(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、シート駆動装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、シート前後方向を「前後方向」といい、シート高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。
【0017】
図1に示すように、例えば自動車などの車両の前席側に搭載される車両用シート装置は、乗員の腰部を支持可能な下部シートバックのシート幅方向両側に配設されてその骨格をなす、例えば金属板からなる対の下部サイドフレーム11を有する。また、車両用シート装置は、乗員の肩甲骨を支持可能な上部シートバックのシート幅方向両側に配設されてその骨格をなす、例えば金属板からなる対の上部サイドフレーム12を有する。そして、両上部サイドフレーム12の上端部同士は、上部シートバックの骨格をなす、例えば金属製の筒材からなる略U字状のパイプフレーム13を介してシート幅方向に接続されている。
【0018】
各下部サイドフレーム11の上端部及び各上部サイドフレーム12の下端部は、それらをシート幅方向に貫通する略円柱状の回動軸14により、シート幅方向に延びる軸線の周りに回動自在に連結されている。また、両下部サイドフレーム11及び両上部サイドフレーム12間には位置調整機構としてのシートバック中折れ機構M1が介設されている。
【0019】
各下部サイドフレーム11には、乗員の側部を支持可能なサイドサポートの骨格をなす、例えば金属製のサイドサポートフレーム15が回動自在に連結されている。両下部サイドフレーム11に対して両サイドサポートフレーム15が回動すると、両サイドサポートがシート幅方向に開閉する。
【0020】
パイプフレーム13には、乗員の頭部を支えるためのヘッドレスト16をシート高さ方向に進退させる位置調整機構としてのヘッドレスト高さ調整機構M2が設置されている。
片側(
図1において右側)の下部サイドフレーム11には、例えばブラシモータからなる回転モータ21を備えるシート駆動装置20が取着されている。このシート駆動装置20は、回転モータ21の回転を上方に延出するトルクケーブルT1を介してシートバック中折れ機構M1に伝達可能である。回転モータ21の回転が伝達されると、シートバック中折れ機構M1は、両下部サイドフレーム11に対して両上部サイドフレーム12を回動させて、下部シートバックに対する上部シートバックの前後方向の傾斜角度を調整する。
【0021】
あるいは、シート駆動装置20は、回転モータ21の回転を上方に延出するトルクケーブルT2を介してヘッドレスト高さ調整機構M2に伝達可能である。回転モータ21の回転が伝達されると、ヘッドレスト高さ調整機構M2は、ヘッドレスト16を昇降させてそのシート高さ方向の位置を調整する。
【0022】
あるいは、シート駆動装置20は、回転モータ21の回転を下方に位置する変換機構17に伝達可能である。この変換機構17は、回転モータ21の回転を直線運動に変換するとともに、該直線運動を一対のプッシュプルケーブル18を介して両サイドサポートフレーム15に同時に伝達する。このとき、両下部サイドフレーム11に対して両サイドサポートフレーム15が回動することで、両サイドサポートのシート幅方向の開閉量が調整される。変換機構17及び両プッシュプルケーブル18は、位置調整機構としてのサイドサポート調整機構M3を構成する。
【0023】
つまり、シート駆動装置20は、上部に2つの出力軸、下部に1つの出力軸を有する3軸出力の構成となっている。
図2、
図3、
図4(a)〜(c)に示すように、シート駆動装置20は、シート幅方向に2分された一対の本体ケース22,23を備える。本体ケース22,23は、それらの四隅にシート幅方向内側から挿入される4本のスクリュ24にて締結されている。一方、回転モータ21は、両本体ケース22,23の下方に配置されており、その回転軸(図示略)の軸線は概ねシート高さ方向に延びている。回転モータ21は、両本体ケース22,23が協働して形成する下向きの開口に嵌着されている。
【0024】
また、回転モータ21には、その回転軸と一体回転する駆動ギヤとしてのヘリカルギヤ25が上方に突設されている。
図5に示すように、このヘリカルギヤ25は、歯数が4以下(本実施形態では「2」)のヘリカルギヤ部25aを有する小歯数ヘリカルギヤであり、その軸線方向両端部をそれぞれ軸支する一対の軸受BE1,BE2が両本体ケース22,23間に挟持される状態で本体ケース22,23内に回転可能に収容されている。なお、回転モータ21及び軸受BE1間には、本体ケース22,23内で略円環状のスペーサ26が介装されている。
【0025】
本体ケース22,23内には、ヘリカルギヤ25の径方向一側(
図5において右側)に隣接してその軸線と平行に軸線の延びる従動ギヤとしてのヘリカルギヤ27が回転可能に収容されている。このヘリカルギヤ27は、ヘリカルギヤ部25aに噛合するヘリカルギヤ部27aを有する。また、本体ケース22,23内には、ヘリカルギヤ27の径方向一側(
図5において右側)に隣接してその軸線と平行に軸線の延びる従動ギヤとしてのヘリカルギヤ28が回転可能に収容されている。このヘリカルギヤ28は、ヘリカルギヤ部27aに噛合するヘリカルギヤ部28aを有する。
図6に併せ示すように、両ヘリカルギヤ部27a,28aの歯数は、ヘリカルギヤ部25aの歯数に比べて十分に大きな互いに同数に設定されている。
【0026】
図12に併せ示すように、一方のヘリカルギヤ28は、ヘリカルギヤ部28aの軸線方向一側及び他側に突設されて本体ケース22,23に軸受BE3を介して軸支される一対の軸部31を有するとともに、それら両軸部31の軸線方向一側及び他側にそれぞれ突設された一対の嵌合部32を有する。各嵌合部32の外形は、円柱形状と該円柱形状から等角度間隔で径方向に延出する3つの円弧柱形状とが組み合わされた略3枚羽根形状を呈している。他方のヘリカルギヤ27の形状も同様である。
【0027】
また、両本体ケース22,23間には、ヘリカルギヤ27の軸線方向一側(
図5において上側)で該ヘリカルギヤ27と同軸に軸受ブッシュBE4が挟持されるとともに、該軸受ブッシュBE4のヘリカルギヤ27に対向する先端部には、ヘッドレスト高さ調整用シャフト33Hのヘリカルギヤ27から離間する先端部が軸支されている。ヘッドレスト高さ調整用シャフト33Hは、当該先端部に形成された四角穴に前記トルクケーブルT2が嵌入することでこれに一体回転するように連結される。
【0028】
さらに、両本体ケース22,23間には、ヘリカルギヤ28の軸線方向一側び他側(
図5において上側及び下側)で該ヘリカルギヤ28と同軸に一対の軸受ブッシュBE4がそれぞれ挟持される。そして、それら両軸受ブッシュBE4のヘリカルギヤ28に対向する先端部には、シートバック中折れ用シャフト33F及びサイドサポート調整用シャフト33Sのヘリカルギヤ28から離間する先端部がそれぞれ軸支されている。シートバック中折れ用シャフト33Fは、当該先端部に形成された四角穴に前記トルクケーブルT1が嵌入することでこれに一体回転するように連結され、サイドサポート調整用シャフト33Sは、当該先端部に形成された四角穴に前記変換機構17の入力軸(例えばトルクケーブル、図示略)が嵌入することでこれに一体回転するように連結される。
【0029】
従って、シートバック中折れ用シャフト33F、ヘッドレスト高さ調整用シャフト33H及びサイドサポート調整用シャフト33Sのいずれか一つが回動すると、該当のシートバック中折れ機構M1、ヘッドレスト高さ調整機構M2又はサイドサポート調整機構M3が作動して所要のシート位置が調整される。つまり、本実施形態は、シートバック中折れ機構M1、ヘッドレスト高さ調整機構M2及びはサイドサポート調整機構M3の各々における正方向及び逆方向のシート位置の調整が可能な、いわゆる6ウェイパワーシートとなっている。
【0030】
なお、これらヘッドレスト高さ調整用シャフト33H、シートバック中折れ用シャフト33F及びサイドサポート調整用シャフト33Sは、それらの配置態様等を除けば互いに同一構造を有しているため、以下ではサイドサポート調整用シャフト33Sを代表してその周辺構造を説明する場合がある。
【0031】
図5及び
図12に示すように、サイドサポート調整用シャフト33Sは、略円柱形状を呈しており、軸受ブッシュBE4からヘリカルギヤ28に対向する側に延伸する先端部は、出力軸側嵌合部34を形成する。また、サイドサポート調整用シャフト33Sは、軸受ブッシュBE4の開口端に隣接する軸線方向中間部に突設された外向きのフランジ35を有する。
【0032】
ヘリカルギヤ28の嵌合部32及びサイドサポート調整用シャフト33Sのフランジ35間には、筒部材36が介設されている。筒部材36は、筒部37と、該筒部37のサイドサポート調整用シャフト33Sに対向する先端から径方向外側に突設されたフランジ状の押圧片38とを有する。筒部材36には、サイドサポート調整用シャフト33Sと一体回転するように、且つ、該サイドサポート調整用シャフト33Sに対して軸線方向に移動可能に出力軸側嵌合部34が嵌挿されるとともに、嵌合部32に嵌合可能な嵌合孔39が形成されている。筒部材36は、軸線方向にヘリカルギヤ28側に移動することで、該ヘリカルギヤ28と一体回転するようにその嵌合孔39を嵌合部32と嵌合させる。
【0033】
つまり、ヘリカルギヤ28の回転は、筒部材36の移動に伴い嵌合部32及び嵌合孔39が嵌合することで筒部材36を介してサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達可能であり、嵌合部32及び嵌合孔39の嵌合が外れることで筒部材36を介したサイドサポート調整用シャフト33Sへの伝達が不能になる。サイドサポート調整用シャフト33Sが回動することでサイドサポート調整機構M3が作動することは既述のとおりである。ヘリカルギヤ28の嵌合部32、サイドサポート調整用シャフト33Sの出力軸側嵌合部34及び筒部材36は、ヘリカルギヤ28及びサイドサポート調整用シャフト33Sを選択的に接続するクラッチ機構C3を構成する。
【0034】
サイドサポート調整用シャフト33Sの出力軸側嵌合部34は、押圧片38の内周側で筒部材36及びフランジ35間に介装されたコイルばねからなる圧縮ばねSP1に挿通されている。そして、筒部材36は、圧縮ばねSP1によりその嵌合孔39がヘリカルギヤ28の嵌合部32に嵌合する側、即ちヘリカルギヤ28の回転をサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達可能な側に常時付勢されている。換言すれば、ヘリカルギヤ28の回転がサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達不能な状態では、圧縮ばねSP1の付勢力に抗して嵌合部32及び嵌合孔39の嵌合が外れる側に筒部材36が移動していることになる。
【0035】
なお、嵌合部32は、例えばエラストマやゴムなどからなる略円環状の緩衝部材BUに嵌挿されている。この緩衝部材BUは、嵌合部32の基端側の周縁部となる軸部31の筒部材36に対向する先端面に密着する。そして、筒部材36の嵌合孔39にヘリカルギヤ28の嵌合部32が嵌挿された際には、筒部材36の先端面が緩衝部材BUを介して軸部31の前記先端面に当接することになる。これにより、筒部材36にヘリカルギヤ28が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音が緩和される。
【0036】
ヘリカルギヤ28及びシートバック中折れ用シャフト33F間、並びにヘリカルギヤ27及びヘッドレスト高さ調整用シャフト33H間にも、それらを選択的に接続する同様のクラッチ機構C1,C2がそれぞれ構成されている。
【0037】
各筒部材36の筒部37は、本体ケース23に支持された仲介部材40に遊挿されている。すなわち、
図7及び
図8に示すように、本体ケース23には、各隣り合う筒部材36の押圧片38及びヘリカルギヤ27(28)間でシート幅方向及び軸線方向に直交する方向(紙面に直交する方向)に延在する略半円溝状の軸受溝23aが形成されている。
【0038】
一方、仲介部材40は、軸受溝23aに軸支される略優弧柱状の軸部41を有するとともに、筒部材36の筒部37をその軸線方向に略直交する方向に横切る略四角枠状の本体部42を有する。そして、仲介部材40には、本体部42に形成された略円形の挿通孔42aにおいて筒部37が遊挿されている。従って、仲介部材40は、筒部37に阻害されることなく、軸受溝23a周りの一定範囲の回動が可能である。この回動範囲における周方向は、筒部材36の軸線方向に合致するその移動方向に沿っている。
【0039】
そして、仲介部材40の本体部42が軸部41を中心にヘリカルギヤ27(28)から離間する方向に回動した状態にあると、本体部42に押圧片38の押圧される筒部材36は、圧縮ばねSP1の付勢力に抗して軸線方向に移動し、その嵌合孔39をヘリカルギヤ27(28)の嵌合部32から外す。また、仲介部材40の本体部42が軸部41を中心にヘリカルギヤ27(28)に近付く方向に回動して筒部材36の押圧片38に沿って広がる状態になると、筒部材36は、圧縮ばねSP1に付勢されてその嵌合孔39をヘリカルギヤ27(28)の嵌合部32と嵌合させる。
【0040】
図3、
図6及び
図9に示すように、本体ケース22には、シート高さ方向中間部からシート幅方向外側に向かって略円柱状のスイッチカム支持部22aが突設されるとともに、該スイッチカム支持部22aから更にシート幅方向外側に向かって略円柱状のハンドル支持部22bが突設されている。ハンドル支持部22bは、スイッチカム支持部22aよりも縮径されている。また、本体ケース22には、スイッチカム支持部22aの上方及び下方からシート幅方向外側に向かって略台状の台座部22c,22dがそれぞれ突設されるとともに、それら両台座部22c,22dから更にシート幅方向外側に向かって略円柱状のハンドル支持部22e,22fがそれぞれ突設されている。スイッチカム支持部22a及び台座部22c,22dのシート幅方向外側への突出長は互いに同等に設定されており、ハンドル支持部22b,22e,22fのシート幅方向外側への突出長は互いに同等に設定されている。また、ハンドル支持部22b,22e,22fの外径は互いに同等に設定されている。さらに、ハンドル支持部22b,22e,22fは、シート高さ方向に沿う一方向に略一定間隔で並設されている。つまり、ハンドル支持部22bの中心は、両ハンドル支持部22e,22f間の中心に配置されている。
【0041】
さらに、本体ケース22には、両ハンドル支持部22b,22e間でそれらの中心を結ぶ直線に対して線対称となる位置に一対の略円形の軸受孔22g,22hが形成されている。また、本体ケース22には、ハンドル支持部22bの中心を中心とする軸受孔22gの点対称となる位置に略円形の軸受孔22iが形成されている。これら軸受孔22g,22h,22iがシート幅方向に開口することはいうまでもない。
【0042】
スイッチカム支持部22aには、スイッチカム50が支持されている。このスイッチカム50は、スイッチカム支持部22aの外径と同等の内径及び該スイッチカム支持部22aの突出長と同等の板厚を有する略円環状の本体部51を有するとともに、該本体部51から互いに相反する径方向に突出する一対の略フランジ状のスイッチ押圧部52A,52Bを有する。
図10に併せ示すように、一方のスイッチ押圧部52Aの先端面は、スイッチカム支持部22aを中心に時計回りに向かうに従い該スイッチカム支持部22aに近付くように曲成されている。他方のスイッチ押圧部52Bの先端面は、スイッチカム支持部22aを中心に反時計回りに向かうに従い該スイッチカム支持部22aに近付くように曲成されている。つまり、両スイッチ押圧部52A,52Bは、それらの突出する径方向に直交する径方向の直線に対して線対称となる形状を呈する。
【0043】
また、スイッチカム50は、両スイッチ押圧部52A,52Bから所定角度だけ互いに近付くハンドル支持部22e側の周方向の位置で本体部51から径方向に突出する一対の略爪状の被押圧部53H,53Fを有する。さらに、スイッチカム50は、本体部51を中心とする被押圧部53Hの点対称となる周方向の位置で本体部51から径方向に突出する略爪状の被押圧部53Sを有する。これら被押圧部53H,53F,53Sは、互いに同一の形状を呈する。
【0044】
なお、本体ケース22及びスイッチカム50間には、捩りばねSP2が介装されており、スイッチカム50は、捩りばねSP2により所定の初期回動位置に保持される。初期回動位置にあるスイッチカム50は、ハンドル支持部22e等に向かう径方向に直交する互いに相反する径方向に両スイッチ押圧部52A,52Bを配置する。
【0045】
軸受孔22g,22h,22iには、カム部材60H,60F,60Sがそれぞれ軸支されている。すなわち、
図8及び
図12に示すように、カム部材60Sは軸受孔22iに挿通・軸支される略円柱状の軸部61を有するとともに、本体ケース22のシート幅方向外側で軸受孔22iの外側周縁部に摺接する略優弧柱状のスイッチカム押圧部63Sを有する。そして、スイッチカム押圧部63Sには、軸受孔22iの外周側で本体ケース22内に遊挿される略円柱状のカム突部62が突設されている。スイッチカム押圧部63Sは、スイッチカム50の板厚と同等の板厚を有してその軸線方向の位置に合致するように配置されている。また、カム部材60Sは、スイッチカム押圧部63Sに隣接して本体ケース22のシート幅方向外側に配置されたセクタギヤ部64Sを有するとともに、該セクタギヤ部64Sに隣接して本体ケース22の更にシート幅方向外側に配置された略円柱状の軸部65を有する。
【0046】
カム部材60Sは、カム突部62において筒部材36の筒部37の外周面に当接又は近接して軸部41から離間する側の仲介部材40の先端部43に当接可能に配置されている。つまり、カム部材60Sは、カム突部62において仲介部材40を介して筒部材36の押圧片38を押圧可能に配置されている。そして、カム部材60Sは、カム突部62を通る径方向が筒部材36等の軸線方向に一致する回転位置、即ちヘリカルギヤ28からカム突部62を最も離間させる回転位置(以下、「中立位置」ともいう)にあるときに、該カム突部62により仲介部材40を介して押圧片38を押圧する。このとき、筒部材36は、圧縮ばねSP1の付勢力に抗してヘリカルギヤ28から離間する状態にあり、ヘリカルギヤ28の嵌合部32から嵌合孔39の外れた状態にある。
【0047】
また、
図13及び
図14に示すように、カム部材60Sは、回動に伴いカム突部62を通る径方向が筒部材36等の軸線方向から外れると、圧縮ばねSP1に付勢される筒部材36の嵌合孔39がヘリカルギヤ28の嵌合部32と嵌合するように筒部材36の移動を許容する。一方、カム部材60Sは、中立位置への回動に伴いカム突部62により仲介部材40を介して筒部材36の押圧片38を押圧することで、圧縮ばねSP1の付勢力に抗して筒部材36を移動させて、ヘリカルギヤ28の嵌合部32から筒部材36の嵌合孔39を外す。
【0048】
図8に示すように、カム部材60Fも、カム部材60Sに準じて軸部61、カム突部62、スイッチカム押圧部63F、セクタギヤ部64F及び軸部65を有する。また、
図7に示すように、カム部材60Hも、カム部材60Sに準じて軸部61、カム突部62、スイッチカム押圧部63H、セクタギヤ部64H及び軸部65を有する。従って、カム部材60H,60Fもカム部材60Sと同様に動作する。なお、
図10に示すように、中立位置にあるカム部材60H,60F,60Sの各々は、ハンドル支持部22b(スイッチカム支持部22a)から離間する径方向にスイッチカム押圧部63H,63F,63Sを配置する。ただし、中立位置にあるカム部材60Sは、ハンドル支持部22fに向かう径方向にセクタギヤ部64Sを配置する。これに対し、中立位置にあるカム部材60Hは、ハンドル支持部22eに向かう径方向にセクタギヤ部64Hを配置し、中立位置にあるカム部材60Fは、ハンドル支持部22bに向かう径方向にセクタギヤ部64Fを配置する。
【0049】
ここで、初期回動位置にあるスイッチカム50は、カム部材60H,60F,60Sに向かう径方向に被押圧部53H,53F,53Sをそれぞれ配置する。被押圧部53H,53F,53Sは、スイッチカム押圧部63H,63F,63Sの回動軌跡上に配置されており、中立位置にあるカム部材60H,60F,60Sが一方向又は他方向に回動することでスイッチカム押圧部63H,63F,63Sに押圧される。そして、スイッチカム押圧部63H,63F,63Sに被押圧部53H,53F,53Sの押圧されるスイッチカム50が該当の回動方向に回動する。
【0050】
本体ケース22には、スイッチカム50が初期回動位置にあるときの両スイッチ押圧部52A,52Bの外周側で、スイッチ構造体55A,55Bがそれぞれ設置されている。これら両スイッチ構造体55A,55Bは、それらの対向方向に直交するハンドル支持部22b(スイッチカム支持部22a)の径方向の直線に対して線対称に配置されている。そして、両スイッチ構造体55A,55Bは、当該径方向に沿って延在する略長方形の箱状の本体部56A,56Bを有するとともに、該本体部56A,56Bの互いに対向する端面から出没可能なボタン57A,57Bを有する。両本体部56A,56Bは、両スイッチ押圧部52A,52Bのスイッチカム支持部22aを中心とする回動軌跡をそれぞれ開放するように配置されている。また、一方のボタン57Aは、通常は本体部56Aからスイッチ押圧部52Aに向かって突出する状態にあり、スイッチカム支持部22aを中心とするスイッチ押圧部52Aの図示時計回りの回動軌跡を遮るとともに、図示反時計回りの回動軌跡を開放する。さらに、他方のボタン57Bは、通常は本体部56Bからスイッチ押圧部52Bに向かって突出する状態にあり、スイッチカム支持部22aを中心とするスイッチ押圧部52Bの図示反時計回りの回動軌跡を遮るとともに、図示時計回りの回動軌跡を開放する。
【0051】
従って、例えばスイッチカム50がスイッチカム支持部22aを中心に図示時計回りに回動すると、スイッチ押圧部52Aがスイッチ構造体55Aのボタン57Aを押下するとともに、スイッチ押圧部52Bがスイッチ構造体55Bのボタン57Bを通過する。反対に、スイッチカム50がスイッチカム支持部22aを中心に図示反時計回りに回動すると、スイッチ押圧部52Aがスイッチ構造体55Aのボタン57Aを通過するとともに、スイッチ押圧部52Bがスイッチ構造体55Bのボタン57Bを押下する。
【0052】
図11に示すように、両スイッチ構造体55A,55Bの各々は、直流電源の高電位+Vに電気的に接続された接点CHA,CHBと、低電位GNDに電気的に接続された接点CLA,CLBと、回転モータ21の互いに異なる端子に接続された可動端子MTA,MTBとで構成される電気回路を含む。そして、両可動端子MTA,MTBは、両ボタン57A,57Bとそれぞれ連動しており、通常は低電位GND側の接点CLA,CLBに電気的に接続されている。両可動端子MTA,MTBは、両ボタン57A,57Bがそれぞれ押下されることで、高電位+V側の接点CHA,CHBに電気的に接続される。
【0053】
従って、
図10において、スイッチカム50が初期回動位置から時計回りに回動すると、スイッチ押圧部52Aにボタン57Aの押下されるスイッチ構造体55Aの可動端子MTAが高電位+V側の接点CHAに電気的に接続されることで、一の極性で回転モータ21に通電される。反対に、スイッチカム50が初期回動位置から反時計回りに回動すると、ボタン57Bの押下されるスイッチ構造体55Bの可動端子MTBが高電位+V側の接点CHBに電気的に接続されることで、逆の極性で回転モータ21に通電される。
【0054】
つまり、両スイッチ構造体55A,55Bは、スイッチカム50の回動方向に応じた極性で回転モータ21に通電するスイッチを含む。換言すれば、回転モータ21の通電に係るスイッチは、両極性にそれぞれ対応して互いに独立のスイッチ構造体55A,55Bの電気回路で構成されている。
【0055】
図10に示すように、ハンドル支持部22e,22b,22fには、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sがそれぞれ支持されている。すなわち、ハンドルギヤシャフト70Sは、ハンドル支持部22fの外径と同等の内径及び該ハンドル支持部22bの突出長と同等の板厚を有して該ハンドル支持部22fに回動自在に嵌挿される略円環状の本体部71を有するとともに、該本体部71の所定角度範囲の外周部に形成されてセクタギヤ部64Sに噛合するハンドルギヤ部72Sを有する。また、
図3に示すように、ハンドルギヤシャフト70Sは、本体部71と同心で本体ケース22から離間する方向に突出する略多角柱状の連結シャフト73Sを有する。ハンドルギヤシャフト70Fも、ハンドルギヤシャフト70Sに準じて本体部71、ハンドルギヤ部72F及び連結シャフト73Fを有する。また、ハンドルギヤシャフト70Hも、ハンドルギヤシャフト70Sに準じて本体部71、ハンドルギヤ部72H及び連結シャフト73Hを有する。
【0056】
シート駆動装置20は、本体ケース22,23と共にその筐体をなすカバー29を備える。このカバー29は、本体ケース22をシート幅方向外側から覆う状態で本体ケース22に締結されている。カバー29には、カム部材60H,60F,60Sの軸部65がそれぞれ回動自在に嵌挿される3つの略円形の軸受孔29aが形成されるとともに、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの連結シャフト73H,73F,73Sがそれぞれ遊挿される3つの略円形の挿通孔29bが形成されている。従って、カム部材60H,60F,60Sは、本体ケース22及びカバー29間に挟まれて軸線方向(シート幅方向)に位置決めされる。また、ハンドルギヤシャフト70Fは、スイッチカム50と共に本体部71が本体ケース22及びカバー29間に挟まれて軸線方向(シート幅方向)に位置決めされるとともに、ハンドルギヤシャフト70H,70Sは、本体部71が本体ケース22及びカバー29間に挟まれて軸線方向(シート幅方向)に位置決めされる。さらに、スイッチ構造体55A,55Bは、本体ケース22及びカバー29間に挟まれてシート幅方向に位置決めされる。
【0057】
ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの連結シャフト73H,73F,73Sには、操作部材としての操作ハンドル75H,75F,75Sがそれぞれ装着されている。すなわち、操作ハンドル75H,75F,75Sは、連結シャフト73H,73F,73Sの挿通孔29bを貫通する先端部が回動不能に嵌挿される略円筒状の連結部76を有するとともに、該連結部76の先端から所定の径方向に延出する略アーム状の操作部77を有する。従って、これら操作ハンドル75H,75F,75Sは、互いに平行な軸線の周りに回動するように軸支されている。操作ハンドル75H,75F,75Sがハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sを介して軸線方向(シート幅方向)に位置決めされることはいうまでもない。
【0058】
なお、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの各々及び本体ケース22間には、捩りばねSP3が介装されており、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの各々は、捩りばねSP3の付勢力で操作ハンドル75H,75F,75Sと共に所定の初期位置に保持される。操作ハンドル75H,75F,75Sの各々が初期位置にあるとき、その操作部77は連結部76から斜め前上方に延出する。また、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの各々が初期位置にあるとき、ハンドルギヤ部72H,72F,72Sにセクタギヤ部64H,64F,64Sの噛合するカム部材60H,60F,60Sが前記中立位置に配置されるように設定されている。
【0059】
ここで、ハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sの各々を初期位置に保持する捩りばねSP3の付勢力は、各筒部材36の嵌合孔39が対向する嵌合部32と嵌合するように筒部材36を移動させる圧縮ばねSP1の付勢力よりも大きく設定されている。従って、通常は、操作ハンドル75H,75F,75Sの各々は初期位置に保持されており、これに伴ってカム部材60H,60F,60Sの各々は中立位置に配置されている。つまり、通常は、ヘリカルギヤ27の嵌合部32及びヘッドレスト高さ調整用シャフト33H間の筒部材36を介した回転伝達が不能な状態に保持される。あるいは、ヘリカルギヤ28の嵌合部32及びシートバック中折れ用シャフト33F又はサイドサポート調整用シャフト33S間の筒部材36を介した回転伝達が不能な状態に保持される。
【0060】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図10に示すように、全ての操作ハンドル75H,75F,75Sが操作されておらず、全てのハンドルギヤシャフト70H,70F,70Sが該当の初期位置に配置されているとする。このとき、全てのカム部材60H,60F,60Sが該当の中立位置にあることで、前述のようにヘリカルギヤ27,28の回転がヘッドレスト高さ調整用シャフト33H等に伝達不能な状態にある。また、初期回動位置に配置されているスイッチカム50は、被押圧部53H,53F,53Sがスイッチカム押圧部63H,63F,63Sの軸受孔22g,22h,22iの周りの回動軌跡をそれぞれ遮るように配置されている。そして、カム部材60H,60F,60Sは、被押圧部53H,53F,53S及びスイッチカム押圧部63H,63F,63S間にそれぞれ軸受孔22g,22h,22iを中心とする一対の周方向の隙間Cを形成する。
【0061】
また、初期回動位置に配置されているスイッチカム50は、両ボタン57A,57Bに対向する径方向に両スイッチ押圧部52A,52Bをそれぞれ配置する。両ボタン57A,57Bは、両スイッチ押圧部52A,52Bにそれぞれ当接又は近接するものの、両本体部56A,56Bからそれぞれ突出する状態にある。つまり、回転モータ21と直流電源との接続がスイッチ構造体55A,55Bを介して遮断されている。なお、一方のボタン57Aは、スイッチカム支持部22aを中心とするスイッチ押圧部52Aの図示時計回りの回動軌跡を遮るとともに、図示反時計回りの回動軌跡を開放する。他方のボタン57Bは、スイッチカム支持部22aを中心とするスイッチ押圧部52Bの図示反時計回りの回動軌跡を遮るとともに、図示時計回りの回動軌跡を開放する。
【0062】
そして、
図13への変化で示すように、例えばハンドルギヤシャフト70S(操作ハンドル75S)を捩りばねSP3の付勢力に抗して初期位置から時計回りに回動操作すると、ハンドルギヤ部72S及びセクタギヤ部64S間の回転伝達によってカム部材60S(カム突部62)が中立位置から反時計回りに回動する。このとき、カム部材60Sが中立位置から外れることで、圧縮ばねSP1の付勢力によって筒部材36の嵌合孔39がヘリカルギヤ28の嵌合部32と嵌合するように筒部材36が移動する。これにより、ヘリカルギヤ28の回転が筒部材36を介してサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達可能となる。
【0063】
同時に、カム部材60Sは、中立位置からの回動に伴い、隙間C分の空走区間を経てスイッチカム押圧部63Sでスイッチカム50の被押圧部53Sを押圧する。これにより、スイッチカム50がスイッチカム支持部22aを中心に捩りばねSP2の付勢力に抗して初期回動位置から図示時計回りに回動する。
【0064】
スイッチカム50が図示時計回りに回動すると、スイッチ押圧部52Aが対向するスイッチ構造体55Aのボタン57Aを押下するとともに、スイッチ押圧部52Bが対向するスイッチ構造体55Bのボタン57Bを通過する。これにより、押下されたボタン57A(可動端子MTA)に対応する極性で回転モータ21と直流電源とが接続され、回転モータ21が正転する。
【0065】
反対に、
図14への変化で示すように、ハンドルギヤシャフト70S(操作ハンドル75S)を捩りばねSP3の付勢力に抗して初期位置から反時計回りに回動操作すると、ハンドルギヤ部72S及びセクタギヤ部64S間の回転伝達によってカム部材60S(カム突部62)が中立位置から時計回りに回動する。このとき、カム部材60Sが中立位置から外れることで、圧縮ばねSP1の付勢力によって筒部材36の嵌合孔39がヘリカルギヤ28の嵌合部32と嵌合するように筒部材36が移動する。これにより、ヘリカルギヤ28の回転が筒部材36を介してサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達可能となる。
【0066】
同時に、カム部材60Sは、中立位置からの回動に伴い、隙間C分の空走区間を経てスイッチカム押圧部63Sでスイッチカム50の被押圧部53Sを押圧する。これにより、スイッチカム50がスイッチカム支持部22aを中心に捩りばねSP2の付勢力に抗して初期回動位置から図示反時計回りに回動する。
【0067】
スイッチカム50が図示反時計回りに回動すると、スイッチ押圧部52Aが対向するスイッチ構造体55Aのボタン57Aを通過するとともに、スイッチ押圧部52Bが対向するスイッチ構造体55Bのボタン57Bを押下する。これにより、押下されたボタン57B(可動端子MTB)に対応する極性で回転モータ21と直流電源とが接続され、回転モータ21が逆転する。
【0068】
以上により、操作ハンドル75Sの操作方向によって押下されるボタン57A,57Bが決まり、回転モータ21の回転方向が決まる。そして、回転モータ21が回転すると、その回転は、ヘリカルギヤ25、ヘリカルギヤ27,28及び筒部材36を介してサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達される。そして、サイドサポート調整用シャフト33Sの回転により、その回転方向に応じて両サイドサポートフレーム15がシート幅方向に開閉するようにサイドサポート調整機構M3が作動する。
【0069】
その後、操作ハンドル75Sの操作力を解放すると、該操作ハンドル75Sと共にハンドルギヤシャフト70Sは捩りばねSP3に付勢されて初期位置に復帰する。これに伴い、カム部材60Sは、ハンドルギヤ部72S及びセクタギヤ部64S間の回転伝達により圧縮ばねSP1の付勢力に抗して回動し中立位置に復帰する。カム部材60Sと共にハンドルギヤシャフト70S(操作ハンドル75S)を初期位置に復帰させる捩りばねSP3の付勢力が、筒部材36を移動させる圧縮ばねSP1の付勢力よりも大きいことは既述のとおりである。これにより、ヘリカルギヤ28の回転が筒部材36を介してサイドサポート調整用シャフト33Sに伝達不能となる。
【0070】
一方、カム部材60Sの中立位置への復帰に伴い、スイッチカム押圧部63Sから被押圧部53Sの解放されたスイッチカム50は、捩りばねSP2に付勢されて初期回動位置に復帰する。そして、スイッチ構造体55A,55Bのボタン57A,57Bがスイッチ押圧部52A,52Bから解放されることで、回転モータ21と電源との接続が遮断される。これにより、回転モータ21の回転が停止する。
【0071】
他の操作ハンドル75H,75Fを操作した場合の動作も同様である。
特に、回転モータ21の回転軸及び各クラッチ機構C1〜C3の入力軸間の回転伝達が、ヘリカルギヤ25及びヘリカルギヤ27,28で構成される平行配置の歯車列で行われることで、回転モータ21及び複数のクラッチ機構C1〜C3の配置空間がそれらの軸線に沿う形状になって装置全体としてより小型化される。
【0072】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、回転モータ21の回転軸及び各クラッチ機構C1〜C3(入力軸)間の回転伝達が、ヘリカルギヤ25及びヘリカルギヤ27,28で構成される平行配置の歯車列で行われることで、回転モータ21及び複数のクラッチ機構C1〜C3の配置空間がそれらの軸線に沿う形状になって装置全体としてより小型化することができる。例えばシート駆動装置20のシート幅方向及び前後方向の厚みをより縮小することができる。
【0073】
また、回転モータ21の回転軸の回転がヘリカルギヤ25及びヘリカルギヤ27,28の転がり接触で伝達されることで、伝達効率の増加分だけ回転モータ21に必要な動力(出力)をより低減することができ、ひいては回転モータ21自体をより小型化することができる。
【0074】
(2)本実施形態では、いずれか一つの操作ハンドル75H,75F,75Sが操作されると、当該操作ハンドル75H,75F,75Sに駆動されるスイッチカム50がスイッチ構造体55A,55B(スイッチ)に係合することで、操作方向に応じた極性で回転モータ21に通電するようにスイッチ構造体55A,55Bが作動する。従って、いずれか一つの操作ハンドル75H,75F,75Sの操作に連動するスイッチ構造体55A,55Bの作動を極めて簡易な構造で実現することができる。
【0075】
(3)本実施形態では、スイッチカム50は、複数の操作ハンドル75H,75F,75Sに共用の単品である。このように、複数の操作ハンドル75H,75F,75Sに対して単数のスイッチカム50でよいため、部品点数を削減することができる。また、シート駆動装置20の構造をより簡素化することができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0076】
(4)本実施形態では、3つの操作ハンドル75H,75F,75Sは、互いに平行な軸線の周りに回動するように軸支されている。そして、3つの操作ハンドル75H,75F,75Sのうち、それらの軸線の中間に位置する軸線を有する操作ハンドル75Fと同軸に共用のスイッチカム50を回動自在に軸支したことで、当該操作ハンドル75Fや残りの2つの操作ハンドル75H,75Sにスイッチカム50を簡易に駆動連結することができる。
【0077】
(5)本実施形態では、回転モータ21の回転軸及び各クラッチ機構C1〜C3(入力軸)間の回転伝達を、小歯数のヘリカルギヤ25及びヘリカルギヤ27,28により高効率且つ高減速で行うことができる。
【0078】
(6)本実施形態では、3つの操作ハンドル75H,75F,75Sの回動軸を個別に配置したことで、例えばそれら操作ハンドル75H,75F,75Sを同軸に配置する場合のような重なり合いが解消される分、軸線方向(シート幅方向)への厚みをより縮小することができる。
【0079】
(7)本実施形態では、スイッチカム50(スイッチ押圧部52A,52B)で直にスイッチ構造体55A,55Bを作動させる構成にしたことで、例えば該スイッチ構造体55A,55Bを作動させるための適宜のスイッチレバーを介在せる場合に比べて部品点数を削減することができる。
【0080】
(8)本実施形態では、回転モータ21の通電に係るスイッチが互いに別体のスイッチ構造体55A,55Bの電気回路で構成されることで、簡易な回路構成の組み合わせにできる分、汎用性を向上させることができる。
【0081】
(9)本実施形態では、一つの回転モータ21で複数の位置調整機構(M1〜M3)を選択的に作動させることができるため、その電気的構成をより簡易化することができる。また、複数のクラッチ機構C1〜C3の各々は、該当する位置調整機構(M1〜M3)への出力軸(ヘッドレスト高さ調整用シャフト33H、シートバック中折れ用シャフト33F、サイドサポート調整用シャフト33S)とヘリカルギヤ27,28とを接続する構造(いわゆる軸継手)である。このため、複数のクラッチ機構C1〜C3の各々を出力軸等の周りに集約的に配置することができ、装置全体としてより小型化することができる。さらに、出力軸の本数(3本)分だけシートの位置調整に係る機能数(位置調整機構の個数)を増やすことができるため、該機能数の制約をより緩和することができる。
【0082】
(10)本実施形態では、操作ハンドル75H,75F,75Sを初期位置から回動操作することで、該当のクラッチ機構C1〜C3を接続するとともに、スイッチ構造体55A,55Bにより操作方向に応じた極性で回転モータ21に通電できる。従って、操作ハンドル75H,75F,75Sの操作方向に合わせて回転モータ21を正転又は逆転させることができ、操作ハンドル75H,75F,75Sの操作方向と位置調整機構(M1〜M3)の調整方向とがよりわかりやすい関係になるように設定できる。
【0083】
(11)本実施形態では、ヘリカルギヤ25に直接又は間接的に噛合するヘリカルギヤ(27,28)の本数を増やすことで、出力軸の本数を容易に増やすことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0084】
・前記実施形態において、操作ハンドル75H,75F,75Sの操作部77は、例えばダイヤル状であってもよい。
・前記実施形態において、ヘリカルギヤ25の歯数は「3」以上であってもよい。
【0085】
・前記実施形態において、両ヘリカルギヤ27,28の歯数は互いに異なっていてもよい。つまり、ヘリカルギヤ27,28間の回転伝達で増速又は減速を行ってもよい。
・前記実施形態において、全ての操作ハンドル75H,75F,75Sを同軸に配置してもよい。つまり、本体ケース22に一つのハンドル支持部を設けて全ての操作ハンドル75H,75F,75Sで共有するようにしてもよい。ただし、各操作ハンドル75H,75F,75Sがスイッチ構造体55A,55Bを作動しやすくするために、スイッチカムをそれらの軸線と異なる軸線の周りに回動可能にすることがより好ましい。この場合、スイッチカムは、複数の操作ハンドル75H,75F,75Sに対して個別に設けられてもよいし、共有する単品であってもよい。
【0086】
・前記実施形態において、スイッチカム50を省略するとともに、各操作ハンドル75H,75F,75Sに被押圧部(53H,53F,53S)及びスイッチ押圧部(52A,52B)を設けてもよい。つまり、各操作ハンドル75H,75F,75Sにスイッチカムの機能を付加してもよい。
【0087】
・前記実施形態において、両スイッチ構造体55A,55Bを一体化した一部品で構成されるスイッチ構造体を採用してもよい。
・前記実施形態において、ヘリカルギヤ27における出力軸は2本でもよい。つまり、ヘリカルギヤ27の出力を2系統(即ち2つの位置調整機構)としてもよい。
【0088】
あるいは、ヘリカルギヤ28における出力軸は1本でもよい。つまり、ヘリカルギヤ28の出力を1系統(即ち1つの位置調整機構)としてもよい。
あるいは、ヘリカルギヤ25に直接又は間接的に噛合するヘリカルギヤの本数は任意である。例えば1本でもよいし、3本以上であってもよい。また、3本以上の場合、各ヘリカルギヤにおける出力軸は1本でもよいし、2本でもよい。
【0089】
いずれにしても、操作ハンドル等をシート駆動装置全体の出力軸の本数と同数だけ設ける必要がある。
・前記実施形態において、回転軸に設けられるヘリカルギヤ(25)に代えて平歯車(小歯車)を採用するとともに、クラッチ機構(入力軸)に設けられるヘリカルギヤ(27,28)に代えて平歯車(大歯車)を採用してもよい。
【0090】
・前記実施形態において、位置調整機構は、例えばシートクッションに対してシートバックを傾動させるためのリクライニング機構、シートクッションの前後、上下のスライド機構、シートクッションの長さ調整機構、オットマン機構等であってもよい。また、例えばステアリング装置のチルト調整機構、ロック機構等であってもよい。