明するための図である。
【0035】
[状態1]
図2に示すように、サーバ装置20は、最初の送信データを、端末装置31,32,33に対してマルチキャスト(例えば、UDPを利用)で送信する。この際、図3に示すように、最初の送信データは、複数のパケットが順に並ぶパケット列からなる。パケットとは、複数のビットデータによって構成される通信用の単位データ列である。なお、図示しないがパケット列には、マルチキャストを示すヘッダ、チェックサム等の誤り検出符号が付されている。この最初の送信データは、アプリケーション用のファイルをパケット列に変換することによって得られる。この例では、図3の状態1−1に示すように、最初の送信データは、パケットPA,PB,PC,PD,PE,PF,PG,PHがこの順で並ぶパケット列によって構成されるデータである。
【0036】
端末装置31,32,33は、最初の送信データを受信すると、自身を含むマルチキャスト送信であることを検出する。端末装置31,32,33は、パケットPA,PB,PC,PD,PE,PF,PG,PHを記憶する。この際、端末装置31,32,33は、誤り検出符号を用いて各パケットを正確に受信できたか否かを検出する。端末装置31,32,33は、正確に受信できていないパケットを記憶しない。
【0037】
このような処理を行うことにより、例えば、図3の状態1−2に示すように、端末装置31は、パケットPB,PGを受信できず、パケットPB,PGは欠けパケットとなる。端末装置32は、パケットPCを受信できず、パケットPCは欠けパケットとなる。端末装置33は、パケットPEを受信できず、パケットPEは欠けパケットとなる。
【0038】
[状態2]
端末装置31,32,33は、欠けパケットを検出すると、再送信要求データをサーバ装置20に送信する。端末装置31,32,33は、サーバ装置20に対してユニキャスト(例えば、UDPを利用)で再送信要求データを送信する。なお、端末装置31,32,33は、欠けパケットが生じても所定時間待機し、他の端末装置からの再送信要求によって合成データが送信されてくるか否かを判断してから、再送信要求を行ってもよい。
【0039】
例えば、図2に示すように、端末装置31は、パケットPB、PGが欠けパケットであることを検出すると、パケットPB,PFを指定した再送信要求データを、サーバ装置20に送信する。この際、端末装置32,33は、自装置において欠けパケットを検出していても、再送信要求データの送信を待機している。
【0040】
[状態3]
サーバ装置20は、端末装置31,32,33から再送信要求データを受信すると、再送信要求データで指定されたパケットを含む合成データを、端末装置31,32,33に対してマルチキャスト(例えば、UDPを利用)で送信する。
【0041】
例えば、図2に示すように、サーバ装置20は、再送信要求データで指定されたパケットPBを含む合成データPBCと、再送信要求データで指定されたパケットPGを含む合成データPGHを、端末装置31,32,33に対して送信する。
【0042】
端末装置31,32,33は、合成データを受信すると、合成データに自身の欠けパケットが含まれているか否かを判定する。端末装置31,32,33は、合成データに欠けパケットが含まれていれば、合成データからパケットを取得して、欠けパケットに補完する。
【0043】
例えば、図3の状態3−2,3−3に示すように、端末装置31は、合成データPBCからパケットPCを取得して、パケットPCを補完する。また、端末装置31は、合成データPFGからパケットPGを復元して、パケットPGを補完する。端末装置32は、合成データPBCからパケットPBを復元して、パケットPBを補完する。端末装置33は、合成データPFGからパケットPFを復元して、パケットPFを補完する。
【0044】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることによって、1つの端末装置の再送信要求で、複数の端末装置が欠けパケットの補完を行うことができる。これにより、再送信要求による通信帯域の占有を抑制でき、ファイル送信の遅延を抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、再送信要求によって送信する合成データを次のデータ構成としている。図4は、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおける合成データの生成方法、データ構成、およびパケットの復元方法を説明するためのデータ構成図である。
【0046】
ファイル送受信システム10における合成データは、複数のパケットによって構成されるパケット列における連続するパケットを合成することによって生成される。例えば、パケットPA,PBによって合成データPABを生成し、パケットPB,PCによって合成データPBCを形成し、パケットPC,PDによって合成データPCDを形成する。以下、同様に合成データは形成される。なお、各パケットは少なくとも1つの合成データに含まれていればよい。例えば、パケットPA,PBによって合成データPABを生成し、パケットPC,PDによって合成データPCDを形成する態様であってもよい。
【0047】
具体的な例として、図4に示すように、最初の送信データにおけるパケットPBは「10101010」であり、パケットPCは「01010101」であるとする。この場合、合成データPBCは、パケットPBとパケットPCとの排他的論理和(PB XOR PC)によって生成される。したがって、合成データPBCは「11111111」となる。
【0048】
合成データPBCからパケットPBを復元する場合、合成データPBCとパケットPCとの排他的論理和(PBC XOR PC)を演算する。これにより、パケットPBを復元することができる。
【0049】
合成データPBCからパケットPCを復元する場合、合成データPBCとパケットPBとの排他的論理和(PBC XOR PB)を演算する。これにより、パケットPCを復元することができる。
【0050】
このような構成とすることによって、パケットが連続して欠けていなければ、1回の演算によって欠けパケットを確実に復元することができる。例えば、図3に示すように、端末装置31では、パケットPA,PCは受信でき、パケットPBは欠けパケットである。したがって、合成データPBCを用いることで、受信できているパケットPCと合成データPBCから、欠けパケットPBを確実に復元することができる。
【0051】
また、本実施形態に示すように、排他的論理和を用いることによって、パケットと合成データのビット数を同じにすることができる。これにより、合成データの送信に利用するビット数の増加を抑制でき、再送信による通信帯域の占有量の増加を抑制できる。したがって、ファイル送信の遅延をさらに抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態の構成を用いることによって、アプリケーションの改修を行うことなく、アプリケーション用のファイルをマルチキャスト送信することができる。これにより、アプリケーション用のファイルを、複数の端末装置へ略同時に送信することができる。特に、端末装置の台数が多くなっても通信帯域が制限されることを抑制でき、教室等の多くの端末装置に略同じファイルを送信する態様において、より有効である。
【0053】
なお、本実施形態では、隣り合う2つのパケットから合成データを生成し、欠けパケットと、この欠けパケットの次のパケットとを用いた合成データを再送信する態様を示したが、他の態様であってもよい。例えば、欠けパケットと、この欠けパケットの前のパケット(ヘッダ側のパケット)とを用いた合成データを再送信してもよい。また、欠けパケットと、この欠けパケットに対して所定パケット離れてパケットとを用いた合成データを生成し、再送信してもよい。また、3つ以上のパケットから合成データを生成してもよい。
【0054】
上述の説明では、サーバ装置20および端末装置31,32,33において各機能部が個別の機能を実行する態様を示したが、上記の一連の処理をプログラムにして記憶し、サーバ装置20および端末装置31,32,33に内蔵された演算処理装置でこのプログラムを実行してもよい。
【0055】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るサーバ装置の処理フローを示すフローチャートである。なお、詳細な処理は、上述しているので省略する。
【0056】
サーバ装置20は、アプリケーション用のファイルをマルチキャスト用のパケットに変換する(S101)。サーバ装置20は、パケット列を構成する複数のパケットを用いて合成データを生成し、記憶する(S102)。
【0057】
サーバ装置20は、パケット列をマルチキャスト送信する(S103)。すなわち、サーバ装置20は、パケット列の最初の送信を行う。例えば、サーバ装置20は、複数のパケット列からなるフレーム単位でマルチキャスト送信する。サーバ装置20は、1フレーム毎に、端末装置31,32,33からの再送信要求データがあるか否かを検出する。なお、サーバ装置20の送信単位は1フレームに限るものではない。
【0058】
サーバ装置20は、端末装置31,32,33から再送信要求データを受信すると(S104:)、再送信要求データによって指定されたパケットを含む合成データを読み出して、マルチキャスト送信する(S105)。
【0059】
なお、サーバ装置20は、再送信要求データを受信しなければ(S104:NO)、ファイルを変換したパケット列の送信を継続する。
【0060】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る端末装置の処理フローを示すフローチャートである。なお、以下では端末装置31の処理を代表して説明する。
【0061】
端末装置31は、サーバ装置20からのマルチキャスト送信されたパケット列を受信する(S201)。端末装置31は、パケット毎に破損を確認する(S202)。端末装置31は、パケットの破損が無ければ(S203:NO)、受信したパケット列からアプリケーション用のファイルを復元する。
【0062】
端末装置31は、自装置が再送信要求データを送信する前に、他の端末装置32,33の再送信要求データによる合成データを受信できていれば(S204:YES)、合成データに自装置の欠けパケットが含まれているか否かを確認する。端末装置31は、合成データに欠けパケットが含まれていれば(S205:YES)、合成データからパケットを復元し(S208)、欠けパケットを補完する(S209)。
【0063】
端末装置31は、他の端末装置32,33の再送信要求データによる合成データを受信できていなれば(S204:YES)、欠けパケットに対する再送信要求データを生成し、サーバ装置20に送信する(S206)。また、端末装置31は、他の端末装置32,33の再送信要求による合成データに自装置の欠けパケットが含まれていなければ(S205:NO)、欠けパケットに対する再送信要求データを生成し、サーバ装置20に送信する(S206)。
【0064】
端末装置31は、自装置の再送信要求データによる合成データを受信する(S207)。端末装置31は、受信した合成データからパケットを復元して(S208)、欠けパケットを補完する(S209)。
【0065】
端末装置31は、パケット列の全体を記憶すると、当該パケット列からアプリケーション用のファイルを復元する。
【0066】
以上の処理を行うことによって、端末装置の数の影響を受け難く、サーバ装置から複数の端末装置に対して、遅延を抑制しながら、略同時にファイルを送信することができる。
【0067】
なお、上述の説明では、パケットが連続して欠ける場合については記載していないが、次の方法を用いることによって、欠けパケットが連続しても、全てのパケットを補完することができる。図7は、本発明の第1の実施形態に係る端末装置の別の処理フローを示すフローチャートである。図8は、本発明の第1の実施形態に係るファイル送受信システムにおける別の合成データの生成方法、データ構成、およびパケットの復元方法を説明するためのデータ構成図である。
【0068】
この処理フローは、ステップS209の欠けパケットの補完までは、図6の処理フローと同じであるので、この部分の説明は省略する。
【0069】
端末装置は、ステップS209までの処理で欠けパケットの補完が完了していなければ(S210:NO)、その時点で記憶しているパケットと合成データから追加補完が可能であるか否かを判定する。端末装置は、追加補完が可能であれば(S211:YES)、欠けパケットを追加補完する(S212)。端末装置は、追加補完が可能でなければ(S211:NO)、欠けパケットの再送信要求を行う(S206)。
【0070】
具体的には、図8に示すように、連続する2つのパケットが欠けパケットである場合に、この処理を用いる。
【0071】
[状態1’−2]
最初のパケット列の送信において、端末装置31では、パケットPGが欠けパケットであり、端末装置32では、パケットPF,PGが欠けパケットである。
【0072】
[状態2]
端末装置31は、パケットPF,PGを含む合成データの再送信要求データをサーバ装置20に送信する。
【0073】
[状態3’−1]
サーバ装置20は、端末装置31の再送信要求に基づいて、パケットPG,PFを含む合成データPFGをマルチキャスト送信する。
【0074】
[状態3’−2]
端末装置31,32は、合成データPFGを受信して記憶する。端末装置31は、合成データPFGとパケットPFからパケットPGを復元して、パケットPGを補完する。
【0075】
[状態4]
端末装置32は、端末装置31と異なるパケットの組合せであるパケットPG,PHを含む合成データの再送信要求データをサーバ装置20に送信する。
【0076】
[状態5’−1]
サーバ装置20は、端末装置32の再送信要求に基づいて、パケットPG,PHを含む合成データPGHをマルチキャスト送信する。
【0077】
[状態5’−2]
端末装置32は、合成データPGHとパケットPHからパケットPGを復元して、パケットPGを補完する。
【0078】
[状態5’−3]
端末装置32は、記憶している合成データPFGと補完したパケットPGとからパケットPFを復元して、パケットPFを追加補完する。
【0079】
このように、上述の処理を行うことによって、複数の欠けパケットが連続していても、これら複数の欠けパケットを確実に補完することができる。
【0080】
なお、この処理では、各端末装置が他の端末装置の再送信要求データを認識することが好ましい。この場合、合成データのヘッダに、当該合成データに含まれるパケットを記載しておけばよい。または、各端末装置31,32,33は、サーバ装置20、端末装置31,32,33を対象とするマルチキャストで再送信要求データを送信すればよい。
【0081】
次に、本発明の第2の実施形態に係るファイル送受信システムについて、図を参照して説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係るファイル送受信システムの構成を示す機能ブロック図である。
【0082】
図9に示すように、本実施形態に係るファイル送受信システム10Aは、第1の実施形態に係るファイル送受信システム10に対して、アクセスポイント40が追加されたものである。また、サーバ装置20Aは、サーバ装置20に対して、アンテナ24を省略したものである。
【0083】
アクセスポイント40は、WAN−LAN変換部41、IF(インターフェース)42、アンテナ43を備える。
【0084】
WAN−LAN変換部41は、IF42、およびアンテナ43に接続されている。IF42は、サーバ装置20Aのデータ送信部21に接続されている。図9の例では、有線接続されている。
【0085】
WAN−LAN変換部41は、サーバ装置20から送られてくるパケット、合成データを無線LANの仕様に変換して、アンテナ43から送信する。WAN−LAN変換部41は、アンテナ43で受信した再送信要求データを、WAN側の仕様に変換して、IF42を介して、サーバ装置20Aに送信する。
【0086】
このような構成であっても、上述の第1の実施形態と同様に、端末装置の数の影響を受け難く、サーバ装置から複数の端末装置に対して、遅延を抑制しながら、略同時にファイルを送信することができる。
【0087】
なお、本実施形態の構成では、サーバ装置20Aに備えられたデータ変換部22、および、データ送信部21を、アクセスポイント40に備えることも可能である。すなわち、アクセスポイント40は、サーバ装置20からアプリケーション用のファイルを取得して、パケットに変換し、再送信要求データに基づいて合成データを送信することも可能である。
【0088】
また、上述の各実施形態では、端末装置からサーバ装置に再送信要求が行われた場合に、合成データを送信している。しかしながら、サーバ装置は、通信状態を監視し、アプリケーション用のファイルを変換したパケット列の間に、合成データを送信してもよい。例えば、サーバ装置は、パケット列を5個送信する毎に、これらのパケット列に対応する合成データを送ってもよい。
【0089】
また、上述の各実施形態では、端末装置の端末通信部が欠けデータを検出すると、合成データの再送信要求を行っている。しかしながら、端末装置の端末通信部は、アプリケーション実行部からのアプリケーション用のファイルの要求を受け付けた時に、アプリケーション用のファイルを変換したパケット列、または、欠けデータを含む合成データの送信要求を行ってもよい。
【0090】
また、上述の各実施形態では、再送信要求に、UDP等のエラー訂正機能の無いプロトコルを用いたが、TCP(Transmission Control Protocol)等のエラー訂正機能の付いたプロトコルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10,10A:ファイル送受信システム
20,20A:サーバ装置
21:データ送信部
22:データ変換部
23:データ記憶部
24:アンテナ
31,32,33:端末装置
40:アクセスポイント
41:WAN−LAN変換部
42:インターフェース(IF)
43:アンテナ
211:サーバ通信部
212:合成データ記憶部
311,321,331:端末通信部
312,322,332:データ復元部
313,323,333:アプリケーション実行部
314:送受信部
315:検出部
316:再送信要求部
317,327,337:アンテナ
PA,PB,PC,PD,PE,PF,PG,PH:パケット
PAB,PBC,PCD,PFG,PGH:合成データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9