【実施例】
【0034】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した分析装置は下記のとおりである。
[1]
1H−NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 AL−400
溶媒:重ジメチルスルホキシド
[2]粘度計
装置:BROOK FIELD社製 プログラマブルレオメーター
[3]電気伝導率
装置:東亜ディーケーケー(株)製 電気伝導率計CM−30R
[4]電位窓
装置:北斗電工(株)製 スタンダードボルタンメトリツールHSV−100
[5]内部抵抗
装置:日置電気(株)製 抵抗計RM3548
【0035】
[1]イオン液体の合成
[合成例1]MEMP・FSAの合成
【化5】
【0036】
ピロリジン(和光純薬工業(株)製)1.51質量部と塩化2−メトキシエチル(関東化学(株)製)1.00質量部とを混合し、還流しながら1時間反応させた。反応後、反応液は2層に分離したが、しばらく放冷すると下層は固化した。デカンテーションにより上層のみ回収し、減圧蒸留により精製し、目的物であるN−2−メトキシエチルピロリジン(沸点76℃/蒸気圧45mmHg)0.96質量部を得た(収率70%)。
得られたN−2−メトキシエチルピロリジン1.00質量部、およびこれに対して2倍容量のトルエン(和光純薬工業(株)製)を混合し、オートクレーブ中に入れ、系内を窒素置換した。密閉系にした後、室温撹拌下で塩化メチルガス(日本特殊化学工業(株)製)約1.00質量部を加えた。塩化メチルガス導入時には温度および内圧の上昇が見られ、最高時で温度は約53℃、内圧は5.5kgf/cm
2(約5.4×10
5Pa)まで上昇した。そのまま加熱せずに反応させ、2日後に塩化メチルガス約0.75質量部を加えた。さらに1日反応させた後、加圧を解除し、系中に生成した結晶を減圧濾過にてろ別し、真空ポンプを用いて乾燥させ、N−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.29質量部を得た(収率92%)。
得られたN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.00質量部に当倍容量のイオン交換水を加え、撹拌して溶解させた。この溶液をカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(関東化学(株)製)1.29質量部を当倍容量のイオン交換水に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で反応させ、3時間以上経過した後に、2層に分離した反応液を分液し、下層の有機層を2回イオン交換水で洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(MEMP・FSA)1.50質量部を得た(収率83%)。MEMP・FSAの
1H−NMRスペクトルを
図1に示す。なお25℃での粘度は、35cPであった。
【0037】
[合成例2]MMMP・FSAの合成
【化6】
【0038】
N−メチルピロリジン(和光純薬工業(株)製)14.4質量部をテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)200質量部に溶かした溶液を氷冷し、撹拌下、クロロメチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)17.1質量部を加えた。一晩反応させた後、析出した固体を、桐山ロートを用い減圧濾過した。得られた白色固体を、真空ポンプを用いて乾燥させ、中間体N−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド26.7質量部を得た(収率96%)。
得られたN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド8.58質量部をイオン交換水10質量部に溶解させた。この溶液をカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(関東化学(株)製)12.5質量部をイオン交換水5質量部に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で撹拌を一晩継続させた後、2層に分かれた反応液を分液し、下層の有機層をイオン交換水で4回洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(MMMP・FSA))を10.2質量部得た(収率63%)。MMMP・FSAの
1H−NMRスペクトルを
図2に示す。なお25℃での粘度は、20cPであった。
【0039】
[2]二次電池用電解液の調製
[実施例1−1]
合成例1で得られたMEMP・FSAに、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(Li・FSA、関東化学(株)製)を添加し、Li・FSA濃度が1mol/Lの二次電池用電解液を調製した。
【0040】
[実施例1−2]
合成例2で得られたMMMP・FSAを用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で二次電池用電解液を調製した。
【0041】
[比較例1−1]
MEMP・FSAに代えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMI・BF4、関東化学(株)製)を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で二次電池用電解液を調製した。
【0042】
[比較例1−2]
MEMP・FSAに代えて、特許文献2記載の方法で合成した2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(MEMP・BF4)を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で二次電池用電解液を調製しようとしたが、1mol/LまでLi・FSAを溶解することができず、混濁液であった。
【0043】
[比較例1−3]
MEMP・FSAに代えて炭酸プロピレン(キシダ化学(株)製)を用いるとともに、Li・FSAに代えてリチウムテトラフルオロボレート(Li・BF4、キシダ化学(株)製)を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で二次電池用電解液を調製した。
【0044】
以上で作製した各電解液(比較例1−2は混濁液)について、電気伝導率を測定した。測定は電気伝導率計(CM−30R、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、25℃の恒温槽内で計測した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
また、実施例1−1、実施例1−2および比較例1−1で調製した電解液について、電解液の電位窓を測定した。それらの結果を
図3に示す。
図3に示されるように、実施例1−1および実施例1−2の電解液の電位窓は比較例1−1の電解液の電位窓よりも広いことが確認された。
【0047】
[3]二次電池の作製
[実施例2−1]リチウムイオンキャパシタ
(1)正の電極構造体の作製
活性炭マックスソーブMSP20(関西熱化学(株)製)と、導電剤(HS−100、電気化学工業(株)製)と、バインダーであるPVDF(アルドリッチ社製)とを85:8:7の質量組成になるように、塗工溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)中で混合し、正の電極用塗工液を調製した。
得られた塗工液を、正の集電体であるエッチドアルミ箔(30CB、日本蓄電器工業(株)製)に塗工した後、ロールプレスで圧延し、さらにNMPを乾燥除去して正の電極を形成し、正の電極構造体を得た。
(2)負の電極構造体の作製
チタン酸リチウム粉末(チタン酸リチウム スピネル、シグマ-アルドリッチ製)と導電剤(HS−100)と、バインダー(PVDF)とを83:8:9の質量組成になるように、塗工溶媒であるNMP中で混合し、負の電極用塗工液を調製した。
得られた塗工液を、正の電極構造体と同様にエッチドアルミ箔(30CB)に塗工した後、ロールプレスで圧延し、さらにNMPを乾燥除去して負の電極を形成し、負の電極構造体を得た。
【0048】
(3)二次電池の作製
上記で得られた正の電極構造体と、負の電極構造体とのそれぞれに、アルミ製の電極取り出し端子をスポット溶着し、セパレータ(TF40−35、ニッポン高度紙工業(株)製)を介してセルを組み立て、アルミラミネート(大日本印刷(株)製)からなる外装容器に挿入した。この中に、実施例1−1で調製した二次電池用電解液を所定量注入した後、25℃、10kPa以下の減圧下で12時間以上静置して電解液を含浸させた後、熱溶着にて封止し、二次電池を得た。
【0049】
[実施例2−2]
実施例1−2で調製した二次電池用電解液を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0050】
[比較例2−1]
比較例1−1で調製した二次電池用電解液を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0051】
[比較例2−2]
比較例1−2で調製した二次電池用電解液(混濁液)を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0052】
[比較例2−3]
比較例1−3で調製した二次電池用電解液を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0053】
上記で作製した二次電池の初期特性を下記手法により測定した。その結果を表2に示す。
まず、一時間率の電流値で3.2Vまで定電流充電を行い、そのまま30分間、定電圧充電を行い、続いて、一時間率の電流値で3.2Vから1.8Vまで定電流放電したときの全放電エネルギー量から静電容量を算出した。測定は2サイクル実施し、2サイクル目の値を静電容量値とした。内部抵抗は抵抗計(RM3548、日置電気(株)製)にて、充放電試験後に測定を行った。各測定共に25℃の恒温槽中に2時間以上放置した後に計測を行った。
【0054】
【表2】
【0055】
続いて、得られた二次電池を60℃の恒温槽中に2時間以上放置し、初期性能測定と同様に静電容量および内部抵抗を計測した。その結果を表3に示す。
表3に示されるように、温度を上げることにより各二次電池で静電容量の増加が見られた。また実施例2−1および2−2で得られた二次電池は、60℃での内部抵抗が大幅に低下し、初期性能測定時の約1/6にまで低下した。
【0056】
【表3】
【0057】
さらに、得られた二次電池を60℃の恒温槽中で加熱し、サイクル充放電を行った。サイクル回数は、初期性能の充放電を1サイクルとし、20サイクル実施した。サイクル実施後、恒温槽を25℃に戻して2時間放置した後、初期性能測定と同様に性能測定を行った。初期に測定した静電容量および内部抵抗の測定値を100%とし、それらの変化率を算出した。その結果を表4に示す。
表4に示されるように、比較例2−1で作製した二次電池では高温でサイクルを行うことで静電容量が低下した。また、実施例2−1および2−2で作製した二次電池の内部抵抗は、60℃でサイクルを行うと低下する、ないしはほぼ維持される傾向が確認されたのに対し、その他の二次電池の内部抵抗は、60℃でサイクルを行うと上昇する傾向が確認された。
【0058】
【表4】
【0059】
[実施例2−3]リチウムイオン電池
(1)正極の作製
正極活物質(LiCoO
2、本庄ケミカル(株)製)と、導電剤(アセチレンブラック、電気化学工業(株)製)と、PVDFをそれぞれ91:3:6の質量組成になるよう調整して溶解した溶液を、NMPと混合してペースト状の正極塗工液を調製した。この正極塗工液をアルミ箔上に乾燥膜厚115μmとなるようにドクターブレードにより塗布した後、80℃で2時間乾燥し、圧延してLiCoO
2正電極を形成し、正の電極構造体を得た。
(2)二次電池の作製
上記で得られた正極および負極である金属リチウム箔をそれぞれ12φの大きさに切り取り、セパレータであるポリオレフィン製平膜(ハイポア、旭化成イーマテリアルズ(株)製)を、切り取った各正負極の間に挟み、実施例1−1で得られた電解液を注液・含浸させてコイン型のリチウム二次電池を作製した。
【0060】
上記で得られたリチウムイオン電池について、充電時の上限電圧を4.2V、放電時の終止電圧を3Vとし、電流密度0.025mA/cm
2の電流で、充電時は定電流低電圧充電、放電時は定電流放電により充放電試験を行った。
その結果、LiCoO
2当たりの放電容量は122.5mAh/gであり、リチウムイオン電池として十分な値を示した。
【0061】
[実施例2−4]空気電池
(1)正極の作製
正極活物質(MCMB、大阪ガスケミカル(株)製)とPVDFを88:22の質量組成になるよう調整し、適量のNMPを混合してペースト状の正極塗工液を調製した。この正極塗工液をアルミ箔上に乾燥膜厚75μmとなるようにドクターブレードにより塗布した後、140℃で72時間乾燥してNMPと水分を除去した後、圧延して正電極を形成し、正の電極構造体を得た。
(2)空気電池の作製
上記で得られた正極および負極である金属リチウム箔を、正極12φ、負極15φの大きさに切り取った。実施例1−1で得られた電解液を、セパレータであるポリオレフィン製平膜(ハイポア、旭化成イーマテリアルズ(株)製)に含浸させ、先に切り取った各正負極の間に挟みこみリチウム空気電池セルを作製した。このセルを、空気孔が形成された正極缶内に、正極集電体が空気孔と対向するように配置した後、負極缶をかぶせ、これらを封缶して空気電池を作製した。得られたセルをガス置換コック付きガラスデシケータ(500mL)内に収容した。ガラスデシケータ内には、酸素が導入可能であり、酸素を正極へ供給することができる構造とした。
【0062】
上記で得られた空気電池について、充電時の上限電圧を3.8V、放電時の終止電圧を2Vとし、電流密度67nA/cm
2の電流で、充電時は定電流低電圧充電、放電時は定電流放電により充放電試験を行った。得られた放電容量は、3.3mAhであった。
【0063】
以上のとおり、本発明の二次電池用電解液は電位窓が広く耐電圧性に優れている。また、この電解液を用いて調製された二次電池は、高温時の内部抵抗が著しく低下するとともに、高温時に繰り返し充放電を行っても劣化が少ない、高温環境下での性能に優れたものである。