(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配管をその周回りに囲む取付具と、前記取付具に一体化されて前記取付具とともに前記配管をその周回りに取り囲むステーから前記固定部材が構成され、前記ステーの一部をその厚さ方向に貫通するように前記支持軸が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の配管制振装置。
前記複数のプレート部材の長さ、幅あるいは厚みのうち少なくとも1つが変更されて各プレート部材の固有振動数が相違されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管制振装置。
前記取付具が両端側にねじ軸を有するU型ボルトであり、前記ステーに形成された孔に前記ねじ軸が挿通され、前記ねじ軸にナットが螺合されて前記U型ボルトと前記ステーが前記配管をその周回りに取り囲むように一体化され、前記ねじ軸に対するナットの螺合位置の調整により前記配管に対する前記支持軸先端の相対位置を調節自在とされたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配管制振装置。
【背景技術】
【0002】
配管の脈動による振動(固体音)障害は、過去多くの現場で発生してきたが、現状の対策方法は、防振による振動絶縁を行うか、サイレンサーによる脈動抑制を行うという対策が主体であり、いずれにおいても大掛かりな対策工事が必要となる。また、配管の施工位置によっては十分な対策をとれない場合もあり、振動障害の解消は容易ではない。
【0003】
図21はスラブ100に複数の吊り金具101によって配管102を水平に吊り下げ、配管102の一端側に接続配管103、104を介しポンプユニット105を接続した配管構造の一例を示す。ポンプユニット105には羽根車106が内蔵され、この羽根車106の回転により目的の液体を配管102側に向けて送ることができる。
しかし、羽根車106は複数の羽根を有し、それらの回転に応じて個々の羽根が液体を間欠的に送る機構であるが故に、各羽根が液体を送る度に配管内の圧力を増減させることが避けられない。これが配管102の脈動発生の原因であり、配管102の脈動による振動が吊り金具101を介しスラブ100に伝達されると、建物内部において震動源であるポンプユニット105から離れた位置であっても振動音を生じる場合がある。
【0004】
図22は一般的な配管に発生している脈動振動の実測データの一例を示すが、0〜500Hzの周波数帯域において特定の複数の帯域にピークとなる振動加速度が観測され、中でも147.5Hzの振動が著しく高い振動加速度を示している。
このように配管に著しく高い加速度の振動が生じている場合、配管の振動が建物に伝達されて騒音の発生源となるおそれがある。
【0005】
配管の脈動による振動音を抑制する目的で、固定治具により棒状の高減衰能材を介し振動吸収用マスを配管外周部に固定し、共振作用により配管の振動を抑制する配管制振装置が知られている(特許文献1参照)。
また、配管の外周部に固定した支持構造体に制振質量を取り付け、この制振質量に2基のてこ用レバーを対称配置し、てこ用レバーの先端に設けた重錘により生じるてこ作用を利用して吸震を行う吸震器が提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先の特許文献1に記載されている配管制振装置は、高減衰能材の減衰能力に応じた振動吸収効果を期待できるが、配管に生じる脈動振動のピーク周波数は一様ではなく、ポンプの構造や回転数などに応じ、異なる周波数に発生することとなる。一例として、脈動の振動数はポンプの回転数×羽根枚数で計算できる場合がある。
この場合、ピーク周波数に合わせた多数の高減衰能材を用意しておき、現場で観測されたピーク周波数に合わせた高減衰能材を逐一適用することは容易ではない問題がある。
先の特許文献2に記載されている吸震器は、脈動振動のピーク周波数に合わせて、てこ作用の調節を行う必要があり、設置が難しいとともに、てこ作用を得られるレバーを配置するスペースを要するため、適用できる配管が限られる問題がある。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、配管への取り付けが簡単でコンパクトであり、周囲に設置スペースの少ない環境であっても適用することが可能であり、脈動のピーク周波数に対しチューニング機能を有する配管制振装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、先端側にピボット部を有する支持軸と、前記ピボット部の先端
を配管周面の一部に押圧して前記支持軸を支持する固定部材と、前記支持軸の基端側に装着された複数の制振質量としてのプレート部材を有し、前記複数のプレート部材が個々に振動自在に相互に間隔をあけて前記支持軸の基端側に装着されるとともに、前記複数のプレート部材の個々の固有振動数が相違されたことを特徴とする。
個々の固有振動数を相違させた制振質量としてのプレート部材を後端側に備え、ピボット部を先端側に備えた支持軸を配管に取り付ける場合、先端のピボット部を配管周面に押圧して取り付けたので、ピボット部を支点として複数のプレート部材が振動することで配管に生じようとするピーク振動を抑制し、配管の脈動を抑制できる。
【0010】
複数のプレート部材の固有振動を相違させておくことで、特定の周波数1点ではなく、ある程度広い幅の周波数に対応した制振効果を得ることができる。このため、50Hz用ポンプあるいは60Hz用ポンプの違いによる脈動ピーク周波数の差異、あるいは、ポンプの羽根枚数やモーターの規模の相違などによる脈動ピーク周波数の差異を生じている場合であっても対応することができ、配管の脈動に起因し発生しようとするピーク振動を低減できる。
【0011】
(2)本発明は、前記配管をその周回りに囲む取付具と、前記取付具に一体化されて前記取付具とともに前記配管をその周回りに取り囲むステーから前記固定部材が構成され、前記ステーの一部をその厚さ方向に貫通するように前記支持軸が設けられたことを特徴とする。
【0012】
取付具とステーからなる固定具で配管をその周回りに取り囲み、ステーを貫通した支持軸の先端を配管周面に押し付けて支持軸を配管周面に安定的に装着したので、配管の振動を支持軸を介しプレート部材に確実に伝達でき、プレート部材の制振作用を確実に発揮させて配管の脈動を抑制できる。
【0013】
(3)本発明は、前記複数のプレート部材の長さ、幅あるいは厚みのうち少なくとも1つが変更されて各プレート部材の固有振動数が相違されたことを特徴とする。
【0014】
各プレート部材の固有振動数はプレート部材の長さ、幅あるいは厚みのうち、いずれかを変更することで相違させることができる。固有振動数の相違したプレート部材を複数支持軸に取り付けておくことで制振効果を1点の周波数ではなく、ある程度広い範囲の周波数帯域まで広げることができる。
【0015】
(4)本発明は、前記複数のプレート部材の長さが隣接するプレート部材間で相違され、前記配管に近い側のプレート部材の長さよりも前記配管から遠い側のプレート部材の方が長くされたことを特徴とする。
【0016】
(5)本発明は、前記取付具が両端側にねじ軸を有するU型ボルトであり、前記ステーに形成された孔に前記ねじ軸が挿通され、前記ねじ軸にナットが螺合されて前記U型ボルトと前記ステーが前記配管をその周回りに取り囲むように一体化され、前記ねじ軸に対するナットの螺合位置の調整により前記配管に対する前記支持軸先端の相対位置を調節自在とされたことを特徴とする。
【0017】
U型ボルトのねじ軸に対するナットの螺合位置を変更することで配管周面に対する支持軸先端の押圧力を容易に調整することができ、配管周面に対し支持軸を安定的に取り付けることができ、必要な設置剛性を得ることができる。配管周面に対し高い安定性で支持軸を取り付けることで複数のプレート部材による制振効果を確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配管の脈動に対し支持軸後端側に設けた複数の制振部材としてのプレート部材がそれぞれ固有の振動数で振動し、配管の脈動に伴うピーク振動を抑制するので、配管の脈動に起因し発生しようとする強い振動音を抑制できる。
配管の脈動の原因となるポンプは羽根車が1回転する際に羽根の枚数分だけ液体を押し上げることから、配管の脈動の振動数はポンプの回転数×羽根枚数の値と相関を示す。このため、配管に生じる脈動のピーク振動数は一定の値をとることが多く、制振部材として支持軸に取り付けたプレート部材を適用し、脈動に伴うピーク振動を抑制できる。
【0019】
複数のプレート部材の固有振動数を相違させておくことで、1点ではなく、ある程度幅を持った広い周波数帯で良好な制振効果が得られるので、汎用的なポンプが発生させる脈動によるピーク周波数に合わせて複数のプレート部材の固有振動数を調節しておくならば、現場施工時に微調整を行うことなく配管に取り付けが可能となる。また、現場で使用されているポンプが汎用のものではなく、適用したプレート部材による振動抑制効果が十分に得られない周波数帯の脈動であった場合は、プレート部材の長さや幅などを変更し、現場でプレート部材を異なるサイズのプレート部材に交換するかプレート部材間の間隔を調整することで汎用のポンプではない場合であっても適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る配管制振装置を備えた配管設置構造の一例を示す構成図。
【
図2】
図1に示す配管制振装置の一例を示す側面図。
【
図3】同配管制振装置の一例において支持軸部分を示す構成図。
【
図5】同配管制御装置のプレート部材を示す一部構成図。
【
図6】同配管制振装置のプレート部材の長さと固有振動数の関係を示すグラフ。
【
図7】本発明に係る制振装置の制振機能に対するプレート部材の影響を示すもので、(a)はプレート部材が1枚の場合の制振能力を示すグラフ、(b)はプレート部材が3枚の場合の制振能力を示すグラフ、(c)はプレート部材3枚の間隔を大きくした場合の制振能力を示すグラフ。
【
図8】実施例の配管制振装置を取り付けた配管を用いて振動実験を行う状態を示す説明図。
【
図9】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動伝達量の関係を50Hz地域用として測定した結果を示すグラフ。
【
図10】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動伝達量の関係を60Hz地域用として測定した結果を示すグラフ。
【
図11】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動伝達量の関係を50Hz地域用においてプレート部材の枚数の関係として測定した結果を示すグラフ。
【
図12】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動伝達量の関係を60Hz地域用においてプレート部材の枚数の関係として測定した結果を示すグラフ。
【
図13】実施例の配管制振装置を備えた配管における振動加速度レベルの測定結果を示すグラフ。
【
図14】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動低減量の関係を50Hz地域用においてプレート部材の枚数とサイズの関係として測定した結果を示すグラフ。
【
図15】実施例の配管制振装置を備えた配管の加振周波数と振動低減量の関係を60Hz地域用においてプレート部材の枚数とサイズの関係として測定した結果を示すグラフ。
【
図16】実施例の配管制振装置の実測データとシミュレーション結果との比較のための計算モデルを示す説明図。
【
図17】実施例の配管制振装置の実測データの一例を示すグラフ。
【
図18】
図17に示す実測データに対するシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図19】実施例の配管制振装置の実測データの他の例を示すグラフ。
【
図20】
図19に示す実測データに対するシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る配管制振装置とそれを備えた配管設置構造の一実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
また、以下の各図に示す構造は、本発明の特徴をわかりやすくするため、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際の構成と同じであるとは限らない。
【0022】
図1は第1実施形態に係る配管制振装置を備えた配管設置構造の一例を示す構成図、
図2は同配管制振装置の側面図、
図3は同配管制振装置の支持軸と配管の位置関係を示す側面図である。
図1に示すように天井スラブなどのスラブ1の下面側に複数の吊り金具2によって配管3が水平に吊り持ち支持されている。配管3は必要本数継ぎ足し接続されてスラブ1の下方に所定の間隔をあけて支持され、接続された複数の配管3に沿って水などの液体が流されるようになっている。複数接続された配管3の一部に図示略の送液ポンプが接続され、この送液ポンプに内蔵されている羽根車の回転により水などの液体が配管3に沿って送り出される。なお、配管3は水平方向に限らず鉛直方向などの他の方向にも連結されることがあり、水平方向、鉛直方向あるいは斜め方向などのいずれかの方向に連結されたいずれかの配管の一部に送液ポンプが接続されていてもよい。
前記送液ポンプが液体を送り出す場合、送液ポンプの羽根車が間欠的に液送するための送液圧変動による要因、配管3の支持構造や周囲の構造などの要因により、配管3に脈動を生じるおそれがあり、この脈動を抑制するために本実施形態では以下に説明する構造が採用されている。
【0023】
吊り金具2は、スラブ1から吊り下げられた天吊りボルト2Aとこの天吊りボルト2Aの下端部に接続された手錠型の把持部材2Bとからなり、把持部材2Bが配管3の周面を囲んで支持している。
図1に示すように吊り金具2が配管3を支持した位置の近傍に(例えば数cm側方に)、第1実施形態の配管制振装置5が吊り下げられている。
この配管制振装置5の詳細構造を
図2、
図3に示す。
図2、
図3において鎖線で示す丸型断面の配管3の上側の周面に沿うようにU型ボルトからなる取付具6が逆U字状に設置され、この取付具6の両端側を挿通して設けられた板状の固定用ステー7が水平に、かつ、配管3の長さ方向に直交する方向に設けられている。
固定用ステー7は、
図2、
図4に示すように、短冊状の支持板7Aとこの支持板7Aの幅方向一側縁部に直角に延設された補強板7Bとからなる側面L字型の鋼材からなる。支持板7Aの長さ方向中央に丸型の透孔8が形成され、透孔8を挟んで支持板7Aの長さ方向両側に長孔状のスリット孔9が支持板7Aの長さ方向に沿うように形成されている。
【0024】
図2に示すように配管3の上側周面に沿ってU型の取付具6を周回させ、取付具6の直線状の両端部分を配管3の下向きに延在させるとともに、取付具6の両端部分に形成されているねじ部6aを固定用ステー7のスリット孔9に挿通し、ねじ部6aに複数のナット10を螺合することで取付具6に固定用ステー7が一体化されている。
また、支持板7Aの透孔8を貫通するように支持軸12が挿通され、この支持軸12の先端(上端)にピポット部12aが形成され、支持軸12の下端側(後端側)に短冊板状のプレート部材13、14、15が取り付けられている。ピポット部12aは先細り形状とされ、その先端は、数mm、例えば2mm程度の曲率の半球面から形成されている。ピボット部12aの先端形状は配管3の周面の一部に支持軸12を点接触させるための形状であるので、半球面に限らず、円錐形状や角錐形状など、いずれの形状でも良い。
【0025】
支持軸12はピポット部12aを配管3の下側周面の最下部に突き当てるとともに支持軸12の外周に形成されているねじ部12bに複数のナット16を螺合し、複数のナット16により支持板7Aを挟み付けることで支持板7Aの中央部に支持板7Aに対し直角に固定されている。支持板7AにU字状の取付具6を一体化するナット10の締め付け力と、支持軸12の先端側の突出量を調節することでピポット部12aを配管3の周面に押し付ける力を調節することができる。本実施形態では配管3の振動を抑制するために制振装置5を配管3に取り付けているので、配管3の振動によりピポット部12aの押し付け位置が移動、ないしは、ずれないように、十分な押圧力でピポット部12aを配管3の周面に押し付け固定しておくことが好ましい。
【0026】
支持軸12は、
図2に示すように補強板7Bの高さより若干長く形成され、補強板7Bの下端より下方に延出された下端側に平座金などのスペーサー17を介しプレート部材13、14、15が所定の間隔をあけて互いに平行に、支持軸12と直交し、かつ、配管3の長さ方向と直交するか平行に取り付けられている。プレート部材13、14、15は、それらの中央部に形成されている透孔13aに支持軸12の後端側を挿通させ、支持軸12に螺合された複数のナット16によりプレート部材13、14、15をそれらの厚さ方向両側から挟み込むように挟持されている。プレート部材13、14、15の間にスペーサー17が介在されているので、プレート部材13、14、15は後述するように個々の長さに応じた固有振動数で振動自在に支持されている。
なお、プレート部材13、14、15は
図1では配管3の長さ方向に平行に描かれ、
図2では直交向きに描かれているが、これは図面を見やすくするために描いている。プレート部材13、14、15の向きは配管3に対し、どちらの方向でも良く、方向を特に規定するものでもない。また、プレート部材13、14、15の向きが異なっていても制振効果の面で変わりはないが、スペース効率の面からこれらの向きが揃っていることが望ましい。
プレート部材13、14、15の配置間隔はスペーサー17の厚さに対応するが、数mm程度の間隔に設定されている。前記支持軸12とプレート部材13、14、15は、JIS規定SS400などの鋼材からなる。
【0027】
プレート部材13、14、15は、それぞれ同じ厚さと幅を有し、長さのみ若干異ならせた短冊状の鋼板からなる。一例として、プレート13、14、15は長さを2mmずつ異ならせた鋼板からなり、プレート部材13、14、15の順に2mmずつ長くなるように形成されている。例えば、プレート部材13が厚さ6mm、幅30mm、長さ328mmの鋼板からなる場合、プレート部材14が厚さ6mm、幅30mm、長さ330mmの鋼板からなり、プレート部材15が厚さ6mm、幅30mm、長さ332mmの鋼板からなる。
本実施形態におけるこれらプレート部材13、14、15の長さの差異の2mmは、一例であって、1mmずつ長さが異なるか、3mmずつ長さが異なるか、それら以上の長さが異なる場合など、目的とする配管3の制振のために好適な長さの差異を選択することができる。プレート部材13、14、15の長さの差異について以下に説明する。
【0028】
プレート部材13、14、15は、個々の固有振動数が異なるように各々の長さが決定されている。本実施形態のように幅が同じで板厚が同じ金属板からなるプレート部材13、14、15は、個々の長さを変えることで各々の固有振動数が微妙に異なるように調整されている。
【0029】
図6は、本実施形態の配管制振装置5において、幅30mm、厚さ6mmの金属製のプレート部材を用い、プレート部材の長さを変更した際に得られる固有振動数の測定結果の一例を示す。プレート部材の長さを変更することで得られる固有振動数は微妙に変化するが、
図6に示すようにy=1.444E+07X
−1.948なる関係式で示される近似曲線に合致するように固有振動数が変化する。
図6に示すようにプレート部材の長さと固有振動数の関係は実験データから求めることができる。
そこで、例えば、180Hzのピーク周波数を生じるような配管の脈動を制振したい場合は、
図6の180Hzの固有振動数に合致する長さの第1のプレート部材を選択し、第1のプレート部材に対し例えば−2mm程度の長さの差を示す第2のプレート部材と、第1のプレート部材に対し例えば+2mm程度の長さの差を示す第3のプレート部材を用意する。第1のプレート部材をプレート部材14として用い、第2のプレート部材をプレート部材13として用い、第3のプレート部材をプレート部材15として用いることができる。配管3の脈動を制振するために、プレート部材13、14、15の重量は配管3の質量の1〜2%程度を選択することができる。例えば、150Aより小さいサイズの配管には上述のサイズのプレート部材を用い、150Aより大きいサイズの配管には質量比で配管質量の2%になるようにプレート部材の幅、厚さを調整することが好ましい。
【0030】
プレート部材13、14、15の枚数と間隔の関係は、
図7(a)に示すように横軸に測定周波数(Hz)、縦軸に制振効果(dB)を測定した場合、1枚のプレート部材による制振作用では狭い範囲でしか振動低減効果が得られない。これに対し、
図7(b)に示すようにプレート部材13、14、15の3枚構成では
図7(a)よりも広い範囲で振動低減効果を得ることができる。ただし、プレート部材13、14、15の間隔が大きくなり過ぎると
図7(c)に示すように制振効果に大きな山谷ができるので、制振周波数が山の位置になると制振効果が大幅に減少する。このため、プレート部材13、14、15の間隔を1〜3mm程度の範囲内で適切な値とすることが好ましい。例えば、上述のサイズのプレート部材で試験すると、1mm間隔、2mm間隔、3mm間隔の比較では2mm間隔に設定した場合に最も大きい制振効果を得ることができる。
【0031】
なお、送液ポンプとして最も汎用的なポンプ(モーター4P、6枚羽根)を想定し、50Hz地域用の場合、制振周波数145〜150Hz、60Hz地域用の場合、制振周波数175〜180Hzを想定すると、目標効果量として10dB以上の振動低減効果を見込むことができる。
【0032】
図1に示す配管の設置構造において、配管3の一部に図示略の送液ポンプから振動が伝わり、配管3が脈動しようとした場合、配管3の振動が配管制振装置5に伝わる。配管制振装置5は支持軸12先端のピボット部12aを配管3の下面に押し付けてプレート部材13、14、15を吊り下げ支持しているので、支持軸12はプレート部材13、14、15を錘とし、ピボット部12aの上端を支点として振動し、配管3の振動に対する反力を生じさせて配管3の振動を抑制する。このため、配管3の振動を抑制でき、配管3に生じようとするピーク振動を抑制できるので、吊り金具2とスラブ1を介し建物に生じようとする振動音を抑制できる。
【0033】
本実施形態の配管制振装置5において、取付具6と固定用ステー7により配管3を取り囲み、ピボット部12aを配管3に押し付けて支持軸12を安定支持しているので、支持軸12を介しプレート部材13、14、15に確実に振動伝達することができ、プレート部材13、14、15による制振効果を確実に発揮できる。
【0034】
なお、配管3の脈動の原因となる送液ポンプは羽根車が1回転する際に羽根の枚数分だけ液体を押し上げることから、配管3の脈動の振動数はポンプの回転数×羽根枚数の値と相関を示す。このため、配管3に生じる脈動のピーク振動数は一定の値をとることが多く、制振部材として支持軸12に取り付けたプレート部材13、14、15を適用し、脈動に伴うピーク振動を抑制できる。
【0035】
また、プレート部材13、14、15の固有振動数を相違させておくことで、1点ではなく、ある程度幅を持った広い周波数帯で良好な制振効果が得られるので、汎用的なポンプが発生させる脈動によるピーク周波数に合わせて複数のプレート部材13、14、15の固有振動数を相互にわずかずつずれるように調節しておくならば、現場施工時に微調整を行うことなく配管3に取り付けることで確実に振動抑制が可能となる。
また、現場で使用されている送液ポンプが汎用のものではなく、適用したプレート部材13、14、15による振動抑制効果が十分に得られない周波数帯の脈動であった場合は、プレート部材13、14、15の長さや幅、重量などを変更し、現場でプレート部材を異なるサイズのプレート部材に交換するかプレート部材間の間隔を調整することで汎用の送液ポンプではない、特別な構造のポンプ場合であっても適用可能とすることができる。
【0036】
ところで、先の配管制振装置5においてプレート部材13、14、15を支持軸12で支持する位置は中央に限らず、中央から若干ずれた位置、あるいは端部側位置のいずれでも良い。また、プレート部材の設置枚数は3枚に限らず、2枚以上の複数であれば、任意の数を選択してよい。
【実施例】
【0037】
支持軸として、M10、長さ110mm、先端円錐部の尖り角90゜、先端の円錐部長さ5mm、JIS規定SS400の鋼材からなる剣先ボルトを用いた。固定用ステーとして、支持板と補強板の長さ280mm、支持板と補強板の幅50mm、長穴(幅14mm、長さ75mm)を支持板中央のφ12の透孔から22mm離れた位置に形成した
図4に示すL型鋼材(JIS規定SS400)を用いた。プレート部材は、幅30mm、厚さ6mmを共通サイズとして、長さ328mm、330mm、328mmのいずれかのサイズのもの3枚(JIS規定SS400)を用意した。取付具として
図2に示す形状のJIS規定SWRM軟鋼線材からなる150A配管用のUボルトを用意した。
【0038】
試験用の配管(質量25.7kg:150A×1300L)20を用意し、
図8に示す鉄骨製の矩形枠体21の内側に天吊りボルト2Aとリング状の把持部材2Bからなる吊り金具2によって水平に吊り下げた。
図8に示す右側の天吊りボルト2Aの途中にはスプリングハンガー23を介在させ、左側の把持部材2Bより若干右側の隣接位置(5cm離れた位置)に
図2に示す構成の配管制振装置5を取り付け、配管20の中央部下方に加振器25を接続した。加振器25は、配管20の中央部を上下方向に加振できる装置であり、50Hz用は140〜150Hzの範囲、60Hz用は70〜180Hzの範囲でそれぞれ1Hz刻みの正弦波を加振できる装置である。この例では
図2に示す構成の配管制振装置5について
図2の場合と上下逆向きに配管20に取り付けた。
【0039】
配管20の下面側に沿ってU型ボルトを上向きに装着し、
図2と上下逆向きに固定用ステー7、プレート部材13、14、15を組み付けて配管制振装置を組み立てた。また、
図8に示す配管20の左端上面側に上下方向振動計測用の振動センサを取り付けた。
以上構成の配管制振装置を備えた配管20に対し、加振装置25によって異なる周波数の振動を付加した結果を以下の
図9、
図10に示す。なお、上述と同等構成の配管制振装置を5基試作し、5基の配管制振装置を試験体1〜5と表示して、各々の場合の結果を
図9、
図10に併記した。
【0040】
図9、
図10に示す試験結果から、試験体1〜5において多少の違いは見られるものの、いずれの試験体も調整周波数の振動伝達量(低減量)において目標値の−10dB以上を達成できることが明らかになった。また、50Hz地域用の送液ポンプを想定した試験結果を示す
図9の結果と、60Hz地域用の送液ポンプを想定した試験結果を示す
図10の結果のいずれの場合においても、1点の限られた周波数ではなく、ある程度広い範囲で−10dB以上の制振効果を発揮できることも分かった。
【0041】
前記配管の支持構造において、配管制振装置に設けるプレート部材について、1枚とした場合と3枚とした場合について、振動伝達量<低減量>の測定結果を
図11、
図12に示す。1枚の場合は50Hz地域用が長さ367mm、60Hz地域用が長さ334mmとしたプレート部材のみを用いた例である。
図11に示すように50Hz地域用においてプレート部材を1枚とした構造より3枚とした構造の方が制振周波数範囲を拡大することができ、低減量を増大できることがわかった。
図12に示すように60Hz地域用においてプレート部材を1枚とした構造より3枚とした構造の方が制振周波数範囲を拡大することができ、低減量を増大できることがわかった。
【0042】
前記配管の支持構造において、支持軸先端のピポット部形状による影響を調べるために、前記配管制振装置に設ける支持軸について、先端部を平坦面に加工した支持軸に交換した構造の配管制振装置を用いて振動加速度レベルの測定を行った。また、支持軸の先端にフランジナットを螺合し、フランジナットのフランジ部先端面に周回りに等間隔で3本の細い軸を立設し、配管に対し3点で接触できる構造の支持軸先端形状とした配管制振装置を用いて振動加速度レベルの測定を行った。更に、比較のために、配管制振装置を設けてない状態で配管の振動加速度レベルの測定を行った(非制振)。配管の加振は
図8に示す配管に227.5Hzの振動が生じるように加振している。それらの測定結果をまとめて
図13に示す。
【0043】
図13に示すように、支持軸先端部をピボット形状に加工した加振装置を備えた場合に、非制振の場合の配管加速度レベルに対し、加振周波数(227.5Hz)において10dB以上の低減効果を得ることができた。
また、加振周波数に対し10〜20Hz離れた帯域の振動加速度レベルにおいて支持軸先端部をピポット形状に加工した加振装置は、非制振の場合、あるいは、支持軸先端部を平に加工した場合に比較し、10〜20dB程度振動加速度を低減できた。
【0044】
次に、プレート部材を1枚とした配管制振装置と、プレート部材を3枚として、各プレート部材の間隔を1mm刻み、2mm刻み、3mm刻みとしたそれぞれの構造の制振装置について、先の例と同等の振動加速度レベル試験を行った。それらの結果を
図14、
図15に示す。
【0045】
図14と
図15に示す測定結果から、プレート部材を1枚とした場合より3枚とした場合の方が低減量が明らかに大きく、低減効果を得ることができる範囲(制震する周波数帯)も広いことが分かった。
また、プレート部材3枚の組み合わせでは、2mm刻みの場合に最も低減量を大きくすることができ、効果範囲も切れ目無く広いことが分かった。なお、1mm刻みでは、低周波数帯域が狭く、3mm刻みでは効果範囲が広すぎて中央の周波数帯域で低減効果が小さくなる周波数が出現した。
【0046】
<配管振動のシミュレーション>
前述の配管支持構造における実測試験データと以下に説明する配管振動のシミュレーション結果を比較した。
配管振動のシミュレーションに用いる計算モデルとして、
図16に示すように基準面に対しばね定数K1の弾性部材と減衰係数C1のダンパーに支持されている質量M1の配管30を想定した。この配管30の上に、質量M2のプレート部材40をばね定数K2の弾性部材と減衰係数C2のダンパーを介し設置している計算モデルを想定した。
【0047】
配管有効質量を25.7kg(150A×1300Lの全質量)、配管固有値146Hz(実測データから)、配管減衰比0.5%、プレート部材有効質量0.25kg(プレート質量の1/2)プレート部材の固有値、B−4プレート146Hz(実測データより)、B−14プレート173Hz(実測データより)、プレート部材減衰比0.5%として振動加速度レベルのシミュレーションをMathWorks社製ソフトMATLAB、バージョン6.5.0.180913a Release13を用いて行った。
【0048】
図17はB−4プレートの場合の実測データ、
図18はB−4プレートの場合のシミュレーション結果を示し、
図19はB−14プレートの場合の実測データ、
図20はB−14プレートの場合のシミュレーション結果を示す。
図17に示す結果(実測データ)と
図18に示す結果(シミュレーション結果)の比較と、
図19に示す結果(実測データ)と
図20に示す結果(シミュレーション結果)の比較により、非制振の場合と制振装置設置の場合のレベル差がほぼ一致していることから、配管とプレート部材との質量比は1%程度(配管とプレート部材全体質量では2%)となっていることがわかる。
【0049】
このことから、配管の質量に対し、プレート部材の質量比を1〜2%程度に設定することで、制振効果を得られることがわかる。従って、前述のサイズ、重量のプレート部材を用いた試験結果の有効性がシミュレーション結果からも裏付けられた。