特許第6592802号(P6592802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人富山大学の特許一覧

特許6592802スルホニルを有するフィトスフィンゴシン誘導体
<>
  • 特許6592802-スルホニルを有するフィトスフィンゴシン誘導体 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592802
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】スルホニルを有するフィトスフィンゴシン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 311/17 20060101AFI20191010BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20191010BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C07C311/17CSP
   A61K31/255
   A61P17/02
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-557797(P2016-557797)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2015081173
(87)【国際公開番号】WO2016072452
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-225684(P2014-225684)
(32)【優先日】2014年11月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嗣修
(72)【発明者】
【氏名】南部 寿則
(72)【発明者】
【氏名】藤原 朋也
(72)【発明者】
【氏名】金田 英亨
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/099999(WO,A1)
【文献】 特開2008−261754(JP,A)
【文献】 Anna Alcaide et al,Aziridine Ring Opening for the Synthesis of Sphingolipid Analogues: Inhibitors of Sphingolipid-Metab,The Journal of Organic Chemistry,2014年 3月 5日,Vol.79,PP.2993-3029
【文献】 Jaeyoung Ko et al.,d-Glucosamine-Derived Synthons for Assembly of l-threo-Sphingoid Bases. Total Synthesis of Rhizochal,The Journal of Organic Chemistry,2012年12月10日,Vol.78,PP.498-505
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]
【化1】
「式中、Rは、水素原子またはアルキル基を;Rはアルキル基を、RおよびRは、同一または異なって水素原子またはアシル基を、Rは、アルキル基を、それぞれ意味する。」
で表されるフィトスフィンゴシン誘導体。
【請求項2】
前記Rがアルキル基である請求項1に記載のフィトスフィンゴシン誘導体。
【請求項3】
前記Rが炭素数7〜15直鎖状のアルキル基である請求項1または2に記載のフィトスフィンゴシン誘導体。
【請求項4】
下記一般式[1]
【化2】
「式中、Rは、水素原子またはアルキル基を;Rはアルキル基を、RおよびRは、同一または異なって水素原子またはアシル基を、Rは、アルキル基を、それぞれ意味する。」
で表されるフィトスフィンゴシン誘導体を有効成分とするアトピー性皮膚炎の治療剤。
【請求項5】
前記フィトスフィンゴシン誘導体のRがアルキル基である請求項4に記載のアトピー性皮膚炎の治療剤。
【請求項6】
前記フィトスフィンゴシン誘導体のRが炭素数7〜15直鎖状のアルキル基である請求項4または5に記載のアトピー性皮膚炎の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフィトスフィンゴシン誘導体、特にスルホニルを有するフィトスフィンゴシン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥や激しい痒みを伴う慢性の掻痒性皮膚疾患であり、寛解と増悪を繰り返す。
健常者の皮膚では、皮膚の表面の角質層に十分な量の保湿成分や脂質(スフィンンゴ脂質など)があり、皮膚のバリア機能が整っている。
しかし、アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、保湿成分やスフィンンゴ脂質、特にセラミドが減少する脂質代謝異常が生じており、皮膚が乾燥し、バリア機能の低下が起こっている。
そのため、アレルギーの原因となる異物(アレルゲン)や微生物が侵入しやすく、また、表皮最外層の角質直下付近まで末梢神経が伸展し、少しの刺激で痒みが発生し、患部を掻いてしまう。
掻くことによりさらにバリア機能が破壊され、炎症を起こし、さらに痒みが激しくなるという悪循環に陥る。
【0003】
アトピー性皮膚炎の治療はこれまで炎症の抑制を主体としたものであり、ステロイドや免疫抑制薬が用いられてきた。
このような薬物は炎症を抑えることはできるが、バリア機能の低下を改善できないため、炎症が治まった後もその状態を維持することが難しく、炎症が再発することが多い。
【0004】
アトピー性皮膚炎マウスモデル皮膚では健常マウスと比べてセラミドが減少するとともにスフィンゴシルホスホリルコリンが増加していること、更にこの物質が内因性痒み因子の一つであることが知られている(非特許文献1)。
健常状態ではスフィンゴミエリンから、それぞれスフィンゴミエリナーゼの働きによりセラミドが産生される。
しかし、アトピー性皮膚炎患者では、スフィンゴミエリンデアシラーゼが発現・活性化し、スフィンゴミエリンをセラミドではなく、アミド部を脱アシル化してスフィンゴシルホスホリルコリンへと代謝する。このことが、皮膚でのセラミドの減少につながっている(非特許文献2)。
【0005】
【非特許文献1】Experimental Dermatology,20, 894-898(2011)
【非特許文献2】J. Invest. Dermatol., 115(3), 406-413(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚のバリア機能が低下する原因の一つである皮膚表層のスフィンゴ脂質セラミドの量低下をもたらす脂質代謝酵素デアシラーゼの働きを抑えて、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えると共に再発を防止する新しいタイプの治療薬の開発を目指したものである。
一方、ヒトのスフィンゴミエリンデアシラーゼは、単離・構造決定が行なわれておらず、その阻害薬をアトピー性皮膚炎治療薬に用いる試みはこれまでなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、デアシラーゼの阻害が痒みの抑制に加え、セラミド産生を増加させる可能性があると考え、デアシラーゼの遷移状態モデルを考察し、そのモデル化合物の合成を行なった。
デアシラーゼによるスフィンゴミエリンおよびグルコシルセラミドのアミド結合の加水分解における遷移状態がアミド結合に水が付加した水和体であると仮定した。
このものは基質のアミドとは異なり、アミド炭素が平面構造から四面体構造へと変化している。
それゆえ、窒素原子の隣に四面体構造をもつ構造がこの遷移状態モデルとなりうると考えた。
また、皮膚への外用薬への適応を考慮し、スフィンゴシンの1位ヒドロキシ基はスフィンゴミエリンに見られる水溶性のリン酸エステルではなく、脂溶性が高い置換基を検討した。
その結果、アトピー性皮膚炎の治療剤となるスルホニルを有するフィトスフィンゴシン誘導体を見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明において、特に断らない限り、アルキル基とは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘプチルなどの炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキル基およびヘプチル、オクチル、デカチル、トリデカチルペンタデカチルなど炭素数7〜15の直鎖状アルキルを;アシル基とは、アセチル、プロピオニル、イソブチリルなど直鎖状または分岐状のC2-6アルキル−CO−基を、それぞれ意味する。
【0009】
本発明の第一の発明は、以下の一般式[1]で表されるフィトスフィンゴシン誘導体である。
【化1】
「式中、Rは、水素原子またはアルキル基を;Rはアルキル基を、RおよびRは、同一または異なって水素原子またはアシル基を、Rは、アルキル基を、それぞれ意味する。」
【0010】
より好ましい化合物は、以下の一般式[1a]のフィトスフィンゴシン誘導体である。
【化2】
「式中、R1aは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキル基、R5aは、炭素数7〜15直鎖状のアルキル基を、それぞれ意味する。」
【0011】
一般式[1]および[1a]の化合物において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらの異性体を包含し、また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を包含するものである。
【0012】
本発明の第2の発明は、上記の一般式[1]または一般式[1a]のフィトスフィンゴシン誘導体を有効成分とするアトピー性皮膚炎の治療剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィトスフィンゴシン誘導体は、スフィンゴミエリンの脱アシル化を起こすことが知られている酵素(SCDase)に対して阻害作用を有することから、スフィンゴミエリンデアシラーゼの阻害活性を発揮することが推測される。
また、本発明のフィトスフィンゴシン誘導体は、アトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて、掻き行動を有意に抑制することから、アトピー性皮膚炎の治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】アトピー性皮膚炎モデルマウスでの塗布試験の結果を示す図である。図中、●は、被試験化合物を、○は、対照を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般式[1]のフィトスフィンゴシン誘導体は、公知の方法を組合せることにより製造できるが、例えば、以下の方法により製造することができる。
【化3】
【0016】
「式中、R〜Rは、上記したと同様の意味を有する。」
【0017】
(1)一般式[2]の化合物に一般式[3」の化合物を反応させることにより、一般式[4]の化合物を製造することができる。
この反応は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、テトラヒドロフランなどエーテル系溶媒中で行えばよい。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃〜60℃、好ましくは室温である。
【0018】
(2)一般式[4]の化合物に一般式[5」の化合物を反応させることにより、一般式[1]の化合物を製造することができる。
この反応は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、テトラヒドロフランなどエーテル系溶媒中で行えばよい。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃〜60℃、好ましくは室温である。
【0019】
上で述べた製造法における一般式[4]の化合物において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体、互変異性体など)が存在する場合、これらの異性体を使用することができ、また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を使用することができる。
また、反応終了後、反応目的物は単離せずに、そのままつぎの反応に用いてもよい。
【0020】
一般式[1]のフィトスフィンゴシン誘導体は、賦形剤、補助剤、添加剤などと組み合わせ、各種の製剤、例えば、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、エキス剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、ミスト剤、エアゾール剤、フォーム剤、エアゾール剤とすることができる。
【0021】
一般式[1]のフィトスフィンゴシン誘導体を有効成分とするアトピー性皮膚炎の治療剤は、外用剤に用いられる剤型(液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、エアゾール剤など)として使用することが好ましい。
また、それらは常法により製造することができる。
【0022】
また、外用剤には必要に応じ水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤、その他、所望する剤型を得るための通常使用される基剤成分などを配合でき、必要に応じて血管拡張剤、副腎皮質ホルモン、角質溶解剤、保湿剤、殺菌剤、抗酸化剤、清涼化剤、香料、色素などを本発明の効果が損なわれない範囲で配合することができる。
以下、製造例および試験例で本発明をさらに具体的を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
製造例1
<N-トシル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化4】
【0024】
(1)トシルクロリド(1.45g, 7.61mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)溶液をフィトスフィンゴシン(2.3g, 7.24mmol)とトリエチルアミン(1.2mL, 8.69mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)懸濁液に室温で加えた。
2時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(50mL)で希釈し、5%塩酸で2回洗浄後、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣を再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)し、N-トシルフィトスフィンゴシン(2.95g, 86%)を得た。
【0025】
融点:120.0〜121.0℃
1H-NMR (400MHz,CD3OD)δ: 7.75 (2H,d,J=8.2Hz), 7.36(2H,d,J=8.2Hz),
3.57-3.55(2H,m), 3.48-3.39(3H,m), 2.42(3H,s), 1.37-1.21(26H,m),
0.89(3H,t,J=6.4Hz)
13C-NMR (100MHz,CD3OD) δ:144.5, 140.1, 130.7, 128.1, 76.8, 73.2, 61.8, 57.0,
33.7, 33.1, 30.9, 30.8, 30.5, 26.7, 23.7, 21.5, 14.4.
【0026】
(2)1-オクタンスルホニルクロリド(734mg, 7.61mmol)のテトラヒドロフラン(6.3mL)溶液をN-トシルフィトスフィンゴシン(1.55g, 3.29mmol)とトリエチルアミン(0.55mL, 3.94mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に室温で加えた。
2時間撹拌後,反応液を酢酸エチル(30mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、さらに再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)し、N-トシル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物1)を714mg(34%)得た。
【0027】
融点:106〜106.5℃
1H-NMR (400MHz,CDCl3)δ: 7.77(2H,d,J=8.2Hz), 7.31(2H,d,J=8.3Hz),
4.40(1H,dd,J= 4.1,10.5Hz), 4.24(1H,dd,J=2.7,11.0Hz), 3.65-3.61(3H,m),
2.98(2H,t,J=7.3Hz), 2.43(3H,s), 1.78(2H,t J=7.8Hz), 1.30-1.18(36H,m),
0.90-0.86(3H,m)
13C-NMR (100MHz,CDCl3)δ: 143.8, 137.3, 129.8, 127.2, 73.7, 72.4, 68.2, 54.4,
50.2, 32.0, 31.9, 31.7, 29.7, 29.4, 28.9, 28.1, 25.6, 23.2, 22.7, 22.6, 21.5,
14.1, 14.0.
【0028】
製造例2
<N-トシル-1-エタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化5】
【0029】
1-エタンスルホニルクロリド(243mg, 1.89mmol)のテトラヒドロフラン(4.4mL)溶液をN-トシル-フィトスフィンゴシン(0.85g, 1.80mmol)とトリエチルアミン(0.30mL, 2.16mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に室温で加えた。
4時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(15mL)で希釈し、5%塩酸で2回洗浄後、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣を再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)し、N-トシル-1-エタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物2)を0.82g(81%)得た。
【0030】
融点:85.5〜86.0℃
1H-NMR (400MHz,CDCl3) δ: 7.77(2H,d,J=8.7Hz), 7.34(2H,d,J=8.2Hz),
5.49(1H,d,J=7.8Hz), 4.41(1H,dd,J=4.6,11.0Hz), 4.26(1H,dd,J=2.7,10.5Hz),
3.66-3.59(3H,m), 3.06(2H,dd,J=7.3,14.7Hz), 2.43(3H,s),
1.34(3H,dd,J=7.3,7.8Hz), 1.32-1.11(26H,m), 0.88(3H,dd,J=6.4,6.9Hz)
13C-NMR (100MHz,CDCl3)δ: 144.0, 137.0, 129.7, 127.1, 85.5, 74.2, 69.7, 54.9,
33.4, 31.9, 29.6, 25.6, 22.7, 21.6, 14.1.
【0031】
製造例3
<N-トシル-1-オクタンスルホニル-3,4-ジアセチルフィトスフィンゴシン>
【化6】
【0032】
無水酢酸(0.073mL, 0.77mmol)をN-トシル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン(100mg, 0.154mmol)のピリジン(0.62mL)溶液に室温で加えた。
6時間撹拌後、ピリジンを減圧留去した後,酢酸エチル(10mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-トシル-1-オクタンスルホニル-3,4-ジアセチルフィトスフィンゴシン(化合物3)を60mg(53%)得た。
【0033】
1H-NMR (400MHz,CDCl3)δ:7.77(2H,d,J=8.2Hz), 7.34(2H,d,J=8.2Hz),
5.44(1H,d,J=9.2Hz), 4.97(1H,dd,J=3.2,7.3Hz), 4.89(1H,dt,J=3.2,9.6Hz),
4.14(2H,d,J=3.7Hz), 3.74(1H,m), 3.04(2H,t,J=7.8Hz), 2.43(3H,s), 2.06(3H,s),
2.03(3H,s),1.80(2H,t,J=7.8Hz), 1.29-1.18(36H,m), 0.90-0.86(6H,m)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 170.8, 169.9, 143.9, 137.4, 129.9, 127.2, 72.5, 72.0,
66.3, 52.1, 50.5, 31.9, 29.7, 28.9, 28.1, 25.3, 23.1, 22.6, 14.0
【0034】
製造例4
<N-トシル-1-オクタンスルホニル-4-アセチルフィトスフィンゴシン>
【化7】
【0035】
(1)N-トシルフィトスフィンゴシン(500mg, 1.06mmol)をビス(トリフルオロメタンスルホン酸)ジ-tert-ブチルシリル(560mg, 1.27mmol)のDMF(8.5mL)溶液に0℃で加えた。
0℃で10分間,室温で15分間撹拌後、トリエチルアミン(0.44mL, 3.18mmol)を加えて10分間撹拌した。
反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加え,酢酸エチル(30mL×2)で抽出した。
有機層を水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(25% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、シリレン保護体を592mg(91%)得た。
【0036】
(2)無水酢酸(28mg, 0.30mmol)のピリジン(0.1mL)溶液をシリレン保護体(30mg, 0.05mmol)のピリジン(0.1mL)溶液に室温で加えた。
24時間撹拌後、塩化メチレン(10mL)で希釈し、5%クエン酸水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、アセチル化体を18mg(56%)得た。
【0037】
(3)フッ化水素・ピリジン(4.7mg, 0.17mmol)をアセチル化体(73mg, 0.11mmol)のテトラヒドロフラン(1.1mL)溶液に0℃で加えた。
室温で20分間撹拌後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL)を加え、酢酸エチル(10mL×2)で抽出した。
有機層を水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ジオール体を48mg(84%)得た。
【0038】
(4)1-オクタンスルホニルクロリド(14mg, 0.067mmol)のテトラヒドロフラン(0.2mL)溶液をジオール体(33mg, 0.064mmol)とトリエチルアミン(0.01mL, 0.077mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液に室温で加えた。
20分間撹拌後,反応液を酢酸エチル(10mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(35% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-トシル-1-オクタンスルホニル-4-アセチルフィトスフィンゴシン(化合物4)を36mg(82%)得た。
【0039】
融点:44.5〜46.0℃
1H-NMR (400MHz,CDCl3)δ:7.78(d,J=8.2Hz,2H), 7.32(d,J=8.2Hz,2H),
5.79(d,J=9.2Hz,1H), 4.79(d,J=10.1Hz,1H), 4.44(dd,J =10.1, 6.4 Hz,1H),
4.21(dd,J=10.5,2.7Hz,1H), 3.82(m,1H), 3.46(m,1H), 3.05(dd,J=16.0,7.8Hz,2H),
2.95(d,J=5.5Hz,1H), 2.43(s,3H), 2.10(s,3H), 1.828-1.750(m,2H), 1.40(brs,36H),
0.88(dd,J=13.2,6.4Hz,6H)
IR(KBr,cm-1)ν3485,3397,3303,2919,2850,1629,1469,1336,1159,1057
【0040】
製造例5
<N-トシル-1-ペンタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化8】
【0041】
(1)1-ペンタンスルホン酸ナトリウムを10%塩酸水溶液で1-ペンタンスルホン酸とし、1-ペンタンスルホン酸(181mg,1.2mmol)のジメチルホルムアミド/ヘキサン(1:7,0.46mL)に塩化チオニル(0.15mL,2.0mmol)を滴下し、70℃で1時間撹拌した後、2時間加熱還流した。
室温に戻してからヘキサン層を分離し、5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水層をヘキサンで抽出した。
溶媒を減圧留去することで1-ペンタンスルホニルクロリド(87mg,42%)を得た。
【0042】
(2)1-ペンタンスルホニルクロリド(20mg,0.12mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液をN-トシル-フィトスフィンゴシン(50mg,0.11mmol)とトリエチルアミン(0.018mL,0.13mmol)のテトラヒドロフラン(0.58mL)溶液に室温で加えた。
1.5時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-トシル-1-ペンタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物5)を41mg(61%)得た。
【0043】
融点:77.5〜78.5℃
1H-NMR (400 MHz,CDCl3)δ: 7.78(2H,d,J=8.0Hz), 7.32(2H,d,J=8.0Hz),5.47(1H,brs),
4.41(1H,dd,J=10.4,4.0Hz), 4.23(1H,dd,J=10.4,2.4Hz), 3.68-3.50(3H,m),
3.01(2H,t,J=8.0Hz), 2.77(1H,brs), 2.43(3H,s), 2.01(1H,brs),
1.78(2H,tt,J=8.0,7.6Hz), 1.42-1.30(4H,m), 1.32-1.21(26H,m),
0.89(6H,tt,J=7.6,7.0Hz)
13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ: 143.7, 137.3, 129.8, 127.2, 73.6, 72.4, 68.2, 50.1, 31.9, 30.18, 30.17, 29.69, 29.68, 29.67, 29.64, 29.62, 29.5, 29.4, 29.3, 25.7, 25.6, 22.9, 22.7, 22.0, 21.5, 14.1, 13.7
IR (KBr,cm-1)ν3506,3407,3357,1470,1438,1351,1164
【0044】
製造例6
<N-トシル-1-ヘプタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化9】
【0045】
(1)1-ヘプタンスルホン酸ナトリウムを10%塩酸水溶液で1-ヘプタンスルホン酸とし、1-ヘプタンスルホン酸(260mg, 1.4mmol)のジメチルホルムアミド/ヘキサン(1:7,0.55mL)に塩化チオニル(0.18mL,2.5mmol)を滴下し、70℃で1時間撹拌した後、2時間加熱還流した。
室温に戻してからヘキサン層を分離し、5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水層をヘキサンで抽出した。
溶媒を減圧留去することで1-ヘプタンスルホニルクロリド(241mg,84%)を得た。
【0046】
(2)1-ヘプタンスルホニルクロリド(24mg, 0.12mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液をN-トシル-フィトスフィンゴシン(50mg,0.11mmol)とトリエチルアミン(0.018mL,0.13mmol)のテトラヒドロフラン(0.58mL)溶液に室温で加えた。
1時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-トシル-1-ヘプタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物6)を52mg(74%)得た。
【0047】
融点:98.5〜99.5℃
1H-NMR (400 MHz,CDCl3)δ: 7.78(2H,d,J=8.2Hz), 7.33(2H,d,J=8.2Hz),
5.32(1H,d,J=8.2Hz), 4.41(1H,dd,J=11.0,4.6Hz), 4.22(1H,dd,J=11.0,3.2Hz),
3.68-3.56(3H,m), 3.01(2H,t,J=7.8Hz), 2.60(1H,d,J=6.0Hz), 2.44(3H,s),
1.86(1H,d,J=5.5Hz), 1.77(2H,tt,J=7.8,7.4Hz), 1.42-1.35(4H,m),
1.31-1.24(30H,m), 0.89(6H,dt,J=6.9,5.1Hz)
13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ: 143.8, 137.2, 129.8, 127.2, 73.6, 72.4, 68.2, 54.4, 50.2, 32.09, 32.08, 31.9, 31.43, 31.42, 29.70, 29.67, 29.66, 29.65, 29.36, 29.35, 28.11, 28.08, 25.62, 25.61, 23.2, 22.7, 22.5, 21.6, 14.1, 14.0
IR (KBr,cm-1)ν3460,3357,3265,1460,1441,1335,1324,1169
【0048】
製造例7
<N-トシル-1-ノナンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化10】
【0049】
(1)1-ノナンスルホン酸ナトリウムを10%塩酸水溶液で1-ノナンスルホン酸とし、1-ノナンスルホン酸(271mg,1.3mmol)のジメチルホルムアミド/ヘキサン(1:7,0.5mL)に塩化チオニル(0.16mL,2.52mmol)を滴下し、70℃で1時間撹拌した後、2時間加熱還流した。
室温に戻してからヘキサン層を分離し、5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水層をヘキサンで抽出した。
溶媒を減圧留去することで1-ノナンスルホニルクロリド(267mg,91%)を得た。
【0050】
(2)1-ノナンスルホニルクロリド(27mg,0.12mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液をN-トシル-フィトスフィンゴシン(50mg,0.11mmol)とトリエチルアミン(0.018mL,0.13mmol)のテトラヒドロフラン(0.58mL)溶液に室温で加えた。
2時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、さらに再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)をし、N-トシル-1-ノナンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物7)を41mg(56%)得た。
【0051】
融点:102.0〜103.0℃
1H-NMR (400 MHz,CDCl3)δ: 7.78(2H,d,J=8.2Hz), 7.32(2H,d,J=8.2Hz), 5.45(1H,brs), 4.40(1H,dd,J=11.0,4.1Hz), 4.22(1H,dd,J=11.0,3.2Hz), 3.66-3.59(3H,m),
3.01(2H,t,J=7.8Hz), 2.43(3H,s), 2.05 (2H,brs), 1.78(2H,tt,J=8.2,7.8Hz),
1.43-1.35(4H,m), 1.30-1.22(34H,m), 0.88(6H,dt,J=6.9,1.4Hz)
13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ: 143.8, 137.2, 129.8, 127.2, 73.6, 72.4, 68.1, 54.4, 50.2, 32.1, 31.8, 29.69, 29.68, 29.66, 29.65, 29.63, 29.4, 29.23, 29.16, 29.14, 29.0, 28.1, 25.6, 23.2, 22.7, 22.6, 21.5, 14.10, 14.07
IR (KBr,cm-1)ν3547,3465,3354,2918,2849,1470,1453,1440,1352,1164
【0052】
製造例8
<N-p-プロピルベンゼンスルホニル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化11】
【0053】
(1)p-プロピルベンゼンスルホニルクロリド(1.07mg,0.49mmol)のテトラヒドロフラン(1.8mL)溶液をフィトスフィンゴシン(150mg,0.47mmol)とトリエチルアミン(0.08mL,0.57mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)懸濁液に室温で加えた。
2時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(10mL)で希釈し、5%塩酸で2回洗浄後、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣を再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)し、N-p-プロピルベンゼンスルホニルフィトスフィンゴシン(129mg,55%)を得た。
【0054】
(2)1-オクタンスルホニルクロリド(23mg, 0.11mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液をN-p-プロピルベンゼンスルホニルフィトスフィンゴシン(50mg, 0.10mmol)とトリエチルアミン(0.017mL, 0.12mmol)のテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液に室温で加えた。
5時間撹拌後,反応液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-p-プロピルベンゼンスルホニル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物8)を46mg(68%)得た。
【0055】
融点:79.5〜81.5℃
1H-NMR (400 MHz,CDCl3)δ: 7.80(2H,d,J=8.4Hz), 7.32(2H,d,J=8.4Hz),
5,49(1H,t,J=8.4Hz), 4.40(1H,dd,J=11.0,4.8Hz), 4.22(1H,dd,J=11.0,3.2Hz),
3.67-3.57(3H,m), 3.01(2H,t,J=7.8Hz), 2.77(1H,d,J=6.8Hz), 2.66(2H,t,J=7.6Hz),
2.01(1H,d,J=5.6Hz), 1.78(2H,tt,J=8.4,7.8Hz), 1.66(2H,qt,J=7.8,7.6Hz),
1.40-1.37(4H,m), 1.35-1.21 (32H,m), 0.95(3H,t,J=7.6Hz),
0.88(3H,dt,J=6.8,2.0Hz)
13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ: 148.4, 137.4, 129.2, 127.2, 73.7, 72.4, 68.2, 54.4, 50.2, 37.9, 32.10, 32.09, 32.08, 31.9, 31.7, 29.71, 29.69, 29.68, 29.66, 29.4, 28.9, 28.1, 25.6, 24.1, 23.2, 22.7, 22.6, 14.1, 14.0, 13.7
IR (KBr,cm-1)ν3515,3326,3192,1469,1343,1162,1148
【0056】
製造例9
<N-p-ペンチルベンゼンスルホニル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン>
【化12】
【0057】
(1)p-ペンチルベンゼンスルホニルクロリド(1.21mg, 0.49mmol)のテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液をフィトスフィンゴシン(150mg, 0.47mmol)とトリエチルアミン(0.08mL, 0.57mmol)のテトラヒドロフラン(3mL)懸濁液に室温で加えた。
1.5時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(10mL)で希釈し、5%塩酸で2回洗浄後、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣を再結晶(溶媒:酢酸エチル・ヘキサン)し、N-p-ペンチルベンゼンスルホニルフィトスフィンゴシン(158mg, 63%)を得た。
【0058】
(2)1-オクタンスルホニルクロリド(22mg, 0.105mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液をN-p-ペンチルベンゼンスルホニルフィトスフィンゴシン(50mg, 0.095mmol)とトリエチルアミン(0.016mL, 0.114mmol)のテトラヒドロフラン(0.46mL)溶液に室温で加えた。
3時間撹拌後,反応液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(35% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、N-p-ペンチルベンゼンスルホニル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物9)を43mg(64%)得た。
【0059】
融点:88.5〜89.5℃
1H-NMR (400 MHz,CDCl3)δ: 7.79(2H,d,J=8.4Hz), 7.32(2H,d,J=8.4Hz),
5.37(1H,d,J=8.8Hz), 4.41(1H,dd,J=10.8,4.8Hz), 4.22(1H,dd,J=10.8,3.2Hz),
3.64-3.55(3H,m), 3.01(2H,t,J=7.8Hz), 2.67(2H,t,J=8.0Hz), 2.64(1H,d,J=7.2Hz),
1.90(1H,d,J=5.6Hz), 1.78(2H,tt,J=8.0,7.6Hz), 1.63(2H,tt,J=7.6,7.8Hz),
1.34-1.31(4H,m), 1.29-1.22(38H,m), 1.21-0.86(9H,m)
13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ: 148.7, 137.3, 129.2, 127.2, 73.7, 72.4, 68.1, 54.4, 50.2, 35.8, 32.16, 32.15, 31.9, 31.7, 31.41, 31.40, 30.7, 29.70, 29.68, 29.67, 29.66, 29.65, 29.4, 28.95, 28.94, 28.1, 25.60, 25.59, 23.2, 22.7, 22.6, 22.4, 14.1, 14.04, 13.95
IR (KBr,cm-1)ν3515, 3323, 3190, 1469, 1343, 1162, 1151
【0060】
試験例1
スフィンゴミエリンの脱アシル化を起こすことが知られている酵素(SCDase)を用い、SCDaseのスフィンゴミエリン脱アシル化の阻害活性で評価した。
被試験化合物[10mg/mL(エタノール:アセトン=1:1(v/v))]の0.05μmol、0.10μmol、 0.15μmol相当量をプラスチックチューブに採り、水分を飛ばした後、0.8%TritonX-100を含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH=6.0)を9.5μLとSCDaseの原液0.5μL加え、37℃で30分間反応させた。
前もってスフィンゴミエリン[10mg/mL(クロロホルム:メタノール=1:1(v/v))] 4μLをプラスチックチューブに採り、水分を飛ばした後に反応混合物を加え、37℃で60分間反応させた。
その後、エバポレーターで水分を蒸発させて乾燥させた。
乾燥後、メタノールを20μLおよびクロロホルム20μLを加え、遠心分離 [4℃,10000rpm, 5分間]し、上澄みを20μL採り、再びエバポレーターで水分を飛ばした。
6μLの抽出液 [クロロホルム:メタノール=2:1(v/v)]に溶かし、TLCアルミニウムシートシリカゲル60(メルク社)に0.5μLで6回スポットした。
なお標準品として、スフィンゴミエリン[10mg/mL(クロロホルム:メタノール=1:1(v/v))]とスフィンゴシルホスホシルコリン[10mg/mL(クロロホルム:メタノール=1:1(v/v))]を同じアルミシートに0.5μLスポットした。
その後、展開溶液[クロロホルム:メタノール:酢酸:水=50:30:8:7(v/v/v/v) )]で展開後乾燥し、リンモリブデン酸液をつけて加熱することにより発色させた。
TLC分析によりスフィンゴミエリンおよびスフィンゴシルホスホリルコリンの生成を確認した。
【0061】
<TLC分析の結果>
対照(阻害薬無しの条件)ではスフィンゴミエリンがSCDaseによって脱アシル化し、スフィンゴシルホスホリルコリンに変換されていた。
N-トシル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物1)では、濃度の増加に伴い、スフィンゴシルホスホリルコリンの生成が減少しており、阻害活性が認められた。
また、N-トシル-1-エタンスルホニルフィトスフィンゴシン(化合物2)および化合物5〜9もスフィンゴシルホスホリルコリンの生成が減少しており、阻害活性があることが認められた。
一方、N-トシルフィトスフィンゴシンでは対照と同じく、スフィンゴシルホスホリルコリンが生成していることから、SCDaseに対する阻害活性がないことが認められた。
【0062】
試験例2
<アトピー性皮膚炎モデルマウスでの塗布試験>
アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC-マウスに、被検化合物群には、N-トシル-1-オクタンスルホニルフィトスフィンゴシン [5%(w/v)、 溶媒(エタノール:アセトン=1:1(v/v))]、対照群には溶媒のみを1回0.2mLで1日2回8時間おきに塗布した。
1週間塗布し,0日一時間目、1日目、5日目、7日目に一時間当たりの塗布部を掻いた回数を数えた。その結果を図1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフィトスフィンゴシン誘導体は、スフィンゴミエリンの脱アシル化を起こすことが知られている酵素(SCDase)に対して阻害作用を有することから、スフィンゴミエリンデアシラーゼの阻害活性を発揮することが推測される。
また、本発明のフィトスフィンゴシン誘導体は、アトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて、掻き行動を有意に抑制することから、アトピー性皮膚炎の治療剤として有用である。
図1