(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592777
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】センサレスブラシレスモータの制御方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02P 23/14 20060101AFI20191010BHJP
H02P 25/03 20160101ALI20191010BHJP
【FI】
H02P23/14
H02P25/03
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-167440(P2015-167440)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-46469(P2017-46469A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】橘 優太
(72)【発明者】
【氏名】小出 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博之
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/080292(WO,A1)
【文献】
特開2005−168241(JP,A)
【文献】
特開2000−358390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/14
H02P 25/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極を有し回転可能なロータ、及び該ロータの駆動源となる磁界を発生させるための複数のコイルを含むステータを有するセンサレスブラシレスモータの制御方法であって、
前記ロータが回転しない大きさの電圧を前記コイルに印加したときの、前記コイルに流れる電流を検知する検知手段からの電流値と該コイルに電流を流してからの時間との関係性を利用して、前記コイルの仕様を判別すること、
判別された前記コイルの仕様に基づいて、前記ロータの回転を制御するためのパラメータを選定すること、
を特徴とし、
前記電流値と時間との関係性は、コイルに電流が流れ始めてから電流値が飽和するまでの間における電流値と時間との関係性であるセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項2】
前記コイルに電流を流した後の所定の時点で、前記検知手段からの電流値を読み取る読み取りステップと、
読み取りステップにおいて読み取られた電流値に基づいて前記コイルの仕様を判別する第1の判別ステップと、
を備えること、
を特徴とする請求項1に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項3】
第1の判別ステップにおいて、読み取りステップで読み取られた電流値と所定の電流に関する閾値とを比較することにより、前記コイルの仕様を判別すること、
を特徴とする請求項2に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項4】
電流を流す前記コイル及び該コイルに流す電流の方向を変えることで、複数の電流値を読み取り、これらの値を平均して第1の判別ステップを行うこと、
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項5】
前記検知手段からの電流値が所定の電流値になるまでの時間を計測する計測ステップと、
計測ステップにて計測された時間に基づいて前記コイルの仕様を判別する第2の判別ステップと、
を備えること、
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項6】
第2の判別ステップにおいて、計測ステップで計測された時間と所定の時間に関する閾値とを比較することにより、前記コイルの仕様を判別すること、
を特徴とする請求項5に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項7】
電流を流す前記コイル及び該コイルに流す電流の方向を変えることで、複数の時間を計測し、これらの値を平均して第2の判別ステップを行うこと、
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項8】
(旧請求項9)
フィードバック制御を用いて前記ロータの回転を制御し、
前記パラメータはフィードバックゲインであること、
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項9】
前記コイルに電流を流した後の所定の時点で、前記検知手段からの電流値を読み取る読み取りステップと、
読み取りステップにおいて読み取られた電流値に基づいて前記コイルの仕様を判別する第1の判別ステップと、
前記検知手段からの電流値が所定の電流値になるまでの時間を計測する計測ステップと、
計測ステップにて計測された時間に基づいて前記コイルの仕様を判別する第2の判別ステップと、
と備え、
第1の判別ステップによる前記コイルの仕様の判別結果と、第2の判別ステップによる前記コイルの仕様の判別結果とが異なる場合には、第1の判別ステップと第2の判別ステップを再度行うこと、
を特徴とする請求項1に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項10】
第1の判別ステップと第2の判別ステップを再度行った結果、それらの判別結果が異なった場合には、異常である旨の信号を出力すること、
を特徴とする請求項9に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項11】
強制転流前に前記ロータの磁極位置の推定をする初期磁極位置推定を行うこと、
を特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項12】
初期磁極位置推定における前記検知手段からの電流値を前記コイルの仕様の判別に用いること、
を特徴とする請求項11に記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のセンサレスブラシレスモータの制御方法により制御されるモータを備えたこと、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
電源投入時に、前記コイルの仕様の判別を行うこと、
を特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサレスブラシレスモータの制御方法及びこれにより制御されるモータを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられるモータには、高精度の制御が要求される。従って、その制御のためには、どのようなモータが画像形成装置に搭載されているか把握する必要がある。ここで、特許文献1に記載のような制御装置において、所定の電流を流した際の電圧値から、モータの種別(例えば、SPMSM,IPMSMといった同期モータの種別)を判別する方法が知られている。この方法を用いれば、画像形成装置に搭載されているモータの種別を把握できる。しかし、画像形成装置に用いられるモータに必要とされる高精度の制御を行うには、モータの種別よりもさらに詳細なモータの情報、具体的には、コイルの仕様を把握する必要がある。従って、従来の画像形成装置では、これに搭載されたモータのコイル仕様を判別するための専用の回路を設ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−168241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、モータのコイル仕様を判別するための専用の回路を設けることなく該コイルの仕様を判別することができるセンサレスブラシレスモータの制御方法及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態であるセンサレスブラシレスモータの制御方法は、
複数の磁極を有し回転可能なロータ、及び該ロータの駆動源となる磁界を発生させるための複数のコイルを含むステータを有するセンサレスブラシレスモータの制御方法であって、
前記コイルに流れる電流を検知する検知手段からの電流値と該コイルに電流を流してからの時間との関係性を利用して、前記コイルの仕様を判別すること、
を特徴とする。
【0006】
本発明の第2の形態である画像形成装置は、
前記センサレスブラシレスモータの制御方法により制御されるモータを備えたこと、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るセンサレスブラシレスモータの制御方法によれば、モータのコイル仕様を判別するための専用の回路を設けることなく該コイルの仕様を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施例に係る画像形成装置の内部構造を示す概略図である。
【
図2】一実施例に係る3相DCブラシレスモータの構成を示す概略図である。
【
図3】一実施例に係る3相DCブラシレスモータの制御に係る構成部品を示したブロック図である。
【
図4】コイルに流れる電流と時間との関係を示す図である。
【
図5】一実施例に係るセンサレスブラシレスモータの制御のフローチャートである。
【
図6】コイルに流れる電流と時間との関係及びコイル仕様の判別に係る閾値を示す図である。
【
図7】変形例に係るセンサレスブラシレスモータの制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(画像形成装置の概略構成、
図1参照)
以下、一実施例であるセンサレスブラシレスモータの制御方法により制御される3相DCブラシレスモータ100、及び該3相DCブラシレスモータ100を有する定着装置40を備える画像形成装置1について、添付図面を参照して説明する。各図においては、同じ部材、部分について共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1に示すカラー画像形成装置は、タンデム方式の電子写真プリンタであり、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色のトナー画像を形成するためのイメージングユニット10、中間転写ユニット20及び各部を制御する制御部50にて構成されている。
【0011】
イメージングユニット10は、それぞれ、感光体ドラム11を中心として帯電チャージャ12、現像装置14などを配置したユニットであり、レーザー走査光学ユニット16から照射される光によってそれぞれの感光体ドラム11上に描画される静電潜像を現像装置14で現像して各色のトナー画像を形成する。
【0012】
中間転写ユニット20は、矢印W方向に無端状に回転駆動される中間転写ベルト22を備えている。そして、中間転写ユニット20は、各感光体ドラム11と対向する1次転写ローラ24から付与される電界により、各感光体ドラム11上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト22上に1次転写して合成する。なお、このような電子写真法による画像形成プロセスは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0013】
装置本体の下部には、被転写材(以下、用紙と称する)を1枚ずつ給紙する自動給紙ユニット30が配置され、用紙は給紙ローラ32からタイミングローラ対34を経て、中間転写ベルト22と2次転写ローラ26とのニップ部に搬送され、2次転写ローラ26から付与される電界にてトナー画像(合成カラー画像)が2次転写される。その後、用紙は、3相DCブラシレスモータ100により駆動される定着ローラ45を含む定着ユニット40に搬送されてトナーの加熱定着を施され、装置本体の上面に配置されたトレイ部2に排出される。
【0014】
(3相DCブラシレスモータの構成
図2参照)
定着ユニット40に取り付けられた3相DCブラシレスモータ100では、
図2に示すように、ステータ110を中心に、その周囲を円筒状のロータ120が回転する。
【0015】
ステータ110は、U相のコイルU、V相のコイルV、W相のコイルWをそれぞれ4個、計12個のコイルを有している。また、これらのコイルは、ロータ120の回転軸方向から見たとき、コイルU、コイルV、コイルWの順に、又は、コイルU、コイルW、コイルVの順に、ロータ120の内周面に沿うように30°おきに略等間隔で配置されている。
【0016】
ロータ120は、10個の磁極から構成されている。また、これらの磁極は、ロータ120の回転軸方向から見たとき、N極/S極が交互に並ぶように略36°の間隔で配置されている。
【0017】
このように構成された10極12スロットの3相DCブラシレスモータ100の駆動は、ステータ110に設けられた各コイルから発生する磁界を順番に切り替え、ロータ120を回転させることで行われる。また、3相DCブラシレスモータ100は、その制御にPID制御が用いられている。さらに、3相DCブラシレスモータ100は、ロータの磁極の位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプのブラシレスモータであり、センサレスベクトル制御により制御される。
【0018】
(3相DCブラシレスモータの制御に係る構成部品
図3参照)
ロータ120の回転、つまり、3相DCブラシレスモータ100の回転は、制御部50により制御される。具体的には、制御部50が、ステータ110のコイルに流れる電流を切り替えることで、該ステータ110に設けられた各コイルから発生する磁界を順番に切り替える。これにより、ロータ120が回転する。以下に、制御部50における、3相DCブラシレスモータ100の回転の制御に係る構成部品について説明する。
【0019】
制御部50の3相DCブラシレスモータ100の回転の制御に係る構成部品は、
図3に示すように、大きく分けて、画像形成制御部60、モータ制御部70、及びスイッチング回路140の3つである。
【0020】
画像形成制御部60は、画像形成装置1に設けられたユーザー入力用のインターフェース、画像形成装置1と接続されたコンピュータ端末、及び画像形成装置1に設けられた各種のセンサ等から各種の情報を得る。これらの情報は、画像形成制御部60が有するメモリに記憶される。また、これらの情報を基に画像形成制御部60がイメージングユニット10に画像形成を命じる。さらに、画像形成制御部60は、モータ制御部70に対して、駆動命令や目標回転速度などの指示を出す。
【0021】
モータ制御部70は、画像形成制御部60から出された指示に従い、PWM制御による3相DCブラシレスモータ100への電力供給、回転方向、ブレーキの有無や励磁などを決定し、決定された回転方向等に合うように、3相DCブラシレスモータ100への通電パターンを選択する。
【0022】
スイッチング回路140は、ステータ110のコイルと電気的に接続された6個のFET(電界効果トランジスタ)から構成されている。これらのFETをモータ制御部70で決定された通電パターンに基づいてON−OFFさせる。これにより、ステータ110のコイルに流れる電流の向きが順番に変わり、各コイルにより発生する磁界も順番に切り替わる。その結果、ロータ120が回転する。なお、スイッチング回路140に接続されているU相のコイルU、V相のコイルV、W相のコイルWそれぞれの一端はスター結線され、他端がコネクタを介してスイッチング回路140と接続されている。
【0023】
ところで、スイッチング回路140とステータ110の各コイルとを結ぶ回路は分岐して、モータ制御部70と接続されている。この分岐してからモータ制御部70に至る部分を分岐部80と称す。これにより、モータ制御部70は、3相DCブラシレスモータ100の各コイルに流れる電流を監視することができる。以下で、モータ制御部70によるコイルに流れる電流の監視により行われる、ウォームアップ時のコイル仕様の判別について説明する。
【0024】
(ウォームアップ時のコイル仕様の判別
図4参照)
画像形成装置1では、電源投入直後において、ロータ120が回転しない程度で、ステータ110のいずれかのコイルに電圧を印加する。この印加時におけるコイルに流れる電流と時間との関係を利用して、モータ制御部70では、ステータ110に設けられたコイル仕様の判別している。
【0025】
具体的には、ステータ110のコイルに電圧を印加すると、
図4に示すように、印加直後は急激にコイルに流れる電流値が増加する。その後、一定の電流値に達して飽和する。
【0026】
ここで、印加直後にコイルに流れる電流の値の増加速度は、ステータ110に設けられたコイル仕様によって異なる。これを利用して、電圧印加後の時刻T1において電流値I1に達した場合には、コイルの仕様は仕様Aであり、時刻T1において電流値I1よりも小さい電流値I2であった場合には、コイルの仕様は仕様Bであると判別することができる。
【0027】
また、時刻ではなく、ある電流値I3を基準にして、電流値I3に達する時間が時間T2である場合には、コイルの仕様は仕様Aであり、電流値I3に達する時間が、時間T2よりも遅い時間T3である場合には、コイルの仕様は仕様Bであると判別することもできる。このように、印加時におけるコイルに流れる電流と時間との関係を利用することで、モータ制御部70がコイルの仕様を判別することができる。
【0028】
また、モータ制御部70で判別されたコイル仕様の情報は、画像形成制御部60に送信される。これを受けた画像形成制御部60は、判別されたコイルの仕様に最適なパラメータ、例えば、インダクタンス、抵抗、誘起電圧定数、極対数、さらに、3相DCブラシレスモータ100のPID制御に必要な、比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン等のフィードバックゲインをモータ制御部70に送信する。これにより、定着装置40に取り付けられた3相DCブラシレスモータ100が取り替えられた場合でも、モータ制御部70は取り替えられたモータに最適なパラメータを把握できるため、高い精度で該3相DCブラシレスモータ100を制御することができる。
【0029】
(コイル仕様の判別に係る制御
図5及び
図6参照)
上述のとおり、画像形成装置1では、電源投入直後のウォームアップ時において、コイル仕様の判別を行う。このコイル仕様の判別に係る制御フローについて、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0030】
コイル仕様の判別に係る制御のフローは、画像形成装置1の電源が投入されることにより始まる。
【0031】
本制御のステップS1では、制御部50が、ロータ120が回転しない程度で、ステータ110のいずれかのコイルに電圧を印加する。このとき、スイッチング回路140により通電パターンを切り換えて、電圧を印加するコイルや電流方向を変え、コイルに流れる電流と時間との関係を複数回調べる。
【0032】
ステップS2では、ステップS1で得られた電流と時間との関係から、画像形成装置1に取り付けられた3相DCブラシレスモータ100のコイル仕様を判別する。具体的には、
図6に示すように、コイルに電圧を印加した後、所定時刻T4におけるコイルの電流値がI4以上の場合には、コイルの仕様は仕様Aであり、電流値がI4未満I5以上の場合には、コイルの仕様は仕様Bであり、電流値がI5未満の場合には、コイルの仕様は仕様Cであると判別する。なお、時刻T4におけるコイルの電流値は、ステップS1で通電パターンを切り換えて複数回行った測定を平均した値を用いる。なお、本ステップS2で行ったコイル仕様の判別方法を
図5において、コイル仕様判別1と称す。
【0033】
ステップS3では、ステップS2と異なる方法で、画像形成装置1に取り付けられた3相DCブラシレスモータ100のコイル仕様を判別する。具体的には、電流値I6に達する時間が時間T5未満である場合には、コイルの仕様は仕様Aであり、時間T5以上時間T6未満の場合には、コイルの仕様は仕様Bであり、時間T6以上の場合には、コイルの仕様は仕様Cであると判別する。なお、本ステップの判別で用いるコイルの電流値が電流値I6に達する時間は、ステップS1で通電パターンを切り換えて複数回行った測定の平均値である。なお、本ステップS3で行ったコイル仕様の判別方法を
図5において、コイル仕様判別2と称す。
【0034】
ステップS4では、ステップS2で判別したコイルの仕様と、ステップS3で判別したコイルの仕様とを照合する。照合した結果、コイルの仕様が一致した場合には、本制御は、ステップS5に進み、異なった場合には、ステップS12に進む。
【0035】
ステップS5では、制御部50の画像形成制御部60が、判別したコイルの仕様に適したパラメータを、該制御部50が有するメモリに予め保存されたテーブルから選択する。
【0036】
ステップS6では、画像形成制御部60からモータ制御部70にステップS5で選定されたパラメータの情報が送信されると共に、3相DCブラシレスモータ100への駆動命令が送信される。
【0037】
ステップS7では、ロータ120の初期磁極位置を推定する。なお、ロータ120の初期磁極位置の推定は、ロータ120の磁極の位置によって、ステータ110に設けられたコイルにおける、印加直後の電流の値の増加速度の違いから推定することが可能である。
【0038】
ステップS8では、制御部50が、ロータ120を回転させるのに十分な電圧を印加し、強制的に3相DCブラシレスモータ100を回転駆動させる、いわゆる強制転流を行う。
【0039】
ステップS9では、制御部50が、3相DCブラシレスモータ100の回転数が、目標の回転数に達したか否かを判定する。目標の回転数に達した場合には本制御はステップS10に進み、目標の回転数に達していないと判定した場合には、本制御はステップS9で待機する。
【0040】
ステップS10では、制御部50が、定常の通電状態で3相DCブラシレスモータを回転させる(転流処理)。
【0041】
ステップS11では、制御部50が、プリントジョブが終了したか否かを判定する。プリントジョブが終了したと判定した場合には、本制御は終了し、プリントジョブが終了していない場合には、本制御はステップS11で待機する。
【0042】
ステップS12では、制御部50が、ロータ120が回転しない程度で、ステータ110のいずれかのコイルに電圧を再度印加する。
【0043】
ステップS13では、ステップS2と同様の方法、つまり、コイルに電流を流した後の所定の時点での電流値から、コイルの仕様を判別する。
【0044】
ステップS14では、ステップS3と同様の方法、つまり、コイルに電流を流した後、所定の電流値に達するまでの時間から、コイルの仕様を判別する。
【0045】
ステップS15では、ステップS13で判別したコイルの仕様と、ステップS14で判別したコイルの仕様とを照合する。照合した結果、コイルの仕様が一致した場合には、本制御は、ステップS5に進み、異なった場合には、ステップS16に進む。
【0046】
ステップS16では、モータ制御部70が異常信号を画像形成制御部60に送信する。これを受けた画像形成制御部60は、画像形成装置1に設けられたユーザー入力用のインターフェースなどを通して、モータに異常がある旨通知する。
【0047】
(効果)
一実施例であるセンサレスブラシレスモータの制御方法により制御される3相DCブラシレスモータ100、及び該3相DCブラシレスモータ100を有する定着装置40を備える画像形成装置1では、3相DCブラシレスモータ100を回転させない程度に電圧を印加して、コイルに流れる電流と時間との関係からコイルの仕様を判別している。そして、コイルに流れる電流を監視する機構は、センサレスの3相DCブラシレスモータには元々備わっているものである。従って、画像形成装置1では、モータのコイル仕様を判別するための専用の回路を設けることなく該コイルの仕様を判別することができる。
【0048】
また、画像形成装置1では、電圧を印加するコイルや電流方向を変えるとともに、コイルに電流を流した後の所定の時点での電流値、及び、コイルに電流を流した後、所定の電流値に達するまでの時間から、コイルに流れる電流と時間との関係を複数回調べている。これにより、コイルに流れる電流と時間との関係を1回の結果のみをもって判別するよりも、より正確にコイルの仕様を判別することができる。
【0049】
さらに、コイルの仕様を判別できることで、画像形成装置1では、制御部50の画像形成制御部60が、判別したコイルの仕様に適したパラメータを、該制御部50が有するメモリに予め保存されたテーブルから選択することができる。結果として、画像形成装置1では、該画像形成装置1に搭載された3相DCブラシレスモータ100を正確に制御することができる。
【0050】
ところで、画像形成装置1では、3相DCブラシレスモータ100を回転させない程度に電圧を印加して、コイルに流れる電流と時間との関係からコイルの仕様を判別している。つまり、コイルの仕様を判別するために、3相DCブラシレスモータ100を回転させていない。これにより、3相DCブラシレスモータ100が、不意に逆回転等してしまうことを防止できる。
【0051】
(変形例
図7参照)
変形例に係るセンサレスブラシレスモータの制御方法と一実施例であるセンサレスブラシレスモータの制御方法との主たる相違点は、ロータ120の初期磁極位置の推定を行うタイミングである。
【0052】
変形例に係るコイル仕様の判別に係る制御のフローでは、
図7に示すように、ステップS1にて初期磁極位置の推定を行う。そして、このステップS1にて得られた電流値や、電圧を印加してからの時間を示す値を利用して、ステップS2,ステップS3にてコイル仕様の判別を行う。これにより、変形例に係るコイル仕様の判別に係る制御のフローでは、コイル仕様の判別とは別に初期磁極位置の推定を行う必要がない。従って、制御フローをより簡略化することができる。
【0053】
(他の実施例)
本発明に係るセンサレスブラシレスモータの制御方法及び画像形成装置は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、本発明に係るセンサレスブラシレスモータの制御方法により制御される3相DCブラシレスモータを、感光体ドラムや中間転写ベルトに用いてもよい。また、コイル仕様の判別に係る制御のフローのステップS4においてコイルの仕様が一致しなかった後に、1回だけでなく、複数回コイルの仕様判別を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明は、センサレスブラシレスモータの制御方法及び画像形成装置に有用であり、特に、モータのコイル仕様を判別するための専用の回路を設けることなく該コイルの仕様を判別することができる点で優れている。
【符号の説明】
【0055】
U,V,W コイル
1 画像形成装置
80 分岐部(検知手段)
100 3相DCブラシレスモータ(センサレスブラシレスモータ)
110 ステータ
120 ロータ