(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592859
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】吊りボルト挟持固定金具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20191010BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20191010BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
E04B9/18 B
F16B1/00 A
F16B2/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-137900(P2015-137900)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20230(P2017-20230A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】
村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−144500(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3180375(JP,U)
【文献】
実開昭57−114011(JP,U)
【文献】
特開昭63−233145(JP,A)
【文献】
米国特許第04723749(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00−9/36
E04B 1/38−1/61
F16B 1/00
F16B 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼に、吊りボルトを垂下固定する吊りボルト取付金具を耐震補強し、または、吊りボルトを自ら垂下固定可能な吊りボルト挟持固定金具であって、
該吊りボルト挟持固定金具は、側面視略L字状に形成され、C型鋼の側面部に面当てしてビス固定される側面固定部と、該側面固定部からC型鋼の下面部側に折曲され、吊りボルトを外嵌挿入して挟持固定する吊りボルト挟持部とを一体に備え、
該吊りボルト挟持部は、吊りボルトへの嵌挿幅を存して対向離間する一対の挟持片を有し、該挟持片間で吊りボルトを両側から面接挟持すべく形成されると共に、
前記側面固定部をC型鋼の側面部にビス固定した状態で、前記挟持片同士を締結ボルトを介して吊りボルトに締め付け圧接することで挟持固定可能に構成されていることを特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【請求項2】
請求項1において、躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼の開口側に配設されて、吊りボルトを垂下固定するための吊りボルト取付金具を耐震補強するに、前記吊りボルト挟持部を、垂下固定された吊りボルトに外嵌挿入し、前記側面固定部をC型鋼の側面部にビス固定した状態で、前記吊りボルト取付金具の下面部に当接させた状態で支持受けすることにより耐震補強すべく構成してあることを特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【請求項3】
請求項1において、前記吊りボルト挟持部は、その挟持片間に吊りボルトを外嵌挿入した状態で、吊りボルトを、挟持片の上面側と下面側にそれぞれ螺入した一対の締結ナットにより締め付け固定することで、C型鋼に吊りボルトを垂下固定すべく構成されていることを特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記吊りボルト挟持部は、その挟持片間に吊りボルトを外嵌挿入した状態で、挟持片同士を締結ボルトを介して吊りボルトに締め付け圧接せしめて挟持固定されること特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、前記側面固定部は、前記挟持片と同幅の間隔をもって対向離間する一対の側面固定片を備えて形成されると共に、前記挟持片同士を、C型鋼の開口側となる先端側で連続する板材により平面視コ字状に折曲されて一体形成せしめたことを特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、前記挟持片のそれぞれには、締結ボルトを挿通して螺入固定するための複数のビス孔が設けられていること特徴とする吊りボルト挟持固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼やチャンネル材に、吊りボルトを垂下固定する吊りボルト取付金具を耐震補強し、或いは、吊りボルトを自ら垂下固定可能な吊りボルト挟持固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、在来天井における吊りボルトは、躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼に、吊りボルト取付金具を介して垂下固定される。吊りボルト取付金具としては、その施工性が優れていることから、側面視略L字状またはコ字状に形成され、C型鋼の開口側リップ片または溝内下面部に掛止される掛止部と、C型鋼の下面部側で吊りボルトを螺着する垂下取付部とを備えた、所謂掛止型やクランプ型のものが好んで採用されている。リップ片へ掛止されるものとしては特許文献1(
図3(b)参照)や特許文献2(
図1参照)のものが、また、溝内下面部に掛止されるものとしては特許文献3(
図2参照)のものなどが知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されたものでは、C型鋼の下側リップ部(3 a)に下向きコ字状の係嵌部(14)を掛止し、横板片(5b)に吊りボルトを螺入締め付けしてその先端をC型鋼の下面部に当接させ、吊りボルト先端と係嵌部(14)間で点接触状に挟持したクランプ状態で固定する構造となっているため、地震等による揺れ、特に、ねじれを含む軸線回り方向に傾動する振動負荷を受けると、吊りボルト先端が当接面と離間して、横板片(5b)が拡開変形してしまいガタツキや位置ズレが生じ、甚だしくは、天井下地全体の揺れも加わって係嵌部(14)が下側リップ部(3 a)から外れてしまい吊りボルト用ハンガー(5)が抜け落ちてしまうという危惧があり、極めて耐震強度の性能が劣るという構造上の欠点がある。
【0004】
そこで、特許文献2に開示されたもののように、L字状に折曲形成された立板部(3)と下板部(4)に補強リブ(12)を設けると共に、係止部(2)をリップ部(10c)にビス止めし、かつ、上板部(6)をC型鋼の下面部にビス固定することで吊元金具(1)自体を補強して耐震強度を向上させているが、地震等により、ねじれを含む軸線回り方向に傾動する振動負荷を受けると、係止部(2)と立板部(3)がビス固定されているので、その変形と吊元金具(1)自体の外れが防止されるものの、吊りボルト先端が当接面と離間して、下板部(4)が拡開変形してガタツキや位置ズレが生じてしまう危惧がある。さらに、取付け部位がC型鋼の開口側リップ部と下面部の2面だけなので、当該2面部に集中負荷が加わりC型鋼自体を変形させてしまう危惧があり所望の耐震性能を得ることができないという問題がある。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されたものもでは、吊下金具(1)の吊りボルトの螺入する底面部(5)をL字状からコ字状に形状変更して、水平支持片(8)をC型鋼の下面部にビス固定することで、底面部(5)の拡開防止を図っているものの、吊りボルト先端と上面部(6)に螺入した締結ボルト(19)の先端とでC型鋼の下面部間を挟み込んで掛止挟持する点接触状態でクランプ固定する構造となっているため、野縁受け、野縁、振れ止めなどの各種下地材や天井パネルといった天井下地を構成する天井全体の荷重を、C型鋼の開口側下面部の1面だけで支持することとなり、地震等による振動負荷がこの下面部のみに集中して荷重を受ける結果となり、C型鋼自体の変形をより増長させてしまう危惧があり、耐震に対する固定強度上の問題を有し、所望の耐震性能を得ることができない。
【0006】
しかも、これらのものは何れも、横板片(5b)、下板部(4)、底面部(5)に穿設したナット孔に、吊りボルトを螺入することで垂下固定するようになっているため、吊りボルトはナット孔に対して所定の螺合公差をもって螺着されており、地震等による揺れを受けると螺合ブレが生じ、ナット孔を中心に吊りボルトの先端がC型鋼の下面部に当接された状態であっても滑りを生じ、特に勾配屋根や勾配天井においては滑り現象が顕著なものとなり、吊りボルト自体のガタツキや湾曲変形を誘発し、C型鋼自体の変形を増長させてしまう要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−097250号公報
【特許文献2】特開2014−181459号公報
【特許文献3】特開2015−031004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、吊りボルトを垂下固定するにあたり、従来の下面部に穿設したナット孔に所定の螺合公差をもって吊りボルトを螺入する方式によらず、吊りボルトの両側を挟持片間に所定の面域幅をもって挟み込み、締結ボルトを介して強固に締め付け圧接させて挟持できるようにし、その垂下固定部位の取付け剛性強度を高めて補強することで、地震等による揺れを受けた際の吊りボルト自体のガタツキや湾曲変形を防止することができると共に、その様な螺入方式が採用され、かつ、C型鋼の開口側へ設けられた吊りボルト取付金具に対して、吊りボルト挟持部によってその下面部を当接支持して取付金具自体の変形や、C型鋼への集中負荷を分散してC型鋼自体を変形を防止して耐震補強できるようにし、或いは、吊りボルト挟持部の上面側と下面側にそれぞれ螺入した締結ナットにより締め付けして吊りボルトを垂下固定することのできる吊りボルト挟持固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の吊りボルト挟持固定金具は、躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼に、吊りボルトを垂下固定する吊りボルト取付金具を耐震補強し、または、吊りボルトを自ら垂下固定可能な吊りボルト挟持固定金具であって、該吊りボルト挟持固定金具は、側面視略L字状に形成され、C型鋼の側面部に面当てしてビス固定される側面固定部と、該側面固定部からC型鋼の下面部側に折曲され、吊りボルトを外嵌挿入して挟持固定する吊りボルト挟持部とを一体に備え、該吊りボルト挟持部は、吊りボルトへの嵌挿幅を存して対向離間する一対の挟持片を有し、該挟持片間で吊りボルトを両側から面接挟持すべく形成されると共に、前記側面固定部をC型鋼の側面部にビス固定した状態で、前記挟持片同士を締結ボルトを介して吊りボルトに締め付け圧接することで挟持固定可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のように構成したことにより、吊りボルトを垂下固定するにあたり、従来の下面部に穿設したナット孔に所定の螺合公差をもって吊りボルトを螺入する方式によらず、吊りボルトの両側を挟持片間に所定の面域幅をもって挟み込み、C型鋼の非開口側となる側面部に側面固定部をビス固定した状態で、締結ボルトを介して強固に締め付け圧接させて挟持固定することが可能となり、締結ボルトを吊りボルトの前後2個所に設けることにより、一対の挟持片と共に吊りボルトの外周面を覆う状態で、これらが一体となった構造によりその垂下固定部位の取付け剛性強度を高めて補強し、吊りボルトへの振動負荷を挟持片の上下面域幅をもって受け止めて、耐震固定強度の性能を向上させることができるだけでなく、吊りボルトの挟持位置も吊りボルト挟持部の長さ方向に位置決め部位を変更して挟持することができる。
その結果、地震等による揺れを受けた際に、吊りボルト自体のガタツキや湾曲変形、位置ズレを防止することができると共に、その様な吊りボルトの螺入方式が採用され、かつ、C型鋼の開口側へ設けられた吊りボルト取付金具に対して、吊りボルト挟持部が、吊りボルトが垂下固定される下面側を当接支持して拡開を規制することができる耐震補強部材として機能し、吊りボルトのナット孔を中心とした螺合ブレを防止できるたけでなく、取付金具自体の変形が防止され取付け強度を維持し、C型鋼のリップ片側に加わる集中負荷を分散してC型鋼自体の変形を防止することができ、しかも、吊りボルトの垂下位置が異なっていても挟持片間の任意位置で挟持することができ、種々の取付金具形状のものに対応することができる。さらに、吊りボルト取付金具を用いることなく、吊りボルト挟持部の上面側と下面側にそれぞれ螺入した締結ナットにより締め付けして自ら吊りボルトを垂下固定することができると共に、上下一対の締結ナットを所定の面域幅をもって対向離間した状態で吊りボルト挟持部に強固に締め付け固定することができ、振動による締結ナットの緩みや、C型鋼の下面部に当接された吊りボルトの先端が滑りを生じることもなく、もって、吊りボルト取付金具と共に用い、或いは、自ら吊りボルトを垂下固定する場合の何れの使用であっても、吊りボルトの組付け剛性強度が高められ、垂下固定状態を長期に亘って好適に維持して、天井全体の重量を強固に支えて良好な状態を恒久的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る吊りボルト挟持固定金具を用いた天井構造の躯体天井部とその天井下地の概略側面図であり、(A)は吊りボルト取付金具と共に用いた状態図、(B)は自ら吊りボルトを垂下固定した状態図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吊りボルト挟持固定金具であって、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る吊りボルト挟持固定金具の斜視図である。
【
図4】吊りボルト挟持固定金具を吊りボルト取付金具の耐震補強部材として使用した状態を示す、(A)は正面図、(B)は一部破断側面図である。
【
図5】吊りボルト挟持固定金具を用いて吊りボルトを垂下固定した状態を示す、(A)は正面図、(B)は一部破断側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する吊りボルト挟持固定金具を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る吊りボルト挟持固定金具を用いた天井構造の躯体天井部とその天井下地の概略側面図であり、(A)は吊りボルト取付金具と共に用いた状態図、(B)は自ら吊りボルトを垂下固定した状態図である。この図に示す躯体天井部1は、母屋材としてのC型鋼12に棟木から軒桁に架け渡して取り付けられる垂木としてのC型鋼11とにより構築され、天井下地には、これらC型鋼11、12に、それぞれ所定の間隔を存して取り付けられた吊りボルト取付金具2、吊りボルト挟持固定金具6にその上端部を螺入して垂下固定される複数の吊りボルト3…と、複数の吊りボルト3間に野縁受けハンガー41を介して吊りボルト3の下端部に支持される野縁受け4(天井下地材)と、振れ止め固定金具51を介して野縁受け4の上面側に直交させて配設される耐震用の補強下地材5(天井下地材)が含まれている。なお、特許文献1に開示されたもののように、躯体天井部1として天井スラブや、天井下地材としてチャンネル材に加えC型鋼も用いられる。
【0013】
野縁受けハンガー41は、側面視略し字状に形成され、例えば、吊りボルト3の下端部に上下位置調整可能に連結され、野縁受け4は、野縁受けハンガー41によって支持されると共に、吊りボルト3に対する野縁受けハンガー41の位置変更によって、上下位置が調整される。
野縁受け4は、側方が開口する断面コ字状のチャンネル材からなり、躯体天井部1に所定の間隔を存して並列状に割り付けされる。このとき、野縁受け4は、図示しない躯体壁部に当接しない短めの長さに予め加工され、その両端部が野縁受け固定金具を介して躯体壁部に固定される。
【0014】
図2の(A)〜(D)は、それぞれ母屋材としてのC型鋼12に取り付けられる吊りボルト挟持固定金具の正面図、左側面図、右側面図、平面図であり、
図3は、
図2に示す吊りボルト挟持固定金具の斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態の吊りボルト挟持固定金具6は、板厚が約2mm程度でC型鋼11、12よりも肉厚または略同一の厚板材で形成され、C型鋼12の側面部に面当てされてビス固定される側面固定部61と、側面固定部61からC型鋼12の下面部側に向けて先端が下面部から突出する長さを有して折曲され、吊りボルト3を外嵌挿入して挟持固定する吊りボルト挟持部62とを一体に備えて形成される。
【0015】
側面固定部61は、C型鋼12の側面部に面当てされる側面固定片611と、側面固定片611からL字状に折曲される補強片612とを有して、側面固定片611、611(補強片612、612)同士が所定間隔、即ち、吊りボルト3の外径と略同幅の間隔を存して嵌挿可能に対向離間して一対に構成される。側面固定片611には、C型鋼12の側面部にビス固定するためのビス孔614…が、側面固定片611の上部に1カ所、下部に3カ所となる位置に複数穿設されており、吊りボルト挟持部62のC型鋼12の下面部に対する離間位置を上下幅調整してビス固定できると共に、下端のビス孔614は自ら吊りボルト3を垂下固定する際の位置決めボルト65を螺入できるようになっている。補強片612は、側面固定片611からL字状に立上り折曲され、更に、この立上り片から外方に向けてL字状に折曲されたリブ片613を備えて形成されている。
【0016】
吊りボルト挟持部62は、吊りボルト3の外周面に所定面域をもって面接する挟持片621と、挟持片621の外周側(下部側)にL字状に折曲されるリブ片622とを有して、挟持片621、621同士が所定間隔を存して対向離間するよう一対に構成される。挟持片621、621同士は、その先端側で平面視コ字状に折曲されて一体形成され、側面固定部61と同様に、吊りボルト3への嵌挿可能な吊りボルト3の外径と略同幅の嵌挿幅を存して対向離間して設けられ、挟持片621、621には、ビス孔623が所定間隔を存して複数穿設されている。このビス孔623は、対向する一方の側が挿通孔として、他方の側が締結ボルト63のタッピング用螺入孔としてそれぞれ穿設されている。吊りボルト3は、吊りボルト挟持部62の長さ幅内でスライド移動可能であり、調整セットされた任意位置で、その近傍となる前後2カ所のビス孔623、623に螺入された締結ボルト63、63を介して挟持片621、621同士を吊りボルト3の外周面に締め付け圧接(圧着)することにより確りと挟持固定できるようになっている。
【0017】
つまり、側面固定部61と吊りボルト挟持部62は、挟持片621、621同士をその前面側(C型鋼の開口側)で連続する板材をプレス成型により、挟持片621と補強片612を、補強用のリブ片622とリブ片613をそれぞれ面一として、リブ片622とリブ片613とをコーナー部が円弧状になるよう絞り加工されて一体形成される。なお、リブ片622とリブ片613とを絞り加工によらず折曲形成しても良く、また、挟持片621、621同士を連結せずに、補強片612、同士をその上端側で連続させ、或いは、リブ片613を設けることなくその背面側(C型鋼の側面部側)で連続させて、平面視コ字状として、側面固定部61全体をハット型に形成しても良い。要するに、吊りボルト取付金具2を介して垂下固定された吊りボルト3に対して、挟持片621、621間に嵌挿させることができ、吊りボルト3を挟持片621、621間で両側から面接挟持することができるものであれば良い。
【0018】
次に、本発明の実施態様に係る吊りボルト挟持固定金具6を、吊りボルト取付金具2の耐震補強部材として使用した場合と、自ら吊りボルト3を垂下固定する取付け金具として使用した場合の取付手順について、
図4、
図5に基づいてそれぞれ説明する。
先ず、吊りボルト挟持固定金具6を、吊りボルト取付金具2の耐震補強部材として使用した場合において、
図4(A)は取り付け状態を示す正面図、
図4(B)は一部破断側面図である。これら図に示すように、吊りボルト取付金具2は、C型鋼12の開口側となるリップ片に掛止される掛止部21と、C型鋼12の下面部側で吊りボルト3を垂下する吊りボルト螺合部22とを備えて、側面視略L字状またはコ字状に形成され、吊りボルト3は、吊りボルト螺合部22にバーリングによるタップ穴加工されたナット孔23に螺入されて、その先端をC型鋼12の下面部に当接させた状態で垂下固定される、公知の金具である。この取り付け状態において、吊りボルト挟持固定金具6を用いる場合には、側面固定片611、611間を吊りボルト3に嵌挿させた状態から、スライド移動させて挟持片621、621間に嵌挿し、吊りボルト挟持部62を吊りボルト螺合部22の下面部に当接させた状態で、側面固定片611、611をC型鋼12の非開口側となる側面部に面当てしてセットする。
【0019】
このセット状態で、ビス孔614を介してタッピングビス64により側面固定片611をC型鋼12にビス固定し、次いで、挟持片621、621間に位置する吊りボルト3の近しい前後2カ所のビス孔623、623を選択して、締結ボルト63、63の締め付け操作により挟持片621、621同士を吊りボルト3の外周面に圧接させて挟持固定すれば取付けが完了し、取付け作業を容易かつ短時間で行うことができる。
つまり、C型鋼12の開口側へ設けられた吊りボルト取付金具2に対して、吊りボルト挟持部62が、吊りボルト3が垂下固定される吊りボルト螺合部22の下面側を当接支持して拡開を規制することができる耐震補強部材として機能し、吊りボルト3のナット孔23を中心とした螺合ブレを防止できるたけでなく、取付金具自体の変形が防止され取付け強度を維持し、C型鋼12のリップ片側に加わる集中負荷を分散してC型鋼自体の変形を防止することができ、しかも、吊りボルト3の垂下位置が異なっていても、吊りボルト挟持部62の長手方向の任意位置に配設させて挟持片621、621間で挟持することができ、種々形状の取付金具のものに対応することができる。なお、一対の挟持片621、621は同形である必要はなく、例えば、側面固定片611と挟持片621を一対ではなく片面だけを使用して、吊りボルト3の外周面に被嵌できるU字状部とその両側にツバ部を備えた平面視ハット型(Ω型)の金具を採用して、ツバ部を挟持片621にビス固定して一対のものとしても良く、要はナット孔23の螺合ブレを防止できる態様であれば良い。
【0020】
一方、吊りボルト挟持固定金具6を自ら吊りボルト3を垂下固定する取付け金具として使用した場合において、
図5(A)は取り付け状態を示す正面図、
図5(B)は一部破断側面図である。これら図に示すように、先ず、予め、吊りボルト3に吊りボルト挟持部62のリブ片622に当接させる締結ナット31を螺入しておくと共に、側面固定片611に穿設された最下部のビス孔614に位置決めボルト65を螺入しておく。次いで、位置決めボルト65をC型鋼12の下面部に当接させて、側面固定片611、611をC型鋼12の非開口側となる側面部に面当てし、所定のセット位置に位置決めした状態で、最上部と中間のビス孔614を介してタッピングビス64により側面固定片611、611をビス固定する。しかる後、挟持片621、621間にその下側から吊りボルト3を嵌挿して、吊りボルト挟持部62の上側に締結ナット31を螺入し、任意の垂下位置でその螺入操作により吊りボルト3の先端をC型鋼12の下面部に当接させ、上側の締結ナット31を挟持片621に対してきつく締め付けした後、下側の締結ナット31をリブ片622に対してきつく締め付けることで、吊りボルト3を垂下固定する。
【0021】
この状態で、挟持片621、621間に位置する吊りボルト3の近しい前後2カ所のビス孔623、623を選択して、締結ボルト63、63の締め付け操作により挟持片621、621同士を吊りボルト3の外周面に圧接させて挟持固定すれば吊りボルト3の垂下固定が完了し、取付け作業を容易かつ短時間で行うことができる。したがって、上下一対の締結ナット31、31を、挟持片621の幅とリブ片622の厚さ幅とによる面域幅をもって対向離間する吊りボルト挟持部62を挟んで強固に締め付け固定することができ、スライド調整により位置決めされた吊りボルト3であっても、振動による締結ナット31の緩みや、C型鋼12の下面部に当接された吊りボルト3の先端が滑りを生じたり、垂下位置が位置ズレすることもない。なお、吊りボルト3は上下一対の締結ナット31、31にて確りと固定されているので、締結ボルト63の螺入を不要としても良い。
【0022】
この様に取付けすると、吊りボルト取付金具2と共に用い、或いは、自ら吊りボルト3を垂下固定する場合の何れの使用であっても、吊りボルト3の両側を挟持片621、621間に所定の面域幅をもって挟み込み、C型鋼12の側面部に側面固定部61をビス固定した状態で、吊りボルト3の前後2個所で締結ボルト63を介して強固に締め付け圧接させて挟持固定されるので、一対の挟持片621、621と共に吊りボルト3の外周面を覆う状態で、これらが一体となった構造によりその垂下固定部位の取付け剛性強度を高めて補強し、吊りボルト3への振動負荷を挟持片621、621の上下面域幅をもって受け止めて、耐震固定強度の性能を向上させることができるだけでなく、吊りボルト3の挟持位置も吊りボルト挟持部62の長さ方向に位置決め部位を変更して挟持することができる。しかも、地震等による揺れを受けた際に、吊りボルト3自体のガタツキや湾曲変形、位置ズレを防止することができると共に、吊りボルト3の組付け剛性強度が高められ、垂下固定状態を長期に亘って好適に維持して、天井全体の重量を強固に支えて良好な状態を恒久的に保持することができる。
【0023】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、躯体天井部1におおけるC型鋼12に、吊りボルト挟持固定金具6を用いて吊りボルト取付金具2を耐震補強し、或いは、自ら吊りボルト3を垂下固定するのであるが、本発明にかかる吊りボルト挟持固定金具6は、側面視略L字状に形成され、C型鋼12の側面部に面当てしてビス固定される側面固定部61と、該側面固定部61からC型鋼12の下面部側に折曲され、吊りボルト3を外嵌挿入して挟持固定する吊りボルト挟持部62とを一体に備え、吊りボルト挟持部62は、吊りボルト3への嵌挿幅を存して対向離間する一対の挟持片621、621を有し、該挟持片621、621間で吊りボルト3を両側から面接挟持すべく形成されると共に、側面固定部61をC型鋼12の側面部にビス固定した状態で、挟持片621、621同士を締結ボルト63を介して吊りボルト3に締め付け圧接することで挟持固定可能に構成されている。
【0024】
この様に構成すると、吊りボルト3を垂下固定するにあたり、従来の下面部に穿設したナット孔23に所定の螺合公差をもって吊りボルト3を螺入する方式によらず、吊りボルト3の両側を挟持片621、621間に所定の面域幅をもって挟み込み、C型鋼12の非開口側となる側面部に側面固定部61をビス固定した状態で、締結ボルト63を介して強固に締め付け圧接させて挟持固定することが可能となり、締結ボルト63を吊りボルト3の前後2個所に設けることにより、一対の挟持片621、621と共に吊りボルト3の外周面を覆う状態で、これらが一体となった構造によりその垂下固定部位の取付け剛性強度を高めて補強し、吊りボルト3への振動負荷を挟持片の上下面域幅をもって受け止めて、耐震固定強度の性能を向上させることができるだけでなく、吊りボルト3の挟持位置も吊りボルト挟持部62の長さ方向に位置決め部位を変更して挟持することができる。
【0025】
その結果、地震等による揺れを受けた際に、吊りボルト3自体のガタツキや湾曲変形、位置ズレを防止することができると共に、その様な吊りボルト3の螺入方式が採用され、かつ、C型鋼12の開口側へ設けられた吊りボルト取付金具2に対して、吊りボルト挟持部62が、吊りボルト3が垂下固定される吊りボルト螺合部22の下面側を当接支持して拡開を規制することができる耐震補強部材として機能し、吊りボルト3のナット孔を中心とした螺合ブレを防止できるたけでなく、取付金具2自体の変形が防止され取付け強度を維持し、C型鋼12のリップ片側に加わる集中負荷を分散してC型鋼自体の変形を防止することができ、しかも、吊りボルト3の垂下位置が異なっていても挟持片621、621間の任意位置で挟持することができ、種々の取付金具形状のものに対応することができる。さらに、吊りボルト取付金具2を用いることなく、吊りボルト挟持部62の上面側と下面側にそれぞれ螺入した締結ナット31、31により締め付けして自ら吊りボルト3を垂下固定することができると共に、上下一対の締結ナット31、31を所定の面域幅をもって対向離間した状態で吊りボルト挟持部62に強固に締め付け固定することができ、振動による締結ナット31の緩みや、C型鋼12の下面部に当接された吊りボルト3の先端が滑りを生じることもなく、もって、吊りボルト取付金具2と共に用い、或いは、自ら吊りボルト3を垂下固定する場合の何れの使用であっても、吊りボルト3の組付け剛性強度が高められ、垂下固定状態を長期に亘って好適に維持して、天井全体の重量を強固に支えて良好な状態を恒久的に保持することができる。
【0026】
また、躯体天井部1や天井下地を構成するC型鋼12の開口側に配設されて、吊りボルト3を垂下固定するための吊りボルト取付金具2を耐震補強するに、吊りボルト挟持部62を、垂下固定された吊りボルト3に外嵌挿入し、側面固定部61をC型鋼12の側面部にビス固定した状態で、吊りボルト取付金具2(吊りボルト螺合部22)の下面部に当接
させ
た状態で支持受けすること
により耐震補強すべく構成してある。
このため、C型鋼12の開口側へ設けられた吊りボルト取付金具2に対して、吊りボルト挟持部62が、吊りボルト3が垂下固定される吊りボルト螺合部22の下面側を当接支持して拡開を規制することができる耐震補強部材として機能し、吊りボルト3のナット孔23を中心とした螺合ブレを防止できるたけでなく、吊りボルト取付金具2自体の変形が防止されその取付け強度を維持し、C型鋼12のリップ片側に加わる集中負荷を分散してC型鋼自体の変形を防止することができ、しかも、吊りボルト3の垂下位置が異なっていても、吊りボルト挟持部62の長手方向の任意位置に配設させて挟持片621、621間で挟持することができ、種々の金具形状のものに対応することができる。
【0027】
また、吊りボルト挟持部62は、その挟持片621、621間に吊りボルト3を外嵌挿入した状態で、吊りボルト3を、挟持片621、621の上面側と下面側にそれぞれ螺入した一対の締結ナット31、31により締め付け固定することで、C型鋼12に吊りボルト3を垂下固定すべく構成されているので、上下一対の締結ナット31、31を、挟持片621の幅とリブ片622の厚さ幅とによる面域幅をもって対向離間する吊りボルト挟持部62を挟んで強固に締め付け固定することができ、吊りボルト挟持部62の幅内でスライド調整して位置決めされた吊りボルト3であっても、振動による締結ナット31の緩みや、C型鋼12の下面部に当接された吊りボルト3の先端が滑りを生じたり、勾配屋根や勾配天井においても吊りボルト3自体のガタツキや湾曲変形、位置ズレを生じたりすることもない。
【0028】
その結果、地震等により、野縁受け、野縁、振れ止めなどの各種下地材や天井パネルといった天井下地を構成する天井全体の荷重がねじれを含む軸線回り方向、特にC型鋼12の非開口側(側面部)方向に傾動する振動負荷を受けた場合であっても、吊りボルト3の先端がC型鋼12の下面部に当接された状態が離間することなく強固に維持され、その当接機能と共に、挟持片621と補強片612、および補強用のリブ片622とリブ片613が、それぞれ連続するプレス成型により一体形成され、その剛性強度が高められた金具6自体の補強構造により、吊りボルト挟持部62の拡開や変形が防止され、吊りボルト3の垂下固定状態を長期に亘って好適に維持して、天井全体の重量を強固に支えて良好な状態を恒久的に保持することができる。
【0029】
また、吊りボルト挟持部62は、その挟持片621、621間に吊りボルト3を外嵌挿入した状態で、挟持片621、621同士を締結ボルト63を介して吊りボルト3に締め付け圧接せしめて挟持固定されるので、締結ボルト63を吊りボルト3の前後2個所に設けることにより、一対の挟持片621、621と共に吊りボルト3の外周面を覆う状態で、これらが一体となった構造によりその垂下固定部位の取付け剛性強度を高めて補強し、吊りボルト3への振動負荷を挟持片の上下面域幅をもって受け止めて、耐震固定強度の性能を向上させることができる。
【0030】
また、側面固定部61は、挟持片621、621と同幅の間隔をもって対向離間する一対の側面固定片611、611を備えて形成されると共に、挟持片621、621同士を、
C型鋼12の開口側となる前面側
(先端側)で連続する板材により
平面視コ字状に折曲されて一体形成せしめているので、吊りボルト取付金具2に垂下固定された吊りボルト3に対して吊りボルト挟持固定金具6をセットする際、側面固定部61を嵌挿させた状態から、スライド移動して挟持片621、621間に嵌挿させることができ、吊りボルト3を挟持片621、621間で両側から面接挟持することができるだけでなく、締結ボルト63と共にその前面側(C型鋼
12の開口側)となる挟持片621、621同士の拡開を規制する構成強度を高めることができる。
【0031】
また、挟持片621、621のそれぞれには、締結ボルト63を挿通して螺入固定するための複数のビス孔623…が設けられているので、挟持片621、621間内で嵌挿された吊りボルト3をスライド移動して垂下位置を位置決めした状態であっても、挟持片621、621間に位置する吊りボルト3の近しい前後2カ所のビス孔623、623を選択して、締結ボルト63、63の締め付け操作により挟持片621、621同士を吊りボルト3の外周面に圧接させて挟持固定することができ、挟持片621、621と締結ボルト63、63による一体化構造によって、吊りボルト3が、振動による締結ナット31の緩みや、C型鋼12の下面部に当接された吊りボルト3の先端が滑りを生じたり、垂下位置が位置ズレすることもない。
【符号の説明】
【0032】
1 躯体天井部
11 垂木用C型鋼
12 母屋用C型鋼
2 吊りボルト取付金具
21 掛止部
22 吊りボルト螺合部
23 ナット孔
3 吊りボルト
31 締結ナット
4 野縁受け
41 野縁受けハンガー
5 補強下地材
51 振れ止め固定金具
6 吊りボルト挟持固定金具
61 側面固定部
611 側面固定片
612 補強片
613 リブ片
614 ビス孔
62 吊りボルト挟持部
621 挟持片
622 リブ片
623 ビス孔
63 締結ボルト
64 タッピングビス
65 位置決めボルト