(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6592857
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ねじピンゲージ及び製造方法並びにねじ孔位置計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 3/48 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
G01B3/48
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-11085(P2019-11085)
(22)【出願日】2019年1月25日
【審査請求日】2019年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391011836
【氏名又は名称】新潟精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066821
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 建治
(74)【代理人】
【識別番号】100180149
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 修
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 利行
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−23601(JP,U)
【文献】
実開昭53−163153(JP,U)
【文献】
実開昭57−59301(JP,U)
【文献】
特開平4−106401(JP,A)
【文献】
特許第4437905(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/299043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00− 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状体の中央部に形成せしめられているピンゲージ部の下方部に、下方にげ部と、前記下方にげ部の下方部に、ねじゲージ部が形成せしめられ、且前記ピンゲージ部の上方部に、上方にげ部と、前記上方にげ部の上方部にグリップ部が形成せしめられ、前記ピンゲージ部の下方部にして、且前記ピンゲージ部の下方部と前記下方にげ部との間に、R面取り加工を施したR面部が形成せしめられていることを特徴とするねじピンゲージ。
【請求項2】
前記グリップ部は、外周面部にローレットが形成せしめられていることを特徴とする、請求項1に記載のねじピンゲージ。
【請求項3】
前記グリップ部の外周面部に形成せしめられているローレットは、上方部から下方部にかけ縦列状に形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のねじピンゲージ。
【請求項4】
前記グリップ部は、該グリップ部を構成する外周面部の上方部から下方部にかけて、平行状の平面部が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3に記載のねじピンゲージ。
【請求項5】
前記グリップ部は、該グリップ部を形成せしめる内側部位に凹部が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3又は4に記載のねじピンゲージ。
【請求項6】
第1工程として、所定の長さに形成せしめられた軸状体の鋼材の中央部をピンゲージ部とし、前記ピンゲージ部の下方部に下方にげ部を、前記下方にげ部の下方部にねじゲージ部を、前記ピンゲージ部の上方部に上方にげ部を、前記上方にげ部の上方部にグリップ部を、前記ピンゲージ部の下方部と前記下方にげ部との間に、R面取り加工を施したR面部が形成せしめられたねじピンゲージ体を切削加工手段を介して形成せしめ、
第2工程として、前記第1工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体に焼入れ加工処理を施し、
第3工程として、前記第2工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体に黒染め加工処理工程を施し、
第4工程として、前記第3工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体を構成する前記ピンゲージ部に研磨加工処理を施し、
第5工程として、前記第4工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体のねじゲージ部に研磨加工処理を施し、
第6工程として、ピンゲージ部とねじゲージ部の精度測定処理を施し、
第7工程として、前記第6工程によって合格せしめられたねじピンゲージ体にマーキング加工処理を施し、
第8工程として、前記第7工程によってマーキング加工処理が施されたねじゲージ部に防錆加工処理を施し形成せしめられることを特徴とする、ねじピンゲージの製造方法。
【請求項7】
前記ねじピンゲージの製造方法の第1工程において、
グリップ部が、前記グリップ部の外周面部にローレットが形成せしめられていると共に、前記グリップ部に対向状にして、且平行状の平面部を形成せしめる加工処理が施されていることを特徴とする、請求項6に記載のねじピンゲージの製造方法。
【請求項8】
ワークに穿設のねじ孔の軸心を計測するねじ孔位置計測方法において、
ねじピンゲージのねじゲージ部を、ワークに穿設のねじ孔に螺入せしめて、前記ピンゲージを構成するピンゲージ部の下方部に形成するR面部が、前記ワークに穿設のねじ孔の上方部に形成するざぐりのテーパ部と当接するまで螺入し締付けた後、2本の前記ねじピンゲージを構成するピンゲージ部の外側方に、計測器を当て前記ワークのねじ孔の位置を計測せしめることを特徴とする、ねじピンゲージのねじ孔位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク側に穿設せしめられためねじ孔の軸心位置を精度よく、簡単且迅速に計測せしめるねじピンゲージ及びねじピンゲージの製造方法並びにねじ孔位置計測方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ワーク側に穿設せしめた孔間の芯出し計測ねじピンゲージとして、下記特許文献1(特許第4437905号公報)に、ねじ孔位置計測用治具及びこれを用いたねじ孔位置計測方法が開示されている。
【0003】
前記特許文献に開示されている、ねじピンゲージであるねじ孔位置計測用治具の構成は、軸状体の軸方向の一方に形成される被計測ねじ孔に固定するためのねじ部と、前記軸状体の他方に形成され、外周がねじ孔位置の計測に用いられる円柱形状を含むねじ頭部と、前記ねじ部とねじ頭部との間に、前記ねじ部側から前記ねじ頭部側へ向かうにつれて広がるようにテーパ部が形成され、そのテーパの角度は前記ざぐりが形成するテーパ部の角度より大きい形状になされ、前記ねじ部を前記被計測ねじ孔に固定するときに前記ねじ頭部のテーパ部が前記ざぐりのテーパ部の一部に当接するように形成せしめられたねじ孔位置計測用治具からなるものである。
【0004】
そのため、前記従来のねじ孔位置計測用治具は、発明の効果の欄の段落番号[0017]において、前記治具には、被計測ねじ孔に固定されるときに、ざぐりのテーパ部の一部に当接するテーパ部が備えられているので、ガタつくことが無く、且ねじ孔の位置を計測できる。と説明されている。
【0005】
しかし、そのねじ孔位置計測用治具は、該治具の構成部材である、テーパ部の角度が、ざぐりが形成するテーパ部の角度より大きい形状にて形成せしめられているため、前記ねじ頭部のテーパ部が、前記ざぐりのテーパ部の一部に当接するので、当接面は点接触となる。
【0006】
従って、前記した従来開示のねじ孔位置計測用治具は、点接触のため、当り面が少なく、前記ねじ孔が螺入するワーク側のねじ孔位置計測用治具の中心が、ブレを生ずるおそれがあった。
【0007】
そのため、前記ねじ孔位置計測用治具による前記ワーク側に穿設せしめられた孔間の精度において優れた良好な芯出し計測ができにくかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4437905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、本発明は、前記した特許文献1に係る特許第4437905号公報(発明の名称 ねじ孔位置計測用治具及びこれを用いたねじ孔位置計測方法)に記載されている発明が、ねじ部とねじ頭部との間に、前記ねじ部側から前記ねじ頭部側へ向かうにつれて広がるようにフラット状のテーパ部が形成され、そのテーパの角度が前記ざぐりが形成するテーパ部の角度よりも大きい形状にて形成され、前記ねじ部が前記被計測ねじ孔内に固定せしめられるときに、前記ねじ頭部のフラット状のテーパ部が前記ざぐりのテーパ部の一部と、接触面が著しく小さい点接触状態で当接し、そのため前記ねじ部とねじ頭部のねじ孔位置計測用治具がぐらつくおそれがあり、そのため前記ねじ孔位置計測用治具が螺入し固定した際ブレを生じ、ねじ孔の芯出し測定に支障をきたし、良好な精度出しができなかったものを解消せしめた。
【0010】
さらに、本発明は、ピンゲージ部の下方部を、R面取り加工を施してR面部を形成せしめて優れた芯出し精度が得られるねじピンゲージを極めて簡単にして、且迅速に形成せしめることができるようにした。
【0011】
また、本発明は、ワーク側に穿設せしめられたねじ孔の芯出し計測時において、前記ねじ孔間に螺入し締付られたねじピンゲージを、ざぐりのテーパ部とR面部を点接触状態での当接ではなく、接触面を線状にて当接せしめ、さらに前記ねじピンゲージをぐらつかせることなく、確実に締付け固定せしめて前記ねじ孔位置の優れた計測値の芯出し精度が得られるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、軸状体の中央部に形成せしめられているピンゲージ部1の下方部2に、下方にげ部3と、前記下方にげ部3の下方部4に、ねじゲージ部5が形成せしめられ、且前記ピンゲージ部1の上方部6に、上方にげ部7と、前記上方にげ部7の上方部7aにグリップ部8が形成せしめられ、前記ピンゲージ部1の下方部2にして、且前記ピンゲージ部1の下方部2と前記下方にげ部3との間に、R面取り加工を施したR面部2aが形成せしめられていることを特徴とするねじピンゲージである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記グリップ部8は、外周面部9にローレット10が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1に記載のねじピンゲージである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記グリップ部8の外周面部9に形成せしめられているローレット10が、上方部11から下方部12にかけ縦列状に形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のねじピンゲージである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、該グリップ部8が、グリップ部8を構成する外周面部9の上方部11から下方部12にかけて、平行状の平面部13、13aが形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3に記載のねじピンゲージである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、該グリップ部8が、前記グリップ部8を形成せしめる内側部位に凹部14が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3又は4に記載のねじピンゲージである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、第1工程として、所定の長さに形成せしめられた軸状体の鋼材の中央部をピンゲージ部1とし、前記ピンゲージ部1の下方部2に下方にげ部3を、前記下方にげ部3の下方部4にねじゲージ部5を、前記ピンゲージ部1の上方部6に上方にげ部7を、前記上方にげ部7の上方部7aにグリップ部8を、前記ピンゲージ部1の下方部2と前記下方にげ部3との間に、R面取り加工を施したR面部2aが形成せしめられたねじピンゲージ体Aを切削加工手段を介して形成せしめ、
第2工程として、前記第1工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体Aに焼入れ加工処理を施し、
第3工程として、前記第2工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体Aに黒染め加工処理工程を施し、
第4工程として、前記第3工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体Aを構成する前記ピンゲージ部1に研磨加工処理を施し、
第5工程として、前記第4工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体Aのねじゲージ部5に研磨加工処理を施し、
第6工程として、ピンゲージ部1とねじゲージ部5の精度測定処理を施し、
第7工程として、前記第6工程によって合格せしめられたねじピンゲージ体Aにマーキング加工処理を施し、
第8工程として、前記第7工程によってマーキング加工処理が施されたねじゲージ部5に防錆加工処理を施し形成せしめられることを特徴とする、ねじピンゲージの製造方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記ねじピンゲージの製造方法の第1工程において、グリップ部8が、前記グリップ部8の外周面部9にローレット10が形成せしめられていると共に、前記グリップ部8に対向状にして、且平行状の平面部13、13aを形成せしめる加工処理が施されていることを特徴とする、請求項6に記載のねじピンゲージの製造方法である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、ワークBに穿設のねじ孔16の軸心を計測するねじ孔位置計測方法において、
ねじピンゲージのねじゲージ部5を、ワークBに穿設のねじ孔16に螺入せしめて、前記ピンゲージを構成するピンゲージ部1の下方部2に形成するR面部2aが、前記ワークBに穿設のねじ孔16の上方部に形成するざぐり17のテーパ部17aと当接するまで螺入し締付けた後、2本の前記ねじピンゲージを構成するピンゲージ部1の外側方に、計測器を当て前記ワークBのねじ孔16の位置を計測せしめることを特徴とする、ねじピンゲージのねじ孔位置計測方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、軸状体の中央部に形成せしめられているピンゲージ部の下方部に、下方にげ部と、前記下方にげ部の下方部に、ねじゲージ部が形成せしめられ、且前記ピンゲージ部の上方部に、上方にげ部と、前記上方にげ部の上方部にグリップ部が形成せしめられ、前記ピンゲージ部の下方部にして、且前記ピンゲージ部の下方部と前記下方にげ部との間に、R面取り加工を施したR面部が形成せしめられていることを特徴とするねじピンゲージなので、前記の構成からなるねじピンゲージを、ワークに穿設せしめたねじ孔に螺入せしめると、ピンゲージ部の下方部に形成のR面部がワーク側のざぐりのテーパ部に点接触ではなく、帯状の線状接触をして、前記ねじピンゲージをブレさせることなく安定した樹立状態を確保せしめて、前記ワーク側ねじ孔の芯出し計測を正確に行うことができる利点がある。
【0021】
さらに、請求項2に記載の発明は、前記グリップ部が、外周面部にローレットが形成せしめられていることを特徴とする、請求項1に記載のねじピンゲージなので、前記請求項1に記載の発明と同じ効果を発揮できる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、該グリップ部の外周面部に形成せしめられているローレットが、上方部から下方部にかけ縦列状に形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のねじピンゲージなので、前記請求項1、2に記載の発明と同じ効果を発揮できる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、該グリップ部が、グリップ部を構成する外周面部の上方部から下方部にかけて、平行状の平面部が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3に記載のねじピンゲージなので、前記請求項1、2、3に記載の発明と同じ効果を発揮できる。さらに前記グリップ部にスパナを嵌込んで極めて容易に螺戻したりして、前記ワーク側のねじ孔からねじピンゲージを螺戻せしめることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記グリップ部が、前記グリップ部を形成せしめる内側部位に凹部が形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2又は3又は4に記載のねじピンゲージなので、前記請求項1、2、3、4に記載の発明と同じ効果を発揮できる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、第1工程として、所定の長さに形成せしめられた軸状体の鋼材の中央部をピンゲージ部とし、前記ピンゲージ部の下方部に下方にげ部を、前記下方にげ部の下方部にねじゲージ部を、前記ピンゲージ部の上方部に上方にげ部を、前記上方にげ部の上方部にグリップ部を、前記ピンゲージ部の下方部と前記下方にげ部との間に、R面取り加工を施したR面部が形成せしめられたねじピンゲージ体を切削加工手段を介して形成せしめ、
第2工程として、前記第1工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体に焼入れ加工処理を施し、
第3工程として、前記第2工程によって形成せしめられたねじピンゲージ体に黒染め加工処理工程を施し、
第4工程として、前記第3工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体を構成する前記ピンゲージ部に研磨加工処理を施し、
第5工程として、前記第4工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体のねじゲージ部に研磨加工処理を施し、
第6工程として、ピンゲージ部とねじゲージ部の精度測定処理を施し、
第7工程として、前記第6工程によって合格せしめられたねじピンゲージ体にマーキング加工処理を施し、
第8工程として、前記第7工程によってマーキング加工処理が施されたねじゲージ部に防錆加工処理を施し形成せしめられることを特徴とする、ねじピンゲージの製造方法なので、前記請求項1に記載と同じ効果を発揮できるねじピンゲージを極めて簡単にして、且確実に、さらに迅速に製造できる利点を有している。
【0026】
請求項7に記載の発明は、前記ねじピンゲージの製造方法の第1工程において、グリップ部が、前記グリップ部の外周面部にローレットが形成せしめられていると共に、前記グリップ部に対向状にして、且平行状の平面部を形成せしめる加工処理が施されていることを特徴とする、請求項6におけるねじピンゲージの製造方法なので、前記請求項6に記載の発明と同じ効果を有している。
【0027】
請求項8に記載の発明はワークBに穿設のねじ孔16の軸心を計測するねじ孔位置計測方法において、
ねじピンゲージのねじゲージ部5を、ワークBに穿設のねじ孔16に螺入せしめて、前記ピンゲージを構成するピンゲージ部1の下方部2に形成するR面部2aが、前記ワークBに穿設のねじ孔16の上方部に形成するざぐり17のテーパ部17aと当接するまで螺入し締付けた後、2本の前記ねじピンゲージを構成するピンゲージ部1の外側方に、計測器を当て前記ワークBのねじ孔16の位置を計測せしめることを特徴とする、ねじピンゲージのねじ孔位置計測方法なので、ねじ孔位置の優れた計測値の芯出し精度が得られる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【0029】
【
図2】
図1におけるねじピンゲージの正面図である。
【0030】
【
図3】
図2に示す本発明のねじピンゲージが、ワーク側に穿設せしめられたねじ孔内に螺入した際に、R面部が前記ねじ孔のざぐりのテーパ部に線状に当接せしめられている状態を示す一部切欠縦断正面図である。
【0031】
【
図4】ねじ孔が複数穿設せしめられたワークの斜視図である。
【0032】
【
図5】
図4に示すワークのねじ孔に本発明のねじピンゲージが螺入し固定された状態の斜視図である。
【0033】
【
図6】ワークに穿設せしめられたねじ孔に複数のねじピンゲージが螺入し固定され、前記ねじピンゲージをノギスにて測定せしめている状態の斜視図である。
【0034】
【
図7】ワークに穿設せしめたねじ孔に複数のねじピンゲージが螺入し固定し、前記ねじピンゲージをマイクロメータにて測定せしめている状態の斜視図である。
【0035】
【
図8】従来のねじピンゲージがワークに穿設せしめられたねじ孔に螺入している状態の一部切欠縦断正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の請求項1〜8までの発明に関する発明の実施の形態は共通しているので、以下のとおり一括して説明する。
【0037】
図中、符号Aはねじピンゲージ体を示しており、以下の構成からなっている。
【0038】
すなわち前記ねじピンゲージ体Aは、所定の長さに形成せしめられた軸状体の鋼材の中央部分をピンゲージ部1とする。そして前記ピンゲージ部1の下方部に下方にげ部3を、さらに前記下方にげ部3の下方部にはねじゲージ部5が形成せしめられる。
【0039】
さらに前記ピンゲージ部1の上方部に上方にげ部7を、前記上方にげ部7の上方部にはグリップ部8が形成せしめられる。
【0040】
本発明において、構成上の要部とされるR面部2aについて説明する。
【0041】
前記R面部2aは、前記ピンゲージ部1の下方部2にして、且前記下方部2と前記下方にげ部3との間に、
図1、2、3のように、R面取り加工を施して形成せしめられている。前記R面部2aの作用、効果については後述する。
【0042】
本発明は、前記グリップ部8の外周面部9にローレット10が形成されている。そして前記ローレット10は、上方部11から下方部12にかけ縦列状に形成せしめられている。
【0043】
前記グリップ部8は、前記グリップ部8を形成せしめる内側部位に、すべり止め用の凹部14が形成されている。
【0044】
本発明は、さらに前記グリップ部8の外周面部9の上方部11から下方部12にかけて、平行状の平面部13、13aが形成せしめられている。この平面部13、13aにはスパナ(図示なし)を嵌め込むことができる。
【0045】
図において、Bはワークであり以下の構成からなっている。
【0046】
前記ワークBには、上面部15に穿設せしめられたねじ孔が所定間隔おきに複数形成せしめられている。
【0047】
15aは前記ねじ孔16を構成する雌ネジである。
【0048】
17は前記ワークBのねじ孔16の開口部に形成せしめられたざぐりである。
【0049】
17aは前記ざぐり17を形成せしめる前記雌ネジ15aの上方部より前記ワークBの上面部15に向って口径が漸次大きくなって形成せしめられているテーパ部である。
【0050】
図においてCは、ねじ孔16の軸心の位置を計測せしめるノギスであり以下の構成からなっている。
【0051】
18は前記ノギスCを構成するジヨウであり、19は同様に前記ノギスCを構成するクチバシである。本発明において使用されるノギスCは特に限定しない。
【0052】
図においてDは、ねじ孔16の軸心の位置を計測せしめるマイクロメータであり以下の構成からなっている。
【0053】
20は前記マイクロメータDを構成するアンビル、21は同様に前記マイクロメータDを構成するスピンドルである。
【0054】
<ワークBに穿設のねじ孔16に螺入したピンゲージ部1の下方部2に形成のR面取り加工を施したR面部2aとざぐり17のテーパ部17aとの当接について。>
前記ワークBに穿設のねじ孔16に本発明のねじピンゲージのねじゲージ部5が螺入すると、
図3に図示された状態となって、ざぐり17の平面状のテーパ部17aとピンゲージ部1の下方部に形成せしめられているR面部2aが、点接触よりも当接面が巾広く、且太い線状接触状態となって、本発明のねじピンゲージがぐらつくことなく、前記ねじピンゲージがワークBのねじ孔16の軸心に位置せしめられる。
【0055】
<ねじピンゲージの製法>
つぎに本発明のねじピンゲージの製法について説明する。
【0056】
第1工程として、所定の長さに形成せしめられた軸状体の鋼材(材質:合金工具鋼 SK3などの合金鋼使用)の中央部をピンゲージ部1とし、前記ピンゲージ部1の下方部2に下方にげ部3を、前記下方にげ部3の下方部4にねじゲージ部5を、前記ピンゲージ部1の上方部6に上方にげ部7を、前記上方にげ部7の上方部7aにグリップ部8を、前記ピンゲージ部1の下方部2と前記下方にげ部3との間に、R面取り加工を施したR面部2aが形成せしめられたねじピンゲージ体Aを切削加工手段である施盤を介して形成せしめる。
【0057】
第2工程として、前記第1工程にて形成せしめられたねじピンゲージ体Aに硬度を上げるための熱処理を施してやる。
【0058】
前記ねじピンゲージ体Aの熱処理について説明すると以下のとおりである。
【0059】
硬度を上げるため、焼入処理を行う。焼入れ温度800〜850℃で加熱し、後に油冷処理を行う。その結果、硬度はHRC60以上(Hv600以上)となる。
【0060】
前記の処理において発生した残留オーステナイトを、サブゼロ処理を施し、マルテンサイトに変える。
【0061】
残留オーステナイトとは、油冷処理時にマルテンサイト変態しきれず、鋼材の中に残ったオーステナイトのことである。残留オーステナイトは、時間経過と共に鋼材に体積変化を生じさせ、ねじピンゲージ体Aの性能低下の原因となる。
【0062】
サブゼロ処理について説明すると、鋼材の中の残留オーステナイトをマルテンサイトに変えるために、鋼材を0℃以下に冷やす処理のことである。サブゼロとは0℃以下を意味する。サブゼロ処理により経年変化防止と耐磨耗性向上の効果が得られる。
【0063】
サブゼロ処理法としては液体窒素を用いておおよそ−75℃で急冷却する方法が一般的である。
【0064】
サブゼロ処理後、焼戻しを行い熱処理変形を小さくする。温度は120℃で時間は3Hである。
【0065】
さらに人工時効処理を行い、不安定組織や応力除去を行う。時効温度は120℃で時間は3Hである。
【0066】
以上、熱処理とは焼入処理と経年変化を除去するための処理を施すものである。
【0067】
第3工程として、前記第2工程によって形成のねじピンゲージ体Aに黒染め加工処理を施してやる。例えば化学薬品により表面に皮膜処理と防錆処理を施してやる。この加工も従来の処理方法とする。
【0068】
第4工程として、前記第3工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体Aを構成する前記ピンゲージ部1に研磨砥石を使用して研磨加工処理を施してやる。
【0069】
第5工程として、前記第4工程によって加工処理が施されたねじピンゲージ体Aのねじゲージ部5に研磨加工処理を施してやる。
【0070】
例えばねじゲージ部5の研磨専用の研削盤を使用して研磨する。
【0071】
第6工程として、ピンゲージ部1とねじゲージ部5の精度測定処理を施してやる。例えば特許5846514号の三針ゲージを使用してねじ径の有効径を測定するものである。
【0072】
第7工程として、前記第6工程によって合格せしめられたねじピンゲージ体Aにマーキング加工処理を施してやる。
【0073】
この処理は、レーザーマーキング処理を施して、前記グリップ部8の平行状の平面部13、13aの何れか一方の平面部にマーク、品番等をマーキングする。
【0074】
第8工程として、前記第7工程によってマーキング加工処理が施されたねじゲージ部5に防錆加工処理を施してやる。
【0075】
前記防錆加工処理としては、防錆油を塗布する。
【0076】
さらに、前記第1工程において、グリップ部8が、前記グリップ部8の外周面部9にローレット10が形成せしめられていると共に、前記グリップ部8に対向状にして、且平行状の平面部13、13aを形成せしめる加工処理を施すものである。
【0077】
<ねじピンゲージのねじ孔位置計測方法>
本発明のねじピンゲージのねじ孔位置計測方法について説明すると以下のとおりである。
【0078】
ねじピンゲージを形成せしめるねじゲージ部5を、ワークBに穿設のねじ孔16に螺入せしめて、前記ピンゲージを構成するピンゲージ部1の下方部2に形成するR面部2aが、前記ワークBに穿設のねじ孔16の上方部に形成するざぐり17のテーパ部17aと当接するまで螺入し締付けた後、2本の前記ねじピンゲージを構成するピンゲージ部1の外側方に、計測器を当て前記ワークBのねじ孔16の位置を計測せしめる。
【0079】
前記計測器は、ノギスCもしくはマイクロメータDであって、限定しない。
【0080】
Eは従来使用されていたねじピンゲージであり以下の構成からなっている。1aはねじピンゲージEのピンゲージ部、2bはテーパ部、5aはねじゲージ部、7bはにげ部である。
【0081】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0082】
A ねじピンゲージ体
B ワーク
C ノギス
D マイクロメータ
E ねじピンゲージ
1 ピンゲージ部
1a ピンゲージ部
2 下方部
2a R面部
2b テーパ部
3 下方にげ部
4 下方部
5 ねじゲージ部
5a ねじゲージ部
6 上方部
7 上方にげ部
7a 上方部
7b にげ部
8 グリップ部
9 外周面部
10 ローレット
11 上方部
12 下方部
13 平面部
13a 平面部
14 凹部
15 上面部
15a 雌ネジ
16 ねじ孔
17 ざぐり
17a テーパ部
18 ジヨウ
19 クチバシ
20 アンビル
21 スピンドル
【要約】 (修正有)
【課題】ワーク側に穿設しためねじ孔の軸心位置を精度よく、簡単且迅速に計測するねじピンゲージ等を提供する。
【解決手段】軸状体の中央部に形成せしめられているピンゲージ部1の下方部2に、下方にげ部3と、前記下方にげ部3の下方部に、ねじゲージ部5が形成せしめられ、且前記ピンゲージ部1の上方部6に、上方にげ部7と、前記上方にげ部7の上方部7aにグリップ部8が形成せしめられ、前記ピンゲージ部1の下方部2にして、且前記ピンゲージ部1の下方部2と前記下方にげ部3との間に、R面取り加工を施したR面部2aが形成せしめられている。
【選択図】
図3