(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592950
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/329 20060101AFI20191010BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20191010BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20191010BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20191010BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20191010BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20191010BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20191010BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20191010BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20191010BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
H01L29/86 301P
H01L29/44 Y
H01L29/48 P
H01L29/48 E
H01L29/48 D
H01L21/28 301B
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/91 B
H01L29/91 F
H01L29/91 K
H01L29/06 301M
H01L21/22 E
H01L21/265 Z
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-89132(P2015-89132)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-207881(P2016-207881A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 功
(72)【発明者】
【氏名】中澤 治雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 研一
(72)【発明者】
【氏名】関 康和
【審査官】
杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−120822(JP,A)
【文献】
特開平08−264468(JP,A)
【文献】
特表2014−530484(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/116444(WO,A1)
【文献】
特開2003−101039(JP,A)
【文献】
特開2014−078660(JP,A)
【文献】
特開2006−032456(JP,A)
【文献】
特開平04−250617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 21/22
H01L 21/265
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化ケイ素基板の一方の主面に、前記炭化ケイ素基板よりも低濃度である第1導電型のドリフト層を形成する段階と、
前記ドリフト層のおもて面側において、レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域を形成する段階と、
前記ドリフト層に接して、ショットキー電極を形成する段階と、
前記炭化ケイ素基板の他方の主面に、カソード電極を形成する段階と
を備え、
前記電界制御領域は、
前記ドリフト層と前記ショットキー電極とが接触する領域の外周部に形成された、リング状の電界緩和領域と、
前記電界緩和領域よりも内周側に選択的に形成されたジャンクションバリア領域と、
リング状の前記電界緩和領域よりも外周側に設けられた、フィールドリミッティングリングと、
前記フィールドリミッティングリングよりも外周側に設けられた、リング状のチャネルストッパ領域と、
を含み、
前記電界制御領域は1回の同じ工程で形成される炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1導電型のドリフト層を形成する段階の後、かつ、前記電界制御領域を形成する段階の前に、1以上のトレンチを、前記ドリフト層の前記おもて面との角度が90度をなすように形成する段階をさらに備え、
前記フィールドリミッティングリングは、前記1以上のトレンチに形成され、
前記電界制御領域を形成する段階は、レーザー照射方向を前記ドリフト層に対して傾けて、かつ、複数回レーザーを照射することで、前記フィールドリミッティングリングを形成する段階を含む、
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ドリフト層に接して、絶縁膜を形成する段階と、
前記絶縁膜を形成する段階の後に、前記チャネルストッパ領域および前記絶縁膜に接して、チャネルストッパ電極を形成する段階と、
前記ショットキー電極を形成する段階の後に、前記ショットキー電極に接してアノード電極を形成する段階と
をさらに備え、
前記チャネルストッパ電極と前記アノード電極との間は、前記絶縁膜で覆われている
請求項1または2に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フィールドリミッティングリングに接続するフィールドプレート電極を形成する段階をさらに備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
選択的に形成された前記ジャンクションバリア領域にオーミック接続するオーミック電極を形成する段階と、
前記オーミック電極を形成する段階の後に、前記ショットキー電極および前記オーミック電極に接して、アノード電極を形成する段階と
をさらに備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ショットキー電極および前記オーミック電極は同一の材料である、請求項5に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記オーミック電極および前記アノード電極は同一の材料である、請求項5または6に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記レーザードーピング技術により、第2導電型である前記電界制御領域を形成する段階は、
複数の開口を有するマスク層を前記ドリフト層に形成する段階と、
アルミニウムを含むガスに前記ドリフト層を曝した状態において、前記ドリフト層にレーザーを照射することにより、前記複数の開口を通じて前記ドリフト層にアルミニウムを注入する段階と
を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記レーザードーピング技術により、第2導電型である前記電界制御領域を形成する段階は、
前記ドリフト層にアルミニウム層を堆積させる段階と、
前記アルミニウム層をパターニングして、複数のパターンを形成する段階と、
前記複数のパターンにレーザーを照射することにより、前記複数のパターンを通じて前記ドリフト層にアルミニウムを注入する段階と
を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記レーザードーピング技術により、第2導電型である前記電界制御領域を形成する段階は、
前記複数のパターンを除去する段階をさらに有する
請求項9に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記電界制御領域を形成する段階のレーザードーピング技術におけるレーザー光源は、KrF、ArF、XeFおよびXeCl、ならびに、YAG3ωのいずれかである
請求項1から10のいずれか一項に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
従来、イオン注入により、炭化ケイ素(以下、SiCと表記する)基板のおもて面全体にp型不純物を注入することが知られている(例えば、特許文献1〜4)。また、レーザーを用いて、SiC基板のおもて面全体にp型不純物を注入することが知られている(例えば、特許文献5〜6および非特許文献1)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2007−227655号公報
[特許文献2] 特開2000−277448号公報
[特許文献3] 特開平08−148443号公報
[特許文献4] 特開2013−232553号公報
[特許文献5] 特開平08−264468号公報
[特許文献6] 特開2004−158702号公報
[非特許文献1] 応用物理 第70巻第2号(2001)188頁〜190頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザーを用いることにより、イオン注入の場合と比較してより低温のプロセスで、SiC基板にp型不純物を注入することができる。しかし、レーザーを用いてSiC基板にp型不純物を注入する場合、不純物の濃度制御が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1導電型の炭化ケイ素基板の一方の主面に、炭化ケイ素基板よりも低濃度である第1導電型のドリフト層を形成する段階と、ドリフト層のおもて面側において、レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域を形成する段階と、ドリフト層に接して、ショットキー電極を形成する段階と、炭化ケイ素基板の他方の主面に、カソード電極を形成する段階とを備える炭化ケイ素半導体装置の製造方法を提供する。
【0005】
第2導電型である電界制御領域は、ドリフト層とショットキー電極とが接触する領域の外周部に形成された、リング状の電界緩和領域を含んでよい。
【0006】
第2導電型である電界制御領域は、電界緩和領域よりも内周側に選択的に形成された複数のジャンクションバリア領域を含んでよい。
【0007】
第2導電型である電界制御領域は、リング状の電界緩和領域よりも外周側に設けられた、1以上のフィールドリミッティングリングを含んでよい。
【0008】
炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト層を形成する段階の後、かつ、電界制御領域を形成する段階の前に、1以上のトレンチを形成する段階をさらに備えてよい。1以上のフィールドリミッティングリングは、1以上のトレンチに形成されてよい。
【0009】
第2導電型である電界制御領域は、1以上のフィールドリミッティングリングよりも外周側に設けられた、リング状のチャネルストッパ領域を含んでよい。炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、ドリフト層に接して、絶縁膜を形成する段階と、絶縁膜を形成する段階の後に、チャネルストッパ領域および絶縁膜に接して、チャネルストッパ電極を形成する段階と、ショットキー電極を形成する段階の後に、ショットキー電極に接してアノード電極を形成する段階とをさらに備えてよい。チャネルストッパ電極とアノード電極との間は、絶縁膜で覆われていてよい。
【0010】
炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、1以上のフィールドリミッティングリングに接続するフィールドプレート電極を形成する段階をさらに備えてよい。
【0011】
炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、選択的に形成された複数のジャンクションバリア領域にオーミック接続するオーミック電極を形成する段階と、オーミック電極を形成する段階の後に、ショットキー電極およびオーミック電極に接して、アノード電極を形成する段階とをさらに備えてよい。
【0012】
ショットキー電極およびオーミック電極は同一の材料であってよい。オーミック電極およびアノード電極は同一の材料であってよい。
【0013】
レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域を形成する段階は、複数の開口を有するマスク層をドリフト層に形成する段階と、アルミニウムを含むガスにドリフト層を曝した状態において、ドリフト層にレーザーを照射することにより、複数の開口を通じてドリフト層にアルミニウムを注入する段階とを有してよい。
【0014】
レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域を形成する段階は、ドリフト層にアルミニウム層を堆積させる段階と、アルミニウム層をパターニングして、複数のパターンを形成する段階と、複数のパターンにレーザーを照射することにより、複数のパターンを通じてドリフト層にアルミニウムを注入する段階とを有してよい。
【0015】
レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域を形成する段階は、複数のパターンを除去する段階をさらに有してよい。
【0016】
電界制御領域を形成する段階のレーザードーピング技術におけるレーザー光源は、KrF、ArF、XeFおよびXeCl、ならびに、YAG3ωのいずれかであってよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施例に係るSiC‐SBD100の断面図である。
【
図3】SiC‐SBD100の製造フロー200を示す図である。
【
図4A】ドリフト層14に接してマスク層20を形成する段階を示す図である。
【
図4B】マスク層20に複数の開口21を形成する段階を示す図である。
【
図4C】レーザー22を照射することによりドリフト層14にアルミニウムを注入する段階を示す図である。
【
図4D】マスク層20を除去した後の状態を示す図である。
【
図5A】Al層24を堆積する段階を示す図である。
【
図5B】Al層24に複数のパターンを形成する段階を示す図である。
【
図5C】レーザー22を照射することによりドリフト層14にアルミニウムを注入する段階を示す図である。
【
図5D】Al層24の複数のパターンを除去した後の状態を示す図である。
【
図6】第2実施例に係るSiC‐SBD110の断面図である。
【
図7A】耐圧構造部62にトレンチ48を形成する段階を示す図である。
【
図7B】トレンチ48にフィールドリミッティングリング36を形成する段階を示す図である。
【
図7C】耐圧構造部62に絶縁膜44を形成する段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、第1実施例に係るSiC‐SBD100の断面図である。なお、SiC‐SBDは、SiCショットキーバリアダイオード(SiC Schottky Barrier Diode)を意味する。本例のSiC‐SBD100は、SiC基板12、ドリフト層14を有する。SiC‐SBD100は、ドリフト層14のおもて面側にショットキー電極42、アノード電極52、絶縁膜44およびチャネルストッパ電極46を有し、SiC基板12の裏面側にカソード電極54を有する。
【0021】
SiC基板12は第1導電型の不純物を有し、本例において第1導電型はn型である。ドリフト層14は、SiC基板12の一方の主面にエピタキシャル法により形成されたSiCエピタキシャル層である。本例において、SiC基板12の一方の主面は、SiC‐SBD100のおもて面側である。ドリフト層14は、SiC基板12よりも低濃度である第1導電型の不純物を有するn
−型の層である。
【0022】
ドリフト層14は、おもて面側に電界制御領域30を有する。電界制御領域30は第2導電型であり、本例では第2導電型は高濃度のp型である。電界制御領域30は、レーザードーピング技術により形成された領域である。電界制御領域30は、ジャンクションバリア領域32、電界緩和領域34、フィールドリミッティングリング36、および、チャネルストッパ領域38を含む。
【0023】
現在のレーザードーピング技術では、SiC層に高濃度のp型領域を形成する際に、不純物の濃度制御が困難である。それゆえ、動作時の電流の大部分がPN接合を流れるマージドpin‐ショットキーバリア(Merged pin Schottky)ダイオードおよびpinダイオード等は、レーザードーピング技術で作成することが困難である。加えて、p型不純物の濃度制御が必要であるジャンクションターミネーションエクステンション(Junction Termination Extension)およびリサーフ(Resurf)構造なども、レーザードーピング技術で作成することが困難である。それゆえ、これらは本願発明には含まれない。
【0024】
p型不純物の濃度制御がほとんど必要ない領域にレーザードーピング技術を適用することが好適である。例えば、のダイオード構造としては、動作時の電流の大部分が、金属とn型SiCとのショットキー接合を流れるSBDおよびJBS(Junction Schottky Barrier)ダイオードが好適である。また耐圧構造としては、p型不純物の濃度制御がほとんど必要ないフィールドリミッティングリング36、フィールドリミッティングリング36とフィールドプレートとの併用構造、または、絶縁膜がアノード電極52とチャネルストッパ電極46との間に設けられるチャネルストッパ構造等が好適である。
【0025】
電界緩和領域34は、ドリフト層14とショットキー電極42とが接触する接触領域16の最も外周側の領域、および、接触領域16よりも外周側の領域である外周部18に形成される。本明細書では、活性部60の中央部10に近い側を内周側と称し、SiC‐SBD100の端部11に近い側を外周側と称する。なお、電界緩和領域34は、活性部60と耐圧構造部62との境界を規定してよい。
【0026】
電界緩和領域34は、ドリフト層14とPN接合を形成する。SiC‐SBD100に高電圧が印加時された場合に、ドリフト層14とショットキー電極42との接合界面の空乏層は、ドリフト層14と電界緩和領域34とのPN接合系面の空乏層に接続する。これにより空乏層は、活性部60から外周側の耐圧構造部62へ広がることができる。したがって、高電圧印加時の電界集中が緩和されるので、SiC‐SBD100の耐圧が向上する。
【0027】
ジャンクションバリア領域32は、活性部60に位置する。ジャンクションバリア領域32は、電界緩和領域34よりも内周側に選択的に形成された領域である。選択的に形成とは、活性部60において特定の形状を有して形成されることを意味する。本例のジャンクションバリア領域32は、紙面垂直方向に長手部を有する矩形形状である。複数のジャンクションバリア領域32は、長手部方向において平行に、かつ、離間して設けられる。
【0028】
ジャンクションバリア領域32は、電界緩和領域34と同様にドリフト層14とPN接合を形成する。これにより、高電圧印加時に空乏層を活性部60全体に渡って広げることができるので、SiC‐SBD100の耐圧が向上する。
【0029】
フィールドリミッティングリング36は、電界緩和領域34よりも外周側に設けられた領域である。1以上のフィールドリミッティングリング36は、互いに離間して設けられる。フィールドリミッティングリング36も、電界緩和領域34と同様にドリフト層14とPN接合を形成する。これにより、高電圧印加時に空乏層を耐圧構造部62にまで広げることができるので、SiC‐SBD100の耐圧が向上する。
【0030】
ドリフト層14の1以上のフィールドリミッティングリング36に接して、絶縁膜44が設けられる。本例の絶縁膜44は酸化ケイ素(SiO
2)膜であるが、他の絶縁膜を用いてもよい。絶縁膜44の内周側は電界緩和領域34とショットキー電極42との間に設けられ、外周側はチャネルストッパ領域38とチャネルストッパ電極46との間に設けられる。絶縁膜44は、チャネルストッパ電極46とアノード電極52との間を覆う。
【0031】
チャネルストッパ領域38は、フィールドリミッティングリング36よりも外周側に設けられる。本例のチャネルストッパ領域38は、SiC‐SBD100の最も外周側である端部11に接して設けられる。チャネルストッパ領域38は、チャネルストッパ電極46との接触抵抗を低減する機能を有する。
【0032】
チャネルストッパ電極46は、チャネルストッパ領域38および絶縁膜44に接する。チャネルストッパ電極46は、SiC基板12およびドリフト層14の端部11ならびにチャネルストッパ領域38を介してカソード電極54と同電位となる。なお、SiC基板12およびドリフト層14の端部11はダイシングにより形成された欠陥がキャリアとなるので、導電性を有する。SiC‐SBD100に逆電圧を印加した場合にチャネルストッパ電極46とカソード電極54とは同電位となり、チャネルストッパ電極46の内周側端部において空乏層の伸びが制限される。したがって、逆電圧印加時に端部11まで空乏層が伸びないので、耐圧を維持することができる。
【0033】
ショットキー電極42は、活性部60において、電界制御領域30以外のドリフト層14とショットキー接合を形成する。ショットキー電極42に接してアノード電極52が設けられる。また、SiC基板12の裏面に、カソード電極54が設けられる。
【0034】
図2は、SiC‐SBD100を示す上面図である。
図2は、
図1のII‐IIの位置におけるおもて面側を示す図である。なお、ショットキー電極42、絶縁膜44、チャネルストッパ電極46およびアノード電極52は、
図2では省略している。
【0035】
上述の様に、ジャンクションバリア領域32は、所定の方向に長手部を有する矩形形状の領域である。電界緩和領域34は、活性部60における複数のジャンクションバリア領域32を囲むリング状の領域である。電界緩和領域34よりも外周側に1以上のフィールドリミッティングリング36が設けられ、1以上のフィールドリミッティングリング36よりも外周側にチャネルストッパ領域38が設けられる。フィールドリミッティングリング36およびチャネルストッパ領域38は、共に耐圧構造部62に設けられるリング状の領域である。
【0036】
図3は、SiC‐SBD100の製造フロー200を示す図である。本例の製造フロー200は、工程S1から工程S6を有する。工程S1において、第1導電型のSiC基板12のおもて面に、SiC基板12よりも低濃度である第1導電型のドリフト層14を形成する。ドリフト層14はエピタキシャル法により形成してよい。kV級高耐圧のSiC‐SBD100とするべく、ドリフト層14の厚みは5μm以上60μm以下であってよく、不純物濃度は1E14cm
−3以上1E16cm
−3以下であってよい。なお、Eは10の冪を意味する。例えばE14は10の14乗を意味する。
【0037】
工程S2において、ドリフト層14のおもて面側において、レーザードーピング技術により、第2導電型である電界制御領域30を形成する。上述の様に、電界制御領域30は、電界緩和領域、ジャンクションバリア領域、フィールドリミッティングリングおよびチャネルストッパ領域を含む。第2導電型の不純物の濃度は、1E20cm
−3以上1E21cm
−3以下としてよい。なお、レーザードーピング技術の詳細は、
図4A〜
図4Dおよび
図5A〜
図5Dにおいて後述する。
【0038】
工程S3において、耐圧構造部62のドリフト層14に接して、絶縁膜44を形成する。工程S4において、活性部60のドリフト層14に接して、ショットキー電極42を形成する。ショットキー電極42は、例えば金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、またはモリブデン(Mo)等である。
【0039】
工程S5において、チャネルストッパ領域38および絶縁膜44に接するチャネルストッパ電極46と、ショットキー電極42に接するアノード電極52とを形成する。チャネルストッパ電極46としてNiを、アノード電極52としてNi、アルミニウム(Al)またはAl‐Si合金をそれぞれスパッタリング形成した後パターニングすることにより形成してよい。工程S6において、SiC基板12の裏面に、カソード電極54を形成する。例えばNiおよびAuを順にスパッタリングすることによりカソード電極54を形成する。
【0040】
図4A〜
図4Dは、気相レーザードーピングの例を示す図である。
図4A〜
図4Dは、電界制御領域30を形成する段階(
図3の工程S2)に対応する。
図4Aは、ドリフト層14に接してマスク層20を形成する段階を示す図である。マスク層20は酸化ケイ素であってよい。例えば、テトラメトキシシランおよび酸素のガスを用いたプラズマCVD法により、当該酸化ケイ素を形成する。
【0041】
図4Bは、マスク層20に複数の開口21を形成する段階を示す図である。既知のフォトリソグラフィー法およびエッチング法を適用して、マスク層20をパターニングして、複数の開口21を形成する。
【0042】
図4Cは、レーザー22を照射することによりドリフト層14にAlを注入する段階を示す図である。本例では、ドリフト層14を水素(H
2)とトリメチルアルミ((CH
3)
3Al)とを含むガスに曝した状態において、ドリフト層14にレーザー22を照射する。本例では、約1.5J/cm
2のエネルギーを有するレーザー22を4,000ショット照射する。これにより、複数の開口21を通じてドリフト層14にAlを注入する。なお、レーザー22のレーザー光源としては、KrF、ArF、XeFおよびXeCl、ならびに、YAG3ωのいずれかを用いてよい。また、必要に応じてSiC基板を加熱してもよい。
【0043】
図4Dは、マスク層20を除去した後の状態を示す図である。これにより、電界制御領域30が完成したので、
図3の工程S3以降を実施してよい。本例では、レーザードーピング技術により電界制御領域30を形成するので、イオン注入後の1,500℃以上の熱アニール工程を経ることなく、低温のプロセスでSiC‐SBD100のp型不純物領域を形成することができる。上述の様に、レーザードーピング技術は不純物の濃度制御が困難であるが、レーザードーピング技術を不純物の濃度制御がほとんど必要ない電界制御領域30の形成に適用するので、レーザードーピング技術を用いても高耐圧なSiC‐SBD100を製造することができる。
【0044】
図5A〜
図5Dは、固相レーザードーピングの例を示す図である。
図5A〜
図5Dは、電界制御領域30を形成する段階(
図3の工程S2)の他の例である。
図5Aは、Al層24を堆積する段階を示す図である。例えば、Alをスパッタリングすることにより、ドリフト層14に接してAl層24を200nmの厚さだけ堆積させる。
【0045】
図5Bは、Al層24に複数のパターンを形成する段階を示す図である。既知のフォトリソグラフィー法およびエッチング法を適用して、Al層24をパターニングすることにより、複数のパターンを形成してよい。本例において、Al層24の複数のパターンは、電界制御領域30を上面視した形状に対応する。つまり、複数のパターンは、
図2に示したように、ジャンクションバリア領域32の矩形形状、ならびに、電界緩和領域34、フィールドリミッティングリング36およびチャネルストッパ領域38のリング形状と同一のパターンである。
【0046】
図5Cは、レーザー22を照射することによりドリフト層14にAlを注入する段階を示す図である。Al層24の複数のパターンにレーザー22を照射する。本例では、約3.5J/cm
2のエネルギーを有するレーザー22を1ショット照射する。これにより、複数のパターンを通じてドリフト層14にAlを注入する。なお、レーザー22のレーザー光源は、気相レーザードーピングの例と同じ光源を用いてよい。また、必要に応じてSiC基板を加熱してもよい。
【0047】
図5Dは、Al層24の複数のパターンを除去した後の状態を示す図である。これにより、電界制御領域30が完成するので、
図3の工程S3以降を実施してよい。固相レーザードーピングの例においても、気相レーザードーピングの例と同じ効果を得ることができる。
【0048】
図6は、第2実施例に係るSiC‐SBD110の断面図である。本例では、ジャンクションバリア領域32にオーミック接続するオーミック電極43と、フィールドリミッティングリング36に接続するフィールドプレート電極47とを有する点で、第1実施例と異なる。その他の点は、第1実施例と同様である。
【0049】
本例の製造フローでは、絶縁膜44を形成する段階(
図3の工程S3)の直後に、フィールドリミッティングリング36に接する絶縁膜44の部分に開口を設ける。これにより、フィールドリミッティングリング36は絶縁膜44により覆われず外部に開放される。その後、フィールドリミッティングリング36に接続するフィールドプレート電極47を形成する。
【0050】
また、本例の製造フローでは、ショットキー電極42を形成する段階(
図3の工程S4)の直前もしくは直後に、複数のジャンクションバリア領域32にオーミック接続するオーミック電極43を形成する。なお変形例として、ショットキー電極42およびオーミック電極43を同時に同一の材料で形成してもよい。一例において、ショットキー電極42およびオーミック電極43は、ともにNiであってよい。更なる変形例として、フィールドプレート電極47、ショットキー電極42およびオーミック電極43を同じ材料で同時に作成してもよい。
【0051】
そして、ショットキー電極42およびオーミック電極43を形成した後に、両者に接してアノード電極を形成する。なお、オーミック電極43およびアノード電極52は同一の材料で形成してもよい。一例において、両者ともにNiであってよい。
【0052】
本例では、オーミック電極43とジャンクションバリア領域32とが電気的に接続する。これにより、SiC‐SBD110の順方向に過電圧がかかった場合に、ジャンクションバリア領域32からドリフト層14へ少数キャリア(本例では電子)を注入することにより順電圧を下げることができる。それゆえ、サージ耐量を向上させることができる。また、本例では、フィールドプレート電極47とフィールドリミッティングリング36電気的に接続する。なお、フィールドプレート電極47は、絶縁膜44を介してドリフト層14と重なる重なり領域56を有する。当該重なり領域56は、MOS構造として機能するので、ドリフト層14における空乏層の延び方を制御することができる。なお、本例は、第1実施例にオーミック電極43およびフィールドプレート電極47を適用する例であるが、いずれか一方だけを実施例1に適用してもよい。
【0053】
図7Aから
図7Cは、トレンチ48にフィールドリミッティングリング36を形成する例を示す図である。
図7Aは、耐圧構造部62にトレンチ48を形成する段階を示す図である。当該段階は、ドリフト層14を形成する段階(
図3の工程S1)の後、かつ、電界制御領域30を形成する段階(
図3の工程S2)の前に行われる。
【0054】
トレンチ48は、既知のフォトリソグラフィー法およびエッチング法を適用して形成することができる。本例のトレンチ48は、ドリフト層14のおもて面15からトレンチ48の底部まで1μmの深さを有する。なお、深さ1μmは例示に過ぎず、目的とする半導体装置の性能に応じて適宜変更してよい。本例では、トレンチ48の側壁49とドリフト層14のおもて面15とが角度αを成すように形成される。
図4A〜
図4Dの気相レーザードーピングおよび
図5A〜
図5Dの
固相レーザードーピングにおいては、p型不純物であるAlがドリフト層14のおもて面側から裏面側へ拡散する。それゆえ、角度αが小さい方が、側壁49に高濃度のp型不純物領域を形成しやすい。角度αは、30度以上80度以下であってよく、より好ましくは55度以上75度以下としてよい。
【0055】
図7Bは、トレンチ48にフィールドリミッティングリング36を形成する段階を示す図である。当該段階は、電界制御領域30を形成する段階(
図3の工程S2)に対応する。本例のフィールドリミッティングリング36の底部は、第1および第2実施例よりも深い(つまり、より裏面側に位置する)ので、より深い位置に空乏層を形成することができる。また、側壁49から内周側および外周側へ空乏層が広がりやすくなる。したがって、第1および第2実施例と比較して、より高い電界遮蔽効果および電界緩和効果を得ることができる。
【0056】
図7Cは、耐圧構造部62に絶縁膜44を形成する段階を示す図である。当該段階は、絶縁膜44を形成する段階(
図3の工程S3)に対応する。絶縁膜44の被覆性は下地のラフネスの影響を受けるので、絶縁膜44はトレンチ48の直上の部分に凹部を有してもよい。なお、本例は、フィールドリミッティングリング36をトレンチ48に形成する例を示したが、ジャンクションバリア領域32、電界緩和領域34およびフィールドリミッティングリング36の1以上をトレンチ48に形成してもよい。
【0057】
図8は、トレンチ48の他の例を示す図である。本例のトレンチ48は、トレンチ48の側壁49とドリフト層14のおもて面15とが90度を成すように形成されている。本例のトレンチ48も、ドリフト層14のおもて面15からトレンチ48の底部まで1μmの深さを有する。レーザー照射方向をドリフト層14に対して傾けて、かつ、複数回レーザーを照射することで、本例のフィールドリミッティングリング36を形成してよい。本例においても、第1および第2実施例と比較してより深い位置に空乏層を形成することができる。それゆえ、第1および第2実施例と比較して、より高い電界遮蔽効果および電界緩和効果を得ることができる。
【0058】
なお、本明細書の実施例では、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である。ただし、他の例では、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型であってもよい。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0060】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10・・中央部、11・・端部、12・・SiC基板、14・・ドリフト層、15・・おもて面、16・・接触領域、18・・外周部、20・・マスク層、21・・開口、22・・レーザー、24・・Al層、30・・電界制御領域、32・・ジャンクションバリア領域、34・・電界緩和領域、36・・フィールドリミッティングリング、38・・チャネルストッパ領域、42・・ショットキー電極、43・・オーミック電極、44・・絶縁膜、46・・チャネルストッパ電極、47・・フィールドプレート電極、48・・トレンチ、49・・側壁、52・・アノード電極、54・・カソード電極、56・・重なり領域、60・・活性部、62・・耐圧構造部、100・・SiC‐SBD、110・・SiC‐SBD、200・・製造フロー