(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような大断面集成材は、1次接着した複数の集成材を、専用の機械を用いて集成材同士を2次接着して形成するため、繁雑な作業と接着剤の乾燥等に多くの時間を費やさなければならず、またコストが高くなるという課題がある。
【0005】
本発明はかかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価で且つ短時間で製造することが可能な製造性に
優れた耐火構造材の接合構造、及び、耐火構造材の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために本発明の耐火構造材の接合構造は、
第一耐火構造材と第二耐火構造材とを接合する耐火構造材の接合構造であって、
前記第一耐火構造材と第二耐火構造材は、それぞれ、
荷重を支持するための、木質材からなる荷重支持層と、
前記荷重支持層の外側に配置される燃え止まり層と、
前記燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる燃えしろ層と、を備え、
前記荷重支持層は、積層された複数の木質板材が綴り材により一体化されており、
前記荷重支持層の積層された木質板材は、積層された積層方向における両端に位置する一対の端板部と、前記一対の端板部の間に設けられる内側木質部と、を有しており、
前記第一耐火構造材の前記第二耐火構造材に接合される先端部は、前記内側木質部の両側にて各々隣接する前記端板部と前記内側木質部とのうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設された2つの第一凹部を有し、
前記第二耐火構造材の前記第一耐火構造材に接合される先端部は、前記内側木質部の両側にて各々隣接する前記端板部と前記内側木質部とのうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設された2つの第二凹部を有しており、
前記内側木質部の両側にて各々前記第一凹部と前記第二凹部とに亘って配置される2枚の鋼板を有し、
前記第一耐火構造材と前記第二耐火構造材とには各々、前記2枚の鋼板を貫通する接合綴り材が前記一対の端板部の間に亘って
貫入されており、
前記第一耐火構造材の前記先端部は、前記第二耐火構造材に設けられた収容凹部に収容され、前記第一耐火構造材の前記燃え止まり層と、前記第二耐火構造材の前記燃え止まり層は繋がっていることを特徴とする耐火構造材の接合構造である。
【0011】
このような耐火構造材の接合構造によれば、第一耐火構造材の先端部に形成された第一凹部と第二耐火構造材の先端部に形成された第二凹部とに亘って配置された2枚の鋼板を貫通する接合綴り材が一対の端板部間に亘って貫入されているので、第一耐火構造材と第二耐火構造材とを、2枚の鋼板により挟持して強固に接合することが可能である。また、一対の端板部と、一対の端板部の間に設けられる内側木質部にて形成された荷重支持層を有する耐火構造材でなる第一耐火構造材および第一耐火構造材に各々、隣接する端板部と内側木質部とのうちの一方に、鋼板が配置される第一凹部または第二凹部が設けられているので、第一凹部および第二凹部を簡単な加工により設けて容易に鋼板を配置することが可能である。
【0012】
かかる耐火構造材の接合構造であって、
前記第一耐火構造材及び前記第二耐火構造材の前記燃え止まり層には前記接合綴り材が挿通される第一挿通孔が形成されており、
前記第一挿通孔には、燃え止まり機能を有する部材が封入されていることが望ましい。
【0013】
このような耐火構造材の接合構造によれば、燃え止まり層は、接合綴り材が挿通される第一挿通孔にも燃え止まり機能を有する部材が封入されているので、荷重支持層全体を隙間無く燃え止まり層で囲うことが可能である。このため、より耐火性の高い耐火構造材梁と耐火構造材柱との接合構造を実現することが可能である。
【0014】
かかる耐火構造材の接合構造であって、
前記第一耐火構造材及び前記第二耐火構造材の前記燃えしろ層には前記接合綴り材が挿通される第二挿通孔が形成されており、
前記第二挿通孔には、前記燃えしろ層と同じ材質の部材が封入されていることが望ましい。
【0015】
このような耐火構造材の接合構造によれば、燃えしろ層は、接合綴り材が挿通される第二挿通孔にも燃えしろ層と同じ材質の部材が挿入されているので、燃え止まり層全体を隙間無く、単一の材質でなる燃えしろ層により囲うことが可能である。
【0016】
また、第一耐火構造材と第二耐火構造材とを接合する耐火構造材の接合方法であって、
木質板材でなり対向する一対の第一端板部及び前記一対の第一端板部の間に設けられる第一内側木質部のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設させて、前記一対の第一端板部と第一内側木質部との間に各々第一凹部を形成し、前記一対の第一端板部と前記第一内側木質部とを積層して綴り材を貫入することにより一体化して荷重を支持するための第一荷重支持層を形成するとともに、
各々の前記第一凹部の内部から前記第一凹部の外に突出させて2枚の鋼板が配置された先端部を形成し、前記鋼板を貫通する接合綴り材を前記一対の第一端板部の間に亘らせて貫入し、
前記鋼板を備えた前記第一荷重支持層の外側に配置される第一燃え止まり層と、
前記第一燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる第一燃えしろ層と、を形成して第一耐火構造材を形成する第一耐火構造材形成ステップと、
木質板材でなり対向する一対の第二端板部及び前記一対の第二端板部の間に設けられる第二内側木質部のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設させ、前記第一耐火構造材と接合したときに前記第一凹部と繋がる位置に各々第二凹部を形成し、前記一対の第二端板部と前記第二内側木質部とを積層し綴り材を貫入することにより一体化して荷重を支持するための第二荷重支持層を形成し、
前記第二荷重支持層の外側に配置される第二燃え止まり層と、
前記第二燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる第二燃えしろ層と、を形成して前記第一耐火構造材の前記先端部が収容される収容凹部を有する第二耐火構造材を形成する第二耐火構造材形成ステップと、
前記第一燃え止まり層と前記第二燃え止まり層とが繋がるように、前記第一耐火構造材の前記先端部を前記第二耐火構造材の前記収容凹部に収容して前記2枚の鋼板を前記第二凹部に配置し、前記鋼板を貫通する接合綴り材を前記第二耐火構造材の前記一対の第二端板部の間に亘らせて貫入する接合ステップと、
を有することを特徴とする耐火構造材の接合方法である。
【0017】
このような耐火構造材の接合方法によれば、第一荷重支持層及び第二荷重支持層がいずれも、積層された複数の木質板材に接合綴り材が貫入されて一体化されている第一耐火構造材および第二耐火構造材により構成されているので、安価で且つ容易に製造することが可能である。また、鋼板が設けられる第一凹部と第二凹部とは、隣接する第一端板部と第一内側木質部とのうちの一方及び隣接する第二端板部と第二内側木質部とのうちの一方の対向面に、接合綴り材により一体化する前に形成するので、簡単な加工により精度良く形成することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価で且つ短時間で製造することが可能な製造性に優れた
耐火構造材の接合構造、及び、耐火構造材の接合方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明にかかる耐火構造材について説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる耐火構造材の一実施形態を示す図である。本実施形態の耐火構造材1は、芯部をなし荷重を支持するための、木質材からなる荷重支持層2と、荷重支持層2の外側に配置される耐火材からなる燃え止まり層3と、燃え止まり層3の外側に配置される木質材からなる燃えしろ層4と、を備えている。
【0023】
荷重支持層2は、断面略矩形状をなし、製材、集成材、LVL等の板状をなす木質板材としての木質ブロック21を複数積層し、積層されている積層方向に綴り材としてのビス5が貫入されて一体化されている。以下の説明においては、荷重支持層2を形成し、積層された複数の木質ブロック21のうちの、積層方向において両端に位置する2枚の木質ブロック21をそれぞれ端板部21aと称し、一対の端板部21aの間に位置する1枚以上の木質ブロック21を内側木質部21bと称する。すなわち、荷重支持層2は、一対の端板部21a間に亘るビス5により一対の端板部21aと内側木質部21bとが接合されて一体化されている。ここで、内側木質部21bを構成する木質ブロック21は、1枚でも、複数積層されていても構わない。
【0024】
燃え止まり層3は、荷重支持層の炭化を防止する燃え止まり機能を有する部材で構成され、例えば、荷重支持層2の外周面を覆うように各々の面に耐火材としての石膏ボードがビス(不図示)により取り付けられている。ここで、燃え止まり層3を形成する部材は石膏ボードに限らず、例えば、高熱容量材であるモルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料の他、中空矩形断面の金属製のパイプ内に無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したもの等であったり、断熱材である不燃木材、難燃処理材、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウール等であったり、熱慣性の大きい木材であるセランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等であっても構わない。
【0025】
燃えしろ層4は、荷重支持層2と同様のひき板や単板(LVL)等からなる単材または単材を複数集成した木質ブロック21が燃え止まり層3の外周面を覆うように各々の面に接着剤により取り付けられている。
【0026】
本実施形態の耐火構造材1によれば、荷重支持層2が、積層された複数の木質ブロック21にビス5が貫入されて一体化されて形成されているので、荷重支持層2を製造するために複数の木質ブロック21同士を接着する必要がない。このため、専用の設備は必要とせず、安価で短時間で製造可能な、製造性に優れた耐火構造材1を提供することが可能である。
【0027】
図2は、耐火構造材の製造方法を示す図である。
【0028】
耐火構造材1は、複数の木質ブロック21を積層する積層ステップS1と、積層した複数の木質ブロック21にビス5を貫入して荷重支持層2を形成する荷重支持層形成ステップS2と、荷重支持層2の外側に石膏ボードを取り付けて燃え止まり層3を形成する燃え止まり層形成ステップS3と、燃え止まり層3の外側に木質ブロック21を取り付けて燃えしろ層4を形成する燃えしろ層形成ステップS4を経て製造される。
【0029】
本実施形態の耐火構造材1の製造方法によれば、荷重支持層2を、複数の木質ブロック21を積層しビス5を貫入して一体化して形成するので、耐火構造材1の一部をなす荷重支持層2を積層した木質ブロック21にビス5を貫入するだけで簡単に且つ短時間で安価な耐火構造材1を製造することが可能である。
【0030】
図3は、耐火構造材梁と耐火構造材柱との接合構造を示す斜視図である。
図4は、耐火構造材梁と耐火構造材柱との接合構造を示す水平断面図である。
【0031】
次に、耐火構造材の接合構造を、上記耐火構造材1を梁及び柱として用い、梁をなす第一耐火構造材としての耐火構造材梁6と、柱をなす第二耐火構造材としての耐火構造材柱7とを接合した耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合構造を例に挙げて説明する。
【0032】
接合される耐火構造材梁6と耐火構造材柱7は、耐火構造材1を製造する工程において、接合部をなす耐火構造材梁6の先端部6aと、耐火構造材柱7の上端部(先端部)7aとが接合できる形状に形成される。以下の説明においては、第一荷重支持層に相当する耐火構造材梁6の荷重支持層2を梁荷重支持層62とし、第一端板部に相当する耐火構造材梁6の端板部21aを梁端板部62aとし、第一内側木質材に相当する耐火構造材梁6の内側木質部21bを梁内側木質部62bとし、第一燃え止まり層に相当する耐火構造材梁6の燃え止まり層3を梁燃え止まり層63とし、第一燃えしろ層に相当する耐火構造材梁6の燃えしろ層4を梁燃えしろ層64として説明する。また、第二荷重支持層に相当する耐火構造材柱7の荷重支持層2を柱荷重支持層72とし、第二端板部に相当する耐火構造材柱7の端板部21aを柱端板部72aとし、第二内側木質材に相当する耐火構造材柱7の内側木質部21bを柱内側木質部72bとし、第二燃え止まり層に相当する耐火構造材柱7の燃え止まり層3を柱燃え止まり層73とし、第二燃えしろ層に相当する耐火構造材柱7の燃えしろ層4を柱燃えしろ層74として説明する。
【0033】
耐火構造材梁6は、その長手方向において、梁燃えしろ層64より梁燃え止まり層63が突出し、梁燃え止まり層63より梁端板部62aが突出し、梁端板部62aより梁内側木質部62bが突出するように形成され、一対の梁端板部62aと梁内側木質部62bとの間から梁端板部62aより突出して梁内側木質部62bに沿うように2枚の鋼板8が配置されている。この鋼板8は、一対の梁端板部62aと梁内側木質部62bとの間に挟まれている部位にて一対の梁端板部62a間に亘るように貫入された、接合綴り材としてのドリフトピン9により固定されている。
【0034】
耐火構造材柱7の上端部7aには、鋼板8が取り付けられた耐火構造材梁6の先端部6a、より具体的には、梁燃えしろ層64の先端64aが耐火構造材柱7の側面7bに当接されて、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64の先端64aより突出している部位が、鋼板8とともに耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73の内側に収容されるような収容凹部7cが形成されている。耐火構造材梁6の先端部6aが耐火構造材柱7の収容凹部7cに収容された状態では、耐火構造材梁6の上面側に位置する梁燃えしろ層64は、耐火構造材柱7の上縁7eより上に突出している。
【0035】
このため耐火構造材柱7の、耐火構造材梁6が接合される側面7b側の柱燃えしろ層74は、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64の先端64aが当接する部位の内側となる部分が切除されており、隣接する柱燃え止まり層73も側面7b側の柱燃えしろ層74と同じ高さで切除されている。また、耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73において、接合される耐火構造材梁6の長手方向と直交する方向にて対向している部位は、側面7b側の柱燃え止まり層73より奥側まで露出されるように、耐火構造材柱7の一対の柱端板部72aが切除されており、柱内側木質部72bは側面7b側の柱燃えしろ層74と同じ高さで切除されている。このため、耐火構造材梁6が接合される側から、一対の柱端板部72a間に、耐火構造材梁6が接合される側面7bとは反対側に位置する柱燃え止まり層73が見えるように露出している。
【0036】
また、一対の柱端板部72aには各々、柱内側木質部72bと対向する対向面に柱内側木質部72bから離れる方向に凹設させて、耐火構造材柱7と耐火構造材梁6とを接合するために設けられる鋼板8が配置される第二凹部としての柱凹部72cが形成されている。このように柱燃えしろ層74、柱燃え止まり層73、柱端板部72a、及び、柱内側木質部72bが形成された耐火構造材柱7の上端部7aにて窪む部位が収容凹部7cをなしている。
【0037】
耐火構造材梁6の先端部6aは、耐火構造材柱7の柱燃えしろ層74と柱燃え止まり層73の厚み分、耐火構造材梁6の梁燃え止まり層63が梁燃えしろ層64の先端64aより突出している。耐火構造材梁6の梁端板部62aは、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64の先端64aが、耐火構造材柱7の側面7bの柱燃えしろ層74に当接された状態で、耐火構造材柱7の柱端板部72aに、先端62eが当接されるように、梁燃え止まり層63より突出されている。耐火構造材梁6の梁内側木質部62bは、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64の先端64aが、耐火構造材柱7の側面7bの柱燃えしろ層74に当接された状態で、耐火構造材柱7の側面7bと反対側にて露出された柱燃え止まり層73に、先端6bが当接されるように梁端板部62aより突出されている。
【0038】
耐火構造材梁6の、梁内側木質部62bと隣接する一対の梁端板部62aには各々、梁内側木質部62bと対向する対向面に梁内側木質部62bから離れる方向に凹設させて、耐火構造材柱7と耐火構造材梁6とを接合するために設けられる鋼板8が配置される第一凹部としての梁凹部62cが形成されている。
【0039】
耐火構造材柱7の上端部7aの収容凹部7cに耐火構造材梁6の先端部6aが収容された状態では、柱凹部72cと梁凹部62cとが繋がって形成される空隙部10に鋼板8が、耐火構造材柱7と耐火構造材梁6とに亘るように配置されている。耐火構造材梁6および耐火構造材柱7には空隙部10に収容された鋼板8を貫通する方向に耐火構造材柱7および耐火構造材梁6をそれぞれ貫通する複数の貫通孔6d、7dが設けられている。各貫通孔6d、7dに、一対の梁端板部62a及び一対の柱端板部72a間に亘るようにドリフトピン9がそれぞれ貫入されていることにより耐火構造材柱7と耐火構造材梁6とが接合されている。
【0040】
また、貫通孔6d、7dのうち梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73に形成されている部分は、ドリフトピン9が挿通される挿通孔63a、73a(第一挿通孔)であり、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73と同じ材質の封入部材63b、73bが封入されている。また、貫通孔6d、7dのうち梁燃えしろ層64、柱燃えしろ層74に形成されている部分は、ドリフトピン9が挿通される挿通孔64b、74b(第二挿通孔)であり、梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74と同じ材質の封入部材64c、74cが封入されている。
【0041】
耐火構造材柱7の小口、すなわち上端部には、耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73および耐火構造材梁6の上面側の石膏ボードにより囲まれた領域を覆うように石膏ボード11が固定されており、その上側に耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73の上端を塞ぐように木質ブロック21が接着されている。このように接合された耐火構造材梁6の梁荷重支持層62は梁燃え止まり層63により囲まれ、耐火構造材柱7の柱荷重支持層72は、柱燃え止まり層73により囲まれている。
【0042】
本実施形態の耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合構造によれば、耐火構造材梁6の先端部6aが耐火構造材柱7の収容凹部7cに収容されて、耐火構造材梁6の梁内側木質部62bと、耐火構造材梁6の一対の梁端板部62a及び耐火構造材柱7の一対の柱端板部72aとの間に形成される空隙部10に設けられた、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とに亘る2枚の鋼板8を貫通するドリフトピン9が、一対の梁端板部62aの間及び一対の柱端板部72aの間に亘っているので、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを、2枚の鋼板8により挟持して強固に接合することが可能である。
【0043】
また、一対の梁端板部62aと、一対の梁端板部62aの間に設けられる梁内側木質部62bにて形成された耐火構造材1でなる耐火構造材梁6の梁端板部62aおよび、一対の柱端板部72aと、一対の柱端板部72aの間に設けられる柱内側木質部72bにて形成された耐火構造材1でなる耐火構造材柱7の柱端板部72aに、鋼板8が配置される梁凹部62cまたは柱凹部72cが設けられているので、梁凹部62cおよび柱凹部72cを簡単な加工により設けて容易に鋼板8を配置することが可能である。
【0044】
また、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とが接合された状態では、耐火構造材梁6の梁燃え止まり層63と耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73とが当接されて繋がっているので、梁荷重支持層62が梁燃え止まり層63により囲まれ、耐火構造材柱7の柱荷重支持層72が柱燃え止まり層73により囲まれた耐火性の高い耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合構造を実現することが可能である。
【0045】
また、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73は、ドリフトピン9が挿通される第一挿通孔63a、73aにも梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73と同じ材質の封入部材63b、73bが封入されているので、梁荷重支持層62全体、柱荷重支持層72全体を隙間無く梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73で囲うことが可能である。このため、より耐火性の高い耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合構造を実現することが可能である。
【0046】
また、梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74は、ドリフトピン9が挿通される第二挿通孔64b、74にも梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74と同じ材質の部材が挿入されているので、梁燃え止まり層63全体を隙間無く梁燃えしろ層64で覆うことが可能であり、柱燃え止まり層73全体を隙間無く柱燃えしろ層74で囲うことが可能である。特に、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との外周部をなす梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74に設けられた第二挿通孔64b、74に梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74と同じ材質の部材が挿入されているので、美観を損なうことなく耐火構造材梁6と耐火構造材柱7を接合することが可能である。
【0047】
次に、本耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合方法について説明する。
図5は、耐火構造材梁と耐火構造材柱との接合方法を示す図である。
【0048】
耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを接合する場合には、鋼板8を備えた耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを各々工場等にて製造し(耐火構造材梁形成ステップS11、耐火構造材柱形成ステップS12)、製造した耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを現場に搬入し、現場において耐火構造材柱7の上端部7aに耐火構造材梁6の先端部6aを嵌め込みドリフトピン9を貫入して接合する(接合ステップS13)。
【0049】
耐火構造材梁形成ステップS11では、まず、梁荷重支持層62を形成する複数の木質ブロック21のうちの積層方向において両端に配置されて一対の梁端板部62aをなす木質ブロック21の、内側に配置される梁内側木質部62bをなす木質ブロック21と対向する対向面に鋼板8を配置するための梁凹部62cを形成する。梁凹部62cは、当該梁凹部62cに鋼板8が配置されたときに、鋼板8がガタつかないように鋼板8の厚みより僅かに薄く形成する。また、梁凹部62cは、梁端板部62aの梁内側木質部62b側の面を、先端から鋼板8の長さのほぼ半分に相当する分だけ切除する。
【0050】
次に、梁内側木質部62bの両側に梁端板部62aを配置して積層し、梁凹部62cを避けてビス5により梁内側木質部62bと梁端板部62aとを一体化して梁荷重支持層62を形成する。このとき、梁凹部62cに配置する鋼板8の先端より梁内側木質部62bの先端のほうが突出するように配置する。
【0051】
次に、梁荷重支持層62の梁凹部62cに、その半分が先端側に突出するように、ドリフトピン9が貫入される貫通孔を備えた鋼板8を挿入し、外側に石膏ボードをビスにより固定して梁燃え止まり層63を形成する。このとき、梁端板部62aの先端が梁燃え止まり層63をなす石膏ボードの先端より突出するように石膏ボードを配置する。
【0052】
次に、梁燃え止まり層63の外側に木質ブロック21を接着して梁燃えしろ層64を形成する。このとき、梁燃え止まり層63をなす石膏ボードの先端が、梁燃えしろ層64をなす木質ブロック21の先端より突出し、耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73と燃えしろ層74との厚み分だけ梁燃え止まり層63が梁燃えしろ層64より突出するように配置する。
【0053】
梁燃えしろ層64が備えられた耐火構造材梁6には、積層方向に貫通しドリフトピン9が貫入される貫通孔6dを形成しておく。
【0054】
耐火構造材柱形成ステップS12では、まず、柱荷重支持層72を形成する複数の木質ブロック21のうちの積層方向において両端に配置される一対の柱端板部72aをなす木質ブロック21の、内側に配置される柱内側木質部72bをなす木質ブロック21と対向する対向面に鋼板8を配置するための柱凹部72cを形成する。このとき、鋼板8の厚みより僅かに薄く、柱端板部72aの柱内側木質部72b側の面を、先端部分であって耐火構造材梁6が接合される面側に鋼板8の長さのほぼ半分に相当する分だけ切除する。
【0055】
次に、柱内側木質部72bの両側に柱端板部72aを配置して積層し、柱凹部72cを避けてビス5により柱内側木質部72bと柱端板部72aとを一体化して柱荷重支持層72を形成する。このとき、柱内側木質部72bの上端が、柱端板部72aの上端より、耐火構造材梁6の梁荷重支持層62の高さ分だけ低くなるように配置する。また柱端板部72aの、柱内側木質部72bより上方に突出している部位は、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64の先端64aが耐火構造材柱7の側面7bに当接されたときに耐火構造材梁6の梁端板部62aの先端が当接される位置まで切除しておく。
【0056】
次に、柱荷重支持層72の外側に石膏ボードをビスにより固定して柱燃え止まり層73を形成する。このとき、柱荷重支持層72の耐火構造材梁6が当接される側の面に設けられる石膏ボードは、柱内側木質部72bと同じ高さに形成されている。
【0057】
次に、柱燃え止まり層73の外側に木質ブロック21を接着して柱燃えしろ層74を形成する。このとき、柱燃え止まり層73の耐火構造材梁6が当接される側の面に設けられる木質ブロック21は、柱内側木質部72bと同じ高さに形成されている。
【0058】
柱燃えしろ層74が備えられた耐火構造材柱7には、積層方向に貫通しドリフトピン9が貫入される貫通孔7dを形成しておく。
【0059】
このように形成された耐火構造材柱7の上端部7aには、耐火構造材梁6の先端部6aが収容される収容凹部7cが形成される。
【0060】
次に、耐火構造材梁6の梁燃えしろ層64から繋がった貫通孔6dに、一対の梁端板部62a間に亘るようにドリフトピン9を貫入して鋼板8を耐火構造材梁6に固定した後に、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを施工現場に搬入する。
【0061】
接合ステップS13では、耐火構造材柱7が立てられた後に、耐火構造材柱7の収容凹部7cに耐火構造材梁6の先端部6aを挿入し、耐火構造材柱7側の貫通孔7dに、一対の柱端板部72a間に亘るようにドリフトピン9を貫入して耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とを接合する。このとき、貫通孔6d、7dのうち梁燃え止まり層63、柱燃え止まり層73に形成されている第一挿通孔63a、73aに、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73と同じ材質の封入部材63b、73bを封入し、貫通孔6d、7dのうち梁燃えしろ層64、柱燃えしろ層74に形成されている第二挿通孔64b、74bに、梁燃えしろ層64および柱燃えしろ層74と同じ材質の封入部材64c、74cを封入する。
【0062】
最後に、耐火構造材柱7の小口において耐火構造材柱7の柱燃え止まり層73および耐火構造材梁6の上面側の石膏ボードにより囲まれた領域を覆うように石膏ボード11を固定して柱燃え止まり層73を形成し、その上側に木質ブロック21を接着して柱燃えしろ層74を形成する。
【0063】
本実施形態の耐火構造材梁6と耐火構造材柱7との接合方法によれば、耐火構造材梁6及び耐火構造材柱7は、梁荷重支持層62及び柱荷重支持層72が、積層された複数の木質ブロック21にビス5が貫入されて一体化されている耐火構造材1により構成されているので、安価で且つ容易に製造することが可能である。また、鋼板8が設けられる空隙部10をなす耐火構造材梁6の梁凹部62cと耐火構造材柱7の柱凹部72cとは、隣接する梁端板部62aと梁内側木質部62bとのうちの一方の対向面に、一対の梁端板部62aと梁内側木質部62bとをビス5により一体化する前に形成し、また、隣接する柱端板部72aと柱内側木質部72bとのうちの一方の対向面に、一対の柱端板部72aと柱内側木質部72bとをビス5により一体化する前に形成するので、簡単な加工により精度良く形成することが可能である。このため、容易に、且つ、耐火構造材梁6と耐火構造材柱7とをより強固に接合することが可能である。
【0064】
上記実施形態においては、鋼板8を配置するための梁凹部62c及び柱凹部72cをいずれも一対の梁端板部62a及び柱端板部72aに設ける例について説明したが、対面する端板部と内側木質部とのいずれか一方に設けられていれば構わない。
【0065】
また、上記実施形態においては、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73に形成されている第一挿通孔63a、73aに、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73と同じ材質の封入部材63b、73bを封入した例について説明したが、第一挿通孔63a、73aには、燃え止まり機能を有する部材が封入されていれば、梁燃え止まり層63および柱燃え止まり層73と同じ材質の部材でなくとも構わない。
【0066】
上記実施形態においては、耐火構造材の接合構造および接合方法を、耐火構造材梁と耐火構造材柱との接合構造及び接合方法を例に挙げて説明したが、これに限らず、耐火構造材梁同士または耐火構造材柱同士の接合であっても構わない。
【0067】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。