(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体素子に対して近接する前記冷却器又は前記導電性部材と前記半導体素子との間で生じる第3浮遊容量は、前記半導体素子と前記筐体との間で生じる第4浮遊容量より大きい
請求項10記載の電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
【0010】
本実施形態に係る電源装置は、入力側をバッテリ等の電力源に接続されて、負荷等に対して電力を出力する装置である。電源装置は、例えば充電器の構成の一部、又は、モータを駆動させる駆動システムの構成の一部として用いることができる。
【0011】
電源装置の一例として、電力変換装置を説明する。
図1は、電力変換装置の回路図である。なお、以下の説明では、電力変換装置について説明するが、電源装置100は電力変換装置に限らず、例えばスイッチング素子を備えた装置など他の装置であってもよい。
【0012】
図1に示すように、電源装置100は、AC入力部1と、トランス2、4、8、11と、コンデンサ3、5、10と、チョークコイル6と、電力変換回路7、9と、DC出力部12とを備えている。電源装置100は、AC入力部1から入力された交流電力を直流電力に変換し、直流電力をDC出力部12から出力する。AC入力部1は、P母線及びN母線の端部に接続されたコネクタである。AC入力部1及び電力変換回路7との間には、AC入力部1から入力された交流電力を整流するためのフィルタとして、トランス2、4、6及びコンデンサ3、5が接続されている。トランス2、4はフィルタ用のトランスである。チョークコイル6は、電力変換用のチョークコイルである。
【0013】
電力変換回路7は、電力変換用チョークコイル6からの入力電力を変換し、トランス8の1次側のコイルに出力する回路である。トランス8は、絶縁型電力変換用のトランスであって、電力変換回路7と電力変換回路9との間に接続されている。電力変換回路9は、トランス8の2次側コイルからの入力電力を変換し、コンデンサ10に出力する回路である。
【0014】
電力変換回路9の出力とDC出力部12との間には、コンデンサ10及びトランス11が接続されている。コンデンサ10及びトランス11は、LCフィルタである。トランス11はフィルタ用のトランスである。AC出力部12は、P母線及びN母線の端部に接続されたコネクタである。
【0015】
なお、電力変換回路9は、
図1に示すようなAC−DCコンバータに限らず、DC−DCコンバータやインバータ等でもよい。また、トランス2等で構成されるフィルタの回路、及び、電力変換回路7、9の回路は、
図1に示す回路に限らず、他の回路でもよい。
【0016】
次に、
図2を用いて、電源装置100の構造を説明する。
図2は電源装置100の断面図である。なお、
図2において、浮遊容量は回路記号で表されている。他の図でも同様に、浮遊容量は回路記号で表されている。電源装置100は、コイル20と、冷却器30と、導電性部材40と、筐体50とを備えている。なお、
図2は、電源装置100を構成する部品の一部を示しており、電源装置100は、
図2に示す構成以外に、例えば電力変換回路7に含まれるスイッチング素子等を備えている。
【0017】
コイル20は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。コイル20は、電源装置100に含まれる各部品のうち、発熱する部品の1つである。コイル20は、筐体50と直流的に絶縁した状態で、筐体50内に設けられている。コイル20は、筐体50の側壁に対して、一定の距離を空けて配置されている。筐体50の側壁は、コイル20の周囲に位置する、筐体50の内壁である。
【0018】
コイル20は、モジュール化されており、コイル20の側面(
図2に示すyz面)が、筐体50の側面(yz面)と対向するように配置されている。また、筐体50は、導電性をもっている。そのため、コイル20の側面と筐体50の側面との間で、浮遊容量C
hが生じる。
【0019】
冷却器30は、コイル20を冷却するための放熱機構である。冷却器30は、空冷式又は水冷式の冷却機構である。空冷式の場合には、冷却器30は、放熱フィンを有しており、放熱フィンは冷却面30aの裏面に設けられている。冷却面30aは、冷却器30の表面のうち、コイル20に向けられた面である。水冷式の場合には、冷却器30は流路が設けられている。そして、水又はLLCが流路を流れることで、冷却面30aが冷えるように、冷却器30は構成されている。冷却器30は、金属などの導電性をもつ材料で形成されており、冷却器30は導電性を有している。また、冷却器30は、筐体50と直流的に絶縁した状態で、筐体50内に設けられている。
【0020】
導電性部材40は、金属などの導電性の材料によって、板状に形成された部材である。導電性部材40は、コイル20で発生するノイズを遮蔽するための遮蔽板としての機能を有する。導電性部材40は、冷却器30に接続されている。冷却器30及び導電性部材40は、共に導電性を有しているため、冷却器30と導電性部材40は電気的に接続されている。導電性部材40は、冷却面30aの法線方向に沿って、冷却器30から延在するように構成されている。そのため、導電性部材40は、冷却器30から突出した形状になっている。
【0021】
コイル20は、筐体50よりも導電性部材40により近づくように配置されており、コイル20と導電性部材40との間の距離は、コイル20と筐体50との間の距離よりも短い。コイル20と導電性部材40との間の距離は、導電性部材40と対向するコイル20の側面と、コイル20と対向する導電性部材40の側面との間の距離である。また、コイル20と筐体50との間の距離は、筐体50と対向するコイル20の側面と、コイル20と対向する筐体50の側面との間の距離である。
【0022】
コイル20と導電性部材40は、所定の隙間を空けた状態で配置されている。これにより、コイル20と導電性部材40は互いに近接している。そして、コイル20と導電性部材40は所定の隙間を空けた状態で近接しているため、コイル20と導電性部材40との間には、浮遊容量C
lが生じる。また、導電性部材40の先端部分は、筐体50の側壁に対して、一定の距離を空けたところに位置している。すなわち、導電性部材40は、筐体50に対して直流的に絶縁の状態となるように、配置されている。そして、導電性部材40の先端と筐体50の側壁との間には、浮遊容量C
wが生じる。
【0023】
次に、筐体50内で発生するノイズの特性について、説明する。電力変換回路7、9に含まれるスイッチング素子のスイッチング動作により、コイル20から漏れ電流が流れる。この漏れ電流が、コイル20から浮遊容量を介して筐体50に流れることで、コモンモードノイズとなる。コモンモードノイズにより筐体50が振動することで、ノイズが発生し筐体50から外部空間に放出される。漏れ電流(ノイズ)の発生源となるコイル20は、導電性部材40と筐体50によって、筐体50内の他の部品から隔離された状態で配置されている。そのため、コイル20のノイズが、筐体50内の他の部品に影響することを防ぐことができる。またコイル20は、導電性部材40と近接しており、導電性部材40は冷却器30と一体になっている。そのため、コイル20から導電性部材40を介して冷却器30まで、熱経路が形成される。これにより、コイル20の冷却効果も得ることができる。
【0024】
コイル20から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル20から浮遊容量C
hを介して筐体50までの経路と、コイル20から、浮遊容量C
l、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル20から筐体50までの合成容量(C
a)は、コイル20から筐体50までの2つの経路上で生じる浮遊容量(C
h、C
l、C
w)を合成した容量であって、下記式(1)で表される。なお、浮遊容量(C
a)は、コイル20で発生した漏れ電流が筐体50流れる経路上の電気容量の合成容量に相当する。
【0026】
また、コイル20と筐体50との間の距離は、コイル20と導電性部材40との間の距離より長いため、浮遊容量C
hは、浮遊容量C
lより小さい。そのため、式(1)で示される合成量(C
a)は、より小さくなる。
【0027】
例えば、本実施形態と異なり、冷却器30と筐体50が一体になっている場合には、コイル20の漏れ電流は、浮遊容量C
lを介して導電性部材40に流れ、導電性部材40から冷却器30を介して筐体50に流れる。コイル20の漏れ電流は、浮遊容量(C
w)を介して筐体50に流れない。そのため、コイル20から筐体50までの合成容量(C
b)は、下記式(2)で表される。
【0029】
コイル20から筐体50に流れる漏れ電流は、コイル20と筐体50との間で生じる浮遊容量(合成容量)が低いほど、小さくなる。例えば、冷却器30と筐体50が一体になっている場合に、コイル20と筐体50との間の合成容量C
bを低くするためには、コイル20と筐体50との間の距離、及び、コイル20と導電性部材40との間の距離を長くすることになる。しかしながら、距離を長くすると、筐体50の体積が増加するため、電源装置の大型化になる。また、コイル20と導電性部材40との間の距離を長くすると、コイル20の熱が、導電性部材40を介して冷却器30まで伝わり難くなり、冷却性能が低下する。
【0030】
本実施形態では、コイル20から筐体50までの、漏れ電流の導通経路上に、浮遊容量C
lと浮遊容量C
wが直列に接続された状態となるため、式(1)の右辺の第1項が、浮遊容量C
lより小さくなる。そのため、浮遊容量(C
a)は浮遊容量(C
b)よりも小さくなり、冷却器30と筐体50が一体になっている場合と比較して、本実施形態に係る電源装置100では、コイル20から筐体50に流れる漏れ電流を小さくすることができる。その結果として、筐体50から発するノイズを抑制できる。
【0031】
上記のように本実施形態では、コイル20、冷却器30及び導電性部材40を筐体50に収容し、冷却器30を筐体50と直流的に絶縁した状態で配置し、導電性部材40とコイル20とを近接するように、コイル20及び導電性部材40を配置している。これにより、コイル20から筐体50までの浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0032】
また本実施形態では、浮遊容量C
lは、浮遊容量C
hより大きい。これにより、コイル20から筐体50までの浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0033】
本実施形態に係る電源装置100の変形例として、コイル20は冷却器30に近接するように、配置されてもよい。
図3は、変形例に係る電源装置100の断面図である。
【0034】
コイル20は、周囲に位置する筐体50の内壁及び導電性部材40の側面よりも、冷却器30の冷却面30aに近づくように配置されている。そして、コイル20と冷却器30は、所定の隙間を空けた状態で配置されており、コイル20と冷却器30は互いに近接している。コイル20と冷却器30との間には、浮遊容量C
’lが生じる。コイル20から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル20から浮遊容量C
hを介して筐体50までの経路と、コイル20から、浮遊容量C
’l、冷却器30、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル20から筐体50までの合成容量(C
’a)は、コイル20から筐体50までの2つの経路上で生じる浮遊容量(C
h、C
’l、C
w)を合成した容量であって、下記式(3)で表される。
【0036】
上記のように変形例では、冷却器30とコイル20とを近接するように、コイル20及び冷却器30を配置している。これにより、コイル20から筐体50までの浮遊容量(C
’a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0037】
なお、本実施形態において、コイル20は、冷却器30及び導電性部材40に近接するように、配置されてもよい。
【0038】
また本実施形態において、冷却器30と筐体50との間で生じる浮遊容量が導電性部材40と筐体50との間で生じる浮遊容量より大きい場合には、コイル20から浮遊容量C
lを介して導電性部材40に流れる漏れ電流は、導電性部材40と筐体50との間よりも、冷却器30と筐体50との間の方が流れ易くなる。このような場合には、上記の浮遊容量C
wを、冷却器30と筐体50との間で生じる浮遊容量に置き換えた上で、上記本実施形態の記載を援用することで、本実施形態に係る電源装置100を実現できる。
【0039】
同様に、変形例に係る電源装置100において、冷却器30と筐体50との間で生じる浮遊容量が導電性部材40と筐体50との間で生じる浮遊容量より大きい場合には、上記の浮遊容量C
wを、冷却器30と筐体50との間で生じる浮遊容量に置き換えた上で、上記本実施形態の記載を援用することで、変形例に係る電源装置100を実現できる。
【0040】
《第2実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、誘電体61を備えている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0041】
図4は、電源装置100の構成のうち、コイル20、導電性部材40及び誘電体61の断面図である。誘電体61は、コイル20と導電性部材40との間に配置されている。誘電体61は板状に形成されており、誘電体61の両主面のうち、一方の主面はコイル20の側面に接合されており、他方の主面は導電性部材40の側面に接合されている。誘電体61は、浮遊容量(C
l)を低減するために、コイル20と導電性部材40との間に狭持されている。
【0042】
本実施形態では、誘電体61がコイル20と導電性部材40との間に配置されているため、コイル20から筐体50までの浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル20の熱が、誘電体61を介して導電性部材40に伝わりやすくなるため、冷却効果を高めることができる。
【0043】
本実施形態に係る電源装置100の変形例として、誘電体61の代わりに、コイル20と導電性部材40との間に樹脂62を配置してもよい。
図5は、電源装置100の構成のうち、コイル20、導電性部材40及び樹脂62の断面図である。これにより、コイル20から筐体50までの浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル20の熱が、樹脂62を介して導電性部材40に伝わりやすくなるため、冷却効果を高めることができる。
【0044】
なお、誘電体61又は樹脂62は、コイル20と導電性部材40との間に限らず、コイル20と冷却器30との間に配置してもよい。
【0045】
《第3実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、絶縁基板63及びグリース64を備えている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0046】
図6は、電源装置100の構成のうち、コイル20、導電性部材40、絶縁基板63、及びグリース64の断面図である。絶縁基板63及びグリース64は、コイル20と導電性部材40との間に配置されている。絶縁基板63は板状に形成されている。絶縁基板63の両主面のうち、一方の主面はコイル20の側面に接合されている。他方の主面は、グリース64を介して導電性部材40の側面に接合されている。
【0047】
本実施形態では、コイル20と導電性部材40が、グリース64を介して接合されているため、コイル20と筐体50との間の浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル20の熱が、グリース64を介して導電性部材40に伝わりやすくなるため、冷却効果を高めることができる。
【0048】
本実施形態に係る電源装置100の変形例として、グリース64の代わりに、コイル20と導電性部材40とを、ハンダ65で接合してもよい。
図7は、電源装置100の構成のうち、コイル20、導電性部材40、絶縁基板63及びハンダ65の断面図である。
図7に示すように、絶縁基板63の主面が、ハンダ65により導電性部材40の側面に接合されている。
【0049】
これにより、コイル20と筐体50との間の浮遊容量(C
a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル20の熱が、はんだ65を介して導電性部材40に伝わりやすくなるため、冷却効果を高めることができる。
【0050】
なお、
図6に示したグリース64による接合構造は、コイル20と導電性部材40との間に限らず、コイル20と冷却器30との間に適用してもよい。また、
図7に示したはんだ65による接合構造は、コイル20と導電性部材40との間に限らず、コイル20と冷却器30との間に適用してもよい。
【0051】
《第4実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、複数のコイル21、22が導電性部材40に近接している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
図8は、本実施形態に係る電源装置100の断面図である。
【0052】
コイル21は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。また、コイル22は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。
【0053】
コイル21は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、一方の側面40aに対して近接するように配置されている。また、コイル22は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、他方の側面40bに対して近接するように配置されている。導電性部材40は、コイル21とコイル22との間に配置されることで、筐体50内の空間を隔てる隔壁としての機能をもつ。そして、導電性部材40で区切られた2つの空間のうち、一方の空間にはコイル21が配置され、他方の空間にはコイル22が配置されている。
【0054】
上記のように、本実施形態では、コイル21とコイル22との間に導電性部材40が近接して配置されている。これにより、コイル21から筐体50までの浮遊容量、及び、コイル22から筐体50までの浮遊容量をそれぞれ低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル21とコイル22との間は、導電性部材40で区切られているため、一方のコイルで発生するノイズが他方のコイルに影響を与えることを防止できる。
【0055】
なお、本実施形態に係る電源装置100の変形例として、コイル21は、冷却器30の両側面(両主面)のうち、一方の側面30aに対して近接するように配置されていてもよい。また、コイル22は、冷却器30の両側面(両主面)のうち、他方の側面30bに対して近接するように配置されていてもよい。
【0056】
《第5実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、複数のコイル23〜25が導電性部材40に近接している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
図9は、本実施形態に係る電源装置100の断面図である。
【0057】
コイル23〜25は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルにそれぞれ相当する。
【0058】
コイル23、24は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、一方の側面40aに対して近接するように配置されている。また、コイル25は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、他方の側面40bに対して近接するように配置されている。導電性部材40は、コイル23、24とコイル25との間に配置されることで、筐体50内の空間を隔てる隔壁としての機能をもつ。そして、導電性部材40で区切られた2空間のうち、一方の空間にはコイル23、24が配置され、他方の空間にはコイル25が配置されている。
【0059】
上記のように、本実施形態では、コイル23、24とコイル25との間に導電性部材40が近接して配置されている。これにより、コイル23から筐体50までの浮遊容量、コイル24から筐体50までの浮遊容量、及びコイル25から筐体50までの浮遊容量をそれぞれ低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。また、コイル23、24とコイル25との間は、導電性部材40で区切られているため、一方のコイルで発生するノイズが他方のコイルに影響を与えることを防止できる。
【0060】
なお、本実施形態に係る電源装置100の変形例として、コイル23,24は、冷却器30の両側面(両主面)のうち、一方の側面30aに対して近接するように配置されていてもよい。また、コイル25は、冷却器30の両側面(両主面)のうち、他方の側面30bに対して近接するように配置されていてもよい。
【0061】
《第6実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、複数のコイル21、22が導電性部材40に近接している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
図10は、本実施形態に係る電源装置100の断面図である。
【0062】
コイル21は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。また、コイル22は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。
【0063】
コイル21、22は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、一方の側面40aに対して近接するように配置されている。コイル21の側面と導電性部材40の側面40aとの間の距離(d
1)は、コイル22の側面と導電性部材40の側面40aとの間の距離(d
2)よりも長い。そのため、コイル21と導電性部材40との間に生じる浮遊容量(C
l1)は、コイル22と導電性部材40との間に生じる浮遊容量(C
l2)よりも小さい。
【0064】
導電性部材40と対向するコイル21の側面の表面積をS
1とし、導電性部材40と対向するコイル22の側面の表面積をS
2とし、コイル21、22と導電性部材40との間の誘電率をεとすると、浮遊容量(C
l1)及び浮遊容量(C
l2)は下記式(4)及び(5)でそれぞれ表される。
【0066】
コイル21の側面と筐体50の側面との間の距離は、コイル22の側面と筐体50の側面との間の距離よりも短い。そのため、コイル21と筐体50との間に生じる浮遊容量(C
h1)は、コイル22と筐体50との間に生じる浮遊容量(C
h2)よりも大きい。
【0067】
コイル21から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル21から浮遊容量C
h1を介して筐体50までの経路と、コイル21から、浮遊容量C
l1、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル21から筐体50までの合成容量(C
a1)は、下記式(6)で表される。
【0069】
コイル22から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル22から浮遊容量C
h2を介して筐体50までの経路と、コイル22から、浮遊容量C
l2、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル22から筐体50までの合成容量(C
a2)は、下記式(7)で表される。
【0071】
そして、
図1に示した電源装置100の回路において、コイル21に接続された電流経路のインダクタンスをL
1として、コイル22に接続された電流経路のインダクタンスをL
2とすると、下記式(8)の条件を満たす場合に、筐体50から発生されるノイズの抑制効果が高くなる。なお、インダクタンス(L
1、L
2)は、コイル21、22が電気的に接続されている配線の寄生インダクタンスである。
【0073】
インダクタンス(L
1)とインダクタンス(L
2)が等しい場合には、合成容量(C
a1)と合成容量(C
a2)を等しくすることで、式(8)を満たす。合成容量(C
a1)と合成容量(C
a2)を等しくするためには、上記の表面積(S
1、S
2)又は距離(d
1、d
2)を調整すればよい。
【0074】
なお、インダクタンス(L
1)及びインダクタンス(L
2)は、厳密に等しくならなくてもよい。また、インダクタンス(L
1)及びインダクタンス(L
2)が等しくならない場合には、式(8)を満たすように、表面積(S
1、S
2)又は距離(d
1、d
2)を調整すればよい。
【0075】
上記の本実施形態では、式(8)を満たすように、コイル21、22が筐体50内に配置されている。これにより、筐体50から発するノイズをさらに低減することができる。また、式(8)の条件に加えて、インダクタンス(L
1)とインダクタンス(L
2)が等しい場合には、表面積(S
1、S
2)又は距離(d
1、d
2)を調整して、合成容量(C
a1)と合成容量(C
a2)を等しくする。これにより、浮遊容量の対称性が向上するため、さらにノイズの発生を抑えることができる。
【0076】
なお、本実施形態に係る電源装置100の変形例として、コイル21、22は、冷却器30と近接するように、配置されてもよい。このとき、コイル21と筐体50との間に生じる浮遊容量、コイル21と冷却器30との間に生じる浮遊容量、コイル
22と筐体50との間に生じる浮遊容量、及び、コイル22と冷却器30との間に生じる浮遊容量が、上記式(8)を満たすように、コイル21、22の側面の表面積、コイル21、22と冷却器30との間の距離、及び、コイル21、22と筐体50との間の距離が調整されればよい。
【0077】
《第7実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、複数のコイル21、22が導電性部材40に近接している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
【0078】
コイル21は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。また、コイル22は、トランス2、トランス4、チョークコイル6、トランス8、トランス11のうち少なくとも1つのコイルに相当する。
【0079】
コイル21、22は、導電性部材40の両側面(両主面)のうち、一方の側面40aに対して近接するように配置されている。コイル21と筐体50との間には浮遊容量(C
h3)が生じ、コイル21と導電性部材40との間には浮遊容量(C
l3)が生じ、コイル22と筐体50との間には浮遊容量(C
h4)が生じ、コイル22と導電性部材40との間には浮遊容量(C
l4)が生じる。
【0080】
コイル21から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル21から浮遊容量C
h3を介して筐体50までの経路と、コイル21から、浮遊容量C
l3、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル21から筐体50までの合成容量(C
a3)は、下記式(9)で表される。
【0082】
コイル22から流れる漏れ電流の導通経路は、コイル
22から浮遊容量
Ch4を介して筐体50までの経路と、コイル22から、浮遊容量C
l4、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。コイル22から筐体50までの合成容量(C
a4)は、下記式(10)で表される。
【0084】
そして、合成容量(C
a3)と合成容量(C
a4)が等しくなるように、浮遊容量(C
l3、C
l4、C
h3、C
h4)を形成するコイル21、22の側面の表面積、コイル21、22と筐体50との間の距離、コイル21、22と導電性部材40との間の距離が調整されている。これにより、浮遊容量の対称性が向上するため、ノイズの発生を抑えることができる。
【0085】
《第8実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電源装置100を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、半導体素子70を備えている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第7実施形態の記載を適宜、援用する。
図12は、電源装置100の断面図である。
【0086】
電源装置100は、電源装置100は、半導体素子70と、冷却器30と、導電性部材40と、筐体50とを備えている。なお、
図12は、電源装置100を構成する部品の一部を示しており、電源装置100は、
図12に示す構成以外に、コイル20を備えている。なお、筐体50内におけるコイル20の位置は、第1〜第7実施形態で示したコイル20の位置と同様である。
【0087】
半導体素子70は、電力変換回路7、9に含まれるスイッチング素子(トランジスタ)に相当する。また、半導体素子70は、電源装置100に含まれる各部品のうち、発熱する部品の1つである。半導体素子70は、筐体50と直流的に絶縁した状態で、筐体50内に設けられている。半導体素子70は、筐体50の側壁に対して、一定の距離を空けて配置されている。筐体50の側壁は、半導体素子70の周囲に位置する、筐体50の内壁である。
【0088】
半導体素子70は、モジュール化されており、半導体素子70の側面(
図12に示すyz面)が、筐体50の側面(yz面)と対向するように配置されている。また、筐体50は、導電性をもっている。そのため、半導体素子70の側面と筐体50の側面との間で、浮遊容量C
iが生じる。
【0089】
半導体素子70と導電性部材40は、所定の隙間を空けた状態で配置されている。これにより、半導体素子70と導電性部材40は互いに近接している。そして、半導体素子70と導電性部材40は所定の隙間を空けた状態で近接しているため、半導体素子70と導電性部材40との間には、浮遊容量C
mが生じる。
【0090】
半導体素子70から流れる漏れ電流の導通経路は、半導体素子70から浮遊容量C
iを介して筐体50までの経路と、半導体素子70から、浮遊容量C
m、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。半導体素子70から筐体50までの合成容量(C
p)は、コイル20から筐体50までの2つの経路上で生じる浮遊容量(C
i、C
m、C
w)を合成した容量であって、下記式(11)で表される。なお、浮遊容量(C
p)は、半導体素子70で発生した漏れ電流が筐体50流れる経路上の電気容量の合成容量に相当する。
【0092】
また、半導体素子70と筐体50との間の距離は、半導体素子70と導電性部材40との間の距離より長いため、浮遊容量C
iは、浮遊容量C
mより小さい。そのため、式(11)で示される合成量(C
p)は、より小さくなる。
【0093】
上記のように本実施形態では、半導体素子70、冷却器30及び導電性部材40を筐体50に収容し、冷却器30を筐体50と直流的に絶縁した状態で配置し、導電性部材40と半導体素子70とを近接するように、半導体素子70及び導電性部材40を配置している。これにより、半導体素子70から筐体50までの浮遊容量(C
p)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0094】
また本実施形態では、浮遊容量C
mは、浮遊容量C
iより大きい。これにより、半導体素子70から筐体50までの浮遊容量(C
p)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0095】
本実施形態に係る電源装置100の変形例として、半導体素子70は冷却器30に近接するように、配置されてもよい。
図13は、変形例に係る電源装置100の断面図である。
【0096】
半導体素子70は、周囲に位置する筐体50の内壁及び導電性部材40の側面よりも、冷却器30の冷却面30aに近づくように配置されている。そして、半導体素子70と冷却器30は、所定の隙間を空けた状態で配置されており、半導体素子70と冷却器30は互いに近接している。半導体素子70と冷却器30との間には、浮遊容量C
’mが生じる。半導体素子70から流れる漏れ電流の導通経路は、半導体素子70から浮遊容量C
iを介して筐体50までの経路と、半導体素子70から、浮遊容量C
’m、冷却器30、導電性部材40、及び浮遊容量C
wを介して筐体50までの経路である。半導体素子70から筐体50までの合成容量(C
’p)は、コイル20から筐体50までの2つの経路上で生じる浮遊容量(C
i、C
’m、C
w)を合成した容量であって、下記式(12)で表される。
【0098】
上記のように変形例では、冷却器30と半導体素子70とを近接するように、半導体素子70及び冷却器30を配置している。これにより、半導体素子70から筐体50までの浮遊容量(C
’a)を低減し、筐体50から発するノイズを低減することができる。
【0099】
なお、本実施形態において、半導体素子70は、冷却器30及び導電性部材40に近接するように、配置されてもよい。
【0100】
なお、本実施形態において、半導体素子70と導電性部材40との間、又は、半導体素子70と冷却器30の間には、第2実施形態と同様の誘電体61又は樹脂62を配置してもよい。また、本実施形態において、半導体素子70と導電性部材40との間、又は、半導体素子70と冷却器30の間は、第3実施形態と同様に、グリース64又はハンダ65により接合されていてもよい。
【0101】
また、本実施形態において、半導体素子70は複数の半導体素子を有し、複数の半導体素子70が導電性部材40又は冷却器30に近接してもよい。複数の半導体素子70が導電性部材40又は冷却器30に近接する場合に、複数の半導体素子70の位置は、第4実施形態における複数のコイル21、22の位置に対応させればよい。
【0102】
また本実施形態において、半導体素子70は3つ以上の半導体素子を有し、3つ以上の半導体素子70が導電性部材40又は冷却器30に近接してもよい。3つ以上の半導体素子70が導電性部材40又は冷却器30に近接する場合に、3つ以上の半導体素子70の位置は、第5実施形態における複数のコイル23〜25の位置に対応させればよい。
【0103】
また本実施形態において、半導体素子70が複数の半導体素子を有する場合に、複数の半導体素子70は、所定の条件を満たすように、配置されてもよい。所定の条件は、第6実施形態のコイル21、22をそれぞれ半導体素子70に置き換えた上で、式(8)で表される条件式である。ただし、合成容量(C
a1、C
a2)は、コイル21、22をそれぞれ半導体素子70に置き換えたときの容量に相当し、インダクタンス(L
1、L
2)は、複数の半導体素子70に接続される、それぞれの電流経路のインダクタンスである。
【0104】
また本実施形態において、半導体素子70が複数の半導体素子を有する場合に、複数の半導体素子70は、合成容量(C
a3)と合成容量(C
a4)が等しくなるように、配置されてもよい。ただし、合成容量(C
a3、C
a4)は、第7実施形態において、コイル21、22をそれぞれ半導体素子70に置き換えたときの容量に相当する。