【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「電波状況ビッグデータを利用する局所的ホワイトスペース有効利用促進技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
志村隆一郎,外1名,“受信パイロット信号の相関値と背景雑音の比に応じてテイラー級数推定法の重みを制御するTDOAを用いた移動端末測位”,電子情報通信学会論文誌 (J90−B),社団法人電子情報通信学会,2007年 2月 1日,第2号,178-189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波源からの電波を受信する3個以上の受信装置と、前記波源から前記受信装置までの電波の到来時間差を用いて、前記波源の位置を算出するサーバとを備えた通信システムにおける受信装置であって、
前記波源からの電波を受信するアンテナと、
前記アンテナによって受信された受信信号を複数に分ける分配器と、
前記分配器によって分けられた複数の受信信号をそれぞれベースバンド信号に変換する複数のRF回路と、
前記複数のRF回路によってそれぞれ変換された複数のベースバンド信号を前記サーバに送信する送信部と、を備えた受信装置。
異なる前記RF回路によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて、遅延波の電力に関する情報であるマルチパス情報を算出するマルチパス情報算出部をさらに備え、
前記送信部は、前記マルチパス情報算出部が算出したマルチパス情報をも前記サーバに送信する、請求項2または請求項3記載の受信装置。
波源からの電波を受信した受信信号を分配器によって複数に分け、当該複数の受信信号をそれぞれ複数のRF回路によって複数のベースバンド信号に変換する3個以上の受信装置と、サーバとを備えた通信システムにおけるサーバであって、
前記受信装置から複数のベースバンド信号を受信する受信部と、
前記受信装置のペアである2個の受信装置について、一方の受信装置の複数のベースバンド信号と、他方の受信装置の複数のベースバンド信号との複数の組み合わせに関する相互相関を用いて、前記2個の受信装置に関する前記波源からの電波の到来時間差を算出することを、前記受信装置の少なくとも2個のペアについて行う到来時間差算出部と、
前記受信装置の位置と、前記受信装置の複数のペアごとに前記到来時間差算出部によって算出された到来時間差とを用いて、前記波源の位置を算出する波源位置算出部と、を備えたサーバ。
前記3個以上の受信装置のそれぞれについて、異なる前記RF回路によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて算出される受信電力を取得する受信電力取得部をさらに備え、
前記波源位置算出部は、前記受信装置のペアの前記到来時間差を、当該受信装置のペアに対応する2個の受信電力に応じた重みと共に用いて波源の位置を算出する、請求項5記載のサーバ。
波源からの電波を受信する3個以上の受信装置と、前記波源から前記受信装置までの電波の到来時間差を用いて、前記波源の位置を算出するサーバとを備えた通信システムにおける受信装置において処理される信号処理方法であって、
前記波源からの電波を受信するアンテナによって受信された受信信号を複数に分ける分配器によって分けられた複数の受信信号をそれぞれ複数のRF回路によってベースバンド信号に変換するステップと、
前記複数のベースバンド信号を前記サーバに送信するステップと、を備えた信号処理方法。
波源からの電波を受信した受信信号を分配器によって複数に分け、当該複数の受信信号をそれぞれ複数のRF回路によって複数のベースバンド信号に変換する3個以上の受信装置と、サーバとを備えた通信システムにおけるサーバにおいて処理される波源位置算出方法であって、
前記受信装置から複数のベースバンド信号を受信するステップと、
前記受信装置のペアである2個の受信装置について、一方の受信装置の複数のベースバンド信号と、他方の受信装置の複数のベースバンド信号との複数の組み合わせに関する相互相関を用いて、前記2個の受信装置に関する前記波源からの電波の到来時間差を算出することを、前記受信装置の少なくとも2個のペアについて行うステップと、
前記受信装置の位置と、前記受信装置の複数のペアごとに算出された到来時間差とを用いて、前記波源の位置を算出するステップと、を備えた波源位置算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による通信システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による通信システムは、2以上のRF回路を有する受信装置と、その2以上のRF回路で変換された複数のベースバンド信号を用いて、波源の位置の算出を行うサーバとを備えたものである。
【0021】
図1は、本実施の形態による通信システム10の構成を示すブロック図である。本実施の形態による通信システム10は、3個以上の受信装置1と、サーバ2とを備える。その複数の受信装置1と、サーバ2とは、有線または無線の通信回線100を介して接続されている。通信回線100は、例えば、インターネットやイントラネット、公衆電話回線網等であってもよい。なお、
図1においては、通信システム10に4個の受信装置1が含まれる場合について示しているが、通信システム10に含まれる受信装置1の個数は、3個以上であればよく、その個数は限定されない。なお、後述するように、サーバ2において、波源3の位置の算出を行うために用いる受信装置1の選択を行う場合には、通信システム10に4個以上の受信装置1が含まれることが好適である。また、波源3は、電波を送信するものであればどのようなものであってもよく、例えば、携帯電話等の無線基地局であってもよく、タクシー等の無線システムの基地局であってもよく、その他の電波を送信するものであってもよい。また、受信装置1の位置は既知であるものとする。
【0022】
図2は、本実施の形態による受信装置1の構成を示すブロック図である。受信装置1は、波源3からの電波を受信するものであり、アンテナ11と、分配器12と、複数のRF回路13−1〜13−Nと、受信電力算出部14と、マルチパス情報算出部15と、送信部16とを備える。
【0023】
アンテナ11では、波源3からの電波が受信される。その受信された受信信号は、アンテナ11から分配器12に入力される。
分配器12は、アンテナ11によって受信された受信信号を複数に分け、その分けられた複数の受信信号をそれぞれ複数のRF回路13−1〜13−Nに入力する。
【0024】
N個のRF回路13−1〜13−Nは、分配器12によって分けられた複数の受信信号をそれぞれベースバンド信号に変換する。その変換は、受信信号に対し該当する周波数の高周波信号処理を行うことによってなされる。なお、ここでのベースバンド信号は、厳密には、アナログのベースバンド信号がAD変換によってデジタル化されたベースバンド信号である。また、Nは、2以上の整数である。受信装置1ごとに、そのNの値は同じであってもよく、または、異なっていてもよい。RF回路13−1〜13−Nを特に区別しない場合には、RF回路13と呼ぶものとする。
【0025】
受信電力算出部14は、異なるRF回路13によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて受信電力を算出する。具体的には、受信電力算出部14は、次式のように受信電力P
iを算出してもよい。
【数1】
上式において、E[r
i(u)(n)r
i(v)*(n)]は、次式の通りである。
【数2】
【0026】
また、Nは、上述のように、受信装置1が有するRF回路13の個数であり、N
aは、受信装置1で相関を算出するサンプル数である。また、r
i(u)(n)において、iは、受信装置1を識別する整数のインデックスであり、uは、RF回路13を識別する整数のインデックスであり、nは、ベースバンド信号におけるサンプルを識別する整数のインデックスである。また、r
i(u)(n)は、i番目の受信装置1におけるu番目のRF回路13によって変換されたベースバンド信号におけるn番目のサンプルの値(IQデータや複素振幅値)である。なお、サンプルとは、アナログのベースバンド信号がデジタル化された際のサンプルである。上式において、N=2の場合には、異なるRF回路13によって変換された2個のベースバンド信号を用いて受信電力が算出されることになる。一方、N≧3の場合には、異なるRF回路13によって変換された2個のベースバンド信号を用いて、その2個のベースバンド信号に応じた受信電力(上記E[r
i(u)(n)r
i(v)*(n)])が算出され、それをRF回路13の異なるペアについて足しあわせることによって、最終的な受信電力が算出されることになる。
【0027】
マルチパス情報算出部15は、異なるRF回路13によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて、遅延波の電力に関する情報であるマルチパス情報を算出する。具体的には、マルチパス情報算出部15は、次式のようにして、遅延プロファイルに準ずる評価量D
i(τ)を算出し、その評価量を用いて、マルチパス情報を取得してもよい。なお、τは、1≦τ≦L
1となる整数であり、AD変換におけるサンプルの遅延量を示すインデックスである。そのτにサンプリング周期δを掛けたτ×δが遅延時間となる。また、L
1は、1より大きいあらかじめ決められた整数である。マルチパス情報算出部15は、1≦τ≦L
1の各τについて、D
i(τ)を算出するものとする。
【数3】
なお、上式右辺のE[r
i(u)(n)r
i(v)*(n−τ)]は、受信電力を算出する際に用いたE[r
i(u)(n)r
i(v)*(n)]の式において、r
i(v)*(n)、r
i(v)*(n−k)のnをn−τとしたものである。また、D
i(0)は、次式で示されるものであり、ある時点の受信電力に対応する値である。
【数4】
また、D
i(τ)は、その時点のベースバンド信号と、τ×δだけ後の時点におけるベースバンド信号との相互相関に応じた値である。そのため、D
i(τ)が大きい値である時点τには、電力の大きい遅延波が存在することになる。したがって、このD
i(τ)は、遅延プロファイルに準ずる評価量となる。例えば、D
i(τ)は、
図7で示されるようになる。なお、上式において、N=2の場合には、異なるRF回路13によって変換された2個のベースバンド信号を用いてマルチパス情報が算出されることになる。一方、N≧3の場合には、異なるRF回路13によって変換された2個のベースバンド信号を用いて、その2個のベースバンド信号に応じた相互相関(上記E[r
i(u)(n)r
i(v)*(n−τ)])が算出され、それをRF回路13の異なるペアについて足しあわせて絶対値をとることによって、最終的なマルチパス情報が算出されることになる。
【0028】
マルチパス情報算出部15は、そのD
i(τ)(1≦τ≦L
1)を、マルチパス情報としてもよい。なお、後述するように、サーバ2において必要なのは、電力の大きい遅延波があるかどうかや、短い遅延時間での遅延波があるかどうかである。したがって、マルチパス情報算出部15は、電力の大きい遅延波の電力と、その遅延波の遅延時間とを示す情報として、例えば、あらかじめ決められた閾値を超えるD
i(τ)の値と、そのτとをマルチパス情報としてもよい。なお、マルチパス情報は、電力の大きい遅延波の電力を示す情報であってもよく、または、電力の大きい遅延波の遅延時間を示す情報であってもよい。また、電力の大きい遅延波があるかどうかについては、次式の値が大きいかどうかによっても判断することができる。したがって、マルチパス情報算出部15は、次式の値であるマルチパス情報を算出してもよい。なお、次式の値は、第1波電力に対する遅延波の合計電力比(正規化遅延波合計電力)である。以下、そのPD
iを、遅延波合計電力と呼ぶこともある。
【数5】
また、マルチパス情報算出部15は、電力の大きい遅延波があるかどうかや、短い遅延時間の遅延波があるかどうかを知ることができる、上述した以外の値を、マルチパス情報としてもよいことは言うまでもない。
【0029】
ここで、上述のようにして受信電力やマルチパス情報を算出するメリットについて説明する。上述のように受信電力やマルチパス情報を算出する際には、例えば、E[r
i(u)(n)r
i(v)*(n)]におけるr
i(u)(n)r
i(v)*(n)のように、異なるRF回路13の出力である2個のベースバンド信号を用いている。そのように、別のRF回路13の出力の相関を計算することによって、雑音が無相関化されることになり、受信電力が低い状況(SNR<0)において受信電力やマルチパス情報を算出する場合であっても、精度のよい算出を行うことができるようになる。特に、ベースバンド信号に含まれる雑音は、RF回路13に起因するものが最も大きいため、RF回路13に関する雑音を無相関化できることは、雑音の低減に大きく寄与することになる。また、RF回路13が3個以上存在する場合には、上述のように、異なるRF回路13の出力である2個のベースバンド信号を用いた相互相関を、RF回路13のペアについて合計することにより、実質的にサンプル数を多くしたことと同様の結果になる。そのため、それだけ精度の高い受信電力やマルチパス情報の算出が可能となる。1個のRF回路のみを用いて受信電力等を算出する場合には、上式から分かるように、N
a個の加算が行われるだけであるが、異なるRF回路13の出力である2個のベースバンド信号を用いた相互相関を、RF回路13のすべてのペアについて合計した場合には、N個から2個を選択する組み合わせ数
NC
2にN
aを乗算した数に応じた個数の加算が行われることになり、それだけ精度が高くなる。なお、その加算の数がN
aを超えると、少なくとも1個のRF回路のみを用いた場合よりも精度が高くなると考えられるため、受信装置1がN個のRF回路13を有する際に、RF回路13のすべてのペアについて相互相関を合計しなくてもよい。例えば、RF回路13の2個以上のペアについて相互相関を加算することによって、受信電力やマルチパス情報を算出してもよい。
【0030】
送信部16は、複数のRF回路13によってそれぞれ変換された複数のベースバンド信号をサーバ2に送信する。なお、複数のベースバンド信号は、通常、同じ期間に対応するベースバンド信号である。また、送信部16は、受信電力算出部14が算出した受信電力をサーバ2に送信する。また、送信部16は、マルチパス情報算出部15が算出したマルチパス情報をサーバ2に送信する。なお、送信部16は、N個のベースバンド信号と、受信電力と、マルチパス情報とを一緒にサーバ2に送信してもよく、または、別々に送信してもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。また、前者の場合に、送信対象のベースバンド信号と、受信電力やマルチパス情報を算出するために用いられるベースバンド信号とは、同じものであってもよく、または、そうでなくてもよい。また、ベースバンド信号や受信電力等が別々にサーバ2に送信される場合には、例えば、送信部16は、まず受信電力とマルチパス情報とをサーバ2に送信し、その送信に応じて、ベースバンド信号の送信要求を図示しない受信部で受信したときに、ベースバンド信号をサーバ2に送信してもよい。そのような場合には、通常、送信対象のベースバンド信号と、受信電力やマルチパス情報を算出するために用いられるベースバンド信号とは、別のものとなる。
【0031】
なお、送信部16は、複数のベースバンド信号等をサーバ2に直接送信してもよく、または、他のサーバ等を介して間接的に送信してもよい。また、送信部16は、図示しない記録媒体で保持しているアドレスを送信先として送信を行ってもよい。また、送信部16は、送信を行うための送信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、送信部16は、ハードウェアによって実現されてもよく、または送信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0032】
また、複数の受信装置1からサーバ2に送信されるベースバンド信号は、後述するように、電波の到来時間差の算出に用いられるため、同期していることが好適である。すなわち、同時期の電波に応じた複数のベースバンド信号が、3個以上の受信装置1からサーバ2に送信されることが好適である。そのため、例えば、各受信装置1は、GPS(Global Positioning System)の時刻を用いてタイミングを同期させたり、複数の受信装置1を接続する光ファイバー等を用いてタイミングを同期させたりしてもよい。
【0033】
なお、
図2においては、本実施の形態による受信装置1に特徴的な構成要素のみを記載しているが、受信装置1にそれ以外の構成が含まれていてもよいことは言うまでもない。例えば、RF回路13の後段に、ベースバンド部や、受信された信号に関する処理を行う処理部等が存在してもよい。
【0034】
図3は、本実施の形態によるサーバ2の構成を示すブロック図である。サーバ2は、波源3から受信装置1までの電波の到来時間差を用いて、波源3の位置を算出するものであり、受信部21と、受信電力取得部22と、マルチパス情報取得部23と、選択部24と、到来時間差算出部25と、波源位置算出部26と、出力部27とを備える。
【0035】
受信部21は、受信装置1から送信された複数のベースバンド信号を受信する。なお、受信部21は、3個以上の受信装置1から、それぞれ複数のベースバンド信号を受信するものとする。受信部21は、通信システム10に含まれるすべての受信装置1からベースバンド信号を受信してもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、後述する選択部24によって選択された受信装置1のみからベースバンド信号を受信してもよい。その場合には、すべての受信装置1がベースバンド信号を送信する場合よりも、情報の送信量を少なくすることができる。
【0036】
なお、受信部21は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受信部21は、ハードウェアによって実現されてもよく、または受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0037】
受信電力取得部22は、4個以上の受信装置1のそれぞれについて、異なるRF回路13によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて算出される受信電力を取得する。その受信電力の取得は、受信装置1において算出された受信電力を、受信装置1から受信することであってもよく、または、受信装置1から送信された複数のベースバンド信号を用いて、受信電力を算出することであってもよい。後者の場合には、受信電力取得部22は、受信部21が4個以上の受信装置1からそれぞれ受信した複数のベースバンド信号を用いて、各受信装置1に対応する受信電力を算出してもよい。その受信電力の算出方法は、受信電力算出部14による受信電力の算出方法と同様であり、その説明を省略する。本実施の形態では、受信電力取得部22が、4個以上の受信装置1のそれぞれから、受信電力を受信する場合について主に説明する。
【0038】
なお、受信電力を受信する場合には、受信電力取得部22は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受信電力取得部22は、ハードウェアによって実現されてもよく、または受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0039】
マルチパス情報取得部23は、4個以上の受信装置1のそれぞれについて、異なるRF回路13によって変換された2個以上のベースバンド信号を用いて算出される、遅延波の電力に関する情報であるマルチパス情報を取得する。このマルチパス情報の取得は、受信装置1において算出されたマルチパス情報を、受信装置1から受信することであってもよく、または、受信装置1から送信された複数のベースバンド信号を用いて、マルチパス情報を算出することであってもよい。後者の場合には、マルチパス情報取得部23は、受信部21が4個以上の受信装置1からそれぞれ受信した複数のベースバンド信号を用いて、各受信装置1に対応するマルチパス情報を算出してもよい。そのマルチパス情報の算出方法は、マルチパス情報算出部15によるマルチパス情報の算出方法と同様であり、その説明を省略する。本実施の形態では、マルチパス情報取得部23が、4個以上の受信装置1のそれぞれから、マルチパス情報を受信する場合について主に説明する。
【0040】
なお、マルチパス情報を受信する場合には、マルチパス情報取得部23は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、マルチパス情報取得部23は、ハードウェアによって実現されてもよく、または受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0041】
また、受信電力取得部22、マルチパス情報取得部23が、それぞれ受信電力を受信し、マルチパス情報を受信する場合には、例えば、サーバ2が、複数のベースバンド信号と受信電力とマルチパス情報とを含む情報を受信装置1から受信した場合に、その情報のうち、複数のベースバンド信号は受信部21で受信され、受信電力は受信電力取得部22で受信され、マルチパス情報はマルチパス情報取得部23で受信されることになると考えてもよい。その場合には、例えば、その3個の構成要素は、物理的には1個の受信手段として構成されていると考えてもよい。
【0042】
選択部24は、4個以上の受信装置1のそれぞれに関する受信電力とマルチパス情報との少なくとも一方を用いて、4個以上の受信装置1から、3個以上の受信装置1を選択する。その選択された3個以上の受信装置1で受信された受信信号に応じた複数のベースバンド信号が、波源3の位置の算出に用いられることになる。
【0043】
選択部24は、例えば、受信電力取得部22によって取得された受信電力の大きい3個以上の受信装置1を選択してもよく、マルチパス情報取得部23によって取得されたマルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択してもよく、受信電力が大きく、かつ、マルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択してもよい。
【0044】
受信電力の大きい3個以上の受信装置1を選択するとは、例えば、受信電力の大きい方からあらかじめ決められた個数(通常、3個以上である)の受信装置1を選択することであってもよく、受信電力の大きい方からあらかじめ決められた割合の受信装置1を選択することであってもよく、受信電力が閾値より大きい受信装置1を選択することであってもよい。なお、その閾値は、受信電力の最大値に応じて決められたものであってもよい。例えば、その閾値は、受信電力の最大値に1より小さい値を掛けたものであってもよく、受信電力の最大値から所定の正の値を減算したものであってもよい。また、その選択により、3個未満の受信装置1が選択された場合には、選択部24は、例えば、選択された受信装置1が少なくとも3個となるように、受信電力が大きい方から順番に、追加の選択を行ってもよい。
【0045】
マルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択するとは、例えば、受信装置1ごとに遅延波の最大の電力(例えば、D
i(τ)の最大値等)を特定し、その遅延波の最大の電力が小さい方からあらかじめ決められた個数の受信装置1を選択することであってもよく、遅延波の最大の電力の小さい方からあらかじめ決められた割合の受信装置1を選択することであってもよく、遅延波の最大の電力が、遅延波の最大電力に関する閾値よりも小さい受信装置1を選択することであってもよい。遅延プロファイルにおいて、遅延波の最大電力が小さい場合には、その遅延プロファイルに含まれる遅延波の影響は小さいと考えることができるからである。なお、その閾値は、遅延波の最大の電力の最小値に応じて決められたものであってもよい。例えば、その閾値は、遅延波の最大の電力の最小値に1より大きい値を掛けたものであってもよく、遅延波の最大の電力の最小値に所定の正の値を加算したものであってもよい。また、その選択により、3個未満の受信装置1が選択された場合には、選択部24は、例えば、選択された受信装置1が少なくとも3個となるように、遅延波の最大の電力が小さい方から順番に、追加の選択を行ってもよい。
【0046】
また、マルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択するとは、例えば、前述の遅延波合計電力(例えば、PD
i等)が小さい方からあらかじめ決められた個数の受信装置1を選択することであってもよく、遅延波合計電力の小さい方からあらかじめ決められた割合の受信装置1を選択することであってもよく、遅延波合計電力が、遅延波合計電力に関する閾値より小さい受信装置1を選択することであってもよい。遅延プロファイルにおいて、遅延波合計電力が小さい場合には、その遅延プロファイルに含まれる遅延波の影響は小さいと考えることができるからである。なお、その閾値は、遅延波合計電力の最小値に応じて決められたものであってもよい。また、その選択により、3個未満の受信装置1が選択された場合には、選択部24は、例えば、選択された受信装置1が少なくとも3個となるように、遅延波合計電力が小さい方から順番に、追加の選択を行ってもよい。
【0047】
また、マルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択するとは、例えば、受信装置1ごとに、遅延波の最小遅延時間(例えば、所定の閾値を超えるD
i(τ)に応じたτの最小値)を特定し、その最小遅延時間が小さい方からあらかじめ決められた個数の受信装置1を選択することであってもよく、最小遅延時間の小さい方からあらかじめ決められた割合の受信装置1を選択することであってもよく、最小遅延時間が、最小遅延時間に関する閾値より小さい受信装置1を選択することであってもよい。遅延プロファイルにおいて、電力の大きい遅延波の最小遅延時間が小さい場合には、その遅延波の影響により生じる推定到来時間差の誤差は小さいと考えることができるからである。なお、その閾値は、最小遅延時間の最小値に応じて決められたものであってもよい。また、その選択により、3個未満の受信装置1が選択された場合には、選択部24は、例えば、選択された受信装置1が少なくとも3個となるように、最小遅延時間が小さい方から順番に、追加の選択を行ってもよい。
【0048】
また、マルチパス情報の示す遅延波の影響が小さい3個以上の受信装置1を選択するとは、例えば、遅延波の最大の電力と、遅延波の最小遅延時間との両方を用いて、遅延波の最大の電力が小さく、遅延波の最小遅延時間が小さい受信装置1を選択することであってもよい。
【0049】
到来時間差算出部25は、受信装置1のペアについて、複数のベースバンド信号の複数の組み合わせに関する相互相関を用いて、波源3からの電波の到来時間差を算出する。すなわち、到来時間差算出部25は、第1の受信装置1と、第2の受信装置1とのペアについて、第1の受信装置1の複数の第1のベースバンド信号と、第2の受信装置1の複数の第2のベースバンド信号との複数の組み合わせに対応する相互相関を加算することによって、相互相関を用いた到来時間差の算出を行う。なお、その到来時間差は、波源3から第1の受信装置1までの電波の伝搬時間と、波源3から第2の受信装置1までの電波の伝搬時間との差である。具体的には、到来時間差算出部25は、次式のように到来時間差を算出してもよい。
【0050】
まず、到来時間差算出部25は、i番目の受信装置1と、j番目の受信装置1とのペアに関する相互相関C
ij(τ)を算出する。その相互相関は、次式のように、i番目の受信装置1のベースバンド信号r
i(u)(n)と、j番目の受信装置1のτだけずれた時間のベースバンド信号r
j(v)(n−τ)との組み合わせについて算出されることになる。
【数6】
【0051】
ここで、N
iは、i番目の受信装置1に含まれるRF回路13の個数である。また、τは、−L
2≦τ≦L
2となる整数である。L
2は、あらかじめ決められた正の整数である。また、E[r
i(u)(n)r
j(v)*(n−τ)]は、次式の通りである。
【数7】
【0052】
なお、上式において、N
bは、相関を算出するサンプル数である。そのN
bは、前述のN
aと同じであってもよく、異なっていてもよい。到来時間差算出部25は、上述の相互相関C
ij(τ)を用いて、次式のように、到来時間差|τ
ij(max)|を算出する。すなわち、相互相関がピークとなる時間方向のずれτを、到来時間差としている。なお、厳密には、|τ
ij(max)|にサンプリング周期δを掛けたδ|τ
ij(max)|が、時間を単位とする到来時間差となる。
【数8】
【0053】
ここで、上述のように到来距離差を算出するメリットについて説明する。上述のように到来時間差を算出する際には、例えば、上記C
ijの式で示されるように、i番目の受信装置1のベースバンド信号と、j番目の受信装置1のベースバンド信号と相互相関が、そのベースバンド信号の複数のペアについて合計されることになる。そのような合計がなされることにより、実質的にサンプル数がN
iN
j倍になったことと等しくなる。そのため、例えば、到来距離差を算出するベースバンド信号のサンプル数を、1/(N
iN
j)にしても、1個のRF回路のみを有する2個の受信装置1で受信されたベースバンド信号を用いて到来距離差を算出した場合と、同程度の精度で到来距離差を算出できる。したがって、ベースバンド信号のサンプル数が1個のRF回路のときと同じである場合には、高い精度で到来距離差を算出できることになる。また、ベースバンド信号のサンプル数が1個のRF回路のときのサンプル数に1/(N
iN
j)を掛けた値よりも大きい場合には、サンプル数を削減しながらも、精度を向上することができる。また、上記説明では、i番目の受信装置1のベースバンド信号と、j番目の受信装置1のベースバンド信号と相互相関を算出する際に、ベースバンド信号のすべての組み合わせに関する相互相関を合計する場合について説明したが、そうでなくてもよい。i番目の受信装置1のベースバンド信号と、j番目の受信装置1のベースバンド信号と相互相関を算出する際に、少なくとも複数の組み合わせに関する相互相関を加算するようにしてもよい。その場合であっても、同じサンプル数を用いた1個のRF回路のときと比較して、精度が向上することになるからである。
【0054】
なお、到来時間差算出部25は、波源3の位置の算出に用いられる3個以上の受信装置1のすべてのペアについて、到来時間差の算出を行ってもよく、そのペアのうち、少なくとも2個のペアについて、好ましくは3個以上のペアについて、到来時間差の算出を行ってもよい。また、到来時間差算出部25は、選択された3個以上の受信装置1の複数のペアについてのみ到来時間差を算出してもよい。
【0055】
波源位置算出部26は、受信装置1の位置と、受信装置1の複数のペアごとに到来時間差算出部25によって算出された到来時間差とを用いて、波源3の位置を算出する。なお、受信装置1の位置は、到来時間差の算出された受信装置1の複数のペアの集合に含まれる受信装置1の位置である。その受信装置1の位置は、例えば、緯度・経度であってもよく、ある位置を基準点とした座標値であってもよい。また、その複数の受信装置1の位置は、波源位置算出部26がアクセス可能な図示しない記録媒体に記憶されているものとする。具体的には、波源位置算出部26は、次のようにして波源3の位置を算出してもよい。
【0056】
まず、波源位置算出部26は、到来時間差を用いて、波源3からi番目の受信装置1までの距離と、波源3からj番目の受信装置1までの距離との差である到来距離差Δd
ijを算出する。その到来距離差Δd
ijは、次式のようになる。なお、次式において、χは光速である。
【数9】
【0057】
受信装置1の複数のペアに関する到来距離差を用いて波源3の位置を特定することはすでに公知であるが、波源位置算出部26は、例えば、次のようにして波源の位置を算出してもよい。
【数10】
【0058】
ここで、S
eは、推定波源位置座標であり、それが波源位置算出部26の算出対象となるものである。mは、ijの組み合わせ、すなわち、受信装置1のペアを構成する受信装置1のインデックスであり、Mは、受信装置1のペアの総数である。また、Sは、波源位置座標であり、|e
m(S)|
2は、次式の通りである。
【数11】
ここで、Δd
meは、上述のようにして算出された到来距離差である。また、Δd
m(S)は、次式で示されるように、位置座標から算出される到来距離差である。なお、S
iは、i番目の受信装置1の位置座標である。
【数12】
【0059】
波源位置算出部26は、推定波源位置座標S
eを、例えば、非線形最小二乗法によって算出してもよく、または、他の方法によって算出してもよい。なお、選択部24による受信装置1の選択が行われた場合には、波源位置算出部26は、選択された3個以上の受信装置1の複数のペアごとに算出された到来時間差を用いて波源3の位置を算出してもよい。例えば、上述のように、選択された3個以上の受信装置1の複数のペアについてのみ到来時間差が算出される場合には、波源位置算出部26は、算出されたすべての到来時間差を用いて波源3の位置を算出することによって、選択された3個以上の受信装置1の複数のペアごとに算出された到来時間差を用いた波源位置の算出が行われることになる。一方、受信装置1のすべてのペアについて到来時間差が算出される場合には、波源位置算出部26は、算出された到来時間差のうち、選択された3個以上の受信装置1の複数のペアごとに算出された到来時間差を用いて、波源位置の算出を行ってもよい。
【0060】
また、波源位置算出部26は、推定波源位置座標S
eを算出する際に、受信電力取得部22が取得した受信電力に応じた重みを用いて、その算出を行ってもよい。具体的には、上記推定波源位置座標S
eの式を、次式のようにしてもよい。
【数13】
ここで、α
mは、次式で示されるものであり、受信装置1のペアに対応する2個の受信電力に応じた重みである。なお、次式において、N
sは、波源3の位置の算出に用いられる受信装置1の個数であり、例えば、選択部24によって選択された受信装置1の個数であってもよい。
【数14】
すなわち、波源位置算出部26は、受信装置1のペアの到来時間差(例えば、|e
m(S)|
2に含まれるΔd
me=χδ|τ
ij(max)|)を、その受信装置1のペア(例えば、ij)に対応する2個の受信電力(例えば、P
iP
j)に応じた重み(例えば、α
m)と共に用いて波源3の位置を算出してもよい。なお、上述した以外の方法によって、波源位置算出部26は、受信装置1のペアの到来時間差を、その受信装置1のペアに対応する2個の受信電力(に応じた重みと共に用いて波源3の位置を算出してもよいことは言うまでもない。
【0061】
出力部27は、波源位置算出部26が算出した波源3の位置を出力する。ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素(例えば、ホワイトスペースを算出する構成要素等)への引き渡しでもよい。なお、出力部27は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部27は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0062】
次に、受信装置1の動作について
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートでは、受信電力算出部14、マルチパス情報算出部15、送信部16の動作について説明する。アンテナ11における電波の受信や、分配器12による受信信号の分配、RF回路13による分配された受信信号のベースバンド信号への変換等は、
図4に示されるフローチャートとは別に行われているものとする。
【0063】
(ステップS101)送信部16は、複数のRF回路13の出力である複数のベースバンド信号を取得するかどうか判断する。そして、複数のベースバンド信号を取得する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、取得すると判断するまでステップS101の処理を繰り返す。送信部16は、例えば、複数の受信装置1間で同期した所定のタイミングとなった際に、複数のベースバンド信号を取得すると判断してもよい。
【0064】
(ステップS102)送信部16は、あらかじめ決められた長さのベースバンド信号を、複数のRF回路13からそれぞれ取得する。その取得された複数のベースバンド信号は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0065】
(ステップS103)受信電力算出部14は、送信部16が取得した複数のベースバンド信号を用いて、受信電力を算出する。
【0066】
(ステップS104)マルチパス情報算出部15は、送信部16が取得した複数のベースバンド信号を用いて、マルチパス情報を算出する。
【0067】
(ステップS105)送信部16は、ステップS102で取得した複数のベースバンド信号と、ステップS103で算出された受信電力と、ステップS104で算出されたマルチパス情報とをサーバ2に送信する。そして、ベースバンド信号等をサーバ2に送信する一連の処理は終了となる。
なお、
図4のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。
【0068】
次に、サーバ2の動作について
図5のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートでは、サーバ2は、4個以上の受信装置1から複数のベースバンド信号等を受信するものとする。
【0069】
(ステップS201)受信部21、受信電力取得部22、マルチパス情報取得部23はそれぞれ、受信装置1から送信された複数のベースバンド信号、受信電力、マルチパス情報を受信したかどうか判断する。そして、受信した場合には、ステップS202に進み、そうでない場合には、ステップS203に進む。
【0070】
(ステップS202)受信部21等は、受信した複数のベースバンド信号等を図示しない記録媒体に蓄積する。なお、その複数のベースバンド信号等を蓄積する際に、送信元の受信装置1を識別する受信装置識別子に対応付けて蓄積してもよい。その受信装置識別子は、例えば、受信装置1のアドレスであってもよい。
【0071】
(ステップS203)到来時間差算出部25は、波源3の位置の算出を行うかどうか判断する。そして、その算出を行う場合には、ステップS204に進み、そうでない場合には、ステップS201に戻る。なお、到来時間差算出部25は、例えば、すべての受信装置1からベースバンド信号等を受信した場合に、波源3の位置の算出を行うと判断してもよく、または、各受信装置1において、複数のベースバンド信号を取得するタイミングとなってから所定の期間が経過した場合に、波源3の位置の算出を行うと判断してもよい。
【0072】
(ステップS204)選択部24は、複数のベースバンド信号を送信した4個以上の受信装置1から、3個以上の受信装置1を選択する。なお、この処理の詳細については、
図6A等のフローチャートを用いて後述する。
【0073】
(ステップS205)到来時間差算出部25は、選択部24によって選択された複数の受信装置1の複数のペアについて、それぞれ到来時間差を算出する。
【0074】
(ステップS206)波源位置算出部26は、ステップS205で算出された複数の到来時間差を用いて、波源3の位置を算出する。
【0075】
(ステップS207)出力部27は、ステップS206で算出された波源3の位置を出力する。そして、波源3の位置を算出する一連の処理は終了となる。
【0076】
図6Aは、
図5のフローチャートにおける選択の処理(ステップS204)の詳細を示すフローチャートであり、受信電力を用いた選択の処理を示すフローチャートである。
(ステップS301)選択部24は、受信電力取得部22が取得した受信装置ごとの受信電力を、受信電力の降順となるようにソートする。
【0077】
(ステップS302)選択部24は、ソート後の3番目の受信電力、すなわち、大きい方から3番目の受信電力が、あらかじめ決められた受信電力の閾値P
THより小さいかどうか判断する。そして、3番目の受信電力が閾値P
THより小さい場合には、ステップS303に進み、そうでない場合には、ステップS304に進む。
【0078】
(ステップS303)選択部24は、1番目から3番目までの受信電力に対応する受信装置1を選択する。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0079】
(ステップS304)選択部24は、カウンタiを4に設定する。
【0080】
(ステップS305)選択部24は、i番目の受信電力が、閾値P
THより小さいかどうか判断する。そして、i番目の受信電力が閾値P
THより小さい場合には、ステップS306に進み、そうでない場合には、ステップS307に進む。
【0081】
(ステップS306)選択部24は、1番目から(i−1)番目までの受信電力に対応する受信装置1を選択する。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0082】
(ステップS307)選択部24は、カウンタiを1だけインクリメントする。
【0083】
(ステップS308)選択部24は、i番目の受信電力が存在するかどうか判断する。そして、i番目の受信電力が存在する場合には、ステップS305に戻り、そうでない場合には、ステップS306に進む。
【0084】
なお、
図6Aのフローチャートでは、閾値P
THより大きい受信電力に対応する受信装置1が選択され、また、そのような受信装置1が3個存在しない場合には、受信電力の大きい方から3個の受信装置1が選択される場合について説明したが、受信装置1の選択は、別の方法によって行われてもよいことは言うまでもない。また、
図6Aのフローチャートにおいて、選択される受信装置1の個数に上限を設けてもよい。
【0085】
図6Bは、
図5のフローチャートにおける選択の処理(ステップS204)の詳細を示すフローチャートであり、マルチパス情報を用いた選択の処理を示すフローチャートである。このフローチャートでは、マルチパス情報が遅延波合計電力である場合について説明する。
(ステップS401)選択部24は、マルチパス情報取得部23が取得した受信装置1ごとのマルチパス情報である遅延波合計電力を、遅延波合計電力の昇順となるようにソートする。
【0086】
(ステップS402)選択部24は、ソート後の3番目の遅延波合計電力、すなわち、小さい方から3番目の遅延波合計電力が、あらかじめ決められた遅延波合計電力の閾値PD
THより大きいかどうか判断する。そして、3番目の遅延波合計電力が閾値PD
THより大きい場合には、ステップS403に進み、そうでない場合には、ステップS404に進む。
【0087】
(ステップS403)選択部24は、1番目から3番目までの遅延波合計電力に対応する受信装置1を選択する。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0088】
(ステップS404)選択部24は、カウンタjを4に設定する。
【0089】
(ステップS405)選択部24は、j番目の遅延波合計電力が、閾値PD
THより大きいかどうか判断する。そして、j番目の受信電力が閾値PD
THより大きい場合には、ステップS406に進み、そうでない場合には、ステップS407に進む。
【0090】
(ステップS406)選択部24は、1番目から(j−1)番目までの遅延波合計電力に対応する受信装置1を選択する。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0091】
(ステップS407)選択部24は、カウンタjを1だけインクリメントする。
【0092】
(ステップS408)選択部24は、j番目の遅延波合計電力が存在するかどうか判断する。そして、j番目の遅延波合計電力が存在する場合には、ステップS405に戻り、そうでない場合には、ステップS406に進む。
【0093】
なお、
図6Bのフローチャートでは、閾値PD
THより小さい遅延波合計電力に対応する受信装置1が選択され、また、そのような受信装置1が3個存在しない場合には、遅延波合計電力の小さい方から3個の受信装置1が選択される場合について説明したが、受信装置1の選択は、別の方法によって行われてもよいことは言うまでもない。また、
図6Bのフローチャートにおいて、選択される受信装置1の個数に上限を設けてもよい。
【0094】
また、受信電力と、マルチパス情報との両方を用いて選択を行う場合には、選択部24は、例えば、両者の選択結果をマージしたものをその選択結果としてもよい。また、例えば、
図6Cで示されるように、両者の選択結果からさらに絞り込んだものを最終的な選択結果としてもよい。
(ステップS501)選択部24は、受信電力を用いた受信装置1の選択を行う。その処理は、例えば、
図6Aのフローチャートで示されるようになされてもよい。
【0095】
(ステップS502)選択部24は、マルチパス情報を用いた受信装置1の選択を行う。その処理は、例えば、
図6Bのフローチャートで示されるようになされてもよい。
【0096】
(ステップS503)選択部24は、受信電力を用いて選択された3個以上の受信装置1と、マルチパス情報を用いて選択された3個以上の受信装置1とに、3個以上の重複が存在するかどうか判断する。そして、3個以上の重複が存在する場合には、ステップS504に進み、そうでない場合には、ステップS505に進む。
【0097】
(ステップS504)選択部24は、受信電力を用いて選択された3個以上の受信装置1と、マルチパス情報を用いて選択された3個以上の受信装置1とに重複する3個以上の受信装置1を、最終的な選択結果とする。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0098】
(ステップS505)選択部24は、受信電力を用いて選択された3個以上の受信装置1と、マルチパス情報を用いて選択された3個以上の受信装置1とに重複する受信装置1、及び、受信電力の大きい受信装置を、選択結果である受信装置1の個数が3個となるように選択する。すなわち、受信電力を用いて選択された3個以上の受信装置1と、マルチパス情報を用いて選択された3個以上の受信装置1とに重複する受信装置1の個数がQ個である場合に(Qは0〜2のいずれかの整数である)、ステップS501の選択結果から、受信電力の多い順に3−Q個の受信装置1を選択し、その選択結果の受信装置1、及び、受信電力を用いて選択された3個以上の受信装置1と、マルチパス情報を用いて選択された3個以上の受信装置1とに重複する受信装置1を、最終的な選択結果とする。そして、上位のフローチャートに戻る。
【0099】
なお、
図6Cのフローチャートでは、受信電力を用いた選択結果と、マルチパス情報を用いた選択結果とに3個以上の重複が存在しなかった場合に、最終的な選択結果である受信装置1の個数が3個となるように、受信電力の選択結果から追加の選択を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。マルチパス情報の選択結果から追加の選択を行うようにしてもよい。
【0100】
以上のように、本実施の形態による通信システム10によれば、各受信装置1において複数のRF回路13を用いて複数のベースバンド信号を取得し、その複数のベースバンド信号の複数の組み合わせに対応する相互相関を計算することによって到来時間差を算出することにより、到来時間差の算出で用いるサンプル数を増やすことができる。そのため、ベースバンド信号に含まれる雑音が無相関化されることになり、到来時間差の算出精度が向上し、その結果、波源3の位置の算出精度も向上することになる。また、1個のRF回路によって変換された1個のベースバンド信号を用いた場合と比較して、より短い受信時間のベースバンド信号であっても、同程度またはより高い精度で到来時間差を算出できるため、常に電波を送信しているとは限らない波源3についても、より正確な位置の算出が可能となる。また、複数のベースバンド信号を用いて受信電力やマルチパス情報を算出することにより、より精度の高い受信電力等の算出が可能となる。また、そのような精度の高い受信電力を用いて、波源3の位置の算出に用いる受信装置1を選択することにより、受信状態の悪い受信装置1を排除して到来時間差を算出することができるようになる。また、そのような精度の高いマルチパス情報を用いて、波源3の位置の算出に用いる受信装置1を選択することにより、到来時間差の算出のために相互相関を算出する際に、本来とは異なる時間にもピークが出るようなマルチパスのある受信装置1を排除できる。その結果、より正確な波源3の位置の算出が可能となる。
【0101】
なお、本実施の形態では、受信装置1において、受信電力の算出と、マルチパス情報の算出との両方を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。いずれか一方のみを行ってもよく、または、両方とも行わなくてもよい。受信電力の算出を行わない場合には、受信装置1は、受信電力算出部14を備えていなくてもよい。また、マルチパス情報の算出を行わない場合には、受信装置1は、マルチパス情報算出部15を備えていなくてもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、サーバ2において、受信電力の取得と、マルチパス情報の取得との両方を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。いずれか一方のみを行ってもよく、または、両方とも行わなくてもよい。受信電力の取得を行わない場合には、サーバ2は、受信電力取得部22を備えていなくてもよい。また、マルチパス情報の取得を行わない場合には、サーバ2は、マルチパス情報取得部23を備えていなくてもよい。両方の取得を行わない場合には、サーバ2は、選択部24を備えていなくてもよい。また、受信電力の取得を行う場合であっても、その受信電力を波源3の位置を算出する際の重み(例えば、上述したα
m)にのみ用いる場合には、サーバ2は、選択部24を備えていなくてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0104】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0106】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0107】
また、上記実施の形態において、受信装置1やサーバ2に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0108】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における受信装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、波源からの電波を受信する3個以上の受信装置と、波源から受信装置までの電波の到来時間差を用いて、波源の位置を算出するサーバとを備えた通信システムにおける受信装置として機能させ、波源からの電波を受信するアンテナによって受信された受信信号を複数に分ける分配器によって分けられた複数の受信信号をそれぞれベースバンド信号に変換する複数のRF回路によってそれぞれ変換された複数のベースバンド信号をサーバに送信する送信部として機能させるためのプログラムである。
【0109】
また、上記実施の形態におけるサーバ2を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、波源からの電波を受信した受信信号を分配器によって複数に分け、複数の受信信号をそれぞれ複数のRF回路によって複数のベースバンド信号に変換する3個以上の受信装置と、サーバとを備えた通信システムにおけるサーバとして機能させ、受信装置から複数のベースバンド信号を受信する受信部、受信装置のペアについて、複数のベースバンド信号の複数の組み合わせに関する相互相関を用いて、波源からの電波の到来時間差を算出する到来時間差算出部、受信装置の位置と、受信装置の複数のペアごとに到来時間差算出部によって算出された到来時間差とを用いて、波源の位置を算出する波源位置算出部として機能させるためのプログラムである。
【0110】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を受信する受信部、情報を送信する送信部、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0111】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0112】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0113】
図8は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による受信装置1やサーバ2を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0114】
図8において、コンピュータシステム900は、CD−ROMドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0115】
図9は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図9において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0116】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による受信装置1やサーバ2の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921に記憶されて、CD−ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD−ROM921に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
【0117】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による受信装置1やサーバ2の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0118】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。