(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1ないし
図6は本発明である止水装置の一実施形態を示すもので、1は工場の一方(向かって右側)の側壁、2は他方(左側)の側壁であり、それらの間には約3m幅の出入口3が形成されており、その出入口3の奥側には電動式のシャッター4が設けられている。シャッター4は他の開閉手段、例えば、ドアや引き戸などとされる場合がある。この止水装置ではシャッター4などの開閉手段が構成されないこともある。側壁1,2の幅は40cm程度である。
出入口3には開口床面5が形成されるとともに、その外側には外部床面6が形成されている。内外の床面5,6は水平な同一面になっているが、外部床面6の方は、外向きに少し下がり傾斜状をなすように形成される場合もある。
【0010】
一方の側壁1は基部側とされ、その前面には、六面体でなる縦長状をしたSUS製の外ケース8が床面6から立ち上がるようにして外向きに突設されている。外ケース8の裏板部は側壁1の前面に密着状をなして図示しない止着具などで固定されている。外ケース8と側壁1との間にはシールパッキンを介在させて水が通らないようにすることがある。
この外ケース8は、その左側の面に出入り用の水密式スリット9を有し、そのスリット9よりの手前側の面部と前側の面部とがL字状のケース蓋10になっているとともに、そのL字ケース蓋10は
図1のようにヒンジ11を介して開閉自在とされている。
【0011】
外ケース8内の上部には上軸受13がまた外ケース8より下側となる床面6内にも下軸受14が設けられて、これら両軸受13,14を介して縦軸状の巻取軸15が回転自在に設けられている。
この巻取軸15の外ケース8内の底板上に対応する高さには、底受板16が設けられ、その底受板16に受けられるようにして巻取軸15周りには止水シート18が巻き付けられている。
【0012】
この止水シート18は、幅(高さ)が1mで長さが5m前後のシートとされ、ここでは、その止水シート18は、アラミド繊維(あるいは炭素繊維)による縦横方向への編成シートを主たる層材として有し、それを1枚あるいは複数枚組成するとともに、図示しないがその主たる層材の前面あるいは後面の一方か若しくは前後両面に遮水機能を有する樹脂シート(あるいはフィルム)を一体積層してなるものである。編成シートにゴム質材を一体成形してもよい。
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン系熱可塑性ポリオレフィンシート、熱可塑性ポリエーテル系ポリウレタンシートやポリプロピレン系熱可塑性ポリオレフィンシートなどの極薄シートが物理的・化学的特性に優れたものとして好適であるがそれに限定されない。
【0013】
止水シート18には、
図4に示すように、自動的に巻取り状態にする薄バネ板でなる巻き戻し材19が上下1本あるいは複数本をなして一体化されているとともに、同止水シート18の先端には、縦長板状の端止め材20が取り付けられており、この端止め材20は、
図1および
図2のように平時は巻き戻し材19の作用で外ケース8のスリット9外に復帰するようにされる一方、非常時には
図3および
図4のように側壁2の方向に伸ばされてその前面に縦設された端受材21に固定具21aにより止め付け固定されるようになっている。
端受材21にはメスネジ22が設けられる一方端止め材20には蝶ボルト23が装着されていることにより端受材21に端止め材20を重ね合わせるようにして蝶ボルト23を止め付けることで止水シート18の先端が固定されるようになっている。
【0014】
止水シート18は、その先端が固定される一方において他方の基部側には緩みが残るが、この実施形態では、外ケース8上に巻取軸15に連結された巻取りレバー25が設けられていることにより張設状態にすることができる。巻取りレバー25は
図3および
図4の止水シート張設状態時および
図1および
図2の端止め材20の復帰状態時にそれぞれ弛み防止のため回転ロックするようになっている。
【0015】
27は挟持手段で、左右各側壁1,2の前面の外ケース8より内側と端受材21の内側にそれぞれ縦向きにして固定具28aで固着された固定受板28と、この固定受板28の前面に当て付けられて蝶ボルト29により固定受板28側に平行に固定される挟持板30とからなる。固定受板28の下端には
図5のようにヒンジ32が設けられていてそれに取り付けられた挟持板30が前方に開いたり元の後方に閉じたりするようになっている。また、固定受板28には凹部33が挟持板30には凸部34が設けられ、挟持板30が開いたときには止水シート18が通される一方、挟持板30が閉じたときには、前記凹凸部33,34が噛み合って止水シート18の動きを止めるようになっている。
【0016】
尚、端止め材20は、
図6に示すように、縦長の平たい芯板36にシート端部を数回巻き着け一体化したものにしてもよい。
また、止水シート18の下縁部には、
図6に示すように、細幅状をなす下部舌片37を設けて手前向きに展開自在にしておいてその上に
図3のような押さえ帯板38…を載せ付けるとともに止着具39…を押さえ帯板38の通孔および下部舌片37の通孔37a…を通じて外部床面6上のメスネジである埋込アンカー40…(
図1)にねじ込むことで下部舌片37が下面に密着して容易には浮き上がらず浸水が確実に阻止されるようにしてある。この下部舌片37と止水シート18の本体部分との間はオスメスの面ファスナーa、b(
図6参照)でもって密着して巻取り可能にすることができる。
止水シート18は、
図4に示すように、高く伸ばされた左右の端受材21,21間に渡された吊持ワイヤ42に吊持具43…を掛けて支持するようにすることで垂れ下がらず保持されたものとし、止水機能を確実に果たすようにしてもよい。
【0017】
図1および
図2は止水装置の平時の状態を示す。平時においてはシャッター4が開いている場合と閉じている場合とがある。止水シート18は巻き戻し材19…の力によって巻き戻されるとともに巻取りレバー25が回転ロックされることで端止め材20が外ケース8のスリット9に対応する手前に停まって退避している。挟持手段27は、蝶ボルト29により挟持板30が固定手段28側に固定された状態とされる。
【0018】
洪水や津波流、高波などの襲来前には、
図1および
図2のように、シャッター4を閉じたあと、巻取りレバー25のロックを外すとともに蝶ボルト29を
図5の右欄のように緩めて挟持板30を手前に開いておくようにする。挟持板30は
図5のようにその下端を斜めカットした形にしておけば一定の角度まで開いてそれ以上は開かないようにすることができる。挟持板30が外部床面6まで大きく開き過ぎると、一連の止水の作業に支障が生まれるが、前記一定角度に規定するようにすると作業が容易化する。
【0019】
尚、挟持板30の凸部34は、下端まで伸ばしておくと固定受板28の下部との間に止水シート18を通すための隙間が作れないが、
図5の右欄のように凸部34を下端から少し上がったところまで短いものとしておくと通し隙間が確保されて止水シート18を閉じ方向に通しやすくなる。止水シート18は、
図1、
図2のように巻き取られているが、巻き取られた状態においては下部舌片37は
図6の実線のように折り畳まれ面ファスナーa、bで保持された状態とされている。
【0020】
そのあと、右側の端止め材20をもって出入口3の方向に持ち出すと止水シート18は外ケース8内で巻き込み状態にあったものが引き出され、
図5の右欄のように開いた状態の挟持手段27,27間を通して端止め材20が端受材21前に対応するまで引き出される。端止め材20は蝶ボルト23…により端受材21側に止め付けられる。
【0021】
そのあと、巻取りレバー25を右回りに回して止水シート18を引っ張った状態にしてロックされてのち、左右2本の挟持板30を固定受板28の側に当て付けるようにするとともに蝶ボルト29…固定受板28にねじ込むことにより張設した止水シート18をその両端手前において挟持固定するようにする。その際、凸部34が凹部33内に嵌り合うことにより止水シート18はより強く張設状態で固定化されるものである。
【0022】
そのあと、
図6のように、上向きになっている下部舌片37を手前に引き剥がすようにすることで面ファスナーa、bが剥がれて外部床面6上に展開することができるようになる。展開した下部舌片37は、
図3および
図4のように、押さえ帯板38…を並べて蝶ボルトなどの止着具39…を押さえ帯板38の通孔から埋込アンカー40…へとネジ込むことにより外部床面6上に密着状に固定され前底方からの止水状態が得られる。
【0023】
洪水や津波流などにより
図4の水位45のようになることが想定され、その場合、止水シート18は、右側はスリット9の個所で左側は端止め材20・端受材21の合わさった個所で止水状態とされさらに下側が押さえ帯板38に押さえ付けられた下部舌片37により止水状態とされていることから完全に止水が可能である。止水シート18はアラミド繊維を主たる層として有する上にその左右両端手前近くで挟持手段27、27により挟持固定されているので、より確実な止水が行われる。下部舌片37の左右長さは厳密に左右の挟持手段27,27間の間隔に一致するようにすれば
図3および
図4のX部を通じての水の浸入は抑えられる。
【0024】
尚、前記止水シート18は、
図6の(a)のように、破線で表したアラミド繊維、炭素繊維などによる軽量で強度に富む強化繊維シート46のみによるものとする場合がある。この場合、繊維目からの透水を阻止するため軟質のゴムあるいは樹脂を目を含む面に含浸させて透水を阻止するようにする。
図6の(b)のように、強化繊維シート46の裏側にあるいは(c)のように表側に前記した樹脂シート47を接着あるいは融着などにより一体化して止水シート18を形成してもよい。また、
図6の(d)のように、強化繊維シート46を表裏の樹脂シート47,47で一体挟み付けして止水シート18を作製してもよいし、(e)のように強化繊維シート46は2層など複数層にしてもよい。これらにおいて、強化繊維シート46は、縦横に編成したものとするが、斜め格子状に編成してなるものを採用してもよい。
また、
図6に示すように、挟持板30の方は幅がwで
図1ないし
図4に示すものと同じであるが、その後方の固定受板28は、それより幅が広いWで出入口3側に伸びた板とすることがある。挟持板30の右端30aと固定受板28の右端28aとを下部舌片37の端部との位置関係を
図6に示してあるが、下部舌片37が右端30aと28aとの間にあるようにしてある。出入口3の右側の固定受板28と挟持板30とでなる挟持手段27についても同様にすることができる。このようにしておくと、右端30aと下部舌片37の左端との間に相当する止水シート18の一部分にかかる水圧を固定受板28の右端の部分がピッタリと受け止めることからその部分の下端から水が入り込むことが防止される。
【0025】
図7ないし
図14は各他の変形的な実施形態である。
図7は止水シート18と端止め材20が開閉される上で軽快かつ円滑に移動操作できるようにしたもので、端止め材20の下部端面には、ブラケット50が取り付けられ、このブラケット50を介して下部ナット51が溶接される一方ロックと解除と回転調節の可能なレバー付き上部ナット52が設けられ、これらに転動ローラー53付きの昇降ねじ軸54がねじ付けられている。止水シート18を引き出すときはレバーにより上部ナット52を弛めてローラー53を止水シート18の下端よりも低く突き出すようにしておいてローラー53を図示の向きにしてレバーにより上部ナット52を締付固定することにより矢印のように端止め材20を引っ張ればローラー53の転動機能により極めて軽快かつ容易に止水シート18を引き出したり戻したりすることができるようになる。止水シート18を引き出したり戻したあとは止水シート18が外部床面6上にくるようにローラー53を元の低い状態に調節し直しておけば、引き出したときに止水シート18の下を洪水が通らないようになる。
【0026】
図8は外部床面6に溝57を設ける一方端止め材20側にはこの溝57内で転動するローラー58をブラケット59を介して取り付けることで軽快かつ円滑に止水シート18を開閉できるようにする他に一定の軌道57をもって安定確実に止水シート18を開閉できるようにしたものである。
図3の止着具39の位置合わせが容易かつ確実にできるようになる。ローラー58は高さ調節式にすることができる。
【0027】
図9は外部床面6に蟻溝60を形成する一方端止め材20の下部先端には蟻溝60に下部が嵌り合うスライダ61が取り付けられたもので、軽快かつ容易に止水シート18の開閉ができるとともに常に一定の軌道をもって開閉されるようになる。
【0028】
図10は外部床面6に蟻溝63を形成する一方端止め材20の下部先端には蟻溝63に下部が嵌り合うスライダ64が取り付けられたもので、軽快かつ容易に止水シート18の開閉ができるとともに常に一定の軌道をもって開閉されるようになるものである。特に、蟻溝63の先方には蟻溝63内にスライダ64を挿入しやすくする端ピット65が設けられており、この端ピット65はそこにゴミなどが集められ傾斜面を通じて掻き出しやすくなるようにしたものである。
【0029】
図11は外部床面6の上にアングル材や角材などによるガイドレール68を取り付ける一方端止め材20の裏側には溝型ローラー69を取り付けて進退走行自在にしたものである。
【0030】
図12および
図13は止水装置についての他の実施形態を示す。外部床面6の左右長手方向には、縦溝aと水平なローラー溝bとを有する逆T字形の案内溝71が形成されており、縦溝a内には端止め材20の裏側に取り付けられたブラケット板72が通されるとともに、このブラケット板72に回転自在に装備した進退ローラー73が縦溝aの開口に添って進退自在とされている。ブラケット板72の下端には水平軸を介して抜け止めローラー74が嵌り合って設けられている。端止め材20と止水シート18とはこうした案内により安定してかつ円滑に進退が案内される。
【0031】
図14は止水装置の他の実施形態を示す。ブラケット板72の前後2個所からはアンカー76,76が突設されており、このアンカー76,76に両端が係合するようにして駆動チェーン77とシーブ78…とが設けられ、右端の駆動モーター79によりブラケット板72が進退駆動されるようになっていることにより止水シート18が開閉されるようになっている。80はタイトナである。
【0032】
図15ないし
図20は止水装置についての他の実施形態を示す。
図15および
図16は止水装置が開いた平時の状態を示し、
図17ないし
図19は止水装置が閉じた状態を示す。
101は工場の一方(向かって右側)の側壁、102は他方(左側)の側壁であり、それらの間には約3m幅の出入口103が形成されており、その出入口103の奥側には電動式のシャッター(開閉手段)104が設けられている。側壁101,102の幅は40cm程度である。
【0033】
出入口103には開口床面105が形成されるとともに、その外側には外部床面106が形成されている。内外の床面105,106は水平な同一面になっているが、外部床面106の方は、外向きに少し下がり傾斜状をなすように形成される場合もある。
【0034】
一方の側壁101は基部側とされ、その前面には、左右前後と上下面とでなる縦長状でSUS製の右外ケース108が床面106より少しだけ掘り下げた右凹所109から立ち上がるようにして突設されている。右外ケース108の裏板部は側壁101から突設された取付密閉板110と連結されている一方前面と内側面とでなる右ケース蓋111はヒンジ112を介して開閉できるように取り付けられている。この右ケース蓋111は、内部ブラケット113を介して止着具114で脱着自在となっている。
この右外ケース108の内部には、右内ケース116が設けられている。右内ケース116は、円筒ドラム型で天板と底板とを一体に備えるとともに側壁101のコーナーに面する個所には一対の丸パイプによりスリット117が形成されている。この右内ケース116は、右外ケース108内において固定されており、その底板の上面が外部床面106と同じ高さとされている。
【0035】
120は固定軸で、右内ケース116の中心を通るように固定して立設されている。この固定軸120の下端外周には固定パイプ121が設けられる一方、それより上部には回転パイプ122が設けられている。回転パイプ122の上端には回転ロック可能な巻取りレバー124が設けられている。回転パイプ122の外周には止水シート126が巻き取られており、その外部端部には端止め材127が設けられている。端止め材127は、
図6のように芯板の周りにシートを巻き付けて一体化したようなものである。端止め材127の端部には引き板128が設けられて縦板129に止着具130により脱着可能になっている。この実施形態では、端止め材127の芯板と引き板128とは逆U字板状をなして形成されている。端止め材127の裏側である側壁101前面には外側受板132が固定されており、またその左側コーナーには内側受板133が固定して設けられている。これら受板132,133はゴム厚板が好ましい。受板132,133の前面とスリット17から出ている止水シート126の面とは略同じ面となっている。
【0036】
左側の側壁102の前面にも同様の外側受板132と内側受板133がシール性のあるゴム製厚板として設けられている。
135は左外ケースで、側壁102の外コーナー近くに凹設した左凹所136に底板が位置するようにして固定設置されている。この左外ケース135は固定側と開閉自在な前側の左ケース蓋137とでなり、左ケース蓋137は図示しない止着具により開閉自在とされている。141は前記端止め材127を止め付け得る左止め板である。143は外ブロック床面106に横一列に配備したメスネジである埋込アンカーである。
【0037】
止水シート126は、幅(高さ)が1mで長さが5m前後のシートとされ、ここでは、その止水シート126は、アラミド繊維(あるいは炭素繊維)による縦横方向への編成シートを主たる層材として有し、それを1枚あるいは複数枚組成するとともに、その主たる層材の前面あるいは後面の一方か若しくは前後両面に遮水機能を有する樹脂シート(あるいはフィルム)を一体積層してなるものである。編成シートにゴム質材を一体成形してもよい。
【0038】
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン系熱可塑性ポリオレフィンシート、熱可塑性ポリエーテル系ポリウレタンシートやポリプロピレン系熱可塑性ポリオレフィンシートなどの極薄シートが物理的・化学的特性に優れたものとして好適であるがそれに限定されない。止水シート126には、
図18に示すように、自動的に巻取り状態にする薄バネ板でなる巻き戻し材(リコイラー)144が上下1本あるいは複数本をなして一体化されている。
【0039】
図15および
図16は止水装置の平時の状態を示す。平時においてはシャッター104が開いている場合と閉じている場合とがある。止水シート126は巻き戻し材144…の力も手伝って巻取りレバー124によって巻き戻されている。引き板128は縦板129に止め付けられた状態とされ、その状態で巻き取りレバー124は回転ロックされる。引き板128は無しとして端止め材127を外側受板132に開けた通孔を通じて側壁101内の埋込アンカー(図示省略)に止着具をねじ込んで固定するようにしてもよい。その場合、端止め材127は左止め板141に直接止め付けられる。左右の外ケース135,108は側壁101,102のいずれも離れる側に偏寄して配置されているので、平時における出入りに支障を与えない。
【0040】
洪水や津波流、高波などの襲来前には、前記巻取りレバー124のロックを外し自由な状態にするとともに右および左の外ケース108,135を開け、さらに止着具130を外して引き板128を持って端止め材127を左方向に引き出し、それにより止水シート126を左向きに引き出す。引き出された引き板128は左止め板141の前に止め付けられ、これにより、止水シート126は、
図17ないし
図19のように、左右の外側・内側受板132,133…の前面にゴム添着されるようにして張設される。
【0041】
左右の外側・内側受板132,133の前面には止水シート126が丁度通されて前方からの水圧の作用により奥側に押さえ付けられることで水が浸入しないようにするため、例えば、スリット117の出口は外側・内側受板132,133の前面と一致する面を通るようにあるいはそれより僅かな一定寸法量程前側か後側にずれたところを止水シート126が通るようにして位置させるようにしてある。シャッター126の張りは、巻取りレバー124の右回りの巻取りと回転ロックとにより得られる。また、止水シート126の下端縁は、回転パイプ122の外周に設けた底盤123の高さを外部床面106と同じにしてあることにより引き出されたときに外部床面106に添った形で出される。そして、止水シート126からは面ファスナーを介して下部舌片146を前出し、その上に押さえ帯板147を配列してのち止着具148…を埋込アンカー143…までねじ込むことにより水密状に固定される。外ケース108,135はそのあと閉じてロックしておく。
【0042】
150は洪水、津波流、高波などの想定される最高水位であり、止水シート126は、前方からの水圧が作用するが、張設された状態で左右の外側・内側受板132,133…に背側を密着支持されるとともに下部は下部舌片146で水密状とされていることから洪水・津波流などに対する止水が確実になされる。止水シート126は、ゴム質の外側・内側受板132,133により横ずれなく密着するとともに止水シート126を傷めるおそれがない。尚、外側・内側受板132,13には上下に伸びる凸条あるいは凹溝を設けるとより止水効果が上がる。
【0043】
図21および
図22は止水装置についての他の実施形態を示す。これらの図は止水装置が洪水などに対処して閉じられた状態を示し、161は一方(向かって右側)の側壁、162は他方(左側)の側壁であり、それらの間には出入口163が形成され、その出入口163の奥側には電動式のシャッター(開閉手段)164が設けられている。出入口163には開口床面165が、またその外側には外部床面166が形成されている。内外の床面165,166は水平な同一面になっている。
【0044】
一方の側壁161は基部側とされ、その外側面には、縦長ケース型をした右外ケース168が固定されている。右外ケース168の一部は開閉式となっており、その前面にはスリット170が形成されているとともに、ケース168の内部には、止水シート171を巻き取るためのドラム172が縦軸状に設けられている。173は巻取りレバーで、適宜位置で回転ロックできるようになっている。
【0045】
左右の側壁161,162の各外側コーナーと内側の前面部には外側受板175と内側受板176がそれぞれ縦長状ゴム板製として固定されている。止水シート171の先端部には端止め材177が取り付けられている。端止め材177は、平時は右外ケース168の外部であるスリット170手前に戻されて位置しているが、洪水などに際しては、
図21のように、左側壁162の外側面に固定の縦受板179に止着具180により固定されるようになっている。止水シート171は出入口163に張設されてレバー173の回転ロックによりその張りが維持されるようにされると、
図21のように受板175,176…にその背部を密着状に受け止められる。止水シート171は、その下部前面に面ファスナーa、bを介して展開自在な下部舌片182を備えており、この実施形態では、
図23に示すように、ヒンジ183を介して起倒可能な押さえプレート184により展開状態の下部舌片182を押さえ付けるようになっている。押さえプレート184は外部床面166に形成した浅い凹所内に床面166と同一面となるようにして収納待機されている。尚、押さえプレート184には面ファスナーaを設けて下部舌片182がより固定化されるようにしてもよい。止水シート171は、幅(高さ)が1mで長さが5m前後のシートとされ、ここでは、その止水シート171は、アラミド繊維(あるいは炭素繊維)による縦横方向への編成シートを主たる層材として有し、それを1枚あるいは複数枚組成するとともに、その主たる層材の前面あるいは後面の一方か若しくは前後両面に遮水機能を有する樹脂シート(あるいはフィルム)を一体積層してなるものである。編成シートにゴム質材を一体成形してもよい。
【0046】
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン系熱可塑性ポリオレフィンシートなどの極薄シートが物理的・化学的特性に優れたものとして好適であるがそれに限定されない。止水シート171には、
図22に示すように、自動的に巻取り状態にする薄バネ板でなる巻き戻し材186…が上下1本あるいは複数本をなして一体化されている。
そして、止水シート171を洪水187の圧力から後倒れしないように護るため、背部に複数本の支柱188を立設してその前面の背受材189…で受け止めるようにするとともに、背受材189と前アンカー190との間を引張チェーン191で引き固定することでさらに後倒れを防止するようにしてある。
【0047】
尚、
図24に示すように、押さえプレート184の先端には半丸バー型の凸片193を設ける一方、外部床面166側に凹溝194を形成しておいて、
図25に示すように下部舌片182を凸片193により凹溝194内に押さえ込んで確実に下部舌片182を固定化するようにしてもよい。凸片193は、
図24の右欄のように、三角バー型のものにして舌片182の先端部を押さえ付けるようにしてもよい。
【0048】
図26は例えば、地下鉄の階段200上の出入口201に対して洪水のための止水装置を構成したものである。出入口201の手前下部には、逆L字形をした前階段202がケースとしても機能するように開閉自在に固定されており、この前階段202の内部には、横軸状の回転軸203回りに止水シート204が巻き込まれるとともに、その一端の上引き板205はローラー206を介して出入口201の下側に平時に待機するように取り出されている。この上引き板205には孔が設けられており、それを持ち上げて上押さえ板207により押さえ付けるとともに蝶ボルト211をメスネジ型上部アンカー208にねじ込むことで密閉式に固定されるようになっている。止水シート204の側部の密閉化は、縦板209を通じて側部アンカー210に蝶ボルト211…による押さえ付けによる固定により得られるようになっている。212は巻取りハンドルである。前記前階段202は、密閉化を図りやすいケースであり、そのことから外部からは水圧がかかりその先端が止水シート204の下部を押圧することにより止水シート204の下部は水密化が図れるものである。
【0049】
図27以降は付加的な提案例を示している。
図27および
図28はミサイル攻撃を受けた場合の対策例で、215は既設の窓枠、216は窓ガラス、217は窓枠215の上枠部に取り付けられたレールで、レール217には吊り具を介して左右に開閉自在なカーテン218が設けられている。カーテン218は、アラミド繊維(あるいは炭素繊維)による縦横方向への編成シートを主たる層材として有し、それを1枚あるいは複数枚組成するとともに、その主たる層材の前面あるいは後面の一方か若しくは前後両面に遮水機能を有する樹脂シート(あるいはフィルム)を一体積層してなるものである。編成シートにゴム質材あるいは樹脂質材を一体成形してもよい。
【0050】
カーテン218は
図28のように閉じられて互いの端縁同士を止着具220…で容易に離れないように締着可能であり、また、カーテン218の左右両側部および下縁部は、ヒンジ221により転回自在とした側板222と下板223とにより止着具224…で押さえ付け固定されるようになっている。これにより、Jアラートによりミサイル攻撃があることを察知したときはアラミド繊維などの強力なカーテン218を室内側から引き合わせて防御態勢とすることで有効に飛び散ってくる破片などから室内の人を護ることができるものである。
【0051】
図29はミサイル攻撃に対する防御方法についての他の付加的な提案例を示し、227は屋根受材、228は屋根下地材、229は屋根外装材を示すもので、屋根下地材228と屋根外装材229との間には、外側から押出発泡ポリエチレン成形版Pが敷設され、その表裏にはアラミド繊維などの強化繊維シートa、aが積層されることでミサイル攻撃時の爆発破片などに強い小屋などの戸建て住宅の屋根構造を提供することができる。
【0052】
図30はミサイル攻撃に対する防御方法についての他の実施形態を示し、屋根裏構造部分の天井裏にも
図29の右欄のような強化繊維シートaの単層や複数層が敷設され、押出発泡ポリエチレン成形版Pも複合的に積層して構成されるようになっている。
図30には水害防護方法も示されている。即ち、一般戸建て家屋232の1階部分には基礎233が設けられ、その周部にはメッシュ板などによる床下換気口234…が設けられているが、その換気口234…を含む家屋1階下周り全周にはアラミド繊維などの強化繊維シートaとその表裏の防水シートb、bとの積層シートが取り巻かれて適宜押さえバー235…を止着具236…で押さえ止めすることで固定化してある。
【0053】
図31はミサイル攻撃に対する防御方法についての他の実施形態を示す。239はビルである建造物で、その屋上防水仕上げ層であるスラブ240の上には、水放け粒子層241を介して押出発泡ポリエチレン成形版P未が一面に敷設されたうえで単層あるいは複数層のアラミド繊維などの強化繊維シートaと防水シートbとが敷設されている。
【0054】
図32は床面に設置されたベッド244の耐震防護フレーム245について同じくミサイル攻撃に対する防御方法を示すものである、耐震防護フレーム245は、図示のようにパイプを側面台形枠状に成形した主防護パイプ246を図の手前と奥側に離して一対平行状に配し、その前後間を右欄のように四角パイプなどの主横架材247で繋ぐとともに主横架材247間をさらに細い天井つなぎ材248…で連結してなるものである。その他、主防護パイプ246の脚間は前後および左右方向の底つなぎ材249でつながれてなる。地震発生時にベッド244に休む人をこのフレーム245によって護るようにするものであるが、この場合、さらにミサイル防御も可能にしてものである。即ち、主横架材247…と天井つなぎ材248…で構成される天井面には、単層あるいは複数層のアラミド繊維などの強化繊維シートa…が覆設されていてこれでミサイル爆片からの防護をするようになっている。耐震防護フレーム245の前後の面にも強化繊維シートa…をカーテン状にしてあるいは固定面状にして設けることができる。強化繊維シートaの上あるいは下層として押出発泡ポリエチレン成形版Pを組み合わせることもできる。
【0055】
図33は、一般住宅の床下に避難凹所252を形成しその四隅から4本の支柱253…を立設してその上端にテーブル254をまた床面に相当して開閉床板255を装備した耐震避難テーブルであるが、そのテーブルについてもミサイル爆片からの防御可能とした構造にすることができる。
図33の右欄はテーブル254あるいは開閉床板255の内部を単層あるいは複数層の強化繊維シートa…を底面あるいは内芯として含む板材としたものである。
【0056】
図34は、門型フレームとして事務机などの机258を取り囲み前後移動も可能で椅子259上の人を効果的に護ることができるようにした耐震フレーム260についてもミサイル爆片から防護できるようにしたもので、耐震フレーム260の天フレーム上には、右欄のように、芯材を押出発泡ポリエチレン成形版Pとしその外周をアラミドなどの強化繊維シートaで覆い包んだ天防護材261を止着具262…で固定したものである。この耐震フレーム260の左右枠部にも強化繊維シートaによる側面防護材263が押さえプレート264におる押さえ固定により設けられている。
【0057】
図35はアラミド繊維等の強化繊維シートaを止水シート267として防波堤(あるいは防潮堤)268上に対抗設置して津波対策を構成した例を示す。269は支柱で、防波堤268の長手方向に例えば、10m間隔をもって立設されており、この支柱269の周部にはスリット270が開設されてその内部に設けられた巻取り状止水シート268の先端バー272が突設されている。この止水シート267は津波や高潮などの非常時に先端バー272が引かれることにより支柱269内から引き出されて伸展され、隣り合う次の支柱269に係合されるようになっている。止水シート267の前面下部には下部舌片273が面ファスナーなどにより添設状態で展開自在に設けられており、この下部舌片273は押さえ板274を介して止着具275により防波堤268側に固定されるようになっている。
【0058】
止水シート267には巻き戻し材276を設けて巻き戻しやすくなるようにしてもよい。また、
図35の右欄に示すように、止水シート267の下端には複数のローラー277を設けて防波堤268上に埋設したレール278に添って抜け止めされながら円滑かつ確実に開閉されるようにしてもよい。先端バー272には複数段の係合環279を突設しておいて次の支柱269に突設した係合フック280に係止されるようにしてもよい。止水シート267の前後いずれかあるいは双方の面に防水シートを積層配備してもよい。
【0059】
図37は矢印のようなデモ隊や暴走車283…などを緊急捕捉するような場合に使用される非常安全装置についてのものである。284は基部側パイプ、285は先方側パイプで、基部側パイプ284は補強支材286があるとともにその一側にはスリットが設けられており、パイプ284内に巻取られた捕捉シート287はリコイラーにより巻き取られている一方スリットを通じていつでも緊急に先方側パイプ285の方向に引き出し得るようになっている。捕捉シート287はアラミド繊維などによる強化繊維シートを単一枚あるいは複数枚使用して構成されており、その先端に設けた係合パイプ288が先方側パイプ285内に通隙289を伝って差込み可能になっている。
緊急の場合、捕捉シート287を張設しておけば、図のようにデモ隊や暴走車283…を捕捉し得る。
尚、前記強化繊維シートは道路側方に一般に設けられるガードレール(図示書略)に添って設けられることもある。
【0060】
図38は、基部側パイプ291と先方側パイプ292が共に平時は低く納まった形とされるが緊急時には持ち上げ調節可能でロック軸293により高さロックも可能とされ、張設された強化繊維シート製捕捉シート294はその背面を昇降型背受パイプ295で受け留め得るようになっている。296は止着具である。
【0061】
図39はビル300の前方下部に複数本の支柱301…を立設しておいてその上面に強化繊維シート製落下緩衝防護シート302を張設しておいて落下してきた人を救い得るようにしたものである。
【0062】
図40は駅のホームなど大勢の人々が行き交い集まったりするところに設置されるごみ箱305…がテロなどにより爆破危険があることに対処してなされたものであり、ゴミ箱305を強化繊維シートで全体が囲まれたものとし、さらにそれらゴミ箱305…をその背方および上方から囲うように4本の支柱306…を立設してそれらを背側および天面側において強化繊維シート製防護シート307で覆うようにする。側面防護シート308を追加してもよい。
【0063】
図41は大勢の人々が集まるイベントなどにおいて自爆テロが発生した際でもその爆破Xがその近辺の最小限範囲に留まるようにした例であり、複数のポール311…を1列に並べてそれらの間を強化繊維シートでなる爆破緩衝シート312で1面状につなぐとともに、それらを左右あるいは前後に複数列間隔を置いて立設配備してなるものである。その右欄の例は、爆破緩衝シート312の一部のものについてそれに直交する補助シート313を設けることによって爆破エネルギーが補助シート313によって一方向(列の長手方向)に自由でなく減衰した形で抑えられてエネルギーが上方へ抜け得るようにすることができる。