特許第6592890号(P6592890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592890封止用樹脂組成物、半導体装置、および構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592890
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、半導体装置、および構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20191010BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08G59/24
   H01L23/30 R
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-254553(P2014-254553)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-113565(P2016-113565A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】伊東 昌治
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−108301(JP,A)
【文献】 特開2014−210911(JP,A)
【文献】 特開2003−238768(JP,A)
【文献】 特開平2−86149(JP,A)
【文献】 特開2005−239792(JP,A)
【文献】 特開昭62−227955(JP,A)
【文献】 特開2006−241284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L63
C08G59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、無機充填剤(B)と、硬化剤(C)と、着色剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含む封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂(A)がビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記着色剤(D)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上5質量%以下であり、
前記酸化防止剤(E)が、1分子中にヒンダードフェノール基を2個以上有するヒンダードフェノール系化合物、およびチオエーテル系化合物から選択される一種または二種以上を含み、かつヒンダードアミン系化合物を含まないものであって、
前記酸化防止剤(E)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であり、
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、前記封止用樹脂組成物を金型にトランスファー成形し、直径50mm、厚さ3mmの前記封止用樹脂組成物の硬化物を作製し、前記硬化物に対して、175℃、2時間後硬化処理したとき、
CIE1976L表色系で規定される、後硬化処理前の前記硬化物の測色値(L、a、b)と、後硬化処理後の前記硬化物の測色値(L、a、b)との色差をΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2としたとき、
前記ΔEが5.0以下であり、
前記Lが30以上である封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物において、
後硬化処理後の前記硬化物を260℃、1分間加熱処理したとき、
CIE1976L表色系で規定される、前記加熱処理前の前記硬化物の測色値(L、a、b)と、前記加熱処理後の前記硬化物の測色値(L、a、b)との色差をΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2としたとき、
前記ΔEが8.0以下である封止用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物において、
前記硬化剤(C)がフェノールアラルキル樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上である封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物において、
粉粒体またはタブレット状である封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物において、
光半導体素子を除く半導体素子の封止に用いられる封止用樹脂組成物。
【請求項6】
基材と、
前記基材の一面上に搭載された半導体素子と、
請求項1乃至いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ前記半導体素子と、前記基材のうちの前記一面と、を封止する封止材と、
を備える半導体装置。
【請求項7】
基材と、
前記基材の一面上に搭載された複数の半導体素子と、
請求項1乃至いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ前記複数の半導体素子と、前記基材のうちの前記一面と、を封止する封止材と、
を備える構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、半導体装置、および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、例えば、基板上に搭載された半導体素子を、封止用樹脂組成物を用いて封止成形することにより形成される。このような封止用樹脂組成物として、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が用いられている。
【0003】
特許文献1(特開2011−89096号公報)には、エポキシ樹脂、硬化剤、および着色剤を必須成分とする封止用樹脂組成物に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−89096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者の検討によると、従来の技術において、黒以外の着色剤を添加させた封止用樹脂組成物を半導体素子の封止材に用いた場合、得られる半導体装置の高温保管特性が悪化してしまう場合があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
エポキシ樹脂(A)と、無機充填剤(B)と、硬化剤(C)と、着色剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含む封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂(A)がビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上であり、
前記着色剤(D)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上5質量%以下であり、
前記酸化防止剤(E)が、1分子中にヒンダードフェノール基を2個以上有するヒンダードフェノール系化合物、およびチオエーテル系化合物から選択される一種または二種以上を含み、かつヒンダードアミン系化合物を含まないものであって、
前記酸化防止剤(E)の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であり、
低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物を金型にトランスファー成形し、直径50mm、厚さ3mmの上記封止用樹脂組成物の硬化物を作製し、上記硬化物に対して、175℃、2時間後硬化処理したとき、
CIE1976L表色系で規定される、後硬化処理前の上記硬化物の測色値(L、a、b)と、後硬化処理後の上記硬化物の測色値(L、a、b)との色差をΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2としたとき、
上記ΔEが5.0以下であり、
上記Lが30以上である封止用樹脂組成物が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
基材と、
上記基材の一面上に搭載された半導体素子と、
上記封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ上記半導体素子と、上記基材のうちの上記一面と、を封止する封止材と、
を備える半導体装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
基材と、
上記基材の一面上に搭載された複数の半導体素子と、
上記封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ上記複数の半導体素子と、上記基材のうちの上記一面と、を封止する封止材と、
を備える構造体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温保管特性に優れた半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、「A以上B以下」を表す。
【0012】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、無機充填剤(B)と、硬化剤(C)と、着色剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含む。そして、低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物を金型にトランスファー成形し、直径50mm、厚さ3mmの上記封止用樹脂組成物の硬化物を作製し、上記硬化物に対して、175℃、2時間後硬化処理したとき、CIE1976L表色系で規定される、後硬化処理前の上記硬化物の測色値(L、a、b)と、後硬化処理後の上記硬化物の測色値(L、a、b)との色差をΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2としたとき、上記ΔEが5.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.0以下である。また、上記Lが30以上である。上記ΔEの下限値は特に限定されないが、例えば、0以上である。
本実施形態によれば、封止用樹脂組成物の上記ΔEを上記上限値以下とすることにより、高温保管特性に優れた半導体装置を実現することができる。
【0013】
本発明者は、黒以外の色に着色し、かつ、高温保管特性に優れた半導体装置を実現するための設計指針について鋭意検討した。その結果、上記色差ΔEがより小さい樹脂組成物ほど高温保管特性により優れる半導体装置が得られることが明らかになった。すなわち、色差ΔEという尺度が、高温保管特性に優れた半導体装置を実現するための設計指針として有効であることを見出し、本発明に到達した。
色差ΔEがより小さい樹脂組成物ほど高温保管特性により優れる半導体装置が得られる理由は必ずしも明らかではないが、色差ΔEがより小さい樹脂組成物は、樹脂組成物の高温での酸化劣化が起きにくい、バランスの良い配合になっているからだと考えられる。したがって、上記色差ΔEが上記上限値以下である本発明の封止用樹脂組成物は、高温での酸化劣化が起きにくいため、高温保管特性に優れる半導体装置を実現できると考えられる。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいて発案されたものである。
【0015】
また、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、後硬化処理後の上記硬化物を260℃、1分間加熱処理したとき、CIE1976L表色系で規定される、上記加熱処理前の上記硬化物の測色値(L、a、b)と、上記加熱処理後の上記硬化物の測色値(L、a、b)との色差をΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2としたとき、上記ΔEが8.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。上記ΔEの下限値は特に限定されないが、例えば、0以上である。
本実施形態によれば、封止用樹脂組成物の上記ΔEを上記上限値以下とすることにより、高温保管特性の向上効果をより効果的に得ることができる。
【0016】
このように、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、上記ΔEが、特定の条件を満たす構成となっている。
【0017】
上記ΔEおよび上記ΔEは、例えば、封止用樹脂組成物を構成する各成分の種類や配合割合、および封止用樹脂組成物の作製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特にエポキシ樹脂(A)、硬化剤(C)、着色剤(D)および酸化防止剤(E)の種類を適切に選択することや、封止用樹脂組成物を作製する際の熱履歴等が、上記ΔEおよび上記ΔEを制御するための因子として挙げられる。
【0018】
以下、本実施形態に係る封止用樹脂組成物、半導体装置100、および構造体102について詳細に説明する。
【0019】
まず、封止用樹脂組成物について説明する。
封止用樹脂組成物は、基材上に搭載された半導体素子を封止する封止材を形成するために用いられる。封止用樹脂組成物を用いた封止成形は、特に限定されないが、例えば、トランスファー成形法、または圧縮成形法により行うことができる。
封止用樹脂組成物は、例えば、タブレット状または粉粒体である。封止用樹脂組成物がタブレット状である場合、例えば、トランスファー成形法を用いて封止用樹脂組成物を成形することができる。また、封止用樹脂組成物が粉粒体である場合には、例えば、圧縮成形法を用いて封止用樹脂組成物を成形することができる。封止用樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
基材は、例えば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0020】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、特に限定されないが、例えば、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non−leaded Package)、SON(Small Outline Non−leaded Package)、LF−BGA(Lead Flame BGA)等が挙げられる。
また、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、近年これらのパッケージの成形に多く適用されるMAP(Mold Array Package)成形により形成される構造体にも適用できる。この場合、基材上に搭載される複数の半導体素子を、封止用樹脂組成物を用いて一括して封止することにより上記構造体が得られる。
【0021】
また、上記半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本実施形態に係る封止用樹脂組成物の封止対象となる半導体素子は、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子をいう。
【0022】
封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、無機充填剤(B)と、硬化剤(C)と、着色剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含む。そして、上記ΔEが上記上限値以下であり、かつ、上記Lが30以上である。これにより、黒以外の色に着色し、かつ、高温保管特性に優れた半導体装置を実現することができる。
【0023】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物により形成される封止材は、黒色以外の色に着色している。具体的には、低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物を金型にトランスファー成形し、直径50mm、厚さ3mmの封止用樹脂組成物の硬化物を作製したとき、上記硬化物の、CIE1976L表色系で規定される測色値Lが30以上である。
上記測色値Lが上記下限値未満の封止材は、高温保管特性が悪化する課題は生じにくい。そのため、本実施形態において、上記測色値Lが上記下限値以上であるときに、本発明の効果を効果的に得ることができる。
ここで、測色値Lが30以上80未満の場合は、彩度Cが7以上であるとき、半導体装置の高温保管特性が悪化する課題が特に生じやすいため、本発明の効果をより効果的に得ることができる。ここで、Cは{(a+(b1/2により算出される。
【0024】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、通常、非透明性の硬化物を与える樹脂組成物である。ここで、非透明性の硬化物とは、具体的には、低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物を金型にトランスファー成形し、直径50mm、厚さ3mmの封止用樹脂組成物の硬化物を作製したとき、上記硬化物の膜厚方向における波長400nmでの光線透過率が好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは10%以下であるものを言う。光線透過率は、例えば、紫外−可視光分光光度計を用いて測定する。
【0025】
(エポキシ樹脂(A))
本実施形態において、エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂(A)としては、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる観点から、下記式(1)で表されるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、下記式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、および下記式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0027】
【化1】
(式(1)中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、Arがナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Arはフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表す。gは0〜5の整数であり、hは0〜8の整数である。nは重合度を表し、その平均値は1〜3である)
【0028】
【化2】
(式(2)中、複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0〜4である)
【0029】
【化3】
(式(3)中、複数存在するRおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0〜4である)
【0030】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時において、十分な流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。
一方で、封止用樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0031】
(無機充填剤(B))
本実施形態において、無機充填剤(B)としては、一般的に半導体封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカを用いることが好ましく、溶融シリカを用いることがより好ましい。また、無機充填剤(B)は、球状であることが好ましく、さらには球状シリカであることが好ましい。これらの無機充填剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これにより、成形時における封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形安定性の向上に寄与することができる。
【0032】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における無機充填剤(B)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。無機充填剤(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。
一方で、封止用樹脂組成物中における無機充填剤(B)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。無機充填剤(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0033】
無機充填剤(B)の平均粒径D50は、0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましい。平均粒径D50を上記下限値以上とすることにより、封止用樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性をより効果的に向上させることが可能となる。また、平均粒径D50を上記上限値以下とすることにより、ゲート詰まり等が生じることを確実に抑制できる。なお、平均粒径D50は、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、島津製作所社製、SALD−7000)で測定したときの平均粒径である。
【0034】
(硬化剤(C))
本実施形態において、硬化剤(C)としては、例えば、重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジド等を含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物;フェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類等が挙げられる。
【0035】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)等の3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)等のイミダゾール化合物;BF錯体等のルイス酸等が挙げられる。
【0036】
縮合型の硬化剤としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの観点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;トリスフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる観点から、フェノールアラルキル樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0038】
これらの中でも、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる観点から、硬化剤(C)として、下記式(4)で表されるフェノールアラルキル樹脂、ノボラック型フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0039】
【化4】
(式(4)中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、Arがナフチレン基の場合、水酸基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Arはフェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表す。iは0〜5の整数であり、jは0〜8の整数である。nは重合度を表し、その平均値は1〜3である。)
【0040】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における硬化剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。硬化剤(C)の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時において、十分な流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。
一方で、封止用樹脂組成物中における硬化剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。硬化剤(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0041】
(着色剤(D))
本実施形態において、着色剤(D)としては、十分な着色力が得られる着色剤であれば特に限定されず、任意の着色剤を使用することができる。例えば、青色系着色剤、黄色系着色剤、緑色系着色剤、赤色系着色剤、白色系着色剤、橙色系着色剤、紫色系着色剤、褐色系着色剤等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0042】
青色系着色剤としては、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー、インジゴ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、メチレンブルー等の青色顔料または青色染料等が挙げられる。
黄色系着色剤としては、黄鉛、亜鉛華、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、チタンイエロー、ベンジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、不溶性アゾ、縮合アゾ、アゾレーキ等のアゾ系顔料等の黄色顔料または黄色染料等が挙げられる。
緑色系着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料または緑色染料等が挙げられる。
赤色系着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモンレッド、パーマネントレッド、イルガジンレッド、ペリレンレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、キナクリドン、ウオッチングレッド、リソールレッド、ブリリアンカーミン、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ、アントラキノン系、インジゴ、イソインドリンジケトピロロピロール系、クロモファインレッド等の縮合多環系顔料等の赤色顔料または赤色染料を用いることができる。
白色系着色剤としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトボン、酸化アンチモン等の白色顔料または白色染料を用いることができる。
橙色系着色剤としては、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料または橙色染料を用いることができる。
紫色系着色剤としては、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料または紫色染料を用いることができる。
褐色系着色剤としては、酸化鉄、パーマネントブラウン、パラブラウン等の褐色顔料または褐色染料を用いることができる。
これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における着色剤(D)の含有量は、十分な着色力が得られる量であれば、特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。着色剤(D)の含有量が上記範囲内であれば、封止材の他の特性を損なうことなく、着色力をより一層高めることができる。
【0044】
(酸化防止剤(E))
本実施形態において、酸化防止剤(E)としては、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる観点から、1分子中にヒンダードフェノール基を2個以上有するヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物およびチオエーテル系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0045】
ヒンダードフェノール基としては、下記式(5)で表されるヒンダードフェノール基が好ましい。
【0046】
【化5】
ただし、式(5)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはメチル基またはt−ブチル基、特に好ましくはt−ブチル基を表す。
【0047】
1分子中にヒンダードフェノール基を2個以上有するヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、4,4',4"−(1−メチルプロパニル−3−イリデン)トリス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、6,6'−ジ−tert−ブチル−4,4'−ブチリデンジ−m−クレゾール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル −4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2'−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、N,N'−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0048】
ヒンダードアミン系化合物としては、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルヘキサデカノエートと2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルオクタデカノエートとの反応物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0049】
チオエーテル系化合物としては、2,2−ビス{[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロポキシ]メチル}プロパン−1,3−ジイルビス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート]、ジ(トリデシル)−3,3'−チオジプロピオネート等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0050】
これらの中でも、外観および高温保管特性のバランスにより一層優れた半導体装置を実現できる観点から、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオンおよびペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル −4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが特に好ましい。
【0051】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における酸化防止剤(E)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上1.0質量%以下である。酸化防止剤(E)の含有量が上記範囲内であれば、封止材の他の特性を損なうことなく、封止用樹脂組成物を構成する各成分の酸化劣化をより効果的に抑制できる。
【0052】
(その他の成分(F))
封止用樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、カップリング剤、硬化促進剤、離型剤、イオン捕捉剤、低応力成分、難燃剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。
カップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果をより効果的に発現するものとして、エポキシシランまたはアミノシランを含むことがより好ましく、2級アミノシランを含むことが流動性等の観点から特に好ましい。
硬化促進剤は、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
離型剤は、例えばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
イオン捕捉剤は、例えば、ハイドロタルサイトを含む。
低応力成分は、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴムを含む。
難燃剤は、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0053】
本実施形態の封止用樹脂組成物を製造するためには、以下に示す粉砕混合条件や溶融混練条件を適切に制御するとともに、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(C)、着色剤(D)および酸化防止剤(E)等を適切に選択、組み合わせて配合を設計することが重要である。
封止用樹脂組成物としては、例えば、前述の各成分を、粉砕混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕したもの、粉砕後にタブレット状に打錠成型したもの、また必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したもの等を用いることができる。
ここで、各成分の粉砕混合は、従来の基準よりも低い温度で、かつ、短時間でおこなうことが好ましい。例えば、10〜15℃、3〜15分間の条件により行うことができる。これにより、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる。
また、各成分の溶融混練は、従来の基準よりも低い温度で、かつ、短時間でおこなうことが好ましい。例えば、70〜80℃、2〜5分間の条件により行うことができる。これにより、上記ΔEおよび上記ΔEをより小さくすることができる。
【0054】
次に、半導体装置100について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。半導体装置100は、基材10と、基材10上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止する封止材30と、を備えた半導体パッケージである。図1においては、半導体装置100がBGAパッケージである場合が例示されている。この場合、基材10のうち半導体素子20を搭載する表面とは反対側の裏面には、複数の半田ボール50が設けられる。
半導体素子20は、ボンディングワイヤ40を介して基材10へ電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基材10上にフリップチップ実装されていてもよい。
【0055】
本実施形態において、封止材30は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、半導体素子20の封止に際して、封止材30の変色および酸化を抑制することができる。このため、外観および高温保管特性のバランスに優れた半導体装置100の製造を実現することが可能となる。封止材30は、例えば、封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。
【0056】
次に、構造体102について説明する。
図2は、本実施形態に係る構造体102の一例を示す断面図である。構造体102は、MAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子20毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。
構造体102は、基材10と、複数の半導体素子20と、封止材30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基材10上に配列されている。図2においては、各半導体素子20が、ボンディングワイヤ40を介して基材10に電気的に接続される場合が例示されている。しかしながら、これに限られず、各半導体素子20は、基材10に対してフリップチップ実装されていてもよい。なお、基材10および半導体素子20は、半導体装置100において例示したものと同様のものを用いることができる。
【0057】
封止材30は、複数の半導体素子20を封止している。封止材30は、上述した封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、複数の半導体素子20の封止に際して、封止材30の変色および酸化を抑制することができる。このため、外観および高温保管特性のバランスに優れた構造体102およびこれを個片化して得られる半導体装置を実現することが可能となる。封止材30は、例えば、封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。
【0058】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0059】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0060】
(封止用樹脂組成物)
実施例1〜12、比較例1〜2、および比較例4〜6のそれぞれについて、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。まず、表1に示す配合に従い、各成分を、ミキサーを用いて15℃で3分間粉砕混合した後、80℃で5分間ロール混練した。次いで、これを冷却し、粉砕して封止用樹脂組成物を得た。
表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。なお、表1に示す各成分の配合割合は、全て封止用樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を指す。
【0061】
比較例3について、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。まず、表1に示す配合に従い、各成分を、ミキサーを用いて25℃で5分間粉砕混合した後、120℃で10分間ロール混練した。次いで、これを冷却し、粉砕して封止用樹脂組成物を得た。
【0062】
(エポキシ樹脂(A))
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、エピコートYL6810)
エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、エピコートYX4000K)
エポキシ樹脂4:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−1020−55)
【0063】
(無機充填剤(B))
無機充填剤1:球状溶融シリカ(マイクロン社製、S−CO、平均粒径:21μm)
無機充填剤2:球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒径:0.5μm)
【0064】
(硬化剤(C))
フェノール樹脂系硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製GPH−65/明和化成社製MEH−7851SS)
フェノール樹脂系硬化剤2:フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR−HF3)
フェノール樹脂系硬化剤3:トリスフェノールメタン型フェノールノボラック樹脂(MEH−7500、明和化成社製)
【0065】
(着色剤(D))
着色剤1:赤色系着色剤(大日精化工業社製、クロモファインレッド6605T、分類:クロモファインレッド、主成分:4,4'−ジアミノ−1,1'−ビアントラセン−9,9',10,10'−テトラオン)
着色剤2:黄色系着色剤(大日精化工業社製、セイカファーストエロー2054C、分類:モノアゾイエロー、主成分:ピグメントイエロー74(2−[(2−メトキシ―4−ニトロフェニル)アゾ]−N−(2−メトキシフェニル)−3−オキソブタンアミド))
着色剤3:青色系着色剤(大日精化工業社製、シアニンブルー6820、分類:フタロシアニンブルー、主成分:ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンのβ結晶))
着色剤4:黄色系着色剤(大日精化工業社製、セイカファーストイエローA3、分類:モノアゾイエロー、主成分:N−(2−アミノエチル)−5−クロロ−ナフタレン−1−スルホアミド)
【0066】
(酸化防止剤(E))
ヒンダードフェノール系化合物1:3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製アデカスタブAO−80)
ヒンダードフェノール系化合物2:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル −4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ADEKA社製アデカスタブAO−60)
ヒンダードフェノール系化合物3:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン(ADEKA社製アデカスタブAO−20)
ヒンダードフェノール系化合物4:2,6−ジ−t−ブチル―p−クレゾール
ヒンダードアミン系化合物1:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(ADEKA社製アデカスタブLA−77Y)
チオエーテル系化合物1:2,2−ビス{[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロポキシ]メチル}プロパン−1,3−ジイルビス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート](ADEKA社製アデカスタブAO−412S)
ホスファイト系化合物1:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製アデカスタブ2112)
【0067】
(その他の成分(F))
離型剤1:モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスPED191)
硬化促進剤1:特開2004−231765の段落0021に記載の硬化促進剤Aと特開2007−246671の段落0084に示す硬化促進剤Bを1:3の重量で混合したもの
【0068】
<封止材の色差評価>
以下の方法で、実施例および比較例で得られた封止用樹脂組成物の色差を測定した。
【0069】
(試験片の作製)
はじめに、低圧トランスファー成形機(コーキ精機社製「KTS−15」)を用いて、金型に、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物をトランスファー成形することにより封止用樹脂組成物の硬化物を得た。この硬化物は、直径50mm、厚さ3mmであった。
次いで、得られた硬化物について、コニカミノルタ センシング社製Color Reader CR−13(測定モード:透過、測定回数:n=3)を用い、L値、a値、b値を測定した。CIE1976L表色系の数値への変換は装置本体が行い、CIE1976L表色系のデータを得た。また、Cは{(a+(b1/2により得た。得られた結果を表1に示す。
【0070】
(後硬化処理)
次に、上記硬化物を、175℃、2時間後硬化処理をおこなった。後硬化処理後の硬化物について、上記同様に、L値、a値、b値を測定した。次いで、下記式より色差ΔEを算出した。得られた結果を表1に示す。
ΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2
【0071】
(リフロー処理)
次に、後硬化処理後の硬化物を、260℃、1分間加熱処理をおこなった。加熱処理後の硬化物について、上記同様に、L値、a値、b値を測定した。次いで、下記式より色差ΔEを算出した。得られた結果を表1に示す。
ΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2
【0072】
<半導体装置の高温保管特性の評価>
実施例および比較例で得られた封止用樹脂組成物を用いて得られた半導体装置について、高温保管特性の評価を以下の手順で行った。
【0073】
低圧トランスファー成形機(コーキ精機社製「KTS−15」)を用いて、金型に、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、16ピンSOP(半導体素子はHAST用標準品TEG9を使用し、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)を成形し、後硬化として175℃、2時間処理を行い半導体装置を作製した。
得られた半導体装置について、175℃の高温保管試験(HTSL)を行い、配線間の電気抵抗値が初期値に対し20%増加した素子が検出された時点を不良発生時間と判定した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1〜12により得られた封止用樹脂組成物は、ΔEおよびΔEがいずれも低く、これらの封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は不良発生までの時間が長く、高温保管特性に優れていた。
一方、比較例1〜6により得られた封止用樹脂組成物は、ΔEが高く、これらの封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は不良発生までの時間が短く、高温保管特性に劣っていた。
【符号の説明】
【0076】
100 半導体装置
102 構造体
10 基材
20 半導体素子
30 封止材
40 ボンディングワイヤ
50 半田ボール
図1
図2